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特許7382195吸収性物品用立体トップシート及び吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】吸収性物品用立体トップシート及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20231109BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20231109BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/15 141
A61F13/511 400
A61F13/512 210
A61F13/511 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019180864
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053246
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀憲
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-290290(JP,A)
【文献】特開2016-067749(JP,A)
【文献】特開2008-245959(JP,A)
【文献】特開2006-271650(JP,A)
【文献】特開2009-106464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
5/441
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品のトップシートとして使用される吸収性物品用立体トップシートであって、
その内部が中空である、互いに離隔した複数の第一の凸部を有する液透過性の不織布と、
前記不織布と重ね合わせたときに前記第一の凸部と対応する位置にあり、その内部が中空である複数の第二の凸部、及び、開孔径が500μm以上900μm以下の範囲にある複数の開孔を有し、前記不織布が上側になるように重ねられる前記開孔フィルムと、
前記開孔フィルムの下に貼合わされる液透過性のシートと、
前記第二の凸部と前記液透過性のシートとで囲まれた、前記第二の凸部の内部空間に収納された消臭剤と、
を備えることを特徴とする、吸収性物品用立体トップシート。
【請求項2】
前記第一及び第二の凸部の立体形状が、略半球状、略ドーム状、略円柱状、略角柱状、及び略四角錐台状よりなる群から選ばれた立体形状である、請求項1記載の吸収性物品用立体トップシート。
【請求項3】
前記第一の凸部の中空である内部空間が、前記第二の凸部を収納可能な寸法である、請求項1又は2記載の吸収性物品用立体トップシート。
【請求項4】
前記消臭剤が水不溶性である、請求項1~3のいずれか1項記載の吸収性物品用立体トップシート。
【請求項5】
前記消臭剤が、水不溶性無機化合物の粉末である、請求項1~4のいずれか1項記載の吸収性物品用立体トップシート。
【請求項6】
前記水不溶性無機化合物が酸化亜鉛である、請求項5記載の吸収性物品用立体トップシート。
【請求項7】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在する吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートが、請求項1~6のいずれか1項記載の吸収性物品用立体トップシートであることを特徴とする、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用立体トップシート及びそれを含む吸収性物品に関し、詳しくは消臭機能を持った吸収性物品用立体トップシート及びそれを含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽い尿失禁に悩む中高年者の増加と共に尿吸収パッドのような軽失禁製品の利用者が増えている。軽失禁製品に求められる品質として尿等の体液が漏れないことが一番ではあるが、臭いにより周りの人に軽失禁製品を使用していることが分からないようにすることも重要であり、そのため多くの消臭機能をもった製品が提案されている(特許文献1、2)。なお、従来から、軽失禁製品やそれ以外の紙おむつ製品等も含めて、吸収性物品と総称されている。
【0003】
吸収性物品への消臭機能の付与は、特許文献1、2に記載のように、体液を吸収及び保持する吸収体の内部に消臭材料を担持し、吸収された尿等の体液が存在する内部での臭気の発生を抑制、又は臭気の吸着、分解を考えたものが多い。
【0004】
一方で、内部で消臭しきれなかった臭気に対する消臭、又は排泄前に吸収性物品を着用することで蒸れて発生する汗臭に対する消臭を考えたとき、トップシートに消臭機能を付与することが望ましい。トップシートへの消臭機能の付与方法としては、特許文献3にあるように消臭剤としてのシクロデキストリンを20℃で液体又は半固体の溶剤に溶かして塗布する方法がとられる。該溶剤は消臭剤を吸収性物品に固着させるバインダーとして機能する。そして、消臭剤は、体液と接触したときに体液中の水分により臭気成分を吸着する機能を発揮する。したがって、尿等の体液に対してはある程度の消臭効果があるが、汗臭等の微量な水分により発生する臭気に対しては消臭効果が得られにくい。
【0005】
トップシートへの消臭機能の付与はこれまでもいろいろと提案されてはいるが、いずれも消臭剤を含む溶液の塗工であり、酸化亜鉛など無機粒子をトップシートに担持する方法はとられていない。理由としては、無機粒子を担持するためにはバインダーが必要であり、バインダーは吸収性物品の吸収性能に影響を及ぼすためである。したがって、吸収性能に影響しない量のバインダーでは十分な消臭機能を発揮する量の無機粒子を吸収性物品に担持することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-84870号公報
【文献】特開2007-143889号公報
【文献】特開2001-231816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた消臭機能を有する吸収性物品用立体トップシート及び吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(7)の吸収性物品用立体トップシート、及び下記(8)の吸収性物品を提供する。
(1)吸収性物品のトップシートとして使用される吸収性物品用立体トップシートであって、その内部が中空である、互いに離隔した複数の第一の凸部を有する液透過性の不織布と、前記不織布と重ね合わせたときに前記第一の凸部と対応する位置にあり、その内部が中空である複数の第二の凸部、及び、開孔径がミクロン単位である複数の開孔を有し、前記不織布が上側になるように重ねられる前記開孔フィルムと、前記開孔フィルムの下に貼合わされる液透過性のシートと、前記第二の凸部と前記液透過性のシートとで囲まれた、前記第二の凸部の内部空間に収納された消臭剤と、を備えることを特徴とする、吸収性物品用立体トップシート。
(2)前記第一及び第二の凸部の立体形状が、略半球状、略ドーム状、略円柱状、略角柱状、及び略四角錐台状よりなる群から選ばれた立体形状である、上記(1)の吸収性物品用立体トップシート。
(3)前記第一の凸部の中空である内部空間が、前記第二の凸部を収納可能な寸法である、上記(1)又は(2)の吸収性物品用立体トップシート。
(4)前記開孔フィルムの開孔径が500μm以上900μm以下の範囲にある、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品用立体トップシート。
(5)前記消臭剤が水不溶性である、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品用立体トップシート。
(6)前記消臭剤が、水不溶性無機化合物の粉末である、上記(1)~(5)のいずれかの吸収性物品用立体トップシート。
(7)前記水不溶性無機化合物が酸化亜鉛である、上記(6)の吸収性物品用立体トップシート。
(8)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に介在する吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記トップシートが、上記(1)~(7)のいずれかの吸収性物品用立体トップシートであることを特徴とする、吸収性物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた消臭機能を有する吸収性物品用立体トップシート、及びそれを含む吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態である吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1に示すX-X切断線における吸収性物品の模式断面図である。
図3】本発明の第二実施形態である吸収性物品用立体トップシートの製造装置を模式的に示す側面図である。
図4】本発明の第二実施形態である吸収性物品用立体トップシートの製造方法における第一工程を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の第二実施形態である吸収性物品用立体トップシートの製造方法における第二工程を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の第二実施形態である吸収性物品用立体トップシートの製造方法における第三工程を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の第二実施形態である吸収性物品用立体トップシートの製造方法における第四工程を模式的に示す断面図である。
図8】開孔フィルムの構成を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本実施形態の吸収性物品1について詳細に説明する。図1は、第1実施形態である吸収性物品1の構成を模式的に示す平面図である。図1は、吸収性物品1を吸収性物品用立体トップシート2側から見た平面図である。図2は、図1に示すX-X切断線における吸収性物品1の模式断面図である。図3は、本発明の第二実施形態である吸収性物品用立体トップシート2の製造装置を模式的に示す側面図である。図4図7は、それぞれ、吸収性物品用立体トップシート2の製造方法における第一工程~第四工程を模式的に示す断面図である。図8は、開孔フィルム11の構成を模式的に示す拡大断面図である。
【0012】
本明細書において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。着用とは、吸収性物品1を身体に装着した状態をいう。なお、吸収性物品1は、通常衣類の内部において身体に装着されるものであるが、吸収性物品1の少なくとも一部が外部に露出するように身体に装着してもよい。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1を着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後にわたる方向である。吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して直交する方向である。吸収性物品1の厚み方向とは、積層体としての吸収性物品1の各部材の積層方向である。肌側面とは、吸収性物品1の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側を臨む面であり、非肌側面とは、吸収性物品1の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の衣服を臨む面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0013】
[吸収性物品]
図1及び図2に示すように、本実施形態の吸収性物品1は、着用時に肌側に位置する液透過性の吸収性物品用立体トップシート2(以下単に「トップシート2」ともいう)と、着用時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート4と、トップシート2とバックシート4との間に介在するように設けられる収体3と、吸収性物品1の長手方向に延びるように設けられかつバックシート4の肌側表面の幅方向両端近傍に固定された一対の立体ギャザー5と、を備えている。
【0014】
本実施形態によれば、尿等の体液の吸収の前後を問わず優れた消臭機能を発揮し、特に、体液に起因する臭いだけでなく、吸収性物品1の着用による蒸れ等に基づく汗等に起因する臭いをも十分に消臭できることから、各種臭いから吸収性物品1の着用を周囲に覚られることなく、周囲を気にすることなく着用できる、吸収性物品1が提供される。
【0015】
吸収性物品1としては、ベビー用又は成人用を問わず、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とを組み合わせて用いることもできる。吸収性物品1の、長手方向及び幅方向の寸法は特に限定されないが、それぞれ例えば100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記の範囲に調整することにより、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等に適した吸収性物品1を得ることができる。
以下、吸収性物品1の各構成部材について、さらに詳しく説明する。
【0016】
(トップシート)
トップシート2は、本実施形態では吸収体3の肌側表面の全面を覆うように設けられているが、これに限定されず、例えば、吸収体3の全体が液透過性シートや親水性シート等で覆われている場合は、該液透過性シートや親水性シートの肌側表面の一部が露出するように設けてもよい。
【0017】
トップシート2は、図2に示すように、いわば立体トップシートとも言うべき部材であり、その内部が中空である、互いに離隔した複数の第一の凸部13を有する液透過性の不織布10と、不織布10と重ね合わせたときに第一の凸部13と対応する位置にあり、その内部が中空である複数の第二の凸部14、及び、開孔径がミクロン単位である複数の開孔26を有し(図8)、不織布10が上側になるように重ねられる開孔フィルム11と、開孔フィルム11の下に貼合わされる液透過性のシート12と、第二の凸部14と液透過性のシート12とで囲まれた、第二の凸部14の内部空間15に収納又は封入された消臭剤16と、を備えている。
【0018】
液透過性の不織布10としては、体液が吸収体3へと移動するような液透過性を備えた不織布を特に限定なく使用でき、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布等が挙げられる。肌への刺激を低減させるため、トップシート2には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0019】
不織布10は、吸収性物品1を着用した場合に、肌側に向けて突出する複数の第一の凸部13を有する。複数の第一の凸部13は、互いに離隔するように設けられ、その内部は中空である。第一の凸部13の中空である内部空間は、第二の凸部14を収納可能な寸法であることが好ましい。これにより、トップシート2が不必要に嵩張らないことから、吸収性物品1の着用感やフィット感 が向上し、さらに吸収性物品1の着用を周囲に覚られない秘匿性も保たれる。
【0020】
不織布10の肌側表面における第一の凸部13の配列は、本実施形態では水玉模様(ポルカドット)状であるが、これに限定されず、例えば、格子状、直線状(1本又は複数の直線)、斜線状(1本又は複数の斜線、トップシート2の長手方向に対して角度を有して延びる直線)、同心円状、同心矩形状、不規則配列等が挙げられる。また、第一の凸部13の形状は、本実施形態では略半球状であるが、第二の凸部14をその中空の内部空間に収納可能な形状であれば特に限定されず、例えば、略ドーム状、略円柱状、略円錐台状、略角柱状、略多角錐台状等が挙げられる。なお、不織布10が可撓性を有することから、第一の凸部13の立体形状が吸収性物品1の着用時に変形することがあり、また、第一の凸部13は吸収性物品1の肌触りを損なうものではない。
【0021】
第一の凸部13の寸法は特に限定されないが、トップシート2ひいては吸収性物品1の強度、吸収性物品1の肌触り等の観点から、径寸法が3mm以上10mm以下であることが好ましく、高さ寸法が2mm以上5mm以下であることが好ましい。また、第一の凸部13のピッチ(ここでは一の第一の凸部13とそれに最も近い位置で隣り合う他の第一の凸部13との最短距離)も特に限定されないが、3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0022】
開孔フィルム11は、第二の凸部14を形成する前の拡大断面図である図8に示すように、複数のリブ25(リブ25は第二の凸部14ではない)と、複数の開孔26とを有している。すなわち、リブ25、及び開孔26は、開孔フィルム11が本来有するものであり、開孔フィルム11を製造する工程で、フィルムを開孔するため、多孔板上でフィルムに高温の空気をふきつけた際に、被処理面の逆面にフィルムが伸びることでリブ25が生じる。リブ25は第二の凸部14に比べて非常に微小なサイズのものである。本発明において開孔径とはリブの根本の部分の径dの部分であり、dはミクロン単位の開孔径を有し、通液性と消臭剤16がトップシート表面への移行する量のバランスの観点から好ましくは500μm以上900μm以下の範囲にある。
【0023】
開孔フィルム11には、その内部が中空である複数の第二の凸部14が形成される。複数の第二の凸部14の形状、寸法、及び配列方法は、特に限定されないが、第一の凸部13と同様の形状、寸法、及び配列方法を採用することができ、特に第一の凸部13の内部空間内に第二の凸部14が入り込むような形状、寸法、及び配列方法を適宜選択することが好ましい。そのためには、配列方法は第一、第二の凸部13、14共に同じにする必要がある。これにより、例えば、厚みを最小限に留め、ごわごわ感のない着用し易い吸収性物品1となる。複数の第二の凸部14が形成された開孔フィルム11を備えるトップシート2は強度ひいては消臭剤16の保持性も高まる。複数の第二の凸部14を有する開孔フィルム11は、不織布10が上側になるように重ねられる。複数の第二の凸部14を形成する前の開孔フィルム11は種々のものが市販されており、その中から、開孔26の開孔径がミクロン単位である開孔フィルム11を適宜選択して使用すればよい。
【0024】
トップシート2を液透過性の不織布10のみで構成する場合、不織布10がポーラスなため、供給された消臭剤16が不織布10の隙間からこぼれ落ちてしまう。開孔フィルム11は一般的にその製造時に開孔した影響で片面にテーパー状のリブ25が形成されている。本実施形態のトップシート2では、このリブ25が吸収体3側に向くように配置する。その結果、開孔フィルム11に形成された第二の凸部14の内側にこのリブ25が向くことになる。さらに第二の凸部14を成形することにより、リブ25が面方向に広げられるにつれ、リブ25が内側に倒れこみリブ25側の開孔26は狭くなる。そのため第二の凸部14内側からは粉末の消臭剤16は通過し(漏れ)にくくなる。
【0025】
また、開孔フィルム11と液透過性不織布10により2重になっているため、消臭剤16はよりこぼれにくくなっている。消臭剤16は、わずかな量が、トップシート2の内部から開孔フィルム11の開孔26を通じて漏出することもあるが、多くが開孔フィルム11の開孔26、リブ25の中空内部や液透過性不織布10の繊維間に留まる。そのため粉末がこぼれたような状態と感じず、とくに酸化亜鉛を消臭剤16として使用した場合、排尿前のドライな環境であれば、パウダーがうすくのったような、サラッとした肌触りに感じる。
【0026】
液透過性のシート12は、開孔フィルム11を介して、不織布10に対向するように設けられ、開孔フィルム11に貼り付けられる。なお、液透過性のシート12を開孔フィルム11に貼り付ける前に、第二の凸部14の内部空間に消臭剤16が充填され、貼り付けを実施することにより、消臭剤16が第二の凸部14の内部空間中に封入され、トップシート2が得られる。
【0027】
液透過性のシート12に用いられる液透過性基材としては、液透過性であれば特に限定されないが、消臭剤16を吸収体3側に通過させにくいものが好ましい。このような液透過性基材としては、例えば、ティシュー等が挙げられる。また、消臭剤16を通さず尿等の体液をとおすことができるのであれば、不織布など他のシートでもよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンド等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等の中から適宜選択して使用できる。液透過性のシート12の坪量は特に限定されないが、強度、加工性及び液戻り量の観点から、16g/m以上40g/m以下であることが好ましい。
【0028】
(吸収体)
吸収体3は、例えば、吸収性物品1を身体に装着したときに、体液を吸収及び保持する機能を有する。吸収体3としては、この分野で常用されるものを特に限定なく使用できる。たとえば基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。
【0029】
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0030】
SAPとしては、体液を吸収し、かつ、体液の逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の、カルボキシル基含有モノマーを含む重合体が挙げられる。SAPは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらSAPの中でも、重量当たりの体液吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0031】
SAPを含有する液吸収性シートとしては、特に限定されないが、液吸収性シート中にSAP粒子を混合したもの、液吸収性シート間にSAP粒子を固着したSAPシート等が好ましい。それ以外にも、SAPを繊維の形態で含有する液吸収性シート等もある。
【0032】
吸収体3の平面形状は本実施形態では砂時計状であるが、これに限定されず、例えば、略長方形(矩形状)、I字状、長円形状、楕円形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形等の形状とすることができる。吸収体3は、2層以上を重ねて用いてもよい。また、吸収体3の厚みは、吸収しようとする体液の種類や、吸収体3の形態や材質等に応じて適宜選択されるが、体液の吸収性、保持性や、また、吸収体3は、その形状保持性を向上させ、SAPの脱落を防止する観点などから、必要に応じて吸収体3全体を親水性フィルムで被覆してもよい。
【0033】
(バックシート)
バックシート4は、吸収体3が保持している体液が衣類を濡らしたり、皮膚表面に付着したりしないような液不透過性基材からなる。バックシート用基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体である複合不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布などが挙げられる。
【0034】
バックシート4の坪量は特に限定されないが、強度及び加工性の観点から、15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート4には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート4に通気性を付与する方法としては特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、バックシート用基材である樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート用基材にエンボス加工を施す方法などが挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては例えば炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0035】
(立体ギャザー)
立体ギャザー5は、例えば、吸収性物品1の着用者の体液の横漏れを防止するために設けられる、折り曲げ自在の一対の部材である。本実施形態の立体ギャザー5は、幅方向一端が固定端としてバックシート2の肌側面に固定され、該固定端から立設され、幅方向他端が自由端としてトップシート2の幅方向両端部近傍の第一の凸部13の非形成領域近傍に達するように延伸され、かつ該非形成領域を吸収性物品1の長手方向両端に達するように設けられている。なお、立体ギャザー5の前記固定端の固定位置は、バックシート4の肌側面における、吸収体3を覆うトップシート2のバックシート4との接触位置又は接着位置の外側又はその近傍である。このように立体ギャザー5を設けることで、着用者の体型に合わせて吸収性物品1を変形し易くなる。また、本実施形態とは異なるが、吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー5の外端をバックシート4の非肌側面に固定し、その内端をトップシート2に固着し、その中央を自由端となるように、構成してもよい。立体ギャザー5の形状は特に限定されず、この分野で常用されるような任意の形状とすることができる。
【0036】
立体ギャザー5を構成する基材としては、例えば、立体ギャザー用弾性部材等が挙げられる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。立体ギャザー5としては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0037】
(消臭剤16)
消臭剤16は、開孔フィルム11の第二の凸部14と液透過性のシート12とで囲まれた空間15内に収容されている。消臭剤16は、尿等の水分を含む体液と接触することから、水不溶性のものが好ましいが、水溶性消臭剤を合成樹脂等に担持させて不溶化したものを用いてもよい。水不溶性消臭剤としては、消臭機能を有する無機化合物が好ましく、その粉末がさらに好ましい。消臭機能を有する無機化合物としては公知のものを特に限定なく使用できるが、尿等の体液だけでなく、汗等に対しても消臭機能を発揮することから、例えば、酸化亜鉛を好ましく使用できる。また、消臭機能を有する無機化合物の粒径は第二の凸部14の内部空間に収納可能な大きさであれば特に限定されない。
【0038】
酸化亜鉛は、不織布10と開孔フィルム11とによりその移動が抑制されつつ、その一部がトップシート2(又は不織布10)の肌側表面に移動する。また、酸化亜鉛はベビーパウダーにも利用されており、安全性は高く、手でトップシート2(又は不織布10)の肌側表面をさわった感触はサラッとしている。さらに、酸化亜鉛は発汗や皮脂を抑制する効果がある。そのため、排尿前でも蒸れによる汗臭の発生自体を抑制することが期待できる。
【0039】
[トップシートの製造方法]
トップシート2は、例えば、第一工程(図4)と、第二工程(図5)と、第三工程(図6)と、第四工程(図7)と、を含む製造方法により作製できる。この製造方法は、図3に示すトップシート製造装置を用いる製造方法である。以下詳細に説明する。ただし、この製造方法は、一例であり、これ以外の製造方法によりトップシート2を作製することができる。
【0040】
図3のトップシート製造装置は、表面に吸引可能な孔20aが複数設けられたサクションロール20(以下単に「ロール20」ともいう)と、ロール20に対して不織布10を供給する供給装置(不図示)と、ロール20上の不織布10に対して開孔フィルム11を供給する供給装置(不図示)と、ロール20上の開孔フィルム11に対して、ロール20と協働して第二の凸部14を形成する凸部用押し型21aを表面に有し、かつ内部に加熱装置(不図示)を有する型押しロール21と、開孔フィルム11の第二の凸部14の内部空間に消臭剤16を供給する消臭剤散布装置22と、ロール20上の第二の凸部14の内部空間に消臭剤16が充填された状態の積層体に液透過性シート12を供給する供給装置(不図示)と、前記積層体の表面に供給される前の液透過性シート12の表面に接着剤を所定パターンで塗布する接着剤供給装置23と、を備えている。なお、ロール20の内部では、第1工程から第2工程までは孔20aによる吸引が実施され、それ以外では吸引が行われないように、エアーの流れを制御する構造が組み込まれている。
【0041】
(第1工程)
図4に示すように、ロール20はその表面に吸引可能な孔20aが設けられている。第1工程は,不織布10に複数の第一の凸部13を成形する工程であり、図3中「A」で示される領域で実施される。本工程では、ロール20の表面に不織布10が供給され(図4(a))、不織布10が吸引孔20aの真上まで搬送されると、孔20aにより吸引され、部分的に変形して凸部13が形成される(図4(b))。このとき、複数の凸部13がほぼ同時に形成される。
【0042】
(第2工程)
第2工程は、開孔フィルム11に複数の第二の凸部14を形成する工程であり、図3中「B」で示される領域で実施される。本工程では、不織布10の上に開孔フィルム11が供給され(図5(c))、次いで、複数の凸部13を有する不織布10に開孔フィルム11が積層した状態で、型押しロール21との噛み合わせ領域に搬送され、開孔フィルム11が型押しロール21にニップされることで、型押しロール21の凸部用押し型21aで開孔フィルム11の第二の凸部14を成形する(図5(d))。
【0043】
ここで、型押しロール21は、100℃以上130℃以下に加温する。ロール20は加温しない。この温度の範囲であれば、凸部用押し型21aにより開孔フィルム11が溶融することはなく、適度に軟化され成形される。また凸部用押し型21aに対する雌型がなく、不織布10に熱が伝わりにくく、繊維が溶解しフィルム化しないため。吸収性能が低下することはない。凸部用押し型21aの高さは好ましくは5mm以下である。凸部用押し型21aの高さが5mmを超える場合は、ロール20の孔20aから脱落するときに凸部用押し型21aがロール20に当たり、凸部用押し型21aひいては型押しロール21に傷をつける可能性がある。
【0044】
(第3工程)
図6に示すように、第3工程は、第二の凸部14の内部空間に消臭剤16を供給する工程である。第1、第2工程(図3中のA、Bの領域)を過ぎたところでは、ロール20の孔20aに不織布10と開孔フィルム11の第一、第二の凸部13、14は重なって嵌っているだけの状態になる。本工程では、消臭剤散布装置22により、これらの積層体の上部から、第二の凸部14の内部空間に消臭剤16が供給される(図5(e))。消臭剤散布装置22はロール20の回転速度に同期して第二の凸部14の内部空間に定量的に消臭剤16が落ち込むように制御できるものを特に制限はなく使用できる。そして、第二の凸部14内に消臭剤16が充填された状態になる(図6(f))。
【0045】
(第4工程)
図7に示すように、第4工程は、第二の凸部14内に消臭剤16が充填された、不織布10と開孔シート11との積層体中の開孔シート11と、液透過性シート12とを貼り合わせる工程である。本工程では、第3工程で消臭剤16を第二の凸部14の内部空間に供給したのち、接着剤供給装置23により液透過性シート12の表面(貼り合わせ面)にホットメルトなど接着剤を所定パターンであらかじめ塗布し、これを開孔シート11上に供給して貼り合わせる(図7(g))。こうして、消臭機能をもった立体シートであるトップシート2が得られる。
【0046】
[吸収性物品の製造方法]
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート4、吸収体3、トップシート2の順に積層し、立体ギャザー5の幅方向一端をバックシート4の所定位置に固定するとともに、トップシート2とバックシート4とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【実施例
【0047】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
(実施例及び比較例)
<サンプルの作成方法>
(立体トップシート)
坪量25g/mのエアスルー不織布を直径7mmの孔に吸引し、第一の凸部を形成したのち、750μmの開孔をもつ開孔フィルムを重ね、120℃に加熱した直径6mmの半球状の金型で押圧することでエアスルー不織布と開孔フィルムが重なった第二の凸部を成形した。尚、第一、第二の凸部は幅65mm長さ230mmのシートの中央において、幅30mm、長さ150mmの領域に43個できるように設計した。そして、第二の凸部の内部空間にトータルで1gになるように酸化亜鉛を分割していれ、開孔フィルム側に坪量16g/mのティシューを貼り立体トップシートを得た。
【0048】
<吸収性物品の作製>
幅方向両端近傍に立体ギャザーを固定した坪量35g/mのバックシート用フィルムの上に、フラッフパルプ2.5g、SAP 2.2gからなる長さ200mm、最大幅70mm、中央部で60mmに狭くなる砂時計形状の吸収体をのせ、立体トップシートを重ね、長さ230mm、最大幅75mmになるようにトムソン刃で打ち抜くことで吸収性物品を得た。また比較用のサンプルとして、酸化亜鉛を添加していない以外は実施例と同じ内容の吸収性物品を作製した。
【0049】
<測定方法:イソ吉草酸による消臭テスト>
イソ吉草酸をヘキサンに溶解し2重量%のイソ吉草酸のヘキサン溶液を調整した。20リットルのコック付きのPVDFバッグの一部をカットし、内部にシャーレを入れ、シャーレにイソ吉草酸のヘキサン溶液を200マイクロリットルいれ、PVDFバッグの開口部をアルミテープでふさぎ、コックから空気を16リットル加え30分置き、70ppmのイソ吉草酸ガスを調整した。
別のPVDFバッグの一部をカットし、作製した吸収性物品を内部にいて、開口部をアルミテープでふさいだ。先に調製した70ppmのイソ吉草酸ガス3リットルをコックから加えた。30分後と60分後のイソ吉草酸の濃度を酢酸用のガス検知管(GASTEC 81Lまたは81)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
<測定結果>
パルプ自体がイソ吉草酸を吸着しやすいため、酸化亜鉛を添加しない場合でもイソ吉草酸の濃度は低下するが、実施例で使用したパルプの重量であれば10から20ppmの間ぐらいが限界であり、それ以上は吸着しない。しかしながら、本実施例では酸化亜鉛を1gと高く配合できるため悪臭をより吸収できる(本発明並みの量の酸化亜鉛を、塗工によりトップシートに添加することは不可能である)。
【0052】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0053】
1 吸収性物品
2 トップシート
3 吸収体
4 バックシート
5 立体ギャザー
10 不織布
11 開孔フィルム
12 液透過性シート
13 第一の凸部
14 第二の凸部
15 第二の凸部の内部空間
16 消臭剤
20 サクションロール
20a 孔
21 型押しロール
21a 凸部用押し型
22 消臭剤散布装置
23 接着剤供給装置
25 リブ
26 開孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8