(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/00 20060101AFI20231109BHJP
A47C 3/026 20060101ALI20231109BHJP
A47C 1/03 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A47C7/00 A
A47C3/026
A47C1/03
(21)【出願番号】P 2019165610
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 友希
(72)【発明者】
【氏名】森田 凌伍
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01284113(EP,A2)
【文献】実開平02-140014(JP,U)
【文献】実公昭31-000254(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00
A47C 3/026
A47C 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座を直接に又は座受け体を介して支持するベースと、前記ベースが取り付けられる脚装置とを備えており、前記脚装置は、前記座が回転可能なタイプと前記座が回転不能なタイプとを選択的に使用可能
であり、
前記ベースには、前記回転可能な脚装置の脚柱の上端部が嵌着する取り付け穴が形成されている
椅子であって、
前記回転不能なタイプの脚装置
の上端に、前記ベースに下方から重なるサポート体が配置されており、前記サポート体に、前記ベースの取り付け穴に下方から
嵌着するボス体を上向きに突設している、
椅子。
【請求項2】
前記座は平面視略四角形に形成されている一方、前記ベースには支持部材を介して背もたれが取り付けられており、
前記回転不能なタイプの脚装置
における前記サポート体と前記ベースとのうちいずれか一方又は両方に、それら
回転不能なタイプの脚装置とベースとの相対姿勢を一定に保持する位置決め手段が設けられている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記取り付け穴の内周面は上方に向けて縮径したテーパ面になっている一方、
前記回転不能なタイプの脚装置における
前記サポート体の前記ボス体の外周面は、前記取り付け穴と同じ角度で上方に向けて縮径したテーパ面になっている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記回転不能なタイプの脚装置
のサポート体は上向き開口の形態であり、前記サポート体の外周部に、前記ベースの下面に近接するフランジを設けている一方、
前記ベースには、前記取り付け穴を形成した筒部が、前記サポート体の内部に入り込むように下向き突設されている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項5】
座を直接に又は座受け体を介して支持するベースと、前記ベースが取り付けられる脚装置とを備えており、前記脚装置は、前記座が回転可能なタイプと前記座が回転不能なタイプとを選択的に使用可能であり、
前記ベースには、前記回転可能な脚装置の脚柱の上端部が嵌着する取り付け穴が形成されている椅子であって、
前記回転不能なタイプの脚装置は、前記ベースに下方から重なるサポート体と、前記サポート体に固定された4本の棒足とを有して、
各棒足の上端には、前記ベースの軸心方向に延びる上水平状部が形成されている一方、
前記サポート体は、前記各棒足の上水平状部が横から貫通する筒部を備えた形態であり、前記各棒足の前記上水平状部が前記サポート体に溶接されている、
椅子。
【請求項6】
前記各
棒足のうち少なくとも1本の
棒足の上水平状部に、前記サポート体の外側において前記ベースの下面に係合する位置決め部材を設けている、
請求項5に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、異なるタイプの脚装置を選択的に使用できる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子は様々なタイプが存在しているが、脚装置の構造から見ると、脚柱をガスシリンダで構成して座を高さ調節できる回転椅子のタイプと、いわゆるパイプ椅子のように座を高さ調節できないタイプとに大別できると云える。
【0003】
脚装置の構造は様々であるが、異なるタイプの脚装置に、共通した構造の座部や背もたれを適用することが提案され、或いは実施されている。すなわち、座部や背もたれからなる上部分を共通化して、異なる態様の脚装置に適用することによって椅子の品揃えを広げることが行われている。
【0004】
その例が特許文献1に開示されている。この特許文献1では、背もたれは、弾性変形する複数本のフレーム材を介して座受けベースに取り付けられており、脚装置は、ガスシリンダを備えたタイプと、4本足方式で上端にベースが固定されているタイプとが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
椅子は特定人が使用する場合もあるし、不特定多数の人が使用する場合もある。特定人が使用する場合は、座を高さ調節できるものが好適である。他方、不特定多数の人が使用する場合は、一時的な使用であることやコスト抑制の点から、座の高さ調節機能は強く求められないことが多い。特に、何列にも並べて配置される椅子の場合は、高さ調節できなない非回転式の椅子が多く使用されていると云える。
【0007】
他方、脚装置の構造が相違しても、背もたれが高いロッキング機能を有しているなどして上部分が機能面やデザイン面等で優れていると、脚装置の構造が異なる椅子について共通した価値を付与できる。従って、特許文献1のように、異なるタイプの脚装置について共通した上部分を適用することは有意義である。
【0008】
そして、異なる構造の脚装置について共通した上部分を適用するに当たって、部品点数の抑制や組み立てコストの抑制が必要であるが、特許文献1は、この点については改良の余地があると云える。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は上位概念を成すもので、
「座を直接に又は座受け体を介して支持するベースと、前記ベースが取り付けられる脚装置とを備えており、前記脚装置は、前記座が回転可能なタイプと前記座が回転不能なタイプとを選択的に使用可能であり、
前記ベースには、前記回転可能な脚装置の脚柱の上端部が嵌着する取り付け穴が形成されている」
という基本構成において、
「前記回転不能なタイプの脚装置の上端に、前記ベースに下方から重なるサポート体が配置されており、前記サポート体に、前記ベースの取り付け穴に下方から嵌着するボス体を上向きに突設している」
という構成が付加されている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記座は平面視略四角形に形成されている一方、前記ベースには支持部材を介して背もたれが取り付けられており、
前記回転不能なタイプの脚装置における前記サポート体と前記ベースとのうちいずれか一方又は両方に、それら回転不能なタイプの脚装置とベースとの相対姿勢を一定に保持する位置決め手段が設けられている」
という構成になっている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記取り付け穴の内周面は上方に向けて縮径したテーパ面になっている一方、
前記回転不能なタイプの脚装置における前記サポート体の前記ボス体の外周面は、前記取り付け穴と同じ角度で上方に向けて縮径したテーパ面になっている」
という構成になっている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1~3のうちのいずれかにおいて、
「前記回転不能なタイプの脚装置のサポート体は上向き開口の形態であり、前記サポート体の外周部に、前記ベースの下面に近接するフランジを設けている一方、
前記ベースには、前記取り付け穴を形成した筒部が、前記サポート体の内部に入り込むように下向き突設されている」
という構成になっている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記回転不能なタイプの脚装置は、前記ベースに下方から重なるサポート体と、前記サポート体に固定された4本の棒足とを有して、
各棒足の上端には、前記ベースの軸心方向に延びる上水平状部が形成されている一方、
前記サポート体は、前記各棒足の上水平状部が横から貫通する筒部を備えた形態であり、前記各棒足の前記上水平状部が前記サポート体に溶接されている」
という構成になっている。
【0015】
請求項5の展開例として、請求項6では、
「前記各棒足のうち少なくとも1本の棒足の上水平状部に、前記サポート体の外側において前記ベースの下面に係合する位置決め部材を設けている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0016】
◎請求項1,5の効果
本願発明では、脚装置としてガスシリンダを備えているような回転式の椅子と、棒足方式脚装置やフレーム式脚装置を備えて非回転式椅子との相互間で、背もたれ等の上部分を共通化できるが、非回転式椅子に使用するときは、ボス体をベースの取り付け穴に下方から嵌入させることによって、脚装置を取り付けできる。従って、非回転式椅子の脚装置の構造を簡単化して、コストを抑制できると共に組み立ての手間も軽減できる。
【0017】
さて、回転式椅子では、座及び背もたれと脚装置との相対姿勢の自在に変化するが、非回転式の椅子では、背もたれが無くて円形の座のみを備えている場合は別にして、座と背もたれとを備えていると、座及び背もたれと脚装置との相対姿勢が一定に保持されている必要がある。
【0018】
この点、請求項2のように位置決め手段を設けると、非回転式の椅子に使用する場合でも、脚装置と座及び背もたれとの相対姿勢を一定に保持することがごく簡単に行われる。従って、非回転式椅子の組み立てをごく簡単に行える。
【0019】
請求項3のように、ボス体の外周面をモールステーパ等のテーパに形成すると、ボス体を取り付け穴に嵌着するだけで脚装置とベースとを固定できるため、ねじ止めのような作業は不要であり、従って、コスト抑制効果や作業能率向上効果を確実化できて好適である。
【0020】
請求項4の構成を採用すると、非回転式椅子において脚装置の上端がサポート体で補強される。また、ベースに筒部を設けてこれに取り付け穴を形成しているため、取り付け穴の高さを十分に確保して高い支持強度を得ることができるが、ベースの筒部はサポート体の内部に入り込んでいるため、ベースに筒部を形成したことに起因して椅子が大型化することを防止できる。また、サポート体はフランジによって補強されているが、フランジはベースに近接しているため、ボス体を取り付け穴にしっかりと嵌着させることができるし、人がベースの下面に指先を当てたときに指先がサポート内の内部に入り込むことも防止できる。
【0021】
非回転式の椅子において脚装置は様々な構造を採用できるが、請求項5のように4本足方式を採用すると、シンプルな外観で高い支持安定性を保持できる。この場合、各足の上水平状部はサポート体に溶接されているため、脚装置の剛性を格段に向上できる。また、請求項5では、棒足の上水平状部は、サポート体の外周部を貫通してサポート体の内部に入り込んでいるため、強固に固定できる。
【0022】
脚装置と座及び背もたれとの相対姿勢を一定化する位置決め手段(姿勢保持手段)は、様々な構造を採用できるが、請求項6のように、棒状の足の上水平状部に位置決め部材を設けると、ボス体と取り付け穴との嵌着機能を損なうことなく位置決め(姿勢合わせ)を行える。
【0023】
また、位置決め部材でベース体を支持することも可能になるが、この場合、位置決め部材はボス体から遠くに離れていて、ベース体は取り付け穴と位置決め部材との間の部位で弾性変形し得るため、ボス体か取り付け穴にしっかりと嵌着した状態を保持しつつ、ベースを支持できる。
【0024】
座部や背もたれからなる上部分も様々な構造を採用できるが、実施形態のように、背もたれが2段階でロッキングする方式を採用すると、シンプルな構造でありながら使用者に高い安楽性を提供できる。従って、回転式椅子と非回転式椅子との両方に高いデザイン性とロッキング機能とを付与できて、ユーザーに高い満足感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は部分正面図、(C)は後ろ上方から見た斜視図、(D)は後ろ下方から見た斜視図である。
【
図2】(A)は脚装置を省略した平面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【
図3】(A)はロッキング前の状態での部分側面図、(B)はロッキング状態での側面図である。
【
図4】座を分離して座受け部材を露出させた斜視図である。
【
図5】座受け部材をベースから分離した状態の斜視図である。
【
図7】座受け部材を裏返した状態での分離斜視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII視方向から見た座部の断面図である。
【
図9】
図7のIX-IX 視方向から見た座部の断面図である。
【
図10】4本足方式の脚装置に適用した図で、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は前下方から見た斜視図、(C)は分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この方向は椅子に普通に着座した人から見た状態を基準にしている。正面視方向は、着座者と相対向した方向である。
【0027】
(1).椅子の概要
まず、
図1~3を参照して椅子の概要を説明する。
図1に示すように、椅子は、基本的な要素として、脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。脚装置1は、複数本(5本)の枝アームを有する接地体4の中央部にガスシリンダより成る脚柱5を立設した構造であり、各アームの先端にはキャスタを設けている。従って、本実施形態は回転椅子に適用している。
【0028】
図1(D)に示すように、脚柱5の上端に、底面視(及び平面視)で略四角形のベース6が固定されている。ベース6には座受け部材7が前後スライド自在に装着されており、座受け部材7の上面に座2が取り付けられている。ベース6は例えばアルミダイキャスト品であり、座受け部材7は例えば合成樹脂の成型品である。
【0029】
詳細は後述するが、座受け部材7は、スライド用弾性体の一例としてのばねによって後退位置に付勢されており、ロッキングに際して着座者の身体が伸び勝手になると、座2及び座受け部材7は臀部で押されて前進し得る。
図3(B)では、座2が前進した状態を表示している。
図3の(A)と(B)との比較から理解できるように、本実施形態では、座受け部材7及び座2は、若干ながら上昇しつつ前進する。
【0030】
椅子は、座2よりも高い位置において着座者を後ろから囲うように配置された上部支持フレーム8を備えている。従って、上部支持フレーム8は、正面視で着座者及び背もたれ3の左右側方に位置する左右の前向きアーム部9と、正面視で背もたれ3及び着座者の後ろに位置するリア部10とを有しており、リア部10に、背もたれ3が、左右長手の軸心回りに後傾するように連結されている。背もたれ3の回動軸心Oは、背もたれ3の後端よりも手前に位置している。
【0031】
実施形態の背もたれ3は、着座者の身体を後ろから抱持するように平面視で後ろ向きに膨れた(前向きに凹んだ)状態に湾曲しており、上部支持フレーム8のリア部10は、背もたれ3の湾曲に倣うように湾曲している。
【0032】
すなわち、平面視において、上部支持フレーム8のリア部10と背もたれ3の後面とは相似形になっている。更に、前向きアーム部9も、平面視で着座者の方向に凹むように湾曲している。このため、上部支持フレーム8は全体として円弧に近い形態に湾曲しており、
図2に明示するように、上部支持フレーム8と背もたれ3との間には、ある程度の間隔Eの隙間が空いている。また、上部支持フレーム8は、全体として水平姿勢になっている。
【0033】
上部支持フレーム8の左右前向きアーム部9は、座2の左右側方に配置されたサイド支持体13に後傾動可能に連結されている。サイド支持体13は、例えばアルミダイキャスト品であり、上下長手で板状の支柱部14と、その上端に一体に形成された前後長手で略円形の上水平状部15とを有している。そして、上水平状部15の後部に、上部支持フレーム8の前向きアーム部9がロッキング用弾性体の弾性に抗して後傾動するように連結されている。上水平上部15は、エラストマー系の保護カバー16で覆われている。
【0034】
サイド支持体13における支柱部14の下端には、座2の下方に回り込んだ基部17が一体に形成されており、基部17の先端部が、ベース6に形成された係合穴18(
図1(D)や
図2(B)参照)に嵌め込まれており、先端部がボルトでベース6に固定されている。
【0035】
既述のとおり、脚柱5はガスシリンダより成っており、ガスシリンダのロックを解除すると、座2及び背もたれ3の高さを自在に調節できる。そして、例えば
図1(A)(C)に明示するように、右側のサイド支持体13の上水平状部15に、ガスシリンダのロックを解除するための摘み(ノブ)19が、上水平状部15の軸心回りに回転させ得るように装着されている。摘み19は左右いずれの方向にも回転可能であり、左右いずれの方向に回転させてもガスシリンダのロックが解除される。
【0036】
摘み19の回転は、チューブに挿通されたワイヤーを介してロック解除レバーに伝達される。
図2(A)(B)に一点鎖線で示すように、サイド支持体13の上水平状部15に肘当て20を取り付けることも可能である。
【0037】
例えば
図1(B)に示すように、背もたれ3は、合成樹脂製の背インナーシェル21aと、その前面に張った背クッション体21bと、背クッション体21bを覆う表皮材21cとを備えている。表皮材21cは袋状に形成されており、背インナーシェル21aの背面も覆われている。
【0038】
図3に示すように、本実施形態では、着座者が背もたれ3にもたれ掛かると、まず、上部支持フレーム8がサイド支持体13に対して後傾することによって第1段階のロッキングが行われ、次いで、上半身を後ろに反らせると、背もたれ3は上部支持フレーム8に対して後傾動し、第2段階のロッキングが行われる。従って、上部支持フレーム8の回動角度及び背もたれ3の回動角度がさほど大きくなくても、全体としての後傾角度を大きくできる。従って、シンプルな構造でありながら、着座者に高い安楽性を提供できる。
【0039】
図1(C)(D)や
図2(C)に示すように、背もたれ3の背面(背インナーシェル22aの背面)に左右一対の角形凹所22が形成されており、角形凹所22に、樹脂製ゴムより成る弾性体やブラケットが内蔵された傾動ユニット23を配置している。
【0040】
また、左右サイド支持体13の前向きアーム部9は、サイド支持体13の上水平状部15に傾動ユニットを介して後傾動自在に保持されている。図示は省略しているが、傾動ユニットは、前向きアーム部9に設けた押動ブラケット、上水平状部15に固定された受けブラケット、両者の間に配置された樹脂ゴム製弾性体を備えており、傾動ユニットの全体は保護カバー16で覆われている。
【0041】
また、既述のとおり、脚柱5(ガスシリンダ)のロックを解除する摘み19が右側の上水平状部15の前端に取り付けられているが、サイド支持体13の支柱部14の前面には、その全長にわたって長溝が形成されて、長溝に、ワイヤーをチューブに挿通した操作ケーブルが配置されている。そして、摘み19の回転によってワイヤーが引かれて、脚柱5のロックが解除されるようになっている。長溝は溝キャップで塞がれている。
【0042】
(2).座部の構造
次に、座部の構造を、
図4~9を参照して説明する。
図5に示すように、ベース6は、平面視略四角形で上向きに開口した浅いトレー状の形態を成している。ベース6の略中央部に、
図6に示すように、脚柱5(正確には,脚柱5を構成するガスシリンダの内筒)の上端部が下方から嵌着する取り付け穴24が空いている。取り付け穴24の高さを確保するため、ベース6には下向きの筒部25が形成されている。取り付け穴24の内周面及び脚柱5の上部の外周面は、上に向けて縮径したテーパ(モールステーパ)になっている。
【0043】
例えば
図4や
図6に示すように、脚柱5の上端にはロック解除用のプッシュバルブ26が突設されており、ベース6には、プッシュバルブ26を押動するプッシュバルブ押動機構部27が配置されている。プッシュバルブ押動機構部27はレバー等の部材で構成されているが、本願との関連はないので、説明は省略する。
【0044】
座2は、明確には示していいないが、合成樹脂製の座インナーシェル(座板)に座クッション材を張った構造であり、座インナーシェルが座受け部材7に連結されている。
【0045】
図4,5に示すように、座受け部材7の前部と後部には、座インナーシェルに設けた下向きの係合爪が嵌まり係合する前後係合穴37の群が形成されている。また、座受け部材7の前部には、座インナーシェルを支える弾性体38が配置されている。
図4,5に示すとおり、座受け部材7は、中央部に平面視四角形の大きな開口部39が形成されている。また、座受け部材7は浅いトレー状の形態を成しており、内部には、縦横に延びる多数の補強リブ40が形成されている。
【0046】
既に述べたように、座受け部材7は、ベース6に対して前後スライド自在に装着されている。そこで、スライド手段として、まず、例えば
図5に示すように、座受け部材7の前部の左右両側部に、前後長手で上下に貫通したフロント長穴41を形成して、このフロント長穴41に挿通したフロントガイド軸42をベース6に固定している。
【0047】
フロントガイド軸42には、座受け部材7を上向き離反不能に保持するフランジ42aが形成されており、図示しないビスによってベース6に固定されている。従って、ベース6には、ビスが螺合するタップ穴43が形成されている。フロント長穴41とフロントガイド軸42は、座受け部材7の前部をベース6から外れることなく前後ガイドする外れ防止部を構成している。
【0048】
例えば
図5に示すように、座受け部材7の後部の左右2か所に、左右一対ずつの軸受片44を下向きに突設している一方、ベース6には、一対の軸受片44で挟まれた前後長手の支持リブ45を形成して、支持リブ45に前後長手のリアガイド穴46を形成しており、一対の軸受片44とリアガイド穴46とに、左右長手のリアガイド軸47が挿通されている。従って、リアガイド穴46とリアガイド軸47とにより、座受け部材7の後部を前後スライドさせる後部ガイド手段が構成されている。
【0049】
リアガイド穴46には、耐磨耗性に優れた樹脂より成るブッシュ48が装着されている。また、軸受片44は開口部39の箇所に形成されている。このため、リアガイド軸47の挿通作業を容易に行える。
【0050】
例えば
図9に示すように、リアガイド軸47は中空構造になっており、内部に心棒49が挿通されている。但し、リアガイド軸47の全体を中実構造に形成してもよい。また、
図9に示すように、リアガイド軸47には上下の平坦面47aを形成しており、平坦面47aがブッシュ48に面接触するように設定している(なお、
図7では平坦面47aが前後に向いているが、実際には、平坦面47aは上下を向いている。)。従って、リアガイド軸47とブッシュ48との摩擦抵抗を小さくして、リアガイド軸47の移動をスムース化できる。
【0051】
更に、
図7や
図9に示すように、ベース6の前部に、上向きに開口した左右一対のコロ受け凹所50が形成されて、コロ受け凹所50に、軸心を左右長手としたコロ51が転動自在に配置されており、左右のコロ51によって座受け部材7が支持されている。座受け部材7の下面に形成した凹所に、コロ51に上から当接する金属製の受け板52が装着されている。従って、受け板52によって前部支持面が形成されている。
【0052】
図9に明示するように、本実施形態では、リアガイド穴46(及びブッシュ48)と受け板52とは、手前に向けて高くなるように、水平面に対して若干の角度θで傾斜している。従って、座2及び座受け部材7は、僅かながら上昇しつつ前進する。傾斜角度θは、約3°に設定している。
【0053】
図7,8に示すように、ベース6のうち前寄りの部位に、座受け部材7の前進動に対して弾性的な抵抗を付与するスライド用弾性体の一例として、前後長手のばね(圧縮コイルばね)53が配置されている。ばね53はベース6に形成されたブラケット溝54に配置されており、
図8のとおり、前端は、ブラケット溝54の前壁面55で支持されて、後端は、座受け部材7に設けたリアブラケット56で支持されている。
【0054】
リアブラケット56は、開口部79を横切るように配置されている。前壁面55とリアブラケット56には、ばね53をずれ不能に保持する突起55a,56aが形成されている。ばね53は、予め圧縮された状態で配置されている。また、ばね53の前部は、ベース6に固定されたストッパー54aによって上向き移動不能に保持されている。
【0055】
本実施形態では、ガイド穴40及び受け板52が手前に向けて高くなるように傾斜していることにより、着座者の荷重によって座2が戻されるように作用する。このため、ばね53は弾性復元力を過剰に強くする必要はない。従って、体重が軽い人でも、身体を起こすと座2は容易に後退動する。
【0056】
また、リアガイド穴46を設けている支持リブ45及びブッシュ48が左右の軸受偏4によって挟まれているため、座受け体7の後部は左右動不能に保持されている。他方、座受け体7の前部は、ガイド体42がフロント長穴41に嵌まることにより、左右動不能で上向き外れ不能に保持されている。従って、座受け部材7は、左右方向に振れない状態で前後スライドし得る。従って、安定性に優れている。
【0057】
また、リアガイド軸47には平坦面47aが形成されていて、リアガイド軸47とブッシュ48とは広い面積で接触しているため、摩擦抵抗が低下している一方、コロ51と受け板52との間の摩擦も著しく小さいため、座受け体7の前後スライドに対する摩擦抵抗は極めて小さい。これにより、座2を軽快に前進させて安楽性向上に貢献できる。
【0058】
(3).脚装置の形態が異なる椅子
上記の椅子は、脚装置1にガスシリンダよりなる脚柱5を使用した回転椅子であったが、
図10,11に示す椅子では、脚装置60は、4本の棒足61を有している。従って、
図10,11の椅子は非回転式になっている。
【0059】
各棒足61の上端にはベース6の軸心方向に向かう上水平状部61aが曲げ形成されており、上水平状部61aは、上向きに開口したサポート体62に横から貫通していると共に、サポート体62に溶接によって固定されている。従って、サポート体62は上水平状部61aが貫通する筒部を備えている。そして、サポート体62の中央部に、ベース6の取り付け穴24に下方から嵌着するテーパ状のボス体63を溶接によって固着している。従って、ガスシリンダ方式の脚装置1を備えた椅子と棒足式の脚装置60を備えた椅子とで、同一のベース6や座受け部材7が共用される。
【0060】
このように、4本足方式の脚装置60に、ガスシリンダよりなる脚柱5をそのまま使用できるため、構造が相違する複数種類の椅子を用意するにおいて、全体として部材や組み立てのコストを抑制できる。特に、脚装置1,60の形態が相違する複数種類の椅子をノックダウン方式によって組み立てる場合、ビス止め等の作業を要することなく各形態の脚装置をベースに固定できるため、特に好適である。
【0061】
脚装置60が棒足式である場合は、座2を高さ調節するための摘み19は不要であるので、左右のサイド支持体13とも、摘み19を設けるための加工等は不要である。但し、摘み19を取り付けたままであってもよい(摘み19を回転不能に固定してもよい。)。ボス体63は中空に形成しているが、中実の構造であってもよい。或いは、中空構造として、内部に補強リブを設けることも可能である。
【0062】
棒足61の上水平状部61aは、サポート体62の外周下部を貫通してサポート体62の内部に入り込んでいる。このため、強固に固定されている。また、サポート体62には、補強のためフランジ62aが形成されており、フランジ62aはベース6の下面に近接している。棒足61には木製等の化粧筒64を装着しているが、剥きだしの状態でもよい。
【0063】
図10(C)に示すように、各棒足61における上水平状部61aの略前半部の上面は平坦面になっており、平坦面のうちサポート体62の外側の部位に、樹脂製の位置決め部材65が配置されている。位置決め部材65は下向き開口コ字形になっており、上水平状部61aに、跨がるような姿勢で嵌まっている。
【0064】
そして、上水平状部61aの平坦面に、皿頭式等のビス66が配置されており、位置決め部材65は、ビス66によってベース6の下面に固定されている。従って、ベース6には、ビス66がねじ込まれる4つのタップ穴69が空いている。また、位置決め部材65に回り止めピン68を上向きに突設している一方、ベース6には、回り止めピン68が嵌入する回り止め穴70aを空けている。
【0065】
各位置決め部材65は予めベース6の下面にビス66で固定されており、ボス体63を取り付け穴24に嵌め入れつつ、各位置決め部材65を各棒足61の上水平状部61aに嵌め込むと、ベース6は所定の姿勢で脚装置60に固定される。すなわち、着座者の左右両側に2本ずつの棒足61が配置された状態になる。従って、ベース6の取り付けを簡単かつ正確に行える。
【0066】
この場合、サポート体62の上面とベース6との間には若干の隙間が存在するため、ボス体63を取り付け穴24にしっかりと嵌め込んで、テーパを利用した取り付けを確実化できる。
【0067】
他方、位置決め部材65はボス体63から遠くに離れていることにより、ベース6はボス体63と位置決め部材65との間で弾性変形し得るため、ボス体62と取り付け穴24との嵌着状態を保持しつつ、位置決め部材65でベース6を支持できる。従って、脚装置60と座2及び背もたれ3との相対姿勢を正確に保持しつつ、取り付け強度と支持安定とを向上できる(なお、位置決め部材65と上水平状部61aとの間に隙間が空いていてもよい。)。
【0068】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、非回転式の脚装置としては、4本足方式には限らず、側面視U形又は四角形(台形)の左右フレームを有するタイプなど、様々な形態を採用できる。また、実施形態の椅子は座が前後スライドする方式であったが、本願発明は、座が前後スライドしないタイプの椅子にも適用できる。背もたれがロッキングしないタイプにも適用できる。
【0069】
位置決め手段について述べると、実施形態では位置決め部材をベース体に取り付けたが、例えば、脚装置に設けた上向きの位置決めピンと、ベースに形成した位置決め穴との組み合わせなど、様々な態様を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 ガスシリンダ方式の脚装置
2 座
3 背もたれ
5 脚柱(ガスシリンダ)
6 ベース
7 座受け部材
8 上部支持フレーム
13 サイド支持体
24 取り付け穴
25 筒部
60 4本足方式の脚装置
61 棒足
61a 上水平状部
62 サポート体
62a フランジ
63 ボス体
65 位置決め部材