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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】撮像装置の製造方法および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20231109BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20231109BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231109BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20231109BHJP
   H04N 25/00 20230101ALI20231109BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B17/02
G03B15/00 V
H04N23/50
H04N25/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020071288
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167907
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】卯野 義矩
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-014269(JP,A)
【文献】特開2013-029538(JP,A)
【文献】特開昭49-029132(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167994(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101986182(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 15/00
G03B 30/00
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を構成する第1のレンズを保持する第1のレンズバレルが取り付けられたフレームと、前記撮像光学系を構成する第2のレンズを保持する第2のレンズバレルと、撮像素子を実装した基板と、を備える撮像装置の製造方法であって、
スペーサを介して前記フレームに前記基板を取り付ける、基板取り付けステップと、
前記第2のレンズバレルと、前記第1のレンズバレルを取り付けた前記フレームからなる結合体との取り付け位置を決定するステップと、
取り付け位置が決定された前記第2のレンズバレルと前記結合体とをあらかじめ定められた量の接合部材によって取り付けるステップと、を含み、
前記基板取り付けステップで使用されるスペーサは、前記撮像素子が前記撮像光学系を介して結像する像を受光可能であるように、前記スペーサの厚みまたは個数が設定されていて、
前記接合部材の厚みが1つの前記スペーサの厚み未満である、撮像装置の製造方法。
【請求項2】
前記スペーサは、金属またはセラミックである、請求項1に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項3】
前記接合部材は、紫外線硬化型の接着剤である、請求項1または2に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2のレンズバレルと前記結合体とが前記接合部材によって取り付けられる前に、設定された前記スペーサの厚みまたは個数で前記フレームと前記基板とが取り付けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項5】
撮像光学系を構成する第1のレンズを保持する第1のレンズバレルが取り付けられたフレームと、
前記撮像光学系を構成する第2のレンズを保持する第2のレンズバレルと、
撮像素子を実装した基板と、
前記フレームと前記基板との間に位置するスペーサと、を備え、
前記第2のレンズバレルは、前記第1のレンズバレルを取り付けた前記フレームと接合部材によって取り付けられて、前記フレームとの間に所定の厚みを形成し、
前記撮像素子は、前記スペーサの厚みまたは個数によって調整された位置であって、前記撮像光学系を介して結像する像を受光可能な位置に設けられていて、
前記接合部材の厚みが1つの前記スペーサの厚み未満である、撮像装置。
【請求項6】
前記スペーサは、金属またはセラミックである、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記接合部材は、紫外線硬化型の接着剤である、請求項5または6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1のレンズバレルは、撮像光学系の光軸と交差する方向に突出するフランジ部を有し、
前記フレームは、前記フランジ部に取り付けられている、請求項5から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記第1のレンズバレルの物体側の端部に位置する、請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記フレームは、前記第1のレンズバレルの少なくとも一部を収納し、前記フランジ部を除いて前記第1のレンズバレルとの間に所定の間隔を有する、請求項8または9に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置の製造方法および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置に対して、さらなる高画素化および小型化が求められている。画素ピッチの縮小化に伴い、各レンズの間および撮像素子と対物レンズとの間など、許容される組立誤差も小さくなっている。
【0003】
例えば特許文献1は、レンズと保持枠(レンズバレル)で構成されるユニットを2つ備え、組み立て時に一方のユニットに対して他方のユニットを光軸方向に移動させて、撮像素子に対する対物レンズのピント合わせをした後、熱硬化樹脂によって固定することが可能な撮像装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/064614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、撮像装置は車両に搭載されることがある。車両に搭載される撮像装置は、屋内使用に比べて、温度変化および湿度変化の大きい環境下で使用されることがある。温度および湿度の大きな変化は、保持枠を含む撮像装置の構成要素を伸縮させて、光学性能に影響を与えるおそれがある。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、温度および湿度等の環境の変化による光学性能の劣化を抑える撮像装置の製造方法および撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る撮像装置の製造方法は、
撮像光学系を構成する第1のレンズを保持する第1のレンズバレルが取り付けられたフレームと、前記撮像光学系を構成する第2のレンズを保持する第2のレンズバレルと、撮像素子を実装した基板と、を備える撮像装置の製造方法であって、
スペーサを介して前記フレームに前記基板を取り付ける、基板取り付けステップと、
前記第2のレンズバレルと、前記第1のレンズバレルを取り付けた前記フレームからなる結合体との取り付け位置を決定するステップと、
取り付け位置が決定された前記第2のレンズバレルと前記結合体とをあらかじめ定められた量の接合部材によって取り付けるステップと、を含み、
前記基板取り付けステップで使用されるスペーサは、前記撮像素子が前記撮像光学系を介して結像する像を受光可能であるように、前記スペーサの厚みまたは個数が設定されている。
【0008】
本開示の一実施形態に係る撮像装置は、
撮像光学系を構成する第1のレンズを保持する第1のレンズバレルが取り付けられたフレームと、
前記撮像光学系を構成する第2のレンズを保持する第2のレンズバレルと、
撮像素子を実装した基板と、
前記フレームと前記基板との間に位置するスペーサと、を備え、
前記第2のレンズバレルは、前記第1のレンズバレルを取り付けた前記フレームと接合部材によって取り付けられて、前記フレームとの間に所定の厚みを形成し、
前記撮像素子は、前記スペーサの厚みまたは個数によって調整された位置であって、前記撮像光学系を介して結像する像を受光可能な位置に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、温度および湿度等の環境の変化による光学性能の劣化を抑える撮像装置の製造方法および撮像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の主な要素を示す分解図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の外観図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の主な要素を示す断面図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の製造方法のフローチャートである。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の車両への搭載例を示す図である。
図6図6は、比較例の撮像装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(撮像装置の構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る撮像装置10の主な要素を示す分解図である。図2は、本実施形態に係る撮像装置10の外観図である。また、図3は、本実施形態に係る撮像装置10の主な要素を示す断面図である。図3図2に示されるA-Aにおける撮像装置10の断面において、筐体等の内部にある主な要素を示す。ここで、図1図3に示すように、撮像装置10の向きに対応する直交座標が設定される。z軸方向は、撮像装置10の光軸と平行な方向である。撮像装置10は、撮像装置10よりz軸正方向に存在する物体である被写体を撮像する。z軸正方向を物体側または前方と表現することがある。また、z軸負方向を像側または後方と表現することがある。y軸方向は、撮像装置10の幅方向に対応する。また、x軸方向は、撮像装置10の高さ方向に対応する。以下において、この直交座標の軸または平面を用いて、位置関係を説明することがある。
【0012】
図1に示すように、撮像装置10は、第2のレンズバレル22と、撮像光学系20と、第1のレンズバレル21と、撮像素子カバー33と、フレーム30と、スペーサ40と、撮像素子31と、基板32と、を備える。また、図2に示すように、撮像装置10は、前部筐体12と、後部筐体13と、配線部11と、を備える。また、図3に示すように、撮像装置10は、接合部材23を、さらに備える。つまり、撮像装置10は、図1および図3に示される要素が、図2に示される前部筐体12および後部筐体13で覆われる構造を有する。撮像装置10が備える構成要素の詳細については後述する。ここで、図1図3は例示である。撮像装置10は図1~3に示す構成要素の全てを含まなくてよい。また、撮像装置10は図1~3に示す以外の構成要素を備えていてよい。
【0013】
前部筐体12は、撮像装置10の前方に位置する筐体であって、衝撃等から内部の部品を保護する。前部筐体12は、撮像光学系20への入射光を遮らない開口を有する。前部筐体12の開口は、撮像光学系20および第2のレンズバレル22の一部を露出させる。前部筐体12は、例えば前部筐体12の開口と第2のレンズバレル22の突出部22Aとが嵌合することによって、第2のレンズバレル22と接続されてよい。別の例として、前部筐体12と第2のレンズバレル22とは、接着剤または溶着等の別の手法によって接続されてよい。前部筐体12は、撮像光学系20を後方へと押圧し、撮像光学系20が開口から脱落することを防止する機能も有する。
【0014】
前部筐体12の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。前部筐体12の材料となる樹脂は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリスチレン(PS)等であってよいが、これらに限定されない。
【0015】
後部筐体13は、撮像装置10の後方に位置する筐体であって、衝撃等から内部の部品を保護する。後部筐体13は、図1および図3に示される要素を挟んだ状態で、前部筐体12に対して位置が固定されてよい。後部筐体13と前部筐体12とは、例えば接着剤によって接続されるが、溶着、嵌合またはネジ留め等の別の手法によって接続されてよい。後部筐体13の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。後部筐体13の材料となる樹脂は、例えば前部筐体12の説明で列挙した樹脂であるが、それらに限定されない。
【0016】
配線部11は、撮像装置10への電力供給線および撮像素子31が出力する画像信号を出力する信号線等を含む配線を備える。配線部11の配線は、後部筐体13に設けられた開口から撮像装置10の外部に出て、撮像装置10の外部にある電子機器と接続されてよい。
【0017】
撮像光学系20は、少なくとも1つの光学部材を有し、焦点距離および焦点深度等の所望の光学特性を満たすように設計される。本実施形態において、撮像光学系20は、光学部材として、第1のレンズ201と、レンズ202と、レンズ203と、第2のレンズ204と、レンズ205と、を有する。撮像光学系20はさらに絞りおよび光学フィルタ等を含み得る。第1のレンズ201と、レンズ202と、レンズ203と、第2のレンズ204と、レンズ205は、例えばプラスチックレンズであるが、一部または全部がガラスレンズであってよい。また、撮像光学系20が含むレンズの数は、1つ以上かつ4つ以下であってよいし、6つ以上であってよい。
【0018】
第1のレンズバレル21は、撮像光学系20を構成する一部のレンズを保持する部材である。第1のレンズバレル21は、第2のレンズバレル22より像側に、すなわち後方に配置される。本実施形態において、第1のレンズバレル21は、第1のレンズ201を保持する。また、第1のレンズバレル21は、レンズ202と、レンズ203と、を保持する。本実施形態において、第1のレンズ201は、第1のレンズバレル21が保持するレンズのうちで、最も物体側に、すなわち前方に位置するものをいう。第1のレンズ201、レンズ202、レンズ203は透過光を収束させるものであってよい。第1のレンズバレル21の保持するレンズ群の取り付け位置精度は、後述する第2のレンズバレル22の保持するレンズ群の取り付け位置精度に対して高いものが求められる。すなわち、第1のレンズバレル21の保持するレンズ群の光軸方向の位置の変化による結像位置の変化は、第2のレンズバレル22の保持するレンズ群の光軸方向の位置の変化による結像位置の変化よりも大きい。
【0019】
第1のレンズバレル21は、撮像光学系20の光軸を囲む筒状の部分と、撮像光学系20の光軸と交差する方向に突出するフランジ部21Aと、を有する。フランジ部21Aは、撮像光学系20の光軸と直交する平面(xy平面)の方向に突出してよいし、xy平面からz軸方向に傾いた平面の方向に突出してよい。フランジ部21Aは、第1のレンズバレル21の物体側の端部に位置する。詳細は後述するが、フレーム30が、フランジ部21Aに取り付けられている。フランジ部21Aは、フレーム30とネジ留めが可能であるように、ネジ穴を有してよい。ここで、第1のレンズバレル21とフレーム30とは、ネジ留めでなく、溶着または嵌合等の別の手法によって接続されてよい。
【0020】
第1のレンズバレル21の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。第1のレンズバレル21の材料となる樹脂は、例えば前部筐体12の説明で列挙した樹脂であるが、それらに限定されない。第1のレンズバレル21の材料となる樹脂は、吸湿性の低いものが好ましい。別の例として、第1のレンズバレル21の材料は、アルミ合金、マグネシウム合金または亜鉛合金等の金属であってよい。
【0021】
第2のレンズバレル22は、撮像光学系20を構成する一部のレンズを保持する部材である。第2のレンズバレル22は、第1のレンズバレル21より物体側に、すなわち前方に配置される。本実施形態において、第2のレンズバレル22は、第2のレンズ204を保持する。また、第2のレンズバレル22は、レンズ205を保持する。本実施形態において、第2のレンズ204は、第2のレンズバレル22が保持するレンズのうちで、最も物体側に、すなわち前方に位置するものをいう。第2のレンズバレル22は、撮像光学系20の光軸を囲む筒状の形状を有する。第2のレンズバレル22の物体側の端部は、z軸正方向に突出した突出部22Aであって、上記のように前部筐体12と接続され得る。第2のレンズ204とレンズ205は透過光を拡散させるものであってよい。
【0022】
第2のレンズバレル22の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。第2のレンズバレル22の材料となる樹脂は、例えば前部筐体12の説明で列挙した樹脂であるが、それらに限定されない。第2のレンズバレル22の材料となる樹脂は、吸湿性の低いものが好ましい。別の例として、第2のレンズバレル22の材料は、アルミ合金、マグネシウム合金または亜鉛合金等の金属であってよい。
【0023】
接合部材23は、第1のレンズバレル21と第2のレンズバレル22とを接合する部材である。接合部材23は、第2のレンズバレル22の第1のレンズバレル21に対する位置を、撮像素子31が撮像光学系20を介して結像する像を受光可能であるように、6軸方向で調整する。ここで、6軸方向の調整は、図1図3に示されるx軸方向、y軸方向およびz軸方向に加えて、これらの軸に対する回転方向(パン、チルトおよびロール)での調整を意味する。接合部材23は、第1のレンズバレル21の物体側の端部と、第2のレンズバレル22の像側の端部と、を接合する。接合部材23は、第1のレンズバレル21と第2のレンズバレル22との間に所定の厚みを形成することが可能な接着剤であってよい。つまり、第2のレンズバレル22は、第1のレンズバレル21に接着剤によって取り付けられてよい。ここで、後述するように、所定の厚みはスペーサ40によって調整可能な厚みを下回る、小さな値である。接合部材23が接着剤である場合に、硬化時の収縮によって光学的なずれが生じないように、接着剤は紫外線硬化型であることが好ましいがこれに限られず熱硬化型の接着剤も使用しうる。別の例として、第1のレンズバレル21と第2のレンズバレル22とが金属である場合に、接合部材23はハンダであってよい。別の例として、第1のレンズバレル21と第2のレンズバレル22とがネジ留めされて、接合部材23はネジまたはバネ付ネジであってよい。
【0024】
フレーム30は、第1のレンズバレル21と、撮像素子31を実装した基板32と、に取り付けられている。フレーム30は、第1のレンズバレル21の少なくとも一部を収納するように、内部に空間を有する。図1に示すように、フレーム30は、物体側端部において第1のレンズバレル21のフランジ部21Aに、ネジ留めによって取り付けられている。ここで、第1のレンズ201は、撮像光学系20の設計によって様々な形状を取り得る。そのため、以下において、位置関係を比較する場合に、第1のレンズ201の重心Gを用いて比較が行われる。図3に示すように、フレーム30とフランジ部21Aとが接合する取り付け位置Cは、第1のレンズ201の重心Gより物体側に位置する。つまり、フレーム30は第1のレンズ201よりも物体側において第1のレンズバレル21に取り付けられている。このような構造は、環境変化による撮像装置10への影響を計算し易くして、光学設計を容易にする。つまり、第1のレンズバレル21の形状の変化、それに伴う第1のレンズバレル21が保持するレンズの性能の変化、およびフレーム30の形状の変化を、取り付け位置Cを統一された基準位置にして算出することができる。また、温度、湿度などの環境変化に対しては、第1のレンズバレル21とフレーム30とが、取り付け位置Cを基準に各々が伸縮するため、第1のレンズバレル21が保持するレンズの撮像素子31に対する合焦が維持されやすい。また、フレーム30は、フランジ部21Aを除いて、第1のレンズバレル21との間に所定の間隔、すなわち隙間を有する。第1のレンズバレル21が使用環境の変化によって形状が変化する場合でも、隙間の範囲内であれば光学性能が保たれる。換言すると、第1のレンズバレル21が隙間の範囲を超えて形状が変化する場合に、第1のレンズバレル21は、フレーム30とフランジ部21A以外で接触し、光学性能の劣化が生じ得る。
【0025】
また、フレーム30は、スペーサ40を介して基板32に取り付けられる。図1に示すように、フレーム30は、撮像素子カバー33およびスペーサ40を挟んで、基板32とネジ留めによって取り付けられてよい。
【0026】
フレーム30の材料は例えば金属であるが、金属に限定されない。フレーム30の材料となる金属は、例えばADC12等のアルミニウム合金であってよいし、マグネシウム合金または亜鉛合金であってよい。寸法精度を高める観点から、フレーム30はダイカストであってよい。
【0027】
撮像素子カバー33は、撮像光学系20から撮像素子31の受光面へ入射する被写体像を遮らない開口を有する。また、撮像素子カバー33は、被写体像以外の周囲からの光が、撮像素子31の受光面へ入射することを防ぐ。撮像素子カバー33の材料は例えば樹脂であるが、樹脂に限定されない。
【0028】
スペーサ40は、フレーム30と基板32との間に位置し、1軸方向(z軸方向)においてフレーム30と基板32の間隔を調整するために用いられる。スペーサ40は、フレーム30と基板32との間に1つ以上、挿入される。フレーム30と基板32とのz軸方向の間隔は、スペーサ40の厚みまたは個数によって調整される。つまり、撮像素子31が撮像光学系20を介して結像する像を受光可能な位置にあるように、スペーサ40によってフレーム30と基板32とのz軸方向の間隔を調整することが可能である。挿入するスペーサ40の数を変更することによって、z軸方向の間隔の調整が可能である。一例として、1つのスペーサ40のz方向の厚みは50μmであり得る。この場合に、50μm単位で、z軸方向の間隔の調整が可能である。1つのスペーサ40のz方向の厚みは小さい程良く、例えば100μm以下であることが好ましい。1つのスペーサ40のz方向の厚みは50μm以下であることがより好ましい。1つのスペーサ40のz方向の厚みは20μm以下であることがさらに好ましい。また、z方向の厚みが異なる複数のスペーサ40が用いられてよい。また、1つのスペーサ40の厚みは研磨、エッチング処理等の様々な加工を用いて定めることができる。
【0029】
スペーサ40の材料は例えば金属であるが、金属に限定されない。また、スペーサ40の材料は、線膨張係数が小さいことが好ましい。スペーサ40の材料となる金属は、例えば線膨張係数が16以下のステンレス鋼であってよい。別の例として、スペーサ40の材料はセラミックであってよい。また、スペーサ40は、線膨張係数が小さければ、樹脂が用いられてよい。
【0030】
撮像素子31は、撮像光学系20の像側で、撮像光学系20を介して結像する被写体像を受光可能に配置される。撮像素子31は、受光面上に結像される被写体像を撮像して画像信号に変換して出力する。撮像素子31としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いることができる。
【0031】
基板32は、回路基板であって、少なくとも撮像素子31を含む電子部品を実装する。基板32は、前方の面に撮像素子31を実装する。つまり、基板32は、撮像素子31の受光面が、撮像光学系20介して結像する被写体像を受光できるように実装する。基板32は、撮像素子カバー33およびスペーサ40を挟んだ状態で、フレーム30に対して位置が固定される。基板32は、フレーム30とネジ留めされるように、ネジの径よりも大きなネジ穴を備えてよい。基板32は、ネジ留めされる場合に、撮像素子31の受光面上に被写体像が結像されるように、x軸方向およびy軸方向の2軸方向において位置が調整される。
【0032】
(製造方法)
図4は、本開示の一実施形態に係る撮像装置10の製造方法の例を示す。上記構成の撮像装置10は、図4のフローチャートに従って製造され得る。まず、第1のレンズバレル21がフレーム30に取り付けられる(ステップS1)。具体的には、第1のレンズバレル21のフランジ部21Aと、フレーム30の前方とがネジ留めされる。
【0033】
次に、スペーサ40を介して、第1のレンズバレル21が取り付けられたフレーム30に、基板32を取り付ける(ステップS2、基板取り付けステップ)。具体的には、スペーサ40を挟んで、撮像素子31を実装した基板32と、フレーム30の後方とがネジ留めされる。ステップS2において、基板32に実装された撮像素子31のフレーム30に対するz軸方向の位置は、挿入されるスペーサ40の厚みまたは個数によって調整され得る。また、ステップS2において、撮像素子31のフレーム30に対するx軸方向およびy軸方向の位置は、基板32のネジ留めの位置によって調整され得る。ここで、挿入されるべきスペーサ40のz軸方向の厚みまたは個数は測定装置によって予め計測されてよい。例えば、フレーム30に取り付けられた第1のレンズバレル21のレンズの焦点位置を計測装置で測定することで、設定すべきスペーサ40のz軸方向の厚みが求められてよい。もしくは、第1のレンズバレルを取り付けたフレーム30に、第2のレンズバレル22を仮置きした状態で撮像光学系20が測定されてよい。ここで、設定すべきスペーサ40のz軸方向の厚みとは、第2のレンズバレル22が第1のレンズバレル21および基板32が取り付けられたフレーム30に所定の厚さの接合部材23で取り付けられた場合に、撮像素子31の受光面に、撮像光学系20介して結像する被写体像が結像できるだけの厚みである。
【0034】
次に、第2のレンズバレル22と、結合体との取り付け位置が決定される(ステップS3)。ここで、結合体は、第1のレンズバレルを取り付けたフレーム30からなる。より具体的には、結合体は第1のレンズバレル21および基板32が取り付けられたフレーム30で構成される。取り付け位置は、撮像素子31の受光面が、撮像光学系20介して結像する被写体像を受光できるように決定される。また、取り付け位置は、第2のレンズバレル22が保持する第2のレンズ204およびレンズ205の光軸を、第1のレンズバレル21が保持する第1のレンズ201、レンズ202およびレンズ203の光軸に合わせるように決定されてよい。
【0035】
次に、第2のレンズバレル22と、結合体とが接合部材23によって取り付けられる(ステップS4)。接合部材23は、第2のレンズバレル22とフレーム30とを、6軸方向で調整して取り付ける。
【0036】
ここで、接合部材23は、スペーサ40によって調整できない間隔を調整するために、第2のレンズバレル22と第1のレンズバレル21との間に所定の厚みを形成する。上記のように、1枚のスペーサ40の厚みは100μm以下であることが好ましい。この場合に、接合部材23は、スペーサ40によって調整できない100μm未満の厚みを形成すればよい。例えば接合部材23は、100μm未満の厚みを形成し得る少量の接着剤であってよい。一般に、接着剤は、温度上昇および吸湿によって体積が変動する。しかし、接合部材23が少量の接着剤で構成される場合には、温度上昇および吸湿による体積の変動は小さい。ここで、この製造方法では、第2のレンズバレル22と結合体とが接合部材23によって取り付けられる前に、設定されたスペーサ40の厚みまたは個数でフレーム30と基板32とが取り付けられる。第1のレンズバレル21と撮像素子31との位置関係はスペーサ40の厚みまたは個数に基づいて決定されているので、第2のレンズバレル22とフレーム30の取り付け位置との距離が概ね定まっている。したがって、接合部材23はあらかじめ定められた一定量の少量の接着剤で構成されてよい。このとき、組み立て上のクリアランスをほぼ一定にすることができる。
【0037】
(撮像装置の車両への搭載)
上記の構成の撮像装置10は、例えば車載カメラとして車両1に搭載されてよい。撮像装置10は、前方を走行する車の挙動を撮影可能なように、車両1の前方外部に固定されてよい。撮像装置10は、車両1の後続車を正面から撮影可能なように、車両1の後方外部に固定されてよい。別の例として、撮像装置10は、例えば図5に示すように、サイドミラー内にあって電子ミラーを構成してよい。このとき、撮像装置10は車両1の後方の画像を撮像して、運転支援情報として、運転者に提供し得る。撮像装置10によって撮像された画像は、車両1の室内にある表示装置に表示されてよい。表示装置は、運転者が運転中に視認可能であるように、例えばルームミラーまたはインストルメントパネルの位置にあってよい。
【0038】
(環境変化の影響)
車載カメラとして車両1に搭載される撮像装置10は、屋内使用に比べて、温度変化および湿度変化の大きい環境下で使用される。温度および湿度の大きな変化は、撮像装置10を構成する部品を伸縮させ得る。本実施形態に係る撮像装置10は、以下に説明するように、使用環境の変化に対して光学性能の劣化を抑えることができる。そのため、撮像装置10は車載カメラとしての用途に適している。
【0039】
本実施形態に係る撮像装置10は、第1のレンズバレル21がフレーム30の内部の空間部分に隙間を有して挿入された、入れ子構造となっている(図3参照)。上記のように、第1のレンズバレル21が使用環境の変化によって形状が変化する場合でも、隙間の範囲内であれば光学性能が保たれる。よって、温度および湿度等の環境の変化によって、第1のレンズバレル21の形状が変化しても、隙間の範囲を超えない限り、光学性能を保つことができる。
【0040】
また、第1のレンズバレル21とフレーム30とが入れ子構造であることによって、環境の変化に対する第1のレンズバレル21とフレーム30の形状変化の方向を揃えることが可能である。例えば、第1のレンズバレル21が温度上昇によってz軸方向に伸びる場合に、フレーム30もz軸方向に伸びる(図3参照)。フレーム30がz軸方向に伸びると、フレーム30に取り付けられている基板32に実装された撮像素子31の位置もz軸負方向に移動する。そのため、撮像素子31の受光面に合わせた像がずれにくい。このように、温度上昇によって第1のレンズバレル21とフレーム30の形状が変化しても、形状変化の方向が同じであるため、撮像素子31の受光面は、撮像光学系20介して結像する被写体像を受光できる。
【0041】
更に、フレーム30とフランジ部21Aとが接合する取り付け位置Cは、第1のレンズバレル21に取り付けられる撮像光学系20のレンズのうちで、最も物体側に位置する第1のレンズ201の重心Gより物体側に位置する、より具体的には、取り付け位置Cは第1のレンズバレル21とフレーム30各々の物体側の端部であってよい。したがって、第1のレンズバレル21とフレーム30が温度変化によってz軸方向に伸縮する場合に、いずれもが同一の基準点(取り付け位置C)から、同一方向に個別に伸縮するため、第1のレンズバレル21の伸縮による撮像光学系20のレンズの撮像素子31に対する合焦が維持される。これにより、環境の変化による光学性能の劣化を抑えることが可能である。
【0042】
また、フレーム30は、第1のレンズバレル21より線膨張係数が小さくてよい。フレーム30は、第1のレンズバレル21と、撮像素子31を実装した基板32と、に取り付けられている。そのため、フレーム30の形状変化は、第1のレンズバレル21と撮像素子31の位置に影響するため、小さいことが好ましい。このとき、第1のレンズバレル21の形状の変化(膨張)は、相対的にフレーム30よりも大きくなる。しかし、上記のように、第1のレンズバレル21とフレーム30との間には隙間が存在し、撮像装置10が通常に使用される環境において、これらが接触することはない。
【0043】
また、本実施形態に係る撮像装置10は、フレーム30がスペーサ40を介して基板32に取り付けられる。そのため、撮像素子31の位置は、撮像光学系20を介して結像する像を受光可能であるように、スペーサ40の厚みまたは個数によって調整される。スペーサ40は、1つが例えば100μm以下の厚みを有する、金属またはセラミック等の部材である。よって、本実施形態に係る撮像装置10は、撮像素子31の位置をスペーサ40によって細かく調整することが可能である。また、スペーサ40の材料は、金属またはセラミック等であるため、線膨張係数が樹脂より小さく、温度および湿度等の環境の変化による体積変化を小さくすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る撮像装置10は、第2のレンズバレル22とフレーム30(詳細にはフレーム30に取り付けられた第1のレンズバレル21)とが、接合部材23によって取り付けられている。上記のように、接合部材23は、1つのスペーサ40の厚み未満の微小な厚さを有し、例えば少量の接着剤で構成される。そのため、接合部材23は、温度上昇および吸湿による体積の変動が小さい。
【0045】
ここで、図6は、フレーム30を備えない比較例の撮像装置110の断面図である。比較例の撮像装置110は、本実施形態に係る撮像装置10と同じ第2のレンズバレル22、撮像素子31を実装した基板32を備える。ただし、比較例の撮像装置110において、第2のレンズバレル22および基板32は、接着部123および接着部124によって、フランジのない第1のレンズバレル121に接続される。接着部123および接着部124は、接着剤である。
【0046】
比較例の撮像装置110において、温度および湿度等の環境の変化によって第1のレンズバレル121の形状が変化すると、第1のレンズバレル121の有するレンズ群と第2のレンズバレル22および撮像素子31との光軸方向の位置関係に影響する。図6に示すように、第1のレンズバレル121がz軸方向に伸びると、撮像光学系20が変形し、撮像素子31の位置が入射部から遠ざかる。また、比較例の撮像装置110は、スペーサ40ではなく、接着剤である接着部124によって基板32の位置を調整する。そのため、温度上昇および吸湿の影響によって接着部124は変形し、撮像素子31の像の受光に影響する。また、比較例の撮像装置110は、接着剤である接着部123を用いるが、スペーサ40を用いていないため、その量を少なく抑えることができない。したがって、温度上昇および吸湿の影響によって接着部123は変形し、撮像光学系20の光路に影響する。このように、比較例の撮像装置110では、温度および湿度等の環境の変化による光学性能の劣化を抑えることができない。
【0047】
比較例との対比から明らかなように、本実施形態の撮像装置10は上記の構成を備えることによって、温度および湿度等の環境の変化による光学性能の劣化を抑えることが可能である。また、上記に説明した製造方法は、光学性能の劣化を抑えることが可能な撮像装置10を製造することを可能にする。
【0048】
本開示を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0049】
例えば、撮像装置10は、撮像素子31からの画像信号に基づいて処理を実行するプロセッサを備えてよい。プロセッサは、処理を実行した画像信号を、配線部11から撮像装置10の外部に出力してよい。ここで、プロセッサが画像信号に基づいて実行する処理は、例えば外光に応じて輝度を調整する画像処理であってよいし、撮像された画像に含まれる特定物を強調して表示する画像処理であってよい。特定物は、例えば交通標識および道路上の白線であってよい。
【0050】
例えば、撮像装置10は、撮像素子31で発生する熱を放熱させるための伝熱部材を備えてよい。伝熱部材は、前部筐体12または後部筐体13と撮像素子31との間に設けられてよい。伝熱部材は、例えば柔軟性を有する伝熱シートである。伝熱部材の材料は、例えばシリコーンであってよいが、これに限定されず他の伝熱性を有する材料であり得る。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
10 撮像装置
11 配線部
12 前部筐体
13 後部筐体
20 撮像光学系
21 第1のレンズバレル
21A フランジ部
22 第2のレンズバレル
22A 突出部
23 接合部材
30 フレーム
31 撮像素子
32 基板
33 撮像素子カバー
40 スペーサ
110 撮像装置
121 第1のレンズバレル
123 接着部
124 接着部
201 第1のレンズ
202 レンズ
203 レンズ
204 第2のレンズ
205 レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6