(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】プログラム、画像処理装置、および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20231109BHJP
G01T 1/164 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G01T1/161 D
G01T1/164 L
(21)【出願番号】P 2020062469
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】為重 喜行
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006130(JP,A)
【文献】特開2017-158781(JP,A)
【文献】特開2019-053022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0102645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の骨シンチグラムの画像処理を行うためのプログラムであって、コンピュータに、
被験者の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、
入力された骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、
前記異常集積部位の面積と前記異常集積部位におけるカウントの代表値とを乗じた値を骨転移活性量として求めるステップと、
前記骨転移活性量を出力するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項2】
被験者の骨シンチグラムの画像処理を行うためのプログラムであって、コンピュータに、
被験者の前面と後面の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、
入力された前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、
前面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と後面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値と共に、後面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と前面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値とに基づき骨転移活性量を求めるステップと、
前記骨転移活性量を出力するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項3】
前記骨転移活性量を求めるステップは、異常集積部位に対応する、前面の面積とカウントの代表値とを乗じた値(A)と後面の面積とカウントの代表値とを乗じた値(B)のそれぞれに、2分の1を乗じて加算することにより、前記骨転移活性量((A+B)/2)を求める請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記骨転移活性量を求めるステップは、異常集積部位に対応する、前面の面積とカウントの代表値とを乗じた値と後面の面積とカウントの代表値とを乗じた値のそれぞれに、被験者の属性に応じた重みまたは骨格の解剖学的部位に応じた重みを乗じて加算することにより、前記骨転移活性量を求める請求項2または3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記骨転移活性量を求めるステップは、前面と後面とで骨格の解剖学的部位が重なる領域について、前面と後面のいずれか一方にある異常集積部位について、他方の面の対応箇所に異常集積がない場合には、当該異常集積部位の面積およびカウントの代表値に基づいて前記骨転移活性量を求める請求項2から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記骨転移活性量を求めるステップは、前記カウントの代表値として、前記異常集積部位におけるカウントの平均値を用いる請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
被験者の骨シンチグラムを正規化するステップをコンピュータに実行させる請求項1から6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記骨転移活性量を出力するステップは、
前記異常集積部位の面積、前記異常集積部位のカウントの最大値、及び、前記異常集積部位のカウントの平均値からなる群の少なくとも一つを前記骨転移活性量とともに出力する、請求項1から7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記異常集積部位の個数をカウントするステップと、
入力された骨シンチグラムの解剖学的構造を認識するステップと、
肋骨、椎骨、骨盤骨における異常集積部位の割合を求めるステップと、
前記異常集積部位の個数と肋骨、椎骨、骨盤骨における異常集積部位の割合とに基づいてEOD(Extent of disease)のスケールを決定するステップと、
前記EODのスケールを出力するステップと、
をコンピュータに実行させる請求項1から8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
被験者の二次元の骨シンチグラムを入力する入力部と、
入力された骨シンチグラムから異常集積部位を検出する検出部と、
前記異常集積部位の面積と前記異常集積部位におけるカウントの代表値とを乗じた値を骨転移活性量として求める骨転移活性量算出部と、
前記骨転移活性量を出力する出力部と、
を備える画像処理装置。
【請求項11】
被験者の前面と後面の二次元の骨シンチグラムを入力する入力部と、
入力された前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出する検出部と、
前面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と後面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値と、後面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と前面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値とに基づいて骨転移活性量を求める骨転移活性量算出部と、
前記骨転移活性量を出力する出力部と、
を備える画像処理装置。
【請求項12】
被験者の骨シンチグラムの画像処理を行う方法であって、
画像処理装置に、被験者の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、
前記画像処理装置が、入力された骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、
前記画像処理装置が、前記異常集積部位の面積と前記異常集積部位におけるカウントの代表値とを乗じた値を骨転移活性量として求めるステップと、
前記画像処理装置が、前記骨転移活性量を出力するステップと、
を備える画像処理方法。
【請求項13】
被験者の骨シンチグラムの画像処理を行う方法であって、
画像処理装置に、被験者の前面と後面の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、
前記画像処理装置が、入力された前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、
前記画像処理装置が、前面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と後面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値と、後面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と前面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値とに基づいて骨転移活性量を求めるステップと、
前記画像処理装置が、前記骨転移活性量を出力するステップと、
を備える画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、画像処理装置、および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の骨転移を検出する手法として、骨転移診断用の放射性医薬品投与により得られた二次元の骨シンチグラムを用いる方法が、広く用いられている。骨シンチグラムを用いた診断では、平面上に投影された画像上で異常集積部位を確認することにより、癌の骨転移部位の検出が行われている。
【0003】
また最近では、骨シンチグラムから骨領域を抽出した上で、骨領域上における癌の転移部位を抽出し、癌の骨転移領域の面積と骨領域全体の面積の比に基づいて算出されたBone Scan Index(以下、BSI)という指標が提案され、臨床現場で用いられている。BSIは、癌の骨への浸潤の広がりを表す指標であり、治療効果判定や経過観察に役立つとされている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Yusuf E. Erdi他「Quantitative Bone Metastases Analysis Based on Image Segmentation」The Journal of NUCLEAR MEDICINE 1997, 38:1401-1406.
【文献】大▲埼▼洋充、「骨SPECT/CT定量解析ソフトウェアGIBONEの紹介」核医学部会誌、第73号、2016年10月、p.40-43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、SPECTデータを用いた骨SUV(Standardized Uptake Value)算出が可能となった(例えば、非特許文献2)。これにより、MBV(Metabolic Bone Volume)集積体積(cm3)とSUV平均値(SUV mean)とを乗じたTBU(Total Bone Uptake)などの指標を用いた、骨SPECT画像の様々な定量評価が可能となっている。
【0006】
しかし、SPECT/CT装置は、普及が進んできているとはいえ、全国の医療現場に行き渡っている状況とは言い難い。このため、依然として、二次元の骨シンチグラムの定量解析が望まれている。
【0007】
本発明は、上記背景に鑑み、二次元の骨シンチグラムの新たな指標を算出する画像処理のプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプログラムは、被験者の骨シンチグラムの画像処理を行うためのプログラムであって、コンピュータに、被験者の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、入力された骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、前記異常集積部位の面積と前記異常集積部位におけるカウントの代表値とを乗じた値を骨転移活性量として求めるステップと、前記骨転移活性量を出力するステップとを実行させる。
【0009】
本発明のプログラムは、被験者の骨シンチグラムの画像処理を行うためのプログラムであって、コンピュータに、被験者の前面と後面の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、入力された前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、前面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と後面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値と、後面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と前面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値とに基づいて、骨転移活性量を求めるステップと、前記骨転移活性量を出力するステップとを実行させる。
【0010】
本発明のプログラムにおいて、前記骨転移活性量を求めるステップは、異常集積部位に対応する、前面の面積とカウントの代表値とを乗じた値(A)と後面の面積とカウントの代表値とを乗じた値(B)のそれぞれに、2分の1を乗じて加算することにより、前記骨転移活性量((A+B)/2)を求めてもよい。
【0011】
本発明のプログラムにおいて、前記骨転移活性量を求めるステップは、異常集積部位に対応する、前面の面積とカウントの代表値とを乗じた値と後面の面積とカウントの代表値とを乗じた値のそれぞれに、被験者の属性に応じた重みまたは骨格の解剖学的部位に応じた重みを乗じて加算することにより、前記骨転移活性量を求めてもよい。
【0012】
本発明のプログラムにおいて、前記骨転移活性量を求めるステップは、前面と後面とで骨格の解剖学的部位が重なる領域について、前面と後面のいずれか一方にある異常集積部位について、他方の面の対応箇所に異常集積がない場合には、当該異常集積部位の面積およびカウントの代表値に基づいて前記骨転移活性量を求めてもよい。
【0013】
本発明のプログラムにおいて、前記骨転移活性量を求めるステップは、前記カウントの代表値として、前記異常集積部位におけるカウントの平均値を用いてもよい。
【0014】
本発明のプログラムは、被験者の骨シンチグラムを正規化するステップをコンピュータに実行させてもよい。
【0015】
本発明のプログラムにおいて、前記骨転移活性量を出力するステップは、前記異常集積部位の面積、前記異常集積部位のカウントの最大値、及び、前記異常集積部位のカウントの平均値からなる群の少なくとも一つを前記骨転移活性量とともに出力してもよい。
【0016】
本発明のプログラムは、前記異常集積部位の個数をカウントするステップと、入力された骨シンチグラムの解剖学的構造を認識するステップと、肋骨、椎骨、骨盤骨における異常集積部位の割合を求めるステップと、前記異常集積部位の個数と肋骨、椎骨、骨盤骨における異常集積部位の割合とに基づいてEOD(Extent of disease)のスケールを決定するステップと、前記EODのスケールを出力するステップとをコンピュータに実行させてもよい。
【0017】
本発明の画像処理装置は、被験者の二次元の骨シンチグラムを入力する入力部と、入力された骨シンチグラムから異常集積部位を検出する検出部と、前記異常集積部位の面積と前記異常集積部位におけるカウントの代表値とを乗じた値を骨転移活性量として求める骨転移活性量算出部と、前記骨転移活性量を出力する出力部とを備える。
【0018】
本発明の画像処理装置は、被験者の前面と後面の二次元の骨シンチグラムを入力する入力部と、入力された前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出する検出部と、前面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と後面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値と、後面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と前面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とに基づいて、骨転移活性量を求める骨転移活性量算出部と、前記骨転移活性量を出力する出力部とを備える。
【0019】
本発明の画像処理方法は、被験者の骨シンチグラムの画像処理を行う方法であって、画像処理装置に、被験者の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、前記画像処理装置が、入力された骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、前記画像処理装置が、前記異常集積部位の面積と前記異常集積部位におけるカウントの代表値とを乗じた値を骨転移活性量として求めるステップと、前記画像処理装置が、前記骨転移活性量を出力するステップとを備える。
【0020】
本発明の画像処理方法は、被験者の骨シンチグラムの画像処理を行う方法であって、画像処理装置に、被験者の前面と後面の二次元の骨シンチグラムを入力するステップと、前記画像処理装置が、入力された前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出するステップと、前記画像処理装置が、前面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と後面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値と、後面の骨シンチグラムの前記異常集積部位と前面におけるその対応箇所の面積とカウントの代表値とを乗じた値とに基づいて、骨転移活性量を求めるステップと、前記画像処理装置が、前記骨転移活性量を出力するステップとを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、新しい指標として、異常集積部位の面積とそのカウントの代表値とを乗じた骨転移活性量を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態の画像処理装置の構成を示す図である。
【
図2】前面と後面の骨シンチグラムにおいて、異常集積部位またはその対応箇所を四角で囲った図である。
【
図3】本実施の形態で求めた骨転移活性量とTBUとの関係を示すグラフである。
【
図4】出力部にて出力される骨転移活性量の表示例を示す図である。
【
図5】骨転移活性量の算出で用いた異常集積部位について、カウントmeanとSUVmean、カウントmaxとSUVmax、ROIの面積とMBVとの関係を示した図である。
【
図6】本実施の形態の画像処理装置によって骨転移活性量を求める動作を示すフローチャートである。
【
図7】画像処理装置によってEODスケールを自動算出する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態のプログラム、画像処理装置、画像処理方法について、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る画像処理装置100の構成を示す図である。実施の形態の画像処理装置100は、入力部101と、正規化処理部102と、検出部103と、骨転移活性量算出部104と、出力部105とを備えている。入力部101は、被験者の骨シンチグラムの入力を受け付ける。入力される骨シンチグラムは、例えばSPECT装置により撮像された、被験者の前面の骨シンチグラムと後面の骨シンチグラムである。
【0024】
正規化処理部102は、被験者ごとに異なる正常骨領域の濃度値のばらつきを抑えるために、濃度値の正規化を行う機能を有する。正規化処理部102は、膀胱や腎臓等の正常高集積部位を除外した画像を用いて、濃度レンジ調整、正常骨レベルの同定、グレースケール正規化の処理により濃度値の正規化を行う。濃度レンジの調整は、例えば、入力画像の濃度値0を除く濃度ヒストグラムの累積上位0.2%のピクセル値が1023に、累積上位98%のピクセル値が0になるように線形変換する。また、正規化処理部102は、投与放射能量と撮像開始時と収集時間からカウントを正規化してもよい。この場合の正規化は、例えば、以下の式で表すことができる。
正規化された病変部のカウント値=減衰補正した病変部カウント値/(投与放射能量/体重)
【0025】
検出部103は、正規化された骨シンチグラムから、所定の閾値以上のカウントを有する異常集積部位を検出する機能を有する。異常集積部位は、読影者が選択した関心領域(ROI)に基づき検出してもよいし、所定の閾値を超えるピクセルを異常集積部位として検出してもよい。なお、異常集積部位は、「ホットスポット」とも呼ばれる。
【0026】
骨転移活性量算出部104は、検出部103にて検出された異常集積部位の面積と、そのカウントの代表値を求める。カウントとは、1ピクセル(画素)あたりの放射能量と撮像時間によって得られるものであり、画像を撮影する前に人間の体内に注入された放射性物質(例えば、テクネチウム-99m)が放出する放射線の強度に対応する。検出部103が検出した異常集積部位は複数の画素で構成されるので、骨転移活性量算出部104は、この複数の画素の面積(=異常集積部位を構成する画素数)と、これら複数の画素の中のカウントの代表値を求める。本実施の形態では、前面の骨シンチグラムと後面の骨シンチグラムを用いている。骨転移活性量算出部104は、異常集積部位の面積とカウントを乗じて、本実施の形態に係る骨転移活性量を求める。本実施の形態では、前面の骨シンチグラムと後面の骨シンチグラムを用いている。そこで、骨転移活性量算出部104は、前面と後面の異常集積部位の対応付けを行い、前面ROIのカウントの代表値と前面ROIの面積とを乗じた値と、前面ROIに対応する後面ROIのカウントの代表値と後面ROIの面積とを乗じた値に重み付けをしたもの、例えば、1/2を乗じて、これらを加算することにより、骨転移活性量を算出する。カウントの代表値としては、平均値、中央値、最頻値などが挙げられるが、カウントの平均値を用いることが好ましい。
【0027】
図2は、前面と後面の骨シンチグラムにおいて、異常集積部位であると読影者が判断して選択した領域またはその対応箇所を四角で囲った図である。
図2において、四角で囲った部分がROIであり、この例では、読影者が、モニタに骨シンチグラムに重ねて表示された所定領域の矩形をカーソルで移動させることで、異常集積部位として検出する領域を選択した。例えば前面の8番のように、異常集積部位ではない部分も四角で囲まれているが、これは後面の異常集積部位(に対応する箇所(この場合は後面の8番)をROIとして指定したものである。
【0028】
図2の例においては、骨転移活性量算出部104は、前面と後面のいずれかにおいて異常集積部位として検出されたROIの面積、および、前面ROIのカウントの平均値および後面ROIのカウントの平均値を求める。例えば、「3」で示す部分は、前面と後面のいずれの骨シンチグラムにおいても異常集積部位であり、対応している。この場合は、前面と後面の骨シンチグラムの異常集積部位の形状を合わせ、各々の異常集積部位の面積とカウントの平均値を求める。そして、前面の面積とカウントの平均値とを乗じた値(A
1)、および、後面の面積とカウントの平均値とを乗じた値(B
1)の平均をとることにより、骨転移活性量((A
1+B
1)/2)を算出する。
【0029】
「8」で示す部分は、後面の骨シンチグラムにおいては異常集積部位であるが、前面の骨シンチグラムでは異常集積部位ではない。しかし、この場合にも、骨転移活性量算出部104は、後面の骨シンチグラムでの異常集積部位「8」に対応する箇所として、前面の骨シンチグラムの対応箇所を特定し、異常集積部位とその対応箇所の面積とカウントの平均値をそれぞれ求める。そして、前面の面積とカウントの平均値とを乗じた値(A2)、および、後面の面積とカウントの平均値とを乗じた値(B2)の平均をとることにより、骨転移活性量((A2+B2)/2)を算出する。「8」のような場合は異常集積のない前面の同部位の面積とカウントの平均値とを乗じると、過小評価につながる可能性があるので、A2は、前面像を骨以外の部分(バックグラウンド)の同面積とカウントの平均値とを乗じた値(A2’)としてもよい。
【0030】
なお、
図2に示す例では、読影者が選択した領域を異常集積部位として検出する例を挙げたが、所定の閾値を超えるピクセルをホットスポットとして検出する場合には、検出されたホットスポットの領域をそのままROIとして用いることができる。
【0031】
このように、骨転移活性量算出部104は、異常集積部位の面積に当該異常集積部位のカウントの代表値を乗じることで、異常集積部位の指標として骨転移活性量を求める。
【0032】
次に、本実施の形態の画像処理装置100で求めた骨転移活性量の有用性について説明する。
図3は、本実施の形態の骨転移活性量算出部104により4人の被験者の68の異常集積部位について求めた骨転移活性量を横軸に、同じ被験者について三次元画像を撮像して、骨SPECT/CT定量解析ソフトウェア「GI-BONE」(日本メジフィジックス株式会社の登録商標)で、対応する異常集積部位について求めたTBU(Total Bone Uptake)を縦軸にとったグラフである。
図3に示すように、本実施の形態で求めた骨転移活性量は、GI-BONEで求めたTBUと高い相関を示した。つまり、本実施の形態の画像処理装置100によれば、二次元の骨シンチグラムを用いて、TBUを代用する指標が得られた。
【0033】
出力部105は、骨転移活性量算出部104にて求めた骨転移活性量のデータをモニタ等に出力する機能を有する。
図4は、出力部105にて出力される骨転移活性量データの表示例を示す図である。
図4に示す表示例では、上段に、異常集積部位を重畳した被験者の骨シンチグラムを表示し、下段に各異常集積部位についてのデータを表示している。上段の4つの骨シンチグラムは、骨転移が診断された癌患者の前面および後面の骨シンチグラムと、同患者が抗癌剤による治療を行った後の前面および後面の骨シンチグラムである。
図4の骨シンチグラムでは、所定の閾値を超えるピクセルが異常集積部位として検出されている。
【0034】
下段は、骨転移の診断時(すなわち治療前)と治療後のそれぞれにおける骨転移活性量とその変化率を示している。上から、「BSI」は、Bone Scan Indexの略であり、癌の骨転移領域の面積と骨領域全体の面積の比である。「病変個数」は、検出された異常集積部位の個数である。「各ROIのカウントmax」において、各ROIは、各異常集積部位を指し、カウントmaxは異常集積部位にある画素の中の最大カウントの値である。「各ROIのカウントmean」は、各異常集積部位のカウントの平均値である。「各ROIの面積」は、各異常集積部位の面積である。「各ROIの骨転移活性量」は、各異常集積部位の面積×カウントmeanの値である。「全ROIの面積」は、検出された全異常集積部位の面積である。「全ROIの骨転移活性量」は、「各ROIの骨転移活性量」を合算した値である。
【0035】
図5は、
図3で示した骨転移活性量の算出で用いた68の異常集積部位について、カウントmeanとSUVmean、カウントmaxとSUVmax、ROIの面積とMBVとの関係を示した図である。
図5に示すようにROIの面積とMBV、カウントmaxとSUVmaxとはそれぞれ相関している。
【0036】
図6は、本実施の形態の画像処理装置100によって骨転移活性量を求める動作を示すフローチャートである。画像処理装置100は、被験者の前面および後面の骨シンチグラムの入力を受け付け(S10)、入力された骨シンチグラムの正規化を行う(S11)。続いて、画像処理装置100は、前面と後面の骨シンチグラムから異常集積部位を検出し(S12)、異常集積部位について前面と後面の対応付けを行う(S13)。
【0037】
このとき、上述したように、前面の異常集積部位に対応する異常集積部位が後面にない場合、あるいはその逆の場合には、画像処理装置100は、異常集積部位に対応する箇所を特定する。前面と後面に対応する異常集積部位があるがその大きさが異なる場合には、前後の異常集積部位の形状が合うように、はみ出している異常集積部位の方に合わせて、異常集積部位の形状を設定し直す。
【0038】
画像処理装置100は、各異常集積部位の面積及びカウントの代表値に基づいて、各異常集積部位の骨転移活性量と、異常集積部位全体の骨転移活性量を算出し(S14)、その結果を出力する(S15)。
【0039】
以上、本実施の形態の画像処理装置の構成について説明したが、上記した画像処理装置のハードウェアの例は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、ディスプレイ、キーボード、マウス、通信インターフェース等を備えたコンピュータである。上記した各機能を実現するモジュールを有するプログラムをRAMまたはROMに格納しておき、CPUによって当該プログラムを実行することによって、上記した画像処理装置が実現される。このようなプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0040】
本実施の形態の画像処理装置等によれば、二次元の骨シンチグラムを用いて、従来のTBUと相関の高い指標として骨転移活性量を求めることができるので、SPECT/CT装置を持たない医療現場においても、診断に役立つ指標を提供することができる。
【0041】
以上、本発明の画像処理装置等について、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明の画像処理装置は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0042】
上記した
図2の例においては、前面の骨シンチグラムで求めた面積×平均カウントと後面の骨シンチグラムで求めた面積×平均カウントの平均をとっており、これは、前面と後面のそれぞれで求めた値に1/2ずつの重み付けをして加算していたことに相当する。別の例として、前面と後面の異常集積部位の面積×カウントの代表値(好ましくは平均値)を加算する際の重みを、被験者の属性によって変更してもよい。例えば、年齢、性別、BMI等の被験者の属性に応じて、前面と後面の異常集積部位の重みを変更してもよい。被験者の属性によって前面と後面の放射線の透過量が異なるが、属性を考慮した重みを適用して前後のカウントを加算することで、属性による影響を低減できる。
【0043】
前面と後面の異常集積部位の面積×カウントの代表値(好ましくは平均値)を加算する際の重みは、頭蓋骨、肩甲骨、仙骨、頚椎等の骨格の解剖学的部位によって変更してもよい。
【0044】
例えば、胸骨と胸椎、または、肋骨と肩甲骨のように、解剖学的部位が前後に重なっている領域では、例えば、胸椎にあるホットスポットが後面から見えても前面からは見えない場合や、その逆が考えられる。このように前後で重なりがある領域で、前面と後面のいずれかのみに異常集積部位がある場合には、反対側の正常骨についてカウントを用いないこととしてもよい。
【0045】
上記した実施の形態の
図2の例では、異常集積部位の代表値として前面ROIのカウントと後面ROIのカウントとの平均値を用いたが、前述したように、代表値として平均値以外の値を用いてもよい。例えば、異常集積部位のカウントの中央値や最頻値を用いてもよい。
【0046】
上記した実施の形態では、被験者の前面と後面の骨シンチグラムを用いる例を挙げたが、前面または後面のいずれかの骨シンチグラムのみによっても、骨転移活性量を求めることができる。
【0047】
本実施の形態の画像処理装置100は、骨シンチグラムの解剖学的構造を解析するセグメンテーション機能と、骨転移部位の個数をカウントする機能を有し、EODスケールを自動算出する機能を有してもよい。
図7は、画像処理装置100によってEODスケールを自動算出する動作を示すフローチャートである。
【0048】
画像処理装置100は、被験者の前面および後面の骨シンチグラムの入力を受け付け(S20)、入力された骨シンチグラムの正規化を行う(S21)。続いて、画像処理装置100は、セグメンテーション機能により、骨シンチグラムの解剖学的構造を認識する(S22)。
【0049】
次に、画像処理装置100は、異常集積部位の検出と、骨転移部位の個数のカウントを行う(S23)。なお、個数のカウントの仕方は、1椎体の大きさを「2」としてカウントする。このようにしてカウントした個数を、本書では「骨転移部位の個数」または「骨転移個数」と呼ぶ。
【0050】
骨シンチグラムとして、前面と後面の骨シンチグラムを用いている場合には、前面と後面の骨シンチグラムのそれぞれに映る異常集積部位が同一のものか否かを判定して、骨転移部位の個数をカウントする。例えば、前面と後面とで骨格の解剖学的部位が重なっていない領域については、前面と後面で対応する位置にある異常集積部位は同一の異常集積部位と判定して骨転移個数をカウントし、前面と後面とで骨格の解剖学的部位が重なっている領域については、対応する位置に異常集積部位がある場合には別の異常集積部位と判定し、それぞれの異常集積部位について骨転移個数をカウントする。
【0051】
次に、画像処理装置100は、肋骨、椎骨、骨盤骨における異常集積部位の割合を算出する(S24)。画像処理装置100は、骨転移個数と、肋骨、椎骨、骨盤骨における異常集積部位の割合に基づいて、EODスケールを決定する(S25)。骨転移個数が6個未満の場合には、EODは「1」と決定する。骨転移個数が6個~20個の場合には、EODは「2」と決定する。骨転移個数が20個を超え、スーパースキャンでない場合には、EODは「3」と決定する。スーパースキャン、または、異常集積部位が肋骨、椎骨、骨盤骨の75%を超える場合には、EODは「4」と決定する。画像処理装置100は、決定したEODスケールを出力する(S26)。
【0052】
上記した実施の形態では、正規化処理の一例を挙げたが、上記とは異なる正規化処理を行ってもよい。例えば、骨シンチグラムからホットスポットを除去した正常領域の平均強度(例えばA)を計算し、平均強度を用いて適切な正規化因子を決定し、元の骨シンチグラムに正規化因子を適用して正規化を行ってもよい。適切な正規化因子は、予め定義された基準強度レベルに関連して決定される。例えば、このレベルを1000に設定した場合、正規化因子Bは、(B=1000/A)のように計算され、Bを元の骨シンチグラムに乗じることによって正規化する。
【0053】
また、正規化処理の別の例として、骨シンチグラムの正常骨領域に基づいて基準値を設定し、基準値に基づいて骨シンチグラムの正規化を行ってもよい。基準値の求め方の一例として、本出願人が出願したWO2017/010119に記載した多重閾値法を利用した方法を採用できる。簡潔に述べると、まず、骨シンチグラムの画素値ヒストグラムを作成し、画素値ヒストグラムに基づいて、画素値に関する複数の閾値を設定する(多重閾値法)。そして、設定した複数の閾値の各々に対して画素値平均値を計算し、計算した画素値平均値を、値の大きな順序に並べ、画素値平均値が小さな領域を近似する直線を一つ決定し、その切片を基準値とする。
【0054】
また、異常集積部位を検出する別の形態は、骨シンチグラムを走査し、ある閾値を超えるピクセルを識別する閾値走査部を有する。好適な異常集積部位検出部は、形状識別部により定義された異なる複数の解剖学的部位に対する異なる複数の閾値を有する。これにより、解剖学的部位に応じて適切に異常集積部位を検出できる。
【0055】
また、ニューラルネットワーク等の機械学習を利用して異常集積部位の検出を行ってもよい。学習装置の一つの形態は、被験者のシンチグラムから骨転移を検出するためのニューラルネットワークのモデルを生成する学習装置であって、複数の被験者のシンチグラムと各シンチグラムにおける骨転移領域及び非骨転移領域の正解ラベルを教師データとして入力する入力部と、教師データを用いて骨シンチグラムの骨転移領域の検出に用いるニューラルネットワークのモデルの学習を行う学習部とを備える。この学習装置によって、学習したモデルに、被験者の骨シンチグラムを入力し、異常集積部位を検出する。なお、この技術に関しては、本出願人が出願したWO2019/221222に詳細に記載している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、骨シンチグラムの画像処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0057】
100 画像処理装置
101 入力部
102 正規化処理部
103 検出部
104 骨転移活性量算出部
105 出力部