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  • 特許-搬送用ベルト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】搬送用ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/32 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
B65G15/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019236511
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104875
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 https://s11877.pcdn.co/wp-content/uploads/2019/04/TA12-BK.pdf 令和1年4月29日 https://s11877.pcdn.co/wp-content/uploads/2019/04/TA12-BK_Splicing.pdf 令和1年4月29日 https://www.nitta.co.jp/resources/catalog/belt-conv/L-PSMDR-02.pdf 令和1年6月24日 販売 (販売日、販売場所については販売先リスト参照) エヌピーピー工業株式会社(神奈川県横浜市神奈川区神大寺3丁目18番24号) 令和1年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸貴
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121688(JP,A)
【文献】特開2002-068439(JP,A)
【文献】特開2015-067442(JP,A)
【文献】特開2016-121016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/00 - 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で形成された透明なベルト本体と、
前記ベルト本体の搬送面と反対の面に設けられ、樹脂で形成された黒色の黒色樹脂層と
からなることを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
前記黒色樹脂層は、樹脂とこの樹脂を黒色とする導電性フィラーを含有する導電性樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
前記ベルト本体は、可視光域における光透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品あるいは物品を収容した段ボール等の搬送物の搬送に搬送用ベルトが用いられている。搬送用ベルトは、通常、一対のプーリ間に張設され、少なくとも一方向に走行することによって、搬送物を移動する。搬送用ベルトは、一般的には着色されており、例えばゴムやポリウレタン等の樹脂にカーボンブラック等を配合することで着色されている。
【0003】
一方、搬送用ベルトの帯電の防止のために、導電性を持たせたベルトが知られている。例えば、特許文献1に記載のベルトは、透明な樹脂または透明なエラストマーからなるベルト本体の内部また表面に透明導電膜を設けたものであり、そのベルトが透明になっている。また、特許文献2のベルトは、カーボンブラック等の導電性フィラーを配合した樹脂で構成することで、ベルトに導電性を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011ー121688号公報
【文献】特開2004ー264763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送用ベルトは、搬送物との間の擦れによって発生するゴミや搬送物のインクや汚れが、搬送用ベルトの汚れとして付着することがある。このような汚れを目立たなくするために、黒色の搬送用ベルトが望まれることがある。しかしながら、黒色の搬送用ベルトを用いた場合には、搬送用ベルトと搬送物との間の擦れによって、搬送物に対して搬送用ベルトの黒色が移り、搬送物を汚してしまうという問題があった。また、搬送用ベルトからの黒色の摩耗粉が飛散し搬送物に付着することで、搬送物の汚れとして目立つという問題があった。
【0006】
上記事情を鑑み、汚れが目立たず、また搬送物の汚れを目立たせることがない搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送用ベルトは、樹脂で形成された透明なベルト本体と、前記ベルト本体の搬送面と反対の面に設けられ、樹脂で形成された黒色の黒色樹脂層とを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明なベルト本体を通して黒色の黒色樹脂層が観察されるため、搬送用ベルトが黒色のベルトとして観察されるので、搬送用ベルトの汚れが目立つことがなく、また搬送用ベルトから搬送物に対して色移りがしないとともに、搬送物との間での擦れで生じるベルト本体の摩耗粉が搬送物に付着しても目立つことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る搬送用ベルトの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、実施形態に係る搬送用ベルト10は、無色透明なベルト本体12と、黒色を呈する黒色樹脂層14とを有している。この搬送用ベルト10は、黒色樹脂層14にベルト本体12を重ね合わせた構造である。これにより、搬送用ベルト10は、ベルト本体12を通して黒色樹脂層14が観察されるため、どのような方向からも黒色のベルトとして観察される。
【0011】
上記の搬送用ベルト10は、両端が接合されて無端状のベルトとされ、例えば駆動プーリと従動プーリとの間に張設されて使用される。ベルト本体12の一方の面が搬送物と接触する搬送面12aになっている。搬送用ベルト10は、例えば搬送面12aに搬送物を載せた状態で走行することで、その走行方向に搬送物を搬送する。なお、例えば搬送用ベルト10と平行に走行する他の搬送用ベルトの搬送面との間に搬送物を挟んだ状態で搬送用ベルト10を走行させることで、搬送物を搬送してもよい。
【0012】
ベルト本体12は、樹脂で透明に形成されている。この例では、ベルト本体12によって搬送用ベルト10に抗張力を与えている。このため、後述するように、黒色樹脂層14よりも厚みを大きくしてある。
【0013】
ベルト本体12を構成する樹脂としては、熱可塑性ポリウレタンを用いている。ベルト本体12を構成する樹脂は、熱可塑性ポリウレタンに限らず、透明であって、耐摩耗性、弾性を有するものであればよく、例えば加硫ゴム、ポリエステルエラストマー等を用いることができる。なお、ベルト本体12は、無色の透明であることが好ましいが、色味を有していてもよい。
【0014】
ベルト本体12は、可視光域における光透過率が90%以上であることが好ましい。これにより、ベルト本体12を通して観察される黒色樹脂層14により、搬送用ベルト10が確実に黒色らしく観察される。また、搬送面12aと搬送物との間の摩擦を調整するために、ベルト本体12の搬送面12aに凹凸を形成する等の表面加工を施してもよい。この場合、ベルト本体12側から搬送用ベルト10を見たときに、黒色として観察されるために、搬送面12aの表面は、平滑であることが好ましく、また鏡面、マット(梨地)なども好ましい。
【0015】
黒色樹脂層14は、ベルト本体12の搬送面12aと反対側の面12bに設けられている。この黒色樹脂層14は、樹脂に導電性フィラーを含有することによって黒色に形成されるとともに導電性を付加した導電性樹脂層になっている。この例では、熱可塑性ポリウレタンにカーボンブラックを配合して黒色樹脂層14を形成している。この例では、プーリと接触する黒色樹脂層14の表面(ベルト本体12と反対側の面)14aには、プーリとの摩擦力を高めるための小さな凹凸が形成されている。
【0016】
黒色樹脂層14を構成する樹脂としては、耐摩耗性、弾性を有するものであれば特に限定されず、例えばポリウレタン、加硫ゴム、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。なお、ベルト本体12及び黒色樹脂層14の樹脂は、その製造の容易性及び無端状のベルトとする際の搬送用ベルト10の接合の容易性から熱可塑性のものを用いることが好ましい。
【0017】
導電性フィラーとしては、樹脂に配合することで、樹脂が黒色となり、また導電性を持たせることができるものであれば特に限定されず、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラファイト等のカーボン系のもの、鉄、銅等の酸化物等を用いることができる。特に、カーボン系の導電性フィラーは、導電性が高く好ましい。黒色樹脂層14における表面電気抵抗値は、10Ω/□以下が望ましい。
【0018】
上記の黒色樹脂層14は、黒色を呈しまた導電性を有するのであれば、その厚みは限定されず、例えばベルト本体12の厚みよりも小さく形成される。この例では、ベルト本体12の厚みは1.0mm、黒色樹脂層14の厚みは0.05mm(表面の凹凸を含めた場合0.2mm)程度である。
【0019】
搬送用ベルト10は、ベルト本体12と黒色樹脂層14とが剥離しないような手法であれば、任意の手法で製造することができる。例えば、押出ラミネート法で製造する場合には、溶融した樹脂に導電性フィラーを配合したものを、表面に剥離処理した例えば布材(あるいは剥離紙等)上に展延して黒色樹脂層14を形成する。この布材上の黒色樹脂層14の表面に、ベルト本体12の原料を溶融して押出機からフィルム状に押し出して供給し、これらを冷却ローラーに送り込んでラミネートする。このようにして形成されるベルト本体12と黒色樹脂層14とが一体にされたものが布材から剥がされて搬送用ベルト10とされる。
【0020】
上記のように構成される搬送用ベルト10では、透明な樹脂で形成されたベルト本体12に対して搬送物が載せられるため、搬送物との擦れは透明なベルト本体12との間で生じる。このため、搬送用ベルト10から搬送物に色移りすることがない。また、搬送用ベルト10と搬送物との間で生じる擦れによって、ベルト本体12の摩耗粉が発生しても、透明なベルト本体12の摩耗粉であるため、これが搬送物に付着しても搬送物の汚れとして目立つことはない。
【0021】
しかも、上記のように構成される搬送用ベルト10は、無色透明なベルト本体12を通して黒色樹脂層14が観察されるため、全体が黒色のベルトとして観察される。したがって、従来の黒色の搬送用ベルトと同様に、搬送物との間で生じる擦れによって発生するゴミが付着したり、搬送物のインクや汚れが搬送用ベルト10に擦り付けられて付着したりしても、これらが目立つことがない。
【0022】
また、この例における黒色樹脂層14は、導電性フィラーによって導電性を有しているので、搬送用ベルト10の帯電が防止される。このため、ベルト本体12の摩耗粉や搬送用ベルト10と搬送物との間で生じる擦れによって発生するゴミを搬送用ベルト10が吸着することがない。さらに、搬送用ベルト10の帯電が防止されるため、帯電に伴う放電等がないため機器の誤作動等が防止される。
【0023】
上記では、搬送用ベルトの黒色樹脂層が導電性を有する構成であるが、黒色樹脂層に導電性を与えずに単に黒色とする構成であってもよい。この場合には、フィラーとしては、単に樹脂を黒色に着色するものを用いればよい。
【符号の説明】
【0024】
10 搬送用ベルト
12 ベルト本体
12a 搬送面
14 黒色樹脂層

図1