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特許7382231リチウム金属二次バッテリーのためのリチウムアノード保護ポリマー層及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】リチウム金属二次バッテリーのためのリチウムアノード保護ポリマー層及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20231109BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20231109BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20231109BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231109BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231109BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20231109BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20231109BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20231109BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/40
H01M4/48
H01M4/60
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/485
H01M4/52
H01M4/50
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M12/08 K
H01M4/1395
H01M10/058
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2019555198
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018025135
(87)【国際公開番号】W WO2018191024
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】15/485,934
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パン,バオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,フイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219411(JP,A)
【文献】特開2005-071998(JP,A)
【文献】特開2005-142156(JP,A)
【文献】国際公開第2017/034656(WO,A1)
【文献】特開2000-021386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、前記カソード及び前記アノードの間に配置される電解質又は分離体-電解質アセンブリとを含んでなるリチウム二次バッテリーにおいて、
前記カソードが、カソード活物質を含んでなり、前記カソード活物質が、無機材料、有機材料、ポリマー材料及びその組合せから選択され、且つ前記無機材料が、硫黄又はアルカリ金属ポリスルフィドを含まず、
前記アノードが、
a)アノード活物質としてのリチウム又はリチウム合金の箔又はコーティングと、
b)2%~700%の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び1nm~10nm未満の厚さを有する高弾性ポリマーの薄層と
を含んでなり、前記高弾性ポリマーの前記薄層が、前記リチウム又はリチウム合金の箔又はコーティングと、前記電解質又は分離体-電解質アセンブリとの間に配置されており、リチウム金属樹枝状結晶の形成が排除されていることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中に、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合及びその組合せを有する前記ポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項3】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、ニトリル-含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖及びその組合せから選択されポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項4】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、その中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%を含有するか、或いは0.1重量%~10重量%のカーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン及びそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントをその中に含有することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項5】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーをリチウムイオン導電性添加剤と混合して、複合物を形成し、前記リチウムイオン導電性添加剤が、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO及びそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、0≦x≦1、1≦y≦4である)から選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項6】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、その中に分散された電気導電性材料をさらに含有し、且つ前記電気導電性材料が、電子導電性ポリマー、金属粒子若しくはワイヤー、グラフェンシート、カーボン繊維、黒鉛繊維、カーボンナノ繊維、黒鉛ナノ繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛粒子、膨張黒鉛フレーク、アセチレンブラック粒子又はその組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項7】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、その中に分散されたリチウム塩をさらに含有し、且つ前記リチウム塩が、過塩素酸リチウム、LiClO、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPF、ホウフッ化リチウム、LiBF、ヘキサフルオロヒ化リチウム、LiAsF、トリフルオロメタスルホン酸リチウム、LiCFSO、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、LiN(CFSO、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、LiBF、硝酸リチウム、LiNO、Li-フルオロアルキル-リン酸塩、LiPF(CFCF、リチウムビスペルフルオロ-エチスルホニルイミド、LiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、LiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩、及びそれらの組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項8】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらのスルホン化誘導体及びそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーと混合されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項9】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス(phosphazenex)、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体、及びそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物又はブレンドを形成することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項10】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、1×10-4S/cm~10-2S/cmのリチウムイオン導電率を有することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項11】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ化物、金属セレン化物、遷移金属硫化物及びその組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項12】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムマンガン、酸化リチウムバナジウム、リチウム-混合金属酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウム-混合金属リン酸塩、リチウム金属ケイ化物及びその組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項13】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnCl及びその組合せからなる群を含む金属フッ化物又は金属塩化物から選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項14】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、M及びMaが、Fe、Mn、Co、Ni、V又はVOから選択され、Mbが、Fe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn又はBiから選択され;且つx+y≦1である、LiMSiO又はLiMaMbSiOとして示されるリチウム遷移金属ケイ酸塩から選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項15】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物及びその組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項16】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム及びその組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項17】
請求項11に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記金属酸化物が、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13(式中、0.1<x<5)、それらのドープされた変種、それらの誘導体及びその組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項18】
請求項11に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記金属酸化物又は金属リン酸塩が、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、カンラン石(olivine)化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト(Tavorite)化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO及びその組合せ(式中、Mは遷移金属又は複数の遷移金属の混合物である)から選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項19】
請求項11に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記無機材料が、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物又はトリカルコゲン化物、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル又は遷移金属の硫化物、セレン化物又はテルル化物;(d)窒化ホウ素、及び(e)その組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項20】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記有機材料又はポリマー材料が、ポリ(硫化アントラキノニル)(PAQS)、リチウムオキソ炭素、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(硫化アントラキノニル)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、二硫化ホスファゼンポリマー([(NPS)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li及びその組合せから選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項21】
請求項20に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記チオエーテルポリマーが、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含有するポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、且つペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項22】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記有機材料が、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、その化学誘導体及びその組合せから選択されるフタロシアニン化合物を含有することを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項23】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記カソード活物質が、0.5nm~100nmの厚さ又は直径を有するナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンの形態であることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項24】
請求項23に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンが、カーボン材料、グラフェン、電子導電性ポリマー、導電性金属酸化物、又は導電性金属コーティングから選択される導電性保護コーティングでコートされるか、又は包含されることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項25】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、その中に分散された添加剤又は充填剤を有さないニートポリマーであることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項26】
請求項1に記載のリチウム二次バッテリーにおいて、前記高弾性ポリマーが、その中に分散された添加剤又は充填剤を有さないニートポリマーであることを特徴とするリチウム二次バッテリー。
【請求項27】
請求項1のリチウムバッテリーにおいて、リチウム金属バッテリー、リチウム-硫黄バッテリー、リチウム-セレンバッテリー、又はリチウム-エアバッテリーであることを特徴とするリチウムバッテリー。
【請求項28】
リチウムバッテリーの製造方法において、
(a)カソード活物質層及び前記カソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと;
(b)リチウム金属又はリチウム合金箔若しくはコーティング及び前記箔又はコーティングを支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと;
(c)電解質並びに前記アノード及び前記カソードを電気的に分離する任意選択的な分離体を提供することと、
(d)前記リチウム金属又はリチウム合金箔又はコーティングと前記電解質又は分離体との間に配置された高弾性ポリマーのアノード保護層を提供することと
を含んでなり、
前記カソード活物質が、無機材料、有機材料、ポリマー材料及びその組合せから選択され、且つ前記無機材料が、硫黄又はアルカリ金属ポリスルフィドを含まず、
前記高弾性ポリマーが、2%~700%の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び1nm~10nm未満の厚さを有し、リチウム金属樹枝状結晶の形成が排除されていることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中に、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はその組合せを有する前記ポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、ニトリル-含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はその組合せから選択されるポリマー鎖の架橋ネットワークを含有することを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、その中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%を含有するか、或いは0.1重量%~10重量%のカーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン又はそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントをその中に含有することを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーをリチウムイオン導電性添加剤と混合して、複合物を形成し、前記リチウムイオン導電性添加剤が、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つLiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、0≦x≦1及び1≦y≦4である)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項28に記載の方法において、前記高弾性ポリマーが、その中に分散された電気導電性材料をさらに含有し、且つ前記電気導電性材料が、電子導電性ポリマー、金属粒子若しくはワイヤー、グラフェンシート、カーボン繊維、黒鉛繊維、カーボンナノ繊維、黒鉛ナノ繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛粒子、膨張黒鉛フレーク、アセチレンブラック粒子及びその組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法において、前記リチウムイオン導電性添加剤が、前記高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウム、LiClO、ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiPF、ホウフッ化リチウム、LiBF、ヘキサフルオロヒ化リチウム、LiAsF、トリフルオロメタスルホン酸リチウム、LiCFSO、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム、LiN(CFSO、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、LiBOB、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム、LiBF、硝酸リチウム、LiNO、Li-フルオロアルキル-リン酸塩、LiPF(CFCF、リチウムビスペルフルオロ-エチスルホニルイミド、LiBETI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、LiTFSI、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項28に記載の方法において、アノード集電体によって支持されたリチウム金属コーティングを提供する前記ステップが、前記バッテリーの第1の充電操作の間に実行されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月12日に出願された米国特許出願第15/485934号(その内容を参照によって本願明細書に組み入れる)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、アノード活物質として(薄リチウム箔、コーティング又はシートの形態の)リチウム金属層を有する再充電可能なリチウム金属バッテリーの分野、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン及びリチウム(Li)金属セル(リチウム-硫黄セル、Li-エアセルなどを含めて)は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、並びにラップトップコンピュータ及び携帯電話などの携帯用電子デバイスのための有望な電源であると考えられている。リチウム金属は、アノード活物質として(Li4.4Si以外の)他のいかなる金属又は金属インターカレーション化合物と比較して、最も高い容量(3,861mAh/g)を有する。したがって、一般に、再充電可能なLi金属バッテリーは、リチウムイオンバッテリーよりも有意に高いエネルギー密度を有する。
【0004】
歴史的に、再充電可能なリチウム金属バッテリーは、リチウム金属アノードと組み合わせて、カソード活物質としてTiS、MoS、MnO、CoO及びVなどの高い比容量を有する非リチウム化化合物を使用して製造されていた。バッテリーが放電されると、リチウムイオンはリチウム金属アノードから溶解し、電解質を通ってカソードまで移動し、したがってカソードはリチウム化された。残念なことに、サイクル時に、リチウム金属は、最終的にバッテリー中で安全ではない状態を引き起こす樹枝状結晶の形成をもたらした。結果として、これらのタイプの二次バッテリーの製造は1990年初期に中止され、リチウムイオンバッテリーへの道が与えられた。
【0005】
今でも、サイクリング安定性及び安全性の懸念は、EV、HEV及びマイクロ電子デバイス用のLi金属バッテリーのさらなる商業化を妨げる主要な要因である。これらの問題は、主にLiが、繰り返される充電-放電サイクル又は過充電の間に樹枝状結晶構造を形成する高い傾向のため、内部電気ショート及び熱暴走が導かれるためである。以下に簡単に要約されるように、樹枝状結晶に関連する問題に対処するための多くの試みがなされた。
【0006】
Fauteuxら[D.Fauteuxら、「Secondary Electrolytic Cell and Electrolytic Process」、米国特許第5,434,021号明細書、1995年7月18日]は、金属アノードから電解質及び逆方向への金属イオンの移動を可能にする保護表面層(例えば、多核芳香族及びポリエチレンオキシドの混合物)を金属アノードに適用した。電着の間(すなわち、バッテリー再充電の間)、イオンが金属アノード上に逆に均一に引き付けられるため、表面層は電子導電性でもある。Alamgirら[M.Alamgirら、「Solid polymer electrolyte batteries containing metallocenes」、米国特許第5,536,599号明細書、1996年7月16日]は、固体ポリマー電解質ベースの再充電可能なバッテリー中での化学的過充電及び樹枝状結晶形成を防ぐためにフェロセンを使用した。
【0007】
Skotheim[T.A.Skotheim、「Stabilized Anode for Lithium-Polymer Battery」、米国特許第5,648,187号明細書(1997年7月15日);同第5,961,672号明細書(1999年10月5日)]によって、Li金属アノードと電解質との間に挿入されたLiイオン導電性ポリマーの真空蒸着薄膜の使用によって樹枝状結晶形成に対して安定化されたLi金属アノードが提供された。Skotheimら[T.A.Skotheimら「Lithium Anodes for Electrochemical Cells」、米国特許第6,733,924号明細書(2004年5月11日);同第6,797,428号明細書(2004年9月28日);同第6,936,381号明細書(2005年8月30日);及び同第7,247,408号明細書(2007年7月24日)]によって、Li金属ベースの第1の層と、一時的な保護金属(例えば、Cu、Mg及びAl)の第2の層と、リチウムシリケート及びリチウムホスフェートなどの単一イオン導電性ガラス又はポリマーの少なくとも1層(典型的に2層以上)から構成される第3の層とからなる多層アノード構造がさらに提案された。少なくとも3又は4層からなるそのようなアノード構造は、製造及び使用するに非常に複雑であり、且つ費用がかかりすぎる。
【0008】
LiI-LiPO-Pのガラス状表面層などのLiアノードのための保護コーティングは、プラズマ補助堆積から得られてよい[S.J.Viscoら、「Protective Coatings for Negative Electrodes」、米国特許第6,025,094号明細書(2000年2月15日)]。Viscoらによって、複雑な多層保護コーティングも提案されるなどした[S.J.Viscoら、「Protected Active Metal Electrode and Battery Cell Structures with Non-aqueous Interlayer Architecture」、米国特許第7,282,295号明細書(2007年10月16日);同第7,282,296号明細書(2007年10月16日);及び同第7,282,302号明細書(2007年10月16日)]。
【0009】
これらの以前の努力にもかかわらず、再充電可能なLi金属バッテリーはなお市場において成功していない。これは、これらの従来技術アプローチがなお主要な欠陥を有するという概念によるものでありそうである。例えば、いくつかの場合、アノード又は電解質構造が非常に複雑である。他には、材料が非常に高価であるか、又はこれらの材料を製造するためのプロセスが非常に煩雑であるか、又は困難である。固体電解質は、典型的に低いリチウムイオン導電率を有し、製造が困難であり、且つバッテリー中に導入することが難しい。
【0010】
さらに、セル中のソール電解質として、又は(リチウム膜と液体電解質との間に挿入された)アノード保護層としての固体電解質は、リチウム金属との良好な接触を有さず、これを維持出来ない。これは、(バッテリー放電の間に)リチウムイオンの溶解を支持し、リチウムイオンを輸送し、そして(バッテリー再充電の間に)リチウムイオンがリチウムアノードに戻って再堆積することを可能にする電解質の有効性を実質的に減少させる。
【0011】
リチウム金属アノードと関連する別の主要な問題は、アノードに再度堆積されることが不可能であり、且つアノードから単離される「機能を失ったリチウム含有種」の繰り返される形成を導く、電解質とリチウム金属との間の継続的な反応である。これらの反応は、電解質及びリチウム金属を不可逆的に消費し続け、急速な容量減衰をもたらす。リチウム金属のこのような継続的な損失を埋め合わせるために、バッテリーの製造時に、過剰量のリチウム金属(必要とされるであろう量よりも3~5倍高い量)がアノードにおいて典型的に導入される。これは、費用を追加するのみならず、バッテリーの重量及び体積を有意に増加させ、バッテリーセルのエネルギー密度を減少させる。この重大な問題は広く無視されてきたが、バッテリー産業においてこの問題への適切な解決策は存在しなかった。
【0012】
明らかに、Li金属の樹枝状結晶によって誘導されるLi金属バッテリーにおける内部ショート及び熱暴走問題を防ぐため、並びにリチウム金属と電解質との間の有害な反応を減少させるか、又は排除するための、より単純で、より費用効果が高く、且つ実施することがより容易なアプローチに対する切迫した必要性が存在する。
【0013】
したがって、本発明の目的は、リチウム金属アノードを有する全てのタイプのLi金属バッテリーのリチウム金属樹枝状結晶及び反応の問題を克服するための効果的な方法を提供することであった。本発明の特定の目的は、高い比容量、高い比エネルギー、安全性、並びに長期及び高度に安定なサイクル寿命を示すリチウム金属セルを提供することであった。
【発明の概要】
【0014】
本明細書において、カソードと、アノードと、カソード及びアノードの間に配置される電解質又は分離体-電解質アセンブリとを含んでなるリチウム二次バッテリーにおいて、アノードが、(a)アノード活物質としてのリチウム又はリチウム合金の箔又はコーティングと、(b)2%以上の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び1nm~10μmの厚さを有する高弾性ポリマーの薄層とを含んでなり、高弾性ポリマーが、リチウム又はリチウム合金の箔/コーティング層と電解質又は分離体-電解質アセンブリ層との間に配置されているリチウム二次バッテリーが報告される。リチウム又はリチウム合金の箔又はコーティングは、集電体(例えば、Cu箔、Niフォーム、グラフェンシート、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブなどのナノフィラメントの多孔性の層)によって支持されてもよい。電解質がソリッドステート電解質である場合、多孔性分離体は必要とされなくてもよい。
【0015】
高弾性ポリマーは、一方向引張下で測定される場合、少なくとも2%(好ましくは5%)である弾性変形を示すポリマー、典型的に、軽度に架橋したポリマーを意味する。材料科学及び工学の分野において、「弾性変形」とは、負荷の解放時に本質的に完全に回復可能であり、且つ回復プロセスが本質的に瞬間的である(時間遅延がないか、又はわずかである)(機械的に応力を受けた場合の)材料の変形として定義される。弾性変形は、より好ましくは、10%より高く、なおより好ましくは、30%より高く、さらにより好ましくは、50%より高く、なおより好ましくは、100%より高い。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中に、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はその組合せを有するポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを含有する。これらのネットワーク又は架橋ポリマーは、高弾性(高い弾性変形歪み)及び高いリチウムイオン導電率のユニークな組合せを示す。
【0017】
特定の好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ニトリル-含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はその組合せから選択される軽度に架橋したネットワークポリマー鎖を含有する。
【0018】
この高弾性ポリマー層は、リチウム箔/コーティング層表面に対して配置された薄膜、又はリチウム箔/コーティング表面上に堆積された薄コーティングであってよい。リチウムバッテリーが放電されると、リチウムが電解質中に溶解して、リチウムイオンになるため、リチウム箔/コーティング層の厚さが減少し、保護層が弾性ではない場合、集電体と保護層の間に間隙が生じ得ることは留意されてもよい。このような間隙によって、アノードに戻ってリチウムイオンが再堆積することが不可能となるであろう。我々は、高弾性ポリマーがアノード層と合同に、又は一致して膨張又は収縮することが可能であることを観察した。この能力によって、集電体(又はリチウム膜自体)及び保護層の間の良好な接触が維持されることが補助され、妨害されずにリチウムイオンの再堆積が可能となる。
【0019】
特定の実施形態において、高弾性ポリマーは、その中に分散された電気導電性材料を含有する。電気導電性材料(すなわち、電子導電性材料)は、電子導電性ポリマー、金属粒子若しくはワイヤー(若しくは金属ナノワイヤー)、グラフェンシート、カーボン繊維、黒鉛繊維、カーボンナノ繊維、黒鉛ナノ繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛粒子、膨張黒鉛フレーク、アセチレンブラック粒子又はその組合せから選択されてよい。電気導電性材料(例えば、金属ナノワイヤー、ナノ繊維など)は、好ましくは、100nm未満の厚さ又は直径を有する。
【0020】
高弾性ポリマー中に分散されたリチウム塩は、好ましくは、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されてよい。
【0021】
アノード側面において、好ましく且つ典型的に、保護層のための高弾性ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、最も好ましくは10-3S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する。選択されたポリマーのいくつかは、10-2S/cmより高いリチウムイオン導電率を示す。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、その中に分散された添加剤又は充填剤を含有しないニートポリマーである。他の実施形態では、高弾性ポリマーは、ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%(好ましくは1重量%~35重量%)を含有するポリマー母材複合物である。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、0.1重量%~10重量%のカーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、グラフェン又はそれらの組合せから選択される強化材ナノフィラメントを含有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、天然ポリイソプレン(例えばシス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えばネオプレン、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、及びそれらの組合せから選択されるエラストマーと(ブレンド、コポリマー又は相互侵入ネットワークを形成するために)混合される。
【0023】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有する複合物であり、そこでリチウムイオン導電性添加剤は、LiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO、又はそれらの組合せから選択され、式中、X=F、Cl、I、又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である。
【0024】
高弾性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、それらの誘導体(例えばスルホン化変種)、又はそれらの組合せから選択される電子導電性ポリマーとの混合物又はブレンド、コポリマー又は半相互侵入ネットワーク(半IPN)を形成してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、エラストマーと、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼネックス(phosphazenex)、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフロオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらのスルホン化誘導体、又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物、ブレンド又は半IPNを形成してもよい。スルホン化はここで、改良されたリチウムイオン導電率をポリマーに与えることが見出されている。
【0026】
カソード活物質は、無機材料、有機材料、ポリマー材料又はその組合せから選択されてよい。無機材料は、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ化物、金属セレン化物、金属硫化物又はその組合せから選択されてよい。
【0027】
無機材料は、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムマンガン、酸化リチウムバナジウム、リチウム-混合金属酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウム-混合金属リン酸塩、リチウム金属ケイ化物又はその組合せから選択されてよい。
【0028】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnCl及びその組合せからなる群を含む金属フッ化物又は金属塩化物から選択される。特定の好ましい実施形態において、無機材料は、M及びMaがFe、Mn、Co、Ni、V若しくはVOから選択され、MbがFe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn若しくはBiであり;且つx+y≦1である、LiMSiO又はLiMaMbSiOとして示されるリチウム遷移金属ケイ酸塩から選択される。
【0029】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物又はその組合せから選択される。無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム又はその組合せから選択される。
【0030】
カソード活物質層は、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13(式中、0.1<x<5)、それらのドープされた変種、それらの誘導体及びその組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有する金属酸化物を含有してもよい。
【0031】
カソード活物質層は、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、カンラン石(olivine)化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト(Tavorite)化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO又はその組合せ(式中、Mは遷移金属又は複数の遷移金属の混合物である)から選択される金属酸化物又は金属リン酸塩を含有してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、無機材料は、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物又はトリカルコゲン化物、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル又は遷移金属の硫化物、セレン化物又はテルル化物;(d)窒化ホウ素、或いは(e)その組合せから選択される。
【0033】
リチウム硫黄セルに関して、カソードは、硫黄、硫黄含有分子、硫黄化合物、リチウム多硫化物、硫黄/炭素ハイブリッド又は複合材料、硫黄/黒鉛ハイブリッド又は複合材料、硫黄/グラフェンハイブリッド又は複合材料、硫黄-ポリマー化合物、或いはその組合せを含有し得る。リチウム-セレンバッテリーに関して、カソードは、カソード活物質としてセレン(Se)又はSe含有化合物を含有する。
【0034】
カソード活物質層は、ポリ(硫化アントラキノニル)(PAQS)、リチウムオキソ炭素、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(硫化アントラキノニル)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、二硫化ホスファゼンポリマー([(NPS]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li又はその組合せから選択される有機材料又はポリマー材料を含有してもよい。
【0035】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含有するポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、且つペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0036】
他の実施形態において、カソード活物質層は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、その化学誘導体又はその組合せなどのフタロシアニン化合物から選択される有機材料を含有する。
【0037】
カソード活物質は、好ましくは、100nmより小さい厚さ又は直径を有するナノ粒子(球形、楕円、及び不規則な形状)、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンの形態である。これらの形状は、特に断りがない限り又は上記の種のうちの特定のタイプが望ましいのでなければ一括して「粒子」と称することができる。さらに好ましくは、カソード活物質は、50nmより小さい、さらにより好ましくは20nmより小さい、最も好ましくは10nmより小さい寸法を有する。いくつかの実施形態において、1つの粒子又は粒子のクラスターは、粒子及び/又は高弾性ポリマー層(封入シェル)の間に配置された炭素の層でコーティング又は包含されてもよい。
【0038】
カソード層は、カソード活物質粒子と混合された黒鉛、グラフェン又は炭素材料をさらに含有してもよい。炭素又は黒鉛材料は、ポリマー炭素、非晶質炭素、化学蒸着炭素、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、カーボンブラック、コークス、アセチレンブラック、活性炭、100nmより小さい寸法を有する微細膨張黒鉛粒子、人工黒鉛粒子、天然黒鉛粒子、又はそれらの組合せから選択される。グラフェンは、純粋(pristine)グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、グラフェンフルオリド、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、官能化グラフェンなどから選択されてもよい。
【0039】
カソード活物質粒子は、炭素材料、グラフェン、電子導電性ポリマー、導電性金属酸化物、又は導電性金属コーティングから選択される導電性保護コーティングでコートされるか、又は包含されてもよい。好ましくは、ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノチューブ、ナノシート、ナノベルト、ナノリボン、ナノディスク、ナノプレートリット、又はナノホーンの形態のカソード活物質がリチウムイオンでプレインターカレートされるか、又はプレドープされて、プレリチウム化アノード活物質の0.1重量%~54.7重量%のリチウムの量を有する前記プレリチウム化アノード活物質を形成する。
【0040】
本発明は、エアカソードと、上記で定義される高弾性ポリマーをベースとする保護層を含んでなるアノードと、アノード及びエアカソードとの間に配置された電解質又は分離体と組み合わせた電解質とを含んでなるリチウム金属-エアバッテリーも提供する。エアカソードにおいて、戸外からの(又はバッテリー外部の酸素供給元からの)酸素が主要カソード活物質である。エアカソードは、カソードにおいて形成された酸化リチウム材料を支持するための不活性材料を必要とする。出願人は、驚くべきことに、導電性ナノフィラメントの集積化構造が、排出生成物(例えば酸化リチウム)を支持するために意図されたエアカソードとして使用可能であることを見出した。
【0041】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、エアカソードが、相互に連結する細孔を含んでなる電子導電性経路の多孔性ネットワークを形成するように相互に連結する電気導電性のナノメートル規模のフィラメントの集積化構造を含んでなり、フィラメントが、500nm未満(好ましくは100nm未満)の横方向寸法を有するリチウム金属-エアバッテリーである。これらのナノフィラメントは、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素ナノ繊維(CNF)、グラフェンシート、炭素繊維、黒鉛繊維などから選択可能である。
【0042】
本発明は、リチウムバッテリーの製造方法において、(a)カソード活物質層及びカソード活物質層を支持するための任意選択的なカソード集電体を提供することと;(b)(リチウム金属又はリチウム合金箔若しくはコーティングを含有する)アノード活物質層及びリチウム金属又はリチウム合金箔又はコーティングを支持するための任意選択的なアノード集電体を提供することと;(c)アノード活物質層及びカソード活物質層と接触する電解質並びにアノード及びカソードを電気的に分離する任意選択的な分離体を提供することと、(d)2%~700%(好ましくは5%~300%)の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び0.5nm~10μmの厚さを有する高弾性ポリマーのアノード保護層を提供することとを含んでなるリチウムバッテリーの製造方法も提供する。このようなアノード保護層は、リチウム金属又はリチウム合金箔又はコーティングと、電解質又は分離体との間に配置される。
【0043】
好ましくは、高弾性ポリマーは、1×10-5S/cm~5×10-2S/cmのリチウムイオン導電率を有する。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、10~300%、(より好ましくは>30、さらにより好ましくは>50%)の回復可能な引張歪みを有する。
【0044】
特定の実施形態において、高弾性ポリマーを提供する手順は、超高分子量ポリマーと、エラストマー、電子導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、そのスルホン化誘導体又はその組合せ)、リチウムイオン導電性材料、強化材(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維及び/又はグラフェン)或いはその組合せとの混合物/ブレンド/複合物を提供することを含有する。
【0045】
この混合物/ブレンド/複合物において、リチウムイオン導電性材料は、高弾性ポリマー中に分散され、且つ好ましくは、LiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である)から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン導電性材料は高弾性ポリマー中に分散され、且つ過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、アノード層(集電体、Cu箔の表面上に堆積された薄Li箔又はLiコーティング)と、多孔性分離体と、カソード活物質の粒子、導電性添加剤(図示されず)及び樹脂結合剤(図示されず)から構成されるカソード活物質層とを含有する従来技術のリチウム金属バッテリーセルの概略図である。カソード活性層を支持するカソード集電体も示される。
図2図2は、アノード層(集電体、Cu箔の表面上に堆積された薄Li箔又はLiコーティング)と、UHMWポリマーをベースとするアノード保護層と、多孔性分離体と、カソード活物質の粒子、導電性添加剤(図示されず)及び樹脂結合剤(図示されず)から構成されるカソード活物質層とを含有する本発明のリチウム金属バッテリーセルの概略図である。カソード活性層を支持するカソード集電体も示される。
図3A図3(A)は、軽度に架橋されたETPTAポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線である。
図3B図3(B)は、4つのリチウムセル:それぞれV粒子を含有するカソードを有する2つのセル(一方のセルはETPTAポリマー保護層を有し、そして他方は有さない)、及びそれぞれグラフェン包含V粒子を含有するカソードを有する2つのセル(一方のセルはETPTAポリマー保護層を有し、そして他方は有さない)の比インターカレーション容量曲線である。
図4A図4(A)は、PVA-CNポリマーフィルムの代表的な引張応力-歪み曲線である。
図4B図4(B)は、それぞれ、(1)アノードの高弾性PVA-CN層、及び(2)アノードにポリマー保護層がないことを特徴とする2つのリチウム-LiCoOセル(最初にセルはリチウムを含まない)の比容量値である。
図5A図5(A)は、PETEAポリマー膜の代表的な引張応力-歪み曲線である。
図5B図5(B)は、(1)高弾性PETEA保護アノードを有する;及び(2)アノード保護層のないFeFをベースとするカソード活物質を有する2つのコインセルの放電容量曲線である。
図6図6は、それぞれ、アノード活物質としてLi及びカソード活物質としてFePc/RGO混合粒子を有する2つのリチウム-FePc(有機)セルの比容量である(一方のセルはETPTA/EGMEA半IPN保護アノードを含有し、そして他は保護層を有さない)。
図7図7は、S含浸活性MCMB粒子をベースとするカソード活物質を有する2つのLi-Sバッテリーのカソード比容量値である(一方のセルはETPTA保護アノードを含有し、そして他はアノード保護層を有さない)。
図8図8は、それぞれ、S/グラフェンハイブリッドベースのカソード活物質及び(1)アノード保護用の高弾性PETEA層を有する、及び(2)アノード保護層を有さない、2つのLi-Sバッテリーのカソード比容量値である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、好ましくは、有機電解質、ポリマーゲル電解質、イオン液体電解質、半固体電解質、又はソリッドステート電解質をベースとするリチウム二次バッテリーに関する。リチウム二次バッテリーの形状は、円筒形、四角形、ボタン状等であることが可能である。本発明は、いずれかのバッテリー形状若しくは形態又は電解質の種類に限定されない。
【0049】
本発明は、カソードと、アノードと、カソード及びアノードの間に配置される電解質又は分離体-電解質アセンブリとを含んでなるリチウム二次バッテリーにおいて、アノードが、a)アノード活物質としてのリチウム又はリチウム合金の箔又はコーティングと、(b)2%以上の回復可能な引張歪み、室温において10-6S/cm以上のリチウムイオン導電率及び1nm~10μmの厚さを有する高弾性ポリマーの薄層とを含んでなり、高弾性ポリマーが、リチウム又はリチウム合金の箔/コーティングと電解質又は分離体-電解質アセンブリとの間に配置されている(挿入されている)リチウム二次バッテリーを提供する。リチウム又はリチウム合金の箔又はコーティングは、集電体(例えば、Cu箔、Niフォーム、グラフェンシート、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブなどの電子導電性経路の3D相互連結ネットワークを形成するナノフィラメントの多孔性の層)によって支持されてもよい。
【0050】
好ましくは、このようなアノード保護層は、リチウムバッテリー中で使用される電解質とは組成が異なり、且つアノードの活物質層(例えば集電体上のLi箔又はLiコーティング)及び電解質(又は電解質-分離体層)の間に配置される別個の層として維持される(電解質へ溶解されない)。
【0051】
我々は、この保護層がいくつかの予想外の利益をもたらすことを発見した。すなわち、(a)樹枝状結晶の形成が本質的に排除された;(b)アノード側面に戻るリチウムの均一な堆積が容易に達成される;(c)この層は、最小の界面抵抗でリチウム箔/コーティングから/までの、及びリチウム箔/コーティング及び保護層の間の界面を通してのリチウムイオンの円滑で中断されない輸送を保証する;及び(d)サイクル安定性が有意に改善可能であり、且つサイクル寿命が増加した。
【0052】
図1に示されるような従来のリチウム金属バッテリーにおいて、アノード活物質(リチウム)は、アノード集電体(例えばCu箔)の直接上に薄膜の形態又は薄い箔の形態で堆積される。バッテリーは、リチウム金属バッテリー、リチウム硫黄バッテリー、リチウムエアバッテリー、リチウムセレンバッテリーなどである。以前に背景の項目で議論された通り、これらのリチウム二次バッテリーは、アノードにおける樹枝状結晶によって誘導される内部ショート及び「機能を失ったリチウム」の問題を有する。
【0053】
我々は、リチウム箔/コーティング及び電解質(又は電解質/分離体)の間の新規アノード保護層を開発し、そして導入することによって、30年超の間バッテリーの設計者及び電気化学者を困らせたこれらの困難な問題を解決した。この保護層は、一方向引張下での2%以上の(好ましくは5%以上の)回復可能な(弾性)引張歪み、及び室温において10-6S/cm以上(好ましく且つより典型的に1×10-5S/cm~5×10-2S/cm)のリチウムイオン導電率を有する高弾性ポリマーを含んでなる。
【0054】
図2に概略的に示されるように、本発明の一実施形態は、アノード層(集電体、Cu箔の表面上に堆積された薄Li箔又はLiコーティング)と、高弾性ポリマーをベースとするアノード保護層と、多孔性分離体と、カソード活物質の粒子、導電性添加剤(図示されず)及び樹脂結合剤(図示されず)から構成されるカソード活物質層とを含有するリチウム金属バッテリーセルである。カソード活性層を支持するカソード集電体(例えばAl箔)も図2に示される。
【0055】
高弾性ポリマーは、一方向引張下で測定される場合、少なくとも2%の弾性変形を示すポリマーを意味する。材料科学及び工学の分野において、「弾性変形」とは、負荷の解放時に本質的に完全に回復可能であり、且つ回復が本質的に瞬間的である(機械的に応力を受けた場合の)材料の変形として定義される。弾性変形は、好ましくは5%より高く、より好ましくは10%より高く、さらにより好ましくは30%より高く、なおより好ましくは100%より高い。
【0056】
図2は、リチウムバッテリーの製造時にアノード上にリチウムコーティングが既に存在していることを示すが、これは本発明の一実施形態であることに留意されてよい。別の実施形態は、リチウムバッテリーの製造時にアノード上にリチウム箔又はリチウムコーティングを含有しないリチウムバッテリーである(Cu箔又はグラフェン/CNTマットなどのアノード集電体のみ)。アノードとカソードの前後に返送されることが必要とされるリチウムは、最初にカソード活物質(例えば、酸化バナジウム、Vの代わりの酸化リチウムバナジウムLi;又は硫黄の代わりのリチウム多硫化物)中に貯蔵される。(例えば、電気化学的形成プロセスの一部としての)リチウムバッテリーの最初の充電手順の間、リチウムはカソード活物質から出て、アノード側面へと移動し、そしてアノード集電体上で堆積する。本発明の高弾性ポリマー層の存在は、アノード集電体表面上でのリチウムイオンの均一な堆積を可能にする。そのような別のバッテリー構造によって、バッテリー製造の間にリチウム箔又はコーティングの層が存在する必要が回避される。裸のリチウム金属は、空気中湿分及び酸素に対して非常に感応性であり、したがって、実際のバッテリー製造環境においては取り扱いがより困難である。リチウムを、Li及びLiなどのリチウム化(リチウム含有)カソード活物質中にあらかじめ貯蔵するというこの戦略によって、全ての材料の実際の製造環境における取扱いが安全となる。Li及びLiなどのカソード活物質は、典型的に空気感応性ではない。
【0057】
本発明のリチウム二次バッテリーは、多種多様なカソード活物質を含有することができる。カソード活物質層は、無機材料、有機材料、ポリマー材料又はその組合せから選択されるカソード活物質を含有してよい。無機材料は、金属酸化物、金属リン酸塩、金属ケイ化物、金属セレン化物、遷移金属硫化物又はその組合せから選択されてよい。
【0058】
無機材料は、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムマンガン、酸化リチウムバナジウム、リチウム-混合金属酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウム-混合金属リン酸塩、リチウム金属ケイ化物又はその組合せから選択されてよい。
【0059】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF、BiF、NiF、FeF、CuF、CuF、SnF、AgF、CuCl、FeCl、MnCl及びその組合せからなる群を含む金属フッ化物又は金属塩化物から選択される。特定の好ましい実施形態において、無機材料は、M及びMaがFe、Mn、Co、Ni、V若しくはVOから選択され、MbがFe、Mn、Co、Ni、V、Ti、Al、B、Sn若しくはBiであり;且つx+y≦1である、LiMSiO又はLiMaMbSiOとして示されるリチウム遷移金属ケイ酸塩から選択される。
【0060】
特定の好ましい実施形態において、無機材料は、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化物又はその組合せから選択される。無機材料は、TiS、TaS、MoS、NbSe、MnO、CoO、酸化鉄、酸化バナジウム又はその組合せから選択される。
【0061】
カソード活物質層は、VO、LiVO、V、Li、V、Li、Li、V、Li、V13、Li13(式中、0.1<x<5)、それらのドープされた変種、それらの誘導体及びその組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含有する金属酸化物を含有してもよい。
【0062】
カソード活物質層は、層状化合物LiMO、スピネル化合物LiM、カンラン石(olivine)化合物LiMPO、ケイ酸塩化合物LiMSiO、タボライト(Tavorite)化合物LiMPOF、ホウ酸塩化合物LiMBO又はその組合せ(式中、Mは遷移金属又は複数の遷移金属の混合物である)から選択される金属酸化物又は金属リン酸塩を含有してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、無機材料は、(a)セレン化ビスマス又はテルル化ビスマス、(b)遷移金属ジカルコゲン化物又はトリカルコゲン化物、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル又は遷移金属の硫化物、セレン化物又はテルル化物;(d)窒化ホウ素、或いは(e)その組合せから選択される。
【0064】
カソード活物質層は、ポリ(硫化アントラキノニル)(PAQS)、リチウムオキソ炭素、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ポリ(硫化アントラキノニル)、ピレン-4,5,9,10-テトラオン(PYT)、ポリマー結合PYT、キノ(トリアゼン)、酸化還元活性有機材料、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン(TCNE)、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン(HMTP)、ポリ(5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン)(PADAQ)、二硫化ホスファゼンポリマー([(NPS]n)、リチウム化1,4,5,8-ナフタレンテトラオールホルムアルデヒドポリマー、ヘキサアザトリナフチレン(HATN)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN))、5-ベンジリデンヒダントイン、イサチンリチウム塩、ピロメリット酸ジイミドリチウム塩、テトラヒドロキシ-p-ベンゾキノン誘導体(THQLi)、N,N’-ジフェニル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PHP)、N,N’-ジアリル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(AP)、N,N’-ジプロピル-2,3,5,6-テトラケトピペラジン(PRP)、チオエーテルポリマー、キノン化合物、1,4-ベンゾキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン(PT)、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADDAQ)、5-アミノ-1,4-ジヒドロキシアントラキノン(ADAQ)、カリックスキノン、Li、Li、Li又はその組合せから選択される有機材料又はポリマー材料を含有してもよい。
【0065】
チオエーテルポリマーは、ポリ[メタンテトリル-テトラ(チオメチレン)](PMTTM)、ポリ(2,4-ジチオペンタニレン)(PDTP)、主鎖チオエーテルポリマーとしてポリ(エテン-1,1,2,2-テトラチオール)(PETT)を含有するポリマー、共役芳香族部分からなる主鎖を有し、且つペンダントとしてチオエーテル側鎖を有する側鎖チオエーテルポリマー、ポリ(2-フェニル-1,3-ジチオラン)(PPDT)、ポリ(1,4-ジ(1,3-ジチオラン-2-イル)ベンゼン)(PDDTB)、ポリ(テトラヒドロベンゾジチオフェン)(PTHBDT)、ポリ[1,2,4,5-テトラキス(プロピルチオ)ベンゼン](PTKPTB)又はポリ[3,4(エチレンジチオ)チオフェン](PEDTT)から選択される。
【0066】
他の実施形態において、カソード活物質層は、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、鉄フタロシアニン、鉛フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、フルオロクロムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン、アルミニウムフタロシアニンクロリド、カドミウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銀フタロシアニン、無金属フタロシアニン、その化学誘導体又はその組合せなどのフタロシアニン化合物から選択される有機材料を含有する。
【0067】
リチウム二次バッテリーは、カソードが、硫黄、硫黄含有分子、硫黄含有化合物、金属硫化物、硫黄-炭素ポリマー、リチウム多硫化物、硫黄/炭素ハイブリッド又は複合材料、硫黄/黒鉛ハイブリッド又は複合材料、硫黄/グラフェンハイブリッド又は複合材料、硫黄-ポリマー化合物、或いはその組合せを含んでなるリチウム-硫黄バッテリーであってよい。
【0068】
再充電可能なリチウム-硫黄セルにおいて、金属硫化物は、M(式中、xは1~3の整数であり、且つyは1~10の整数であり、且つMは、アルカリ金属、Mg又はCaから選択されるアルカリ金属、遷移金属、周期表の第13族~第17族からの金属、或いはその組合せから選択される金属元素である)によって示される材料を含有し得る。金属元素Mは、好ましくは、Li、Na、K、Mg、Zn、Cu、Ti、Ni、Co、Fe又はAlから選択される。いくつかの好ましい実施形態において、カソード層中の金属硫化物は、Li、Li、Li、Li、Li、Li、Li、Li、Li、Li10、又はその組合せを含有する。
【0069】
好ましく且つ典型的に、高弾性ポリマーは、10-5S/cm以上、より好ましくは10-4S/cm以上、さらに好ましくは10-3S/cm以上、最も好ましくは10-2S/cm以上のリチウムイオン導電率を有する。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、添加剤又は充填剤がその中に分散されていないニートポリマーである。他の実施形態では、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤0.1重量%~50重量%(好ましくは1重量%~35重量%)を含有するポリマー母材複合物である。高弾性ポリマーは、高弾性(弾性変形歪み値>2%)を有さなければならない。弾性変形は、完全に回復可能である変形であり、回復プロセスは、本質的に瞬間的である(著しい時間遅れはない)。高弾性ポリマーは、5%~最高1、000%(その最初の長さの10倍)、より典型的に10%~800%、そしてさらにより典型的に50%~500%、そして最も典型的且つ望ましくは70%~300%の弾性変形を示すことができる。金属は典型的に高い延性を有するが(すなわち破断せずにかなりの程度伸長され得る)、変形の大部分は塑性変形であり(回復可能でない)且つごく少量の弾性変形である(典型的に<1%及びより典型的に<0.2%)ことを指摘しておいてもよいだろう。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリマー鎖の架橋ネットワーク中に、エーテル結合、ニトリル誘導結合、ベンゾペルオキシド誘導結合、エチレンオキシド結合、プロピレンオキシド結合、ビニルアルコール結合、シアノ-樹脂結合、トリアクリレートモノマー誘導結合、テトラアクリレートモノマー誘導結合又はその組合せを有する軽度に架橋したネットワークポリマー鎖を含有する。これらのネットワーク又は架橋ポリマーは、高弾性(高い弾性変形歪み)及び高いリチウムイオン導電率のユニークな組合せを示す。
【0071】
特定の好ましい実施形態において、高弾性ポリマーは、ニトリル-含有ポリビニルアルコール鎖、シアノ樹脂鎖、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)鎖、ペンタエリトリトールトリアクリレート鎖、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)鎖、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)鎖又はその組合せから選択される軽度に架橋したネットワークポリマー鎖を含有する。
【0072】
典型的に、高弾性ポリマーは、元来、硬化して高弾性である架橋ポリマーを形成することが可能なモノマー又はオリゴマー状態にある。硬化前、これらのポリマー又はオリゴマーは、有機溶媒に可溶性でありポリマー溶液を形成する。イオン導電性又は電子導電性添加剤をこの溶液に添加して、懸濁液を形成してもよい。次いで、この溶液又は懸濁液からアノード集電体の表面上にポリマー前駆体の薄層を形成することができる。次いで、ポリマー前駆体(モノマー又はオリゴマー及び開始剤)を重合及び硬化し、軽度に架橋したポリマーが形成される。ポリマーのこのような薄層を固体基材(例えば、ポリマー又はガラスの表面)上に暫定的に堆積させ、乾燥させ、そして基材と分離させて独立したポリマー層とさせてもよい。次いで、この独立層をリチウム箔/コーティング上に配置するか、又はリチウム膜/コーティング及び電解質又は分離体の間に導入する。ポリマー層形成は、当該技術で周知のいくつかの手順の1つ;例えば、噴霧、噴霧塗装、印刷、コーティング、押出成形ベースのフィルム形成、キャスティングなどを使用することによって達成することができる。
【0073】
例えば、エトキシル化トリメチロプロパントリアクリレートモノマー(ETPTA、Mw=428、化学式は下記に示される)は、開始剤と一緒に、炭酸エチレン(EC)又は炭酸ジエチル(DEC)などの有機溶媒中に溶解されることが可能である。次いで、ETPTAモノマー/溶媒/開始剤溶液をキャストして、ガラス表面上にETPTAモノマー/開始剤層を形成してもよい。次いで、この層を熱硬化し、高弾性ポリマーの薄層を得ることができる。このモノマーの重合及び架橋反応は、開始剤分子の熱分解によってベンゾイルペルオキシド(BPO)又はAIBNから誘導されるラジカル開始剤によって開始されることができる。ETPTAモノマーは次の化学式を有する。
【0074】
別の例として、アノードリチウム箔/コーティング保護のための高弾性ポリマーは、スクシノニトリル(SN)中でのシアノエチルポリビニルアルコール(PVA-CN、式2)のカチオン重合及び架橋に基づいてもよい。
【0075】
この手順は、混合物溶液を形成するために、PVA-CNをスクシノニトリル(NCCHCHCN)中に溶解することによって開始されてよい。続いて、混合物溶液中に開始剤を添加する。例えば、重量比(20:1~2:1の好ましい範囲から選択される)においてLiPFをPVA-CN/SN混合物溶液中に添加して、前駆体溶液を形成することができる。次いで、溶液を堆積し、反応塊、PVA-CN/LiPFの薄層を形成してもよい。これは、その後、温度(例えば、75~100℃)において2~8時間加熱して、高弾性ポリマーが得られる。このプロセスの間、PVA-CN上のシアノ基のカチオン重合及び架橋は、そのような高温でのLiPFの熱分解から誘導されるPFによって開始され得る。
【0076】
ポリマー鎖の軽度に架橋したネットワークを形成することは、これらの材料に不可欠である。換言すれば、ネットワークポリマー又は架橋ポリマーは、高弾性変形を与えるために比較的低い架橋度又は低い架橋密度を有するべきである。
【0077】
ポリマー鎖の架橋ネットワークの架橋密度は、架橋の間の分子量(Mc)の逆と定義されてもよい。架橋密度は、式Mc=ρRT/Ge(式中、Geは、動的機械分析において温度スイープによって決定される平衡弾性率であり、ρは、物理的密度であり、Rは、J/モル*Kの普通気体定数であり、そしてTは、Kの絶対温度である)によって決定することができる。Ge及びρが実験的に決定されると、Mc及び架橋密度を算出することができる。
【0078】
Mcの大きさは、架橋鎖又は連鎖結合中の特徴的な反復単位の分子量でMc値を割って、2つの架橋点の間の反復単位の数である数Ncを得ることによって標準化されてよい。弾性変形歪みがMc及びNcと非常に関連することが見出された。架橋ポリマーの弾性は、架橋間の多数の反復単位(大きいNc)から誘導される。反復単位は、ポリマーが応力を受けない場合、より緩い立体配座(例えば、ランダムコイル)を想定することができる。しかしながら、ポリマーが機械的に応力を受ける場合、連結鎖はほどけるか、又は伸張して、大きい変形をもたらす。架橋点の間の長鎖連結(より大きいNc)によって、より大きい弾性変形が可能となる。負荷の解放時に、連結鎖は、より緩いか、又はコイル状態に戻る。ポリマーの機械的負荷時に、架橋は、さもなければ塑性変形(非回復可能)を形成する連鎖のすべり(slippage)を防ぐ。
【0079】
好ましくは、高弾性ポリマーにおけるNc値は、5より高く、より好ましくは、10より高く、さらにより好ましくは、100より高く、なおより好ましくは、200より高い。これらのNc値は、異なる官能性を有する異なる架橋剤を使用することによって、そして異なる期間、異なる温度で進行するように重合及び架橋反応を設計することによって、異なる弾性変形値を達成するために容易に制御され、且つ変更可能である。
【0080】
代わりに、架橋度を決定するために、ムーニー-リブリン(Mooney-Rilvin)法を使用してもよい。膨潤実験によって架橋を測定することもできる。膨潤実験では、架橋した試料を特定の温度で相当する線形ポリマーに対して良好な溶媒中に配置し、質量の変化又は体積の変化が測定される。架橋度が高いほど、少ない膨潤が達成可能である。膨潤度、フローリー相互作用パラメーター(Flory Interaction Parameter)(試料との溶媒相互作用と関連する、フローリー・ハギンズ(Flory Huggins)方程式)及び溶媒の密度に基づき、フローリーのネットワーク説(Flory’s Network Theory)に従って、理論的な架橋度を計算することができる。フローリー-レーナー方程式(Flory-Rehner Equation)は架橋の決定において有用となることが可能である。
【0081】
高弾性ポリマーは、2つの架橋鎖が互いに巻きつく同時相互貫入ネットワーク(SIN)ポリマー、又は架橋ポリマー及び線形ポリマーを含有する半相互貫入ネットワークポリマー(半IPN)を含有してもよい。半IPNの例は、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)及びエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(EGMEA)オリゴマーから構成されるUV硬化可能/重合可能三価/一価アクリレート混合物である。三価ビニル基を有するETPTAは、架橋鎖のネットワークを形成することが可能な光(UV)架橋性モノマーである。一価ビニル基を有するEGMEAもUV重合可能であり、オリゴマーエチレンオキシド単位の存在のため、高い可撓性を有する線形ポリマーが誘導される。ETPTAの架橋度が中程度であるか、又は低い場合、結果として生じるETPTA/EGMEA半IPNポリマーは、良好な機械的可撓性又は弾性及び適切な機械的強度をもたらす。このポリマーのリチウムイオン導電率は、10-4~5×10-3S/cmの範囲である。
【0082】
上記高弾性ポリマーは、アノードにおいてリチウム箔/コーティング層を保護するために単独で使用されてもよい。代わりに、高弾性ポリマーは、広範囲の一連のエラストマー、導電性ポリマー、リチウムイオン導電性材料及び/又は強化材(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維又はグラフェンシート)と混合することができる。
【0083】
広範囲のエラストマーを高弾性ポリマーと混合して、カソード活物質粒子を封入するブレンド、コポリマー又は相互侵入ネットワークを形成することができる。エラストマー材料は、天然ポリイソプレン(例えばシス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えばネオプレン、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、タンパク質エラスチン、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンコポリマー、ポリウレタン、ウレタン-尿素コポリマー、及びそれらの組合せから選択されてもよい。
【0084】
ウレタン-尿素コポリマー膜は、通常、2種の領域、軟質領域及び硬質領域からなる。 ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)単位からなる絡み合い線形主鎖は軟質領域を構成し、他方、反復メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)及びエチレンジアミン(EDA)単位は硬質領域を構成する。リチウムイオン導電性添加剤は、軟質領域又は他のより非晶質の区域に組み込まれることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、高弾性ポリマー母材材料中に分散されたリチウムイオン導電性添加剤を含有するポリマー母材複合物を形成し、リチウムイオン導電性添加剤は、LiCO、LiO、Li、LiOH、LiX、ROCOLi、HCOLi、ROLi、(ROCOLi)、(CHOCOLi)、LiS、LiSO又はそれらの組合せ(式中、X=F、Cl、I又はBr、R=炭化水素基、x=0~1、y=1~4である)から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーを、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、ヘキサフルオロヒ化リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CFSO)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、硝酸リチウム(LiNO)、Li-フルオロアルキル-リン酸塩(LiPF(CFCF)、リチウムビスペルフルオロ-エチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、イオン性液体ベースのリチウム塩、又はそれらの組合せから選択されるリチウム塩を含有するリチウムイオン導電性添加剤と混合することができる。
【0087】
高弾性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、二環式ポリマー、その誘導体(例えば、スルホン化変種)又はその組合せから選択される電子導電性ポリマーとの混合物、ブレンド又は半相互侵入ネットワークを形成し得る。いくつかの実施形態において、高弾性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVdF)、ポリビス-メトキシエトキシエトキシド-ホスファゼンエクス(phosphazenex)、ポリビニルクロリド、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ビニリデンフルオリド)-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、それらの誘導体(例えばスルホン化変種)、又はそれらの組合せから選択されるリチウムイオン導電性ポリマーとの混合物、コポリマー又は半相互侵入ネットワークを形成し得る。
【0088】
高弾性ポリマーと混合され得る不飽和ゴムには、天然ポリイソプレン(例えばシス-1,4-ポリイソプレン天然ゴム(NR)及びトランス-1,4-ポリイソプレンガタパーチャ)、合成ポリイソプレン(イソプレンゴムのためのIR)、ポリブタジエン(ブタジエンゴムのためのBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン(例えばネオプレン、Bayprenなど)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR)など、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー、IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー、NBR)が含まれる。
【0089】
いくつかのエラストマーは、硫黄加硫による硬化が不可能である飽和ゴムであり、それらは、種々の手段によって、例えば、その他の線形鎖を一緒に保持するコポリマー領域を有することによって、ゴム状又はエラストマー材料へと製造される。これらのエラストマーのそれぞれを使用して、いくつかの手段、例えば、乾燥及び硬化がその後実行される、噴霧コーティング、希釈溶液混合(有機溶媒を用いて、又は用いずに、カソード活物質粒子を未硬化ポリマー、モノマー又はオリゴマーに溶解すること)の1つによってカソード活物質の粒子を結合させることができる。
【0090】
このカテゴリーの飽和ゴム及び関連エラストマーには、EPM(エチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレンとのコポリマー)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン、プロピレン及びジエン成分のターポリマー)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM;例えばViton、Tecnoflon、Fluorel、Aflas及びDai-El)、ペルフルオロエラストマー(FFKM:Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM;例えばハイパロン)、及びエチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性エラストマー(TPE)、タンパク質レジリン、及びタンパク質エラスチンが含まれる。ポリウレタン及びそのコポリマー(例えば尿素-ウレタンコポリマー)は、アノード活物質粒子を封入するための特に有用なエラストマーシェル材料である。
【実施例
【0091】
実施例1:高弾性ポリマーによって保護されたリチウムアノード及びV粒子を含有するカソードを含有するリチウムバッテリー
カソード活物質層は、それぞれ、V粒子及びグラフェン包含V粒子から調製した。V粒子は商業的に入手可能であった。グラフェン包含V粒子は企業内で調製した。典型的な実験において、LiCl水溶液中でのVの混合によって五酸化バナジウムゲルが得られた。LiCl溶液による相互作用によって得られたLi交換ゲル(Li:Vモル比は1:1に保持された)をGO懸濁液と混合し、次いでTeflonラインステンレス鋼35mlオートクレーブ中に配置し、密封し、そして12時間、180℃まで加熱した。そのような水熱処理後、緑色の固体を回収し、これを徹底的に洗浄し、2分間超音波処理し、そして70℃で12時間乾燥後、別の水中0.1%GOと混合し、超音波処理してナノベルトサイズまで分解し、次いで、200℃において噴霧乾燥させ、グラフェン包含V複合物粒状物を得た。次いで、V粒子及びグラフェン包含V粒子の選択された量でそれぞれカソード層を製造し、続いて、周知のスラリーコーティングプロセスを行った。
【0092】
エトキシル化トリメチロプロパントリアクリレートモノマー(ETPTA、Mw=428、Sigma-Aldrich)を、3/97(w/w)のETPTA/溶媒の重量ベース組成比で、炭酸エチレン(EC)/炭酸ジエチル(DEC)の溶媒混合物中に溶解した。その後、リチウム箔表面上での堆積時の熱架橋反応を可能にするラジカル開始剤として、ベンゾイルペルオキシド(BPO、ETPTA含有量に対して1.0重量%)を添加した。次いで、ETPTAモノマー/開始剤のこの層を60℃において30分間熱硬化し、保護層を得た。
【0093】
個々の基準で、いくらかの量のETPTAモノマー/溶媒/開始剤溶液をガラス表面上にキャストして湿潤膜を形成し、これを熱乾燥させ、次いで、60℃で30分間硬化し、架橋ポリマーの膜を形成した。この実験において、BPO/ETPTA重量比は、いくつかの異なるポリマー膜で架橋度を変更させるために、0.1%~4%で様々であった。硬化ポリマー試料のいくつかに動的機械試験を行い、架橋度を特徴づけるための手段として、2つの架橋点の間の数平均分子量(Mc)及び相当する反復単位数(Nc)の決定のための平衡動的弾性率Geを得た。典型的且つ好ましい反復単位数(Nc)は5~5,000、より好ましくは、10~1,000、さらに好ましくは、20~500、そして最も好ましくは50~500である。
【0094】
いくつかの引張試験の試験片をそれぞれの架橋膜から切り取り、そして万能試験機で試験した。4つのBPO開始架橋ETPTAポリマーの代表的な引張応力-歪み曲線を図3(A)に示す。これは、この一連のネットワークポリマーが約230%~700%の弾性変形を有することを示す。上記の値は、いずれの添加剤も含まないニートのポリマーに関する。30重量%までのリチウム塩の添加によって、この弾性は、典型的に、10%~100%の可逆性引張歪みまで減少する。
【0095】
電気化学試験のために、作用電極(カソード層)は、85重量%のV又は88%のグラフェン包含V粒子、5~8重量%のCNT及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解された7重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合剤を混合して全固形分5重量%のスラリーを形成することによって作製された。スラリーをAl箔上にコートした後、電極を2時間の間真空中で120℃で乾燥させて、加圧前に溶媒を除去した。次いで、電極をディスク(φ=12mm)に切断し、真空中で24時間の間100℃で乾燥させた。
【0096】
対向/参照電極としてリチウム金属、セパレーターとしてCelgard2400膜、及びエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1MのLiPF電解質溶液を有するCR2032(3V)コイン型セルを使用して電気化学測定を実施した。セルの組立をアルゴン充填グローブボックス内で行なった。CV測定は、1mV/sの走査速度でCH-6電気化学ワークステーションを使用して実施された。高弾性ポリマー結合剤を特徴とするセル及びPVDF結合剤を含有するセルの電気化学的性能は、Arbin電気化学ワークステーションを使用して、50mA/gの電流密度で定電流充電/放電サイクル経過によって評価された。
【0097】
図3(B)に、4つのリチウムセルの比インターカレーション容量曲線を要約する。2つのセルは、それぞれ、V粒子を含有するカソードを有し(一方のセルは、架橋ETPTAポリマーをベースとするリチウム金属アノード保護層を有し、他方は有さない)、且つ2つのセルは、それぞれ、グラフェン包含V粒子を含有するカソードを有する(一方のセルは、架橋ETPTAポリマーをベースとするリチウムアノード保護層を有し、他方は有さない)。サイクル数が増加すると、未保護のセルの比容量は最速レートで低下する。それとは対照的に、本発明の架橋ETPTAポリマー保護層は、多数のサイクルに対して有意により安定であり、且つ高い比容量をバッテリーセルにもたらす。これらのデータは、本発明の架橋ETPTAポリマー保護アプローチの驚くべき、且つ優れた性能を明らかに示した。
【0098】
高弾性架橋ETPTAポリマー保護層は、バッテリー放電の間にリチウム箔の厚さが減少する時の破損が生じることなく、高い範囲まで可逆的に変形することが可能であると思われる。保護ポリマー層はまた、アノードにおいて液体電解質とリチウム金属との間の継続的な反応を防ぎ、リチウム及び電解質の継続的な損失の問題を減少させる。これによって、バッテリー再充電の間にカソードから戻る時のリチウムイオンの有意により均一の堆積も可能となり、したがって、リチウム樹枝状結晶は生じない。これらは、SEMを使用して、数回の充電-放電サイクル後のバッテリーセルから回収された電極の表面を調べることによって観察された。
【0099】
実施例2:リチウム-LiCoOセル(初期はリチウムを含まないセル)のアノードにおける高弾性ポリマーの導入
アノード保護のための高弾性ポリマーは、スクシノニトリル(SN)中でのシアノエチルポリビニルアルコール(PVA-CN)のカチオン重合及び架橋に基づくものであった。この手順は、混合物溶液を形成するために、PVA-CNをスクシノニトリル中に溶解することによって開始された。このステップに続いて、溶液中に開始剤を添加した。高弾性ポリマーにいくつかのリチウム種を組み込む目的で、LiPFを開始剤として使用することを選択した。LiPF及びPVA-CN/SN混合物溶液の間の比率は、一連の前駆体溶液を形成するために重量で1/20~1/2まで種々であった。その後、これらの溶液を別個に噴霧堆積させ、リチウム箔表面上に前駆体反応塊の薄層を形成した。次いで、前駆体反応塊を75~100℃の温度において2~8時間加熱して、リチウム箔表面に接着した高弾性ポリマーの層を得た。
【0100】
加えて、反応塊、PVA-CN/LiPFをガラス表面上にキャストして、いくつかの膜を形成し、これを重合及び架橋して、異なる架橋度を有する架橋ポリマーを得た。これらの膜上で引張試験も実行され、そしていくつかの試験結果は図4(a)に要約される。この一連の架橋ポリマーは、約80%(より高い架橋度)~400%(より低い架橋度)まで柔軟に伸張可能である。
【0101】
図4(B)は、アノード保護ポリマー層を有するセルが有意により安定なサイクリング挙動を提供することを示す。高弾性ポリマーは、なおリチウムイオンの容易な拡散を可能にしながらも、リチウムコーティングから電解質を単離するようにも作用する。
【0102】
実施例3:金属フッ化物ナノ粒子をベースとするカソード及びPETEAをベースとする高弾性ポリマーによって保護されたリチウムアノードを含有するLi金属セル
アノードリチウム金属保護層として機能するために、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)、式3をモノマーとして使用した。
【0103】
代表的な手順において、前駆体溶液は、1,2-ジオキソラン(DOL)/ジメトキシメタン(DME)(体積比で1:1)の溶媒混合物中に溶解された1.5重量%のPETEA(C1720)モノマー及び0.1重量%のアゾジイソブチロニトリル(AIBN、C12)開始剤から構成された。PETEA/AIBN前駆体溶液を、あらかじめCu箔表面上に堆積させたリチウム金属層上にキャストし、前駆体膜を形成し、これを70℃で30分間重合及び硬化し、軽度に架橋したポリマーを得た。
【0104】
加えて、反応塊、PETEA/AIBN(導電性添加剤なし)をガラス表面上にキャストして、いくつかの膜を形成し、これを重合及び硬化して、異なる架橋度を有する架橋ポリマーを得た。これらの膜上で引張試験も実行され、そしていくつかの試験結果は図5(A)に要約される。この一連の架橋ポリマーは、約25%(より高い架橋度)~80%(より低い架橋度)まで柔軟に伸張可能である。
【0105】
CoF、MnF、FeF、VF、VOF、TiF及びBiFの商業的に入手可能な粉末に高強度ボールミル粉砕を受けさせ、粒径を約0.5~2.3μmまで低下させた。次いで、これらの金属フッ化物粒子のそれぞれの種類を、グラフェンシート(導電性添加剤として)と一緒にNMP及びPVDF結合剤懸濁液中に添加し、複数成分スラリーを形成した。次いで、スラリーをAl箔上にスラリーコーティングし、カソード層を形成した。
【0106】
図5(b)に、同一カソード活物質(FeF)を有するが、一方のセルは高弾性ポリマー保護アノードを有し、そして他方は保護層を有さない2つのコインセルの放電容量曲線を示す。これらの結果は、高弾性ポリマー保護戦略が、リチウム金属バッテリーの容量減衰に対して優れた保護を提供することを明らかに示した。
【0107】
高弾性ポリマーは、充電及び放電の間にアノード層が膨張及び収縮する時の破損が生じることなく、可逆的に変形することが可能であると思われる。ポリマーは、液体電解質及びリチウム金属の間の継続的な反応も防ぐ。樹枝状結晶様特徴が見出されず、アノードが高弾性ポリマーによって保護されていた。これらは、SEMを使用して、数回の充電-放電サイクル後のバッテリーセルから回収された電極の表面を調べることによって確認された。
【0108】
実施例4:金属ナフタロシアニン/還元グラフェンオキシド(FePc/RGO)のハイブリッド粒状物カソード及び高弾性ポリマー保護Li箔アノードを含有するLi-有機セル
ミル粉砕チャンバー中で30分間、FePc及びRGOの混合物をボールミル粉砕することによって、組み合わせたFePcの粒子/グラフェンシートが得られた。得られたFePc/RGO混合物粒子は、ポテト様形状であった。パンコーティング手順を使用して、これらの混合物粒子のいくつかをUHMW PANポリマーによって封入した。それぞれ、Li箔アノード、多孔性分離体及びFePc/RGO粒子(封入又は未封入)のカソード層を含有する2つのリチウムセルを調製した。
【0109】
ETPTA半IPNポリマーの調製のために、ETPTA(Mw=428g/モル、三価アクリレートモノマー)、EGMEA(Mw=482g/モル、一価アクリレートオリゴマー)及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(HMPP、光開始剤)を溶媒(炭酸プロピレン、PC)中に溶解し、溶液を形成した。HMPP及びETPTA/EGMEA混合物の間の重量比は、0.2%~2%で様々であった。溶液中のETPTA/EGMEA比は、異なるアノード保護層の厚さを生じるために1%~5%で様々であった。アクリレート混合物中のETPTA/EGMEA比は、10/0~1/9で様々であった。
【0110】
これらの2つのリチウムセルのサイクリング挙動を図6に示す。ここでは、アノード中に高弾性ポリマー保護層を有するリチウム-有機セルが有意により安定したサイクリング応答を示すことが示される。この保護ポリマーは、ポリマー層自体がリチウム金属とイオン的に接触し続け、且つリチウムイオンに対して透過性でありながら、リチウム金属及び電解質の間の継続的な接触を減少させるか、又は排除する。このアプローチは、全てのリチウム-有機バッテリーのサイクル寿命を有意に増加させた。
【0111】
実施例5:アノード保護層及び硫黄含浸活性炭粒子を含有するカソードを含有するLi-Sセル
硫黄を導電性材料(例えば、炭素/黒鉛粒子)と組み合わせる1つの方法は、溶液又は溶融混合プロセスを使用することである。高度に多孔性の活性炭粒子、化学エッチングされたメソカーボンミクロビーズ(活性化MCMB)、及び剥離黒鉛ワームを10~60分間、117~120℃(Sの融点、115.2℃よりわずかに高い温度)において硫黄溶融体と混合し、硫黄含浸炭素粒子を得た。
【0112】
図7に、S含浸活性化MCMBをベースとするカソード活物質を有する2つのLi-Sバッテリーのカソード比容量値を示す。一方のセルは、架橋ETPTA保護アノードを有し、且つ他方はアノード保護層を有さない。アノードにおいて導入された、軽度に架橋されたETPTAポリマー層が、Li-Sバッテリーのサイクル安定性に対して高度に有益であることは明らかである。
【0113】
実施例6:アノード保護層及び硫黄コーティンググラフェンシートを含有するカソードを含有するLi-Sセル
カソード調製手順には、元素硫黄の蒸気を生じさせ、単層又は数層のグラフェンシートの表面上でのS蒸気の堆積を可能にさせることが含まれる。第1のステップとして、液体培地中に懸濁されたグラフェンシート(例えば、水中のグラフェンオキシド又はNMP中のグラフェン)を基板(例えばガラス表面)上に噴霧し、グラフェンシートの薄層を形成した。次いで、このようなグラフェンの薄層を昇華によって生じる物理的蒸着に曝露した。固体硫黄の昇華は40℃より高い温度で生じるが、有意であり、且つ実際に有用な昇華レートは温度が100℃超になるまで典型的に生じない。我々は、グラフェン表面上に硫黄の薄膜(約1nm~10nmの厚さの硫黄)を堆積させるために、典型的に10~120分の蒸着時間で117~160℃を使用した。次いで、硫黄の薄膜がその上に堆積されたグラフェンのこの薄層は、エアジェットミルを使用して、容易にSコーティングのグラフェンシートの破片へ粉砕された。これらのSコーティンググラフェンシートから(例えば、噴霧乾燥によって)直径約5~15μmの二次粒子を作成し、次いで、これをUHMW PANポリマーによって封入した。従来のスラリーコーティング手順を使用して、これらの封入粒状物からカソード電極を作成した。
【0114】
S/グラフェンハイブリッドベースのカソード活物質及び高弾性PETEA保護層を有するか、又は有さないリチウム箔アノードを有する2つのLi-Sバッテリーのカソード比容量値を図8に要約する。これらのデータは、高弾性ポリマー層保護アプローチの効率をさらに実証する。
【0115】
実施例7:高弾性ポリマー中のリチウムイオン導電性添加剤の効果
種々のリチウムイオン導電性添加剤をいくつかの異なるポリマーマトリックス材料に添加し、アノード保護層を調製した。得られるポリマー/塩複合材料のリチウムイオン導電率値を表1に要約する。我々は、室温におけるそれらのリチウムイオン導電率が10-6S/cm以上である場合、これらのポリマー複合材料が適切なアノード保護層材料であることを発見した。これらの材料によって、リチウムイオンは、1μm以下の厚さを有する保護層を通して容易に拡散することが可能であるように思われる。より厚いポリマー膜(例えば10μm)に関しては、10-4S/cm以上のこれらの高弾性ポリマーの室温におけるリチウムイオン導電率が必要とされるであろう。
【0116】
実施例8:種々の再充電可能なリチウムバッテリーセルのサイクル安定性
リチウムイオンバッテリー産業において、バッテリーのサイクル寿命を、バッテリーが、必要とされる電気化学的形成後に測定される初期容量に基づき、20%の容量減衰を生じる充電-放電サイクルの数として定義することが慣例である。以下の表2に、アノード保護ポリマー層を有するか、又は有さないアノードを特徴とする広範囲のバッテリーのサイクル寿命データを要約する。
【0117】
結論として、高弾性ポリマーをベースとするアノード保護層の戦略は、驚くべきことに、容量減衰、並びに潜在的な内部ショート及びリチウム二次バッテリーの爆発を導くリチウム金属樹枝状結晶形成及びリチウム金属-電解質反応の問題を軽減することにおいて効果がある。高弾性ポリマーは、アノード層と合同に、又は一致して膨張又は収縮することができる。この能力によって、集電体(又はリチウム膜自体)及び保護層の間の良好な接触が維持されることが補助され、妨害されずにリチウムイオンの均一な再堆積が可能となる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8