(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】管継手および管の接合方法
(51)【国際特許分類】
F16L 21/08 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
F16L21/08 B
(21)【出願番号】P 2019190624
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】小田 圭太
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍之介
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-260059(JP,A)
【文献】特開2008-089095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の受口に他方の管の挿口が挿入され、
受口の内周にロックリング収容溝が形成され、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
ロックリングよりも受口開口端側において、管径方向に圧縮されて受口の内周面と挿口の外周面との間をシールするシールリングが設けられ、
挿口の外周に挿口突部が形成され、
挿口突部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに係合することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な
管継手であって、
受口の開口端部に、シールリングを受口奥側へ押圧する押輪が設けられ、
押輪はシールリングを押圧する押圧方向において受口の開口端面に当接し、
受口の内周面と挿口の外周面との間にリング体が嵌め込まれ、
リング体は、管軸方向におけるロックリングとシールリングとの間に設けられており、受口の内周面と挿口の外周面との間に
挿入される本体部と、本体部が受口開口端側へずれるのを防止するずれ止め部材とを有し、
本体部は、受口に対して挿口を管径方向へ移動させて、一方の管の管軸心と他方の管の管軸心との管径方向におけるずれを減少させ
、
管軸方向におけるシールリングとリング体との間に隙間が形成されていることを特徴とする
管継手。
【請求項2】
ずれ止め部材は、管軸方向における先端部が受口の内周面に
当接し、管軸方向における基端部が本体部の内周側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の
管継手。
【請求項3】
リング体よりも受口開口端側において、受口の内周面と挿口の外周面との間にシールリング挿入空間が全周にわたり形成され、
シールリングはシールリング挿入空間に挿入され、
受口の内周面は、管軸方向におけるロックリング収容溝とシールリング挿入空間との間に、管径方向内側へ突出した受口突部を有し、
リング体の本体部は受口突部の内周面と挿口の外周面との間に挿入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管継手における管の接合方法であって、
一方の管の受口のロックリング収容溝にロックリングをセットし、
他方の管の挿口を受口に挿入して、挿口突部をロックリングの受口開口端側から受口奥側へ通過させ、
ロックリングを縮径して挿口の外周に抱き付かせ、
予め他方の管に外嵌しておいたリング体を、管軸方向に移動して、受口の開口端部から受口の内周面と挿口の外周面との間に挿入し、
シールリングを受口の開口端部から受口の内周面と挿口の外周面との間に押し込むことを特徴とする管の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離脱防止機能を有するとともにリング体を備えた管継手、および管の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば
図12に示すように、一方の管101の受口102に他方の管103の挿口104が挿入され、受口102の内周にロックリング収容溝105が形成され、ロックリング収容溝105にロックリング106が収容され、ロックリング106よりも受口開口端側において、管径方向に圧縮されて受口102の内周面と挿口104の外周面との間をシールするパッキン107が設けられ、挿口104の先端部外周に挿口突部108が形成され、挿口突部108が挿口104の離脱方向Aにおいて受口奥側からロックリング106に係合することにより、挿口104が受口102から離脱することを防止可能な管継手109がある。
【0003】
また、受口102の開口端部には、パッキン107を受口奥側へ押圧する押輪110が設けられている。押輪110は複数のボルト111およびナット112を介して受口102の開口端部に連結されている。尚、押輪110と受口102の開口端面とは非接触であり、押輪110と受口102の開口端面との間に所定の隙間113が形成されている。
【0004】
また、ロックリング106とパッキン107との間において、受口102の内周面と挿口104の外周面との間にはバックアップリングリング114が嵌め込まれている。
【0005】
また、
図13に示すように、116は、管101,103同士を接合する際に用いられる挿口挿入用治具であり、一箇所が切断された拡径自在な一つ割り構造を有する。
【0006】
挿口挿入用治具116を用いた管の接合方法を以下に説明する。
【0007】
先ず、
図13に示すように、ロックリング106をロックリング収容溝105にセットした状態で、挿口挿入用治具116を挿口104の外周に嵌める。その後、
図14に示すように、挿口104を受口102に挿入すると、挿口挿入用治具116の傾斜面117が受口102のパッキン当接面118に当接することにより、受口102に対して挿口104が管径方向へ移動し、一方の管101の管軸心と他方の管103の管軸心との管径方向におけるずれが減少して、受口102に対する挿口104の心出しが自動的に行われる。
【0008】
さらに挿口104を挿入すると、挿口突部108がロックリング106を押し広げ、挿口突部108がロックリング106を通過して受口102の奥側に達すると、ロックリング106が縮径して挿口104の外周に抱き付く。
【0009】
その後、挿口挿入用治具116を拡径して挿口104から取り外す。次に、
図12に示すように、バックアップリングリング114とパッキン107を挿口104の外周と受口102の内周との間に挿入し、ボルト111およびナット112を締め付けて、押輪110でパッキン107を受口奥側へ押圧する。これにより、一方の管101と他方の管103とが接合される。
【0010】
これによると、挿口104の外周と受口102の内周との間はパッキン107でシールされている。また、挿口突部108が挿口104の離脱方向Aにおいて受口奥側からロックリング106に係合することにより、挿口104が受口102から離脱するのを防止できる。
【0011】
また、誤って、ボルト111およびナット112を締め付け過ぎて、押輪110が過大な押圧力でパッキン107を受口奥側へ押圧したとしても、バックアップリングリング114が挿口104の外周と受口102の内周との間に固定されているため、パッキン107の受口奥側への移動がバックアップリングリング114によって妨げられ、パッキン107の奥端部がロックリング106に接触することはない。
【0012】
尚、上記のような管継手109および挿口挿入用治具116は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら上記の従来形式では、管101,103同士を接合する際、
図13,
図14に示すように、一旦、挿口挿入用治具116を挿口104に取り付けて、挿口104を受口102に挿入し、一方の管101の管軸心と他方の管103の管軸心との管径方向におけるずれを減少させた後、最終的に挿口挿入用治具116を挿口104から取り外す必要があるため、管101,103同士の接合作業に手間と労力を要するといった問題がある。
【0015】
本発明は、管同士の接合作業に要する手間と労力を軽減することが可能な管継手および管の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本第1発明は、一方の管の受口に他方の管の挿口が挿入され、
受口の内周にロックリング収容溝が形成され、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
ロックリングよりも受口開口端側において、管径方向に圧縮されて受口の内周面と挿口の外周面との間をシールするシールリングが設けられ、
挿口の外周に挿口突部が形成され、
挿口突部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに係合することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な管継手であって、
受口の開口端部に、シールリングを受口奥側へ押圧する押輪が設けられ、
押輪はシールリングを押圧する押圧方向において受口の開口端面に当接し、
受口の内周面と挿口の外周面との間にリング体が嵌め込まれ、
リング体は、管軸方向におけるロックリングとシールリングとの間に設けられており、受口の内周面と挿口の外周面との間に挿入される本体部と、本体部が受口開口端側へずれるのを防止するずれ止め部材とを有し、
本体部は、受口に対して挿口を管径方向へ移動させて、一方の管の管軸心と他方の管の管軸心との管径方向におけるずれを減少させ、
管軸方向におけるシールリングとリング体との間に隙間が形成されているものである。
【0017】
これによると、挿口を受口に挿入した状態で、リング体を受口の内周面と挿口の外周面との間に挿入することにより、リング体の本体部が、挿口を管径方向へ移動させて、一方の管の管軸心と他方の管の管軸心との管径方向におけるずれを減少させる。これにより、管の心出しが行える。
【0018】
また、リング体は管継手内に配置されるため、リング体を受口の内周面と挿口の外周面との間に設けたままで、一方の管と他方の管とを接合することができ、接合後においてもリング体が受口の内周面と挿口の外周面との間に設けられたままとなり、リング体を受口の内周面と挿口の外周面との間から外部へ取り外す必要はない。これにより、管同士の接合作業に要する手間と労力を軽減することができる。
【0019】
また、ずれ止め部材により、リング体の本体部が受口の内周面と挿口の外周面との間から受口開口端側へずれるのを防止することができる。
さらに、押輪は、受口の開口端面に当接することにより、これ以上、シールリングを受口奥側へ押し込むことができない。これにより、シールリングが過大な押圧力で受口奥側へ押し込まれることはなく、シールリングの奥端部がリング体に当接することはなく、リング体の損傷を防止することができる。
【0020】
本第2発明における管継手は、ずれ止め部材は、管軸方向における先端部が受口の内周面に当接し、管軸方向における基端部が本体部の内周側に設けられているものである。
【0021】
これによると、挿口が受口に対して離脱方向へ移動しても、ずれ止め部材の先端部が受口の内周面に当接した状態で、ずれ止め部材が受口の内周面とリング体の本体部との間で突っ張るため、リング体の本体部が受口開口端側(離脱方向)へずれるのを防止することができる。
【0025】
本第3発明における管継手は、リング体よりも受口開口端側において、受口の内周面と挿口の外周面との間にシールリング挿入空間が全周にわたり形成され、
シールリングはシールリング挿入空間に挿入され、
受口の内周面は、管軸方向におけるロックリング収容溝とシールリング挿入空間との間に、管径方向内側へ突出した受口突部を有し、
リング体の本体部は受口突部の内周面と挿口の外周面との間に挿入されているものである。
【0028】
本第4発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の管継手における管の接合方法であって、
一方の管の受口のロックリング収容溝にロックリングをセットし、
他方の管の挿口を受口に挿入して、挿口突部をロックリングの受口開口端側から受口奥側へ通過させ、
ロックリングを縮径して挿口の外周に抱き付かせ、
予め他方の管に外嵌しておいたリング体を、管軸方向に移動して、受口の開口端部から受口の内周面と挿口の外周面との間に挿入し、
シールリングを受口の開口端部から受口の内周面と挿口の外周面との間に押し込むものである。
【0029】
これによると、リング体を、管軸方向に移動して、受口の開口端部から受口の内周面と挿口の外周面との間に挿入することにより、リング体の本体部が、挿口を管径方向へ移動させて、一方の管の管軸心と他方の管の管軸心との管径方向におけるずれを減少させる。
【0030】
その後、シールリングを受口の開口端部から受口の内周面と挿口の外周面との間に押し込むことにより、リング体を受口の内周面と挿口の外周面との間に設けたままで、一方の管と他方の管とを接合することができる。これにより、リング体を受口の内周面と挿口の外周面との間から外部へ取り外す必要はなく、管同士の接合作業に要する手間と労力を軽減することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によると、リング体を管継手内に設けたままで、一方の管と他方の管とを接合することができ、接合後においてもリング体が受口の内周面と挿口の外周面との間に設けられたままとなり、リング体を受口の内周面と挿口の外周面との間から外部へ取り外す必要はない。これにより、管同士の接合作業に要する手間と労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態における管継手の断面図である。
【
図2】同、管継手に備えられるロックリングを拡径するときの図である。
【
図4】同、管継手に備えられるリング体の断面図である。
【
図5】同、管継手に備えられるリング体の斜視図である。
【
図6】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図7】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図8】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図9】同、管継手における管の接合方法を示す断面図であり、管継手の上部の断面を示す。
【
図10】同、管継手における管の接合方法を示す断面図であり、管継手の下部の断面を示す。
【
図11】同、管継手における管の接合方法を示す断面図であり、管継手全体の断面を示す。
【
図13】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【
図14】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0034】
図1に示すように、1は離脱防止機能を有する管継手であり、一方の管2の受口3に他方の管4の挿口5が挿入されている。尚、これら管2,4には例えばダクタイル鉄管等が使用されている。
【0035】
受口3の内周面にはロックリング収容溝7が全周にわたり形成されている。ロックリング収容溝7には、ロックリング8と、ロックリング8を管径方向内向きに押圧する円環状の押圧部材9とが収容されている。
【0036】
図2に示すように、ロックリング8は、一箇所が切断された一つ割り構造のリングであり、切断部分11の幅12を拡大器13で拡大することによって拡径し、拡大器13を切断部分11から取り外すことによって縮径して元の径に戻るような弾性を有している。
【0037】
図1に示すように、挿口5の外周には挿口突部15が全周にわたり形成されている。挿口突部15が挿口5の離脱方向Aにおいて受口奥側からロックリング8に係合することにより、挿口5が受口3から離脱するのを防止できる。
【0038】
図8に示すように、受口3の内周面は、受口3の開口端面から奥側へ次第に縮径するテーパー部16と、テーパー部16の奥端から奥側へ延びるストレート部17と、ストレート部17の奥端から管径方向内側へ突出した受口突部18とを有している。ストレート部17は管軸方向において同一の内径で形成されている。受口突部18は、管軸方向においてストレート部17とロックリング収容溝7との間に全周にわたり設けられており、ストレート部17よりも小さな内径を有している。
【0039】
図1に示すように、ロックリング8よりも受口開口端側において、管径方向に圧縮されて受口3の内周面と挿口5の外周面との間をシールするシールリング19が設けられている。シールリング19は、ゴム製のリング(ゴム輪)であり、
図8に示すように受口3のテーパー部16およびストレート部17と挿口5の外周面との間に全周にわたって形成されているシールリング挿入空間20に挿入される。尚、受口突部18は管軸方向におけるロックリング収容溝7とシールリング挿入空間20との間に位置している。
【0040】
図1に示すように、受口3の開口端部には、シールリング19を受口奥側へ押圧する押輪22が設けられている。押輪22は、シールリング19を押圧する押圧方向Bにおいて受口3の開口端面に当接する当接部23を有しており、複数のボルト25およびナット26によって受口3の開口端部に連結されている。
【0041】
管軸方向におけるロックリング8とシールリング19との間には、リング体31が設けられている。
図3~
図5に示すように、リング体31は、一箇所が切断された一つ割り構造のリングであり、弾性を有する樹脂等の材質で製造されており、円環状で一つ割り構造の本体部32と、本体部32が受口開口端側へずれるのを防止するずれ止め部材33とを有している。
【0042】
本体部32は、その断面形状が四角形であり、受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入されることで、受口3に対して挿口5を管径方向へ移動させて、一方の管2の管軸心29(
図11参照)と他方の管4の管軸心28(
図11参照)との管径方向におけるずれを減少させる。
【0043】
尚、本体部32の断面形状は、四角形のみに限定されるものではないが、外周面35と内周面36とが平行であることが好ましく、この場合、本体部32が受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に安定して設けられる。
【0044】
また、本体部32の内周面36から外周面35までの径方向の高さHは、受口突部18の内径の許容最小値と挿口5の外径の許容最大値との差の半分の値未満に設定されている。
【0045】
ずれ止め部材33は、管軸方向における先端部が受口3の内周面のストレート部17に当接可能であり、管軸方向における基端部が本体部32の内周側に一体に設けられており、基端部から先端部に行くほど拡径するリング状で一つ割り構造の部材である。
【0046】
管軸方向におけるシールリング19とリング体31との間には隙間38が全周にわたり形成されている。
【0047】
上記のような管継手1における管2,4の接合方法を以下に説明する。
【0048】
図6に示すように、予め、他方の管4にリング体31とシールリング19と押輪22を外嵌しておく。そして、一方の管2のロックリング収容溝7に押圧部材9とロックリング8とを収容(セット)する。そして、
図2に示すように、ロックリング8の切断部分11の幅12を拡大器13で拡大して、ロックリング8を拡径する。次に、
図6に示すように、ロックリング8の切断部分11にL形状の拡径保持具40を挿入するとともに、拡大器13を取り外し、ロックリング8を拡径した状態に維持する。
【0049】
その後、
図7に示すように、挿口5を受口3に挿入して、挿口突部15をロックリング8の受口開口端側から受口奥側へ通過させる。この際、ロックリング8は拡径保持具40によって拡径状態に維持されているため、挿口突部15は容易にロックリング8の内側を通過する。
【0050】
次に、
図8に示すように、拡径保持具40を取り外して、ロックリング8を縮径させる。これにより、ロックリング8が挿口5の外周に抱き付く。
【0051】
その後、
図9に示すように、リング体31を、管軸方向に移動して、受口3の開口端部から受口3の内周面と挿口5の外周面との間に押し込み、受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入する。これにより、
図11に示すように、リング体31の本体部32が、挿口5を管径方向へ移動させて、一方の管2の管軸心29と他方の管4の管軸心28との管径方向におけるずれを減少させる。このため、他方の管4の管軸心28が一方の管2の管軸心29にほぼ一致し、管2,4の心出しが行える。
【0052】
例えば、リング体31を受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入するよりも前の段階で、他方の管4の管軸心28が一方の管2の管軸心29に対して上方にずれていた場合、
図9に示すように、リング体31を受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入することにより、挿口5が受口3に対して下向きに移動し、一方の管2の管軸心29と他方の管4の管軸心28との管径方向におけるずれが減少する。
【0053】
この際、少なくとも管継手1の上部において、本体部32の外周面35が受口突部18の内周面に当接するとともに、本体部32の内周面36が挿口5の外周面に当接する。さらに、
図10に示すように、管継手1の下部において、本体部32の外周面35と受口突部18の内周面との間に僅かな隙間が形成されたり、或いは、本体部32の内周面36と挿口5の外周面との間に僅かな隙間が形成されることがある。
【0054】
また、上記とは反対に、他方の管4の管軸心28が一方の管2の管軸心29に対して下方にずれていた場合、リング体31を受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入することにより、挿口5が受口3に対して上向きに移動し、一方の管2の管軸心29と他方の管4の管軸心28との管径方向におけるずれが減少する。
【0055】
この際、少なくとも管継手1の下部において、本体部32の外周面35が受口突部18の内周面に当接するとともに、本体部32の内周面36が挿口5の外周面に当接する。さらに、管継手1の上部において、本体部32の外周面35と受口突部18の内周面との間に僅かな隙間が形成されたり、或いは、本体部32の内周面36と挿口5の外周面との間に僅かな隙間が形成されることがある。
【0056】
また、
図9,
図10に示すように、管軸方向においてリング体31の本体部32がロックリング8に当接することにより、リング体31が受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間から受口奥側へ離脱するのを防止することができ、リング体31を確実に受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入することができる。
【0057】
このようにして管2,4の心出しを行った後、
図1に示すように、シールリング19を受口3の開口端部からシールリング挿入空間20に挿入し、ボルト25およびナット26を用いて押輪22を受口3の開口端部に連結し、押輪22の当接部23が受口3の開口端面に当接するまで、ボルト25およびナット26を締め込む。これにより、シールリング19が、シールリング挿入空間20に押し込まれ、管径方向において圧縮される。
【0058】
このように、シールリング19をシールリング挿入空間20内に装着することにより、他方の管4の管軸心28が一方の管2の管軸心29にさらに精度良く一致し、この状態では、
図3に示すように、リング体31の本体部32の外周面35と受口突部18の内周面との間に僅かな隙間が形成される。
【0059】
リング体31は管軸方向におけるロックリング8とシールリング19との間に設けられるため、リング体31を受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入したままで、一方の管2と他方の管4とを接合することができ、接合後においてもリング体31が受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に嵌め込まれたままとなり、リング体31を受口3の内周面と挿口5の外周面との間から外部へ取り外す必要はない。これにより、管2,4同士の接合作業に要する手間と労力を軽減することができる。
【0060】
また、
図1に示すように挿口5が受口3に対して離脱方向Aへ移動した場合、
図3に示すように、ずれ止め部材33の先端部が受口3の内周面のストレート部17に当接した状態で、ずれ止め部材33が受口3の内周面と本体部32との間で突っ張るため、リング体31の本体部32が受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間から受口開口端側(離脱方向A)へずれるのを防止することができる。
【0061】
尚、ずれ止め部材33の先端部は全周にわたり受口3の内周面のストレート部17に当接するのが好ましいが、ずれ止め部材33の先端部の周方向における一部分が受口3の内周面のストレート部17から離間していてもよい。
【0062】
また、挿口5が受口3に対して挿入方向(離脱方向Aの反対方向)へ移動した場合、
図3に示すように、リング体31の本体部32がロックリング8に当接するため、本体部32が受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間から受口奥側(離脱方向Aの反対方向)へずれるのを防止することができる。
【0063】
また、
図1に示すように、押輪22の当接部23が受口3の開口端面に当接することにより、これ以上、押輪22でシールリング19を受口奥側へ押し込むことはできない。これにより、シールリング19が過大な押圧力で受口奥側へ押し込まれることはなく、シールリング19の奥端部がリング体31に当接することはないので、リング体31の損傷を防止することができる。
【0064】
上記実施の形態では、受口3の内周面に受口突部18が形成され、リング体31を受口突部18の内周面と挿口5の外周面との間に挿入することにより、リング体31の装着作業が容易に行えるが、受口突部18が形成されていない受口3であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 管継手
2 一方の管
3 受口
4 他方の管
5 挿口
7 ロックリング収容溝
8 ロックリング
15 挿口突部
19 シールリング
22 押輪
28,29 管軸心
31 リング体
32 本体部
33 ずれ止め部材
38 隙間
A 離脱方向
B 押圧方向