(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】土台水切構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20231109BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04B1/64 A
E04B1/70 C
(21)【出願番号】P 2020034207
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 康登
【審査官】廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094750(JP,A)
【文献】特開2011-220048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0155927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と外壁パネルとの間に形成される空間を建物外方側から覆うように前記基礎に取り付けられかつ前記基礎の内側と外側とを連通する床下通気口が形成された土台水切と、
前記土台水切における前記基礎の外側に回動可能に取り付けられかつ前記床下通気口に対応した部位に配置されていると共に、比重が水より軽い材料により構成された浮体を含んで構成されており、前記浮体の浮力により
浮体が浮力を受ける方向に回動して前記床下通気口を建物下方側から閉塞可能とされている閉塞部と、
前記閉塞部に取り付けられていると共に、前記閉塞部における前記土台水切に取り付けられた部位を挟んで前記閉塞部と離間する側に配置されており、比重が水より重い材料により構成されている錘部と、
を有する土台水切構造。
【請求項2】
前記錘部は、前記閉塞部における前記土台水切に取り付けられた部位に対して屋外側に配置されていると共に、屋外側が前記土台水切と略同一部材により構成され、前記外壁パネルの面直方向視にて前記閉塞部の建物下方側の端部と重なるように形成されている、
請求項1記載の土台水切構造。
【請求項3】
前記閉塞部における前記錘部と反対側の端部には、フィルム状に形成されかつ前記土台水切と当接可能とされた張付部が設けられている、
請求項1又は請求項2記載の土台水切構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土台水切構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、土台水切に関する発明が開示されている。具体的には、土台水切は、建物の外壁の下端部に設けられており、基礎上の土台に設けられている床下通気口と外壁に設けられている外壁通気口とを建物外方側から通気可能に覆う構成とされている。土台水切の内部には、基礎の外部の水位が上昇すると、浮力により床下通気口と外壁通気口とを外部から塞ぐように作動する止水弁を有しており、これによって水害時に建物内への浸水を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記先行技術による場合、止水弁自体に湿気を排出するための複数の開口が形成されている。したがって、水位が上昇した際に水が開口を通ってしまうことで、止水弁を作動させるための浮力が十分に作用しない可能性がある。また、仮に止水弁が水圧を受けて作動しても、水の揺らぎの影響を受けて止水弁が水密性を低下する方向に作動する可能性がある。したがって、上記先行技術はこの点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、水害時の建物内部への浸水を効果的に抑制することができる土台水切構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る土台水切構造は、建物の基礎外周部と外壁パネルとの間に形成される空間を建物外方側から覆うように前記基礎に取り付けられかつ前記基礎の内外を連通する床下通気口が形成された土台水切と、前記土台水切における前記床下通気口に対応した部位に取り付けられていると共に、比重が水より軽い材料により構成された本体部を含んで構成されており、前記床下通気口を建物下方側から閉塞可能とされている閉塞部と、前記閉塞部に取り付けられていると共に、前記閉塞部における前記土台水切に取り付けられた部位を挟んで前記閉塞部と反対側に配置されており、比重が水より重い材料により構成されている錘部と、を有している。
【0007】
第2の態様に係る土台水切構造は、第1の態様に係る発明において、前記錘部は、前記閉塞部における前記土台水切に取り付けられた部位に対して屋外側に配置されていると共に、屋外側が前記土台水切と略同一部材により構成され、前記外壁パネルの面直方向視にて前記閉塞部の建物下方側の端部と一部が重なるように形成されている。
【0008】
第3の態様に係る土台水切構造は、第1又は第2の態様に係る発明において、前記閉塞部における前記錘部と反対側の端部には、外部から付着した水分を介して前記土台水切の建物下方側面に張り付き可能とされたフィルム状の張付部が設けられている。
【0009】
第1の態様によれば、土台水切は、建物の基礎と外壁パネルとの間に形成される空間を建物外方側から覆うように基礎に取り付けられていると共に、基礎の内側と外側とを連通する床下通気口が形成されている。土台水切における基礎の外側に回動可能に取り付けられかつ床下通気口に対応した部位には、閉塞部が設けられており、この閉塞部は比重が水より軽い材料により構成された浮体を含んで構成されかつ浮体の浮力により床下通気口を建物下方側から閉塞可能とされている。したがって、基礎の外側の水位が上昇すると、この水位上昇による浮力により閉塞部が床下通気口を閉塞することができる。また、閉塞部における土台水切に取り付けられた部位を挟んで閉塞部と離間する側には、錘部が取り付けられており、この錘部は、比重が水より重い材料により構成されている。したがって、基礎の外側の水位が上昇すると、錘部を持ち上げる方向ではなく浮体が浮力を受ける方向にのみ閉塞部が回動することから、閉塞部の回動方向を規制することができる。つまり、水の揺らぎの影響を受けて閉塞部が頻繁に回動して床下通気口の閉塞状態が解除されるのを抑制することができる。
【0010】
第2の態様によれば、錘部は、閉塞部における土台水切に取り付けられた部位に対して屋外側に配置されていると共に、外壁パネルの面直方向視にて閉塞部の建物下方側の端部と重なるように形成されている。つまり、建物外部から視認した際に閉塞部が隠れて錘部のみが視認される。さらに、錘部の屋外側は、土台水切と略同一部材により構成されていることから、錘部と土台水切とが連続的な外観となる。したがって、外観意匠性を向上させることができる。
【0011】
第3の態様によれば、閉塞部における錘部と反対側の端部には、張付部が設けられている。この張付部は、フィルム状に形成されかつ土台水切と当接可能とされている。したがって、基礎の外側の水位が上昇する際に張付部に水が付着すると、閉塞部が浮力により床下通気口を閉塞する時に、張付部が土台水切に張り付く。つまり、基礎の外側の水が床下通気口から建物内部へ浸入するのを張付部により一層確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る土台水切構造は、水害時の建物内部への浸水を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る土台水切構造を有する建物の一部を示す断面斜視図である。
【
図2】
図1におけるA-A線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図3】
図2に対し基礎の外側の水が上昇した状態を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る土台水切構造の閉塞部及び錘部の作動状態を概略的に示す
図2に対応した断面図である。
【
図5】
図3におけるZ部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る土台水切構造の一部を示す断面図である。
【
図7】第2実施形態の変形例に係る土台水切構造の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図5を用いて、本発明に係る土台水切構造の第1実施形態について説明する。
【0015】
図1に示されるように、土台水切構造10が適用された建物11は、地盤に設けられた基礎12と、基礎12の上方に設けられた図示しない躯体フレームと、躯体フレームに取り付けられた外壁パネル16と、を含んで構成されている。この基礎12は、地盤を所定深さ掘削したところに打設されている図示しないフーチングと、フーチングの長手方向に沿って建物上下方向で上方に延出された基礎立ち上がり部12Aとを含んで構成されている。このフーチング及び基礎立ち上がり部12Aを建物外周に沿って帯状に連続配置することにより、建物11の下部構造即ち基礎12が形成されるようになっている。
【0016】
外壁パネル16は、外壁フレーム16Aと外壁面材16Bとにより構成されている。外壁パネル16の建物外側面を構成する外壁面材16Bは、意匠面16BAを建物外側に向けると共に、外壁フレーム16Aの建物外側面に設けられている図示しない通気胴縁の建物外側面に図示しないねじ等により取り付けられている。したがって、通気胴縁と接合されている箇所以外では、外壁面材16Bは外壁フレーム16Aとの間で間隙を有している。
【0017】
外壁パネル16の下端部16Cと基礎12との間には、空間Sが形成されており、この空間Sには、土台水切20が設けられている。土台水切20は、基礎12の上端面12Bに取り付けられ(詳細は後述)、かつ外壁パネル16の下端部16Cに沿って延設されている。
【0018】
土台水切20は、水切本体部22と、止水弁24とを含んで構成されている。水切本体部22は、一例としてアルミニウム合金製とされかつ立設壁部24Aと底壁部24Bとで断面形状が略L字状に形成されている。立設壁部24Aは、外壁面材16Bの建物下方側に配置されていると共に、外壁パネル16と直交する方向を厚さ方向とする板状部材により構成されかつ建物上下方向に延設された立設壁本体部24AAと、立設壁本体部24AAと同一の板状部材により構成されかつ立設壁本体部24AAの上端部から建物上方側へ向かうに連れて屋内側へ傾けられた折返壁部24ABとを含んで構成されている。折返壁部24ABの先端部24ACは、外壁面材16Bの下端部16BBと建物上下方向にて離間されていると共に、外壁フレーム16Aの下端部16ABより建物上方側に配置されている。
【0019】
底壁部24Bは、建物上下方向を厚さ方向とする板状部材により構成されており、屋内側端部24BAが基礎12の上端面12B上に取り付けられている。また、底壁部24Bの屋外側端部24BBは、立設壁部24Aが連結されている。さらに、底壁部24Bには、床下通気口28と、被張付部30とを有している。床下通気口28は、底壁部24Bの屋内側端部24BAよりも屋外側に配置されていると共に、底壁部24Bの板厚方向に貫通されかつ建物上下方向視にて矩形状に形成されている。また、床下通気口28は、土台水切20の延設方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。これにより、床下通気口28を介して基礎12の外部と内部とが通気可能に連通されている。
【0020】
被張付部30は、底壁部24Bの屋内側端部24BAと床下通気口28との間かつ建物下方側面に設けられていると共に、底壁部24Bから建物下方側へ突出するように形成されている。
図2に示されるように、被張付部30の背面部30Aは、基礎12の屋外側面に当接されている。また、被張付部30の屋外側には、被張付面30Bが形成されている。この被張付面30Bは、土台水切20の延設方向に直交する断面形状が屋外側へ向けて開口された略U字状に形成されており、表面が円滑な面とされている。換言すると、被張付面30Bには、建物下方側に屋外側へ向けて延設された返し部30BAが形成されている。
【0021】
止水弁24は、底壁部24Bの屋外側端部24BBと床下通気口28との間の部位かつ建物下方側に設けられていると共に、弁フレーム34と、閉塞部36と、ヒンジ部38と、錘部40と、張付部42とを含んで構成されかつ水切本体部22の延設方向に沿って延設されている。
【0022】
弁フレーム34は、水切本体部22と同一のアルミニウム合金製の板状部材により構成されており、閉塞部側壁34Aと錘部側壁34Bとで延設方向に直交する断面形状が略L字状に形成されている。閉塞部側壁34Aは床下通気口28の建物下方側に配置されていると共に、錘部側壁34Bは閉塞部側壁34Aに対して屋外側に配置されている。また、閉塞部側壁34Aと錘部側壁34Bとの間にはヒンジ部38が一体的に形成されており、このヒンジ部38は、
図4に示されるように、止水弁24の延設方向に直交する断面形状が略円形とされており、底壁部24Bの建物下方側に形成されたヒンジ受け部44内に挿入され保持されている。これにより、弁フレーム34ひいては止水弁24は、ヒンジ部38の断面中心部を中心に止水弁24の延設方向を軸方向として回動可能に水切本体部22に支持されている。なお、ヒンジ部38は、ヒンジ受け部44の開口を開く方向に弾性変形させることで脱着が可能とされている。
【0023】
閉塞部側壁34Aには、浮体46と、張付部42とが取り付けられている。浮体46は、比重が水より軽い材料(一例として発泡樹脂材)により構成されており、止水弁24の長手方向に直交する断面形状が略矩形状に形成されている。また、浮体46は、閉塞部側壁34Aの屋外側面34AAに接合されており、閉塞部側壁34Aからの最大突出量Aが被張付部30の底壁部24Bに対する建物下方側への突出量Bよりも大きく設定されている。さらに、閉塞部側壁34A及び浮体46は、床下通気口28に対応した位置に配置されており、基礎12の外部の水位が上昇することにより浮力が浮体46に作用した際には、止水弁24がヒンジ部38を中心に回動することで閉塞部側壁34A及び浮体46が床下通気口28を閉塞する(
図3参照)。つまり、閉塞部側壁34A及び浮体46が請求項1に記載の「閉塞部」に相当する。換言すると、閉塞部36は、ヒンジ部38を介して土台水切20に取り付けられている。
【0024】
錘部側壁34Bには、錘48が取り付けられている。錘48は、比重が水より重い材料(一例として金属材)により構成されており、錘部側壁34Bの屋内側面34BAに取り付けられている。この錘部側壁34Bと錘48とが請求項1に記載の「錘部」に相当する。換言すると、錘部40は、閉塞部36と一体的に構成されていると共に、ヒンジ部38を挟んで閉塞部36と離間する側、すなわち、屋外側に配置されている。また、錘部側壁34Bは、止水弁24が浮力により回動していない状態、すなわち、ヒンジ部38を中心に錘部40と閉塞部36との重量バランスが釣り合う状態において外壁パネル16の面直方向視にて閉塞部36の建物下方側の端部(本実施形態の場合は浮体46の下端部46A)と重なるようにヒンジ部38から建物下方側へ延設されている。つまり、屋外側から視認した際に、錘部40によって閉塞部36が視認できない構成とされかつ水切本体部22と同一のアルミニウム合金製の板状部材により構成された錘部側壁34Bが建物外部へ露見されている。
【0025】
張付部42は、フィルム状の部材により構成されており、閉塞部側壁34Aの屋内側面34ABに取り付けられている。また、張付部42は、閉塞部36より屋内側へ露出された露出部42Aを有している。換言すると、露出部42Aは、閉塞部側壁34Aのヒンジ部38(錘部40)側と反対側の端部に設けられている。この露出部42Aの露出量は、
図5に示されるように、止水弁24が床下通気口28を閉塞した状態にて被張付部30の被張付面30Bに露出部42Aが張り付いた際に被張付面30Bから飛び出さない程度に設定されている。
【0026】
(止水弁の作動について)
次に、止水弁24の作動について説明する。
図2に示されるように、通常状態においては、止水弁24は、ヒンジ部38を中心に錘部40と閉塞部36との重量バランスが釣り合う状態(通常状態)にて位置している。この状態では、床下通気口28は開放された状態となることから、床下通気口28を介して基礎12の内部と外部とで換気を行うことができる。
【0027】
一方、
図3に示されるように、水害等の発生により、基礎12の外側の水位が上昇した場合、止水弁24は浮体46に作用する浮力によりヒンジ部38を中心に閉塞部36が床下通気口28に近づく方向に回動する。この際、張付部42の建物上方側面に水滴等の水分が付着する。これにより、張付部42が被張付部30の被張付面30Bに張り付きやすくなり、止水弁24の回動に伴って張付部42の被張付部30への張り付け量が増加する。そして、浮体46の閉塞部側壁34Aからの最大突出量Aが被張付部30の底壁部24Bに対する建物下方側への突出量Bよりも大きく設定されていることから(
図4参照)、閉塞部36が床下通気口28を完全に閉塞する前に張付部42が被張付部30へ張り付く。つまり、水中(
図5参照)ではなく大気中にて張付部42が被張付部30へ張り付く。したがって、大気圧が屋外側から張付部42に作用することで、張付部42が被張付部30へ張り付けられる。そして、閉塞部36が床下通気口28を閉塞する程度に水位が上昇すると、
図5に示されるように、水圧が張付部42に作用することで被張付部30への張り付け状態が維持される。
【0028】
基礎12の外部の水位が上昇した後に下降した場合、
図4に示されるように、止水弁24は自重により閉塞部36が床下通気口28と離間する方向(図中二点鎖線から実線へ)に回動する。また、被張付部30に張り付いた張付部42もこの回動に伴って被張付部30から剥離するか、張付部42と被張付部30との間の水分が乾燥することにより空気が入って被張付部30から剥離する。これにより、通常状態へ戻る。
【0029】
(第1実施形態の作用・効果)
次に、第1実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0030】
本実施形態では、
図1に示されるように、土台水切20は、建物11の基礎12と外壁パネル16との間に形成される空間Sを建物外方側から覆うように基礎12に取り付けられていると共に、基礎12の内側と外側とを連通する床下通気口28が形成されている。土台水切20における基礎12の外側に回動可能に取り付けられかつ床下通気口28に対応した部位には、閉塞部36が設けられており、この閉塞部36は比重が水より軽い材料により構成された浮体46を含んで構成されかつ浮体46の浮力により床下通気口28を建物下方側から閉塞可能とされている。したがって、
図3に示されるように、基礎12の外側の水位が上昇すると、この水位上昇による浮力により閉塞部36が床下通気口28を閉塞することができる。また、閉塞部36における土台水切20に取り付けられた部位を挟んで閉塞部36と離間する側には、錘48が取り付けられており、この錘48は、比重が水より重い材料により構成されている。したがって、基礎12の外側の水位が上昇すると、錘48を持ち上げる方向ではなく浮体46が浮力を受ける方向にのみ閉塞部36が回動することから、閉塞部36の回動方向を規制することができる。つまり、水の揺らぎの影響を受けて閉塞部36が頻繁に回動して床下通気口28の閉塞状態が解除されるのを抑制することができる。
【0031】
また、
図2に示されるように、錘48は、閉塞部36における土台水切20に取り付けられた部位に対して屋外側に配置されていると共に、外壁パネル16の面直方向視にて閉塞部36の建物下方側の端部(浮体46の下端部46A)と重なるように形成されている。つまり、建物外部から視認した際に閉塞部36が隠れて錘48のみが視認される。さらに、錘48の屋外側は、土台水切20と略同一部材により構成されていることから、錘48と土台水切20とが連続的な外観となる。したがって、外観意匠性を向上させることができる。
【0032】
さらに、閉塞部36における錘48と反対側の端部には、張付部42が設けられている。この張付部42は、フィルム状に形成されかつ土台水切20と当接可能とされている。したがって、基礎12の外側の水位が上昇する際に張付部42に水が付着すると、
図5に示されるように、閉塞部36が浮力により床下通気口28を閉塞する時に、張付部42が土台水切20に張り付く。つまり、基礎12の外側の水が床下通気口28から建物内部へ浸入するのを張付部42により一層確実に抑制することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、
図6を用いて、本発明の第2実施形態に係る土台水切構造について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0034】
この第2実施形態に係る土台水切構造50は、基本的な構成は第1実施形態と同様とされ、止水弁51のヒンジ部52が底壁部24Bの建物下方側へ露出されたヒンジ受け部54に保持されている点に特徴がある。
【0035】
すなわち、
図6に示されるように、底壁部24Bに形成されたヒンジ受け部54は、土台水切20の長手方向に直交する断面形状が屋内側へ向けて開口を有する略J字状に形成されている。つまり、ヒンジ受け部54は、屋内側が開放されていると共に、面直方向が略屋内側へ向けられた受け壁部端面54Aを備えている。
【0036】
止水弁51は、閉塞部36と、錘部40と、張付部42と、ヒンジ部52とを含んで構成されており、ヒンジ部52は、閉塞部側壁34Aと錘部側壁34Bとが結合する部位(以下、単に「結合部」と称する。)から建物上方側かつ閉塞部側壁34Aの延長線上に形成されており、結合部と所定の寸法分離間されている。この所定の寸法は、受け壁部端面54Aにおける受け壁部端面54Aの面直方向に直交しかつ略建物上下方向に沿った方向の寸法以上とされている。したがって、ヒンジ部52と結合部との間に受け壁部端面54Aが配置可能とされている。
【0037】
ヒンジ部52は、閉塞部側壁34Aの延長線上から屋外側へ向けて突出されかつ止水弁51の長手方向に直交する断面形状が略円形とされており、ヒンジ受け部54の内部に挿入されかつ保持されている。これにより、ヒンジ部52ひいては止水弁51は、ヒンジ部52を中心に回動可能とされている。なお、止水弁51は、受け壁部端面54Aと閉塞部側壁34Aとが当接することで、閉塞部36が床下通気口28と離間する方向の回動が制限される。
【0038】
(第2実施形態の作用・効果)
次に、第2実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0039】
上記構成によっても、止水弁51のヒンジ部52が底壁部24Bの建物下方側へ露出されたヒンジ受け部54に保持されている点以外は第1実施形態の土台水切構造10と同様に構成されているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、止水弁51は、受け壁部端面54Aと閉塞部側壁34Aとが当接可能とされていることで、閉塞部36が床下通気口28と離間する方向の所定角度以上の回動を制限することができる。これにより、強風や意図しない水流等により閉塞部36が床下通気口28と離間する方向に止水弁51が大きく回動して閉塞部36による床下通気口28の閉塞が阻害されるのを抑制することができる。
【0040】
(変形例)
次に、土台水切の変形例について説明する。
図7に示されるように、止水弁70は、閉塞部36と、錘部40と、張付部42とを含んで構成されており、土台水切20の底壁部72の建物下方側面に接合部材74を介して取り付けられている。この接合部材74は、一例として、ゴム等の弾性材により構成されたシート状部材とされており、底壁部72の建物下方側面と錘部側壁34Bの屋外側面にそれぞれ接合されている。したがって、接合部材74が弾性変形することで、浮力により閉塞部36が床下通気口28を閉塞する方向に止水弁70を回動させることができる。本構成は、底壁部72にヒンジ受け部44、54が不要となることから、従来構造の土台水切に止水弁70を設けることが容易となる。つまり、容易に水害時の建物内部への浸水を効果的に抑制することができる。
【0041】
なお、上述した第1、第2実施形態では、浮体46が発泡樹脂材により構成されているが、これに限らず、ブロー成形等により内部に空気層が設けられた樹脂部材やそれ以外の部材により構成されてもよい。また、浮体46と弁フレーム34とが別部材により構成されているが、これに限らず、一体の部材により構成されてもよい。
【0042】
さらに、錘48は、閉塞部36に対して屋外側に設けられた構成とされているが、これに限らず、閉塞部36の屋内側にヒンジ部38、52又は接合部材74を設けてこのヒンジ部38、52を挟んで閉塞部36に対して屋内側に設けた構成としてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
10 土台水切構造
11 建物
12 基礎
16 外壁パネル
20 土台水切
28 床下通気口
36 閉塞部
40 錘部
42 張付部
46 浮体
46A 下端部(閉塞部の建物下方側の端部)
50 土台水切構造
S 空間