(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】見守りカメラシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20231109BHJP
A61G 7/043 20060101ALI20231109BHJP
A61G 7/05 20060101ALI20231109BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231109BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20231109BHJP
【FI】
H04N7/18 D
A61G7/043
A61G7/05
G06T7/00 660B
H04N23/60 500
(21)【出願番号】P 2019233314
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小川 憲一
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-086286(JP,A)
【文献】特開2012-030042(JP,A)
【文献】特開平09-253057(JP,A)
【文献】特開2002-345766(JP,A)
【文献】Tomiki Ueda,Slope Disparity Gating using a Synchronized Projector-Camera System,2019 IEEE International Conference on Computational Photography (ICCP),IEEE,2019年06月27日,https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/8747332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
A61G 7/00
G06T 7/00
H04N 23/00
G08B 13/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリングシャッターを備えたカメラ、赤外レーザー、前記赤外レーザーの照射を制御するMEMSミラー、更に前記赤外レーザーの照射タイミングと前記ローリングシャッターの動作との同期を制御する同期制御部を備えたカメラ装置と、前記カメラの撮像映像を表示するモニタとを有し、
前記カメラ装置は、見守り対象の人物が伏しているベッド全体を撮像するよう部屋の上部壁面に固定されて、
マスキングする水平面角度が設定されており、
前記同期制御部は、前記赤外レーザーの照射タイミングと前記ローリングシャッターの同期タイミングを
ずらすことでマスキング位置の上下移動を可能とし、
映像を表示しないマスキングエリアを
、ベッドの高さに合わせた水平面上に生成し、且つ
ベッドに伏している患者に合わせた厚みを有して生成し、
前記モニタには、マスキングエリア内の映像を表示せず、それ以外のエリアは映像で表示されることを特徴とする見守りカメラシステム。
【請求項2】
前記カメラ装置は、前記カメラの撮像映像からベッド面を認識する画像認識部を有し、
前記同期制御部は
、前記画像認識部が認識したベッド面に対して、ベッド面上に前記マスキングエリアが配置されるよう制御可能であり、
ベッドの高さが変化しても、前記マスキングエリアがベッド面上に配置されることを特徴とする請求項1記載の見守りカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド上の人物を見守るための見守りカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド上の人物をカメラによりモニタして見守る従来のシステムは、病院において患者を見守るシステムが知られている。これは、患者の撮像映像をナースステーションのモニタに表示するもので、看護師が病室まで行くこと無く患者の状態を把握できるものであった。
但し、このように患者をモニタに表示させる構成は、患者のプライバシー配慮に欠けるため、別途起き上がり検知機能を設けて、起き上がった場合など監視が必要になった場合のみモニタに表示させた(例えば、特許文献1参照)。また、表示映像をモザイク処理或いはマスキングしたりして患者が誰か識別できないようにした。
一方で、MEMSミラーと赤外レーザーとローリングシャッターを備えたカメラとを組み合わせることで、特定の距離にある被写体のみマスキングしてモニタに表示させない技術がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「Slope Disparity Gating using a Synchronized Projector-Camera Syste」、[令和元年12月4日検索]、インターネット<URL:http://web.asu.edu/sites/default/files/imaging-lyceum/files/iccp_2019_-_slope_disparity_gating.pdf#search=%27Slope+Disparity+Gating+using+a+Synchronized+ProjectorCamera+System%27>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の見守りカメラシステムは、起き上がり検知機能を設ける等して、患者を常時表示しないようプライバシーに配慮した。しかしながら、誤検知した場合は、患者映像が表示されたし、モザイク処理は必要な時にモザイク処理を解除しなければ患者を正確にモニタできないため操作が面倒であった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、ベッド上の人物を撮像して常時モニタに表示していても、ベッドに伏した状態では人物を判別できず、上半身を起こした場合等確認したい状況では判別可能な映像をモニタに表示でき、プライバシーに配慮できる見守りカメラシステム提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る見守りカメラシステムは、ローリングシャッターを備えたカメラ、赤外レーザー、赤外レーザーの照射を制御するMEMSミラー、更に赤外レーザーの照射タイミングとローリングシャッターの動作との同期を制御する同期制御部を備えたカメラ装置と、カメラの撮像映像を表示するモニタとを有し、カメラ装置は、見守り対象の人物が伏しているベッド全体を撮像するよう部屋の上部壁面に固定されて、マスキングする水平面角度が設定されており、同期制御部は、赤外レーザーの照射タイミングとローリングシャッターの同期タイミングをずらすことでマスキング位置の上下移動を可能とし、映像を表示しないマスキングエリアを、ベッドの高さに合わせた水平面上に生成し、且つベッドに伏している患者に合わせた厚みを有して生成し、モニタには、マスキングエリア内の映像を表示せず、それ以外のエリアは映像で表示されることを特徴とする。
この構成によれば、ベッド及びその周辺が撮像されても、ベッドに伏している人物はマスキングされて表示されるため、誰か判別できない。しかしながら、上半身を起こす等の起き上がり動作をしたら、上半身等がマスキングエリアから外れるため、その部位がモニタに表示される。よって、起き上がり動作等が発生すると人物を判別できる映像が表示されるため対処し易い。一方で、ベッドに伏した状態ではマスキングされて人物の判別ができないため、プライバシーを保護できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、カメラ装置は、カメラの撮像映像からベッド面を認識する画像認識部を有し、同期制御部は、画像認識部が認識したベッド面に対して、ベッド面上にマスキングエリアが配置されるよう制御可能であり、ベッドの高さが変化しても、マスキングエリアがベッド面上に配置されることを特徴とする。
この構成によれば、ベッドの高さが変更されても、マスキングエリアの高さが見守り対象者がマスキングされて隠れる好ましい高さに容易に変更でき、別途設定をやり直す必要がない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベッドに伏している状態の人物はモニタに表示されてもマスキングされて表示されるため、誰か判別できない。しかしながらが、起き上がり等でマスキングの厚みから外れた部位はマスキングされないため、明瞭な表示が可能となる。よって、例えばベッドから上半身を起こした状態では、人物を判別できる映像を表示でき対処し易い。一方で、通常状態ではマスキングされて人物の判別ができないため、プライバシーを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る見守りカメラシステムの一例を示す構成図である。
【
図2】ベッド検知を行う説明図であり、(a)はカメラ装置とベッドの位置関係を示し、(b)はモニタに表示される撮像画像である。
【
図3】マスキングエリアの高さ設定の説明図であり、(a)は最初のマスキング位置を示し、(b)はモニタ表示画像である。
【
図4】マスキングエリアの高さ設定の説明図であり、(a)はマスキング位置を下降させた説明図であり、(b)はモニタ表示画像である。
【
図5】マスキングエリアの高さ設定の説明図であり、(a)はマスキング位置を更に下降させた説明図であり、(b)はモニタ表示画像である。
【
図6】マスキング位置の設定を完了した状態のモニタ表示を示し、(a)は見守り対象者がベッドに伏した状態、(b)は上半身を起こした状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る見守りカメラシステムの一例を示す構成図であり、病院の入院患者等の見守り対象者を撮像するカメラ装置1と撮像映像を表示するモニタ2とを有している。
カメラ装置1は病室等見守り対象者の居る部屋の上部壁面に取り付けられ、モニタ2はナースステーションやスタッフステーション等看護師や介護者が確認し易い場所に設置される。
【0012】
カメラ装置1は、ローリングシャッターを備えたカメラ(ローリングシャッターカメラ)11、赤外レーザー12、赤外レーザー12の照射を制御するMEMSミラー13、カメラ装置1を制御するカメラ装置CPU14、モニタ2と通信するカメラ装置通信IF15等を備えている。
カメラ装置CPU14は、赤外レーザー12の照射タイミングとローリングシャッター動作との同期を制御する同期制御部16、ベッドを認識する画像認識部17を具備している。尚、カメラ11は、可視光に加えて赤外線にも感度を有している。
【0013】
上記の如く構成された見守りカメラシステムは以下のように動作する。
カメラ装置CPU14の制御により、最初にマスキングするエリアの距離と角度が決定され、モニタ2には決定されたマスキングエリアが表示されず、他のエリアの撮像映像が表示される。
これは、カメラ11のローリングシャッターとMEMSミラー13を制御することで、マスキングするエリアを距離及び角度で制御できる上記非特許文献1の技術を使用して行う。
【0014】
そして、ここではカメラ11が壁面に固定されることで、マスキングするエリアの角度を予め設定でき、ここではベッド面に平行な水平面に設定される。また、マスキングエリアの厚みも予め設定される。マスキングエリアの厚みは、ベッドに伏している人物の厚みが考慮されて設定される。
【0015】
こうして水平面状に設定されたマスキングエリアは、以下のように高さが設定される。
照明である赤外レーザー12とカメラ11の同期タイミングをずらして撮像範囲(マスキング位置)を変えながら撮像し、ベッド上の人物が映らないパラメータを選択して高さが固定される。
具体的に、まず通常の撮像を実施して映像内からベッドを検出する。
図2はベッド検知を行う説明図で、(a)はカメラ装置1とベッドBの位置関係を示す説明図、(b)はモニタ2に表示されるカメラ装置1の撮像画像である。尚、
図2に示すMは見守り対象の人物、矩形の白い点線枠は検出されたベッドBを示している。
【0016】
ベッドBの検出は、四角形の特徴画像を抽出して判断させる公知の技術(例えば、特開2018-128800号公報の技術)を使用して自動で検出させても良いし、モニタ2に表示されている映像からベッドBのエリアをタッチ操作等で指定しても良い。検出或いは設定されたベッドBの領域は
図2に示すように表示される。
【0017】
ベッドBが検出或いは設定されたら、マスキングエリアの高さ設定の動作に入る。
図3~5はこのマスキングエリア高さ設定の流れを示し、(a)はマスキング位置を示す説明図、(b)は撮像画像である。Eがマスキングされてモニタ2に表示されないエリアを示している。
図3はカメラ装置1に近い上部がマスキングされている状態、
図4はマスキング位置が下降してベッドB上の人物が隠れた状態、
図5は更にマスキング位置が下降してベッドB上の人物の一部がマスキングされずに露出している状態を示している。
尚、
図3~5でも説明のためベッド領域を点線枠で表示しているが、実際には表示されない。
【0018】
こうしてマスキングする高さをカメラ装置1の高さから徐々に下げて行き、高さ設定制御が行われる。その際、
図4に示すように、ベッドBに伏している人物Mがちょうど隠れる状態を認識するが、この時点では最適な高さがまだ不明であるため、このままスキャンを続ける。
そして、
図5に示すようにベッド面(検知エリアの外周部)が映らなくなったら、ベッドBを検知できないことでそれを把握して、スキャンを下降から上昇に変更して継続する。その後、再びベッドBの面が映る
図4に示す位置を認識する。カメラ装置CPU14は、この高さがベッドBに伏している人物Mが隠れる高さであると判断してスキャンを終了する。
【0019】
このマスキングエリアEの設定は、図示しない設定ボタンの操作で実施され、ベッドBの位置が変更されたら、またベッドBの高さが変更されたらボタン操作すれば、マスキングエリアEが最適な高さに再設定される。
尚、ベッドBの高さに関しては、カメラ装置CPU14に定期的にチェックさせて、高さ変更に対して自動修正させても良い。
【0020】
図6(a)は、マスキングエリアEを
図4の位置でもある最適な高さに設定したカメラ装置1の撮像映像(画像)を表示したモニタ2の画像を示し、
図6(b)はこの撮像状態でベッドBに伏していた人物Mが上半身を起こした状態のモニタ2の表示を示している。
図6に示すように、マスキングエリアEから外れた部位はマスキングが解除されるため、良好に表示されることを示している。
【0021】
このように、ベッドB及びその周辺が撮像されても、ベッドBに伏している人物はマスキングされて表示されるため誰か判別できない。しかしながら、上半身を起こす等の起き上がり動作をしたら、上半身等がマスキングエリアEから外れるため、その部位がモニタ2に表示される。よって、起き上がり動作等が発生すると人物を判別できる映像が表示されるため対処し易い。一方で、ベッドBに伏した状態ではマスキングされて人物の判別ができないため、プライバシーを保護できる。
また、ベッドBの高さが変更されても、マスキングエリアEの高さが見守り対象者がマスキングされて隠れる好ましい高さに容易に変更でき、別途設定をやり直す必要がない。
【符号の説明】
【0022】
1・・カメラ装置、2・・モニタ、11・・カメラ、12・・赤外レーザー、13・・MEMSミラー、14・・カメラ装置CPU、16・・同期制御部、17・・画像認識部、E・・マスキングエリア、B・・ベッド。