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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/04 20060101AFI20231109BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20231109BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20231109BHJP
   B63B 21/10 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B63B21/04 Z
B63B25/08 Z
B63B21/00 Z
B63B21/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020006107
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112962
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】涌田 達広
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特表平9-502941(JP,A)
【文献】実開昭60-128892(JP,U)
【文献】特公昭47-26637(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0080343(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105083471(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0108571(US,A1)
【文献】特開2005-145194(JP,A)
【文献】実開平4-101793(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/00
B63B 3/48
B63B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に設けられた甲板と、
前記甲板から上方へ立ち上がり前記甲板を連続して取り囲み、荷油の海洋への流出を抑制する連壁部と、
前記甲板の外縁に設けられ、係留を行うときにロープを通す係留金物と、
を備え、
前記連壁部は、前記係留金物を迂回して前記係留金物より前記甲板の内側に設けられる部位を有し、
前記係留金物は台座を有し、前記台座は前記甲板の外板より第1の距離だけ内側に設けられ、
前記台座の内側と前記連壁部とは第2の距離離間し、
前記第1の距離は、前記第2の距離よりも短い、船舶。
【請求項2】
前記甲板の下方に荷油を貯留する荷油タンクをさらに備え、
前記連壁部は、前記荷油タンクより前記甲板の外側に設けられる、請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、以下の特許文献1に記載のように、甲板上に設けられロープの巻取り及び巻戻しを行う係船機と、甲板上に設けられロープを案内するチョックとを備えた船舶が知られている。この船舶におけるチョックは、係船機の外側(外舷方向)における船側外板に合わせた位置に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-145194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、船舶には、甲板に接し船側外板から上方に延在する連壁部が設けられている場合がある。連壁部は、例えば、シャーストレーキ(sheer strake)である。この連壁部は、荷油タンクに貯留している荷油等の積載物の船側外板又は海洋への流出を抑制している。上述のチョックは、船舶の係留のために甲板の外縁近傍に設けられることが求められているが、甲板の外縁には連壁部が設けられている。このため、連壁部を甲板上に設けるために、連壁部を上下方向に回避する台座をチョックの下方に設け、台座によりチョックを外側に張り出させる必要がある。しかしながら、係留金物(台座及びチョック)を連壁部の内側に設けた場合、連壁部を上下方向に回避する台座の高さが高くなるほど台座の設計荷重が増大する。これにより、係留金物の周辺の補強強度を高める必要があるため、当該係留金物を支持する補強部材の重量が増大し、補強部材の設計工数又は設置工数が増大するおそれがある。
【0005】
本発明は、係留金物の重量、及び係留金物を支持する補強部材の重量を低減させ、当該補強部材に係る工数を低減することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る船舶は、船体に設けられた甲板と、甲板から上方へ立ち上がり甲板を連続して取り囲む連壁部と、甲板の外縁に設けられ、係留を行うときにロープを通す係留金物と、を備え、連壁部は、係留金物を迂回して係留金物より甲板の内側に設けられる部位を有する。
【0007】
この船舶では、甲板の外縁には係留金物が設けられ、連壁部は係留金物を迂回するように係留金物より船体の中心側に設けられる。これにより、連壁部は、甲板上を連続した部材で取り囲むことができるため、船舶の積載物の流出を抑制することができる。係留金物は、連壁部より外側(船側外板側)に設けられていることから、連壁部を上下方向に回避するような台座等の付属部材の高さを低く抑えることができる。以上より、この船舶は、係留金物の重量、及び係留金物を支持する補強部材の重量を低減させ、当該補強部材に係る工数を低減することができる。
【0008】
一実施形態においては、船舶は、甲板の下方に荷油を貯留する荷油タンクをさらに備え、連壁部は、荷油タンクより外側に設けられる。このような構成によれば、甲板において連壁部が荷油タンクの外側に設けられるため、作業中に荷油タンクから甲板上に荷油が流出した場合であっても、甲板から船側外板又は船外への荷油の流出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、係留に必要な部位の重量を低減することができる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る船舶を示す概略側面図である。
図2図1に示す船舶の概略平面図である。
図3図3(a)は、船舶が右舷側で一般係留をしている様子を示す概略図であり、図3(b)は、船舶が一点係留している様子を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る船舶の船首側を示す平面図であり、右舷側へ一般係留を行うときの様子を示す図である。
図5図5(a)は、本発明の実施形態に係る連壁部及び係留金物の一例を示す概略断面図であり、図5(b)は、本発明の実施形態に係る連壁部及び係留金物の一例を示す概略断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る連壁部及び係留金物の一例を示す概略平面図である。
図7】比較例に係る連壁部及び係留金物を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による船舶の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る船舶を示す概略側面図、図2は、図1に示す船舶の概略平面図である。なお、ここでの船舶100はタンカーである。
【0012】
図1及び図2に示すように、この船舶100にあっては、船体19内の船尾側(図1及び図2の左側)に機関室1が設けられ、この機関室1より船首側(図1及び図2の右側)に隔壁4を隔ててポンプ室2が設けられ、このポンプ室2より船首側に隔壁5を隔ててカーゴスペース3が複数設けられる。船体19内の船首側には船首部13が設けられ、この船首部13より船尾側に船首隔壁14を隔ててカーゴスペース3(荷油タンクの一例)が設けられる。また、船舶100におけるカーゴスペース3側にはバラスト水を貯留するバラストタンク6が複数設けられる。また、機関室1より船尾側には船尾部15が設けられる。船尾部15の下部にはバラストタンク6とは異なるタンク7が設けられる。なお、タンク7は、バラストタンク6と同様にバラスト水を貯留するものであっても良いし、バラスト水と異なる液体(例えば海水を殺菌してバラスト水を生成するための液体)を貯留するものであっても良い。また、タンク7には何も貯留されておらず、空ジョブとなっていても良い。
【0013】
船体19の上側には甲板10が設けられる。機関室1、ポンプ室2、カーゴスペース3、及び船首部13の天井面は甲板10で構成され、床面側は、図1及び図2に示すように、船体19の外殻を形成する船側外板11と、この船側外板11の船体19内側に設けられた内底板12とによって2重船底構造とされている。甲板10は、甲板10と船側外板11とが互いに接続されている部位の近傍である外縁部10aを有する。また、隔壁4は、船幅方向(図2の上下方向)に延びると共に、船側外板11から甲板10まで延びるように設けられている。また、隔壁5は、船幅方向に延びると共に、内底板12から甲板10まで延びるように設けられている。
【0014】
カーゴスペース3には、船舶100によって運搬される原油、精製油等の荷油が貯留される。カーゴスペース3は、船体内側を、例えば船幅方向に2つに分割すると共に船長方向に7つに分割することで合計14の区画に分けられている。
【0015】
ここで、図3を参照して、船舶100の係留について説明する。図3(a)は、船舶100が右舷側で一般係留をしている様子を示す概略図である。図3(b)は、船舶100が一点係留している様子を示す概略図である。図3に示すように、船舶100は、一般係留及び一点係留を行うことができる。一般係留とは、船舶100の右舷側及び左舷側一方の陸地へロープ(係船索)を引き出し、当該陸地へ係留することである。例えば、図3(a)に示すように、船舶100は、船体19の船首部13及び船尾部15から右舷側へロープ30を引き出す。そして、引き出されたロープ30は、陸地LDにて固定される。これにより、船舶100が右舷側の陸地LDに係留される。なお、船舶100の左舷側に陸地LDが存在するときは、船舶100は、左舷側にロープを引き出す。
【0016】
一点係留とは、船体19が船首側の位置にて、海上の構造物STのチェーン35に接続されることで、構造物STに対して一箇所だけで係留されることである。一点係留を行う場合、船体19の船首部13からロープを海側へ引き出し、当該ロープで海側のチェーン35を引っ張り上げる。そして、船首部13では、引っ張り上げたチェーン35を固定部に固定させる。これにより、船体19が海上の構造物STにチェーン35を介して係留される。なお、この構造物STは、ブイである。
【0017】
次に、図4を参照して、船舶100の船首側の構造について説明する。図4は、船舶100の船首側を示す平面図であり、右舷側へ一般係留を行うときの様子を示す図である。左舷側への一般係留及び一点係留における構成の配置などは、ロープの引出態様以外、右舷側への一般係留と共通している。また、船舶100の船尾側の係留装置に関する構成は、船舶100の船首側の係留装置に関する構成と同様であるため、本実施形態では、船舶100の船首側の係留装置に関する構成を例示する。
【0018】
船舶100は、船首側の甲板10上に、船首側に配置された第1ドラム20と、右舷側に配置された第2ドラム40と、左舷側に配置された第3ドラム60と、各ドラム40,60よりも船尾側に配置された第4ドラム70と、を備える。船舶100は、甲板10上に、甲板10から上方へ立ち上がり甲板10を連続して取り囲む連壁部18をさらに備える。
【0019】
第1ドラム20は、甲板10の船首側の領域において、船首側へロープ81を延ばすことが可能なドラムである。第1ドラム20は、船長方向に延在する船舶100の中心線CL付近の位置に配置される。第1ドラム20に対して船首側で対向する位置には、一点係留用のチェーン35(図3参照)を固定する固定部27が設けられる。また、甲板10の外縁部10aには、第1ドラム20及び固定部27に対して船首側で対向する位置に、係留金物28が設けられる。係留金物28は、ロープ81及びチェーン35を引き出す又は引き抜く部分である。係留金物28は、第1ドラム20から延ばすロープ81の本数又は回転部の数に応じて配置される。なお、係留金物は、ロープを引き出す又は引き抜く部分であり、ドラムから延ばされるロープの本数又は回転部の数に応じて配置される点は、他の箇所の係留金物についても同様である。
【0020】
第2ドラム40は、右舷側で係留するときに、右舷側へロープ82を延ばすことが可能なドラムである。第2ドラム40は、甲板10の船首側の領域において、第1ドラム20よりも船尾側であって右舷側に配置されている。甲板10の右舷側の外縁部10aには、第2ドラム40に対して、ロープ82の引出方向に対向する位置に、係留金物48が設けられる。
【0021】
第3ドラム60は、左舷側で係留するときに、左舷側へロープ83を延ばすことが可能なドラムである。第3ドラム60は、甲板10の船首側の領域において、第1ドラム20よりも船尾側であって左舷側に配置されている。甲板10の左舷側の外縁部10aには、第3ドラム60に対して、ロープ83の引出方向に対向する位置に、係留金物68が設けられる。
【0022】
第4ドラム70は、一般係留のときに、右舷側又は左舷側へロープ84を延ばすことが可能なドラムである。第4ドラム70は、甲板10の船首側の領域において、第2ドラム40及び第3ドラム60よりも船尾側であって左舷側に配置されている。甲板10の左舷側の外縁部10aには、第4ドラム70に対して、ロープ84の引出方向に対向する位置に、係留金物78が設けられる。第4ドラム70は、右舷側で係留するときは、右舷側へロープ84を延ばすことが可能である。甲板10の右舷側の外縁部10aには、第4ドラム70に対して、ロープ84の引出方向に対向する位置に、係留金物79が設けられる。
【0023】
係留金物28,48,68,78,79は、後述するが、例えばそれぞれ同一の形状を有する。以下、係留金物28,48,68,78,79は、それぞれ係留金物90として一括して表現する。また、ロープ81,82,83,84は、それぞれロープ80として一括して表現し、係留金物90はロープ80を引き出す又は引き抜く部分であるとする。
【0024】
図4に示す通り、連壁部18は、例えば、シャーストレーキである。連壁部18は、甲板10から連続して上方に延びた板状の部材であり、船舶100の積載物(荷油)の流出を抑制する。連壁部18は、例えば、高さ270mm、厚み16mmの湾曲した長尺状の部材である。連壁部18は、甲板10を連続して取り囲む。連壁部18は、例えば、連続した一条の部材(1つの部材)で構成されており、上面視において環状を呈する。連壁部18は、複数の部材によって構成され、水平方向において複数の部材間が接続されることで上面視において環状を呈する連続した部位となっていてもよい。このとき、複数の部材間は、荷油が流通可能な隙間が形成されないように接続される。連壁部18を構成する1又は複数の部材は、荷油が流通可能なように水平方向に連通した穴を有さない板状又は直方体状を呈する。
【0025】
連壁部18は、船側外板11に沿って設けられた係留金物(船首側における係留金物90)を迂回して係留金物(船首側における係留金物90)より甲板10の内側に設けられる。ここでの内側とは、船側外板11より隔壁4側、内底板12側、及び船首隔壁14側である。以下、甲板10上における外側(外舷方向、及び船側外板11側)と内側(隔壁4側、内底板12側、及び船首隔壁14側)との方向を内外方向と記載し、甲板10上における船側外板11に沿った方向を外板方向と記載する。また、以下、一例として、船首側の甲板10上における連壁部18の構成について説明する。
【0026】
連壁部18は、船側外板11上に設けられる第1連壁部位18aと、第1連壁部位18aと連続しており船側外板11から内側に向かって延在する第2連壁部位18bと、1対の第2連壁部位18bと連続して外板方向に延在する第3連壁部位18cと、を有する。すなわち、連壁部18は、係留金物90の台座91を迂回して係留金物90より甲板10の内側に設けられる第2連壁部位18b及び第3連壁部位18cを有する。また、連壁部18の各部位18a,18b,18cは、甲板10上において内底板12より外側に設けられる。すなわち、連壁部18は、カーゴスペース3より外側に設けられる。なお、各部位18a,18b,18cの更に詳細な構成については、係留金物90との位置関係と共に後述する。
【0027】
次に、図5を参照して、船側外板11、連壁部18及び係留金物90の位置関係及び構成を説明する。図5の(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る連壁部及び係留金物の一例を示す概略断面図である。係留金物90は、台座91及びチョック92を有する。係留金物90は、例えば、甲板10の下部に設けられる後述の補強部材(不図示)により支持される。
【0028】
台座91は、チョック92を下方から支持し、チョック92を甲板10上に固定する。台座91は、底部91a及び上部91bを有する。台座91の底部91aは、甲板10上の外縁部10aに設けられる。甲板10に接続している台座91の底部91aは、鋼船規則に基づき、船側外板11より所定の距離dだけ内側に設けられる。所定の距離dは、例えば、50mm以上100mm以下である。
【0029】
台座91の上部91bは、チョック92と接続する。台座91の上部91bは、台座91の底部91aに比べて外側に設けられる。例えば、図5の(a)に示す通り、台座91は、底部91aから上部91bに向かう方向において、底部91aと上部91bとの間の部位から外側に向かって屈曲している。例えば、図5の(b)に示す通り、台座91は、底部91aから上部91bに向かって外側に傾斜していてもよい。これにより、例えば、台座91の上部91bの外側の部位は、上下方向において船側外板11に対して直上に設けられる。台座91の一部又は全部が底部91aから上部91bに向かって突出、屈曲、湾曲、又は拡大していてもよい。台座91の高さは、チョック92に掛かる荷重等に基づいて適宜設定される。台座91の高さは、例えば、200mm以上270mm以下である。台座91の高さは、例えば235mmである。台座91の上部91bの外板方向の幅は、チョック92の底面の外板方向の幅以上の長さである。
【0030】
チョック92は、ロープ80を引き出す又は引き抜く部分である。チョック92は、例えば、パナマチョックである。チョック92は、オープンチョックであってもよいし、クローズドチョックであってもよい。チョック92は、台座91の上部91b上に設けられる。台座91の上部91bが船側外板11の直上に設けられているとき、チョック92は船側外板11の直上に位置するように上部91b上に設けられる。台座91の上部91b及びチョック92は、船側外板11の直上又は内側に位置する。
【0031】
次に、図6を参照して連壁部18の構造について、係留金物90との位置関係と共に更に詳細に説明する。
【0032】
第1連壁部位18aは、甲板10の外縁部10aに設けられ、係留金物90の台座91が設けられている位置から外側の領域以外の甲板10上の位置に設けられる。すなわち、第1連壁部位18aは、係留金物90の台座91の上部91bの直下の領域を除き、船側外板11に沿って外板方向に延在する。例えば、第1連壁部位18aは、船側外板11上に設けられ、第1連壁部位18aの外側の面は、上下方向において船側外板11の外側の面と連続している(図7に示す連壁部180と同趣旨の構成となる)。
【0033】
第2連壁部位18bは、係留金物90の台座91から外板方向に離間して設けられ、第1連壁部位18aから連続して内側に延在する。すなわち、連壁部18は、台座91の位置で甲板10上において内側に屈曲又は湾曲することにより、係留金物90を迂回する。第2連壁部位18bは、台座91の外板方向の両端部から所定の距離以上離間した位置において、第1連壁部位18aから内側に向かって、台座91の外板方向の両端部に沿うように延在する。第2連壁部位18bは、少なくとも台座91の底部91aの内側の端部より所定の距離d(距離dの大きさについては後述)だけ内側に向かって延在する。すなわち、第2連壁部位18bの内外方向の長さは、船側外板11から台座91の底部91aの内側の端部までの長さより長い。
【0034】
甲板10上の外縁部10aにおいて、1又は複数の係留金物90は、1対の第2連壁部位18bとの間に設けられる。すなわち、第2連壁部位18bは、1つの係留金物90に対して1対設けられてもよい。第2連壁部位18bは、複数の係留金物90のうち外板方向の両端に位置する係留金物90の端部に沿って1対設けられてもよい。例えば、複数の係留金物90が隣接して配置されている場合、第2連壁部位18bは、他の係留金物90が隣接して配置されていない方の係留金物90の端部に沿って設けられる。
【0035】
第3連壁部位18cは、甲板10上の係留金物90の台座91の底部91aより内側の位置において、第2連壁部位18bの内側の端部と連続して外板方向に延在する。第3連壁部位18cは、1又は複数の係留金物90の外板方向の端部に沿って内外方向に延在する1対の第2連壁部位18bの内側の端部を結ぶように外板方向に延在する。図5の(a)及び(b)に示す通り、第3連壁部位18cは、設置時の作業性を踏まえて、係留金物90の内側の端部から所定の距離dだけ内側に離れた位置に設けられる。すなわち、係留金物90は、第3連壁部位18cの外側に設けられる。
【0036】
ここで、台座91の底部91aの外側の部位は、設置又はメンテナンスの作業時に外側から障害物なしにアプローチできるため、鋼船規則に基づく距離(ここではd)だけ船側外板11から離間していればよい。これに対し、台座91の底部91aの内側の部位は、第3連壁部位18cが設けられた後、台座91の底部91aの設置又はメンテナンスの作業時に内側からアプローチできるように所定の距離(ここではd)だけ離間している必要がある。このため、距離dは、距離dより大きく取る必要がある。距離dは、例えば、150mmである。
【0037】
次に、本実施形態に係る船舶100の作用・効果について説明する。
【0038】
まず、図7を参照して、比較例に係る船舶200について説明する。比較例に係る船舶200は、船側外板110上に設けられた連壁部180と、連壁部180を上下方向に回避するように甲板210上に設けられた係留金物900と、を備える。甲板210は、甲板210と船側外板110とが互いに接続されている部位の近傍である外縁部210aを有する。連壁部180及び係留金物900は、例えば、甲板210の外縁部210aに設けられる。
【0039】
比較例に係る船舶200の連壁部180は、船側外板110から連続して甲板210より上方に延び、甲板210を取り囲む一条の部材である。係留金物900は、台座910と、チョック920とを有する。台座910は、甲板210上に設けられる底部910a、及びチョック920が設けられる上部910bを有する。台座910の底部910aは、連壁部180が船側外板110から連続して上方に延在していることから、設置又はメンテナンス時の作業性を踏まえて、連壁部180から所定の距離dだけ内側に離間して配置される。距離dは、例えば、距離dと同値である。
【0040】
チョック920を船側外板110の直上に設けるため、チョック920が設けられる台座910の上部910bは、船側外板110及び連壁部180の直上に設けられる必要がある。このため、台座910は、例えば、図7に示す通り、底部910aから上部910bに向かう方向において、底部910aと上部910bとの間の部位から外側に向かって屈曲している。これにより、例えば、台座910の上部910bの外側の部位及びチョック920は、上下方向において船側外板110及び連壁部180に対して直上に設けられる。台座910が上記のような形状を有することで、係留金物900は、連壁部180を上下方向に回避することができる。なお、台座910のうち上方及び外側に向かって屈曲している部位と連壁部180との最短距離は、台座910の設置又はメンテナンス時の作業性を踏まえて、連壁部180から所定の距離dだけ内側に離間して配置される。距離dは、例えば300mmである。
【0041】
ここで、比較例と実施形態との構成の違いを説明する。甲板210上において、比較例に係る台座910の底部910aは船側外板110から離間している距離dだけ離間しているのに対し、甲板10上において実施形態に係る台座91の底部91aは船側外板11から距離dだけ離間している。このとき、距離dは、距離dより大きい。このため、比較例に係る台座910が船側外板110の直上まで上部910bを延在させるために必要な長さが、実施形態に係る台座91が船側外板11の直上まで上部91bを延在させるために必要な長さに比べて、大きい。すなわち、台座91は、台座910より小さくてもよく、台座91の重量を台座910の重量より減少させることができる。
【0042】
また、比較例に係る台座910は、船側外板110の直上において連壁部180を上下方向に回避する必要があるため、台座910のうち上方及び外側に向かって屈曲している部位と連壁部180との間の距離をdだけ離間させる必要がある。これに対し、実施形態に係る台座91は、船側外板11の直上において上下方向に回避すべき部材がないため、台座91の構造の自由度が増大する。
【0043】
実施形態に係る台座91は、上方及び外側に向かって屈曲している部位と連壁部18との間の距離に制約がないのに対し、比較例に係る台座910のうち上方及び外側に向かって屈曲している部位と連壁部180との間の距離をdだけ離間させる必要があるため、台座91の高さdは台座910の高さdに比べて小さくなる。台座91の高さdは、例えば、470mmであり、台座910の高さdは、例えば、250mmである。
【0044】
ここで、船舶100,200を係留する場合には、チョック92,920に対して、それぞれロープを介して船舶100,200の荷重が掛かる。船舶100,200の重量が同一であった場合、台座91の高さが台座910の高さに比べて低いため、係留金物90に掛かるモーメントは、係留金物900に掛かるモーメントに比べて小さい。このため、台座91は、台座910に比べてモーメントに対して強い構造としなくてもよい。台座91は、例えば、台座910に比べて体積及び重量の少なくとも一方を小さくしてもよい。このため、船舶100は、例えば、台座91に対する補強部材の重量を、船舶200の台座910に対する補強部材の重量に比べて低減させることができる。ここで、補強部材とは、係留金物を支持する部材である。補強部材は、例えば、係留金物90及び係留金物900のそれぞれの下部に位置し、係留金物90及び係留金物900のそれぞれを支持する。補強部材は、係留金物90及び係留金物900に対する補強機能を有する。これらにより、船舶100の係留金物90は、船舶200の係留金物900に比べて、係留に必要な部材(係留金物90及び補強部材)の重量を低減させることができ、補強及びメンテナンスに係る工数が減少させることができる。
【0045】
一方で、船舶100の連壁部18において第1連壁部位18a及び第3連壁部位18cが船舶200の連壁部180に相当する長さを有するとすると、船舶100は、船舶200に比べて、第2連壁部位18bが設置される分だけ重量が増大する。第2連壁部位18bは、多くても1つの係留金物90に対し1対設けられる。なお、台座91,910及び連壁部18,180は、例えば、同一の素材で形成可能である。台座91,910及び連壁部18,180は、例えば、鉄鋼で形成されている。したがって、船舶100において第2連壁部位18bを設置することによって増加する重量の総和は、各台座910から各台座91に変更することで低減させることができる重量の総和に対して、小さい。したがって、船舶100は、船舶200に比べて、全体の重量を低減させることができる。さらに、第2連壁部位18bを設置することによって増加するコストは、上記の台座910に対して台座91から低減させることができたコストに対して、小さい。したがって、船舶100は、船舶200に比べて、全体のコストを低減させることができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の船舶100では、係留金物の重量、及び係留金物を支持する補強部材の重量を低減させ、当該補強部材に係る工数を低減することができる。また、連壁部18は、甲板10上を一条の部材で取り囲むことができるため、船舶100の積載物(荷油)の流出を抑制することができる。係留金物90は、連壁部18より外側(船側外板側)に設けられていることから、連壁部18を上下方向に回避するような台座91等の付属部材の高さを比較例の船舶200における台座910の高さに比べて低く抑えることができる。よって、係留金物90の重量が比較例の係留金物900の重量に比べて低減するため、船舶100は、係留金物90の補強部材の要求寸法を比較例の係留金物900の補強部材の要求寸法に比べて小さくすることができる。これにより、船舶100は船舶200に比べて、補強部材の重量が低減する。船舶100において、補強部材の重量が低減することにより、補強部材に係る設計工数及び設置工数等が低減し、補強部材の施工性が向上する。
【0047】
また、甲板10において連壁部18がカーゴスペース3の外側に設けられるため、作業中にカーゴスペース3から甲板10上に荷油が流出した場合であっても、甲板10から船側外板11又は船外への荷油の流出を抑制することができる。
【0048】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、各ドラム20,40,60,70及び係留金物90等、周辺の構造物の配置は特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。また、ドラムは必ずしもドラム20,40,60,70だけに限定されるものではなく、過剰にスペースをとらない限り、別のドラムを追加してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、船舶をタンカーとしているが、油だけでなく鉱石や石炭等の固形貨物(バルク)も積める兼用船に対しても適用可能である。本実施形態の構成は、その他一般的な船舶に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…機関室、2…ポンプ室、3…カーゴスペース、4…隔壁、5…隔壁、6…バラストタンク、7…タンク、10…甲板、10a…外縁部、11…船側外板、18…連壁部、18a…第1連壁部位、18b…第2連壁部位、18c…第3連壁部位、19…船体、20…第1ドラム、27…固定部、28,48,68,78,79,90…係留金物、35…チェーン、40…第2ドラム、60…第3ドラム、70…第4ドラム、30,80,81,82,83,84…ロープ、91…台座、91a…底部、92…チョック、100…船舶。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7