(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】包装体用フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20231109BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2019176998
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】303001483
【氏名又は名称】スタープラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 誠人
(72)【発明者】
【氏名】西田 龍祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅也
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】平原 正弘
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162072(JP,A)
【文献】特開平03-111264(JP,A)
【文献】特開2006-103761(JP,A)
【文献】特開2014-221666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気バリア材と、前記水蒸気バリア材の一方の面に位置するシーラント材とを備え、
前記シーラント材は、ゼオライトを含有する吸湿層と、シール層とを備え、かつ、前記
水蒸気バリア材側から、前記吸湿層と前記シール層とがこの順に位置し、
前記ゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3で表されるモル比が
2/98以上50/50以下であり、
前記シーラント材の含水率が1質量%以上である、包装体用フィルム。
【請求項2】
前記シーラント材の含水率が30質量%以下である、請求項1に記載の包装体用フィル
ム。
【請求項3】
前記シーラント材が、ラミネート層をさらに備え、かつ、前記水蒸気バリア材側から、
前記ラミネート層と前記吸湿層と前記シール層とがこの順に位置している、請求項1又は
2に記載の包装体用フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の包装体用フィルムが製袋された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体用フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容された食品等を包装状態のまま電子レンジで加熱調理するための電子レンジ用包装体が広く利用されている。例えば、特許文献1には、内容物が収容され、電子レンジによる加熱時に上昇する内圧を外部に逃がす圧力排出部が形成された電子レンジ用包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子レンジ用包装体に、油を含む食品(揚げ物等)を封入して加熱調理する場合、油に電子レンジのマイクロ波が集中し、過加熱により食品が硬化したり、食品に温度のムラができやすくなったりする。また、揚げ物等が塩分を多く含む場合、食品の表面のみが加熱され、表面が焦げてしまう場合(以上、「食品の品質の低下」ともいう。)がある。
加えて、電子レンジ用包装体の内部に水分が存在すると、加熱の際に離脱した水分が揚げ物等に浸透し、食品本来の食感を低下させてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、食品の品質の低下を抑制し、かつ、食品本来の食感を維持できる包装体用フィルム及び包装体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鋭意検討を重ねた結果、本発明者等は、以下の構成を備える包装体用フィルムが、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の包装体用フィルムは、以下の構成を有する。
[1]水蒸気バリア材と、前記水蒸気バリア材の一方の面に位置するシーラント材とを備え、前記シーラント材は、ゼオライトを含有する吸湿層と、シール層とを備え、かつ、前記水蒸気バリア材側から、前記吸湿層と前記シール層とがこの順に位置し、前記ゼオライトは、SiO2/Al2O3で表されるモル比が70/30以下であり、前記シーラント材の含水率が1質量%以上である、包装体用フィルム。
[2]前記シーラント材の含水率が30質量%以下である、[1]に記載の包装体用フィルム。
[3]前記シーラント材が、ラミネート層をさらに備え、かつ、前記水蒸気バリア材側から、前記ラミネート層と前記吸湿層と前記シール層とがこの順に位置している、[1]又は[2]に記載の包装体用フィルム。
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載の包装体用フィルムが製袋された包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包装体用フィルムによれば、食品の品質の低下を抑制し、かつ、食品本来の食感を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る包装体用フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る包装体用フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の包装体用フィルムは、水蒸気バリア材と、水蒸気バリア材の一方の面に位置するシーラント材とを備える。
以下、本発明の包装体用フィルムについて、実施形態を挙げて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る包装体用フィルムについて、図面を参照して説明する。
図1の包装体用フィルム1は、基材10と、水蒸気バリア材20と、シーラント材30とがこの順で積層されたものである。すなわち、包装体用フィルム1は、水蒸気バリア材20と、水蒸気バリア材20の一方の面に位置するシーラント材30とを備える。
包装体用フィルム1の厚さT
1は、特に限定されないが、例えば、35~250μmが好ましく、40~200μmがより好ましく、50~150μmがさらに好ましい。厚さT
1が上記下限値以上であると、包装体用フィルム1の強度が高められやすくなる。厚さT
1が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1の柔軟性が高められ、取り扱いが容易になる。
【0011】
≪基材≫
基材10としては、樹脂製フィルム、紙、及びこれらの積層体等が挙げられる。
樹脂製フィルムとしては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリオレフィン、二軸延伸ナイロン(ONY)等のポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等、及びこれらの積層体が挙げられる。中でも、PET、ポリプロピレン(PP)、PA、PVCが好ましく、二軸延伸PET、OPP、PVCがより好ましい。
積層体としては、上記樹脂製フィルム同士の積層体が挙げられる。
この基材10は、その表面や層間に印刷が施されていてもよい。
【0012】
基材10の厚さT10は、材質や構成等を勘案して決定され、例えば、5~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。基材10の厚さT10が上記下限値以上であると、包装体用フィルム1の強度が高められやすくなる。基材10の厚さT10が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1の柔軟性が高められ、取り扱いが容易になる。
【0013】
≪水蒸気バリア材≫
水蒸気バリア材20は、水蒸気バリア性を有する。水蒸気バリア材20としては、基材10にシリカ、アルミナ等が蒸着された無機蒸着層、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、PA、ポリアクリロニトリル(PAN)、EVOH等がPETに塗布されたアクリルコートPET等が挙げられる。
水蒸気バリア材20としては、無機蒸着層が好ましく、シリカ蒸着層がより好ましい。
【0014】
水蒸気バリア材20の水蒸気透過度は、例えば、3g/(m2・day)以下が好ましく、1g/(m2・day)以下がより好ましい。水蒸気バリア材20の水蒸気透過度が上記上限値以下であると、包装体の外部からの水分の侵入を充分に抑制でき、食品本来の食感を維持しやすくなる。
なお、本明細書における水蒸気透過度は、JIS K7129:2008の感湿センサ法により求められる値である。
水蒸気バリア材20の水蒸気透過度は、基材10、水蒸気バリア材20、後述する吸湿層34の材質や厚さ、及びこれらの組合せにより調整できる。
【0015】
水蒸気バリア材20の厚さは、材質や構成等を勘案して決定される。水蒸気バリア材20の厚さT20は、例えば、10~30μmが好ましく、12~15μmがより好ましい。水蒸気バリア材20の厚さT20が上記下限値以上であると、水蒸気バリア性の低下を抑制でき、食品本来の食感を維持しやすくなる。水蒸気バリア材20の厚さT20が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1の柔軟性が高められ、取り扱いが容易になる。
【0016】
≪シーラント材≫
本実施形態において、シーラント材30は、ラミネート層32を備え、かつ、水蒸気バリア材20側から、ラミネート層32と、吸湿層34と、シール層36とがこの順に位置している。すなわち、シーラント材30は、水蒸気バリア材20側から、ラミネート層32と、吸湿層34と、シール層36とがこの順に配された積層体である。
【0017】
シーラント材30の含水率は、シーラント材30の総質量に対して1質量%以上であり、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。シーラント材30の含水率が上記下限値以上であると、吸湿層34に含まれるゼオライトが有する結晶水が包装体の内部に適度に放出され、包装体に収容された食品の表面が焦げることを抑制しやすい。このため、食品の品質の低下を抑制しやすい。シーラント材30の含水率が上記上限値以下であると、包装体の内部に存在する水分の量を適量に維持しやすい。このため、食品本来の食感を維持しやすい。
シーラント材30の含水率は、吸湿層34に含まれるゼオライトの含有量と組成(結晶水の量)及びカールフィッシャー水分計による測定値から求められる。
より具体的には、吸湿層34に含まれるゼオライトの含有量(質量)とゼオライトの組成の結晶水比とから結晶水の含有量を算出し、カールフィッシャー水分計にてシーラント材30の含水量を測定し、吸湿水分量を算出することにより、シーラント材30の含水率が求められる。
【0018】
シーラント材30の含水率は、吸湿層34に含まれるゼオライトの種類、含有量、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0019】
<ラミネート層>
ラミネート層32は、主にシーラント材30と水蒸気バリア材20との接着性を高める役割を有する。
ラミネート層32を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状LDPE(LLDPE)、MDPE、HDPE、PP等のポリオレフィン、EVOH、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、アイオノマー等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ラミネート層32の厚さT32は、5~50μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。ラミネート層32の厚さT32が上記下限値以上であると、水蒸気バリア材20に対するシーラント材30の接着強度を維持しやすい。ラミネート層32の厚さT32が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1を薄くでき、包装体用フィルム1の柔軟性が高められ、取り扱いが容易になる。
【0021】
<吸湿層>
吸湿層34は、ゼオライトを含有する。吸湿層34としては、ゼオライトを含有する樹脂フィルムが挙げられる。
吸湿層34を構成する樹脂としては、ラミネート層32を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。吸湿層34を構成する樹脂は、ラミネート層32を構成する樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
【0022】
吸湿層34に含まれるゼオライトは、一般に、下記式(1)で表される。
(MI,MII
1/2)m(AlmSinO2(m+n))・xH2O・・・(1)
式(1)中、MIは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、MIIは、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、m、n、xは、正の数を表し、n≧mである。
吸湿層34は、ゼオライトを含有することで、包装体の内部でゼオライト自身が有する結晶水を適度に放出し、包装体に収容された食品の表面が焦げることを抑制できる。このため、食品の品質の低下を抑制しやすい。加えて、吸湿層34は、ゼオライトを含有することで、包装体の内部に存在する過剰な水分を吸着し、食品本来の食感を維持しやすい。
【0023】
ゼオライトは、SiO2/Al2O3で表されるモル比(以下、SiO2/Al2O3比ともいう。)が70/30以下である。ゼオライトのSiO2/Al2O3比は、50/50以下が好ましく、30/70以下がより好ましい。ゼオライトのSiO2/Al2O3比が上記上限値以下であると、ゼオライトの親水性が高くなり、包装体の内部に存在する過剰な水分を吸着しやすい。
ゼオライトのSiO2/Al2O3比の下限値は特に限定されず、例えば、2/98以上が好ましい。
【0024】
ゼオライト中の結晶水の量(結晶水量、上記式(1)のx)は、ゼオライト1モル当たり30モル以下が好ましく、20モル以下がより好ましい。ゼオライト中の結晶水量が上記上限値以下であると、包装体の内部に存在する過剰な水分をより吸着しやすい。ゼオライト中の結晶水量の下限値は特に限定されず、例えば、ゼオライト1モル当たり0.1モル以上が好ましい。
ゼオライトの市販品としては、例えば、疎水性モレキュラーシーブ(商品名、ユニオン昭和株式会社製)、ハイシリカゼオライト(商品名、東ソー株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
ゼオライトの平均粒子径は、5~24μmが好ましく、5~20μmがより好ましく、5~15μmがさらに好ましい。ゼオライトの平均粒子径が上記数値範囲内であると、ゼオライトの二次凝集を抑制しやすく、吸湿層34が二次凝集した粒子により破損することを抑制しやすい。
【0026】
吸湿層34中、ゼオライトの含有量は、10~70質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。ゼオライトの含有量が上記下限値以上であると、ゼオライトが有する結晶水が包装体の内部に適度に放出され、包装体に収容された食品の表面が焦げることを抑制しやすい。このため、食品の品質の低下を抑制しやすい。加えて、ゼオライトの含有量が上記下限値以上であると、包装体の内部に存在する過剰な水分をより吸着しやすくなり、食品本来の食感を維持しやすくなる。ゼオライトの含有量が上記上限値以下であると、吸湿層34を欠損なく形成しやすい。
【0027】
吸湿層34の厚さT34は、10μm以上が好ましく、15~100μmがより好ましく、20~80μmがさらに好ましく、30~70μmが特に好ましい。吸湿層34の厚さT34が上記下限値以上であると、ゼオライトが有する結晶水が包装体の内部に適度に放出され、包装体に収容された食品の表面が焦げることを抑制しやすい。このため、食品の品質の低下を抑制しやすい。加えて、吸湿層34の厚さT34が上記下限値以上であると、包装体の内部に存在する過剰な水分をより吸着しやすくなり、食品本来の食感を維持しやすくなる。吸湿層34の厚さT34が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1を薄くでき、包装体用フィルム1の柔軟性が高められ、取り扱いが容易になる。
【0028】
<シール層>
シール層36は、包装体用フィルム1のシール性を高める。
シール層36としては、ラミネート層32と同様のものが挙げられる。この中でも、LDPE、LLDPE、MDPE、HDPEが好ましく、LDPE、LLDPEがより好ましい。
シール層36とラミネート層32とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
また、シール層36は、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。
【0029】
シール層36の厚さT36は、材質等を勘案して決定され、例えば、5~100μmが好ましく、5~90μmがより好ましく、10~80μmがさらに好ましく、10~50μmが特に好ましい。シール層36の厚さT36が上記下限値以上であると、包装体用フィルム1のシール性をより高められる。シール層36の厚さT36が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1をシールする際の熱量を抑制でき、包装体の生産性を高められる。加えて、シール層36の厚さT36が上記上限値以下であると、包装体を加熱して調理する際に、吸湿層34のゼオライトが活性化されやすくなり、かつ、ゼオライトが活性化された状態が保持されやすくなる。
【0030】
≪包装体用フィルムの製造方法≫
包装体用フィルム1の製造方法は、上記水蒸気バリア材とシーラント材から積層フィルムを製造する工程(積層フィルム製造工程)と、上記積層フィルムに加熱処理を施す工程(加熱処理工程)とを備える。
【0031】
<積層フィルム製造工程>
積層フィルム製造工程では積層フィルムが製造される。積層フィルムの製造方法としては、従来公知の製造方法が挙げられ、例えば、以下の方法が挙げられる。
本実施形態の積層フィルムの製造方法は、基材10を得る処理(基材製造処理)と、シーラント材30を得る処理(シーラント材製造処理)と、基材10と水蒸気バリア材20とシーラント材30とを積層する処理(積層処理)とを備える。
【0032】
基材製造処理で基材10を得る方法は、基材10の材質や構成等に応じて、インフレーション法、Tダイ法、共押出法等、従来公知の方法から選択される。
【0033】
シーラント材製造処理でシーラント材30を得る方法は、シーラント材30の材質や構成等に応じて、従来公知の方法から選択される。
シーラント材30を得る方法としては、例えば、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を用いた共押出法によって、ラミネート層32と吸湿層34とシール層36との積層体であるシーラント材30を得る方法が挙げられる。
【0034】
積層処理で基材10と水蒸気バリア材20とシーラント材30とを積層する方法は、例えば、ドライラミネート法等の従来公知の方法から選択される。
ドライラミネート法では、例えば、積層しようとする一方の材に接着剤を塗布し、乾燥後にこれを他の材に圧着して積層フィルムが得られる。得られた積層フィルムは、例えば、ロール状に巻き取られる。
【0035】
<加熱処理工程>
上記のようにして積層フィルムを製造した後、積層フィルムに加熱処理を施す加熱処理工程を行う。
積層フィルムを加熱処理することで、吸湿層34中のゼオライトが活性化される。ゼオライトが活性化されることで、水分の吸着性が高められる。加えて、ゼオライトが活性化されることで、ゼオライト自身が有する結晶水を放出しやすくなる。
【0036】
本実施形態における吸湿層34は、ラミネート層32とシール層36との間に設けられる。
すなわち、吸湿層34が、直接、外気(水蒸気)と接触しない構成とされている。これにより、加熱処理が施された際に、吸湿層34のゼオライトが充分に活性化される。また、ゼオライトが活性化された状態が保持されやすくなる。
【0037】
加熱処理の温度は、30~90℃が好ましく、35~50℃がより好ましい。
加熱処理の温度が上記下限値以上であると、ゼオライトが充分に活性化され、水分の吸着性が充分に得られやすい。このため、食品本来の食感を維持しやすい。加熱処理の温度が上記上限値以下であると、積層体を構成するフィルムが熱により損傷を受けることを抑制しやすい。
【0038】
加熱処理の時間は、5時間以上が好ましく、5~96時間がより好ましく、12~48時間がさらに好ましい。加熱処理の時間が上記下限値以上であると、ゼオライトが充分に活性化され、水分の吸着性が充分に得られやすい。このため、食品本来の食感を維持しやすい。加熱処理の時間が上記上限値以下であると、包装体用フィルム1の生産性を向上しやすい。
積層フィルムの加熱処理は、従来公知の恒温室等で行うことができる。
なお、この加熱処理が施された積層フィルムと、そうでない積層フィルムとは、例えば、両者の接着剤の硬化状態の分析を行うこと等で判別できる。
【0039】
≪包装体≫
本実施形態の包装体は、本実施形態の包装体用フィルム1が製袋されたものである。包装体としては、例えば、包装体用フィルム1のシール層36同士をヒートシールして製袋された袋が挙げられる。
包装体の形態としては、例えば、合掌貼り袋、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋、スタンド袋、これらのチャック付き袋等が挙げられる。
また、例えば、包装体としては、開口部を有する容器本体と、包装体用フィルム1からなる蓋体とを備え、容器本体の開口部周縁にシール層36を当接し、上記包装体用フィルム1を容器本体にヒートシールした容器が挙げられる。この場合の容器本体の材質としては、特に限定されず、例えば、PET、紙等が挙げられる。
【0040】
以上説明したとおり、本実施形態の包装体用フィルム1によれば、ゼオライトが有する結晶水が包装体の内部に適度に放出され、包装体に収容された食品の表面が焦げることを抑制しやすい。このため、食品の品質の低下を抑制しやすい。加えて、包装体用フィルム1によれば、包装体の内部に存在する過剰な水分を吸着し、食品本来の食感を維持しやすい。
また、包装体用フィルム1から製袋されてなる包装体によれば、シリカゲルのような吸湿剤と異なり、水分を一気に放出することはなく、徐々に適度な量の水分を供給するメカニズムであり、電子レンジにおける加熱条件のバラつき(収容される食品の種類や大きさ、形状等によるバラつき)を制御可能である。すなわち、包装体用フィルム1から製袋されてなる包装体によれば、収容された食品が過加熱になることを抑制できる。
さらに、包装体用フィルム1から製袋されてなる包装体によれば、加熱により離脱した水分が食品に浸透することにより食品本来の食感を低下することを抑制できる。
加えて、包装体用フィルム1から製袋されてなる包装体によれば、加熱により離脱した水分が包装体の内側に付着し、包装体の外観を低下することを抑制できる。
【0041】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る包装体用フィルムについて、図面を参照して説明する。
図2の包装体用フィルム2は、水蒸気バリア材22と、シーラント材30とがこの順で積層されたものである。すなわち、包装体用フィルム2は、水蒸気バリア材22と、水蒸気バリア材22の一方の面に位置するシーラント材30とを備える。
本実施形態において、第一実施形態と異なる点は、水蒸気バリア材22が基材を兼ねている点である。
【0042】
水蒸気バリア材22は、第一実施形態における基材10と水蒸気バリア材20とを兼ねる材質である。
水蒸気バリア材22としては、PET、OPP、CPP、HDPE、MDPE等、第一実施形態における基材10と同様の樹脂製フィルムに、シリカやアルミナ等が蒸着された無機蒸着フィルムが挙げられる。無機蒸着フィルムの中でもシリカ蒸着フィルムが好ましい。
水蒸気バリア材22として無機蒸着フィルムを用いることで、水蒸気の透過を抑制することができる。
このほか、水蒸気バリア材22としては、環状オレフィンコポリマー(COC)を用いることができる。水蒸気バリア材22としてCOCを用いることで、シリカやアルミナ等を蒸着する手間を省くことができる。
COCとしては、例えば、ノルボルネンとエチレンとを共重合させたエチレン・シクロオレフィン・コポリマー等が挙げられる。
【0043】
水蒸気バリア材22の厚さT22は、第一実施形態における基材10の厚さT10と同様である。
包装体用フィルム2の製造方法としては、従来公知の製造方法を採用できる。例えば、水蒸気バリア材22として無機蒸着フィルムを得、水蒸気バリア材22の蒸着面とラミネート層32とが当接するように、水蒸気バリア材22とシーラント材30とを重ね、これを押圧しつつ加熱する方法が挙げられる。
【0044】
≪包装体≫
本実施形態の包装体は、包装体用フィルム2が製袋されたものである。包装体としては、例えば、包装体用フィルム2のシール層36同士をヒートシールして製袋された袋が挙げられる。包装体の形態としては、例えば、合掌貼り袋、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋、スタンド袋等が挙げられる。
【0045】
本実施形態によれば、包装体用フィルムを薄肉化できるため、柔軟性のさらなる向上を図れる。
【0046】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、シーラント材がラミネート層を備えるが、本発明はこれに限定されず、ラミネート層を省略し、吸湿層がラミネート層を兼ねてもよい。ただし、水蒸気バリア材とシーラント材との接着性をより高める観点から、包装体用フィルムはラミネート層を備えることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した材料は下記のとおりである。
【0048】
[使用材料]
≪基材≫
・OPP:二軸延伸ポリプロピレン、パイレンOT(商品名)、東洋紡株式会社製。
・PET:ルミラー(商品名)、東レフィルム加工株式会社製。
【0049】
≪水蒸気バリア材≫
・シリカ蒸着PET:テックバリア(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製。
・COC:環状オレフィンコポリマー、エチレン・シクロオレフィン・コポリマー(化合物名)、アペル(登録商標)、三井化学株式会社製。
【0050】
≪シーラント材≫
・PE:LLDPE、リックス(登録商標)、東洋紡株式会社製。
【0051】
≪ゼオライト≫
・ゼオライト:ゼオライト、平均粒子径=7μm、SiO2/Al2O3比=10/90~90/10、結晶水量=216モル。
【0052】
≪シリカゲル≫
・A型シリカゲル:トヨタシリカゲル(商品名)、豊田化工株式会社製。
【0053】
[実施例1~8、比較例1~5]
表1に示す基材、水蒸気バリア材及びシーラント材を積層して実施例1~8、比較例1~5の構成に従った包装体用フィルムを製造した。シーラント材は、各層の構成原料が共押出機により成形されたものである。また、ラミネート層が水蒸気バリア材と当接するように基材と水蒸気バリア材とシーラント材とを重ねてドライラミネートした。
なお、実施例3は、水蒸気バリア材が基材を兼ねる構成であり、水蒸気バリア材のCOCが最外層となる配置である。
また、表中「-」は、その材料が含まれていないことを示す。
【0054】
[評価方法]
各例で得られた包装体用フィルムを用い、130mm×170mmの平袋を作製した。
次いで、フライドポテト(塩分2質量%)60gを上記の平袋に入れ密封した後、電子レンジ(600W、RE-S120、シャープ株式会社製)で3分間加熱して調理した。
【0055】
<食品の品質の評価>
加熱調理後の平袋を開封し、フライドポテトの表面の焦げの発生の有無を目視で確認し、パネラー5名が下記判断基準に従って採点した。パネラー5名の採点結果の平均値を算出し、下記評価基準に従って、食品の品質を評価した。結果を表1に示す。
《判断基準》
0点:焦げの発生が認められない。
1点:焦げの発生がわずかに認められる。
2点:明らかに焦げの発生が認められる。
《評価基準》
○:平均点が1点未満。
△:平均点が1点以上1.5点未満。
×:平均点が1.5点以上。
【0056】
<食品の食感の評価>
加熱調理後の平袋を開封し、フライドポテトを喫食し、パネラー5名が下記判断基準に従って採点した。パネラー5名の採点結果の平均値を算出し、下記評価基準に従って、食品の食感を評価した。結果を表1に示す。
《判断基準》
0点:食品本来の食感が維持されている。
1点:食品に水分の吸湿がわずかに感じられる。
2点:明らかに食品に水分の吸湿が感じられる。
《評価基準》
○:平均点が1点未満。
△:平均点が1点以上1.5点未満。
×:平均点が1.5点以上。
【0057】
<包装状態の評価>
加熱調理後の平袋を開封する際の内層(シール層)同士の剥がしやすさ、及び加熱調理後の平袋の外観を確認し、パネラー5名が下記判断基準に従って採点した。パネラー5名の採点結果の平均値を算出し、下記評価基準に従って、包装状態を評価した。結果を表1に示す。
《判断基準》
0点:内層同士を剥がしやすく、かつ、包装体の内部に水滴が付着していない。
1点:内層同士を剥がしやすいが、包装体の内部に水滴が付着している。
2点:内層同士を剥がしにくく、かつ、包装体の内部に水滴が付着している。
《評価基準》
○:平均点が1点未満。
△:平均点が1点以上1.5点未満。
×:平均点が1.5点以上。
【0058】
<総合評価>
上記食品の品質の評価、食品の食感の評価、及び包装状態の評価の評価結果に基づき、各例の包装体用フィルムを下記評価基準に従って総合評価した。総合評価が「○」又は「△」のものを合格とした。
《評価基準》
○:全ての評価結果が「○」。
△:評価結果に「×」がなく、かつ、評価結果に「△」がある。
×:評価結果に「×」がある。
【0059】
【0060】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~8の包装体用フィルムを用いた包装体は、総合評価が「○」又は「△」で、食品の品質の低下を抑制し、かつ、食品本来の食感を維持できていることが確認できた。
一方、水蒸気バリア材を備えない包装体用フィルムを用いた比較例1は、外部からの水分の透過をバリアできず、食品の食感の評価及び包装状態の評価が「×」だった。シーラント材の含水率が本発明の範囲外である包装体用フィルムを用いた比較例2、5は、全ての評価結果が「×」だった。
ゼオライトの代わりにA型シリカゲルを含有する包装体用フィルムを用いた比較例3は、水分の遊離が短時間で進むため、フライドポテトへの水分の付着、浸透が起こり、食品の食感の評価及び包装状態の評価が「×」だった。
SiO2/Al2O3比が本発明の範囲外であり、かつ、シーラント材の含水率が本発明の範囲外である包装体用フィルムを用いた比較例4は、全ての評価結果が「×」だった。
【0061】
以上の結果から、本発明を適用することで、食品の品質の低下を抑制し、かつ、食品本来の食感を維持できることが確認できた。
【符号の説明】
【0062】
1、2 包装体用フィルム
10 基材
20、22 水蒸気バリア材
30 シーラント材
32 ラミネート層
34 吸湿層
36 シール層