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特許7382222残差故障パターン認識を用いたセンサ故障の検出及び特定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】残差故障パターン認識を用いたセンサ故障の検出及び特定
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
B64D45/00 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019230030
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2020114727
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】16/230,938
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ティー.ホワイトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】シャーウィン シー.リー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ケー.ラップニク
(72)【発明者】
【氏名】キアウマーズ ナジェーマバディ
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0340795(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0040430(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0228981(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0052994(US,A1)
【文献】米国特許第09128109(US,B1)
【文献】国際公開第2018/110598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
B64D 43/00
G01C 21/00
G01C 23/00
G01P 21/00
G01R 19/00
G05B 23/02
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定のための方法であって、
前記ビークルに設けられたセンサを用いてデータを検出し、その際、前記データは、m個のタイプのデータを含み、mは、2よりも大きい整数であり、
少なくとも1つのプロセッサにより、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行い、データのタイプ毎に単一の投票値を生成し、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、データのタイプ毎に、n個の投票値を用いて、m個の推定値を生成し、nは、mから1を減算した値に等しく、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記推定値と前記投票値とを比較して残差を生成し、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、前記ビークルにおける前記センサのうちの少なくとも1つに生じている故障を検出及び特定し、
前記データは、測定データを含む、方法。
【請求項2】
前記センサは、ピトー管、ピトー静圧管、静圧ポート、静圧管、迎角(AOA)、レゾルバ、又は、加速度計のうちの少なくとも2つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データのタイプは、全圧、静圧、迎角(AOA)、又は、加速度のうちの少なくとも3つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビークルは、空中ビークル、地上ビークル、又は、海上ビークルのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記空中ビークルは、航空機、無人航空機(UAV)、又は、ヘリコプターのうちの1つである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記データの少なくとも一部から既知の破損影響を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記既知の破損影響は、前記少なくとも1つのプロセッサが、動圧、マッハ数、迎角(AOA)、フラップ位置、ギア位置、過剰推力、又は、地面効果の項のうちの少なくとも1つを用いることにより除去される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つの統計フィルタを用いて前記推定値を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの統計フィルタは、拡張カルマンフィルタ(EKF)である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサにより、どのタイプのデータが誤っているか、又は、どのタイプのセンサが故障しているかを示すアラート信号を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記アラート信号に含まれる情報に基づいて、視覚アラート、又は、音声アラートのうちの少なくとも一方を生成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサにより、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定のためのシステムであって、
センサと、少なくとも1つのプロセッサと、を含み、
前記センサは、前記ビークルに設けられるとともに、データを検出し、前記データは、m個のタイプのデータを含み、mは、2よりも大きい整数であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行い、データのタイプ毎に単一の投票値を生成し、データのタイプ毎に、n個の投票値を用いて、m個の推定値を生成し、nは、mから1を減算した値に等しく、前記推定値と前記投票値とを比較して残差を生成し、前記残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、前記ビークルにおける前記センサのうちの少なくとも1つに生じている故障を検出及び特定し、
前記データは測定データを含む、システム。
【請求項14】
前記センサは、ピトー管、ピトー静圧管、静圧ポート、静圧管、迎角(AOA)、レゾルバ、又は、加速度計のうちの少なくとも2つを含む、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ故障の検出及び特定に関する。具体的には、本開示は、残差故障パターン(residual failure pattern)認識を用いたセンサ故障の検出及び特定に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、航空機のピトー管(pitot tubes)は、着氷による閉塞、水分の大量吸入、火山灰による閉塞などにより、測定誤差が生じ易い。航空機に設けられた複数のピトー管の多数が同時に塞がれると、共通モード空圧事象(common mode pneumatic event: CMPE)が発生する。CMPEが発生すると、コックピットのディスプレイに表示される対気速度に誤りが生じる。さらに、航空機の飛行制御システムにおいて、ある一定の時間枠に対気速度の誤差が生じると、航空機が最適な飛行経路からずれる可能性もある。
【0003】
上述した点から、航空機のセンサ測定誤差(例えば、対気速度、迎角、加速度など)に関するセンサ故障の検出及び特定技術の改善が求められる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、残差故障パターンを用いたセンサ故障の検出及び特定のための方法、システム、及び、装置に関する。1つ以上の実施形態においては、ビークルにおけるセンサ故障検出及び特定のための方法は、前記ビークルに設けられたセンサを用いてデータを検出することを含む。1つ以上の実施形態において、前記データは、m個のタイプのデータを含む。1つ以上の実施形態においては、mは2よりも大きい整数である。前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行い、データのタイプ毎に単一の投票値を生成することをさらに含む。また、前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、データのタイプ毎に、前記投票値の少なくともいくつかを用いて推定値を生成することを含む。いくつかの実施形態においては、n個の投票値を用いてm個の推定値を生成し、nは、mから1を減算した値に等しい。さらに、前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、前記推定値と前記投票値とを比較して残差を生成することを含む。さらに、前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、前記残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、前記ビークルにおける少なくとも1つのセンサに生じている故障を検出及び特定することを含む。
【0005】
1つ以上の実施形態において、前記データは、測定データを含む。少なくとも1つの実施形態において、前記センサは、ピトー管、ピトー静圧管、静圧ポート、静圧管、迎角(AOA)、レゾルバ、又は、加速度計のうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態において、前記データのタイプは、全圧、静圧、迎角(AOA)、又は、加速度のうちの少なくとも3つを含む。
【0006】
少なくとも1つの実施形態において、前記ビークルは、空中ビークル、地上ビークル、又は、海上ビークルである。いくつかの実施形態において、前記空中ビークルは、航空機、無人航空機(UAV)、又は、ヘリコプターである。
【0007】
1つ以上の実施形態において、前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、前記データの少なくとも一部から既知の破損影響を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記既知の破損影響は、少なくとも1つのプロセッサが、動圧、マッハ数、迎角(AOA)、フラップ位置、ギア位置、過剰推力、及び/又は、地面効果に関する項目を用いることにより除去される。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つの統計フィルタを用いて前記推定値を生成する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの統計フィルタは、拡張カルマンフィルタ(EKF)である。
【0009】
1つ以上の実施形態において、前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、どのタイプのデータが誤っているか、及び/又は、どのタイプのセンサが故障しているかを示すアラート信号を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記アラート信号に含まれる情報に基づいて、視覚アラート、及び/又は、音声アラートのうちの少なくとも一方を生成することをさらに含む。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、前記方法は、少なくとも1つのプロセッサにより、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成することをさらに含む。
【0011】
少なくとも1つの実施形態においては、ビークルにおけるセンサ故障検出及び特定のためのシステムは、データを検出するために前記ビークルに設けられたセンサを含む。1つ以上の実施形態において、前記データは、m個のタイプのデータを含む。いくつかの実施形態においては、mは2よりも大きい整数である。前記システムは、少なくとも1つのプロセッサをさらに含み、当該プロセッサは、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行い、データのタイプ毎に単一の投票値を生成し、データのタイプ毎に、n個の投票値を用いて、m個の推定値を生成し、nは、mから1を減算した値に等しく、前記推定値と前記投票値とを比較して残差を生成し、前記残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、前記ビークルにおける前記センサのうちの少なくとも1つに生じている故障を検出及び特定するように構成されている。
【0012】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのプロセッサは、さらに、前記データの少なくとも一部から既知の破損影響を除去するように構成されている。少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1つのプロセッサは、さらに、少なくとも1つの統計フィルタを用いて前記推定値を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの統計フィルタは、拡張カルマンフィルタ(EKF)である。1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのプロセッサは、さらに、どのタイプのデータが誤っているか、又は、どのタイプのセンサが故障しているかを示すアラート信号を生成するように構成されている。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、前記システムは、前記アラート信号に含まれる情報に基づいて、視覚アラートを生成する少なくとも1つの表示ライト、前記アラート信号に含まれる前記情報に基づいて、視覚表示アラートを表示する少なくとも1つのディスプレイ、及び/又は、前記アラート信号に含まれる前記情報に基づいて、音声アラートを生成する少なくとも1つのスピーカ、をさらに含む。
【0014】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのプロセッサは、さらに、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成するように構成されている。
【0015】
上述した特徴、機能、及び利点は、本開示の様々な実施形態において個別に達成可能であり、また、さらに他の実施形態と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の記載、添付の特許請求の範囲、及び、添付の図面によって、より理解されるであろう。
【0017】
図1A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムを適用可能なビークル(例えば、航空機)を示す図であり、このビークルは、様々なタイプのセンサを含むことが示されている。
図1B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムを適用可能なビークル(例えば、航空機)を示す図であり、このビークルは、アラートを生成するために用いられる複数のユニットを含むことが示されている。
図2A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムの複数のセンサのうちの1つに対して使用可能な、例示的なピトー管を示す図である。
図2B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムの複数のセンサのうちの1つに対して使用可能な、例示的な静圧管を示す図である。
図2C】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムの複数のセンサのうちの1つに対して使用可能な、例示的なピトー静圧管を示す図である。
図3】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムを示すブロック図である。
図4】本開示の少なくとも1つの実施形態による、図3の合成エアデータ・共通モードモニタ(CMM)の機能の詳細を示すブロック図である。
図5】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって利用される推定値を生成するための数式を示す図である。
図6A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、4つの異なるタイプのセンサデータについて、検出データ(すなわち、測定データ)、及び、これらに対応する実際の値(すなわち、真値)を示す例示的なグラフであって、これらの検出データの何れにも誤りがない場合のグラフである。
図6B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって生成される推定値(すなわち、合成値)を示す例示的なグラフであって、これらの検出データの何れにも誤りがない場合のグラフである。
図7A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、4つの異なるタイプのセンサデータについて、検出データ(すなわち、測定データ)、及び、これらに対応する実際の値(すなわち、真値)を示す例示的なグラフであって、複数のタイプの検出データのうちの1つ(すなわち、全圧(PT))が誤っている場合のグラフである。
図7B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって生成される推定値(すなわち、合成値)を示す例示的なグラフであって、複数のタイプの検出データのうちの1つ(すなわち、全圧(PT))が誤っている場合のグラフである。
図8】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって利用される故障検出ロジックのための数式を示す図である。
図9】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによる残差の生成方法を示す図である。
図10】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって用いられる残差の例示的な予想パターンを示すチャートである。
図11A-11B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示の方法を示すフローチャートを構成する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の方法及び装置は、残差故障パターン認識を用いたセンサ故障の検出及び特定のための動作システムを提供する。1つ以上の実施形態において、本開示のシステムは、ビークル(例えば、航空機)における故障したセンサ(例えば、ピトー管、静圧ポート、AOAレゾルバ(AOA resolvers)、及び、加速度計)によって作成される誤ったセンサ測定データ(例えば、全圧、静圧、迎角(AOA)、及び、加速度)を検出することにより、センサ故障の検出及び特定を行うことができる。
【0019】
具体的には、本開示のシステムは、統計フィルタ(例えば、拡張カルマンフィルタ(extended Kalman filter: EKF))アーキテクチャを用いることにより、マルチセンサ故障検出及び特定を行う。具体的には、統計フィルタ(例えば、拡張カルマンフィルタ(EKF))のアレイを用いて、センサの健全性を監視するための様々な合成パラメータ(例えば、推定値)を算出する。さらに、上記システムは、リアルタイムで、ビークルにおいてどのタイプのセンサ(例えば、ピトー管、静圧ポート、AOAレゾルバ、又は、加速計)に故障が生じたかを特定するために、残差特性(例えば、残差(residuals))のパターンを利用する。
【0020】
本開示のシステムは、複数の利点を有する。第1に、上記システムは、統計フィルタ(例えば、EKF)の合成全圧(PT)及び静圧(PS)を用いることにより、全圧(PT)及び静圧(PS)のセンサ測定値を直接監視することができる。第2に、上記システムは、タイムリーなセンサ故障検出を行うことにより、航空機の飛行制御システムが、パイロットに対して、システム内で生じた故障についての正確且つ信頼性の高いフライトデッキ内エンジン計器・乗員警告システム(engine-indicating and crew-alert system: EICAS)の警告メッセージを送ることができ、パイロットが強引な航空機の操縦を行わないようにすることができる。そして、第3に、上記システムは、正確なセンサ故障特定を行うことによって、航空機の飛行制御システムが、誤った測定値の代わりに合成値を使用して動作を継続できるようにすることができる。
【0021】
以下の記載においては、システムをより綿密に説明するために、多くの詳細事項を提示している。しかしながら、当業者であれば分かるように、本開示のシステムは、これらの詳細事項がなくても実施可能である。また他の例においては、周知の構成要素について述べることでかえってシステムの内容が不明瞭になるのを防ぐため、そのような構成要素は詳細に説明していない。
【0022】
本開示の実施形態は、機能的及び/又は論理的なコンポーネント、並びに、様々な処理ステップに関連させて説明することができる。なお、このようなコンポーネントは、特定の機能を行うように構成された任意の数のハードウェア、ソフトウェア、及び/又は、ファームウェアのコンポーネントによって実現することができる。例えば、本開示の実施形態は、様々な集積回路コンポーネント(例えば、記憶素子、デジタル信号処理素子、論理素子、ルックアップテーブル等)を用いる場合があり、これらは、1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、又は、他の制御装置の制御下で様々な機能を実行することができる。さらに、当業者であれば分かるように、本開示の実施形態は、他のコンポーネントと連携させて実現することが可能であり、本明細書で説明するシステムは、本開示の例示的な実施形態にすぎない。
【0023】
簡潔にするために、センサに関する従来技術及びコンポーネント、並びに、システムの他の機能的側面(及び、システムの個々の動作コンポーネント)については、本明細書において詳しく説明していない場合もある。さらに、本明細書に含まれる様々な図面に示す接続線は、様々な要素間の機能的な関係及び/又は物理的な接続の例を示している。なお、本開示の1つ以上の実施形態において、代替又は追加の機能的関係又は物理的接続が、数多く存在しうる。
【0024】
様々な実施形態において、センサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムは、航空機で使用される。なお、センサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムは、本明細書で開示される航空機以外のビークルで用いることも可能である。したがって、以下の説明は、航空機に関連しているが、一般性を損なうものではない。
【0025】
図1Aは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムを適用可能なビークル(例えば、航空機)110を示すダイアグラム100であり、このビークル110は、様々なタイプのセンサを含むことが示されている。同図において、ビークル110は、航空機である。しかしながら、他の実施形態においては、本開示のシステムのビークル110として、様々なタイプのビークルを用いることができる。1つ以上の実施形態において、本開示のシステムは、ビークル110として、空中ビークル、地上ビークル、又は、海上ビークルを用いることができる。1つ以上の実施形態において、ビークル110として使用可能な様々なタイプの空中ビークルには、限定するものではないが、(図1Aに示すような)航空機、無人航空機(UAV)、又は、ヘリコプターなどが含まれる。
【0026】
また同図には、ビークル110が複数の異なるタイプのセンサを含むことが示されている。これらのセンサは、ピトー管120と、静圧ポート130と、AOAレゾルバ140と、加速度計150とを含む。なお、ピトー管120、静圧ポート130、及び、AOAレゾルバ140は、ビークル(例えば、航空機)110の表面に配置され、加速度計150は、ビークル(例えば、航空機)110の内側に配置されている。これらのセンサは、複数の異なるタイプの測定データを検出する。例えば、ピトー管120は、全圧(PT)を検出し、静圧ポート130は、静圧(PS)を検出し、AOAレゾルバ140は、AOA(α)を検出し、加速度計150は、加速度(AN)を検出する。
【0027】
なお、1つ以上の実施形態において、ビークル110は、図示したセンサよりも多い数、又は、少ない数のセンサを含みうる。例えば、ビークル110は、3つのピトー管120を含むことが示されている。他の実施形態において、ビークル110は、図1Aに示すような3つのピトー管120よりも多い数、又は、少ない数のピトー管120を含みうる。
【0028】
また、ビークル110は、図示したセンサとは異なるタイプのセンサを含みうる。したがって、図1Aに示すセンサのタイプは、本開示のシステムによって使用されうるセンサのタイプの一例にすぎない。したがって、異なるタイプのセンサを用いる場合には、異なるタイプのセンサ測定データが検出されることになる。本開示のシステムは、本書で説明するセンサ測定データとは異なるタイプのセンサ測定データを用いて動作することができる。
【0029】
図1Bは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムを適用可能なビークル(例えば、航空機)110を示すダイアグラム160であり、このビークル110は、アラートを生成するために用いられる複数のユニットを含むことが示されている。同図において、ビークル110は、プロセッサ170をさらに含むことが示されており、当該プロセッサは、ワイヤ180を介して、スピーカ190、ディスプレイ191、及び、表示ライト192に接続されている。プロセッサ170は、ビークル(例えば、航空機)110の電子機器エリア(例えば、電子機器ベイ(bay))内に配置することができる。また、スピーカ190、ディスプレイ(例えば、表示スクリーン)191、及び、表示ライト192は、ビークル110の操縦士(例えば、パイロット)のエリア(例えば、コックピット)内に配置することができる。
【0030】
ビークル110はまた、飛行制御システム195をさらに含むことが示されている。飛行制御システム195は、ビークル(例えば、航空機)110の電子機器エリア(例えば、電子機器ベイ)内に配置することができる。飛行制御システム195は、ワイヤ197を介してプロセッサ170に接続されている。
【0031】
なお、他の実施形態において、プロセッサ170は、無線で、スピーカ190、ディスプレイ191、及び、表示ライト192に接続されてもよい。さらに、他の実施形態において、ビークル110は、図示のようにそれぞれ1つではなく、複数のプロセッサ170、複数のスピーカ190、複数のディスプレイ191、及び/又は、複数の表示ライト192を含んでもよい。また、センサ(例えば、ピトー管120、静圧ポート130、迎角(AOA)レゾルバ140、及び、加速度計150)は、有線及び/又は無線でプロセッサ170に接続されてもよい。
【0032】
本開示のシステムの動作においては、ビークルが動作している間、プロセッサ170は、ビークル110における異なる複数のタイプのセンサ(例えば、ピトー管120、静圧ポート130、迎角(AOA)レゾルバ140、及び、加速度計150)からデータ(例えば、センサ測定データ)を受信する。プロセッサ170は、データを分析して、測定した複数のタイプのデータ(例えば、全圧(PT)、静圧(PS)、AOA(α)、又は、加速度(AN)のうちの1つが誤っているか否かを判定する。プロセッサ170が、複数のタイプのデータのうちの1つが誤っている、すなわち、誤ったデータに関連するセンサが故障していると判定した場合、当該プロセッサ170は、操縦士(すなわち、パイロット)に、誤ったセンサ測定データ及び/又はセンサの故障を警告するアラート信号を生成する。アラート信号は、どのタイプのデータが誤っているか(例えば、全圧(PT)測定データが誤っている)、及び/又は、どのタイプのセンサが故障しているか(例えば、ピトー管120が故障している(例えば、着氷による閉塞が原因))を示す。
【0033】
プロセッサ170がアラート信号を生成した後、当該プロセッサ170は、ワイヤ180を介して(又は、無線で)、スピーカ190、ディスプレイ191、及び/又は、表示ライト192に当該アラート信号を送信する。1つ以上の実施形態においては、スピーカ190がアラート信号を受信すると、当該スピーカ190は、音声アラートを生成する。この音声アラートは、誤りのある特定のタイプのデータ、及び/又は、故障した特定のタイプのセンサを示すアラート音、及び/又は、音声アラートメッセージであってもよい。いくつかの実施形態においては、ディスプレイ191がアラート信号を受信すると、当該ディスプレイ191は、操縦士(例えば、パイロット)に対して視覚表示アラートを表示する。この視覚表示アラートは、誤りのある特定のタイプのデータ、及び/又は、故障した特定のタイプのセンサを示す視覚的なアラート記号、色、及び/又は、テキストによる警告メッセージであってもよい。少なくとも1つの実施形態においては、表示ライト192がアラート信号を受信した後、当該表示ライト192は、ビークル110の操縦士(例えば、パイロット)に視覚的なアラートを出すために、照明色を点灯、及び/又は、変更する(例えば、色を赤に変更する)。
【0034】
さらに、プロセッサ170が、複数のタイプのデータのうちの1つが誤っている、すなわち、誤ったデータに関連するセンサが故障していると判定した場合、当該プロセッサ170は、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成する。プロセッサ170が合成データ信号を生成した後、当該プロセッサ170は、ワイヤ197を介して(又は、無線で)、飛行制御システム195に合成データ信号を送信する。飛行制御システム195が合成データ信号を受信すると、当該飛行制御システム195は、誤った検出データの代わりに合成データを用いて飛行計算を行う。
【0035】
図2Aは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムの複数のセンサのうちの1つに対して使用可能な、例示的なピトー管120を示すダイアグラム200である。同図においては、例示的なピトー管120が示されている。図2Aに示すピトー管120は、端部に1つの開口を有する。ピトー菅120からピトー圧が得られる。ピトー圧は、ラム圧(ram air pressure)(すなわち、ビークルの移動、又は、管に流れ込む空気によって生成される空圧)の尺度であり、理想的な条件においては、よどみ点圧(全圧(PT)とも呼ばれる)と等しい。図示したピトー管120を、全圧(PT)測定用として本開示のシステムに使用してもよい。
【0036】
ピトー管120は、ほとんどの場合、航空機の翼又は前部に対して前向きに配置され、その開口が相対風(relative wind)に曝される。このような位置にピトー管120を配置することにより、航空機の構造体の影響による誤差が抑制されるため、より正確にラム圧を測定することができる。対気速度(airspeed)が上がると、ラム圧が上昇するが、これを対気速度計で表示することができる。
【0037】
図2Bは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムの複数のセンサのうちの1つに対して使用可能な、例示的な静圧管210を示すダイアグラム250である。同図においては、例示的な静圧管210が示されている。図2Bに示す静圧管210は、静圧管210の上側及び下側に設けられた2つの開口を有する。静圧管210は、静圧ポート130(図1Aを参照)と同様に静圧(PS)を測定する。図示された静圧管210及び/又は静圧ポート130を静圧(PS)測定のために本開示のシステムにおいて使用してもよい。
【0038】
静圧ポート130(図1Aを参照)は、ほとんどの場合、航空機の胴体に対して面一に取り付けられた穴であり、比較的擾乱の少ないエリア(relatively undisturbed area)において空気流に触れることができる位置に配置される。航空機によって、単一の静圧ポートを有するものと、複数のポートを有するものとがある。航空機が複数の静圧ポート130を有する場合、これらの静圧ポートは、通常、胴体のそれぞれの側面に1つずつ設けられる。このような配置によって、平均圧力が測定でき、特定の飛行状況においてより正確に読み取りを行うことができる。また、外側の静圧ポート130が閉塞された場合のバックアップとして、航空機のキャビン内に代替の静圧ポート130を設けてもよい。
【0039】
図2Cは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムの複数のセンサのうちの1つに対して使用可能な、例示的なピトー静圧管220を示すダイアグラム230である。同図においては、例示的なピトー静圧管220が示されている。図2Cに示すピトー静圧管220は、3つの開口を有しており、これらの開口は、ピトー静圧管220の端部と、当該ピトー静圧管220の上側及び下側に形成されている。ピトー静圧管220においては、静圧ポートがピトープローブに効果的に組み込まれている。さらに、静圧(PS)を測定する手段として、第2の同軸管(あるいはさらに多くの同軸管)を組み込むようにしてもよく、これらの同軸管には、直接的な気流を避けて、プローブの側面に圧力サンプリング穴(pressure sampling holes)が形成される。航空機が上昇すると、静圧(PS)が低下する。全圧(PT)と静圧(PS)との差を測定するために、圧力トランスデューサ240が用いられる。図示されたピトー静圧管220を、全圧(PT)及び静圧(PS)の測定用として本開示のシステムに使用してもよい。
【0040】
図3は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムを示すブロックダイアグラム300である。同図においては、ビークルに設けられた複数の異なるタイプのセンサにより検出されるデータ(すなわち、センサ測定値)が示されている。具体的には、ピトー管120によって検出された全圧(PT)データ310a、静圧ポート130によって検出された静圧(PS)データ310b、AOAレゾルバ140によって検出された迎角(AOA)(α)データ310c、及び、加速度計150により検出された加速度(AN)データ310dが図示されている。
【0041】
なお、検出されたデータのうちの一部は、複数のセンサで検出されたデータを含む。例えば、全圧(PT)データ310aは、ビークル(例えば、航空機)110に配置された3つの別個のピトー管120により検出されたデータを含む。図3においては、全圧(PT)データ310aの矢印から、3つの検出データを示す3つの矢印が出ている。
【0042】
動作中、全圧(PT)データ310a、静圧(PS)データ310b、及び、迎角(AOA)(α)データ310cとして検出されたデータは、静圧ソース誤差修正(Static Source Error Correction:SSEC)モジュール320に入力される。一例として、SSECモジュール320は、ビークル110に搭載された少なくとも1つのプロセッサ170内に実装され(implemented)、及び/又は、当該プロセッサにより実行される(executed)。SSECモジュール320は、検出データ310a、310b、310cから既知の破損影響を除去することにより、検出データ310a、310b、310cに対してソース修正(source correction)を行ってクリーンデータ測定値325a、325b、325cを生成する。SSECモジュール320は、検出データ310a、310b、310cからの既知の破損影響の除去を、他のデータ測定値を用いることにより行う。他のデータ測定値としては、限定するものではないが、動圧、マッハ数、迎角(AOA)、フラップ位置、ギア位置、過剰推力、及び/又は、地面効果に関する項目などが含まれる。
【0043】
検出データ310a、310b、310cから既知の破損影響が除去されると、ソース選択故障検出(SSFD)モジュール330a、330b、330cに、クリーンデータ測定値325a、325b、325cが入力される。一例として、SSFDモジュール330a、330b、330cは、ビークル110における少なくとも1つのプロセッサ170内で実施され、及び/又は、当該プロセッサにより実行される。各SSFDモジュール330a、330b、330cは、入力されたクリーンデータ測定値325a、325b、325cに対して多数決処理(majority voting)を行うことにより、単一投票値350a、350b、350cを生成する。例えば、SSFDモジュール330aは、3つのクリーンデータ測定値325aに対して多数決処理を行うことにより、単一投票値350aを生成する。
【0044】
また、動作中、加速度(AN)データ310dは、故障管理モジュール340に入力される。故障管理モジュール340は、ビークル110における少なくとも1つのプロセッサ170内で実施、及び/又は、当該プロセッサにより実行することができる。故障管理モジュール340は、加速度(AN)データ310dに対して多数決処理を行うことにより、1つの投票値350dを生成する。
【0045】
なお、1つ以上の実施形態において、SSFDモジュール330a、330b、330c及び故障管理モジュール340は、様々なタイプの多数決アルゴリズム(例えば、ボイヤー・ムーア多数決アルゴリズム(Boyer-Moore majority voting algorithm))を用いて多数決処理を行うことができる。
【0046】
単一投票値350a、350b、350c、350dが全て生成されると、これらの単一投票値350a、350b、350c、350dは、合成エアデータ・共通モードモニタ(CMM)360に入力される。合成エアデータ・CMM360は、ビークル110における少なくとも1つのプロセッサ170内で実施、及び/又は、当該プロセッサにより実行することができる。合成エアデータ・CMM360は、単一投票値350a、350b、350c、350dを用いて、ビークル110の動作に用いられる(例えば、飛行制御システムにより用いられる)信頼値370a、370b、370c、370dを生成する。具体的には、合成エアデータ・CMM360は、単一投票値350a、350b、350c、350dを用いて、全圧(PT)信頼値370a、静圧(PS)信頼値370b、AOA信頼値370c、及び、加速度信頼値370dを生成する。合成エアデータ・CMM360の動作については、図4、5、8、9、及び、図10を参照しながら詳述する。
【0047】
図3を参照すると、合成エアデータ・CMM360によって信頼値370a、370b、370c、370dが生成されると、これらの信頼値370a、370b、370c、370dは、エアデータ計算モジュール380に入力される。エアデータ計算モジュール380は、ビークル110における少なくとも1つのプロセッサ170(飛行制御システムの一部であってもよい)内で実施、及び/又は、当該プロセッサにより実行することができる。エアデータ計算モジュール380は、ビークル(例えば、航空機)110の動作(例えば、飛行)に必要な計算を行うために、信頼値370a、370b、370c、370dを用いることができる。
【0048】
図4は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、図3に示す合成エアデータ・共通モードモニタ(CMM)360の機能の詳細を示すブロックダイアグラム400である。同図においては、合成エアデータ・CMM360に対して単一投票値350a、350b、350c、350dが入力される。具体的には、合成エアデータ・CMM360に対して、全圧(PT)350aの投票値、静圧(PS)350bの投票値、AOA350cの投票値、及び、加速度350dの投票値が入力される。
【0049】
合成エアデータ・CMM360が単一投票値350a、350b、350c、350dを受信した後、データのタイプ毎の推定器410a、410b、410c、410dが、単一投票値350a、350b、350c、350dのうちのいくつかを用いて推定値(例えば、合成値)420a、420b、420c、420dを生成する。具体的には、あるタイプのデータに対応する各推定器410a、410b、410c、410dが、他のタイプのデータの単一投票値350a、350b、350c、350dを用いて、全てのタイプのデータについての推定値420a、420b、420c、420dを生成する。
【0050】
推定器410a、410b、410c、410dは、統計フィルタを用いて、推定値420a、420b、420c、420dを生成する。推定器410a、410b、410c、410dは、推定値420a、420b、420c、420dを生成するために、例えば、限定するものではないが、カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ(EKF)、無香カルマンフィルタ、周波数加重カルマンフィルタ、固定ラグ平滑器、固定区間平滑器(例えば、Rauch-Tung-Striebel平滑器、変形Bryson-Frazier平滑器、最小分散平滑器)、Kalman-Bucyフィルタ、及び、ハイブリッドカルマンフィルタ等の様々なタイプの統計フィルタを用いることができる。
【0051】
例えば、全圧(PT)データタイプについての第1推定器410aは、静圧(PS)の投票値350b、AOAの投票値350c、及び、加速度の投票値350dを利用して、推定値420a(全圧(PT)の推定値、静圧(PS)の推定値、AOAの推定値、及び、加速度の推定値を含む)を生成する。静圧(PS)データタイプについての第2推定器410bは、全圧(PT)の投票値350a、AOAの投票値350c、及び、加速度の投票値350dを利用して、推定値420b(全圧(PT)の推定値、静圧(PS)の推定値、AOAの推定値、及び、加速度の推定値を含む)を生成する。AOAデータタイプについての第3推定器410cは、全圧(PT)の投票値350a、静圧(PS)の投票値350b、及び、加速度の投票値350dを利用して、推定値420c(全圧(PT)の推定値、静圧(PS)の推定値、AOAの推定値、及び、加速度の推定値を含む)を生成する。加速度データタイプについての第4推定器410dは、全圧(PT)の投票値350a、静圧(PS)の投票値350b、及び、AOAの投票値350cを利用して、推定値420d(全圧(PT)の推定値、静圧(PS)の推定値、AOAの推定値、及び、加速度の推定値を含む)を生成する。
【0052】
推定器410a、410b、410c、410dの各々が推定値420a、420b、420c、420dを生成した後、これらの推定値420a、420b、420c、420dは、故障検出・分離ロジックモジュール430に入力される。故障検出・分離ロジックモジュール430は、推定値420a、420b、420c、420dと、投票値350a、350b、350c、350dとを比較することによって残差(r1、r2、r3、r4)を生成する。残差を生成する方法については、図9を用いて詳細に説明する。残差(r1、r2、r3、r4)が生成された後、故障検出・分離ロジックモジュール430は、残差(r1、r2、r3、r4)のパターンを分析して、(誤ったデータが存在する場合)どのタイプのデータが誤っているのかを特定する。例示的な故障検出ロジック(すなわち、誤ったデータのタイプを検出するためのロジック)を図8に示し、例示的な残差予想パターンを図10に示す。
【0053】
故障検出・分離ロジックモジュール430が残差(r1、r2、r3、r4)のパターンを分析した後、故障検出・分離ロジックモジュール430が誤ったデータが存在しないと判定すると、故障検出・分離ロジックモジュール430は、投票値350a、350b、350c、350dを、信頼値370a、370b、370c、370d(全圧(PT)信頼値370a、静圧(PS)信頼値370b、AOA信頼値370c、及び、加速度信頼値370d)として用いるために、これらの投票値をそのまま出力する。
【0054】
しかしながら、故障検出・分離ロジックモジュール430がある特定のタイプのデータ(例えば、全圧(PT))が誤っていると判定すると、故障検出・分離ロジックモジュール430は、それ以外のタイプのデータについての投票値350b、350c、350dを、これらのタイプのデータについての信頼値370b、370c、370d(静圧(PS)信頼値370b、AOA信頼値370c、及び、加速度信頼値370d)として用いるために、誤っていると判定されたタイプのデータ以外についての投票値を出力する。また、故障検出・分離ロジックモジュール430は、誤ったデータのタイプ(例えば、全圧(PT))に関連する推定器(例えば、第1推定器)420aによって生成された推定値(合成データ)420aを、その誤ったデータのタイプについての信頼値370a(例えば、全圧(PT)信頼値)として用いるために、当該推定値を出力する。
【0055】
図5は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって利用される推定値を生成するための数式を示している。これらの数式において、xは、データのタイプについての基礎状態(underlying state)を表すベクトルであり、yは、データのタイプについての投票値350a、350b、350c、350dを表すベクトルである。また、各y^(実際はハット記号はyの真上に。以下同様)は、y^推定器410a、410b、410c、410dの各々によって生成された推定値420a、420b、420c、420dを表すベクトルである。具体的には、これらの数式に関して、y1^は、第1推定器410aにより生成された推定値であり、y2^は、第2推定器410bにより生成された推定値であり、y3^は、第3推定器410cにより生成された推定値であり、y4^は、第4推定器410dにより生成された推定値である。また、これらの数式に関して、f(例えば、f1、f2、f3、及び、f4)は、推定値420a、420b、420c、420dを生成するために用いられる統計フィルタ(例えば、拡張カルマンフィルタ(EKF))を表す。また、括弧内の変数(例えば、PT、PS、α、AN)は、推定値420a、420b、420c、420dを生成するために用いられる投票値350a、350b、350c、350dを表す。
【0056】
例えば、(全圧(PT)データタイプに関連する)第1推定器410aに関しては、統計フィルタ(f1)(例えば、EKF)が、静圧(PS)の投票値350b、AOA(α)の投票値350c、及び、加速度の投票値350dを用いて、推定値420aを生成する。したがって、m個の異なるデータタイプが検出された場合、各推定器410a、410b、410c、410dは、n個(mから1を引いた数に等しい(n=m-1))の投票値350a、350b、350c、350dを用いて推定値420a、420b、420c、420dを生成する。
【0057】
図6Aは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、4つの異なるタイプのセンサデータについて、検出データ(すなわち、測定データ)310a、310b、310c、310d、及び、これらに対応する実際の値(すなわち、真値)を示す例示的なグラフ600であって、検出データ310a、310b、310c、310dの何れにも誤りがない場合のグラフである。同図における各グラフは、異なるタイプの検出データ(例えば、全圧(PT)、静圧(PS)、AOA、及び、加速度)を示す。同図に示すように、検出データ(すなわち、測定値)310a、310b、310c、310は、小さな変動幅で当該データの実際の値(すなわち、真値)をたどっているため、どのタイプのデータにも誤りがない。
【0058】
図6Bは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって生成される推定値(すなわち、合成値)420a、420b、420c、420dを示す例示的なグラフ610であって、検出データ310a、310b、310c、310dの何れにも誤りがない場合のグラフである。同図において、各行に示すグラフは、推定器410a、410b、410c、410dのうちの1つによって生成された推定値420a、420b、420c、420dを示す。例えば、第1行目のグラフは、第1推定器410aにより生成された推定値420aを示し、第2行目のグラフは、第2推定器410bにより生成された推定値420bを示し、第3行目のグラフは、第3推定器410cにより生成された推定値420cを示し、第4行目のグラフは、第4推定器410dにより生成された推定値420dを示している。
【0059】
図6Bにおいて、16個のグラフの各々は、4本のデータラインを示しており、各グラフにおける中央のデータラインのうちの一方は、そのグラフのデータタイプについて生成された推定値420a、420b、420c、420dである。各グラフにおける中央のデータラインのうちの他方は、検出データ(すなわち、測定値)310a、310b、310c、310dである。各グラフにおける上側と下側のデータラインは、推定データ(例えば、推定値)420a、420b、420c、420dの範囲を指定する上限及び下限の閾値(T)を示す。
【0060】
図7Aは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、4つの異なるタイプのセンサデータについて、検出データ(すなわち、測定データ)310a、310b、310c、310d、及び、これらに対応する実際の値(すなわち、真値)を示す例示的なグラフであって、複数のタイプの検出データのうちの1つ(すなわち、全圧(PT))310aが誤っている場合のグラフである。同図における各グラフは、異なるタイプの検出データ(例えば、全圧(PT)、静圧(PS)、AOA、及び、加速度)を示す。同図に示すように、静圧(PS)、AOA、及び、加速度についての検出データ(すなわち、測定値)310b、310c、310は、当該データの実際の値(すなわち、真値)を小さな変動幅にてたどるように変化している。しかしながら、全圧(PT)についての検出データ(すなわち、測定値)310aは、当該データタイプの実際の値(すなわち、真値)を適切に近似していない。したがって、全圧(PT)についての検出データ310aは誤りである。このため、全圧(PT)を検出するピトー管120には不具合が生じている(例えばCMPE)と考えられる。
【0061】
図7Bは、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって生成される推定値(すなわち、合成値)420a、420b、420c、420dを示す例示的なグラフであって、複数のタイプの検出データのうちの1つ(すなわち、全圧(PT))310aが誤っている場合のグラフである。同図において、各行のグラフは、推定器410a、410b、410c、410dのうちの1つによって生成された推定値420a、420b、420c、420dを示す。例えば、第1行目のグラフは、第1推定器410aにより生成された推定値420aを示し、第2行目のグラフは、第2推定器410bにより生成された推定値420bを示し、第3行目のグラフは、第3推定器410cにより生成された推定値420cを示し、第4行目のグラフは、第4推定器410dにより生成された推定値420dを示している。
【0062】
図7Bにおいて、16個のグラフの各々は、4本のデータラインを示しており、各グラフにおける中央のデータラインのうちの一方は、そのグラフのデータタイプについて生成された推定値420a、420b、420c、420dである。各グラフにおける中央のデータラインのうちの他方は、検出データ(すなわち、測定値)310a、310b、310c、310dである。各グラフにおける上側と下側のデータラインは、推定値(例えば、推定データ)420a、420b、420c、420dの範囲を指定する上限及び下限の閾値(T)を示す。
【0063】
同図においては、全圧(PT)データタイプ(第1列目のグラフを参照)のグラフにおいて、検出された全圧(PT)310aが、下限閾値(T)から外れていることが示されている。なお、全圧(PT)310aの検出データが誤っているため、第1推定器420aによって生成された推定値420aが、全圧(PT)の信頼値470aとして用いられる。
【0064】
図8は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって利用される故障検出ロジックのための数式を示す。同図においては、故障検出ロジックは、以下の場合且つその場合に限り(if and only if: IFF)、検出されたデータタイプに誤りがある(関連するタイプのセンサが故障している)ことを示す。すなわち、(1)そのデータタイプに関連する推定器で生成された残差が小さく、且つ、(2)他のデータタイプに関連する推定器で生成された残差が大きい。例えば、全圧(PT)310aの検出データは、以下の場合且つその場合に限り、誤っている(ピトー管120が故障している)。すなわち、(1)第1推定器410aで生成された残差(r1)が小さく(|r1,Ps|<T、且つ|r1,α|<T、且つ|r1,AN|<T)、且つ、(2)第2推定器410b、第3推定器410c、及び、第4推定器410dで生成された残差が大きい(|r2,PT|≧T、且つ|r3,PT|≧T、且つ|r4,PT|≧T)。なお、Tは、予め定められた閾値を表す。また、1つ以上の実施形態において、異なる残差には、異なる閾値Tが用いられてもよい。
【0065】
なお、第1推定器410aで生成された残差が小さいのは、第1推定器410aが、残差(r1)の計算に用いられる推定値420aを生成する際に、全圧(PT)310aの誤った検出データを利用しないからである。また、第2推定器410b、第3推定器410c、及び、第4推定器410dで生成された残差が大きいのは、これらの推定器410b、410c、410dが、残差(r2、r3、r4)の計算に用いられる推定値420b、420c、420dを生成する際に、全圧(PT)310aの誤った検出データを利用するからである。
【0066】
図9は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによる残差の生成方法を示すダイアグラム900である。同図に示す例は、合計3つのタイプのデータ(例えば、全圧(PT)、静圧(PS)、及び、AOA)を用いている。同図においては、各推定器(例えば、オブザーバ(OBS)1、OBS2、及び、OBS3)910a、910b、910cは、2つのデータタイプからの投票値を用いて、3つのデータタイプ全ての推定値を生成する。
【0067】
例えば、全圧(PT)データタイプに関連する第1推定器(OBS1)910aは、静圧(PS)投票値(y2)及びAOA投票値(y3)を用いて、推定値y1^を(統計フィルタf1を用いて)生成する。また、静圧(PS)データタイプに関連する第2推定器(OBS2)910bは、全圧(PT)投票値(y1)及びAOA投票値(y3)を用いて、推定値y2^を(統計フィルタf2を用いて)生成する。また、AOAデータタイプに関連する第3推定器(OBS3)910cは、全圧(PT)投票値(y1)及び静圧(PS)投票値(y2)を用いて、推定値y3^を(統計フィルタf3を用いて)生成する。
【0068】
推定器910a、910b、910cによって推定値y1^、y2^、y3^が生成された後、それぞれの推定値y1^、y2^、y3^から投票値y1、y2、y3が減算され、残差r1、r2、r3が生成される。したがって、r1は、y1^-y1に等しく、r2は、y2^-y2に等しく、r3は、y3^-y3に等しい。
【0069】
図10は、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークル110におけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示のシステムによって用いられる残差の例示的な予想パターンを示すチャート1000である。同図に示す例は、図9と同様に、合計3つのタイプのデータ(例えば、全圧(PT)、静圧(PS)、及び、AOA)を用いている。同図において、チャート1000の最初の3行1010は、第1の残差r1に対応し、チャート1000の次の3行1020は第2の残差r2に対応し、チャート1000の最後の3行1030は第3の残差r3に対応する。
【0070】
チャート1000の2番目の列(f1=f2=f3=0)は、どのタイプのデータにも誤りがない場合の残差予想パターンを示す。どのデータも誤っていないため、2番目の列に示すように、残差の全てがゼロに近くなる。
【0071】
チャート1000の3番目の列(f1≠0,f2=0,f3=0)は、第1データタイプ(例えば、全圧(PT))の検出データが誤っている場合の残差予想パターンを示す。第2及び第3のデータタイプの残差r2、r3(1020及び1030の行を参照)は、これらに関連する推定値y2^、y3^が、第1のデータタイプ(例えば、全圧(PT))の投票値y1を用いて生成されたため、ゼロに近くはならない。
【0072】
チャート1000の4番目の列(f1=0,f2≠0,f3=0)は、第2データタイプ(例えば、静圧(PS))の検出データが誤っている場合の残差予想パターンを示す。第1及び第3のデータタイプの残差r1、r3(1010及び1030の行を参照)は、これらに関連する推定値y1^、y3^が、第2のデータタイプ(例えば、静圧(PS))の投票値y2を用いて生成されたため、ゼロに近くはならない。
【0073】
チャート1000の5番目の列(f1=0,f2=0,f3≠0)は、第3データタイプ(例えば、AOA)の検出データが誤っている場合の残差予想パターンを示す。第1及び第2のデータタイプの残差r1、r2(1010及び1020の行を参照)は、これらに関連する推定値y1^、y2^が、第3のデータタイプ(例えば、AOA)の投票値y3を用いて生成されたため、ゼロに近くはならない。
【0074】
図11A及び11Bは、共に、本開示の少なくとも1つの実施形態による、ビークルにおけるセンサ故障の検出及び特定を行うための本開示の方法を示すフローチャートを構成している。方法が開始1110すると、ビークルに設けられたセンサがデータ(例えば、測定データ)を検出する1120。1つ以上の実施形態においては、データは、m個のタイプのデータを含み、mは2よりも大きい整数である。その後、少なくとも1つのプロセッサが、このデータの少なくとも一部から既知の破損影響を除去する1130。次に、少なくとも1つのプロセッサは、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行うことにより、データのタイプ毎に単一の投票値を生成する1140。
【0075】
その後、少なくとも1つのプロセッサは、データのタイプ毎に、n個の投票値を用いて、m個の推定値を生成する1150。1つ以上の実施形態において、nは、mから1を減算した値と等しい(すなわち、n=m-1)。その後、少なくとも1つのプロセッサは、推定値と投票値とを比較して残差を生成する1160。次に、少なくとも1つのプロセッサは、残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、ビークルにおけるセンサのうちの少なくとも1つに生じている故障を検出及び特定する1170。
【0076】
その後、少なくとも1つのプロセッサは、どのタイプのデータが誤っているか、及び/又は、どのタイプのセンサが故障しているかを示すアラート信号を生成する1180。次に、アラート信号に含まれる情報に基づいて、(例えば、表示ライト及び/又はディスプレイを用いた)視覚アラート、及び/又は、(例えば、スピーカを用いた)音声アラートを生成する1190。その後、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成する1195。その後、この方法を終了する1197。
【0077】
さらに、本開示は、以下の付記に基づく実施形態を含む。
【0078】
付記1.ビークル(110)におけるセンサ故障の検出及び特定のための方法であって、
前記ビークル(110)に設けられたセンサを用いてデータを検出し、その際、前記データは、m個のタイプのデータを含み、mは、2よりも大きい整数であり、
少なくとも1つのプロセッサ(170)により、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行い、データのタイプ毎に単一の投票値を生成し、
前記少なくとも1つのプロセッサ(170)により、データのタイプ毎に、n個の投票値を用いて、m個の推定値を生成し、nは、mから1を減算した値に等しく、
前記少なくとも1つのプロセッサ(170)により、前記推定値と前記投票値とを比較して残差を生成し、
前記少なくとも1つのプロセッサ(170)により、前記残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、前記ビークル(110)における前記センサのうちの少なくとも1つに生じている故障を検出及び特定する、方法。
【0079】
付記2.前記データは、測定データを含む、付記1に記載の方法。
【0080】
付記3.前記センサは、ピトー管(120)、ピトー静圧管(220)、静圧ポート(130)、静圧管(210)、迎角(AOA)、レゾルバ(140)、又は、加速度計(150)のうちの少なくとも2つを含む、付記1に記載の方法。
【0081】
付記4.前記データのタイプは、全圧、静圧、迎角(AOA)、又は、加速度のうちの少なくとも3つを含む、付記1に記載の方法。
【0082】
付記5.前記ビークル(110)は、空中ビークル、地上ビークル、又は、海上ビークルのうちの1つである、付記1に記載の方法。
【0083】
付記6.前記空中ビークルは、航空機、無人航空機(UAV)、又は、ヘリコプターのうちの1つである、付記5に記載の方法。
【0084】
付記7.前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサ(170)により、前記データの少なくとも一部から既知の破損影響を除去することをさらに含む、付記1に記載の方法。
【0085】
付記8.前記既知の破損影響は、前記少なくとも1つのプロセッサ(170)が、動圧、マッハ数、迎角(AOA)、フラップ位置、ギア位置、過剰推力、又は、地面効果に関する項目のうちの少なくとも1つを用いることにより除去される、付記7に記載の方法。
【0086】
付記9.前記少なくとも1つのプロセッサ(170)は、少なくとも1つの統計フィルタを用いて前記推定値を生成する、付記1に記載の方法。
【0087】
付記10.前記少なくとも1つの統計フィルタは、拡張カルマンフィルタ(EKF)である、付記9に記載の方法。
【0088】
付記11.前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサ(170)により、どのタイプのデータが誤っているか、又は、どのタイプのセンサが故障しているかを示すアラート信号を生成することをさらに含む、付記1に記載の方法。
【0089】
付記12.前記方法は、前記アラート信号に含まれる情報に基づいて、視覚アラート、又は、音声アラートのうちの少なくとも一方を生成することをさらに含む、付記11に記載の方法。
【0090】
付記13.前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサ(170)により、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成することをさらに含む、付記1に記載の方法。
【0091】
付記14.ビークル(110)におけるセンサ故障の検出及び特定のためのシステムであって、
センサと、少なくとも1つのプロセッサ(170)と、を含み、
前記センサは、前記ビークル(110)に設けられるとともに、データを検出し、前記データは、m個のタイプのデータを含み、mは、2よりも大きい整数であり、
前記少なくとも1つのプロセッサ(170)は、データのタイプ毎に当該データに対して多数決処理を行い、データのタイプ毎に単一の投票値を生成し、データのタイプ毎に、n個の投票値を用いて、m個の推定値を生成し、nは、mから1を減算した値に等しく、前記推定値と前記投票値とを比較して残差を生成し、前記残差のパターンを分析して、どのタイプのデータが誤っているかを判定し、前記ビークル(110)における前記センサのうちの少なくとも1つに生じている故障を検出及び特定する、システム。
【0092】
付記15.前記センサは、ピトー管(120)、ピトー静圧管(220)、静圧ポート(130)、静圧管(210)、迎角(AOA)、レゾルバ(140)、又は、加速度計(150)のうちの少なくとも2つを含む、付記14に記載のシステム。
【0093】
付記16.前記データのタイプは、全圧、静圧、迎角(AOA)、又は、加速度のうちの少なくとも3つを含む、付記14に記載のシステム。
【0094】
付記17.前記少なくとも1つのプロセッサ(170)は、さらに、少なくとも1つの統計フィルタを用いて前記推定値を生成する、付記14に記載のシステム。
【0095】
付記18.前記少なくとも1つのプロセッサ(170)は、さらに、どのタイプのデータが誤っているか、又は、どのタイプのセンサが故障しているかを示すアラート信号を生成する、付記14に記載のシステム。
【0096】
付記19.前記システムは、
前記アラート信号に含まれる情報に基づいて、視覚アラートを生成する少なくとも1つの表示ライト(192)、
前記アラート信号に含まれる前記情報に基づいて、視覚表示アラートを表示する少なくとも1つのディスプレイ(191)、又は、
前記アラート信号に含まれる前記情報に基づいて、音声アラートを生成する少なくとも1つのスピーカ(190)、のうちの少なくとも1つをさらに含む、付記18に記載のシステム。
【0097】
付記20.前記少なくとも1つのプロセッサ(170)は、さらに、誤った検出データの代わりに合成データを用いることを指示する合成データ信号を生成する、付記14に記載のシステム。
【0098】
特定の実施形態を図示及び説明したが、上記説明は、これらの実施形態の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の多くの側面の実施形態及び変形例を本明細書において開示及び説明したが、このような開示は、説明及び例示のためだけに提示したものである。したがって、特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変形及び改変を行うことができる。
【0099】
上述した方法は、特定の事象が特定の順序で起こることを示唆しているが、本開示の利益を享受する当業者であれば分かるように、順序は変更することができ、このような変更は、本開示の変形例に相当するものである。また、方法における工程は、可能な場合には並行して同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。さらに、方法における工程数を増やすことも少なくすることも可能である。
【0100】
したがって、実施形態は、本開示の請求の範囲に含まれる代替例、改変例、及び、均等例を例示することを意図したものである。
【0101】
いくつかの例示的な実施形態及び方法を本明細書において開示したが、上述の開示から当業者には明らかであるように、これらの実施形態及び方法の変形及び改変を、本開示の真の思想及び範囲から逸脱することなく行うことが可能である。詳細事項のみが異なる、他の例が数多く存在する。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲、ならびに適用可能な法の規則及び原則により規定される程度においてのみ、限定されるものである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B