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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20231109BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B60W30/09
B60L15/00 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019229145
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095079
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大伴 洋祐
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-47746(JP,A)
【文献】特開平1-145243(JP,A)
【文献】特開平2-155843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、
前記共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、
減速操作を受け付けるブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサと、
前記共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、前記共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、
を備え、
前記モード制御部は、
前記ブレーキペダルの操作量が、前記クリープ駆動力に抗して自車両の停止を維持させることが可能な前記ブレーキペダルの操作量である所定量以上であれば、前記クリープモードへの切替を許可し、
前記ブレーキペダルの操作量が前記所定量未満であれば、前記クリープモードへの切替を制限する車両。
【請求項2】
自車両の速度を検出する速度センサを備え、
前記モード制御部は、
前記ブレーキペダルの操作量が前記所定量未満である場合において、
自車両の速度が所定速度以上であれば、前記クリープモードへの切替を許可し、
自車両の速度が所定速度未満であれば、前記クリープモードへの切替を制限する請求項1に記載の車両。
【請求項3】
加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、
前記共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、
減速操作を受け付けるブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサと、
自車両の速度を検出する速度センサと、
前記共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、前記共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、
を備え、
前記モード制御部は、
前記ブレーキペダルの操作量が所定量以上であれば、前記クリープモードへの切替を許可し、
前記ブレーキペダルの操作量が所定量未満である場合において、
自車両の速度が所定速度以上であれば、前記クリープモードへの切替を許可し、
自車両の速度が所定速度未満であれば、前記クリープモードへの切替を制限する、車両。
【請求項4】
加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、
前記共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、
自車両の速度を検出する速度センサと、
前記共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、前記共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、
を備え、
前記モード制御部は、
自車両の速度が所定速度以上であれば、前記クリープモードへの切替を許可し、
自車両の速度が所定速度未満であれば、前記クリープモードへの切替を制限する車両。
【請求項5】
前記共通ペダルモードと前記クリープモードとの間の切替操作を受け付けるモード切替スイッチを備え、
前記モード制御部は、
自車両の速度が所定速度未満である場合において、前記モード切替スイッチを通じた切替操作が所定時間以上継続されれば、前記クリープモードへの切替を許可する請求項2から4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
自車両の周囲の障害物を検知する障害物検知部を備え、
前記モード制御部は、前記共通ペダルモードから前記クリープモードへの切替が許可された際、前記障害物検知部によって障害物が検知された場合、前記クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を、障害物が検知されていない場合の時定数より大きな値とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、
前記共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、
減速操作を受け付けるブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサと、
自車両の周囲の障害物を検知する障害物検知部と、
前記共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、前記共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、
を備え、
前記モード制御部は、
前記ブレーキペダルの操作量が所定量以上であれば、前記クリープモードへの切替を許可し、
前記ブレーキペダルの操作量が所定量未満であれば、前記クリープモードへの切替を制限し、
前記共通ペダルモードから前記クリープモードへの切替が許可された際、前記障害物検知部によって障害物が検知された場合、前記クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を、障害物が検知されていない場合の時定数より大きな値とする、車両。
【請求項8】
前記モード制御部は、前記障害物検知部によって障害物が検知された場合における前記クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を、前記障害物検知部によって検知された障害物と自車両との離隔距離に基づいて導出する請求項6または7に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてモータを含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
1のペダル(以下、共通ペダルという場合がある)で車両の加速操作および減速操作を可能とする技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-64468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、共通ペダルの操作量が最小値(ゼロ)であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとを、モード切替スイッチで切り替え可能な構成となっているものがある。
【0005】
ここで、共通ペダルモードで共通ペダルの操作量を最小値とすることで車両を停止させている状態において、運転者を含む搭乗者が不用意にモード切替スイッチを操作してしまい、クリープモードに切り替わったとする。この場合、共通ペダルの操作量が最小値の状態でクリープ駆動力が発生するため、車両が意図せずに発進してしまうことがある。そうすると、運転者は、意図せずに発進されたことに驚いて、共通ペダル上の足をそのまま踏み下ろしてしまい、運転者の意図しない発進をさらに促進してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、運転者の意図しない発進を防止することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、減速操作を受け付けるブレーキペダルと、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサと、共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、を備え、前記モード制御部は、ブレーキペダルの操作量が、クリープ駆動力に抗して自車両の停止を維持させることが可能な前記ブレーキペダルの操作量である所定量以上であれば、クリープモードへの切替を許可し、ブレーキペダルの操作量が所定量未満であれば、クリープモードへの切替を制限する。
【0008】
また、自車両の速度を検出する速度センサを備え、モード制御部は、ブレーキペダルの操作量が所定量未満である場合において、自車両の速度が所定速度以上であれば、クリープモードへの切替を許可し、自車両の速度が所定速度未満であれば、クリープモードへの切替を制限してもよい。
上記課題を解決するために、本発明の車両は、加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、減速操作を受け付けるブレーキペダルと、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサと、自車両の速度を検出する速度センサと、共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、を備え、前記モード制御部は、ブレーキペダルの操作量が所定量以上であれば、クリープモードへの切替を許可し、ブレーキペダルの操作量が所定量未満である場合において、自車両の速度が所定速度以上であれば、クリープモードへの切替を許可し、自車両の速度が所定速度未満であれば、クリープモードへの切替を制限する。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、自車両の速度を検出する速度センサと、共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、を備え、前記モード制御部は、自車両の速度が所定速度以上であれば、クリープモードへの切替を許可し、自車両の速度が所定速度未満であれば、クリープモードへの切替を制限する。
【0010】
また、共通ペダルモードとクリープモードとの間の切替操作を受け付けるモード切替スイッチを備え、モード制御部は、自車両の速度が所定速度未満である場合において、モード切替スイッチを通じた切替操作が所定時間以上継続されれば、クリープモードへの切替を許可してもよい。
【0011】
また、自車両の周囲の障害物を検知する障害物検知部を備え、モード制御部は、共通ペダルモードからクリープモードへの切替が許可された際、障害物検知部によって障害物が検知された場合、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を、障害物が検知されていない場合の時定数より大きな値としてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の車両は、加速操作および減速操作を受け付ける共通ペダルと、共通ペダルの操作量を検出する共通ペダルセンサと、減速操作を受け付けるブレーキペダルと、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサと、自車両の周囲の障害物を検知する障害物検知部と、共通ペダルで加速操作および減速操作が可能な共通ペダルモードと、共通ペダルの操作量が最小値であっても加速方向の所定のクリープ駆動力を発生させるクリープモードとの切替を制御するモード制御部と、を備え、前記モード制御部は、ブレーキペダルの操作量が所定量以上であれば、クリープモードへの切替を許可し、ブレーキペダルの操作量が所定量未満であれば、クリープモードへの切替を制限し、共通ペダルモードからクリープモードへの切替が許可された際、障害物検知部によって障害物が検知された場合、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を、障害物が検知されていない場合の時定数より大きな値とする。
【0012】
また、モード制御部は、障害物検知部によって障害物が検知された場合におけるクリープ駆動力の立ち上がりの時定数を、障害物検知部によって検知された障害物と自車両との離隔距離に基づいて導出してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者の意図しない発進を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態による車両の構成を示す概略図である。
図2図2は、共通ペダルについて説明する図である。図2Aは、共通ペダルをアクセルペダルとして機能させる場合を説明する図である。図2Bは、共通ペダルで加速操作および減速操作を可能とさせる場合を説明する図である。
図3図3は、クリープモードへの切替の許可および不許可を説明する図である。
図4図4は、クリープモードに切り替えられたときのクリープ駆動力の立ち上がりについて説明する図である。図4Aは、障害物が検知されなかった場合を示す。図4Bは、障害物が検知された場合を示す。
図5図5は、モード制御部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態による車両1の構成を示す概略図である。車両1は、例えば、モータを駆動源とした電気自動車である。なお、車両1は、エンジンとモータとが並行して設けられたハイブリッド電気自動車であってもよい。以後、車両1を、自車両と呼ぶ場合がある。
【0017】
車両1は、共通ペダル10、共通ペダルセンサ12、ブレーキペダル14、ブレーキペダルセンサ16、速度センサ18、モード切替スイッチ20、駆動機構22、制動機構24、車両制御部26、報知部28および障害物検知部30を含む。
【0018】
共通ペダル10は、その操作量(踏込み量)に従った加速操作および減速操作を受け付ける。つまり、車両1は、1のペダル(共通ペダル10)で加速操作および減速操作を可能とする共通ペダル機能を有する。また、車両1では、共通ペダル10を、その操作量(踏込み量)に従った加速操作のみを受け付けるアクセルペダルとして機能させることもできる。共通ペダルセンサ12は、共通ペダル10の操作量(以後、共通ペダル操作量と呼ぶ場合がある)を検出する。
【0019】
図2は、共通ペダル10について説明する図である。図2Aは、共通ペダル10をアクセルペダルとして機能させる場合を説明する図である。図2Bは、共通ペダル10で加速操作および減速操作を可能とさせる場合を説明する図である。図2Aおよび図2Bでは、共通ペダル10の踏込み方向を実線の矢印で示している。また、図2Aおよび図2Bでは、車両1の姿勢が水平となっている。また、運転者は、図2Aおよび図2B中、共通ペダル10の右側に位置する。共通ペダル10は、例えば、運転席の前方の鉛直下方に配置され、車体40に連結される。
【0020】
共通ペダル10が踏み込まれていない場合、共通ペダル10の車体40に対する傾斜角度は、最も大きくなり、操作量(踏込み量)は、最小値となる。また、共通ペダル10が最大限に踏み込まれた場合、共通ペダル10の車体40に対する傾斜角度は、最も小さくなり、操作量(踏込み量)は、最大値となる。また、共通ペダル10のストロークは、操作量の最小値から最大値までである。
【0021】
図2Aで示すように、アクセルペダルとして機能させた場合の共通ペダル10は、操作量の最小値から最大値までの全領域が加速領域となっている。加速領域は、加速操作を受け付ける領域である。加速領域では、操作量が多くなるに従って(共通ペダル10の車体40に対する傾斜角度が小さくなるに従って)、車両1を加速させる駆動力が増加される。
【0022】
これに対し、図2Bで示すように、加速操作および減速操作を可能とさせる場合の共通ペダル10では、操作量の最大値と操作量の最小値との間において、加速領域と減速領域とを区分する所定の境界値が設定される。加速領域は、加速操作を受け付ける領域であり、操作量の最大値と所定の境界値との間に設定される。減速領域は、減速操作を受け付ける領域であり、所定の境界値と操作量の最小値との間に設定される。所定の境界値は、例えば、減速領域よりも加速領域が大きくなるように設定されるが、この例に限らない。
【0023】
図2Bにおいて、加速領域では、操作量が多くなるに従って(共通ペダル10の車体40に対する傾斜角度が小さくなるに従って)、車両1を加速させる駆動力が増加される。また、減速領域では、操作量が少なくなるに従って(共通ペダル10の車体40に対する傾斜角度が大きくなるに従って)、車両1を減速させる制動力が増加される。減速領域では、駆動用のモータを発電機として機能させてバッテリに電力を回生する回生ブレーキが行われる。減速領域では、共通ペダル10の操作量に従った減速度を回生のみで達成できない場合には、機械的なブレーキが併用されてもよい。
【0024】
共通ペダル10で加速操作および減速操作を可能とさせる場合、共通ペダル10の操作量が最小値(ゼロ)で維持されると、車両1は、機械的なブレーキがかけられた状態で維持される。このため、車両1は、共通ペダル10の操作量が最小値に維持されることで、運転者が共通ペダル10とは異なるブレーキペダル14を踏み続けることなく、停止し続けることができる。
【0025】
これに対し、共通ペダル10をアクセルペダルとして機能させる場合、車両1では、共通ペダル10の操作量が最小値(ゼロ)であっても加速方向の所定の駆動力であるクリープ駆動力を発生させる。このため、車両1は、共通ペダル10の操作量が最小値であっても、ブレーキペダル14が踏まれなければ発進および走行される。
【0026】
以後、共通ペダル10を、加速操作および減速操作を受け付けるように機能させる状態を、共通ペダルモードと呼ぶ場合がある。また、共通ペダル10を、加速操作のみを受け付けるように機能させ、共通ペダル10の操作量が最小値(ゼロ)であっても加速方向のクリープ駆動力を発生させる状態を、クリープモードと呼ぶ場合がある。
【0027】
車両1では、共通ペダルモードおよびクリープモードが排他的に切り替わり、両モードを同時に機能させることはできないようになっている。
【0028】
図1に戻って、ブレーキペダル14は、共通ペダル10とは独立して設けられる。ブレーキペダル14は、その操作量に従った減速操作を受け付ける。ブレーキペダル14は、操作量が多くなるに従って車両1を減速させる制動力が増加される。ブレーキペダルセンサ16は、ブレーキペダル14の操作量(以後、ブレーキ操作量と呼ぶ場合がある)を検出する。速度センサ18は、車両1の速度(所謂、車速)を検出する。
【0029】
モード切替スイッチ20は、共通ペダルモードとクリープモードとの間のモードの切替操作を受け付ける。モード切替スイッチ20は、例えば、車両1のコンソールに配置される。モード切替スイッチ20は、例えば、プッシュボタンで構成され、押される度に現在のモードから他方のモードへの切替操作として受け付ける。なお、モード切替スイッチ20は、プッシュボタンに限らず、例えば、レバースイッチなどであってもよい。
【0030】
駆動機構22は、車両1の車輪を回転させる駆動用のモータを含む。駆動用のモータは、共通ペダル10の加速操作に基づいて駆動される。つまり、駆動機構22は、共通ペダル10の加速操作に基づいて車両1を加速させる。
【0031】
制動機構24は、機械的なブレーキおよび回生ブレーキを含む。制動機構24は、共通ペダル10の減速操作およびブレーキペダル14の減速操作に基づいて車両1を減速および停止させる。
【0032】
車両制御部26は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。車両制御部26は、プログラムを実行することで、駆動制御部50、制動制御部52およびモード制御部54として機能する。
【0033】
駆動制御部50は、共通ペダルセンサ12から取得される共通ペダル操作量に基づいて駆動機構22を制御する。具体的には、駆動制御部50は、共通ペダル操作量に基づいて車両1の駆動力の目標値(目標駆動力)を導出し、導出された目標駆動力で車両1を駆動させるように駆動機構22に指示する。
【0034】
制動制御部52は、共通ペダルセンサ12から取得される共通ペダル操作量、および、ブレーキペダルセンサ16から取得されるブレーキ操作量に基づいて制動機構24を制御する。具体的には、制動制御部52は、共通ペダル操作量およびブレーキ操作量に基づいて車両1の減速度の目標値(目標減速度)を導出し、導出された目標減速度で車両1を減速させるように制動機構24に指示する。なお、説明を省略するが、車両制御部26は、駆動機構22および制動機構24の他、不図示の操舵機構など、車両1の各部を制御する。
【0035】
モード制御部54は、モード切替スイッチ20を通じた切替操作に基づいて、共通ペダルモードおよびクリープモードのいずれを現在のモードとするかを制御する。
【0036】
ここで、例えば、共通ペダルモードで共通ペダル10の操作量を最小値(ゼロ)とすることで車両1を停止させている状態において、運転者を含む搭乗者が不用意にモード切替スイッチ20を操作してしまったとする。仮に、共通ペダルモードからクリープモードに切り替わるとすると、共通ペダル10の操作量が最小値(ゼロ)の状態でクリープ駆動力が発生するため、車両1が意図せずに発進してしまうことがある。そうすると、運転者は、意図せずに発進されたことに驚いて、共通ペダル10上の足をそのまま踏み下ろしてしまい、運転者の意図しない発進をさらに促進してしまうおそれがある。また、運転者は、共通ペダル10上の足をブレーキペダル14に移動させてからブレーキペダル14を踏込んで制動させるため、実際に制動が開始されるまでに時間がかかることがある。
【0037】
そこで、モード制御部54は、後述する所定条件を満たす状態において、モード切替スイッチ20を通じて共通ペダルモードからクリープモードへの切替操作が為されたときに限り、クリープモードへの切替を許可する。換言すると、モード制御部54は、後述する所定条件を満たしていなければ、モード切替スイッチ20を通じて共通ペダルモードからクリープモードへの切替操作が為されたとしても、クリープモードへの切替を制限し、共通ペダルモードを維持させる。
【0038】
ここで、クリープモードへの切替を制限するとは、クリープモードへの切替を許可しない(不許可とする)ということに相当する。具体的には、モード制御部54は、モード切替スイッチ20から信号を有効に受け付けるが、クリープモードへの切替の実行については行わず、共通ペダルモードを維持させる。また、モード制御部54は、モード切替スイッチ20からの信号を有効に受け付けないというように制限してもよい。
【0039】
図3は、クリープモードへの切替の許可および不許可を説明する図である。モード制御部54は、ブレーキペダルセンサ16で取得されるブレーキ操作量が所定量以上である状態において、クリープモードへの切替操作が為された場合、クリープモードへの切替を許可する。所定量は、例えば、クリープ駆動力に抗して車両1の停止(停車)を維持させることが可能な最小限のブレーキ操作量に設定される。ブレーキ操作量が所定量以上であれば、仮に、クリープ駆動力が意図せず発生したとしても、ブレーキペダル14による制動力がクリープ駆動力に打ち勝ち、運転者の意図しない発進を防止できる。
【0040】
また、モード制御部54は、速度センサ18で取得される自車両の速度が所定速度以上である状態において、クリープモードへの切替操作が為された場合、クリープモードへの切替を許可する。所定速度は、例えば、15km/h程度とするが、この例に限らず、任意の速度に設定可能である。
【0041】
自車両の速度が所定速度以上であれば、車両1が走行中であるため、クリープ駆動力が意図せず発生したとしても、ブレーキペダル14に踏み替えて制動を行う必要がない。また、自車両の速度が所定速度以上であれば、運転者には走行の意図があるとみなせるため、クリープ駆動力が意図せず発生したとしても、運転者の意図に反する発進となる可能性が低い。
【0042】
また、仮に、自車両の速度が所定速度以上においてクリープモードへの切替を制限すると、逆に、運転操作性を阻害する可能性がある。このため、車両1では、自車両の速度が所定速度以上である場合には、モード切替スイッチ20を通じたクリープモードへの切替操作に応じてクリープモードへの切替を許可する。
【0043】
また、モード制御部54は、ブレーキ操作量が所定量未満であり、かつ、自車両の速度が所定速度未満である状態において、クリープモードへの切替操作が為された場合、クリープモードへの切替を制限する(不許可とする)。この場合、共通ペダルモードが維持される。
【0044】
ブレーキ操作量が所定量未満であると、クリープ駆動力に抗する十分な制動力が働いていないため、クリープ駆動力による加速度が生じ、車両1が前方に飛び出すようなショックを運転者が感じる可能性が高い。そこで、ブレーキ操作量が所定量未満であれば、クリープモードへの切替を許可しないようにする。これにより、ブレーキペダル14による制動力が十分に働いていなくとも、クリープ駆動力が発生することがないため、運転者の意図しない発進の発生を防止でき、車両1が前方に飛び出すようなショックを運転者に感じさせないようにすることが可能となる。
【0045】
また、自車両の速度が所定速度未満であると、クリープ駆動力による加速度が顕著となり、車両1が前方に飛び出すようなショックを運転者が感じる可能性が高い。そこで、自車両の速度が所定速度未満であれば、クリープモードへの切替を許可しないようにする。これにより、車両1が停止されている状態であっても、クリープ駆動力による加速度が発生することがないため、運転者の意図しない発進の発生を防止でき、車両1が前方に飛び出すようなショックを運転者に感じさせないようにすることが可能となる。
【0046】
このように、車両1では、ブレーキ操作量が所定量未満であり、かつ、自車両の速度が所定速度未満であるときに、クリープモードへの切替を制限することで、運転者の意図しない発進を防止できる。その結果、車両1では、運転者が意図しない発進に驚いて誤って共通ペダル10を踏み込んでしまうような事態を未然に防止できる。
【0047】
なお、ここでは、ブレーキ操作量が所定量未満であり、かつ、自車両の速度が所定速度未満であるという条件を例に挙げていた。しかし、モード制御部54は、自車両の速度に依らず、少なくともブレーキ操作量が所定量未満であれば、クリープモードへの切替を制限してもよい。また、モード制御部54は、ブレーキ操作量に依らず、少なくとも自車両の速度が所定速度未満であれば、クリープモードへの切替を制限してもよい。これらの態様においても、上述のように運転者の意図しない発進を防止できる。
【0048】
また、モード制御部54は、自車両の速度が所定速度未満であっても、モード切替スイッチ20を通じた切替操作が所定時間以上継続されれば、ブレーキ操作量に依らず、共通ペダルモードからクリープモードへの切替を許可してもよい。例えば、モード制御部54は、プッシュボタンで構成されるモード切替スイッチ20が所定時間以上継続して押下された場合、クリープモードへの切替を許可する。一方、モード制御部54は、モード切替スイッチ20が押下されたとしても所定時間が経過する前に押下が解除された場合、クリープモードへの切替を制限する。なお、切替操作は、押下操作に限らず、モード切替スイッチ20の具体的な構成によって任意に設定することができる。
【0049】
モード切替スイッチ20を通じた切替操作が所定時間以上継続されるということは、運転者によるクリープモードへの切替要求が強いと推測される。このような場合、運転者は、クリープモードへの切替によって車両1が前方に飛び出すようなショックが発生するかもしれないことを予期することができ、仮にショックが生じても十分に対処することができる。また、クリープモードへの切替要求が強い状況で、クリープモードへの切替を制限しないため、運転操作性が阻害されることを回避することができる。なお、切替操作の継続時間の判断基準となる所定時間については、例えば、5秒程度とするが、運転者による切替要求が強いことが判断できる程度の任意の時間に設定することができる。
【0050】
また、モード制御部54は、クリープモードから共通ペダルモードへの切替操作が為された場合には、ブレーキ操作量および自車両の速度の条件に拘わらず、その切替操作に応じてクリープモードから共通ペダルモードへ切り替える。
【0051】
再び図1に戻って、報知部28は、例えば、コンソールに設けられる警告ランプなどである。モード制御部54は、モード切替スイッチ20を通じて切替操作が為された際にクリープモードへの切替を制限した場合(不許可とした場合)、その旨を報知部28に報知させる。なお、報知部28は、警告ランプに限らず、例えば、警告音を発するブザーなどであってもよい。
【0052】
障害物検知部30は、車両1の周囲の障害物を検知する。障害物は、例えば、先行車両や人など、自車両の進行を妨げるものとする。なお、障害物は、先行車両や人などに限らず、例えば、自転車や建物などであってもよい。
【0053】
障害物検知部30は、例えば、撮像装置および車外環境認識装置を含む。撮像装置は、例えば、車両1の進行方向の検出領域に存在する対象物を撮像し、輝度情報が含まれる輝度画像を連続して生成する。なお、対象物は、例えば、他車両、自転車、人、ガードレール、道路の白線などとするが、この例に限らない。車外環境認識装置は、撮像装置で生成された輝度画像に基づいて視差情報を導出し、視差情報が含まれる距離画像を生成する。車外環境認識装置は、輝度画像および距離画像に基づいて、検出領域における対象物の種類を特定する。
【0054】
障害物検知部は、障害物として予め設定されている種類の対象物が、自車両の進行方向において特定された場合、障害物を検知した旨の信号をモード制御部54に送信する。なお、ここでは、撮像装置で撮像された画像を用いて障害物を検知する例を挙げたが、障害物検知部30は、例えば、赤外線や電波を自車両の進行方向に放射し、反射された赤外線や電波によって障害物を検知してもよい。
【0055】
モード制御部54は、切替操作に応じてクリープモードへの切替が許可された際、障害物検知部30によって障害物が検知されたか否かによって、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を異ならせる。
【0056】
図4は、クリープモードに切り替えられたときのクリープ駆動力の立ち上がりについて説明する図である。図4Aは、障害物が検知されなかった場合を示す。図4Bは、障害物が検知された場合を示す。図4Aおよび図4Bにおいて、立ち上がり後に定常状態となったクリープ駆動力を100%とする。
【0057】
図4Aで示すように、障害物が検知されなかった場合、モード制御部54は、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を第1時定数τ1とする。第1時定数τ1は、障害物が検知されなかった場合において、クリープ駆動力の立ち上がり開始時刻T0からクリープ駆動力が定常状態の約63%となる時刻までの時間を示す。また、クリープ駆動力の立ち上がり開始時刻T0から第1時定数τ1の約5倍の時間が経過すると、クリープ駆動力が100%の定常状態となる。第1時定数τ1は、比較的小さい値に設定される。このため、この場合、クリープ駆動力は、比較的早期に定常状態となる。
【0058】
また、図4Bで示すように、障害物が検知された場合、モード制御部54は、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を第2時定数τ2とする。第2時定数τ2は、障害物が検知された場合において、クリープ駆動力の立ち上がり開始時刻T0からクリープ駆動力が定常状態の約63%となる時刻までの時間を示す。また、クリープ駆動力の立ち上がり開始時刻T0から第2時定数τ2の約5倍の時間が経過すると、クリープ駆動力が100%の定常状態となる。第2時定数は、第1時定数より大きな値に設定される。図4Bでは、第2時定数を第1時定数の2倍とする例を挙げているが、第2時定数は、少なくとも第1時定数より大きければよく、この例に限らない。
【0059】
第2時定数が第1時定数より大きいため、障害物が検知された場合、障害物が検知されなかった場合に比べ、クリープ駆動力の立ち上がり開始から定常状態となるまでの時間(以後、変動時間と呼ぶ場合がある)が長くなる。つまり、障害物が検知された場合、クリープ駆動力が完全に発生するまでに時間がかかる。
【0060】
このため、車両1では、クリープモードに切り替えられても、障害物に接触するまでの時間を遅延させることができる。その結果、車両1では、障害物との接触を確実に回避することが可能となる。
【0061】
また、車両1では、第1時定数が比較的小さい値に設定されるため、クリープ駆動力の変動時間が、障害物が検知されていないにも拘わらず無駄に長くなることを抑制することができる。
【0062】
図5は、モード制御部54の動作を説明するフローチャートである。モード制御部54は、所定の割り込み制御タイミングごとに図5の一連の処理を繰り返す。
【0063】
所定の割り込み制御タイミングとなると、モード制御部54は、共通ペダルモードへの切替操作があるか否かを判断する(S100)。具体的には、モード制御部54は、モード切替スイッチ20から送信される信号が、クリープモードを示す信号から共通ペダルモードを示す信号に切り替わったか否かを判断する。
【0064】
共通ペダルモードへの切替操作があった場合(S100におけるYES)、モード制御部54は、モードを共通ペダルモードへ切り替え(S110)、一連の処理を終了する。
【0065】
共通ペダルモードへの切替操作がなかった場合(S100におけるNO)、モード制御部54は、速度センサ18から自車両の速度を取得し、自車両の速度が所定速度以上であるか否かを判断する(S120)。
【0066】
自車両の速度が所定速度未満の場合(S120におけるNO)、モード制御部54は、ブレーキペダルセンサ16からブレーキ操作量を取得し、ブレーキ操作量が所定量以上であるか否かを判断する(S130)。
【0067】
ブレーキ操作量が所定量未満の場合(S130におけるNO)、モード制御部54は、クリープモードへの切替操作があるか否かを判断する(S140)。具体的には、モード制御部54は、モード切替スイッチ20から送信される信号が、共通ペダルモードを示す信号からクリープモードを示す信号に切り替わったか否かを判断する。クリープモードへの切替操作がなかった場合(S140におけるNO)、モード制御部54は、一連の処理を終了する。この場合、共通ペダルモードが継続される。
【0068】
クリープモードへの切替操作があった場合(S140におけるYES)、モード制御部54は、モード切替スイッチ20を通じた切替操作が所定時間以上継続されたか否かを判断する(S150)。例えば、モード切替スイッチ20は、押下されている間、押下されていることを示す信号をモード制御部54に送信する。モード制御部54は、押下されていることを示す信号の継続時間を計測し、その継続時間が所定時間以上となった場合、切替操作が所定時間以上継続されたと判断する。
【0069】
切替操作が所定時間以上継続されなかった場合(S150におけるNO)、モード制御部54は、クリープモードへの切替を制限するとして、切替を制限することを報知部28に報知させ(S160)、一連の処理を終了する。この場合も、共通ペダルモードが継続される。モード制御部54は、例えば、共通ペダルモードが継続されていることをコンソールに表示させる。
【0070】
切替操作が所定時間以上継続された場合(S150におけるYES)、モード制御部54は、クリープモードへの切替を許可するとして、後述するステップS180の処理に進む。
【0071】
また、モード制御部54は、自車両の速度が所定速度以上である場合(S120におけるYES)、ステップS170の処理に進む。また、モード制御部54は、自車両の速度が所定速度未満であり(S120におけるNO)、かつ、ブレーキ操作量が所定量以上である場合(S130におけるYES)も、ステップS170の処理に進む。
【0072】
ステップS170において、モード制御部54は、クリープモードへの切替操作があるか否かを判断する(S170)。クリープモードへの切替操作がなかった場合(S170におけるNO)、モード制御部54は、一連の処理を終了する。この場合、共通ペダルモードが継続される。
【0073】
クリープモードへの切替操作があった場合(S170におけるYES)、モード制御部54は、共通ペダルモードからクリープモードへの切替を許可するとしてステップS180以降の処理を行う。
【0074】
ステップS180において、モード制御部54は、自車両の周囲に障害物があるか否かを判断する(S180)。具体的には、モード制御部54は、障害物検知部30から障害物を検知した旨の信号を受信した場合、自車両の周囲に障害物があると判断する。
【0075】
自車両の周囲に障害物がない場合(S180におけるNO)、モード制御部54は、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を第1時定数に設定し(S190)、ステップS210の処理に進む。
【0076】
自車両の周囲に障害物がある場合(S180におけるYES)、モード制御部54は、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を第2時定数に設定し(S200)、ステップS210の処理に進む。
【0077】
時定数の設定(S190またはS200)後、モード制御部54は、モードを共通ペダルモードからクリープモードへ切り替え(S210)、一連の処理を終了する。これにより、車両1には、設定された時定数でクリープ駆動力が発生する。
【0078】
以上のように、本実施形態の車両1では、ブレーキ操作量が所定量未満であれば、モード切替スイッチ20を通じた切替操作に依らずクリープモードへの切替が制限される。また、本実施形態の車両1では、自車両の速度が所定速度未満であれば、モード切替スイッチ20を通じた切替操作に依らずクリープモードへの切替が制限される。このため、本実施形態の車両1では、ブレーキ操作量が所定量未満である場合や自車両の速度が所定速度未満である場合には、クリープモードへの切替操作が意図せずに為されたとしても、クリープモードに切り替わることがないためクリープ駆動力が発生しない。
【0079】
したがって、本実施形態の車両によれば、運転者の意図しない発進を防止することが可能となる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
例えば、上記実施形態では、第2時定数の値が予め設定されていた。しかし、モード制御部54は、クリープモードへの切替が許可された際、障害物が検知された場合、自車両の進行方向における自車両と障害物との距離(以後、離間距離と呼ぶ場合がある)に基づいて第2時定数を導出してもよい。
【0082】
具体的には、障害物検知部30は、障害物を検知した場合に離間距離を導出する。離間距離は、例えば、距離画像に基づいて導出することができる。モード制御部54は、自車両がクリープ駆動力によって発進されて障害物に接触するまでに所定の猶予時間以上(例えば、3秒以上)かかるような第2時定数を導出する。例えば、モード制御部54は、自車両が所定の猶予時間かけて離隔距離を移動するときの加速度の推移を導出する。次に、モード制御部54は、加速度の推移に対応する駆動力の推移を導出し、離隔距離を移動するときの駆動力を積算した駆動力積算値を導出する。次に、モード制御部54は、クリープ駆動力の立ち上がり開始時刻からクリープ駆動力を猶予時間分だけ積算したクリープ駆動力積算値が上述の駆動力積算値と等しくなるようなクリープ駆動力の推移を導出する。クリープ駆動力の推移については、例えば、猶予時間、駆動力積算値、定常状態のクリープ駆動力、クリープ駆動力積算値などに基づいたパターンマッチングなどによって導出されてもよい。次に、モード制御部54は、クリープ駆動力の推移に基づいて、クリープ駆動力の変動時間を導出する。そして、モード制御部は、導出された変動時間から第2時定数を導出する。
【0083】
これにより、第2時定数は、離隔距離が短くなるに従って漸増する。つまり、離隔距離が短くなるに従ってクリープ駆動力が完全に立ち上がるまでの時間が遅延され、離隔距離が短くなったとしても障害物と接触するまでに所定の猶予時間が確保される。この態様によれば、検出された障害物との離隔距離が短くても、障害物と接触するまでに適切な運転操作を行う時間があるため、障害物との接触をより確実に回避することができる。
【0084】
また、上記実施形態では、クリープモードへの切替が許可された際に障害物が検知された場合、クリープ駆動力の立ち上がりの時定数を第2時定数に設定されていた。つまり、上記実施形態では、障害物が検知されたとしても、クリープモードへの切替が行われていた。しかし、モード制御部54は、クリープモードへの切替が許可された際に障害物が検知された場合、クリープモードへの切替の許可を取り消し、クリープモードへの切替を制限して共通ペダルモードを維持させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、駆動源としてモータを含む車両に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
10 共通ペダル
12 共通ペダルセンサ
14 ブレーキペダル
16 ブレーキペダルセンサ
18 速度センサ
20 モード切替スイッチ
30 障害物検知部
54 モード制御部
図1
図2
図3
図4
図5