(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】車両管制システム、演算装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20231109BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20231109BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20231109BHJP
【FI】
G08G1/09 P
G08G1/09 F
G01C21/34
G06Q50/30
(21)【出願番号】P 2019187612
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴士
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明宏
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 章彦
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/111126(WO,A1)
【文献】特開2019-101464(JP,A)
【文献】特開2003-44998(JP,A)
【文献】特開2000-259979(JP,A)
【文献】特開2001-76285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G05D 1/00 - 1/12
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置を搭載する複数の車両と演算装置とを含む車両管制システムであって、
前記車載装置は、時間および走行経路の情報を含む配車計画を前記演算装置から受信し、
前記演算装置は、
配車要求、地図情報、および占有情報を格納する記憶部を備え、
前記配車要求には、第1地点、第2地点、および時間に関する制約が含まれ、
前記地図情報には、車両が走行する道路の接続に関する情報が含まれ、
前記占有情報には、占有され通行が不可能な道路の区間および時間が含まれ、
前記演算装置はさらに、
前記占有情報および前記地図情報を用いて、前記第1地点から前記第2地点までの経路であって、前記時間に関する制約を満たし、かつ前記占有情報に含まれる通行が不可能な道路を通行しない経路を時刻の情報とともに算出して前記配車計画を作成する経路生成部と、
前記経路生成部が算出する経路における車両の軌道を算出する軌道生成部と、
前記軌道生成部が生成する第1の前記車両の軌道に基づき、前記第1の車両により占有され他の車両による通行が不可能な道路の区間および時間を算出する比較部と、
前記比較部が算出する前記区間および前記時間を前記占有情報に加える占有管理部と、を備え
、
前記車載装置は、
前記経路の走行に関する情報を前記演算装置に通知する通知部をさらに備え、
前記演算装置は、
前記経路の走行に関する情報を通知した前記車載装置が搭載される車両である通知車の走行が、前記配車計画に比べて遅れていると判断すると、前記占有情報を前記通知車の遅れに基づき更新し、前記経路生成部に再び前記配車計画を作成させる遅延対処部をさらに備える車両管制システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両管制システムにおいて、
前記経路の走行に関する情報とは、前記通知車の位置情報、前記通知車が前記第1地点に到着した時刻、および前記通知車が前記第2地点に到着した時刻の少なくとも1つを含む車両管制システム。
【請求項3】
請求項
1に記載の車両管制システムにおいて、
前記遅延対処部は、前記
通知車の走行が
前記配車計画に比べて早いと判断すると、前記占有情報を前記通知車の通知に基づき更新し、前記経路生成部に再び前記配車計画を作成させる車両管制システム。
【請求項4】
車両に搭載され、時間および走行経路の情報を含む配車計画を受信する複数の車載装置と通信可能な演算装置であって、
配車要求、地図情報、および占有情報を格納する記憶部を備え、
前記配車要求には、第1地点、第2地点、および時間に関する制約が含まれ、
前記地図情報には、車両が走行する道路の接続に関する情報が含まれ、
前記占有情報には、占有され通行が不可能な道路の区間および時間が含まれ、
前記占有情報および前記地図情報を用いて、前記第1地点から前記第2地点までの経路であって、前記時間に関する制約を満たし、かつ前記占有情報に含まれる通行が不可能な道路を通行しない経路を時刻の情報とともに算出して前記配車計画を作成する経路生成部と、
前記経路生成部が算出する経路における車両の軌道を算出する軌道生成部と、
前記軌道生成部が生成する第1の前記車両の軌道に基づき、前記第1の車両により占有され他の車両による通行が不可能な道路の区間および時間を算出する比較部と、
前記比較部が算出する前記区間および前記時間を前記占有情報に加える占有管理部と、
前記配車計画を車両に搭載される車載装置に送信するサーバ通信部と、を備え
、
前記車載装置は、
前記経路の走行に関する情報を前記演算装置に通知する通知部をさらに備え、
前記演算装置は、
前記経路の走行に関する情報を通知した前記車載装置が搭載される車両である通知車の走行が、前記配車計画に比べて遅れていると判断すると、前記占有情報を前記通知車の遅れに基づき更新し、前記経路生成部に再び前記配車計画を作成させる遅延対処部をさらに備える演算装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の演算装置において、
前記経路の走行に関する情報とは、前記通知車の位置情報、前記通知車が前記第1地点に到着した時刻、および前記通知車が前記第2地点に到着した時刻の少なくとも1つを含む車両管制システム。
【請求項6】
請求項
4に記載の演算装置において、
前記遅延対処部は、前記
通知車の走行が
前記配車計画に比べて早いと判断すると、前記占有情報を前記通知車の通知に基づき更新し、前記経路生成部に再び前記配車計画を作成させる車両管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管制システム、および演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の車両をサーバやセンタで集中管理するシステムが知られている。このシステムでは、それぞれの車両にサーバが動作指令を送り、車両はサーバから受けた指令に従って動作する。特許文献1には、車両に搭載された自動走行制御装置と、前記自動走行制御装置と通信が可能なセンタとを有する自動走行制御システムであって、前記自動走行制御装置は、当該自動走行制御装置が搭載された前記車両である自車両の位置情報を前記センタに通知する自車位置把握部と、前記自車両の進行方向及び速度を制御し、前記自車両を、前記センタから通知された走行ルートに沿って、前記センタから通知された目的地まで走行させる自動走行を行う自動走行部と、前記自車両の車内で予め定められた禁止行為が発生した場合、及び/又は、前記自車両で非常事態が生じたことを報知するための非常操作が発生した場合に、前記センタに対し、前記禁止行為及び/又は前記非常操作が発生したことを通知する発生通知を行う通知部と、前記禁止行為及び/又は前記非常操作が発生した場合に、前記自車両を停車させる停車部と、を備え、前記センタは、地図データに基づき前記車両の前記走行ルート及び前記目的地を設定し、該車両に通知する設定部と、前記車両から前記発生通知を受け取ると、該車両の前記位置情報に基づき把握される該車両の停車位置に基づき、該車両以外の他の車両を走行させる制御部と、を備える自動走行制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、道路の一部が利用できないことが事前に予定されている場合の対応が十分でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による車両管制システムは、車載装置を搭載する複数の車両と演算装置とを含む車両管制システムであって、前記車載装置は、時間および走行経路の情報を含む配車計画を前記演算装置から受信し、前記演算装置は、配車要求、地図情報、および占有情報を格納する記憶部を備え、前記配車要求には、第1地点、第2地点、および時間に関する制約が含まれ、前記地図情報には、車両が走行する道路の接続に関する情報が含まれ、前記占有情報には、占有され通行が不可能な道路の区間および時間が含まれ、前記演算装置はさらに、前記占有情報および前記地図情報を用いて、前記第1地点から前記第2地点までの経路であって、前記時間に関する制約を満たし、かつ前記占有情報に含まれる通行が不可能な道路を通行しない経路を時刻の情報とともに算出して前記配車計画を作成する経路生成部と、前記経路生成部が算出する経路における車両の軌道を算出する軌道生成部と、前記軌道生成部が生成する第1の前記車両の軌道に基づき、前記第1の車両により占有され他の車両による通行が不可能な道路の区間および時間を算出する比較部と、前記比較部が算出する前記区間および前記時間を前記占有情報に加える占有管理部と、を備え、前記車載装置は、前記経路の走行に関する情報を前記演算装置に通知する通知部をさらに備え、前記演算装置は、前記経路の走行に関する情報を通知した前記車載装置が搭載される車両である通知車の走行が、前記配車計画に比べて遅れていると判断すると、前記占有情報を前記通知車の遅れに基づき更新し、前記経路生成部に再び前記配車計画を作成させる遅延対処部をさらに備える。
本発明の第2の態様による演算装置は、車両に搭載され、時間および走行経路の情報を含む配車計画を受信する複数の車載装置と通信可能な演算装置であって、配車要求、地図情報、および占有情報を格納する記憶部を備え、前記配車要求には、第1地点、第2地点、および時間に関する制約が含まれ、前記地図情報には、車両が走行する道路の接続に関する情報が含まれ、前記占有情報には、占有され通行が不可能な道路の区間および時間が含まれ、前記占有情報および前記地図情報を用いて、前記第1地点から前記第2地点までの経路であって、前記時間に関する制約を満たし、かつ前記占有情報に含まれる通行が不可能な道路を通行しない経路を時刻の情報とともに算出して前記配車計画を作成する経路生成部と、前記経路生成部が算出する経路における車両の軌道を算出する軌道生成部と、前記軌道生成部が生成する第1の前記車両の軌道に基づき、前記第1の車両により占有され他の車両による通行が不可能な道路の区間および時間を算出する比較部と、前記比較部が算出する前記区間および前記時間を前記占有情報に加える占有管理部と、前記配車計画を車両に搭載される車載装置に送信するサーバ通信部と、を備え、前記車載装置は、前記経路の走行に関する情報を前記演算装置に通知する通知部をさらに備え、前記演算装置は、前記経路の走行に関する情報を通知した前記車載装置が搭載される車両である通知車の走行が、前記配車計画に比べて遅れていると判断すると、前記占有情報を前記通知車の遅れに基づき更新し、前記経路生成部に再び前記配車計画を作成させる遅延対処部をさらに備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、道路の一部が利用できないことが事前に予定されている場合に、利用できる道路のみを用いる経路をあらかじめ作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態における車両管制システムのハードウエア構成図
【
図8】第2の実施の形態における車両管制システムの機能構成図
【
図9】第2の実施の形態における遅延対処部の処理を表すフローチャート
【
図10】第2の実施の形態の変形例2における遅延対処部の処理を表すフローチャート
【
図11】第2の実施の形態の変形例3における変化対処部の動作を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、
図1~
図6を参照して、車両管制システムの第1の実施の形態を説明する。
【0009】
(システム概要)
車両管制システムは、ある特定のエリアAにおける車両を管理する。エリアAはたとえば、港湾、事業所、地区、都市、国家、1または複数の大陸などである。それぞれの車両は、車両走行帯の内側を走行するが、車両走行帯と目的地の位置関係によっては、他の車両走行帯を横切ることになる。さらに積み荷の搬出入を目的とする場合などには、車両の後方を先頭として目的地に接近するため車両の進行が遅くならざるを得ず、また方向転換のために複数回の切り替えしが発生する場合もあり、数分にわたって道路を占有して他の車両の走行を妨げることがある。車両管制システムは、このような道路の占有をあらかじめ把握することで、他の車両による道路の占有が発生しない経路を算出する。なお車両走行帯とは、白線や鋲などにより区画される領域であり、走行レーンとも呼ばれる。車両走行帯は、並進方向には1台の車両のみが存在する前提で設定された、進行方向に長く伸びる領域である。
【0010】
(ハードウエア構成)
図1は、車両管制システムSのハードウエア構成図である。車両管制システムSは、サーバ10と複数の車両に搭載される複数の車載装置20とを含んで構成される。なお、
図1では車載装置20を一台のみ図示しているが、複数の車両が車載装置20をそれぞれ搭載している。またそれぞれの車載装置20は必ずしも同一の構成でなくてもよいが、以下に説明する車載装置20の構成は全ての車載装置20に共通するものである。なお以下に構成を説明する車載装置20を搭載する車両を「自車両」と呼ぶ。
【0011】
サーバ10は、中央演算処理装置であるCPU11と、読み取り専用の記憶装置であるROM12と、読み書き可能な記憶装置であるRAM13と、読み書き可能な記憶装置であるサーバ記憶部14と、サーバ通信部15とを備える。CPU11は、ROM12に格納されているプログラムをRAM13に展開して実行することにより後述する複数の機能を実現する。サーバ記憶部14はたとえばハードディスクドライブであり、後述する複数の情報が格納される。
【0012】
サーバ通信部15は、車載装置20との通信を行う通信モジュールである。ただしサーバ通信部15と車載装置20との通信経路は様々な形態が想定され、たとえば両者が直接無線で通信を行ってもよいし、複数の通信ネットワークを経由してもよい。複数の通信ネットワークを経由する場合には、インターネットを利用してもよいし、移動通信網を利用してもよい。
【0013】
車載装置20は、中央演算処理装置であるCPU21と、読み取り専用の記憶装置であるROM22と、読み書き可能な記憶装置であるRAM23と、読み書き可能な記憶装置である車載記憶部24と、車載通信部25と、表示部26と、センサ27と、駆動部28とを備える。CPU21は、ROM22に格納されているプログラムをRAM23に展開して実行することにより後述する複数の機能を実現する。車載記憶部24はたとえばフラッシュメモリであり、後述する複数の情報が格納される。車載通信部25は、サーバ10との通信を行う無線通信モジュールである。
【0014】
表示部26は、たとえば液晶ディスプレイである。表示部26には後述する車載装置20の機能により情報が提示され、自車両の乗員への情報の提示が行われる。センサ27は、自車両の周囲の情報を収集するセンサの総称であり、1つのセンサであってもよいし複数のセンサから構成されてもよい。センサ27はたとえば、カメラおよびレーザーレンジスキャナである。駆動部28は、自車両の駆動、制動、および操舵を制御するハードウエアである。後述する機能により駆動部28が動作され、自車両の自律移動が実現される。
【0015】
(データ)
サーバ記憶部14には、地図情報141と、車両特性142と、占有情報143と、配車要求144と、配車計画145とが格納される。本実施の形態では、地図情報141、車両特性142、および配車要求144は予め作成された静的な情報である。占有情報143および配車計画145は、後述する演算により得られるものであり、演算処理の経過により書き換えられる。
【0016】
地図情報141には、建物の情報、ノードとリンクの情報、各リンクの詳細情報が含まれる。建物の情報とはたとえば、建物ごとの名称、緯度および経度、駐車場の領域、道路から駐車場への侵入方向などである。ノードの情報とは、道路上の交差点や分岐等に対応して設定された点であるノードの識別番号および緯度と経度である。リンクの情報とは、道路に沿って並んだ2つのノード間を結んだ線であるリンクの識別番号およびそのリンクが接続する2つのノードの識別番号である。各リンクの詳細情報とはたとえば、走行車線の数、走行車線ごとの道幅、進行可能な方向、制限速度などである。車両特性142には、車両の幅、長さ、最小回転半径、重量、ヨー慣性モーメント、車軸間隔、重心位置などが含まれる。
【0017】
占有情報143には、占有される道路の領域、占有が開始される時刻、占有が終了する時刻、および道路を占有する事象を特定する情報が含まれる。占有情報143は、通行できない道路の情報なので、通行禁止情報と言い換えることもできる。占有される道路の領域は、所定の距離、たとえば1メートル単位で特定されてもよいし、リンク単位で特定されてもよい。
【0018】
図2は占有情報143の一例を示す図である。占有情報143は、1または複数のレコードから構成され、各レコードは区間1431、開始時間1432、終了時間1433、および計画番号1434のフィールドを有する。区間1431のフィールドには、占有されるリンクの名称が格納される。開始時間1432のフィールドには、道路の占有が開始される時間が格納される。終了時間1433のフィールドには、道路の占有が終了する時間が格納される。計画番号1434のフィールドには、道路を占有する理由となる配車計画の計画番号が格納される。
【0019】
図2に示す例では、計画番号「P1」により2つの区間の占有が計画されていることがわかる。その1つ目は「L3」の区間が「11:35」から「11:40」まで占有される予定であり、2つ目は「L12」の区間が「12:05」から「12:08」まで占有される予定である。
図2の例ではさらに、計画番号「P3」により「L40」の区間が「13:40」から「13:50」まで占有されることが記載されている。
【0020】
配車要求144には、荷物の配送元、荷物の配送先、および時間の制約に関する情報が含まれる。荷物の配送元および荷物の配送先は、緯度と経度の組合せ、目的地の名称、目的地を示す符号、など荷物の配送元および荷物の配送先を一意に特定できる情報が用いられる。本実施の形態では、荷物の配送元および荷物の配送先は、建物の名称を用いる。
【0021】
図3は配車要求144の一例を示す図である。配車要求144は1または複数のレコードから構成され、各レコードは、要求番号1441、配送元1442、配送先1443、および時間制約1444のフィールドを有する。要求番号1441のフィールドには、それぞれの配車要求を識別する識別記号が格納される。配送元1442のフィールドには、車両が運搬する荷物の配送元、すなわち車両がまず集荷すべき建物の名称が記載される。なお以下では、配送元1442は「第1地点」とも呼ぶ。
【0022】
配送先1443のフィールドには、集荷した荷物を送り届ける先となる建物の名称が記載される。時間制約1444のフィールドには、配送元1442および配送先1443に関する時間の制約が記載される。時間制約1444のフィールドに格納される情報はたとえば、「12時までに集荷」や「13:15までに集荷、かつ15:30までに配送」などである。なお以下では、配送先1443は「第2地点」とも呼ぶ。
【0023】
図3に示す例では、「R1」~「R3」の3つの要求が記載される。「R1」の要求の内容は、12時までに「建物A」で集荷し、「建物B」へ届けるという要求である。この「R1」では、配送元への到着時間の制限は課されているが、配送先への到着時間の制限は課されていない。その一方で「R2」では配送元と配送先の両方で到着時刻の制限が課されている。
【0024】
配車計画145には、配車要求144に応じて作成された車両の配車に関する情報が格納される。配車計画145には、車両の第1の目的地である配送元、車両の第2の目的地である配送先、配送元から配送先への走行経路、および経路の走行に関する時間の情報が格納される。
【0025】
図4は配車計画145の一例を示す図である。配車計画145は1または複数のレコードから構成され、各レコードは、計画番号1451、要求番号1452、配送元1453、配送先1454、経路1455、および時間1456のフィールドを有する。計画番号1451のフィールドには、配車計画145の各レコードを識別する識別符号が格納される。要求番号1452のフィールドには、そのレコードに対応する配車要求144のレコードの識別符号が格納される。
【0026】
配送元1453のフィールドには、車両が運搬する荷物の配送元、すなわち車両がまず集荷すべき建物の名称が記載される。配送先1454のフィールドには、集荷した荷物を送り届ける先となる建物の名称が記載される。経路1455のフィールドには、配送元1453から配送先1454への経路情報が格納される。時間1456のフィールドには、配送元1453から配送先1454への移動に関する時間の情報が格納される。
【0027】
図4に示す例では、「P1」~「P3」の計画が記載され、それぞれが順番に「R1」~「R3」の要求に対応するものである。計画「P1」では、車両が「N1、N2、・・」の順番にノードを通過する経路が示されており、ノードN1は「11:30」、ノードN2は「11:33」に通過することが記載されている。なお、
図4の1つ目のレコードでは通過する全ノードの通過時刻を記載しているが、一部のノードの通過時刻のみが記載されてもよい。
【0028】
車載装置20の車載記憶部24には、地図情報241および配車計画245が格納される。地図情報241はサーバ記憶部14に格納される地図情報141と同様の情報を有する。地図情報241は地図情報141と同一であってもよいし、車載装置20がサーバ10から必要に応じて地図情報141の一部分をダウンロードして地図情報241として使用してもよい。配車計画245は、配車計画145の一部を含む情報を有する。具体的には、配車計画245は配車計画145そのものでもよいし、配車計画245の1つのレコードでもよい。
【0029】
(機能構成)
図5は、車両管制システムSの機能構成図である。サーバ10はその機能として、計画管理部111、経路生成部112、軌道生成部113、比較部114、占有管理部115、およびサーバ側連携部116を備える。
【0030】
計画管理部111は、配車要求144に基づき後述する各機能ブロックを利用して配車計画145を作成し、サーバ側連携部116を介して各車両に配車計画145を送信する。計画管理部111の詳しい動作は後述する。
【0031】
経路生成部112は、配車計画145、地図情報141、および占有情報143を参照して車両が走行する経路を算出する。経路生成部112が算出する経路は、配送元1451から配送先1452までに至る経路であり、時間制約1453を満たし、かつ占有情報143により通行ができない区間を通行しない経路である。ただし経路生成部112が算出する経路はたとえば車両が経由するノードを順番に並べた記載であり、より粒度の細かい算出は軌道生成部113が行う。なお経路生成部112はノードの代わりにリンクを用いてもよしい、ノードとリンクを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
経路生成部112は算出した経路、および時間に関する情報を配車計画145に出力する。時間に関する情報とは、たとえば配送元1451および配送先1452への到着時刻である。時間に関する情報は、経路上の各リンクに到達する予定時刻であってもよい。経路生成部112は、条件を満たす経路を算出できない場合は、算出不能である旨を計画管理部111に出力する。
【0033】
軌道生成部113は、経路生成部112が算出した経路に基づき車両が走行する軌道をリンクやノードよりも細かい単位、たとえば0.1メートル単位で生成する。軌道生成部113は経路上の全ての軌道を生成しなくてもよいが、少なくとも走行車線から外れる可能性がある個所の軌道を生成する。たとえば軌道生成部113は、車両が他の走行車線を横切る場合に、配送元1451や配送先1452の駐車場への入庫や出庫の軌道を生成する。さらに軌道生成部113は、車両の幅、走行車線の幅、および最小回転半径の関係から走行車線から外れる可能性があるとされるカーブや交差点において軌道を生成する。
【0034】
比較部114は、軌道生成部113が算出した軌道が他の走行車線と交わる区間および時間を算出する。具体的には比較部114は、軌跡が他の走行車線と一部でも重なる場合には、その走行車線はその車両により占有されると判断する。比較部114は、軌跡が他の走行車線と重なる区間を、所定の距離、たとえば1メートルごとに判断してもよいしリンクごとに判断してもよい。軌道生成部113が算出した軌道を車両が走行する時間に関する情報も配車計画145に含まれているので、比較部114はたとえば地図情報141に含まれる制限速度の情報を参照することで、車両の走行軌跡が他の走行車線と交わる時間を細かい粒度で算出する。なお、細かい粒度とは分単位や秒単位である。
【0035】
占有管理部115は、比較部114の算出結果に基づきサーバ記憶部14に格納された占有情報143を更新する。サーバ側連携部116は、サーバ通信部15を用いて車載装置20との通信を実現する。サーバ側連携部116は、車載装置20に配車計画145を送信する。
【0036】
車載装置20はその機能として、車両側連携部211、軌道管理部212、判断部213、表示制御部214、位置決定部215、および車両制御部216を備える。
【0037】
車両側連携部211は、CPU21などだけではなく車載通信部25も利用して実現され、サーバ10との通信機能を有しており、サーバ10から送信される配車計画245の情報を受信する。車両側連携部211は、たとえば移動通信網(4G、5G)を用いて、サーバ10と通信を行うことができる。軌道管理部212は、サーバ10から送信される配車計画245の情報に基づいて、自車両が自律移動する際の走行軌道を管理する。具体的には軌道管理部212は、配車計画245に含まれる経路はたとえばノードやリンクの単位で記載されており情報量が少ないため、自律移動が実現可能な程度に詳細な情報を地図情報241から取得する。
【0038】
判断部213は、地図情報241と、位置決定部215により決定される自車両の現在位置とに基づいて、軌道管理部212が管理している走行軌道に従って自車両を自律移動させるために必要な動作を判断する。たとえば、走行軌道の長さや曲率に基づいて、自車両の速度や加速度、操舵量を決定する。このとき、センサ27から取得した自車両周辺の情報をさらに用いて、たとえば自車両の前方に障害物を検知したときには、速度の低下、操舵量の変更、および緊急ブレーキを行うように判断してもよい。車載装置20はこのようにセンサ27から取得した情報を用いて安全な動作を行うので、配車計画245に記載された時間どおりに運行できない場合もある。
【0039】
表示制御部214は、地図情報241と、軌道管理部212が管理している走行軌道および判断部213の判断結果とに基づいて、表示部26に表示させる画面を生成する。これにより、たとえば、地図上に走行軌道を示した画面や、走行軌道が再設定された場合や障害物を検知した場合にそのことを自車両の乗員に通知する画面などが、表示部26に表示される。なお、不図示のスピーカから出力される音声を表示部26の画面とともに、または表示部26の画面の代わりに用いて、乗員への通知を行うようにしてもよい。
【0040】
位置決定部215は、不図示のGPSセンサが受信したGPS信号や、センサ27が検出した自車両の運動状態に関する情報(速度、加速度、操舵量等)に基づいて、自車両の位置を決定する。なお、地図情報241を利用して周知のマップマッチング処理を行うことにより、自車両の位置が道路上となるように決定してもよい。位置決定部215が決定した自車両の位置情報は、配車計画245に記載された経路どおりに自車両を自律移動するために用いられる。
【0041】
車両制御部216は、判断部213による自車両の動作の判断結果に基づいて、自車両の制御を行う。車両制御部216は、自車両の駆動部28と接続されており、この駆動部28を制御して自車両のアクセル操作、ブレーキ操作、ハンドル操作等を行うことにより、判断部213の判断結果に従って自車両の運動状態を制御する。
【0042】
(計画管理部111のフローチャート)
図6は、サーバ10の計画管理部111の処理を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体はサーバ10のCPU11である。サーバ10はたとえば、外部から配車要求144が入力されると、計画管理部111に以下の処理を実行させる。
【0043】
ステップS601では計画管理部111が、ループカウンタとして利用する変数iを1に初期化し、占有情報143を空集合に初期化する。ただし計画管理部111は、外部からあらかじめ指令の入力があった場合には、その指令を占有情報143に反映させてもよい。続くステップS602では計画管理部111は、配車計画145の「i」番目のレコードを読み込む。具体的には、iが「1」の場合には配車計画145の1番目、すなわち先頭のレコードを読み込む。
【0044】
続くステップS603では計画管理部111は、経路生成部112にステップS602において読み込んだ情報に基づき経路を算出させる。具体的には経路生成部112は、読み込まれたレコードにおける、配送元1451から配送先1452までに至る経路であり、時間制約1453を満たし、かつ占有情報143により通行ができない区間を通行しない経路を算出する。
【0045】
続くステップS604では計画管理部111は、ステップS603において経路が算出できたか否かを判断する。計画管理部111は、ステップS603における経路生成部112の出力が算出不能以外であると判断する場合はステップS605に進み、経路生成部112の出力が算出不能であると判断する場合はステップS609に進む。ステップS605では計画管理部111は、ステップS603において経路生成部112が算出した経路の軌道を軌道生成部113に生成させる。
【0046】
続くステップS606では計画管理部111は、ステップS605において算出された軌道と地図情報141とを比較部114に比較させる。そして比較部114は、軌道が走行経路からはみ出すと、その区間が占有されると判断される。比較部114は、ステップS603において算出された経路に付されている時間を参照し、前述の区間が占有される時間も算出する。
【0047】
続くステップS607では計画管理部111は、占有管理部115を用いて、ステップS606の演算結果を占有情報143に記録させる。続くステップS608では計画管理部111は、「i」番目のレコードが配車要求144の最終レコードであるか否かを判断する。計画管理部111は「i」番目のレコードが配車要求144の最終レコードであると判断する場合は
図F1に示す処理を終了する。計画管理部111は、「i」番目のレコードが配車要求144の最終レコードではないと判断する場合はステップS612に進む。
【0048】
ステップS604において否定判断されると実行されるステップS609では、計画管理部111は配車計画145の1番目~「i」番目のレコードにおいて、時間および経路の調整を行う。この調整には既知の様々な手法を用いることができる。本手法の一例を示すと次のとおりである。まず計画管理部111は、複数の経路を選択可能なレコード、および出発時間を変更可能な全てのレコードを変更可能レコードとして特定する。次に計画管理部111は、それら変更可能レコードによる道路の占有に関する情報を占有情報143から削除する。そして計画管理部111は「i」番目のレコードの経路を算出してS605~S607の処理を実施した後に、変更可能レコードの経路を改めて算出する。
【0049】
続くステップS610では計画管理部111は、ステップS609による調整が成功したか否かを判断し、成功したと判断する場合はステップS608に進み、成功しなかったと判断する場合はステップS611に進む。ステップS611では計画管理部111は、「i」番目のレコードは実現不可能である旨を記録してステップS608に進む。
【0050】
ステップS608において否定判断されると実行されるステップS612では計画管理部111は、変数iをインクリメント、すなわち「1」だけ増加させてステップS602に戻る。
【0051】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)車両管制システムSは、車載装置20を搭載する複数の車両とサーバ10である演算装置とを含む。前記車載装置20は、時間および走行経路の情報を含む配車計画245をサーバ10から受信する。サーバ10は、配車要求144、地図情報141、および占有情報143を格納するサーバ記憶部14を備える。配車要求144には、配送元1442、配送先1443、および時間制約1444が含まれる。地図情報141には、車両が走行する道路の接続に関する情報が含まれる。占有情報143には、占有され通行が不可能な道路の区間および時間が含まれる。サーバ10は、占有情報143および地図情報141を用いて、配送元1442から配送先1443までの経路であって、時間制約1444を満たし、かつ占有情報143に含まれる通行が不可能な道路を通行しない経路を時刻の情報とともに算出して配車計画145を作成する経路生成部112と、経路生成部112が算出する経路における車両の軌道を算出する軌道生成部113と、軌道生成部113が生成するある車両の軌道に基づき、ある車両により占有され他の車両による通行が不可能な道路の区間および時間を算出する比較部114と、比較部114が算出する区間および時間を占有情報143に加える占有管理部115と、を備える。そのため、道路の一部が利用できないことが事前に予定されている場合に、利用できる道路のみを用いる経路をあらかじめ作成できる。また、ある経路を作成したことにより新たに道路の占有が必要になった場合は、占有情報143が更新されるので複数の車両の経路を矛盾なく作成できる。
【0052】
(2)車載装置20は、サーバ10から受信した配車計画245に基づき車載装置20を搭載する自車両を制御する。そのため、車載装置20を搭載する車両は自律移動が可能となる。
【0053】
(変形例1)
上述した第1の実施の形態では、車載装置20が搭載される車両は配車計画245に基づく自律運転がされた。しかし車載装置20が搭載される車両は、自車両の搭乗者により運転されてもよい。この場合には車載装置20は、表示制御部214を用いて配車計画245を自車両内に出力する。そして自車両の搭乗者がこの配車計画245にしたがって自車両を制御する。すなわち第1の実施の形態では、サーバ10から受信した情報である配車計画245に記載された経路および時間を目標として動作することが求められているにすぎず、人間が車両の制御に関与してもよい。
【0054】
(変形例2)
本実施の形態では、荷物をある地点から別の地点へ移動させることを前提として、配車要求144には配送元1442および配送先1443が含まれた。しかし配車要求144には車両の目的地または通過地点が記載されていればよい。また時間制約1444は、少なくとも一部のレコードには含まれなくてもよい。なお車両の目的地や車両の通過地点は、目的地や通過地点を一意に特定できる情報であればよく、地点の名称、地点を示す符号、緯度と経度の組合せなどを用いることができる。
【0055】
(変形例3)
上述した第1の実施の形態では、サーバ10および車載装置20のそれぞれは1つのハードウエア装置として説明した。しかしサーバ10および車載装置20のそれぞれは、複数のハードウエアにより構成されてもよい。すなわち複数のハードウエアが協調して動作することによりサーバ10や車載装置20の機能が実現されてもよい。この場合に複数のハードウエアは同一の箇所に存在しなくてもよく、物理的に離れた箇所に存在するハードウエアがネットワークを介して接続されてもよい。
【0056】
(変形例4)
上述した第1の実施の形態では、経路生成部112は他の車両による道路の占有が発生しない経路を生成した。しかし経路生成部112は、他に選択肢がない場合には道路の占有が発生する経路を生成してもよい。ただしこの場合には、他の車両が道路を占有することによる自車両の待ち時間が最小になるように経路を生成することが望ましい。
【0057】
(変形例5)
上述した第1の実施の形態では、区間の具体例としてリンクを挙げた。しかし区間はリンクよりも狭い範囲、すなわち高い分解能で特定されてもよい。たとえばリンクにおいて車両の進行方向に対して分解能を向上させ、リンクの端部からの距離や緯度や経度の範囲などでさらに特定してもよい。またリンクにおいて車両の並進方向の分解能を向上させ、走行レーン、すなわち車両走行帯を特定してもよい。さらに、進行方向と並進方向の分類だけでなく、占有する範囲を緯度や経度を用いて特定してもよい。占有する範囲の特定とはたとえば、「緯度A1、経度B1を中心とする半径C1メートルの円の領域」、「緯度D1、経度D2を1つの頂点、緯度E1、経度E2を対角の頂点とする矩形の領域」などである。
【0058】
本変形例では、計画管理部111および占有管理部115は、リンクよりも高い分解能で占有される領域を特定して占有情報143に記録する。また本変形例では経路生成部112は、第1の実施の形態と同様に占有情報143を参照して経路を算出する。ただし、占有情報143に記載される通行が不可能な領域は、本変形例ではリンクよりも高い分解能を有するので、たとえば占有情報143に記載されたリンクであって、記載された時間に該当する場合であっても通行できる場合がある。
【0059】
図7は本変形例による占有情報143を示す図である。
図7に示す例では、区間1431がリンク14311、進行方向14312、および並進方向14313のフィールドから構成される。リンク14311のフィールドには、占有される領域を含むリンクの名称が格納される。進行方向14312のフィールドには、占有される領域における車両の進行方向を特定する情報が格納される。並進方向14313のフィールドには、占有される領域における車両の並進方向を特定する情報が格納される。
【0060】
図7に示す例では、最初のレコードでは、リンクL3の北端から10mの第1レーンが、「11:35」から「11:40」まで占有されることが示されている。2番目のレコードでは、リンクL12の全体が「12:05」から「12:08」まで占有される予定であることが示されている。3番目のレコードでは、リンクL40の緯度xx~緯度yyの第3レーンと第4レーンが「13:40」から「13:50」まで占有されることが示されている。
【0061】
図7に示す占有情報143を参照した経路生成部112は、たとえば以下のような経路を生成可能である。たとえば経路生成部112は、「11:35」~「11:40」の時間帯に、リンクL3の第1レーン以外、たとえばリンクL3の第2レーンを走行する経路を生成可能である。また「13:40」~「13:50」の時間帯のリンク40であっても、「緯度xx~緯度yy」以外、または「第3、4レーン」以外を走行する経路を生成可能である。
【0062】
本変形例によれば次の作用効果を奏する。
(3)区間は、車両走行帯と同等の粒度、または車両走行帯よりも細かい粒度を有する。たとえば占有情報143を
図7に示した例のように走行レーン、すなわち車両走行帯の粒度で表現してもよいし、緯度や経度を用いて走行レーンよりも細かい粒度で表現することもできる。本変形例によれば細かい粒度で占有情報143を管理するので、道路をより効率的に利用することができる。
【0063】
―第2の実施の形態―
図8~
図9を参照して、車両管制システムの第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、車両の運行情報に基づき配車計画を見直す点で、第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態における車両管制システムS2のハードウエア構成は第1の実施の形態と同様である。
【0064】
(機能構成)
図8は、車両管制システムS2の機能構成図であり、第1の実施の形態における
図5に相当する。本実施の形態では、サーバ10Aは遅延対処部117をさらに備え、車載装置20Aは自車両の位置情報をサーバ10Aに通知する通知部217をさらに備える。
【0065】
通知部217は、位置決定部215が決定した自車両の位置情報を、所定の時間間隔、または所定の距離を移動するごとに車載通信部25を用いてサーバ10Aに通知する。以下では、位置情報をサーバ10Aに通知した車載装置20Aのことを便宜的に「通知車」と呼ぶ。なおこの通知には時刻情報を含めてもよいし、通知は瞬時に送受信されることを前提としてサーバ10Aが通知の受信時刻を通知車の位置情報と紐づけてもよい。ただし通知部217は、配送元および配送先に到着した際にその到着をサーバ10Aに通知してもよい。以下では、自車両の位置情報、配送元への到着時刻、および配送先への到着時刻の少なくとも1つを「通知車の経路の走行に関する情報」と呼ぶ。このように通知部217は、通知車の経路の走行に関する情報をサーバ10に送信する。
【0066】
サーバ10Aの遅延対処部117は、車載装置20Aから通知を受信するたびに配車計画145を参照し、通知車の運行状況が配車計画145に記載された時間、すなわち運行予定からの遅れの有無を確認する。サーバ10Aは、通知車の運行が遅れていると判断すると、その影響が発生する配車計画を再計算する。
【0067】
(遅延対処部117のフローチャート)
図9は、遅延対処部117の処理を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体はサーバ10AのCPUである。遅延対処部117は、車載装置20Aから通知を受信するたびに
図9に示す処理を実行する。
【0068】
遅延対処部117はまずステップS701において、受信した通知を参照して通知車に計画からの運行の遅れがあるか否かを判断する。遅延対処部117は、計画からの遅れがあると判断する場合はステップS702に進み、遅れがないと判断する場合は
図9に示す処理を終了する。ステップS702では遅延対処部117は、占有情報143と配車計画145を参照し、通知車はこれから道路の占有が予定されているか否かを判断する。遅延対処部117は道路の占有が予定されていると判断する場合にはステップS703に進み、道路の占有が予定されていないと判断する場合は
図9に示す処理を終了する。
【0069】
通知車により道路の占有が予定されているか否かは、たとえば次の手順により実現できる。まず配車計画145における通知車の計画番号1451を特定し、占有情報143における計画番号1434が同じ値のレコードを特定する。次に、配車計画145の経路1455と通知車の現在位置とを比較して通知車がこれから進む経路を特定する。そして、特定した経路に占有情報143の特定したレコードの区間1431が含まれるか否かにより判断できる。
【0070】
ステップS703では遅延対処部117は、ステップS702において占有されると判断した道路をこれから通行する予定の車両が存在するか否かを、配車計画145を参照して判断する。遅延対処部117は、通行予定の車両が存在すると判断する場合はステップS704に進み、通行予定の車両が存在しないと判断する場合は
図9に示す処理を終了する。ステップS704では遅延対処部117は、占有情報143における通知車のレコードを遅れに応じて書き換える。たとえば通知車の運行が予定よりも10分遅れている場合には、占有情報143におけるその通知車のレコードの時刻を10分遅らせる。
【0071】
続くステップS705では遅延対処部117は、ステップS703において走行予定と判断した車両の経路計画を再実行する。この場合には経路生成部112は、ステップS704において更新した占有情報143を参照して演算を行う。続くステップS706では遅延対処部117は、ステップS705において得られた配車計画145を、サーバ側連携部116を介して車載装置20に送信して
図9に示す処理を終了する。
【0072】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(4)車載装置20Aは、経路の走行に関する情報をサーバ10Aに通知する通知部217を備える。サーバ10Aは、経路の走行に関する情報を通知した車載装置20が搭載される車両である通知車の走行が、配車計画に比べて遅れていると判断すると(
図9のステップS701:YES)、占有情報を通知車の遅れに基づき更新し(S704)、経路生成部112に再び配車計画を作成させる(S705)、遅延対処部117を備える。そのため、車載装置20を搭載した各車両の運行の遅れに応じて占有情報143を更新し、配車計画145を修正することができる。
【0073】
(5)経路の走行に関する情報とは、通知車の位置情報、通知車が第1地点に到着した時刻、および通知車が第2地点に到着した時刻の少なくとも1つを含む。
【0074】
(第2の実施の形態の変形例1)
車載装置20Aは、ノードへの到着、ノードの通過、配送元への到着、配送元の出発、配送先への到着、および配送先の出発の少なくとも1つをトリガーとして、サーバ10に位置情報を送信してもよい。
【0075】
(第2の実施の形態の変形例2)
遅延対処部117は、車載装置20Aから通知を受信した際に車両の運行が予定よりも早いか否かを判断し、予定よりも早い場合には占有情報を更新したうえで、他の車両の経路生成を再実行してもよい。ただしこの場合は、通知車が占有する道路を走行予定の車両があるか否かは判断しなくてもよい。
【0076】
図10は、第2の実施の形態の変形例2における遅延対処部117の動作を表すフローチャートである。すなわち本変形例では遅延対処部117は、
図9に示すフローチャートの代わりに
図10に示すフローチャートの動作を行う。遅延対処部117は、車載装置20Aから通知を受信するたびに
図10に示す処理を実行する。
【0077】
遅延対処部117はまずステップS751において、受信した通知を用いて通知車の運行が予定どおり、予定よりも早い、予定よりも遅い、のいずれであるかを判断する。遅延対処部117は、予定どおりであると判断する場合は
図10に示す処理を終了する。遅延対処部117は、予定よりも早いと判断する場合はステップS752に進み、予定よりも遅いと判断する場合はステップS702~S706の処理を行う。すなわち予定よりも遅いと判断する場合は、遅延対処部117は第2の実施の形態と同様の処理を行う。
【0078】
ステップS752では遅延対処部117は、
図9のステップS702と同様に占有情報143と配車計画145を参照し、通知車はこれから道路の占有が予定されているか否かを判断する。遅延対処部117は道路の占有が予定されていると判断する場合にはステップS704~S706の処理を実行し、道路の占有が予定されていないと判断する場合は
図10に示す処理を終了する。本変形例によれば、車両の運行が予定よりも早い場合に道路を有効に活用できる。
【0079】
(第2の実施の形態の変形例3)
サーバ10Aは、エリアAにおける動的な環境変化に対応する変化対処部をさらに備えてもよい。本変形例ではサーバ10は、車載装置20を搭載する車両、道路脇や道路上にあらかじめ設置されたセンサから環境情報を取得する。環境情報とは車両の通行の妨げになりうる障害物に関する情報であり、たとえば車載装置20を搭載しない他の車両による路上駐車、事故などによる道路の一時的な封鎖などである。変化対処部は、環境情報の変化を検出すると、その変化により通行の障害となる配車計画145の経路が存在するか否かを判断し、必要なればその経路を再計算する。たとえば、新たに車両が駐車されたことにより車両の通行が不可能になった場合には、他の経路を走行するように再計算する。
【0080】
図11は、第2の実施の形態の変形例3における変化対処部の動作を表すフローチャートである。変化対処部は、環境情報の変化を検出すると
図11に示す処理を開始する。変化対処部はまず、ステップS801において環境情報の変化により通行の障害となる配車計画145の経路が存在するか否かを判断する。変化対処部は、障害となる経路が存在すると判断する場合はステップS802に進み、障害となる経路が存在しないと判断する場合は
図11に示す処理を終了する。
【0081】
ステップS802では変化対処部は、経路生成部112に環境情報をさらに与えて経路を算出させる。詳述するとステップS802では経路生成部112は、配送元1451から配送先1452までに至る経路であり、時間制約1453を満たし、かつ占有情報143および環境情報により通行ができない区間を通行しない経路を算出する。続くステップS803では変化対処部は、ステップS802において算出した配車計画を車載装置20に送信して
図11に示す処理を終了する。
【0082】
(第2の実施の形態の変形例4)
上述した第2の実施の形態では、「通知車の経路の走行に関する情報」は、自車両の位置情報、配送元への到着時刻、および配送先への到着時刻の少なくとも1つを含んだ、しかし「通知車の経路の走行に関する情報」にはノードやリンクへの到着時刻、ノードやリンクの通過時刻が含まれてもよい。すなわち「通知車の経路の走行に関する情報」は、自車両の位置情報、配送元への到着時刻、配送先への到着時刻、ノードやリンクへの到着時刻、およびノードやリンクの通過時刻の少なくとも1つが含まれればよい。本変形例によれば、環境情報の変化に応じて配車計画を修正できる。
【0083】
上述した各実施の形態および変形例において、機能ブロックの構成は一例に過ぎない。別々の機能ブロックとして示したいくつかの機能構成を一体に構成してもよいし、1つの機能ブロック図で表した構成を2以上の機能に分割してもよい。また各機能ブロックが有する機能の一部を他の機能ブロックが備える構成としてもよい。
【0084】
上述した各実施の形態および変形例において、サーバ10のプログラムは不図示のROMに格納されるとしたが、プログラムはサーバ記憶部14に格納されていてもよい。また、サーバ10が不図示の入出力インタフェースを備え、必要なときに入出力インタフェースとサーバ10が利用可能な媒体を介して、他の装置からプログラムが読み込まれてもよい。ここで媒体とは、たとえば入出力インタフェースに着脱可能な記憶媒体、または通信媒体、すなわち有線、無線、光などのネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号、を指す。また、プログラムにより実現される機能の一部または全部がハードウエア回路やFPGAにより実現されてもよい。
【0085】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
10、10A…サーバ
20、20A…車載装置
111…計画管理部
112…経路生成部
113…軌道生成部
114…比較部
115…占有管理部
117…遅延対処部
141…地図情報
143…占有情報
144…配車要求
145…配車計画
217…通知部
241…地図情報
245…配車計画