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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20231109BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20231109BHJP
   F01N 13/14 20100101ALI20231109BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20231109BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
E02F9/00 D
E02F9/16 C
F01N13/14
B60K11/04 E
B60K13/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020050344
(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公開番号】P2021147929
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 達也
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】中林 哲也
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053261(JP,A)
【文献】特開平06-320962(JP,A)
【文献】特開2016-130519(JP,A)
【文献】特開2019-112902(JP,A)
【文献】特開平09-158743(JP,A)
【文献】特開2018-135041(JP,A)
【文献】実開昭51-149059(JP,U)
【文献】実開昭56-024323(JP,U)
【文献】特開2015-182628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
E02F 9/00-9/18
9/24-9/28
F01N 1/00-1/24
5/00-5/04
13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体の前側に設けられた作業装置とからなり、
前記車体は、
前記作業装置が前側に設けられた車体フレームと、
前記車体フレームの後側に設けられたガス燃料を燃料とするガスエンジンと、
前記ガスエンジンの前側に配置され前記ガスエンジンの排気ガスが流通する排気管と、
前記ガスエンジンの上側に配置された運転席と、
前記ガスエンジンの冷却水を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器に冷却風を供給する冷却ファンとを備えてなる建設機械において、
前記排気管と前記運転席との間には、前記運転席に対して前記排気管を遮蔽する熱遮蔽部と、前記冷却風を前記排気管に導く導風部とを有する遮熱板が設けられ
前記排気管の途中には、前記排気ガスを浄化する三元触媒が設けられ、
前記遮熱板の前記熱遮蔽部は、前記排気管のうち前記三元触媒よりも上流側の部位を覆っており、
前記冷却風の流れ方向に対して前記遮熱板よりも下流側には、前記遮熱板を通過した前記冷却風を外部へと案内すると共に、前記排気管のうち前記三元触媒よりも下流側の部位を覆う第2の遮熱板が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記遮熱板の前記導風部は、前記熱遮蔽部から前記冷却ファンの外周に向かって傾斜するラッパ状に形成され、前記冷却ファンの軸方向において前記冷却ファンに対面することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記遮熱板と前記第2の遮熱板との間には、前記冷却ファンの軸方向に沿って隙間が形成されていることを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原動機としてガスエンジンが搭載された油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備えて構成されている。上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームを有し、旋回フレームには、通常、軽油を燃料とするディーゼルエンジンと、ディーゼルエンジンによって駆動される油圧ポンプ等が搭載されている。
【0003】
近年では、地球温暖化、大気汚染等の問題に対処するために排気ガス規制が強化されている。このため、ディーゼルエンジンの高出力化、高効率化を実現するためのコモンレールと呼ばれる燃料噴射装置や、ディーゼルエンジンからの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置が新たに採用され、排気ガス規制に対応するためのコストが上昇している。これに対し、ディーゼルエンジンに比較して排気ガス中に含まれる有害物質が少ないガスエンジンを用いることが検討されている。
【0004】
このガスエンジンは、例えば液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等を燃料とするもので、燃料を完全に燃焼することができるために粒子状物質(PM:Particulate Matter)が殆ど排出されず、三元触媒との組合せにより、窒素酸化物(NOx)を低減することができる。一方、ガスエンジンは、ディーゼルエンジンとは燃焼形態が異なり、ガスエンジンの排気ガス温度は、全負荷域および全回転数域において、ディーゼルエンジンよりも約200℃以上高くなる。従って、エンジンの上方に運転席が配置される小型の油圧ショベル(ミニショベル)にガスエンジンを搭載する場合には、ガスエンジンから排出される高温の排気ガスの熱が運転席に伝わることにより、オペレータの作業環境が低下してしまうという問題がある。
【0005】
ここで、エンジンに取付けられた過給機と運転席との間に、遮熱板が設けられた小型の油圧ショベルが提案されている。この油圧ショベルでは、運転席に座ったオペレータに対し、過給機からの熱が伝わるのを遮熱板によって抑えることができる。この場合、遮熱板には複数のスリットが形成され、過給機からの熱がスリットを通じて放出されることにより、遮熱板の温度が過度に高くなるのを防止できる構成となっている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、冷却ファンの下流側に案内板が設けられた油圧ショベルが提案されている。この油圧ショベルでは、冷却ファンからの冷却風を、案内板によってエンジン、オイルパン、エンジンの周囲に配置された電装品等の発熱体へと案内することができ、これら発熱体を冷却風によって冷却することができる構成となっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-053261号公報
【文献】特開平10-169439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1による従来技術は、主として過給機からの輻射熱が運転席に伝わるのを遮熱板によって抑えるものであり、外装カバーによって囲まれたエンジン室内の温度は、時間の経過と共に上昇する。このため、エンジン室内の熱気が運転席に伝わるという不具合がある。さらに、遮熱板に形成されたスリットを通じて輻射熱が運転席に伝わるという不具合がある。
【0009】
一方、特許文献2による従来技術は、冷却風が流れる方向が案内板によって決まるため、エンジン室のうち十分に冷却風が流れない箇所に熱が滞留してしまう。このため、エンジン室内の温度が時間の経過と共に上昇し、エンジン室内の熱気が運転席に伝わってしまうという不具合がある。
【0010】
本発明の目的は、ガスエンジンから排出される排気ガスの熱が運転席に伝わるのを抑えることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、自走可能な車体と、前記車体の前側に設けられた作業装置とからなり、前記車体は、前記作業装置が前側に設けられた車体フレームと、前記車体フレームの後側に設けられたガス燃料を燃料とするガスエンジンと、前記ガスエンジンの前側に配置され前記ガスエンジンの排気ガスが流通する排気管と、前記ガスエンジンの上側に配置された運転席と、前記ガスエンジンの冷却水を冷却する熱交換器と、前記熱交換器に冷却風を供給する冷却ファンとを備えてなる建設機械において、前記排気管と前記運転席との間には、前記運転席に対して前記排気管を遮蔽する熱遮蔽部と、前記冷却風を前記排気管に導く導風部とを有する遮熱板が設けられ、前記排気管の途中には、前記排気ガスを浄化する三元触媒が設けられ、前記遮熱板の前記熱遮蔽部は、前記排気管のうち前記三元触媒よりも上流側の部位を覆っており、前記冷却風の流れ方向に対して前記遮熱板よりも下流側には、前記遮熱板を通過した前記冷却風を外部へと案内すると共に、前記排気管のうち前記三元触媒よりも下流側の部位を覆う第2の遮熱板が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、高温の排気ガスが流れる排気管からの輻射熱が運転席に伝わるのを、遮熱板の熱遮蔽部によって抑えることができる。また、遮熱板の導風部によって冷却風を排気管に導くことにより、排気管の周囲の熱気を外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを左側方から見た左側面図である。
図2】旋回フレーム、ガスエンジン、排気管、熱交換器、冷却ファン、遮熱板、第2の遮熱板等を示す斜視図である。
図3】旋回フレーム、ガスエンジン、排気管、熱交換器、冷却ファン等を、遮熱板、第2の遮熱板を取外した状態で示す図2と同様な斜視図である。
図4】作業装置、キャノピ、運転席等を取外した上部旋回体を上方から見た平面図である。
図5】旋回フレームにカウンタウエイト、ガスエンジン、冷却ファン、フロア部材、運転席、遮熱板等を取付けた状態を右側方から見た右側面図である。
図6】遮熱板を単体で示す斜視図である。
図7】第2の遮熱板を単体で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態について、小型の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図7を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施の形態では、油圧ショベルの走行方向を前,後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左,右方向として説明する。
【0015】
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。上部旋回体3の前側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4を用いて掘削作業等が行われる。
【0016】
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回装置5を介して旋回可能に搭載されている。上部旋回体3は、後述の旋回フレーム6、カウンタウエイト7、ガスエンジン8、運転席16、熱交換器19、冷却ファン20、遮熱板21、第2の遮熱板25、外装カバー27、キャノピ28等を含んで構成されている。
【0017】
作業装置4は、旋回フレーム6の前端に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト4Aと、スイングポスト4Aに俯仰動可能に取付けられたブーム4Bと、ブーム4Bの先端に回動可能に取付けられたアーム4Cと、アーム4Cの先端に回動可能に取付けられたバケット4Dと、ブームシリンダ4E、アームシリンダ4F、バケットシリンダ4Gを備えて構成されている。また、旋回フレーム6とスイングポスト4Aとの間には、スイングポスト4Aを左,右方向に揺動させるスイングシリンダ(図示せず)が設けられている。
【0018】
車体フレームとしての旋回フレーム6は、上部旋回体3のベースを構成し、旋回フレーム6の前側には作業装置4が設けられている。図2および図3に示すように、旋回フレーム6は、底板6Aと、左縦板6Bと、右縦板6Cと、横板6Dと、上板6Eと、左サイドフレーム6Fと、右サイドフレーム6Gとを含んで構成されている。底板6Aは、厚肉な鋼板を用いて形成され、前後方向に延びている。左縦板6Bおよび右縦板6Cは底板6A上に立設され、前側から後側に向けて左右方向の間隔が広がるように前後方向に延びている。横板6Dは、底板6A上に立設されて左右方向に延び、左縦板6Bと右縦板6Cとの間を連結している。上板6Eは、左縦板6Bおよび右縦板6Cの上部に設けられ、左縦板6Bおよび右縦板6Cの前後方向の中間部から前側へと延びている。
【0019】
左サイドフレーム6Fは、左縦板6Bの左側に間隔をもって配置され、湾曲しつつ前,後方向に延びている。右サイドフレーム6Gは、右縦板6Cの右側に間隔をもって配置され、湾曲しつつ前,後方向に延びている。底板6A、左縦板6B、右縦板6Cおよび上板6Eの前端は、前方に突出した支持部6Hとなっている。この支持部6Hには、作業装置4のスイングポスト4Aが左,右方向に揺動(スイング)可能に取付けられている。旋回フレーム6の横板6Dよりも後側には、ガスエンジン8が搭載されている。また、旋回フレーム6の左後部には、ガスエンジン8を挟んで後述する冷却ファン20とは反対側に位置して、冷却ファン20からの冷却風を外部に排出する冷却風排出口6Jが形成されている(図4参照)。
【0020】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム6の後側に設けられている。カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとる重量物である。図4に示すように、カウンタウエイト7の外周面7Aは、左右方向の中央部が後方に突出した円弧状をなしている。これにより、上部旋回体3が旋回したときに、カウンタウエイト7の外周面7Aは一定の旋回半径内に収まる構成となっている。
【0021】
ガスエンジン8は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム6に搭載されている。即ち、ガスエンジン8は、旋回フレーム6の横板6Dよりも後側に複数のマウント部材9を介して支持されている。ガスエンジン8は、ガス燃料としての液化石油ガス(LPG)を燃料として用いるもので、左,右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム6に搭載されている。また、ガスエンジン8は、エンジン冷却水が流通するウォータジャケット(図示せず)を備えている。ここで、ガスエンジン8は、ディーゼルエンジンとは燃焼形態が異なり、ガスエンジン8の排気ガス温度は、一般に、全負荷域および全回転数域においてディーゼルエンジンよりも約200℃以上高くなる。
【0022】
油圧ポンプ10は、ガスエンジン8の左側に取付けられている。油圧ポンプ10は、ガスエンジン8によって駆動され、作業装置4の各シリンダ4E、4F、4G、下部走行体2の走行油圧モータ(図示せず)、旋回装置5の旋回油圧モータ(図示せず)等の油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油を供給する。
【0023】
排気管11は、ガスエンジン8の前側に配置されている。排気管11はガスエンジン8の排気側に接続され、ガスエンジン8から排出された排気ガスが流通する。排気管11の途中には後述する三元触媒13が接続され、排気管11の下流側には、ガスエンジン8の爆発音を抑制する消音装置(サイレンサー)12が接続されている。排気管11は、三元触媒13の上流側に配置され、ガスエンジン8と三元触媒13との間を接続する上流側排気管11Aと、三元触媒13の下流側に配置され、三元触媒13と消音装置12との間を接続する下流側排気管11Bとにより構成されている(図3参照)。
【0024】
三元触媒13は、ガスエンジン8の前側に位置して排気管11の途中に設けられている。三元触媒13は、排気管11を構成する上流側排気管11Aの流出口と下流側排気管11Bの流入口とに接続され、ガスエンジン8から排出された排気ガスを酸化還元反応によって浄化する。ここで、三元触媒13は、白金、パラジウム、ロジウム、酸化セリウム等の貴金属と、これら貴金属を覆う断熱材とを含んで構成され、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質を除去する。即ち、三元触媒13は、炭化水素を水と二酸化炭素に酸化し、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、窒素酸化物を窒素に還元することにより、排気ガスを浄化する。この場合、三元触媒13は、ガスエンジン8からの高温の排気ガスによって酸化・還元作用が促進される。
【0025】
フロア部材14は、ガスエンジン8の前側に位置して旋回フレーム6に設けられている。フロア部材14は、旋回フレーム6の左前部から前後方向の中央部までの範囲に水平に延びて配置され、後述するシート18に座ったオペレータの足場を形成している。フロア部材14の前側部位には、下部走行体2を走行させるときに手動操作または足踏み操作によって操作される左右の走行レバー・ペダル15が設けられている。
【0026】
運転席16は、ガスエンジン8の上側に配置されている。運転席16は、旋回フレーム6上に設けられた運転席台座17と、運転席台座17上に配置されたシート18とを含んで構成されている。運転席台座17は、フロア部材14の後側に位置して旋回フレーム6に設けられ、ガスエンジン8の上側を通って後方へと延びている。図5に示すように、運転席台座17は、フロア部材14の後端から鉛直上方に立ち上がる立上り部17Aと、立上り部17Aの上端からガスエンジン8の上側を通って後方へと延びる水平な台座部17Bと、台座部17Bの後端からガスエンジン8の上側を通って斜め上方へと延びる背板部17Cとにより構成されている。運転席台座17の立上り部17Aは、ガスエンジン8を前側から覆い、台座部17Bと背板部17Cは、ガスエンジン8を上側から覆っている。
【0027】
シート18は、運転席台座17の台座部17B上に取付けられ、ガスエンジン8の上側に配置されている。シート18は、油圧ショベル1を操作するオペレータが座るもので、シート18の前側には、左右の走行レバー・ペダル15が設けられている。また、シート18の左右両側には、作業装置4および旋回装置5を操作するための作業用の操作レバー18A(左側のみ図示)が設けられている。
【0028】
熱交換器19は、ガスエンジン8の右側に位置して旋回フレーム6に搭載されている。熱交換器19は、例えばガスエンジン8のウォータジャケット(図示せず)内を流れるエンジン冷却水を冷却するラジエータ、油圧アクチュエータから作動油タンク(図示せず)に戻る作動油を冷却するオイルクーラ等を含んで構成されている。
【0029】
冷却ファン20は、ガスエンジン8と熱交換器19との間に位置してガスエンジン8の回転軸(図示せず)に設けられている。冷却ファン20は、ガスエンジン8によって回転駆動される軸流ファンからなり、上部旋回体3の外部から取込んだ外気を冷却風Fとして熱交換器19に供給する。これにより、熱交換器19は、エンジン冷却水、作動油等の熱を冷却ファン20からの冷却風F中に放熱し、これらを冷却する。なお、冷却ファン20の動力源としては、ガスエンジン8に限らず、電動モータ等を用いることもできる。
【0030】
次に、本実施形態の特徴部分となる遮熱板21、第2の遮熱板25の構成について、詳細に説明する。
【0031】
遮熱板21は、排気管11と運転席16との間に設けられている。具体的には、遮熱板21は、旋回フレーム6を構成する横板6Dに取付けられ、冷却ファン20による冷却風Fの流れ方向に対して冷却ファン20よりも下流側に配置されている。遮熱板21は、ガスエンジン8からの排気ガスによって温度上昇した排気管11の熱が、運転席16に伝わるのを抑えるものである。図2および図6に示すように、遮熱板21は、例えば鋼板等を用いて形成され、排気管11と運転席16との間、より具体的には、排気管11の上流側排気管11Aとシート18が取付けられた運転席台座17との間に配置された熱遮蔽部22と、冷却風Fの流れ方向に対して冷却ファン20と排気管11との間に配置された導風部23とにより構成されている。
【0032】
遮熱板21の熱遮蔽部22は、旋回フレーム6の横板6Dから鉛直上方に延びる鉛直板22Aと、鉛直板22Aの上端から後方(ガスエンジン8側)に向けて斜め上向きに延びる傾斜板22Bと、傾斜板22Bの上端から後方に向けて水平に延びる水平板22Cとにより構成されている。鉛直板22Aの下側には、複数のボルト挿通孔22Dが形成され、これら複数のボルト挿通孔22Dに挿通したボルト24を、旋回フレーム6の横板6Dに螺着することにより、遮熱板21が横板6Dに取付けられている。
【0033】
熱遮蔽部22は、鉛直板22A、傾斜板22B、水平板22Cによって、上流側排気管11Aの前側から上側までを取囲むように覆っている。これにより、シート18が取付けられた運転席台座17に対して上流側排気管11Aが遮蔽(熱遮蔽)され、上流側排気管11Aからの輻射熱が、運転席台座17を介してシート18に伝わるのを抑えることができる構成となっている。一方、上流側排気管11Aが熱遮蔽部22によって取囲まれることにより、上流側排気管11Aからの輻射熱は、熱遮蔽部22によって上流側排気管11Aへと反射する。これにより、上流側排気管11Aから三元触媒13に導入される排気ガスの温度を、三元触媒13の酸化・還元作用を活性化させるのに適した温度範囲に保つことができる構成となっている。
【0034】
遮熱板21の導風部23は、熱遮蔽部22に一体に設けられ、熱遮蔽部22の傾斜板22Bおよび水平板22Cから冷却ファン20に向けて張出している。即ち、導風部23は、熱遮蔽部22の傾斜板22Bおよび水平板22Cの冷却ファン20側の端部22Eから、冷却ファン20の外周に向かって傾斜するラッパ状に形成されている。これにより、導風部23は、冷却ファン20の軸方向において冷却ファン20の一部に対面している(図5参照)。
【0035】
冷却ファン20によって熱交換器19を通過した冷却風Fは、導風部23によって遮熱板21の熱遮蔽部22へと導かれ、熱遮蔽部22によって覆われた上流側排気管11Aから三元触媒13、下流側排気管11Bへと流れた後、旋回フレーム6の冷却風排出口6Jを通じて上部旋回体3の外部に排出される。これにより、排気管11の周囲に熱気が滞留するのを抑え、運転席台座17(台座部17B)の周囲の温度上昇を防止することができる構成となっている。一方、導風部23は、冷却ファン20の軸方向において冷却ファン20の一部に(部分的に)対面している。このため、導風部23から外れた冷却風Fは、排気管11以外のガスエンジン8全体を通過した後、旋回フレーム6の冷却風排出口6Jを通じて上部旋回体3の外部に排出される。これにより、ガスエンジン8全体を冷却することができ、ガスエンジン8からの熱による運転席台座17(台座部17B)の周囲の温度上昇を防止することができる構成となっている。
【0036】
第2の遮熱板25は、遮熱板21に隣接して旋回フレーム6の横板6Dに取付けられている。第2の遮熱板25は、冷却ファン20による冷却風Fの流れ方向に対して遮熱板21よりも下流側に配置されている。図2および図7に示すように、第2の遮熱板25は、鋼板等を用いて形成され、旋回フレーム6の横板6Dから鉛直上方に延びる鉛直板25Aと、鉛直板25Aの上端から後方(ガスエンジン8側)に向けて斜め上向きに延びる傾斜板25Bとを有している。鉛直板25Aの下側には、複数のボルト挿通孔25Cが形成され、これら複数のボルト挿通孔25Cに挿通したボルト24を、旋回フレーム6の横板6Dに螺着することにより、第2の遮熱板25が横板6Dに取付けられている。
【0037】
第2の遮熱板25は、遮熱板21を通過した冷却風Fを旋回フレーム6の冷却風排出口6Jに案内し、この冷却風Fを円滑に上部旋回体3の外部に排出させる。これにより、上流側排気管11Aを通過して温度上昇した冷却風Fが、運転席台座17の周囲に滞留するのを防止することができる構成となっている。一方、第2の遮熱板25は、下流側排気管11Bを前方および斜め上方から覆っている。これにより、シート18が取付けられた運転席台座17に対して下流側排気管11Bが遮蔽(熱遮蔽)され、下流側排気管11Bからの輻射熱が、運転席台座17を介してシート18に伝わるのを抑えることができる構成となっている。
【0038】
遮熱板21と第2の遮熱板25との間には、冷却ファン20の軸方向に沿って隙間26が形成されている。隙間26は、例えば三元触媒13に対応する部位に形成され、左右方向に一定の幅寸法をもって上下方向に延びている。ここで、図4に示すように、遮熱板21および第2の遮熱板25の内側(ガスエンジン8側)を通過して冷却風排出口6Jへと流れる冷却風F1と、遮熱板21および第2の遮熱板25の外側(ガスエンジン8とは反対側)を通過して冷却風排出口6Jへと流れる冷却風F2との流速を比較すると、冷却風F1の流速は冷却風F2の流速よりも大きくなる。
【0039】
このため、冷却風F2の一部は、流速の大きな冷却風F1によるエジェクタ効果によって隙間26を通じて冷却風F1に合流する。この場合、遮熱板21および第2の遮熱板25の外側を流れる冷却風F2の温度は、遮熱板21および第2の遮熱板25の内側を流れる冷却風F1の温度よりも低い。従って、上流側排気管11A等を通過して温度上昇した冷却風F1を、そのまま冷却風排出口6Jを通じて上部旋回体3の外部に排出することなく、冷却風F1に冷却風F2を合流させることにより、上部旋回体3の外部に排出される冷却風Fの温度を下げることができる構成となっている。
【0040】
なお、旋回フレーム6上には、ガスエンジン8、油圧ポンプ10、熱交換器19等の搭載機器をカウンタウエイト7と共に覆う外装カバー27が設けられている。外装カバー27は、カウンタウエイト7の左端から運転席16の左側まで延びた左外装カバー27Aと、カウンタウエイト7の右端から旋回フレーム6の前端まで延びた右外装カバー27Bとを含んで構成されている。右外装カバー27Bには冷却風導入口(図示せず)が設けられ、冷却ファン20が回転することにより冷却風導入口を通じて外気が外装カバー27内に導入され、この外気が冷却風Fとなって熱交換器19等に供給される。
【0041】
また、上部旋回体3には、運転席16を上方から覆うキャノピ28が設けられている。キャノピ28は、フロア部材14の前端側に立設された左右の前支柱28Aと、運転席台座17の後端側に立設された左右の後支柱28Bと、ルーフ部28Cとを有する4柱キャノピとして構成されている。
【0042】
本実施形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0043】
オペレータは、フロア部材14を足場として上部旋回体3に搭乗し、運転席16のシート18に座ってガスエンジン8を作動させる。この状態で、オペレータが走行レバー・ペダル15を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場まで走行させることができる。そして、作業現場においてオペレータが操作レバー18Aを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ、作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0044】
油圧ショベル1の稼働時には、ガスエンジン8から排気ガスが排出され、この排気ガスは、三元触媒13によって有害物質が除去された後、消音装置12を通じて上部旋回体3の外部に排出される。一方、ガスエンジン8の作動時には冷却ファン20が回転し、外装カバー27内に取込まれた外気が、冷却風Fとなって熱交換器19に供給される。熱交換器19は、エンジン冷却水、作動油等の熱を冷却風F中に放熱してこれらを冷却する。熱交換器19を通過した冷却風Fは、ガスエンジン8等を通過した後、旋回フレーム6の冷却風排出口6Jを通じて上部旋回体3の外部に排出される。
【0045】
この場合、ガスエンジン8の排気ガス温度は、全負荷域および全回転数域において、ディーゼルエンジンよりも約200℃以上高くなる。このため、排気管11が熱を発生し、この熱が運転席台座17等を介してシート18に伝わることにより、オペレータの作業環境が低下する虞がある。
【0046】
これに対し、本実施形態による油圧ショベル1は、冷却風Fの流れ方向に対して冷却ファン20よりも下流側に、熱遮蔽部22と導風部23とを有する遮熱板21が設けられている。遮熱板21の熱遮蔽部22は、鉛直板22Aと傾斜板22Bと水平板22Cとによって、排気管11のうち上流側排気管11Aの前側から上側までを取囲むように覆っている。これにより、シート18が取付けられた運転席台座17に対し、上流側排気管11Aを遮蔽(熱遮蔽)することができ、上流側排気管11Aからの輻射熱が、運転席台座17を介してシート18に伝わるのを抑えることにより、オペレータの作業環境を良好に保つことができる。
【0047】
一方、遮熱板21の導風部23は、熱遮蔽部22の傾斜板22Bおよび水平板22Cの端部22Eから、冷却ファン20の外周に向かって傾斜するラッパ状に形成され、冷却ファン20の軸方向において冷却ファン20の一部に対面している。これにより、冷却ファン20によって熱交換器19を通過した冷却風Fを、導風部23によって遮熱板21の熱遮蔽部22へと導くことができ、大量の冷却風Fを、上流側排気管11A、三元触媒13、下流側排気管11Bに供給した後、冷却風排出口6Jを通じて上部旋回体3の外部に排出することができる。
【0048】
また、冷却ファン20による冷却風Fの流れ方向に対して遮熱板21よりも下流側には、第2の遮熱板25が設けられている。第2の遮熱板25は、遮熱板21を通過した冷却風Fを旋回フレーム6の冷却風排出口6Jに案内することにより、大量の冷却風Fを円滑に上部旋回体3の外部に排出させることができる。これにより、上流側排気管11Aを通過して温度上昇した冷却風Fが、運転席台座17の周囲に滞留するのを防止することができる。この結果、運転席台座17の周囲の温度上昇を抑えることにより、排気管11からの熱がシート18に伝わるのを防止し、オペレータの作業環境を良好に保つことができる。
【0049】
さらに、第2の遮熱板25が、排気管11のうち三元触媒13よりも下流側の部位である下流側排気管11Bを覆うことにより、シート18が取付けられた運転席台座17に対し、下流側排気管11Bを遮蔽することができ、下流側排気管11Bからの輻射熱が、運転席台座17を介してシート18に伝わるのを抑えることができる。
【0050】
しかも、遮熱板21の熱遮蔽部22が、排気管11のうち三元触媒13よりも上流側に位置する上流側排気管11Aを覆うことにより、上流側排気管11Aからの輻射熱が、熱遮蔽部22によって上流側排気管11Aへと反射する。このため、上流側排気管11Aから三元触媒13に導入される排気ガスの温度を、三元触媒13の酸化・還元作用を活性化させるのに適した温度範囲に保つことができ、三元触媒13による排気ガスの浄化作用を促進することができる。
【0051】
さらに、遮熱板21と第2の遮熱板25との間には、冷却ファン20の軸方向に沿って隙間26が形成されている。遮熱板21および第2の遮熱板25の内側(ガスエンジン8側)を通過して冷却風排出口6Jへと流れる冷却風F1の流速は、遮熱板21および第2の遮熱板25の外側(ガスエンジン8とは反対側)を通過して冷却風排出口6Jへと流れる冷却風F2の流速よりも大きくなる。このため、冷却風F2の一部は、流速の大きな冷却風F1によるエジェクタ効果によって隙間26を通じて冷却風F1に合流する。この場合、冷却風F2の温度は冷却風F1の温度よりも低いので、上流側排気管11A等を通過して温度上昇した冷却風F1に、温度の低い冷却風F2を合流させることにより、上部旋回体3の外部に排出される冷却風Fの温度を下げることができる。この結果、油圧ショベル1の周囲の作業環境をも高めることができる。
【0052】
かくして、実施形態では、油圧ショベル1の上部旋回体3は、作業装置4が前側に設けられた旋回フレーム6と、旋回フレーム6の後側に設けられたガス燃料を燃料とするガスエンジン8と、ガスエンジン8の前側に配置されガスエンジン8の排気ガスが流通する排気管11と、ガスエンジン8の上側に配置された運転席16と、ガスエンジン8の冷却水を冷却する熱交換器19と、熱交換器19に冷却風Fを供給する冷却ファン20とを備えている。冷却風Fの流れ方向に対して冷却ファン20よりも下流側には、排気管11と運転席16との間に配置され運転席16に対して排気管11を遮蔽する熱遮蔽部22と、冷却風Fを排気管11に導く導風部23とを有する遮熱板21が設けられている。
【0053】
この構成によれば、遮熱板21の熱遮蔽部22によって排気管11を覆うことにより、運転席16に対して排気管11を遮蔽(熱遮蔽)することができ、排気管11からの輻射熱が運転席16に伝わるのを抑えることができる。また、遮熱板21の導風部23が、冷却風Fを熱遮蔽部22へと導くことにより、大量の冷却風Fを排気管11に供給することができる。この結果、排気管11からの熱が運転席16に伝わるのを防止し、オペレータの作業環境を良好に保つことができる。
【0054】
実施形態では、排気管11の途中には、排気ガスを浄化する三元触媒13が設けられ、遮熱板21の熱遮蔽部22は、三元触媒13よりも上流側に位置する部位(上流側排気管11A)を覆っている。この構成によれば、上流側排気管11Aからの輻射熱が、熱遮蔽部22によって上流側排気管11Aへと反射する。この結果、三元触媒13に導入される排気ガスの温度を、三元触媒13の酸化・還元作用を活性化させるのに適した温度範囲に保つことができ、三元触媒13による排気ガスの浄化作用を促進することができる。
【0055】
実施形態では、遮熱板21の導風部23は、熱遮蔽部22から冷却ファン20の外周に向かって傾斜するラッパ状に形成され、冷却ファン20の軸方向において冷却ファン20に対面している。この構成によれば、冷却ファン20によって熱交換器19を通過した冷却風Fを、導風部23によって遮熱板21の熱遮蔽部22へと導くことができ、大量の冷却風Fを、排気管11に供給することができる。
【0056】
実施形態では、冷却風Fの流れ方向に対して遮熱板21よりも下流側には、遮熱板21を通過した冷却風Fを外部へと案内すると共に、排気管11のうち三元触媒13よりも下流側の部位(下流側排気管11B)を覆う第2の遮熱板25が設けられている。この構成によれば、遮熱板21を通過した冷却風Fを、第2の遮熱板25によって円滑に上部旋回体3の外部に排出させることができる。これにより、排気管11を通過して温度上昇した冷却風Fが、運転席台座17の周囲に滞留するのを防止することができる。また、第2の遮熱板25が、運転席台座17に対して下流側排気管11Bを遮蔽することにより、下流側排気管11Bからの輻射熱が、運転席台座17を介してシート18に伝わるのを抑えることができる。
【0057】
実施形態では、遮熱板21と第2の遮熱板25との間には、冷却ファン20の軸方向に沿って隙間26が形成されている。この構成によれば、遮熱板21および第2の遮熱板25の外側を通過する冷却風F2の一部を、遮熱板21および第2の遮熱板25の内側を通過する冷却風F1によるエジェクタ効果によって、隙間26を通じて冷却風F1に合流させることができる。これにより、排気管11等を通過して温度上昇した冷却風F1に、温度の低い冷却風F2を合流させることができ、上部旋回体3の外部に排出される冷却風Fの温度を下げることができる。
【0058】
なお、実施形態では、旋回フレーム6に冷却風排出口6Jを設け、冷却ファン20によって外装カバー27内に取込まれた冷却風Fを、冷却風排出口6Jを通じて上部旋回体3の外部に排出する場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば外装カバーに冷却風排出口を設ける構成としてもよい。
【0059】
また、実施形態では、旋回フレーム6をベースとする上部旋回体3を備えた油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイールローダ等の上部旋回体を有しない建設機械にも適用することができる。
【0060】
さらに、実施形態では、クローラ式の油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル等の他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
6 旋回フレーム
8 ガスエンジン
11 排気管
16 運転席
19 熱交換器
20 冷却ファン
21 遮熱板
22 熱遮蔽部
23 導風部
25 第2の遮熱板
26 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7