(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】照明装置及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/70 20180101AFI20231109BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20231109BHJP
F21S 41/176 20180101ALI20231109BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20231109BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20231109BHJP
F21V 9/45 20180101ALI20231109BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20231109BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20231109BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20231109BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20231109BHJP
【FI】
F21S45/70
F21S41/16
F21S41/176
F21S45/10
B60Q1/04 E
F21V9/45
F21V14/04
F21V7/00 590
F21Y115:30
F21W102:135
(21)【出願番号】P 2020013890
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄大
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220605(JP,A)
【文献】特開2017-191760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/70
F21S 41/16
F21S 41/176
F21S 45/10
B60Q 1/04
F21V 9/45
F21V 14/04
F21V 7/00
F21Y 115/30
F21W 102/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光が照射されるレーザー光照射領域を含み、前記レーザー光の照射により励起されて波長変換された光を発する波長変換部材と、
前記レーザー光照射領域に照射されるレーザー光を走査することによって、前記レーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成するレーザー光走査機構と、
前記配光パターンを形成する照明光を前方に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記レーザー光走査機構により走査されるレーザー光の前記波長変換部材に対する入射角が、前記波長変換部材が破損、欠損又は脱落したときに、前記投影レンズに対してレーザー光が直接入射しない角度に設定されて
おり、
前記波長変換部材を平面視したときに、前記レーザー光の走査範囲の中心が前記レーザー光照射領域の中心に対して前記レーザー光走査機構が配置された側とは反対側に位置することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記レーザー光源及び前記レーザー
光走査機構は、前記波長変換部材を挟んだ一方側と他方側とに各々配置され、
前記一方側のレーザー光走査機構は、前記一方側のレーザー光源から前記レーザー光照射領域に向けて照射される一方のレーザー光を走査することによって、前記一方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成し、
前記他方側のレーザー光走査機構は、前記他方側のレーザー光源から前記レーザー光照射領域に向けて照射される他方のレーザー光を走査することによって、前記他方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成し、
前記一方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンと、前記他方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成しており、
前記波長変換部材を平面視したときに、前記一方のレーザー光の走査範囲の中心が、前記レーザー光照射領域の中心に対して前記一方側のレーザー光走査機構が配置された側とは反対側に位置すると共に、前記他方のレーザー光の走査範囲の中心が、前記レーザー光照射領域の中心に対して前記他方側のレーザー光走査機構が配置された側とは反対側に位置することを特徴とする請求項
1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記一方側が前記配光パターンの左側に対応した位置であり、前記他方側が前記配光パターンの右側に対応した位置であることを特徴とする請求項
2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記レーザー光照射領域は、前記波長変換部材を平面視したときに、前記配光パターンの左右方向に対応した幅が、前記配光パターンの上下方向に対応した高さよりも長いことを特徴とする請求項
3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記レーザー光源及び前記レーザー
光走査機構は、前記波長変換部材を挟んだ前記配光パターンの上側又は下側、若しくは上側及び下側に対応した位置に追加して配置され、
前記追加側のレーザー光走査機構は、前記追加側のレーザー光源から前記レーザー光照射領域に向けて照射される追加のレーザー光を走査することによって、前記追加のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成し、
前記一方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンと、前記他方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンと、前記追加のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成していることを特徴とする請求項
4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記波長変換部材を平面視したときに、前記追加のレーザー光の走査範囲の中心が、前記追加側のレーザー光走査機構の中心を通る前記配光パターンの上下方向に対応した鉛直ラインと、前記レーザー光照射領域の中心を通る前記配光パターンの左右方向に対応した水平ラインとの交点に位置することを特徴とする請求項
5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記追加側のレーザー
光走査機構は、前記配光パターンの左側に対応した一方側と、前記配光パターンの右側に対応した他方側との何れかにずらして配置されていることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の照明装置。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか一項に記載の照明装置を備える車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、並びにそのような照明装置を備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高輝度且つ高出力な光が得られるレーザーダイオード(LD)などのレーザー光源を用いて、このレーザー光源が発するレーザー光を蛍光体プレート(波長変換部材)に照射することによって、照明光を得ることが行われている。
【0003】
このような照明装置では、青色レーザー光を出射するレーザー光源と、この青色レーザー光(励起光)に励起されて波長変換された黄色光(蛍光光)を発する蛍光体プレートとを組み合わせて、これら青色光と黄色光との混色により白色光(照明光)を得ることが可能となっている。
【0004】
また、このような照明装置を適用した車両用灯具が知られている。車両用灯具では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する照明光と、走行用ビーム(ハイビーム)として、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成する照明光とを投影レンズにより車両の前方に向けて投影する車両用前照灯(ヘッドランプ)に照明装置が用いられている。
【0005】
具体的に、この車両用灯具では、上述したロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターンなどの各配光パターンに対応したレーザー光照射領域を蛍光体プレートの面内に設けて、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラーなどのレーザー光走査機構によりレーザー光照射領域に照射されるレーザー光を走査することによって、レーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成することが行われている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0006】
さらに、このような車両用灯具では、レーザー光の走査によって、車両の前方に向けて投影される光の配光パターンを可変に制御する配光可変ヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)とすることも可能である。ADBは、車載カメラで前走車や対向車、歩行者などを認識し、前方のドライバーや歩行者に眩しさを与えることなく、夜間におけるドライバーの前方視界を拡大する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した照明装置では、光強度が高いレーザー光が蛍光体プレートの面内で走査される。また、蛍光体プレートに照射されたレーザー光は、蛍光体プレート中に分散された蛍光体粒子によって拡散される。このため、蛍光体プレートから出射される光の単位面積当たりの光強度は低くなり、且つ、非コヒーレントな光となるため、目に対して安全な照明光となる。
【0009】
一方、レーザー光の走査によって蛍光体プレートの面内には温度分布が発生する。また、車両用灯具の場合、外気に晒されるため、外気温の影響も受ける。車両用灯具では、例えば-40℃から+100℃超までの温度変化を受ける可能性がある。
【0010】
したがって、蛍光体プレートには、温度変化による歪みなどの機械的な外力が加わることになる。また、車両用灯具の場合、蛍光体プレートに対して車両からの振動や衝撃等の外力も加わる。これらの外力の影響などによって、蛍光体プレートに割れや欠け、クラック、ピンホールなどの破損や欠損が生じるだけでなく、蛍光体プレートが脱落してしまう可能性もある。
【0011】
蛍光体プレートに破損や欠損、脱落が生じた場合、レーザー光が投影レンズを通して外部に直接出射される可能性がある。この場合、レーザー光が人の目に直接入ると危険であるため、蛍光体プレートの脱落を検出する機構を設けて、蛍光体プレートが脱落した際に、レーザー光源を消灯(OFF)することが行われている。
【0012】
しかしながら、蛍光体プレートの脱落を検出する機構では、蛍光体プレートに発生した微小なクラックやピンホールなどの欠陥や破損を検出することはできない。このため、レーザー光が投影レンズを通して外部に直接出射される可能性がある。
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、波長変換部材に欠陥や破損、脱落が生じた場合でも、レーザー光が投影レンズを通して外部に直接出射されることを防止した照明装置、並びにそのような照明装置を備えた車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 レーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光が照射されるレーザー光照射領域を含み、前記レーザー光の照射により励起されて波長変換された光を発する波長変換部材と、
前記レーザー光照射領域に照射されるレーザー光を走査することによって、前記レーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成するレーザー光走査機構と、
前記配光パターンを形成する照明光を前方に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記レーザー光走査機構により走査されるレーザー光の前記波長変換部材に対する入射角が、前記波長変換部材が破損、欠損又は脱落したときに、前記投影レンズに対してレーザー光が直接入射しない角度に設定されており、
前記波長変換部材を平面視したときに、前記レーザー光の走査範囲の中心が前記レーザー光照射領域の中心に対して前記レーザー光走査機構が配置された側とは反対側に位置することを特徴とする照明装置。
〔2〕 前記レーザー光源及び前記レーザー光走査機構は、前記波長変換部材を挟んだ一方側と他方側とに各々配置され、
前記一方側のレーザー光走査機構は、前記一方側のレーザー光源から前記レーザー光照射領域に向けて照射される一方のレーザー光を走査することによって、前記一方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成し、
前記他方側のレーザー光走査機構は、前記他方側のレーザー光源から前記レーザー光照射領域に向けて照射される他方のレーザー光を走査することによって、前記他方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成し、
前記一方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンと、前記他方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成しており、
前記波長変換部材を平面視したときに、前記一方のレーザー光の走査範囲の中心が、前記レーザー光照射領域の中心に対して前記一方側のレーザー光走査機構が配置された側とは反対側に位置すると共に、前記他方のレーザー光の走査範囲の中心が、前記レーザー光照射領域の中心に対して前記他方側のレーザー光走査機構が配置された側とは反対側に位置することを特徴とする前記〔1〕に記載の照明装置。
〔3〕 前記一方側が前記配光パターンの左側に対応した位置であり、前記他方側が前記配光パターンの右側に対応した位置であることを特徴とする前記〔2〕に記載の照明装置。
〔4〕 前記レーザー光照射領域は、前記波長変換部材を平面視したときに、前記配光パターンの左右方向に対応した幅が、前記配光パターンの上下方向に対応した高さよりも長いことを特徴とする前記〔3〕に記載の照明装置。
〔5〕 前記レーザー光源及び前記レーザー光走査機構は、前記波長変換部材を挟んだ前記配光パターンの上側又は下側、若しくは上側及び下側に対応した位置に追加して配置され、
前記追加側のレーザー光走査機構は、前記追加側のレーザー光源から前記レーザー光照射領域に向けて照射される追加のレーザー光を走査することによって、前記追加のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンを形成し、
前記一方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンと、前記他方のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンと、前記追加のレーザー光の走査範囲に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成していることを特徴とする前記〔4〕に記載の照明装置。
〔6〕 前記波長変換部材を平面視したときに、前記追加のレーザー光の走査範囲の中心が、前記追加側のレーザー光走査機構の中心を通る前記配光パターンの上下方向に対応した鉛直ラインと、前記レーザー光照射領域の中心を通る前記配光パターンの左右方向に対応した水平ラインとの交点に位置することを特徴とする前記〔5〕に記載の照明装置。
〔7〕 前記追加側のレーザー光走査機構は、前記配光パターンの左側に対応した一方側と、前記配光パターンの右側に対応した他方側との何れかにずらして配置されていることを特徴とする前記〔5〕又は〔6〕に記載の照明装置。
〔8〕 前記〔1〕~〔7〕の何れか一項に記載の照明装置を備える車両用灯具。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、波長変換部材に欠陥や破損が生じた場合でも、レーザー光が投影レンズを通して外部に直接出射されることを防止した照明装置、並びにそのような照明装置を備えた車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る透過型の照明装置を備えた車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る反射型の照明装置を備えた車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図3】レーザー光照射領域の中心と、レーザー光の走査範囲の中心との位置関係を示す照明装置の正面図である。
【
図4】レーザー光照射領域の中心と、レーザー光の走査範囲の中心との位置関係を示す照明装置の上面図である。
【
図5】比較としてレーザー光照射領域の中心にレーザー光の走査範囲の中心が位置する場合を示す照明装置の上面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る照明装置を備えた車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図7】
図6に示す照明装置のレーザー光照射領域の中心と、左側のレーザー光の走査範囲の中心及び右側のレーザー光の走査範囲の中心との位置関係を示す正面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る照明装置を備えた車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図9】
図8に示す照明装置のレーザー光照射領域の中心と、左側のレーザー光の走査範囲の中心、右側のレーザー光の走査範囲の中心及び上側のレーザー光の走査範囲の中心との位置関係を示す正面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る照明装置を備えた車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図11】
図10に示す照明装置のレーザー光照射領域の中心と、左側のレーザー光の走査範囲の中心、右側のレーザー光の走査範囲の中心、上側のレーザー光の走査範囲の中心及び下側のレーザー光の走査範囲の中心との位置関係を示す正面図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る照明装置を備えた車両用灯具の構成を示す模式図である。
【
図13】
図12に示す照明装置のレーザー光照射領域の中心と、左側のレーザー光の走査範囲の中心、右側のレーザー光の走査範囲の中心、上側のレーザー光の走査範囲の中心及び下側のレーザー光の走査範囲の中心との位置関係を示す正面図である。
【
図14】
図12に示す照明装置の上側のレーザー光走査機構からレーザー光照射領域の端部に入射する上側のレーザー光の入射ベクトル及びその入射角を示す模式図である。
【
図15】比較として上部中央側に位置するレーザー光走査機構からレーザー光照射領域の端部に入射する上側のレーザー光の入射ベクトル及びその入射角を示す模式図である。
【
図16】照明装置に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、波長変換部材の面内に形成された配光パターンの光源像を投影した状態を示す模式図である。
【
図17】
図16中に示す線分Y-Yによる配光パターンの断面における光度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
[第1の実施形態]
先ず、本発明の第1の実施形態に係る照明装置1A,1Bを備えた車両用灯具100について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0019】
なお、
図1は、透過型の照明装置1Aを備えた車両用灯具100の構成を示す模式図である。
図2は、反射型の照明装置1Bを備えた車両用灯具100の構成を示す模式図である。
【0020】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を照明装置1A,1B(車両用灯具100)の前後方向、Y軸方向を照明装置1A,1B(車両用灯具100)の左右方向、Z軸方向を照明装置1A,1B(車両用灯具100)の上下方向として、それぞれ示すものとする。
【0021】
(透過型の照明装置)
本実施形態の照明装置1Aは、
図1に示すように、車両に搭載される車両用灯具100として、例えば車両の前方(+X軸方向)に向けて照明光Wを照射する車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものである。
【0022】
なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、特に断りのない限り、車両用灯具100を正面(車両の前方)から見たときのそれぞれの方向を意味するものとする。
【0023】
照明装置1Aは、照明光WLを車両の前方に向けて投影する投影レンズ200を備え、この投影レンズ200と共に、灯体(図示せず。)の内側に収容されることによって、車両用灯具100を構成している。
【0024】
具体的に、この照明装置1Aは、励起光となるレーザー光BLを出射するレーザー光源2と、レーザー光BLの照射により励起されて波長変換された蛍光光YLを発する透過型の波長変換部材3Aと、波長変換部材3Aに向けて照射されるレーザー光BLを走査するレーザー光走査機構4と、レーザー光走査機構4により走査されたレーザー光BLを波長変換部材3Aに向けて反射するリフレクター5とを概略備えている。
【0025】
レーザー光源2は、レーザー光BLとして、例えば青色レーザー光(発光波長が約450nm)を発するレーザーダイオード(LD)からなる。なお、レーザー光源2については、レーザー光BLとして、紫外レーザー光を発するLDを用いてもよい。
【0026】
波長変換部材3Aは、レーザー光BLの照射により励起されて、蛍光光YLとして黄色光を発する黄色蛍光体粒子を含む板状の蛍光体プレートからなる。本実施形態では、波長変換部材3Aとして、例えば、セリウムCe等の付活剤が導入されたYAGとアルミナAl2O3との複合体(焼結体)からなる蛍光体粒子を含有したものを用いている。なお、波長変換部材3Aは、蛍光体粒子の他にも、この照明装置1Aから出射される照明光WLの配光特性を制御するため、拡散剤を含有した構成であってもよい。
【0027】
レーザー光走査機構4は、レーザー光源2と波長変換部材3Aとの間の光路中に配置されたMEMSミラーからなる。MEMSミラーは、MEMS技術を用いた可動式のミラーであり、波長変換部材3Aの面内で走査されるレーザー光BLの走査方向及び走査速度を制御している。
【0028】
リフレクター5は、波長変換部材3Aとレーザー光走査機構4との間の光路中に配置された平面ミラーからなる。リフレクター5は、MEMSミラーで反射されたレーザー光BLを波長変換部材3Aの背面に向けて反射する。
【0029】
本実施形態の照明装置1Aでは、波長変換部材3Aの背面に向かって照射されたレーザー光(青色光)BLの一部が拡散しながら波長変換部材3Aを透過すると共に、レーザー光BLの照射により波長変換部材3A内の蛍光体粒子が励起されることで、蛍光光(黄色光)YLを発しながら、これら青色光と黄色光との混色により照明光(白色光)WLを前方の投影レンズ200に向けて出射することが可能となっている。
【0030】
(反射型の照明装置)
一方、本実施形態の照明装置1Bは、
図2に示すように、上記照明装置1Aと同様に、車両に搭載される車両用灯具100として、例えば車両の前方(+X軸方向)に向けて照明光Wを照射する車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものである。
【0031】
照明装置1Bは、照明光WLを車両の前方に向けて投影する投影レンズ200と共に、灯体(図示せず。)の内側に収容されることによって、車両用灯具100を構成している。
【0032】
具体的に、この照明装置1Bは、励起光となるレーザー光BLを出射するレーザー光源2と、レーザー光BLの照射により励起されて波長変換された蛍光光YLを発する反射型の波長変換部材3Bと、波長変換部材3Bに向けて照射されるレーザー光BLを走査するレーザー光走査機構4と、レーザー光走査機構4により走査されたレーザー光BLを波長変換部材3Bに向けて反射するリフレクター5とを概略備えている。
【0033】
すなわち、この照明装置1Bは、上記透過型の波長変換部材3Aの代わりに、反射型の波長変換部材3Bを備え、この波長変換部材3Bの配置に合わせて、レーザー光源2、レーザー光走査機構4及びリフレクター5の配置を変更した以外は、上記照明装置1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0034】
波長変換部材3Bは、上記波長変換部材3Aを構成する蛍光体プレートの背面側に反射板6を配置した構成を有している。反射板6は、波長変換部材3Bの正面側から入射したレーザー光BL及び波長変換部材3B内で励起された蛍光光YLを波長変換部材3Bの正面側に向けて反射する。
【0035】
本実施形態の照明装置1Bでは、波長変換部材3Bの正面に向かって照射されたレーザー光(青色光)BLの一部が拡散しながら波長変換部材3Bで反射されると共に、レーザー光BLの照射により波長変換部材3A内の黄色蛍光体粒子が励起されることで、蛍光光(黄色光)YLを発しながら、これら青色光と黄色光との混色により照明光(白色光)WLを前方の投影レンズ200に向けて出射することが可能となっている。
【0036】
(車両用灯具)
本実施形態の車両用灯具100では、上述した照明装置1A,1Bを備えることによって、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成する照明光WLや、走行用ビーム(ハイビーム)として、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成する照明光WLを、投影レンズ200により車両の前方に向けて投影することが可能である。
【0037】
また、本実施形態の車両用灯具100では、レーザー光BLの走査によって、車両の前方に向けて投影される照明光WLの配光パターンを可変に制御する配光可変ヘッドランプ(ADB)とすることも可能である。
【0038】
さらに、本実施形態の車両用灯具100では、運転時の安全性の向上を図るため、車両の前方に向けて投影される照明光WLとは別に、レーザー光BLの走査によって、画像(描画用配光パターン)を形成する描画光を投影レンズ200により路面に向かって投影することも可能である。
【0039】
以上のような構成を有する本実施形態の照明装置1A,1Bでは、上述したレーザー光走査機構4により走査されるレーザー光BLの波長変換部材3A,3Bに対する入射角が、波長変換部材3A,3Bが破損、欠損又は脱落したときに、投影レンズ200に対してレーザー光BLが直接入射しない角度に設定されている。
【0040】
これにより、本実施形態の照明装置1A,1Bを備える車両用灯具100では、波長変換部材3A,3Bに欠陥や破損、脱落等が生じた場合でも、レーザー光走査機構4により走査されるレーザー光BLが投影レンズ200を通して外部に直接出射されることを防止することが可能である。
【0041】
また、本実施形態の照明装置1A,1Bでは、
図3及び
図4に示すように、波長変換部材3を平面視したときに、レーザー光BLの走査範囲Sの中心Pがレーザー光照射領域Eの中心Oに対してレーザー光走査機構4が配置された側とは反対側に位置している。
【0042】
ここで、上記照明装置1A,1Bでは、上述した透過型の波長変換部材3Aと反射型の波長変換部材3Bとの配置に合わせて、レーザー光源2、レーザー光走査機構4及びリフレクター5の配置を変更した以外は、基本的に同じ構成を有している。
【0043】
したがって、以下の説明では、透過型の波長変換部材3Aと反射型の波長変換部材3Bとを「波長変換部材3」としてまとめて扱うものとし、
図3及び
図4において透過型の照明装置1Aを例示しながら、その説明を行うものの、反射型の照明装置1Bにも同様に本発明を適用することが可能である。
【0044】
なお、
図3は、レーザー光照射領域Eの中心Oとレーザー光BLの走査範囲Sの中心Pとの位置関係を示す照明装置1Aの正面図である。
図4は、レーザー光照射領域Eの中心Oとレーザー光BLの走査範囲Sの中心Pとの位置関係を示す照明装置1Aの上面図である。また、
図3及び
図4では、リフレクター5の図示を省略するものとする。
【0045】
具体的に、この波長変換部材3は、
図3に示すように、レーザー光BLの走査範囲Sに応じた配光パターンに対応して、平面視(X軸方向視)で矩形(長方形)状のレーザー
光照射領域Eを有している。また、レーザー
光照射領域Eの長手方向が配光パターンの左右方向(Y軸方向)に対応し、レーザー
光照射領域Eの短手方向が配光パターンの上下方向(Z軸方向)に対応している。
【0046】
したがって、レーザー光照射領域Eは、波長変換部材3を平面視したときに、配光パターンの左右方向に対応した幅が、配光パターンの上下方向に対応した高さよりも長い、いわゆる横長形状を有している。なお、レーザー光照射領域Eについては、波長変換部材3を平面視したときに、配光パターンの左右方向に対応した幅と、配光パターンの上下方向に対応した高さとが等しい、いわゆる正方形状を有していてよい。
【0047】
また、車両用灯具100に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、車両用灯具100の前方に向けて照射される照明光WLを投影したときの配光パターンも横長形状となる。これに伴って、波長変換部材3のレーザー光照射領域Eに対するレーザー光Lの走査範囲Sも横長となるように、レーザー光走査機構4の配置及びその制御を行う。
【0048】
具体的に、レーザー
光走査機構4は、
図3及び
図4に示すように、このような横長の波長変換部材3を挟んだ配光パターンの長手方向となる左側(一方側)と右側(他方側)との何れか(本実施形態では左側)に配置されている。これに対して、レーザー光BLの走査範囲Sの中心Pは、レーザー光照射領域Eの中心Oに対してレーザー光走査機構4が配置された側とは反対側(本実施形態では右側)に位置している。このとき、
図4に示すように、レーザー光照射領域Eの中心Oに入射するレーザー光BLの入射角をθaとする。
【0049】
一方、比較として、レーザー光照射領域Eの中心Oにレーザー光BLの走査範囲Sの中心Pが位置する場合を
図5に示す。このとき、
図5に示すように、レーザー光照射領域Eの中心Oに入射するレーザー光BLの入射角をθbとする。
【0050】
上述したレーザー光BLの波長変換部材3に対する入射角が投影レンズ200に対してレーザー光BLが直接入射しない角度に設定された場合、レーザー
光走査機構4のMEMSミラーを同一の振れ角で動作させたと仮定すると、
図4に示す入射角θaの方が、
図5に示す入射角θbよりも小さくすることが可能である。
【0051】
したがって、本実施形態の照明装置1A,1Bを備える車両用灯具100では、上述したレーザー光BLの走査範囲Sの中心Pがレーザー光照射領域Eの中心Oに対してレーザー光走査機構4が配置された側とは反対側に位置することで、波長変換部材3に照射されるレーザー光BLのスポットサイズを小さくすることが可能である。これにより、上述したADBにより形成される配光パターンの解像度を高めることが可能である。
【0052】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図6及び
図7に示す照明装置1Cを備えた車両用灯具100について説明する。
【0053】
なお、
図6は、照明装置1Cを備えた車両用灯具100の構成を示す模式図である。
図7は、照明装置1Cのレーザー光照射領域Eの中心Oと、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1及び右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2との位置関係を示す正面図である。
【0054】
また、以下の説明では、上記照明装置1A,1Bと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。また、透過型の波長変換部材3Aと反射型の波長変換部材3Bとを「波長変換部材3」としてまとめて扱うものとし、
図6及び
図7において透過型の照明装置1Cを例示しながら、その説明を行うものの、反射型の照明装置にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0055】
本実施形態の照明装置1Cを備えた車両用灯具100は、
図6及び
図7に示すように、波長変換部材3を挟んだ配光パターンの左側(一方側)に対応した位置に配置されたレーザー光源3A及びレーザー
光走査機構4Aと、配光パターンの右側(他方側)に対応した位置に配置されたレーザー光源3B及びレーザー
光走査機構4Bとを有している。それ以外は、上記照明装置1Aを備えた車両用灯具100と基本的に同じ構成を有している。
【0056】
左側のレーザー光走査機構4Aは、左側のレーザー光源2Aからレーザー光照射領域Eに向けて照射される左側(一方)のレーザー光BL1を走査することによって、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1に応じた配光パターンを形成する。
【0057】
右側のレーザー光走査機構4Bは、右側のレーザー光源2Aからレーザー光照射領域Eに向けて照射される右側(他方)のレーザー光BL2を走査することによって、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2に応じた配光パターンを形成する。
【0058】
本実施形態の照明装置1Cでは、これら左側のレーザー光BL1の走査範囲S1に応じた配光パターンと、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成している。
【0059】
以上のような構成を有する本実施形態の照明装置1Cでは、上述した左側及び右側のレーザー光走査機構4A,4Bにより走査される左側及び右側のレーザー光BL1,BL2の波長変換部材3に対する入射角が、波長変換部材3が破損、欠損又は脱落したときに、投影レンズ200に対してレーザー光BL1,BL2が直接入射しない角度に設定されている。
【0060】
これにより、本実施形態の照明装置1Cを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に欠陥や破損、脱落等が生じた場合でも、左側及び右側のレーザー光走査機構4A,4Bにより走査される左側及び右側のレーザー光BL1,BL2が投影レンズ200を通して外部に直接出射されることを防止することが可能である。
【0061】
また、本実施形態の照明装置1Cでは、上述した波長変換部材3を平面視したときに、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して左側のレーザー光走査機構4Aが配置された側とは反対側(右側)に位置している。これに対して、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して右側のレーザー光走査機構4Bが配置された側とは反対側(左側)に位置している。
【0062】
これにより、本実施形態の照明装置1Cを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に照射される左側及び右側のレーザー光BL1,BL2のスポットサイズを小さくすることが可能である。その結果、上述したADBにより形成される配光パターンの解像度を高めることが可能である。
【0063】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図8及び
図9に示す照明装置1Dを備えた車両用灯具100について説明する。
【0064】
なお、
図8は、照明装置1Dを備えた車両用灯具100の構成を示す模式図である。
図9は、照明装置1Dのレーザー光照射領域Eの中心Oと、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2及び上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3との位置関係を示す正面図である。
【0065】
また、以下の説明では、上記照明装置1Cと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。また、透過型の波長変換部材3Aと反射型の波長変換部材3Bとを「波長変換部材3」としてまとめて扱うものとし、
図8及び
図9において透過型の照明装置1Dを例示しながら、その説明を行うものの、反射型の照明装置にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0066】
本実施形態の照明装置1Dを備えた車両用灯具100は、
図8及び
図9に示すように、上記照明装置1Cの構成に追加して、波長変換部材3を挟んだ配光パターンの短手方向となる上側(一方側)と下側(他方側)との何れか(本実施形態では上側)に追加して配置されたレーザー光源2C及びレーザー
光走査機構4Cを有している。
【0067】
上側のレーザー光走査機構4Cは、上側のレーザー光源2Cからレーザー光照射領域Eに向けて照射される上側(追加)のレーザー光BL3を走査することによって、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3に応じた配光パターンを形成する。
【0068】
本実施形態の照明装置1Dでは、これら左側のレーザー光BL1の走査範囲S1に応じた配光パターンと、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2に応じた配光パターンと、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成している。
【0069】
また、本実施形態の照明装置1Dでは、波長変換部材3を平面視したときに、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3が、上側のレーザー光走査機構4Cの中心Q1を通る配光パターンの上下方向に対応した鉛直ラインVL1と、レーザー光照射領域Eの中心Oを通る配光パターンの左右方向に対応した水平ラインHLとの交点に位置している。
【0070】
なお、本実施形態では、上側のレーザー光走査機構4Cが波長変換部材3を挟んだ上部中央側に位置するため、上述した上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3がレーザー光照射領域Eの中心Oと一致した位置にある。
【0071】
以上のような構成を有する本実施形態の照明装置1Dでは、上述した左側、右側及び上側のレーザー光走査機構4A,4B,4Cにより走査される左側、右側及び上側のレーザー光BL1,BL2,BL3の波長変換部材3に対する入射角が、波長変換部材3が破損、欠損又は脱落したときに、投影レンズ200に対してレーザー光BL1,BL2,BL3が直接入射しない角度に設定されている。
【0072】
これにより、本実施形態の照明装置1Dを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に欠陥や破損、脱落等が生じた場合でも、左側、右側及び上側のレーザー光走査機構4A,4B,4Cにより走査される左側、右側及び上側のレーザー光BL1,BL2,BL3が投影レンズ200を通して外部に直接出射されることを防止することが可能である。
【0073】
また、本実施形態の照明装置1Dでは、上述した波長変換部材3を平面視したときに、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して左側のレーザー光走査機構4Aが配置された側とは反対側(右側)に位置している。これに対して、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して右側のレーザー光走査機構4Bが配置された側とは反対側(左側)に位置している。
【0074】
これにより、本実施形態の照明装置1Dを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に照射される左側及び右側のレーザー光BL1,BL2のスポットサイズを小さくすることが可能である。その結果、上述したADBにより形成される配光パターンの解像度を高めることが可能である。
【0075】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば
図10及び
図11に示す照明装置1Eを備えた車両用灯具100について説明する。
【0076】
なお、
図10は、照明装置1Eを備えた車両用灯具100の構成を示す模式図である。
図11は、照明装置1Eのレーザー光照射領域Eの中心Oと、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3及び下側のレーザー光BL4の走査範囲S4の中心P4との位置関係を示す正面図である。
【0077】
また、以下の説明では、上記照明装置1Cと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。また、透過型の波長変換部材3Aと反射型の波長変換部材3Bとを「波長変換部材3」としてまとめて扱うものとし、
図10及び
図11において透過型の照明装置1Eを例示しながら、その説明を行うものの、反射型の照明装置にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0078】
本実施形態の照明装置1Eを備えた車両用灯具100は、
図10及び
図11に示すように、上記照明装置1Cの構成に追加して、波長変換部材3を挟んだ配光パターンの短手方向となる上側(一方側)に対応して配置された上側のレーザー光源2C及びレーザー
光走査機構4Cと、配光パターンの短手方向となる下側(他方側)に対応して配置された下側のレーザー光源2D及びレーザー
光走査機構4Dとを有している。
【0079】
上側のレーザー光走査機構4Cは、上側のレーザー光源2Cからレーザー光照射領域Eに向けて照射される上側のレーザー光BL3を走査することによって、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3に応じた配光パターンを形成する。
【0080】
下側のレーザー光走査機構4Cは、下側のレーザー光源2Dからレーザー光照射領域Eに向けて照射される下側のレーザー光BL4を走査することによって、下側のレーザー光BL4の走査範囲S4に応じた配光パターンを形成する。
【0081】
本実施形態の照明装置1Eでは、これら左側のレーザー光BL1の走査範囲S1に応じた配光パターンと、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2に応じた配光パターンと、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3に応じた配光パターンと、下側のレーザー光BL4の走査範囲S4に応じた配光パターンとの重ね合わせによって、1つの合成配光パターンを形成している。
【0082】
また、本実施形態の照明装置1Eでは、波長変換部材3を平面視したときに、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3が、上側のレーザー光走査機構4Cの中心Q1を通る配光パターンの上下方向に対応した鉛直ラインVL1と、レーザー光照射領域Eの中心Oを通る配光パターンの左右方向に対応した水平ラインHLとの交点に位置している。これに対して、下側のレーザー光BL4の走査範囲S4の中心P4が、下側のレーザー光走査機構4Dの中心Q2を通る配光パターンの上下方向に対応した鉛直ラインVL2と、レーザー光照射領域Eの中心Oを通る配光パターンの左右方向に対応した水平ラインHLとの交点に位置している。
【0083】
なお、本実施形態では、上側のレーザー光走査機構4Cが波長変換部材3を挟んだ上部中央側に位置し、下側のレーザー光走査機構4Cが波長変換部材3を挟んだ下部中央側に位置するため、上述した上側及び下側のレーザー光BL3,BL4の走査範囲S3,S4の中心P3,P4がレーザー光照射領域Eの中心Oと一致した位置にある。
【0084】
以上のような構成を有する本実施形態の照明装置1Eでは、上述した左側、右側、上側及び下側のレーザー光走査機構4A,4B,4C,4Dにより走査される左側、右側、上側及び下側のレーザー光BL1,BL2,BL3,BL4の波長変換部材3に対する入射角が、波長変換部材3が破損、欠損又は脱落したときに、投影レンズ200に対してレーザー光BLが直接入射しない角度に設定されている。
【0085】
これにより、本実施形態の照明装置1Eを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に欠陥や破損、脱落等が生じた場合でも、左側、右側、上側及び下側のレーザー光走査機構4A,4B,4C,4Dにより走査される左側、右側、上側及び下側のレーザー光BL1,BL2,BL3,BL4が投影レンズ200を通して外部に直接出射されることを防止することが可能である。
【0086】
また、本実施形態の照明装置1Eでは、上述した波長変換部材3を平面視したときに、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して左側のレーザー光走査機構4Aが配置された側とは反対側(右側)に位置している。これに対して、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して右側のレーザー光走査機構4Bが配置された側とは反対側(左側)に位置している。
【0087】
これにより、本実施形態の照明装置1Eを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に照射される左側及び右側のレーザー光BL1,BL2のスポットサイズを小さくすることが可能である。その結果、上述したADBにより形成される配光パターンの解像度を高めることが可能である。
【0088】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態として、例えば
図12及び
図13に示す照明装置1Fを備えた車両用灯具100について説明する。
【0089】
なお、
図10は、照明装置1Fを備えた車両用灯具100の構成を示す模式図である。
図11は、照明装置1Fのレーザー光照射領域Eの中心Oと、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3及び下側のレーザー光BL4の走査範囲S4の中心P4との位置関係を示す正面図である。
【0090】
また、以下の説明では、上記照明装置1Eと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。また、透過型の波長変換部材3Aと反射型の波長変換部材3Bとを「波長変換部材3」としてまとめて扱うものとし、
図10及び
図11において透過型の照明装置1Fを例示しながら、その説明を行うものの、反射型の照明装置にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0091】
本実施形態の照明装置1Fを備えた車両用灯具100は、
図12及び
図13に示すように、上記照明装置1Eの構成うち、上側のレーザー光源2C及びレーザー
光走査機構4Cが波長変換部材3を挟んだ配光パターンの長手方向となる左側(一方側)にずらして配置されると共に、下側のレーザー光源2D及びレーザー
光走査機構4Dが波長変換部材3を挟んだ配光パターンの長手方向となる右側(他方側)にずらして配置された構成を有している。
【0092】
これにより、本実施形態の照明装置1Fでは、波長変換部材3を平面視したときに、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3と、下側のレーザー光BL4の走査範囲S4の中心P4とが、レーザー光照射領域Eの中心Oを挟んだ左側と右側とに位置している。
【0093】
以上のような構成を有する本実施形態の照明装置1Fでは、上述した左側、右側、上側及び下側のレーザー光走査機構4A,4B,4C,4Dにより走査される左側、右側、上側及び下側のレーザー光BL1,BL2,BL3,BL4の波長変換部材3に対する入射角が、波長変換部材3が破損、欠損又は脱落したときに、投影レンズ200に対してレーザー光BLが直接入射しない角度に設定されている。
【0094】
これにより、本実施形態の照明装置1Fを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に欠陥や破損、脱落等が生じた場合でも、左側、右側、上側及び下側のレーザー光走査機構4A,4B,4C,4Dにより走査される左側、右側、上側及び下側のレーザー光BL1,BL2,BL3,BL4が投影レンズ200を通して外部に直接出射されることを防止することが可能である。
【0095】
また、本実施形態の照明装置1Fでは、上述した波長変換部材3を平面視したときに、左側のレーザー光BL1の走査範囲S1の中心P1が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して左側のレーザー光走査機構4Aが配置された側とは反対側(右側)に位置している。これに対して、右側のレーザー光BL2の走査範囲S2の中心P2が、レーザー光照射領域Eの中心Oに対して右側のレーザー光走査機構4Bが配置された側とは反対側(左側)に位置している。
【0096】
これにより、本実施形態の照明装置1Fを備える車両用灯具100では、波長変換部材3に照射される左側及び右側のレーザー光BL1,BL2のスポットサイズを小さくすることが可能である。その結果、上述したADBにより形成される配光パターンの解像度を高めることが可能である。
【0097】
さらに、本実施形態の照明装置1Fでは、上述した波長変換部材3を平面視したときに、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3の中心P3が、レーザー光照射領域Eの中心Oを挟んだ左側に位置している。これに対して、下側のレーザー光BL4の走査範囲S4の中心P4が、レーザー光照射領域Eの中心Oを挟んだ右側に位置している。
【0098】
ここで、
図12に示す上側のレーザー光走査機構4Cが波長変換部材3を挟んだ配光パターンの長手方向となる右側に位置する場合において、
図14に示すように、レーザー光照射領域Eの右側の端部に入射する上側のレーザー光BL3の波長変換部材3の法線(X軸)に対する入射角をθcとし、その上側のレーザー光BLの入射ベクトルVcとする。
【0099】
一方、比較として、上記
図8に示す上側のレーザー光走査機構4Cが波長変換部材3を挟んだ上部中央側に位置する場合において、
図15に示すように、レーザー光照射領域Eの右側の端部に入射する上側のレーザー光BL3の波長変換部材3の法線(X軸)に対する入射角をθdとし、その上側のレーザー光BL3の入射ベクトルVdとする。
【0100】
上述したレーザー光BLの波長変換部材3に対する入射角が、投影レンズ200に対してレーザー光BLが直接入射しない角度に設定された場合、レーザー
光走査機構4のMEMSミラーを同一の振れ角で動作させたと仮定すると、
図14に示す入射角θcの方が、
図15に示す入射角θdよりも小さくすることが可能である。
【0101】
ところで、レーザー光走査機構4として、共振型のMEMSミラーを用いた場合、正弦波の駆動信号に従ってMEMSミラーに駆動電圧を印加すると、MEMSミラーを往復揺動させたときの速度は、レーザー光照射領域Eの中心付近で最大となり、レーザー光照射領域Eの左右の両端付近で最小となる。これに伴って、速度が小さくなるレーザー光照射領域Eの左右の両端付近では、レーザー光照射領域Eの面内における光度分布が相対的に高くなる。
【0102】
この光度分布を光学的に補正する手段として、補正ミラーを用いることができる。補正ミラーは、輝度が高くなるレーザー光照射領域Eの左右の両端付近を光学的に引き伸ばすことで、光度分布を平坦化することができる。但し、これに伴って、レーザー光照射領域Eの左右の両端付近でスポットサイズが大きくなってしまう。また、レーザー光BLの走査範囲Sが広いほど、レーザー光照射領域Eの左右の両端付近での補正が必要となり、スポットサイズが大きくなってしまう。
【0103】
これに対して、上側のレーザー光走査機構4は、上述した上側のレーザー光BL3の走査範囲Sの中心P3をレーザー光照射領域Eの中心Oに対して右側にずらすことによって、レーザー光照射領域Eの面内における光度分布の左右の端部付近での入射角θcを小さくすることができる。これにより、上側のレーザー光BL3の走査範囲S3を小さくすることができ、レーザー光照射領域Eの左右の両端付近でスポットサイズが大きくなることを防ぐことが可能である。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0105】
本実施例では、実施例1-1,1-2、実施例2-1,2-2、実施例3-1,3-2、実施例4-1,4-2の各照明装置を用いて、
図16に示すように、投影レンズ200により照明装置の前方に向けて照明光WLを照射し、照明装置に正対した仮想鉛直スクリーンSCに対して、波長変換部材3の面内に形成された配光パターンDPの光源像を投影するシミュレーションを行った。
【0106】
また、
図16中に示す線分Y-Yによる配光パターンDPの断面(配光パターンDPの長手方向に沿った断面)において、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足するように、各照明装置から照射される照明光WLの調整を行った。
【0107】
(実施例1-1,1-2)
実施例1-1では、上記照明装置1Dに対応した透過型の照明装置を用いた。また、左側、右側及び上側のレーザー光走査機構4A,4B,4Cのうち、左側を「MEMS1」、右側を「MEMS2」、上側を「MEMS3」とし、これら3つのMEMS1~MEMS3によるレーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3及びその中心P1~P3を下記表1に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0108】
【0109】
なお、表1では、各走査範囲S1~S3の中心P1~P3について、水平ラインHL上におけるレーザー光照射領域Eの中心Oを0[mm]とし、このレーザー光照射領域Eの中心Oに対して左側をマイナス(-)側とし、右側をプラス(+)側として表している。また、走査範囲S1~S3は、水平ラインHL上における走査幅である。また、以下に示す表2~表8についても同様に表すものとする。
【0110】
一方、実施例1-2では、実施例1-1の照明装置のうち、3つのMEMS1~MEMS3によるレーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3及びその中心P1~P3を下記表2に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0111】
すなわち、実施例1-2は、実施例1-1との比較として、各MEMS1~MEMS3によるレーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3の中心P1~P3をそれぞれレーザー光照射領域Eの中心Oと一致させた場合である。
【0112】
【0113】
(実施例2-1,2-2)
実施例2-1では、上記照明装置1Dに対応した反射型の照明装置を用いた。また、3つのMEMS1~MEMS3によるレーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3及びその中心P1~P3を下記表3に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0114】
【0115】
一方、実施例2-2では、実施例2-1の照明装置のうち、3つのMEMS1~MEMS3によるレーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3及びその中心P1~P3を下記表4に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0116】
すなわち、実施例2-2は、実施例2-1との比較として、各MEMS1~MEMS3によるレーザー光BL1~BL3の走査範囲S1~S3の中心P1~P3をそれぞれレーザー光照射領域Eの中心Oと一致させた場合である。
【0117】
【0118】
(実施例3-1,3-2)
実施例3-1では、上記照明装置1Fに対応した透過型の照明装置を用いた。また、左側、右側、上側及び下側のレーザー光走査機構4A,4B,4C,4Dのうち、左側を「MEMS1」、右側を「MEMS2」、上側を「MEMS3」、下側を「MEMS4」とし、これら4つのMEMS1~MEMS4によるレーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4及びその中心P1~P4を下記表5に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0119】
【0120】
一方、実施例3-2では、実施例3-1の照明装置のうち、4つのMEMS1~MEMS4によるレーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4及びその中心P1~P4を下記表6に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0121】
すなわち、実施例3-2は、実施例3-1との比較として、各MEMS1~4によるレーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4の中心P1~P4をそれぞれレーザー光照射領域Eの中心Oと一致させた場合である。
【0122】
【0123】
(実施例4-1,4-2)
実施例4-1では、上記照明装置1Fに対応した反射型の照明装置を用いた。また、4つのMEMS1~MEMS4によるレーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4及びその中心P1~P4を下記表7に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0124】
【0125】
一方、実施例4-2では、実施例4-1の照明装置のうち、4つのMEMS1~MEMS4によるレーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4及びその中心P1~P4を下記表8に示すように調整し、各レーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4に応じた配光パターンの重ね合わせによって、
図17に示すようなハイビーム用配光パターンの光度分布を満足する配光パターンDPを形成した。
【0126】
すなわち、実施例4-2は、実施例4-1との比較として、各MEMS1~4によるレーザー光BL1~BL4の走査範囲S1~S4の中心P1~P4をそれぞれレーザー光照射領域Eの中心Oと一致させた場合である。
【0127】
【0128】
本実施例では、上述した実施例1-1,1-2、実施例2-1,2-2、実施例3-1,3-2、実施例4-1,4-2の各照明装置について、各MEMS1~MEMS3(MEMS4)からレーザー光照射領域Eの中心Oに入射するレーザー光BL1~BL3(BL4)の入射角[°]を計算し、その入射角の最大値(MAX)を求めた。その結果をまとめたものを下記表9に示す。
【0129】
【0130】
また、本実施例では、上述した実施例1-1,1-2、実施例2-1,2-2、実施例3-1,3-2、実施例4-1,4-2の各照明装置について、各MEMS1~MEMS3(MEMS4)からレーザー光照射領域Eの中心Oに入射するレーザー光BL1~BL3(BL4)のスポットサイズを計算し、入射角が0°となるときのスポットサイズに対する比率(入射比)を求め、更に、その最大値(MAX)を求めた。その結果をまとめたものを下記表10に示す。
【0131】
【0132】
表9及び表10に示すように、実施例1-1,2-1,3-1,4-1の照明装置は、実施例1-2,2-2,3-2,4-2の照明装置に比べて、各MEMS1~MEMS3(MEMS4)からレーザー光照射領域Eの中心Oに入射するレーザー光BL1~BL3(BL4)の入射角及びスポットサイズを小さくすることが可能である。
【0133】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、上記照明装置1A~1Fでは、上述した波長変換部材3A,3Bが破損、欠損又は脱落したときに、投影レンズ200に対してレーザー光BLが直接入射しない角度に設定されているため、このレーザー光走査機構4により走査されるレーザー光BLを吸収又は遮光するための吸光部又は遮光部を灯体の内側に設けることが好ましい。吸光部又は遮光部としては、レーザー光BLを吸収又は遮光する吸光部材又は遮光部材を配置した構成とすればよい。
【0134】
上記波長変換部材3A,3Bについては、上述した実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、その構成や材質等について適宜選択して用いることが可能である。
【0135】
例えば、[1]波長変換部材3A,3Bとしては、蛍光体プレートの成形体を基板に接合又は接着したものや、[2]基板の上に蛍光体層(波長変換層)を形成したものなどを用いることができる。
【0136】
また、透過型の波長変換部材3Aの場合、透明セラミック基板やガラス基板などの透明基板を用いることができる。一方、反射型の波長変換部材3Bの場合、金属基板の他に、セラミック基板やガラス基板などの表面に反射膜を形成した反射基板を用いることができる。
【0137】
上記[1]の場合、例えば、単結晶蛍光体や蛍光体セラミック、蛍光体分散ガラス、蛍光体分散樹脂シート等などを用いることができる。また、接着剤として、例えば、有機系接着剤や無機系接着剤等の中で透明な接着剤が用いられる。
【0138】
一方、上記[2]の場合、例えば、セラミックバインダーやガラスバインダー、樹脂バインダー中に蛍光体粒子を分散させたものを、ディスペンス法や回転塗工法、印刷法、スプレー法等を用いて、基板上に塗工したものを用いることができる。
【0139】
蛍光体粒子としては、例えば、酸化物蛍光体や窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、硫化物蛍光体、フッ化物蛍光体等を粒状化したものを用いることができる。なお、蛍光体層の厚みや蛍光体粒子の粒径(D50)については、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。また、蛍光体層の上に、更に透明保護層を設けてもよい。透明保護層としては、例えば、ガラスやセラミック等の無機物や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0140】
上記レーザー光走査機構4については、圧電方式や静電方式、電磁方式のMEMSミラーを用いることができる。また、MEMSミラーについては、波長変換部材3A,3Bの面内でレーザー光BLを走査するため、2軸タイプのもの又は1軸タイプのものを2つ用いることができる。
【0141】
また、圧電方式の2軸タイプものとしては、1軸共振・1軸非共振タイプ、2軸共振タイプ、2軸非共振タイプなどが挙げられる。さらに、1軸共振・1軸非共振タイプの場合、波長変換部材3A,3Bの面内におけるX軸とY軸とのどちらに非共振軸と共振軸とを割り当ててもよい。
【0142】
上記リフレクター5については、上述した平面ミラーに限らず、波長変換部材3A,3Bに向けて反射されるレーザー光BLの歪みを補正する曲面ミラーを用いることも可能である。また、歪み補正用のレンズをリフレクター5と波長変換部材3A,3Bとの間に配置することも可能である。
【0143】
上記投影レンズ200については、単体のレンズに限らず、複数のレンズを組み合わせたもの(群レンズ)を用いてもよい。また、レンズは、球面タイプに限らず、非球面タイプのものを用いてもよい。
【0144】
また、本発明を適用した照明装置は、上述した車両用灯具に対して好適に用いられるものの、車両用灯具以外の用途にも幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0145】
1A~1F…照明装置 2,2A,2B,2C,2D…レーザー光源 3,3A,3B…波長変換部材 4,4A,4B,4C,4D…レーザー光走査機構 5…リフレクター 6…反射板 100…車両用灯具 200…投影レンズ BL…レーザー光 YL…蛍光光 WL…照明光 E…レーザー光照射領域 O…レーザー光照射領域の中心 S,S1,S2,S3,S4…レーザー光の走査範囲 P,P1,P2,P3,P4…レーザー光の走査範囲の中心 Q1,Q2…レーザー光走査機構の中心 VL…鉛直ライン HL…水平ライン