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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】マット材
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20231109BHJP
   D04H 1/4209 20120101ALI20231109BHJP
   B01J 33/00 20060101ALI20231109BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
F01N3/28 311P
D04H1/4209 ZAB
B01J33/00 G
B01D53/94 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020015422
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021124019
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】斎木 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
(72)【発明者】
【氏名】向後 雄太
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233433(JP,A)
【文献】実開平02-050012(JP,U)
【文献】特開2019-105210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
D04H 1/4209
B01J 33/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、
前記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、
前記帯状体は、空隙を有し、
前記帯状体は網であり、前記空隙が前記網を構成する網目である、又は、前記帯状体はパンチングメッシュであり、前記空隙が前記パンチングメッシュに設けられたパンチ孔であることを特徴とするマット材。
【請求項2】
前記帯状体は、有機材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む請求項1に記載のマット材。
【請求項3】
前記帯状体は、前記パンチングメッシュであり、
前記帯状体中の前記空隙は、ランダムに配置されている請求項1又は2に記載のマット材。
【請求項4】
前記帯状体は前記積層マットと接着されていない請求項1~のいずれかに記載のマット材。
【請求項5】
前記帯状体の目付量は5~500g/mである請求項1~のいずれかに記載のマット材。
【請求項6】
前記帯状体の空隙率は、50%を超えている請求項1~のいずれかに記載のマット材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材(マット材ともいう)とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
ここで、内燃機関については、燃費の向上を目的として理論空燃比に近い条件で運転するため、排ガスが高温化及び高圧化する傾向にある。排ガス浄化装置に高温及び高圧の排ガスが到達すると、排ガス処理体とケーシングとの熱膨張の差によってこれらの間の間隔が変動する。つまり、排ガス処理体とケーシングとの間隔は、低温時に比べて高温時には大きくなる。そのため、保持シール材には、多少の間隔の変動によっても排ガス処理帯の位置が変化しない、排ガス処理体の保持力が要求される。また、排ガス処理体の排ガス処理性能を有効に発揮させるために、排ガス処理体を保温する保温機能を有する保持シール材への要求も高まりつつある。
【0005】
これらの要求を満たすために、近年では、保持シール材の厚さを厚くして保温性能を高めようとする設計手法も採られている。こうした保持シール材において、保持力の要因たる無機繊維の反発力を確保するには、保持シール材の単位面積当たりの重量を大きくする必要がある。
【0006】
一方、保持シール材ごとの厚さを変更するのではなく、従来と同様の重量を有するマットを複数枚組み合わせることで重量を大きくした保持シール材も提案されている。このような保持シール材として、特許文献1には、積層された複数枚のマットが固着力を有していない帯状体で結束された保持シール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-233433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、帯状体として紙、フィルム、布及びゴム等を用いることを開示している。
しかしながら、特許文献1が開示する帯状体は分解ガスの発生量が多いという課題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、複数枚のマットが積層された積層マットに帯状体を巻き付けてなるマット材であって、分解ガスの発生量を抑制することのできるマット材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明のマット材は、無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、上記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、上記帯状体は、空隙を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のマット材は、積層マットに巻き付けられた帯状体が空隙を有するため、分解ガスの発生量を抑制することができる。
【0012】
本発明のマット材では、上記帯状体は、有機材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むことが好ましい。
【0013】
本発明のマット材では、上記帯状体が有機繊維からなる不織布であり、上記空隙は、上記不織布を構成する繊維同士の隙間であることが好ましい。
有機繊維からなる不織布は、本発明のマット材を構成する帯状体として適当である。
【0014】
本発明のマット材では、上記帯状体がパンチングメッシュであり、上記空隙は、上記パンチングメッシュに設けられたパンチ穴であることが好ましい。
パンチングメッシュは、本発明のマット材を構成する帯状体として適当である。
【0015】
本発明のマット材では、上記帯状体中の上記空隙は、ランダムに配置されていることが好ましい。
帯状体の空隙がランダムに配置されていると、ランダムに配置された空隙にマットを構成する無機繊維が絡まり、ハンドリング時における積層マットの配置ずれを抑制することができる。
【0016】
本発明のマット材では、上記帯状体が網であり、上記空隙は、上記網を構成する網目であることが好ましい。
網は、本発明のマット材を構成する帯状体として適当である。
【0017】
本発明のマット材では、上記帯状体は上記積層マットと接着されていないことが好ましい。
帯状体が積層マットと接着されていないと、積層マットを構成するマットの位置を調整することができる。
【0018】
本発明のマット材では、上記帯状体の目付量は5~500g/mであることが好ましい。
帯状体の目付量が5~500g/mであると、積層マットを結束するのに充分な機械的強度を備える。
【0019】
本発明のマット材では、上記帯状体の空隙率は、50%を超えていることが好ましい。
帯状体の空隙率が50%を超えていると、分解ガスの発生をさらに抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すマット材のA-A線断面図である。
図3図3は、マット材の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【0021】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のマット材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0022】
本発明のマット材は、無機繊維を含む平面視矩形のマットが複数枚積層された積層マットと、上記積層マットに巻き付けられた帯状体とからなるマット材であって、上記帯状体は、空隙を有することを特徴とする。
【0023】
本発明のマット材において、帯状体は空隙を有する。
帯状体が空隙を有すると、分解ガスの発生量を抑制することができる。
【0024】
帯状体を構成する材料は特に限定されないが、有機材料、セラミック材料及び金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むことが好ましい。
【0025】
有機材料からなる帯状体としては、有機繊維からなる不織布、樹脂フィルム等が挙げられる。
不織布は、有機繊維同士の隙間が空隙となる。
【0026】
有機材料からなる帯状体は、ポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましい。
これらの材料は柔軟性及び弾性に優れており、ヒートシールにより積層マットに接着することができるため好ましい。
【0027】
有機繊維からなる不織布としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維にPE(ポリエチレン)パウダーが融着したものが挙げられる。
他に使用できる有機繊維としては、PP(ポリプロピレン)、レーヨン等が挙げられる。
【0028】
樹脂フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等の有機材料で構成されていることが好ましい。
樹脂フィルムは、中空粒子を含むものや、パンチ穴が設けられているものであればよい。中空粒子内部の空間及びパンチ穴が空隙となる。
【0029】
帯状体がセラミック材料からなる場合、セラミック材料は、特に限定されない。例えば、アルミナ、シリカ、チタニア等のシートが挙げられる。また、セラミック繊維からなる布でもよく、アルミナクロス、シリカクロス、チタニアクロス等が挙げられる。
セラミック材料からなるシートは、中空粒子を含むものや、パンチ穴が設けられているものであればよい。中空粒子内部の空間及びパンチ穴が空隙となる。
セラミック繊維からなる布の場合、セラミック繊維同士の隙間が空隙となる。
【0030】
また、有機繊維や無機繊維を編んだ網も帯状体として好ましい。
この場合、網目が空隙となる。
【0031】
帯状体が金属材料からなる場合、金属材料は、特に限定されない。例えば、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等のシートが挙げられる。また、金属繊維からなるメッシュでもよく、ステンレスメッシュ、アルミメッシュ等が挙げられる。
ただし、金属材料からなるシートはそれ自身が空隙を有していないため、空隙としてのパンチ穴が設けられたパンチングメッシュであることが好ましい。
【0032】
帯状体中の空隙は、規則的に配置されていてもよいが、ランダムに配置されていることが好ましい。
帯状体中の空隙がランダムに配置されていると、ランダムな空隙にマットを構成する無機繊維が絡まり、ハンドリング時における位置ずれを抑制することができる。
空隙がランダムに配置された帯状体としては、有機繊維からなる不織布が好ましい。
【0033】
帯状体の空隙率は、50%を超えていることが好ましく、70%を超えていることがより好ましい。帯状体の空隙率は、98%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
帯状体の空隙率は、以下の方法により求めることができる。
パンチングメッシュ等の、空隙の分布状態が帯状体の厚さ方向において変化しない場合には、帯状体の平面視面積に対して空隙が占める領域の割合が空隙率となる。
不織布の場合は、不織布の厚さと平面視面積より求められる見かけの体積をV、不織布の真密度をρ、不織布の重量をWとして、{1-[(W)/(ρ×V)]}×100(%)により空隙率を求めることができる。不織布の真密度はガス置換法やピクノメーター法により測定することができる。
中空粒子を含むシートの場合は、帯状体を厚さ方向に沿って切断した切断面をSEMにより観察し、10μm×10μmの領域を5箇所で撮影する。各拡大画像において、帯状体の面積に対する空隙の面積の割合を求め、平均値を空隙率とする。
【0034】
帯状体の目付量は特に限定されないが、5~500g/mであることが好ましく、10~100g/mであることがより好ましく、10~30g/mであることがさらに好ましい。
帯状体の目付量が5~500g/mであると、巻き付け性を阻害することがなく、マットの脱落が生じない程度に複数枚のマットの相対位置を安定させることができる。
目付量が5g/m未満の場合、帯状体の機械的強度が不足して、複数枚のマットの相対位置を安定させることができない場合がある。一方、目付量が500g/mを超える場合、巻き付け性の悪化や分解ガスの量の増加が懸念される。
【0035】
マット材を構成するマットは無機繊維からなる。無機繊維は、特に限定されず、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。また、ガラス繊維や生体溶解性繊維であってもよい。耐熱性や耐風蝕性等、マット材に要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
【0036】
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が好ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。
【0037】
積層マットにおいてマット材が積層される枚数は複数枚であれば特に限定されるものではない。2枚又は3枚であることが好ましく、2枚であることがより好ましい。
【0038】
積層マットの寸法の好ましい範囲は以下の通りである。
積層マットの長手方向の長さ(図1中、両矢印Lで示す長さで、第2の主面を有するマットの長手方向の長さ)が300~1500mmであることが好ましい。
積層マットの幅方向の長さ(図1中、両矢印Wで示す長さ)が30mmを超えることが好ましく、400mm以下であることが好ましい。
積層マットの厚さ(図1中、両矢印Tで示す長さ)が4~60mmであることが好ましい。
積層マットの厚さが4mm未満であると、その厚さが薄すぎるため、断熱性能や防音性能が低下してしまう。一方、積層マットの厚さが60mmを超えると、柔軟性が低下し、装着対象となる部材への装着性が低下する。
また、積層マットを構成するマット1枚の厚さは、複数枚のマットごとに異なっていても同じであってもよいが、1枚の厚さが2~30mmであることが好ましい。
【0039】
積層マットは、巻き付け方向となる長手方向と、長手方向に直交する短手方向を有する。
積層マットには、積層マットの長手方向側の端部のうち、一方の端部である第1の端部には凸部が形成されており、他方の端部である第2の端部には凹部が形成されていることが好ましい。積層マットの凸部及び凹部は、外周が円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管に積層マットを巻き付ける際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっていることが好ましい。
また、積層マットは凸部及び凹部が形成されていない形状であってもよいし、嵌合する部分の形状がL字型の組み合わせとなるような形状であってもよい。
【0040】
積層マットを構成するマットのかさ密度は、特に限定されるものではないが、0.05~0.30g/cmであることが望ましい。マットのかさ密度が0.05g/cm未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、マットの形状を所定の形状に保ちにくくなる。一方、マットのかさ密度が0.30g/cmを超えると、マットが硬くなり、装着対象となる部材への装着性が低下し、マットが割れやすくなる。
【0041】
積層マットを構成するマットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、抄造法又はニードリング法により製造することができる。
抄造法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
無機繊維を開繊し、開繊した無機繊維を溶媒中に分散させて混合液とする。底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込み、混合液中の溶媒を脱溶媒処理することで無機繊維集合体を得る。そして、無機繊維集合体を乾燥することによりマットを得ることができる。
ニードリング法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3~10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、焼成処理を施すことによりマットを得ることができる。この焼成処理の前後のいずれかにニードルパンチング処理を行い、無機繊維同士を交絡させる。
【0042】
積層マットを構成するマットの凸部及び凹部は、外周が円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻き付ける際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっていることが好ましい。
また、積層マットを構成するマットは凸部及び凹部が形成されていない形状であってもよい。
【0043】
以下に、図面を用いて本発明のマット材の例について説明する。
【0044】
図1は、マット材の一例を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示すマット材のA-A線断面図である。
図1及び図2に示すマット材10は、マットが複数枚積層されてなる積層マット20と、積層マット20に巻き付けられた帯状体30とからなる。
【0045】
積層マット20は、第1のマット21と第2のマット22の2枚が積層されてなる。
第1のマット21は、その長手方向(図1中、両矢印Lで示す方向)の長さが長いマットであり、第2のマット22は、その長手方向の長さが短いマットである。
積層マット20の長さは、積層マットを構成するマットのうち長手方向の長さが最も短いマットの長さ(図1中、両矢印Lで示す長さ)である。
長手方向における帯状体30の長さ(図1中、両矢印Lで示す長さ)は、積層マット20の長さLの30%を超えることが好ましい。
【0046】
積層マット20は2つの主面を有しており、マットの長手方向の長さが最も長い主面が第1の主面23であり、マットの長手方向の長さが最も短い主面が第2の主面24である。
第1の主面23は第1のマット21の下側の主面であり、第2の主面24は第2のマット22の上側の主面である。
【0047】
積層マット20は4つの側面を有しており、マットの長手方向に沿った側面が第1の長側面25及び第2の長側面26である。また、マットの幅方向(図1中、両矢印Wで示す方向)に沿った側面が第1の短側面27及び第2の短側面28である。
第1の短側面27には凹部、第2の短側面28には凸部がそれぞれ形成されている。凹部と凸部は、外周が円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、図1中、両矢印Tで示す方向がマット材の厚さ方向である。
【0048】
帯状体30は、積層マット20に連続的に巻き付けられている。
帯状体30が積層マット20に巻きつけられることにより、積層マット20の第1の主面23及び第2の主面24の一部を帯状体30が覆っている。
マット材10では、積層マット20に帯状体30が巻き付けられる周方向に沿って、帯状体30が1周以上巻き付けられている。帯状体30には巻き付け開始部30aと巻き付け終了部30bが存在しており、巻き付け開始部30aと巻き付け終了部30bは積層マット20の第2の主面24に存在している。すなわち、巻き付け開始部30aから巻き付けられた帯状体は、第2の主面24、第2の長側面26、第1の主面23、第1の長側面25を経て第2の主面24に戻り、巻き付け開始部30aを通過した後に巻き付け終了部30bに到達する。帯状体30が重なる部分には、帯状体30同士が接着されている領域30cが存在する。帯状体30を積層マット20に巻き付けて、帯状体が重なる部分において帯状体同士を接着することによって、帯状体30によって積層マット20を結束することができる。マット材10では、帯状体30と積層マット20とが接着されていないため、積層マット20を構成するマットの位置を調整することができる。
なお、巻き付け開始部30aと巻き付け終了部30bは積層マット20のどこに存在してもよい。
【0049】
帯状体の巻き付け開始部と巻き付け終了部の間には、帯状体が存在せずに積層マットの第1の主面又は第2の主面が露出する露出部が形成されていてもよい。
露出部が形成されているということは、露出部を設けない場合に比べて帯状体の使用量が少ないということになる。例えば有機材料からなる帯状体の場合、帯状体は使用時に加熱されることにより有機ガス分を放出する原因となるので、その使用量が少ない方が好ましい。
巻き付け開始部と巻き付け終了部との間に露出部が形成されている場合には、帯状体と積層マットとを直接接着することで、帯状体によって積層マットを結束することができる。
【0050】
露出部の幅は特に限定されないが、積層マットの幅方向の長さの0%を超えて80%以下であることが好ましい。
【0051】
マット材に露出部が形成される場合、露出部は積層マットの第1の主面と第2の主面のいずれに設けられていてもよい。
【0052】
帯状体同士を接着する方法、及び、積層マットと帯状体とを接着する方法は特に限定されないが、接着剤により接着してもよいし、接着剤を使用せずに、帯状体自体をヒートシールすることにより行ってもよい。
【0053】
接着剤としては、アクリル系接着剤、アクリレート系ラテックス、ウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等を使用することができる。
【0054】
本発明のマット材を構成する帯状体は、2つ以上存在していてもよい。
【0055】
図3は、マット材の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図3に示すマット材11は、図1及び図2に示すマット材10と、積層マット20の構成は同じであり、帯状体を巻き付ける形態が異なる。従って、積層マット20の説明は省略する。
図3に示すマット材11では、2つの帯状体31及び32が積層マット20に巻き付けられている。帯状体31及び32によって積層マット20を結束する方法は特に限定されず、帯状体同士の重なる部分が接着されていてもよいし、帯状体が積層マットと接着されていてもよい。
【0056】
なお、帯状体が2つ以上存在する場合の帯状体の長さは、各帯状体の長さの合計である。
例えば、図3に示すマット材11の長手方向における帯状体の長さは、帯状体31の長さLと帯状体32の長さLの合計である。
【0057】
本発明のマット材は、排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻き付けることにより、保持シール材、断熱材、防音材等の用途に使用することができる。
排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管の形状は特に限定されるものではないが、円柱状、角柱状、円管状、角管状等とすることができる。
【0058】
排ガス処理体は、多孔質セラミック等のセラミック質のハニカム構造体であり、触媒担体として使用される。触媒担体においては、排ガス流入側端面及び排ガス流出側端面がともに開口した貫通孔に排ガスが流入し、貫通孔を隔てる隔壁に担持させた触媒の作用により排ガスが浄化される。
また、排ガス処理体は貫通孔のいずれかの端部が交互に封止されてなるDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)であってもよい。
排ガス処理体を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。
【0059】
本発明のマット材を排ガス処理体や排気管に巻き付ける際は、積層マットの第2の主面を巻き付け対象物の側(内側)に配置し、積層マットの第1の主面を外側に配置する。
また、巻き付け開始部と巻き付け終了部の間に露出部が形成されていてもよい。
また、巻き付け開始部の帯状体と巻き付け終了部の帯状体が重なって接着されていてもよい。
また、本発明のマット材は、巻き付け時にマット同士が適度に滑ってマット間でずれることができるため、巻き付け性の指標であるSeamGapが小さくなる。
SeamGapは、凸部と凹部が嵌合する位置での凸部と凹部の間の隙間の長さであり、これが短いほど巻き付け性が良いことを意味する。
【0060】
続いて、本発明のマット材を製造する方法の一例について説明する。
まず、積層マットを構成するマットを作製し、マットを積層することで積層マットを作製する。
マットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、抄造法又はニードリング法により得たシート状部材を所定形状に打ち抜くことにより得ることができる。
【0061】
打ち抜きの際の寸法を変更することで、長手方向の長さの異なる複数のマットを作製し、複数のマットを長さが長くなる順で、又は、短くなる順で積層することで積層マットを作製する。
積層させるマットの数及び各マットの厚さは、マット材に求められる保持力や断熱性能に応じて変更すればよい。
【0062】
次に、積層マットに帯状体を巻き付ける。帯状体の寸法を調整して、図1及び図2に示すように、巻き付け開始部の帯状体及び巻き付け終了部の帯状体が積層マットの第2の主面側で重なるようにしてもよいし、露出部を設けるように巻き付けてもよい。
【0063】
積層マットと帯状体の接着を接着剤により行う場合は、積層マット及び/又は帯状体の一部に接着剤を塗布しておく。
また、巻き付け開始部の帯状体と巻き付け終了部の帯状体の間の接着を接着剤により行う場合も、当該部位に接着剤を塗布しておく。必要に応じて乾燥等を行い接着剤の接着力を発揮させる。
また、積層マットの第1の主面と第2の主面のそれぞれにおける帯状体と積層マットの接着力を異ならせる場合には、接着剤の種類、塗布量、乾燥条件等を両面で異なるようにすればよい。
【0064】
積層マットと帯状体の接着をヒートシールにより行う場合は、積層マットと帯状体を接着させる部位にヒートシーラーをあててヒートシールを行う。
巻き付け開始部の帯状体及び巻き付け終了部の帯状体積層マットを一度のヒートシールで接着してもよい。
また、積層マットの第1の主面と第2の主面のそれぞれにおける帯状体と積層マットの接着力を異ならせる場合には、ヒートシールの温度や時間等を両面で異なるようにすればよい。
【0065】
また、積層マットを構成するマットには通常は表裏面の区別があり、相対的に表面が粗いラフ面と、相対的に表面が平滑なスムース面がある。
マットを積層して積層マットとする際に、一方の面がラフ面、一方の面がスムース面になるように積層面を定めることで、積層マットの第1の主面と第2の主面の表面状態を異ならせることができる。積層マットの第1の主面と第2の主面の表面状態が異なる場合、同じ接着条件で積層マットと帯状体の接着を行った場合にも積層マットの第1の主面と第2の主面のそれぞれにおける帯状体と積層マットの接着力を異ならせることができる。
上記工程により本発明のマット材を製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
10、11 マット材
20 積層マット
21 第1のマット
22 第2のマット
23 積層マットの第1の主面
24 積層マットの第2の主面
25 積層マットの第1の長側面
26 積層マットの第2の長側面
27 積層マットの第1の短側面
28 積層マットの第2の短側面
30、31、32 帯状体
30a 巻き付け開始部
30b 巻き付け終了部
30c 帯状体同士が接着されている領域
図1
図2
図3