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特許7382250ポリウレアポリウレア化合物とこれを含む組成物ならびにポリウレア硬化物、およびポリウレア硬化物を含む成形フィルムならびに成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ポリウレアポリウレア化合物とこれを含む組成物ならびにポリウレア硬化物、およびポリウレア硬化物を含む成形フィルムならびに成形品
(51)【国際特許分類】
   C07C 275/26 20060101AFI20231109BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20231109BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20231109BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231109BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C07C275/26 CSP
C08G18/28 065
C08G18/28 015
C08F299/02
B29C45/00
C08F220/60
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020023848
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127324
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】小野 真司
(72)【発明者】
【氏名】内貴 英人
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/081681(WO,A1)
【文献】特表2016-506985(JP,A)
【文献】特開2006-070263(JP,A)
【文献】特表2017-502119(JP,A)
【文献】特開平08-292404(JP,A)
【文献】特公平07-080988(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/194108(WO,A1)
【文献】特開平11-217414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
C08F
B29C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1):
【化1】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化2】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、以下の式(3-1):
【化3】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(4):
【化4】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、(メタ)アクリル基を含む部位と、
を含む、ポリウレア化合物。
【請求項2】
該ジアミン化合物に由来する部位と、該モノアミンに由来する部位とのモル比が、0.8~1.5である、請求項1に記載のポリウレア化合物。
【請求項3】
以下の式(1):
【化5】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化6】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、以下の式(3-1):
【化7】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(4):
【化8】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、(メタ)アクリル基を含む部位と、
を含むポリウレア化合物と、重合開始剤と、溶剤とを含む、硬化性ポリウレア組成物。
【請求項4】
以下の式(1):
【化9】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化10】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化11】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(4):
【化12】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、(メタ)アクリル基を含む部位と、
を含むポリウレア化合物を硬化させてなる、ポリウレア硬化物。
【請求項5】
以下の式(1):
【化13】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化14】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化15】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(4):
【化16】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、(メタ)アクリル基を含む部位と、
を含むポリウレア化合物を硬化させてなるポリウレア硬化物と、基材と、を有する、成形フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる、成形品。
【請求項7】
請求項5に記載の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、をインサート成形法にて成形してなる、成形品。
【請求項8】
以下の式(1):
【化17】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化18】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化19】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(4):
【化20】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良い-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、(メタ)アクリル基を含む部位と、
を含むポリウレア化合物を硬化させてなる、ガラス転移温度が、20℃~160℃である、ポリウレア硬化物。
【請求項9】
請求項に記載のポリウレア硬化物と、基材とを有する、成形フィルム。
【請求項10】
請求項に記載の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる、成形品。
【請求項11】
請求項に記載の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、をインサート成形法にて成形してなる、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のポリウレア化合物に関する。さらに本発明は、ポリウレア化合物を含む組成物と、それを硬化させたポリウレア硬化物に関する。さらに本発明は、ポリウレア硬化物を含む成形フィルムならびに成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品やプラスチック成形品の表面に多彩な意匠を施すことを目的に、予め模様や図柄を印刷した加飾フィルムが用いられることがある。加飾フィルムを成形品に貼り付ける方法として、加飾フィルムを射出成形金型内に挿入して樹脂又はプラスチックの射出成形を行うインサート成形法と、加飾フィルムを射出成形金型内に挿入して樹脂又はプラスチックの射出成形を行い、加飾フィルム基材を剥がして加飾部分を成形品上に転写する転写法とが知られている。加飾フィルムは、成形品表面に意匠を施すだけでなく、成形品の表面を保護することを目的に設けられるため、耐摩耗性や耐溶剤性の観点から、活性エネルギー線等を用いて硬化性組成物を硬化させた塗膜が利用されている。
【0003】
特許文献1には、加飾後の硬度、屈曲性、耐衝撃性に優れた三次元成形品加飾用積層フィルムが開示されている。特許文献1の三次元成形品加飾用積層フィルムは、軟質ビニルフィルムや無延伸ポリプロピレンフィルム等の基材フィルム層に、ポリウレタンアクリレート、不飽和二重結合を有するモノマー・オリゴマーおよび重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物から形成されたクリアー塗膜層を設けたものである。特許文献1には、上記の物質以外に、アミン基を有するモノマーを含んでいて良いことも開示され、このようなモノマーの例として、ジアミン化合物やポリアミン化合物が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-83950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術にかかる加飾用積層フィルムは、活性エネルギー線による硬化後に塗膜層の伸びが不充分であり、さらに成形品に貼り付けた硬化皮膜の耐擦傷性が充分でないという問題があった。また、特許文献1等に開示されたクリアー塗膜層の原料物質が、溶剤に溶解しにくく、そのため塗布、硬化、及び塗膜形成が難しい場合がある場合があった。そこで本発明は、フィルム成形に支障を生じない伸びを有するような硬化後塗膜(硬化物)を形成することができ、硬化反応が良好に進行する硬化性組成物を提供すること、ならびに、成形品の表面に密着し、成形品の表面を効果的に保護することができる、耐擦傷性を有する成形フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の実施形態は、以下の式(1):
【化1】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化2】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、以下の式(3-1):
【化3】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化4】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、以下の式(4):
【化5】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位と、
を含む、ポリウレア化合物である。
【0007】
本発明の第二の実施形態は、以下の式(1):
【化6】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化7】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化8】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物、および/または、以下の式(3-2):
【化9】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、以下の式(4):
【化10】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物と、重合開始剤と、溶剤とを含む、硬化性ポリウレア組成物である。
【0008】
本発明の第三の実施形態は、以下の式(1):
【化11】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化12】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化13】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物、および/または、以下の式(3-2):
【化14】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、以下の式(4):
【化15】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物を硬化させてなる、ポリウレア硬化物である。
【0009】
本発明の第四の実施形態は、以下の式(1):
【化16】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化17】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化18】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物、および/または、以下の式(3-2):
【化19】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、以下の式(4):
【化20】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物を硬化させてなるポリウレア硬化物と、基材と、を有する、成形フィルムである。
【0010】
本発明の第五の実施形態は、上記の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる、成形品である。
【0011】
本発明の第六の実施形態は、ガラス転移温度が、20℃~160℃である、ポリウレア硬化物である。
【0012】
本発明の第七の実施形態は、上記のポリウレア硬化物と、基材とを有する、成形フィルムである。
【0013】
本発明の第八の実施形態は、上記の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる、成形品である。
【0014】
本発明の第九の実施形態は、 以下の式(1):
【化21】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化22】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、以下の式(3-1):
【化23】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化24】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、
を含む、ポリウレア化合物である。
【0015】
本発明の第十の実施形態は、 以下の式(1):
【化25】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化26】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物に、さらに以下の式(3-1):
【化27】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化28】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位を導入して、該ポリウレア化合物の溶媒への溶解性を向上させる方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の新規のポリウレア化合物は、重合開始剤と、溶剤と併用することにより、硬化性のポリウレア組成物を形成する。ポリウレア組成物を硬化させて得たポリウレア硬化物は、適切な範囲のガラス転移温度を有しており、熱可塑性樹脂とともに成形することが可能である。ポリウレア硬化物を含む成形フィルムは、高い耐擦傷性を有するため、成形品の表面の傷つきを防止することができる加飾保護層を形成することができる。本発明の新規のポリウレア化合物を形成するための原料となるポリウレア化合物は、反応溶剤への溶解性が高く、したがって本発明の新規のポリウレア化合物も溶剤への溶解性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を以下に説明する。本発明の第一の実施形態は、ポリウレア化合物である。本明細書にて、ポリウレア化合物とは、分子内にウレア結合を有するポリマーまたはオリゴマーのことを指す。ポリウレア化合物は、以下の式(1):
【化29】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位を含む。ジイソシアネート化合物とは、分子内にイソシアナト基(-NCO)を2個有する化合物である。第一の実施形態のポリウレア化合物は、分子内のいずれかに、ジイソシアネート化合物に由来する上記の化学式(1)で表される部位を含んでいる。ジイソシアネート化合物の2個のイソシアナト基は、以下に説明するジアミン化合物中のアミノ基、またはモノアミン化合物中のアミノ基と反応してウレア結合を形成するか、あるいは、以下に説明するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物中のヒドロキシ基、または、モノアミン化合物(アルカノールアミン化合物等のような、ヒドロキシ基を含有するモノアミン化合物である場合)中のヒドロキシ基と反応してウレタン結合を形成する。すなわち、本明細書においては、「ポリウレア」の語は、ウレア結合とウレタン結合とを有する「ポリウレタンウレア」を包含するものとする。
【0018】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(2):
【化30】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位を含む。ジアミン化合物とは、分子内にアミノ基を2個有する化合物である。第一の実施形態のポリウレア化合物は、分子内のいずれかに、ジアミン化合物に由来する上記の化学式(2)で表される部位を含んでいる。ジアミン化合物の2個のアミノ基は、上記のジイソシアネート化合物中のイソシアナト基と反応して、ウレア結合を形成する。
【0019】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、
以下の式(3-1):
【化31】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化32】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位を含む。モノアミン化合物とは、分子内にアミノ基を1個有する化合物である。第一の実施形態のポリウレア化合物は、分子内のいずれかに、モノアミン化合物に由来する上記の化学式(3-1)または(3-2)で表される部位を含んでいる。化学式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位のうち、基Rは、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基であってもよい。ここで-O-アルキレン基とは、アルキレン基と酸素原子(O)とが結合した2価の基を指す。同様に、-O-シクロアルキレン基とはシクロアルキレン基と酸素原子(O)とが結合した2価の基を指し、-O-フェニレン基とはフェニレン基と酸素原子(O)とが結合した2価の基を指し、-O-ビフェニレン基とはビフェニレン基と酸素原子(O)とが結合した2価の基を指す。この場合、上記の化学式(3)で表される部位を提供するモノアミン化合物は、分子内に1個のアミノ基と1個のヒドロキシ基とを有するアルカノールアミン化合物、シクロアルカノールアミン化合物、フェノールアミン化合物またはビフェノールアミン化合物であることになる。化学式(3-1)で表されるモノアミン化合物の1個のアミノ基は、上記のジイソシアネート化合物と反応してウレア結合を形成する。モノアミン化合物が分子内に1個のアミノ基と1個のヒドロキシ基とを有する化合物である場合、当該化合物の1個のアミノ基は、上記のジイソシアネート化合物中のイソシアナト基と反応してウレア結合を形成し、一方1個のヒドロキシ基は、上記のジイソシアネート化合物中のイソシアナト基と反応してウレタン結合を形成する。一方、化学式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位のうち、基R3’は、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基であってもよい。ここで-O-アルキル基とは、アルキル基と酸素原子(O)とが結合した1価の基を指す。同様に、-O-シクロアルキル基とはシクロアルキル基と酸素原子(O)とが結合した1価の基を指し、-O-フェニル基とはフェニル基と酸素原子(O)とが結合した1価の基を指し、-O-ビフェニル基とはビフェニル基と酸素原子(O)とが結合した1価の基を指す。化学式(3-2)で表されるモノアミン化合物の1個のアミノ基は、上記のジイソシアネート化合物と反応してウレア結合を形成し、当該部位がポリウレア化合物の末端を形成する。
【0020】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(4):
【化33】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位を含む。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物とは、分子内にヒドロキシ基と、アクリル基またはメタクリル基とを有する化合物である。第一の実施形態のポリウレア化合物は、分子内のいずれかに、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する上記の化学式(4)で表される部位を含んでいる。化学式(4)で表されるヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位のうち、基Rは、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基であってよい。ここで-NH-アルキレン基とは、アルキレン基とアミノ残基(NH)とが結合した2価の基を指す。同様に-NH-シクロアルキレン基とは、シクロアルキレン基とアミノ残基(NH)とが結合した2価の基を指す。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物中のヒドロキシ基は、上記のジイソシアネート化合物中のイソシアナト基と反応してウレタン結合を形成する。本発明の第一の実施形態のポリウレア化合物には、上記の化学式(4)で表される部位が含まれているため、活性エネルギー線の照射や熱エネルギーの付加、化学物質の添加等を契機に重合反応を開始することができる。
【0021】
本発明の第二の実施形態は、ポリウレア化合物と、重合開始剤と、溶剤とを含む、硬化性ポリウレア組成物である。第二の実施形態において、硬化性ポリウレア組成物とは、常温下で液体状態で存在し、活性エネルギーの照射、熱エネルギーの付加、化学物質の添加等を契機に硬化反応を開始して、硬化物や硬化皮膜を形成することができる、ポリウレア化合物(分子内にウレア結合を有するポリマーまたはオリゴマー、あるいは分子内にウレタン結合とウレア結合とを有するポリマーまたはオリゴマー)を含む混合物のことである。重合開始剤とは、光の照射、熱の付与等の刺激に応答して分子の重合反応を開始させる化合物である。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物においては、紫外線、電子線、可視光線を含む光の照射により重合を開始させる光重合開始剤を用いることが特に好ましい。溶剤とは、ポリウレア化合物と重合開始剤とを溶解または少なくとも分散させることができる液体であり、本実施形態では有機液体を用いることが好ましい。硬化性ポリウレア組成物に含まれているポリウレア化合物は、上記の第一の実施形態のポリウレア化合物であることが非常に好ましい。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は、上記の成分のほか、必要に応じて、希釈用モノマーを含んでいて良い。希釈用モノマーは、後述するポリウレア硬化物が硬すぎたり、ガラス転移温度が低すぎたりする場合に、これを調整するために用いられ、ポリウレア化合物と重合開始剤とを溶解する溶剤としても機能する成分である。希釈用モノマーは、ポリウレア化合物と共に重合に関与し、ポリウレア硬化物中に希釈用モノマー由来の部位を残す(すなわち、ポリウレア硬化物中の、ポリウレア化合物に由来する部位を希釈する。)。希釈用モノマーとして、(メタ)アクリルモノマーや(メタ)アクリルオリゴマーを挙げることができる。
【0022】
本発明の第三の実施形態は、ポリウレア硬化物である。ポリウレア硬化物とは、ポリウレア化合物(分子内にウレア結合を有するポリマーまたはオリゴマー、あるいは分子内にウレタン結合とウレア結合とを有するポリマーまたはオリゴマー)を重合して硬化させたものである。ポリウレア化合物は、第一の実施形態のポリウレア化合物であることが非常に好ましい。上記の通り、第一の実施形態のポリウレア化合物には、重合性置換基を有する化学式(4)で表される部位が含まれており、活性エネルギー線の照射等により重合することができる。ポリウレア化合物が重合することにより硬化して、ポリウレア硬化物を形成する。
【0023】
本発明の第四の実施形態は、ポリウレア化合物を硬化させてなるポリウレア硬化物と、基材とを有する、成形フィルムである。成形フィルムとは、一般に、合成樹脂等を薄い膜状に成形したものを指し、膜(メンブレン)、シートの他、ある程度の厚みを有する板も包含するものとする。第四の実施形態の成形フィルムは、ポリウレア硬化物と、基材とを有する。ポリウレア化合物は、分子内にウレタン結合とウレア結合とを有するポリマーまたはオリゴマーのことであり、上記の第一の実施形態のポリウレア化合物であることが非常に好ましい。上記の通り、第一の実施形態のポリウレア化合物には、重合性置換基を有する化学式(4)で表される部位が含まれており、活性エネルギー線の照射等により重合することができる。基材としては、概して薄く、広い面積を有する膜状のものであれば、いかなるものを用いてもよいが、金属膜、熱可塑性樹脂膜、熱硬化性樹脂膜、繊維製のシート、ガラス等を挙げることができる。基材として、たとえば、アクリル樹脂や、最表層がアクリル樹脂で覆われたポリカーボネート樹脂を好適に使用することができる。このような基材上に、ポリウレア硬化物を形成して、成形シートを得る。
【0024】
本発明の第五の実施形態は、成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる、成形品である。成形品とは、合成樹脂等を型に注入したり、加熱したりして、一定の形状に加工した物品のことである。また熱可塑性樹脂とは、一般に、加熱により軟化して、成形加工することができ、これを冷却すると固化する樹脂のことである。第五の実施形態において、成形フィルムは、第四の実施形態の成形フィルムであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、上記のような性質を有する樹脂であればいかなるものを用いることができるが、たとえば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂を挙げることができる。第五の実施形態の成形品は、上記の樹脂を成形してなる物品の表面に、第四の実施形態の成形フィルムが貼り付けられた形態であることが非常に好ましい。
【0025】
本発明の第六の実施形態は、ガラス転移温度が、20℃~160℃である、ポリウレア硬化物である。第六の実施形態において、ポリウレア硬化物とは、分子内にウレタン結合とウレア結合とを有するポリマーまたはオリゴマーであるポリウレア化合物を硬化させたものである。ガラス転移温度とは、一般に、結晶性の固体高分子化合物が準安定なアモルファス状の固体に変わる変化(ガラス転移)が起きる温度、言い換えると、ガラス状態の固体高分子化合物がゴム状態の固体に変化する温度のことである。ガラス転移温度が20℃~160℃である、とは、すなわち、ポリウレア硬化物のガラス転移温度が室温よりは高いことを意味する。第六の実施形態のポリウレア硬化物のガラス転移温度がこの範囲にあることの技術的な意味は、後述するが、本実施形態のポリウレア硬化物は、室温では固体であり、加熱すると軟化する性質を有するものであることが重要である。本実施形態のポリウレア硬化物は、たとえば、第一の実施形態のポリウレア化合物を硬化させてなるものである。
【0026】
本発明の第七の実施形態は、ポリウレア硬化物と、基材とを有する、成形フィルムである。成形フィルムとは、一般に、合成樹脂等を薄い膜状に成形したものを指し、膜(メンブレン)、シートの他、ある程度の厚みを有する板も包含するものとする。第七の実施形態の成形フィルムは、ポリウレア硬化物と、基材とを有する。ポリウレア硬化物は、分子内にウレタン結合とウレア結合とを有するポリマーまたはオリゴマーであるポリウレア化合物を硬化させたものであり、上記の第六の実施形態のポリウレア硬化物であることが非常に好ましい。基材としては、概して薄く、広い面積を有する膜状のものであれば、いかなるものを用いてもよいが、金属膜、熱可塑性樹脂膜、熱硬化性樹脂膜、繊維製のシート、ガラス等を挙げることができる。基材として、たとえば、アクリル樹脂や、最表層がアクリル樹脂で覆われたポリカーボネート樹脂を好適に使用することができる。このような基材上に、ポリウレア硬化物を形成して、成形シートを得ることができる。
【0027】
本発明の第八の実施形態は、成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる、成形品である。成形品とは、合成樹脂等を型に注入したり、加熱したりして、一定の形状に加工した物品のことである。また熱可塑性樹脂とは、一般に、加熱により軟化して、成形加工することができ、これを冷却すると固化する樹脂のことである。第八の実施形態において、成形フィルムは、第七の実施形態の成形フィルムであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、上記のような性質を有する樹脂であればいかなるものを用いることができるが、たとえば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂を挙げることができる。第八の実施形態の成形品は、上記の樹脂を成形してなる物品の表面に、第七の実施形態の成形フィルムが貼り付けられた形態であることが非常に好ましい。
【0028】
本発明の第九の実施形態は、ポリウレア化合物である。第九の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(1):
【化34】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化35】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、以下の式(3-1):
【化36】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化37】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、を含む。従来技術において、ジイソシアネート化合物とジアミン化合物とをウレア結合にて結合したポリウレア化合物は広く使用されている。従来技術に係るポリウレア化合物は、一般に溶剤への溶解性が低く、硬化性化合物の原料として用いるには難があった。第九の実施形態のポリウレア化合物は、式(1)で表されるジイソシアネート化合物に由来する部位と、式(2)で表されるジアミン化合物に由来する部位のほかに、式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位および/または式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位を有する。第九の実施形態のポリウレア化合物は、反応溶剤への溶解性が高く、当該化合物を原料として、たとえば重合性置換基を導入することで、第一の実施形態のポリウレア化合物を製造することができる。
【0029】
本発明の第十の実施形態は、ポリウレア化合物の溶媒への溶解性を向上させる方法である。第十の実施形態の方法は、以下の式(1):
【化38】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化39】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物に、さらに以下の式(3-1):
【化40】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化41】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位を導入することからなる。上記の通り、従来技術に開示されているポリウレア化合物の溶解性が比較的低いことに鑑み、式(1)で表されるジイソシアネート化合物に由来する部位と式(2)で表されるジアミン化合物に由来する部位とを有するポリウレア化合物に、式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位および/または式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位を導入する。
【0030】
続いて、各実施形態をさらに詳細に説明する。第一の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(1):
【化42】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位を含む。ジイソシアネート化合物とは、分子内にイソシアナト基(-NCO)を2個有する化合物である。本実施形態のジイソシアネート化合物に由来する部位を提供するジイソシアネート化合物として、たとえば、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、1,3-ジイソシアナトベンゼン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよびこれらの誘導体が挙げられ、これらを1種類または2種類以上混合して用いることができる。
【0031】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(2):
【化43】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位を含む。ジアミン化合物とは、分子内にアミノ基を2個有する化合物である。本実施形態のジアミン化合物に由来する部位を提供するジアミン化合物として、たとえば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、プトレシン、カダベリン、4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン、アダマンタン1,3-ジアミン、N,N’-ビス(アミノベンザル)エチレンジアミン1,4-ビス(アミノメチルシクロヘキサン)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-フェニレンジアミン、3,3’ージクロロベンジジン、トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびこれらの誘導体が挙げられ、これらを1種類または2種類以上混合して用いることができる。
【0032】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、
以下の式(3-1):
【化44】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化45】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位を含む。モノアミン化合物とは、分子内にアミノ基を1個有する化合物である。本実施形態のモノアミン化合物に由来する部位を提供するモノアミン化合物として、たとえば、モノエタノールアミン、ジグリコールアミン、プロパノールアミン、イソエタリン、メタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、ジメチルアミン、ジメタノールアミンが挙げられ、これらを1種類または2種類以上混合して用いることができる。
【0033】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(4):
【化46】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位を含む。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物とは、分子内にヒドロキシ基と、アクリル基またはメタクリル基とを有する化合物である。本実施形態のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位を提供するヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物として、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、を挙げることができ、これらを1種類または2種類以上を混合して用いることができる。
【0034】
第一の実施形態のポリウレア化合物は、上記のジイソシアネート化合物、ジアミン化合物、モノアミン化合物およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物と、場合により適切な反応溶剤とを混合し、有機スズ化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物等のウレタン化およびウレア化触媒を添加して、室温~80℃の温度で撹拌して、製造することができる。好適には、まずジイソシアネート化合物とジアミン化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物とをある程度反応させ、次いで、モノアミン化合物を反応させて第一の実施形態のポリウレア化合物を製造することができる。この際、ジイソシアネート化合物、ジアミン化合物、モノアミン化合物およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物は、どのような順で結合してもよい。ジイソシアネート化合物とジアミン化合物は、ウレア結合を介して結合し、ジイソシアネート化合物とモノアミン化合物は、ウレア結合またはウレタン結合を介して結合し、ジイソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物はウレタン結合を介して結合する。実施形態のポリウレア化合物の少なくとも1つの末端は、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位となる。すなわち第一の実施形態のポリウレア化合物は、1個以上の重合基である(メタ)アクリル基を含む。第一の実施形態のポリウレア化合物の分子量は、反応させるジイソシアネート化合物、ジアミン化合物、モノアミン化合物およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物の配合比を変えることにより適宜変更することができる。ポリウレア化合物を硬化させて、ポリウレア硬化物を形成し、これを成形品の加飾用フィルムとして用いる場合には、ポリウレア化合物の重量平均分子量(Mw)が800以上、好ましくは1000以上であることが好ましい。
この時、ポリウレア化合物はジアミン化合物に由来する部位とモノアミン化合物に由来する部位とのモル比が0.8~1.5、好ましくは1.0~1.5であることが望ましい。後述するが、これによりポリウレア化合物を硬化させたポリウレア硬化膜は優れた耐擦傷性と延伸性を示す。上記のモル比にするには、原料組成におけるジアミン化合物とモノアミン化合物とのモル比を上記モル比に設定すれば良い。
【0035】
上記のように、重合性置換基を分子内に有する第一の実施形態のポリウレア化合物と、重合開始剤と、溶剤とを配合することにより、第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物を得ることができる。ここで用いられる重合開始剤は、光の照射、熱の付与等の刺激に応答して、ポリウレア化合物の重合反応を開始させる化合物である。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物においては、紫外線、電子線、可視光線を含む光の照射により重合を開始させる光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤として、光の照射によりラジカル活性種を発生する光ラジカル重合開始剤(たとえば、アセチルベンゼン、ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、クロロチオキサトン、エチルアントラキノン)、カチオン活性種を発生する光カチオン重合開始剤(たとえば、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-1,3,5-トリアジン、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート)、アニオン活性種を発生される光アニオン重合開始剤(アセトフェノン-O-ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、ニフェジピン)を用いることができる。光重合開始剤として、イルガキュア(BASF)等の市販品を用いることができる。イルガキュア184-(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア907(2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)、ルシリンTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)等を使用することができる。また、これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。重合開始剤は、ポリウレア化合物の重合を開始させるだけの量を配合すればよい。通常はポリウレア化合物の重量に対して0.01~10%程度のごく僅かの量の重合開始剤を配合すれば足る。
【0036】
第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物には、適宜希釈用の溶剤を用いることができる。溶剤は、ポリウレア化合物と重合開始剤とを溶解または少なくとも分散させることができるものであることが好ましい。溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、イソプロパノール、エタノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、ダイアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類、およびこれらのハロゲン化物等を含む有機溶媒を用いることが好ましい。溶剤は、ポリウレア化合物の重量を基準として0.1~100倍程度、好ましくは0.5~10倍配合することができる。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は、上記の成分のほか、必要に応じて、希釈用モノマーを含んでいて良い。希釈用モノマーは、後述するポリウレア硬化物が硬すぎたり、ガラス転移温度が低すぎたりする場合に、これを調整するために用いられる成分である。希釈用モノマーは、ポリウレア化合物と共に重合に関与し、ポリウレア硬化物中に希釈用モノマー由来の部位を残す(すなわち、ポリウレア硬化物中の、ポリウレア化合物に由来する部位を希釈する。)。希釈用モノマーとして、(メタ)アクリルモノマーや(メタ)アクリルオリゴマーを挙げることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-4-スピロ-2’-1’,3’-ジオキサシクロペンタン、1、4-ジ(メタ)アクリロイルピペラジン、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、等を1種類または2種類以上を混合して、希釈用モノマーとして硬化性ポリウレア組成物に添加することができる。
【0037】
第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は、これらの成分のほか、さらに従来の硬化性の組成物に通常含まれている添加剤(たとえば染料、顔料、可塑剤、分散剤、防腐剤、つや消し剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤)を適宜配合することができる。
【0038】
第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は、主に基材に塗布して、硬化させ、被膜を形成する用途に用いられる。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は塗料、シーリング材、封止材、接着剤等の広範な用途に使用することができる。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は、配合するポリウレア化合物の分子構造や、重合開始剤や溶剤の種類ならびに配合比を適宜変更することにより、これらの用途に応じて種々の要求性能を満たすことができる。
【0039】
第三の実施形態のポリウレア硬化物は、第一の実施形態のポリウレア化合物を直接硬化させて得ることができる。一方、第三の実施形態のポリウレア硬化物は、第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物を基材等に塗布し、必要に応じて適切な温度範囲にて加熱して溶剤を蒸発させつつ、ポリウレア化合物を硬化させることにより得ることもできる。第一の実施形態のポリウレア化合物、ならびに第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物中に含まれているポリウレア化合物の分子は、重合性置換基を有しており、この重合性置換基が重合して、ポリウレア化合物が硬化して、第三の実施形態のポリウレア硬化物が得られる。このように、第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物を用いて形成した第三の実施形態のポリウレア硬化物は、たとえば、プラスチック等の成形品の表面の加工用や加飾用のフィルムとして用いられ、当該硬化物は、成形品の表面上に密着して剥がれにくく、意匠性に優れたものとなる。
【0040】
第四の実施形態の成形フィルムは、第一の実施形態のポリウレア化合物を基材に塗布し、ポリウレア化合物を硬化させて得ることができる。しかしながら、第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物を基材に塗布し、必要に応じて適切な温度範囲にて加熱して溶剤を蒸発させつつ、ポリウレア化合物を硬化させることにより第四の実施形態の成形フィルムを得ることが好適である。ここで、ポリウレア硬化物による皮膜の厚さは、用途に応じて変更することができるが、一般的には1~20μm、好ましくは1~10μmである。成形フィルムの基材としては、概して薄く、広い面積を有する膜状のものであれば、いかなるものを用いてもよいが、金属膜、熱可塑性樹脂膜、熱硬化性樹脂膜、繊維製のシート、ガラス等を挙げることができる。基材として、たとえば、アクリル樹脂や、最表層がアクリル樹脂で覆われたポリカーボネート樹脂を好適に使用することができる。第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物は、特にプラスチック上にて好適に硬化して、第三の実施形態のポリウレア硬化物を形成し、第四の実施形態の成形フィルムを得ることができる。ここで第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物の基材表面への塗布は、従来のコーティング方法により適宜行うことができる。塗布した硬化性ポリウレア組成物を加熱して、ポリウレア硬化物を形成することができる。硬化性ポリウレア組成物の加熱は、硬化性ポリウレア組成物中の重合開始剤の作用によりポリウレア化合物の重合反応が開始するのに充分な温度まで加熱すればよい。使用するポリウレア化合物および重合開始剤の種類にもよるが、通常は50~150℃、好ましくは60~100℃程度に加熱することで重合反応を開始させることができる。硬化性ポリウレア組成物塗布物の加熱は、バーナーやオーブンなどの加熱装置による加熱のほか、ドライヤーなどの温風による加熱方法により行うことができる。
【0041】
このほか、第二の実施形態の硬化性ポリウレア組成物を基材表面に塗布して、塗布表面に活性エネルギー線を照射してポリウレア化合物の重合反応を開始させてもよい。照射する活性エネルギー線として、可視光、紫外光、赤外光、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線等を挙げることができる。第四の実施形態の成形フィルムは、模様、図柄、パターン、色彩等を有していてもよく、透明であってもよい。模様等を有する成形フィルムは加飾フィルムと呼ばれ、成形品の表面に模様等を施すために用いられる。
【0042】
第五の実施形態の成形品は、第四の実施形態の成形フィルムと、熱可塑性樹脂とから構成されてなる。具体的には、熱可塑性樹脂から構成される成形品の表面に、第四の実施形態の成形フィルムを貼り付けた成形品である。第三の実施形態のポリウレア硬化物が形成されており、熱可塑性樹脂製の成形品の表面に貼り付けられることにより、熱可塑性樹脂製の成形品の表面の傷つきを防止したり、表面に線図や模様を施したりすることができる。ここで熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂を挙げることができるが、具体的には、自動車前照灯、街灯、コンピュータやスマートフォン等の各種電子機器、各種家電等に使用する熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0043】
第五の実施形態の成形品は、射出成形金型内に熱可塑性樹脂と第四の実施形態の成形フィルムとを装填し、射出成形と同時に成形フィルムを成形品に貼付することにより得ることができる(インサート成形法)。また第四の実施形態の成形フィルムを成形品の表面に貼付して、模様や図柄が施されたポリウレア硬化物を転写させることもできる。上記の通り、第四の実施形態の成形フィルムは、基材上に、第三の実施形態のポリウレア硬化物を備えているが、第三の実施形態のポリウレア硬化物中に存在するウレア結合(-NH-CO-NH-)が、成形品の製造において重要な役割を果たす。ウレア結合中の酸素原子と水素原子は、室温下で水素結合する。この水素結合による物理的架橋のため、第三の実施形態のポリウレア硬化物は室温では硬く、したがって第五の実施形態の成形品の表面に設けられた成形フィルムは耐擦傷性を発揮することになる。第三の実施形態のポリウレア硬化物中のウレア結合同士の水素結合は、温度の上昇とともに切れ、ポリウレア硬化物は軟化する。このようなポリウレア硬化物の性質を利用して、第五の実施形態の成形品の製造に第四の実施形態の成形フィルムを用いることができる。すなわち、射出成形金型内に熱可塑性樹脂と第四の実施形態の成形フィルムとを装填して加熱すると、熱可塑性樹脂と、成形フィルム(ポリウレア硬化物を含む)がともに軟化するので、金型による成形ができる。得られた成形品を冷却すれば、成形品の表面に設けられた成形フィルムの、ポリウレア硬化物中の水素結合が再度形成されるので、ポリウレア硬化物は再び固くなり、耐擦傷性を有する硬化皮膜となる。第五の実施形態の成形品は、第四の実施形態の成形フィルムが、射出成形法に対する耐熱性と、成形品表面に沿うことができる充分な伸び性を有しており、かつ、成形品表面に密着して、強固な皮膜(加飾層)を形成することができるという性質を利用して製造することができる。
【0044】
第六の実施形態のポリウレア硬化物は、20℃~160℃のガラス転移温度を有することが好ましい。ポリウレア硬化物とは、分子内にウレタン結合とウレア結合とを有するポリマーまたはオリゴマーであるポリウレア化合物を硬化させたものである。ポリウレア硬化物のガラス転移温度が20~160℃であるとは、本実施形態のポリウレア硬化物は、室温では固体であり、加熱すると軟化する性質を有するものであるということである。第六の実施形態のポリウレア硬化物中に存在するウレア結合(-NH-CO-NH-)中の酸素原子と水素原子は、室温下で水素結合する。この水素結合による物理的架橋のため、第六の実施形態のポリウレア硬化物は室温では硬い。第六の実施形態のポリウレア硬化物中のウレア結合同士の水素結合は、温度の上昇とともに切れ、ポリウレア硬化物は軟化する。特にガラス転移温度が20℃~160℃であるポリウレア硬化物は、室温では硬く、室温よりやや高い温度まで加熱すると軟化し始め、容易に成形加工することが可能となるので、熱可塑性樹脂製の成形品を製造する際の利用価値が高い。
【0045】
ここで第六の実施形態のポリウレア硬化物は、以下の式(1):
【化47】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化48】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化49】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化50】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位と、以下の式(4):
【化51】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、-NH-アルキレン基、-O-アルキレン基、-NH-シクロアルキレン基、-O-シクロアルキレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物を硬化させたものであることが好ましい。ここで用いられるポリウレア化合物は、第一のポリウレア化合物を用いることが非常に好ましい。
【0046】
第七の実施形態の成形フィルムは、第六の実施形態のポリウレア硬化物と、基材とを有する。ここで、成形フィルムの基材としては、概して薄く、広い面積を有する膜状のものであれば、いかなるものを用いてもよいが、金属膜、熱可塑性樹脂膜、熱硬化性樹脂膜、繊維製のシート、ガラス等を挙げることができる。基材として、たとえば、アクリル樹脂や、最表層がアクリル樹脂で覆われたポリカーボネート樹脂を好適に使用することができる。第六の実施形態のポリウレア硬化物は、特にプラスチック上に、好適には皮膜状になるように設けることができ、第七の実施形態の成形フィルムを得ることができる。ここで、ポリウレア硬化物による皮膜の厚さは、用途に応じて変更することができるが、一般的には1~20μm、好ましくは1~10μmである。第六の実施形態のポリウレア硬化物は、当該硬化物を形成する前のポリウレア化合物を基材表面に直接塗布し、これを硬化させて得ることができる。さらに第六の実施形態のポリウレア硬化物を形成する前のポリウレア化合物と、重合開始剤と、溶剤とを配合して硬化性ポリウレア組成物を得て、これを基材表面に塗布し、必要に応じて適切な温度範囲にて加熱して溶剤を蒸発させつつ、ポリウレア化合物を硬化させることにより第七の実施形態の成形フィルムを得ることも可能である。この際、基材表面への硬化性ポリウレア組成物の塗布は、従来のコーティング方法により適宜行うことができる。塗布した硬化性ポリウレア組成物を加熱して、ポリウレア硬化物を形成することができる。硬化性ポリウレア組成物の加熱は、硬化性ポリウレア組成物中の重合開始剤の作用によりポリウレア化合物の重合反応が開始するのに充分な温度まで加熱すればよい。使用するポリウレア化合物および重合開始剤の種類にもよるが、通常は50~150℃、好ましくは60~100℃程度に加熱することで重合反応を開始させることができる。硬化性ポリウレア組成物塗布物の加熱は、バーナーやオーブンなどの加熱装置による加熱のほか、ドライヤーなどの温風による加熱方法により行うことができる。このように設けたポリウレア硬化物は、20℃~160℃のガラス転移温度を有している。第七の実施形態の成形フィルムは、模様、図柄、パターン、色彩等を有していてもよく、透明であってもよい。模様等を有する成形フィルムは加飾フィルムと呼ばれ、成形品の表面に模様等を施すために用いられる。このほか、第六の実施形態のポリウレア硬化物を形成する前のポリウレア化合物と、重合開始剤と、溶剤とを配合して硬化性ポリウレア組成物を得て、これを基材表面に塗布し、塗布表面に活性エネルギー線を照射してポリウレア化合物の重合反応を開始させてもよい。照射する活性エネルギー線として、可視光、紫外光、赤外光、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線等を挙げることができる。第七の実施形態の成形フィルムは、模様、図柄、パターン、色彩等を有していてもよく、透明であってもよい。模様等を有する成形フィルムは加飾フィルムと呼ばれ、成形品の表面に模様等を施すために用いられる。
【0047】
第八の実施形態の成形品は、第七の実施形態の成形フィルムと、熱可塑性樹脂と、から構成されてなる。具体的には、熱可塑性樹脂から構成される成形品の表面に、第七の実施形態の成形フィルムを貼り付けた成形品である。第六の実施形態のポリウレア硬化物が形成されており、熱可塑性樹脂製の成形品の表面に貼り付けられることにより、熱可塑性樹脂製の成形品の表面の傷つきを防止したり、表面に線図や模様を施したりすることができる。ここで熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂を挙げることができるが、具体的には、自動車前照灯、街灯、コンピュータやスマートフォン等の各種電子機器、各種家電等に使用する熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0048】
第八の実施形態の成形品は、射出成形金型内に熱可塑性樹脂と第七の実施形態の成形フィルムとを装填し、射出成形と同時に成形フィルムを成形品に貼付することにより得ることができる(インサート成形法)。また第七の実施形態の成形フィルムを成形品の表面に貼付して、模様や図柄が施されたポリウレア硬化物を転写させることもできる。上記の通り、第七の実施形態の成形フィルムは、基材上に、第六の実施形態のポリウレア硬化物を備えているが、第六の実施形態のポリウレア硬化物中に存在するウレア結合(-NH-CO-NH-)が、成形品の製造において重要な役割を果たす。ウレア結合中の酸素原子と水素原子は、室温下で水素結合する。この水素結合による物理的架橋のため、第六の実施形態のポリウレア硬化物は室温では硬く、したがって第八の実施形態の成形品の表面に設けられた成形フィルムは耐擦傷性を発揮することになる。第六の実施形態のポリウレア硬化物中のウレア結合同士の水素結合は、温度の上昇とともに切れ、ポリウレア硬化物は軟化する。特に第六の実施形態のポリウレア硬化物のガラス転移温度は20℃~160℃であるので、第六の実施形態のポリウレア硬化物は室温より昇温させることにより容易に軟化させることができる。このような第六に実施形態のポリウレア硬化物の性質を利用して、第八の実施形態の成形品の製造に第七の実施形態の成形フィルムを用いることができる。すなわち、射出成形金型内に熱可塑性樹脂と第七の実施形態の成形フィルムとを装填して加熱すると、熱可塑性樹脂と、成形フィルム(ポリウレア硬化物を含む)がともに軟化するので、金型による成形ができる。得られた成形品を冷却すれば、成形品の表面に設けられた成形フィルムの、ポリウレア硬化物中の水素結合が再度形成されるので、ポリウレア硬化物は再び固くなり、耐擦傷性を有する硬化皮膜となる。第八の実施形態の成形品は、第七の実施形態の成形フィルムが、射出成形法に対する耐熱性と、成形品表面に沿うことができる充分な伸び性を有しており、かつ、成形品表面に密着して、強固な皮膜(加飾層)を形成することができるという性質を利用して製造することができる。
【0049】
第九の実施形態のポリウレア化合物は、以下の式(1):
【化52】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化53】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
以下の式(3-1):
【化54】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化55】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位を有する。第九の実施形態のポリウレア化合物は、主に上記の第一の実施形態のポリウレア化合物の原料として用いられる。ここで、式(2)で表されるジアミン化合物に由来する部位と、式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位および/または式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位とは、0.8~1.5、好ましくは1.0~1.5(いずれもモル比)であることが好ましい。これにより、第九の実施形態のポリウレア化合物は反応溶剤への溶解性が高くなり、たとえば第一の実施形態のポリウレア化合物の原料として好適に使用することが可能となる。またこのようにして得た第一の実施形態のポリウレア化合物を硬化させたポリウレア硬化膜は、優れた耐擦傷性と延伸性を示すようになる。第九の実施形態のポリウレア化合物は、上記の第一の実施形態で説明したジイソシアネート化合物、ジアミン化合物、モノアミン化合物、および場合により適切な反応溶剤を混合し、有機スズ化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物等のウレタン化およびウレア化触媒を添加して、室温~80℃の温度で撹拌して、製造することができる。この際、ジアミン化合物に由来する部位とモノアミン化合物に由来する部位とを上記のモル比にするには、ジアミン化合物とモノアミン化合物とのモル比を上記モル比に設定して、反応を行えば良い。
【0050】
第十の実施形態の方法は、以下の式(1):
【化56】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジイソシアネート化合物に由来する部位と、以下の式(2):
【化57】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表される、ジアミン化合物に由来する部位と、
を含むポリウレア化合物に、さらに以下の式(3-1):
【化58】

(式中、Rは、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、-O-アルキレン基、-O-シクロアルキレン基、-O-フェニレン基、-O-ビフェニレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、2価の基である。)で表されるモノアミン化合物に由来する部位、および/または、以下の式(3-2):
【化59】

(式中、R3’は、各々、アルキル基、およびハロゲン基からなる群より選択される置換基を有していて良いアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-フェニル基、-O-ビフェニル基、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、1価の基である。)で表される、モノアミン化合物に由来する部位を導入することからなる、ポリウレア化合物の溶媒への溶解性を向上させる方法である。ここで、ポリウレア化合物の溶媒への溶解性を向上させる、とは、主に有機溶媒への溶解性を向上させることを意味する。有機溶媒とは、たとえば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、イソプロパノール、エタノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、ダイアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類、およびこれらのハロゲン化物等を含む、一般的に反応溶剤として使用可能な溶媒のことである。本実施形態で「溶解性を向上させる」とは、式(1)で表されるジイソシアネート化合物に由来する部位と、式(2)で表されるジアミン化合物に由来する部位とのみからなるポリウレア化合物の有機溶媒への溶解性と、式(1)で表されるジイソシアネート化合物に由来する部位と、式(2)で表されるジアミン化合物に由来する部位と、式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位および/または式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位からなるポリウレア化合物の有機溶媒への溶解性とを比較した場合に、後者の溶解性の方が高いことを意味する。ポリウレア化合物中に式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位および/または式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位を導入して、ポリウレア化合物の溶媒への溶解性を向上させるには、式(2)で表されるジアミン化合物に由来する部位と、式(3-1)で表されるモノアミン化合物に由来する部位および/または式(3-2)で表されるモノアミン化合物に由来する部位とが、0.8~1.5、好ましくは1.0~1.5(いずれもモル比)となるようにすると良い。第十の実施形態の方法により、ポリウレア化合物の反応溶剤への溶解性を高めることができ、たとえば第一の実施形態のポリウレア化合物の原料等、種々の用途に用いることが可能となる。
【実施例
【0051】
(1)ポリウレア化合物の合成
(A1)ポリウレア化合物(A-1)の合成
50mLのナス型フラスコに、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(以下、「H12MDI」と称する。)[住化コベストロウレタン株式会社]5.90重量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する。)[住化コベストロウレタン株式会社]5.00重量部(以上ジイソシアネート化合物)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(以下、「HEAA」と称する。)[KJケミカルズ株式会社]2.59重量部(ヒドロキシ基含有アクリル化合物)、触媒としてジオクチル錫ジラウレート[日東化成株式会社]0.01重量部、希釈用モノマーとしてアクリロイルモルホリン(以下、「ACMO」と称する。)[KJケミカルズ株式会社]8.99重量部を仕込み、室温で1.5時間撹拌した。撹拌した反応溶液に、モノエタノールアミン(以下、「MEA」と称する。)[三井化学株式会社]0.71重量部(モノアミン化合物)を滴下し、室温でさらに3時間撹拌した。ついで撹拌した反応溶液に、イソプロパノール(以下、「IPA」と称する。)[コスモ油化株式会社]11.55重量部(反応溶剤)とジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン(以下、「H12MDA」と称する。)[BASF]3.66重量部(ジアミン化合物)との混合溶液を加え、さらに室温で3時間撹拌し、ラジカル重合性置換基(アクリル基)を有するポリウレア化合物(A-1)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=1300]を得た。赤外吸収スペクトルおよびラマン分光法による散乱スペクトルを測定して、A-1の合成を確認した。
IR:(ウレタン)1701cm-1,(ウレア)1641cm-1
ラマン分光法:(アクリル基)1636cm-1
【0052】
(A2)ポリウレア化合物(A-2)の合成
MEAを0.89重量部、H12MDAを3.05重量部、IPAを11.55重量部用いたこと以外は、上記A1と同様に反応させ、ラジカル重合性置換基(アクリル基)を有するポリウレア化合物(A-2)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=1100]を得た。赤外吸収スペクトルおよびラマン分光法による散乱スペクトルを測定して、A-2の合成を確認した。
IR:(ウレタン)1701cm-1,(ウレア)1641cm-1
ラマン分光法:(アクリル基)1636cm-1
【0053】
(A3)ポリウレア化合物(A-3)の合成
MEAを1.24重量部、H12MDAを1.83重量部、IPAを11.00重量部用いたこと以外は、上記A1と同様に反応させ、ラジカル重合性置換基(アクリル基)を有するポリウレア化合物(A-3)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=1000]を得た。赤外吸収スペクトルおよびラマン分光法による散乱スペクトルを測定して、A-3の合成を確認した。
IR:(ウレタン)1701cm-1,(ウレア)1641cm-1
ラマン分光法:(アクリル基)1636cm-1
【0054】
(A4)ポリウレア化合物(A-4)の合成
MEAを1.77重量部、H12MDAを0重量部、IPAを10.40重量部用いたこと以外は、上記A1と同様に反応させ、ラジカル重合性置換基(アクリル基)を有するポリウレア化合物(A-4)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=900]を得た。赤外吸収スペクトルおよびラマン分光法による散乱スペクトルを測定して、A-4の合成を確認した。
IR:(ウレタン)1701cm-1,(ウレア)1641cm-1
ラマン分光法:(アクリル基)1636cm-1
【0055】
(2)硬化性ポリウレア組成物の調製
(B1)硬化性ポリウレア組成物(B-1)の調製
上記の(A1)で得られた不揮発分70%のポリウレア化合物(A-1)5重量部、イルガキュア184(以下、「IC-184」と称する。)[BASF株式会社]0.14重量部、IPA3.75重量部を配合し、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(B-1)を得た。
【0056】
(B2)硬化性ポリウレア組成物(B-2)の調製
ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、上記の(A2)で得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(A-2)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(B-2)を得た。
【0057】
(B3)硬化性ポリウレア組成物(B-3)の調製
ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、上記の(A3)で得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(A-3)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(B-3)を得た。
【0058】
(B4)硬化性ポリウレア組成物(B-4)の調製
ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、上記の(A4)で得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(A-4)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(B-4)を得た。
【0059】
(3)ポリウレア硬化物層を設けた成形フィルムの作製
ポリウレア硬化物層を形成する基材として、最表層がポリメチルメタクリレート樹脂で覆われたポリカーボネートフィルム(厚み300μm)を用いた。ポリウレア硬化物の膜厚が3μmとなるように、バーコート法によって、上記の各硬化性ポリウレア組成物(B-1)~(B-4)を基材に塗布した。そして硬化性ポリウレア組成物が塗布された基材を80℃で1分間乾燥し、活性エネルギー線として紫外線(800mW/cm、エネルギー:500mJ/cm)を照射することにより、溶剤を蒸発させつつ硬化性ポリウレア組成物を硬化させた。これにより実施例1、実施例2、実施例3、比較例1にかかる成形フィルムを得た。
【0060】
(4)成形フィルムの性能評価
(4-1)外観の評価
JIS K 7136に対応したヘイズメーターを用いてヘイズ値を測定した。測定結果に基づき以下の基準により、透明性を評価した。ヘイズ値が1%以下である場合、成形フィルムが透明であると評価できる。
【0061】
(4-2)耐擦傷性の評価
各成形フィルムのポリウレア硬化物層が形成された面を、スチールウール#0000上に250g/cmの荷重をかけて10往復させ、ヘイズメーターを用いてヘイズ値を測定した。耐擦傷性試験後のヘイズ値から耐擦傷性試験前のヘイズ値を引いた値(△ヘイズ値)を求めた。以下の基準により、耐擦傷性を評価した。△ヘイズ値が小さいほど、耐擦傷性が高いことを示す。
【0062】
(4-3)延伸性の評価
各成形フィルムについて、引張試験(雰囲気温度190℃、サンプル寸法:200mm×10mm、チャック間距離:110mm、引っ張り速度:50mm/分)を行った。目視によりポリウレア硬化物層にクラックが発生した時点を破断点伸度とし、その結果より成形フィルムの延伸性を評価した。破断点伸度の値が大きいほうが、高温下での伸びが大きい成形フィルムであり、高温下での成形加工性が高い成形フィルムであることを意味する。
【0063】
【表1】
【0064】
表1中の略語は以下の意味を表す:
12MDI:ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
MEA:モノエタノールアミン
12MDA:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
ACMO:アクリロイルモルホリン
IPA:イソプロパノール
【0065】
実施例にかかるポリウレア硬化物は、透明で、耐擦傷性が高く、延伸性が大きい。実施例によれば、特にジアミン/モノアミンのモル比が1.0~1.5で耐擦傷性と延伸性に優れたポリウレア硬化物を得られた。ジアミン/モノアミンモル比の値が小さい実施例3のポリウレア化合物(A-3)を用いて作製した成形フィルムのポリウレア硬化物の耐擦傷性は若干低く、延伸性もやや小さいが、ジアミンとモノアミンとのモル比を検討することで、改善可能であると考えられる。ジアミン化合物を含まないポリウレア化合物(A-4)を用いて作製した成形フィルムのポリウレア硬化物(比較例1)は、特に延伸性が極めて小さく、高温下での成形加工性に劣るものであると考えられる。
【0066】
(5)ガラス転移温度の異なるポリウレア硬化物の合成
(C1)ポリウレア化合物(C-1)ならびにポリウレア組成物(D-1)
ジイソシアネート化合物として、H12MDIを5.90重量部およびIPDIを5.00重量部、ジアミン化合物としてH12MDAを3.66重量部、モノアミン化合物としMEAを0.71重量部、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物としてHEAAを2.59重量部用い、上記(A1)と同様に反応させ、ポリウレア化合物(C-1)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=1300]を得た。ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(C-1)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(D-1)を得た。硬化性ポリウレア組成物(D-1)を用いて、上記(3)と同様の方法により成形フィルムを作成した(実施例4)。成形フィルム上に形成されたポリウレア硬化物のガラス転移温度は90℃であった。
【0067】
(C2)ポリウレア化合物(C-2)ならびにポリウレア組成物(D-2)
ジイソシアネート化合物としてH12MDIを5.90重量部、およびIPDIを5.00重量部、ジアミン化合物としH12MDAを3.66重量部、モノアミン化合物としてMEAを0.71重量部、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物とし2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート[新中村化学工業株式会社]4.82重量部用い、上記(A1)と同様に反応させ、ポリウレア化合物(C-2)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=1500]を得た。ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(C-2)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(D-2)を得た。硬化性ポリウレア組成物(D-2)を用いて、上記(3)と同様の方法により成形フィルムを作成した(実施例5)。成形フィルム上に形成されたポリウレア硬化物のガラス転移温度は150℃であった。
【0068】
(C3)ポリウレア化合物(C-3)ならびにポリウレア組成物(D-3)
ジイソシアネート化合物としH12MDIを5.90重量部およびIPDIを5.00重量部、ジアミン化合物としH12MDAを3.66重量部、ポリオール化合物としポリエチレングリコール600[三洋化成工業株式会社]6.98重量部、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物としてHEAAを2.59重量部用い、上記(A1)と同様に反応させ、ポリウレア化合物(C-3)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=1900]を得た。ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(C-3)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(D-3)を得た。硬化性ポリウレア組成物(D-3)を用いて、上記(3)と同様の方法により成形フィルムを作成した(比較例2)。成形フィルム上に形成されたポリウレア硬化物のガラス転移温度は10℃であった。
【0069】
(C4)ポリウレア化合物(C-4)ならびにポリウレア組成物(D-4)
ジイソシアネート化合物としH12MDIを5.90重量部およびIPDIを5.00重量部、ジアミン化合物としH12MDAを3.66重量部、ポリオール化合物としてデュラノールT4691[旭化成株式会社、ポリカーボネートジオール]を11.64重量部、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル化合物としてペンタエリスリトールトリアクリレート[東亜合成株式会社]を6.71重量部用い、上記(A1)と同様に反応させ、ポリウレア化合物(C-4)[不揮発分70%、重量平均分子量(Mw)=2600]を得た。ポリウレア化合物(A-1)の代わりに、得られた不揮発分70%ポリウレア化合物(C-4)を用いたこと以外は(B1)と同様の方法で、固形分濃度40重量%の硬化性ポリウレア組成物(D-4)を得た。硬化性ポリウレア組成物(D-3)を用いて、上記(3)と同様の方法により成形フィルムを作成した(比較例3)。成形フィルム上に形成されたポリウレア硬化物のガラス転移温度は200℃であった。
【0070】
【表2】

表2中の略語は以下の意味を表す:
12MDI:ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
MEA:モノエタノールアミン
12MDA:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン
PEG600:ポリエチレングリコール600
T4691:デュラノールT4691
HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
HAPMA:2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
ACMO:アクリロイルモルホリン
IPA:イソプロパノール
【0071】
(6)ポリウレア硬化物の評価
上記の(4-2)ならびに(4-3)に従い、各ポリウレア硬化物の耐擦傷性と延伸性を測定した。ガラス転移温度が20℃~160℃の範囲にあるポリウレア硬化物(実施例4、5)は、耐擦傷性が高く延伸性も大きい。一方、ガラス転移温度が20℃~160℃の範囲にないポリウレア硬化物(比較例2、3)は、耐擦傷性がやや低く延伸性も小さい傾向にあった。