(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/44 20130101AFI20231109BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20231109BHJP
G01S 13/76 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G06F21/44
B60R25/24
G01S13/76
(21)【出願番号】P 2020090675
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
【審査官】岸野 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183487(JP,A)
【文献】特開2019-031872(JP,A)
【文献】特開2020-059978(JP,A)
【文献】特開2015-059396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0053021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/44
B60R 25/24
G01S 13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置との通信により得た情報に基づいて、前記他の装置が所定の条件を満たすか否かを判定する処理と、
前記他の装置との
間で送受信される情報に基づいて測定される距離に基づいて前記他の装置を認証する認証処理
と、
を行う制御部を備え、
前記所定の条件は、前記他の装置が前記距離の測定に用いられる情報を送受信する特定の通信機能を有さないことであり、
前記制御部は、
前記他の装置との通信により得た情報に基づいて、前記他の装置が前記所定の条件を満たす
と判定した場合には、前記認証処理
に用いられる距離の測定のための送受信を行わないよう制御
し、前記他の装置が前記所定の条件を満たさないと判定した場合には、前記認証処理に用いられる距離の測定のための送受信を行うよう制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記他の装置から送信され、かつ前記他の装置を識別する識別情報と、予め登録され、かつ1以上の前記他の装置が前記
特定の通信機能を有するか否かを示す情報とに基づいて、前記識別情報で識別される前記他の装置が前記
特定の通信機能を有するか否かを判定する、請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記所定の条件を満たすと判定した場合には、前記距離の測定に用いられる情報の受信待ちを開始しないよう制御する、請求項
1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、移動体に搭載され、
前記他の装置は、前記移動体を利用するユーザに携帯される装置である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
プロセッサが、
他の装置との通信により得た情報に基づいて、前記他の装置が所定の条件を満たすか否かを判定することと、
前記他の装置との
間で送受信される情報に基づいて測定される距離に基づいて前記他の装置を認証する認証処理を行う
ことと、
を含み、
前記所定の条件は、前記他の装置が前記距離の測定に用いられる情報を送受信する特定の通信機能を有さないことであり、
さらに、前記他の装置との通信により得た情報に基づいて、前記他の装置が前記所定の条件を満たす
と判定した場合には、前記認証処理
に用いられる距離の測定のための送受信を行わないよう制御
し、前記他の装置が前記所定の条件を満たさないと判定した場合には、前記認証処理に用いられる距離の測定のための送受信を行うよう制御する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で信号を送受信した結果に従って装置の認証を行う技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、車載器が携帯機との間で信号を送受信することで携帯機の認証を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、状況によっては不要な認証処理が実行される可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、不要な認証処理の実行を抑制することが可能な、新規かつ改良された制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、他の装置との通信により得られた情報を用いて前記他の装置を認証する認証処理を行う制御部を備え、前記制御部は、所定の条件を満たす場合には、前記認証処理を行わないよう制御する、制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、プロセッサが、他の装置との通信により得られた情報を用いて前記他の装置を認証する認証処理を行うよう制御することと、所定の条件を満たす場合には、前記認証処理を行わないよう制御することと、を含む、制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、不要な認証処理の実行を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態による制御ユニットの動作処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態による測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図4】本実施形態の変形例による測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図5】本実施形態の変形例による制御ユニットの動作処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態の変形例による制御ユニットの動作処理の流れの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100、及び制御ユニット210を含む。本実施形態における制御ユニット210は、車両200に搭載される。車両200は、ユーザの利用対象の一つとして挙げられる移動体の一例である。
【0012】
本発明には、被認証側である他の装置と、当該他の装置との通信により得られた情報を用いて当該他の装置を認証する認証処理を行う制御部を備える制御装置と、が関与する。
図1に示した例では、携帯機100が他の装置の一例であり、制御ユニット210が制御装置の一例である。システム1においては、ユーザ(例えば、車両200のドライバー)が携帯機100を携帯して車両200に近付くと、携帯機100と車両200の制御ユニット210との間で認証のための無線通信が行われる。そして、認証が成功すると、車両200のドア錠がアンロックされたりエンジンが始動されたりして、車両200はユーザにより利用可能な状態となる。システム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0013】
(1-1)携帯機100
携帯機100は、任意の装置として構成される。任意の装置の一例として、ユーザに携帯して使用される、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等の装置が挙げられる。
図1に示すように、携帯機100は、無線通信部110、制御部120、及び記憶部130を備える。
【0014】
無線通信部110は、制御ユニット210との間で、所定の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。所定の無線通信規格では、例えばUWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号が使用される。UWBによるインパルス方式の信号は、測距を高精度に行うことができるという特性を有する。すなわち、UWBによるインパルス方式の信号は、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測距を高精度に行うことができる。ここで、測距とは、信号を送受信する装置間の距離を測定することを指す。
【0015】
無線通信部110は、測距処理において装置間の距離を測定するための信号を送受信する。測距処理とは、装置間の距離を測定するための処理である。
【0016】
測距処理のための信号の一例は、測距用信号である。測距用信号は、装置間の距離を測定するために送受信される信号である。測距用信号は、計測の対象となる信号でもある。例えば、測距用信号の送受信にかかる時間が計測される。測距用信号は、例えば、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成される。測距処理においては、装置間で複数の測距用信号が送受信され得る。本明細書では、複数の測距用信号のうち、一方の装置から他方の装置へ送信される測距用信号を第1の測距用信号とも称する。そして、第1の測距用信号を受信した装置から、第1の測距用信号を送信した装置へ送信される測距用信号を、第2の測距用信号とも称する。
【0017】
測距用信号は、UWBを用いた信号として送受信され得る。無線通信部110は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0018】
制御部120は、携帯機100による動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部120は、無線通信部110を制御して制御ユニット210との通信を行う。また、制御部120は、記憶部130からの情報の読み出し及び記憶部130への情報の書き込みを行う。制御部120は、制御ユニット210との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0019】
記憶部130は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部130は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(identifier)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部130は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0020】
(1-2)制御ユニット210
制御ユニット210は、車両200に対応付けて設けられる。ここでは、制御ユニット210は、車両200に搭載されるものとする。搭載位置の例として、車両200の車室内に制御ユニット210が設置される、又は、制御モジュール若しくは通信モジュールとして車両200に内蔵される等が挙げられる。他にも、車両200の駐車場に制御ユニット210が設けられる等、ユーザの利用対象と制御ユニット210とが別体として構成されてもよい。その場合、制御ユニット210は、携帯機100との通信結果に基づいて、車両200に制御信号を無線送信し、車両200を遠隔で制御し得る。
図1に示すように、制御ユニット210は、無線通信部211、制御部213、及び記憶部215を備える。
【0021】
無線通信部211は、携帯機100との間で、所定の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。無線通信部211は、例えば、UWBでの通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0022】
制御部213は、制御ユニット210による動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部213は、無線通信部211を制御して携帯機100との通信を行い、記憶部215からの情報の読み出し及び記憶部215への情報の書き込みを行う。制御部213は、携帯機100との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。また、制御部213は、車両200のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、制御部213は、車両200に設けられた照明の点灯及び消灯を制御する照明制御部としても機能する。また、制御部213は、車両200のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両200に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。制御部213は、例えばECU(Electronic Control Unit)として構成される。
【0023】
なお、制御部213は、本発明による制御装置の動作を制御する制御部の一例である。
【0024】
記憶部215は、制御ユニット210の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部215は、制御ユニット210の動作のためのプログラム、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部215は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0025】
<2.技術的課題>
携帯機100と車両200の制御ユニット210との間において行われる認証のための無線通信に関し、不要な認証処理の実行は、電力消費の無駄となる。不要な認証処理とは、認証に用いる情報の送受信が装置間で十分に行えず、認証が失敗する可能性が高い状況で行われる認証処理である。例えば、認証処理を行うために必要な特定の機能を携帯機100が有していない場合や、携帯機100が認証処理を行うに適切ではない状態の場合は、認証が失敗する可能性が高い状況と言える。
【0026】
認証処理を行うために必要な特定の機能とは、例えば認証処理に用いる情報を通信する通信部が挙げられる。当該通信部を携帯機100が有していないにも関わらず、制御ユニット210が携帯機100と認証のための無線通信を行おうとして電力を消費することは好ましくない。また、認証処理を行うに適切ではない状態とは、例えば携帯機100の電池残量が少ない場合や、通信状態が悪い場合が挙げられる。「携帯機100の電池残量が少ない」とは、例えば、携帯機100の電池残量が所定値を下回る場合である。また、「通信状態が悪い場合」とは、例えば、認証のための無線通信の受信電力(すなわち受信した信号の電力値)やSN比(signal-noise ratio)が所定値以下の場合である。携帯機100の電池残量が少ない場合や通信状態が悪い場合に、制御ユニット210が携帯機100との間において認証のための無線通信を行おうとすると、携帯機100が電池切れとなって認証が失敗する可能性が高い。また、携帯機100の電池残量が少ない場合や通信状態が悪い場合、認証に用いる情報の送受信が十分に行えず、認証が失敗する可能性が高い。したがって、携帯機100の電池残量が少ない場合や通信状態が悪い場合に、制御ユニット210が携帯機100との間において認証のための無線通信を行おうとすることは無駄な電力消費となる。
【0027】
そこで、本発明では、所定の条件を満たす場合には、他の装置を認証する認証処理を行わないよう制御することで、不要な認証処理の実行を抑制し、消費電力を低減することを可能とする。
【0028】
<3.動作処理例>
続いて、本発明の一実施形態によるシステム1に含まれる制御ユニット210の動作処理について、
図2を参照して具体的に説明する。
図2は、本実施形態による制御ユニット210の動作処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0029】
本実施形態では、認証処理の一例として、携帯機100と制御ユニット210との間の距離に基づく認証処理を実行する。制御ユニット210は、当該認証処理の実行を適切に制御することで、携帯機100や制御ユニット210における無駄な電力消費を低減する。
【0030】
なお、本明細書において、「距離に基づく認証処理」は、携帯機100と制御ユニット210との距離を測定する測距処理、及び、当該測距処理により測定された距離に基づき認証する認証処理を含む。測距処理については、追って
図3を参照して詳しく説明する。後者の認証処理では、制御ユニット210は、測定した距離が所定条件(認証のための所定条件であり、本明細書において、認証条件とも称する)を満たすか否かに応じて携帯機100の認証を行う。例えば制御ユニット210は、測定した距離が所定値以下であれば認証成功と判定し、そうでない場合には認証失敗と判定する。また、制御ユニット210は、測定した距離が所定の範囲内であれば、対応する所定の制御を行うための認証の成功と判定してもよい。例えば制御ユニット210は、携帯機100を携帯するユーザと、制御ユニット210が搭載された車両200との距離が所定の範囲内の場合には、車両200に設けられた照明を点灯する制御を行うための認証の成功と判定して、照明を点灯する制御を行う。そして、ユーザがさらに車両200に近付いた場合、制御ユニット210は、車両200のドア錠をアンロックする制御を行うための認証の成功と判定して、ドア錠のアンロック制御を行うようにしてもよい。
【0031】
図2に示すように、まず、本実施形態による制御ユニット210は、距離による認証処理を実行するか否かの判定に用いる所定の情報を取得する(ステップS103)。所定の情報とは、例えば、携帯機100の特定の機能に関する情報や、携帯機100の状態に関する情報である。
【0032】
・携帯機100の特定の機能に関する情報について
携帯機100の特定の機能に関する情報とは、例えば、距離による認証処理に用いる情報を通信する通信部を有しているか否かを示す情報が挙げられる。認証処理に用いる情報にUWBを用いた信号が使用される場合は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信部を携帯機100が有するか否かを示す情報となる。
【0033】
制御ユニット210は、携帯機100の特定の機能に関する情報を、携帯機100から取得し得る。すなわち、携帯機100は、特定の機能に関する情報を含む信号を制御ユニット210に送信する。
【0034】
特定の機能に関する情報を含む信号を送信する際に使用される周波数帯は任意である。例えば、特定の機能に関する情報を含む信号は、測距用信号と同一の周波数帯を使用して送信されてもよいし、測距用信号と異なる周波数帯を使用して送信されてもよい。また、特定の機能に関する情報を含む信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。
【0035】
また、他の任意の信号が、特定の機能に関する情報を含む信号としての役割を兼ねてもよい。任意の信号の他の一例は、要求応答認証のための信号である。例えば、距離に基づく認証よりも前に、携帯機100と制御ユニット210との間で要求応答認証が実行される場合を想定する。ここで、要求応答認証とは、認証者(本実施形態では、一例として制御ユニット210)が認証要求信号を生成して被認証者(本実施形態では、一例として携帯機100)に送信し、被認証者が認証要求信号に基づいて認証応答信号を生成して認証者に送信し、認証者が認証応答信号に基づき被認証者の認証を行う方式である。認証要求信号は乱数であり認証のたびに変化するので、要求応答認証は反射攻撃に耐性を有する。また、認証応答信号は被認証者の情報に基づいて生成される。「被認証者の情報」とは、例えば、携帯機100を識別する識別情報(ID;identifier)及びパスワード等である。即ちID及びパスワードそのものは送受信されないので、盗聴が防止される。要求応答認証に加えて距離に基づく認証を行うことで、セキュリティをより強化することができる。例えば、距離に基づく認証よりも前に、携帯機100と制御ユニット210との間で要求応答認証が実行される場合に、特定の機能に関する情報が、携帯機100から送信される認証応答信号に付加されて送信されてもよい。
【0036】
また、携帯機100の特定の機能に関する情報は、記憶部215に予め記憶されていてもよい。例えば、記憶部215に、携帯機100を識別する識別情報と、当該携帯機100の特定の機能に関する情報を対応付けて予め記憶する。制御ユニット210は、携帯機100を識別する識別情報を携帯機100から受信する。識別情報の取得方法としては、例えば、上記認証応答信号から取得することが考えられる。このような識別情報に基づいて、当該識別情報で識別される携帯機100の特定の機能に関する情報を記憶部215から取得することができる。なお、記憶部215には、複数の識別情報と、それぞれの識別情報で識別される各携帯機100の特定の機能に関する情報が記憶されていてもよい。また、制御ユニット210は、携帯機100の識別を、携帯機100から送信される識別情報に限らず、他の方法により実現することも可能である。例えば携帯機100から送信される任意の信号のタイミングに基づいて、携帯機100を識別することも可能である。任意の信号には、上記認証応答信号が用いられてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、携帯機100の特定の機能に関する情報の取得方法に関し、上述した携帯機100から取得する方法と、記憶部215から取得する方法のいずれも採用し得る構成としてもよい。例えば、制御ユニット210は、携帯機100から特定の機能に関する情報を取得できなかった場合に、記憶部215から特定の機能に関する情報を取得するようにしてもよい。
【0038】
・携帯機100の状態に関する情報について
携帯機100の状態に関する情報とは、例えば、携帯機100の電池残量を示す情報が挙げられる。また、携帯機100の状態に関する情報とは、例えば、携帯機100の通信状態を示す情報が挙げられる。携帯機100の通信状態を示す情報としては、例えば、認証のための無線通信の受信電力やSN比などがある。
【0039】
制御ユニット210は、携帯機100の状態に関する情報を、携帯機100から取得し得る。すなわち、携帯機100は、自身の状態に関する情報を含む信号を制御ユニット210に送信する。状態に関する情報を含む信号を送信する際に使用される周波数帯や規格は、上述した特定の機能に関する情報の送信の場合と同様に、任意である。また、上述した特定の機能に関する情報の送信の場合と同様に、他の任意の信号が、状態に関する情報を含む信号としての役割を兼ねてもよい。
【0040】
以上、
図2のステップS103に示す所定の情報の取得について説明した。
【0041】
次に、制御ユニット210は、所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS106)。かかる所定の条件とは、距離に基づく認証処理を実行するか否かを判定するための条件である。具体的には、例えば、携帯機100の特定の機能に関する条件や、携帯機100の状態に関する条件が、当該所定の条件として挙げられる。本実施形態では、距離に基づく認証処理を実行しない場合の条件を、所定の条件として予め規定する。制御ユニット210は、取得した携帯機100の特定の機能に関する情報、または、携帯機100の状態に関する情報に基づいて、当該所定の条件を満たすか否かを判定する。
【0042】
より具体的には、例えば、携帯機100の特定の機能に関する条件として、距離の測定に用いる情報を通信する通信部を携帯機100が有さないことが挙げられる。通信部とは、例えば、UWBを用いた信号での通信が可能な通信部である。また、例えば、携帯機100の状態に関する条件として、携帯機100の電池残量が所定の閾値を下回ることが挙げられる。また、例えば、携帯機100の状態に関する条件として、携帯機100の通信状態が所定の条件満たさないことが挙げられる。「携帯機100の通信状態が所定の条件満たさない」とは、例えば認証のための無線通信の受信電力やSN比(signal-noise ratio)が所定値以下の場合などである。このような条件を満たす場合は、認証に用いる情報の送受信が十分に行えず、認証が失敗する可能性が高まり、無駄な消費電力が発生することとなる。そこで、このような条件が、距離に基づく認証処理を実行しない場合の条件として規定される。
【0043】
次いで、所定の条件を満たすと判定した場合(ステップS106/Yes)、制御ユニット210は、距離に基づく認証処理を実行しないようにする(ステップS112)。これにより、制御ユニット210は、不要な認証処理の実行を抑制し、消費電力を低減することができる。距離に基づく認証処理とは、上述したように、携帯機100と制御ユニット210との距離を測定する測距処理、及び、当該測距処理により測定された距離に基づき認証する認証処理を含む。制御ユニット210は、例えば測距処理に用いる情報の送受信を行わないことで、距離に基づく認証処理を実行しないこととしてもよい。「測距処理に用いる情報の送受信を行わないこと」は、通信を非実行とすること、とも言える。また、「距離に基づく認証処理を実行しないこと」は、距離に基づく認証処理を非実行とすること、とも言える。より具体的には、制御ユニット210は、無線通信部211に電力を供給しないことで、通信を非実行としてもよい。また、制御ユニット210は、無線通信部211から測距処理に用いる所定の信号を送信しないことで、通信を非実行としてもよい。また、制御ユニット210は、無線通信部211により測距処理に用いる所定の信号を受信しないことで、通信を非実行としてもよい。信号を受信しない例として、受信した信号のサンプリングを行わない、サンプリングで得た情報を後段処理(制御部213)に出力しない等が挙げられる。信号のサンプリングとは、信号を取り込むことである。後段処理とは、取り込んだ信号を用いる処理である。測距処理の詳細については、追って
図3を参照して説明する。
【0044】
一方、所定の条件を満たさないと判定した場合(ステップS106/No)、制御ユニット210は、距離に基づく認証処理を実行する(ステップS109)。
【0045】
ここで、ステップS109およびステップS112に示す「距離に基づく認証処理」に含まれる測距処理について、
図3を参照して説明する。
【0046】
・測距処理について
図3は、本実施形態による測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。まず、制御ユニット210は、第1の測距用信号を送信する(ステップS153)。
【0047】
次いで、携帯機100は、制御ユニット210から第1の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号を受信してから時間ΔT2経過後に、第2の測距用信号を送信する(ステップS156)。時間ΔT2は、予め規定された時間である。時間ΔT2は、携帯機100において第1の測距用信号を受信してから第2の測距用信号を送信するまでの処理のために要されると想定される時間よりも長く設定される。これにより、第2の測距用信号の送信準備を、第1の測距用信号を受信してから時間ΔT2が経過するまでに確実に完了させることが可能となる。また、時間ΔT2は、制御ユニット210にも既知であってもよい。
【0048】
続いて、制御ユニット210は、第2の測距用信号を受信すると、携帯機100と制御ユニット210との間の距離を算出する(ステップS159)。詳しくは、制御ユニット210は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測し、計測したΔT1と既知な時間ΔT2とに基づいて距離を計算する。制御ユニット210は、ΔT1からΔT2を差し引いた値を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間を計算し、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と制御ユニット210との間の距離を計算し得る。
【0049】
なお、時間ΔT2は、制御ユニット210に既知でなくともよい。例えば、携帯機100は、時間ΔT2を計測し、制御ユニット210に報告してもよい。かかる報告は、時間ΔT2を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信することで行われ得る。データ信号は、測距処理のための信号の他の一例である。データ信号は、データを格納して搬送する信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成される。また、データ信号は、UWBを用いた信号として送受信され得る。
【0050】
以上、測距処理について説明した。
【0051】
制御ユニット210は、例えば第1の測距用信号を送信しないことを、ステップS112に示す距離に基づく認証処理を非実行とすることとしてもよい。
【0052】
<4.変形例>
続いて、本実施形態の変形例として、上述した第1の測距用信号の送信に先立って当該第1の測距用信号を送信するよう指示する信号(測距のトリガとなる信号であり、本明細書において「測距トリガ信号」とも称する)を携帯機100から送信する場合について説明する。この場合、制御ユニット210は、測距トリガ信号の受信待ちを行う。
【0053】
受信待ちとは、信号を受信すると、その受信した信号を取り込む処理を実行する状態を指す。また、受信待ちは、所望の信号を得るための各種処理を含む。各種処理とは、例えば、無線通信部211を構成するアンテナが信号を受信すること、無線通信部211により、受信した信号のサンプリングを行うこと、さらに、制御部213により、サンプリングして得られた信号に基づく処理を行うことなどが挙げられる。「サンプリングして得られた信号に基づく処理」とは、例えば、所望の信号であるか否かを判定する処理である。受信待ちを行う状態は、受信待ち状態とも称される。また、受信待ち状態にある期間は、受信待ち期間とも称される。本変形例による制御ユニット210は、任意のタイミングで、測距トリガ信号の受信待ち状態に遷移させ、測距トリガ信号の受信を待つ。「測距トリガ信号の受信待ち状態」とは、例えば、無線通信部211が、アンテナで受信した信号のサンプリングを行い続ける状態である。
【0054】
以下、
図4を参照して本変形例について具体的に説明する。
【0055】
図4は、本実施形態の変形例による測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。なお、本シーケンスでは、一例として、測距トリガ信号の受信待ちに先立って携帯機100と制御ユニット210との間で他の任意の信号の送受信が行われる。例えば、携帯機100と制御ユニット210との間で、要求応答認証が行われる。要求応答認証では、認証要求信号、及び認証要求に基づいて生成される認証応答信号の送受信が行われる。また、携帯機100と制御ユニット210との間で、起動を指示するウェイクアップ信号、及びウェイクアップ信号に対する応答の送受信が行われてもよい。ウェイクアップ信号により、受信側をスリープ状態から復帰させることができる。ウェイクアップ信号に対する応答としては、起動することを示す肯定応答(ACK:Acknowledgement)信号、及び起動しないことを示す否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)信号が挙げられる。若しくは、測距トリガ信号の受信待ちに先立って、携帯機100と制御ユニット210との間で、ウェイクアップ信号の応答と、要求応答認証が行われてもよい。制御ユニット210は、このようなウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて、受信待ちを開始する。
【0056】
また、本明細書では、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証において、一方の装置から他方の装置へ送信される信号を第1の通知信号とも称する。そして、第1の通知信号を受信した装置から、第1の通知信号を送信した装置へ送信される信号を、第2の通知信号とも称する。また、第1、第2の通知信号が送信される際に使用される周波数帯は任意である。例えば、通知信号は、測距用信号と同一の周波数帯を使用して送信されてもよいし、測距用信号と異なる周波数帯を使用して送信されてもよい。また、通知信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。
【0057】
図4に示すように、まず、制御ユニット210は、第1の通知信号を送信する(ステップS203)。
【0058】
次に、携帯機100は、第1の通信信号を受信すると、第2の通知信号を送信する(ステップS206)。
【0059】
次いで、制御ユニット210は、第2の通知信号を受信すると、測距トリガ信号の受信を待つ受信待ち状態に遷移するよう制御する(ステップS209)。受信待ち状態に遷移するタイミングは、認証応答信号を受信した際でもよいし、認証応答信号に基づいて携帯機100の認証を行っている間であってもよいし、当該認証が終了した後であってもよい。また、ウェイクアップ信号に対する応答を受信した際でもよいし、受信した応答がACK信号であるか否かを判定している間であってもよいし、当該判定が終了した後であってもよい。制御ユニット210は、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて、受信待ちを開始することで、受信待ち期間を短縮することができる。
【0060】
なお受信待ち状態に遷移されるまで(受信待ちを開始するまで)は、例えばアンテナが受信した信号のサンプリングを行わない状態、または、サンプリングして得られた信号に基づく処理を行わない状態など、受信待ち状態が停止された状態に制御されている。「サンプリングして得られた信号に基づく処理を行わない状態」とは、例えば、サンプリングして得た情報を後段処理に送らない状態である。このような状態を、本明細書では通常状態とも称する。通常状態の消費電力は、受信待ち状態より小さい。このため、受信待ちの開始を、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて行うことで、受信待ち期間を短縮し、消費電力を低減することができる。
【0061】
次に、携帯機100は、測距トリガ信号を送信する(ステップS212)。測距トリガ信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。
【0062】
次いで、制御ユニット210は、測距トリガ信号を受信すると、第1の測距用信号として、第2の測距用信号の送信を要求する測距要求信号を送信する(ステップS215)。受信待ち期間は、測距トリガ信号を受信するタイミングで終了する。すなわち、制御ユニット210は、測距トリガ信号を受信すると、次いで、測距要求信号を送信する送信状態に遷移するよう制御する。送信状態とは、測距要求信号を電波としてアンテナから送り出す各種処理を実行する状態である。各種処理とは、例えば、送信する信号の生成、送信する信号に基づく変調、及びアンテナからの電波の送信などが挙げられる。
【0063】
次に、携帯機100は、制御ユニット210から測距要求信号(第1の測距用信号)を受信すると、測距要求信号を受信してから時間ΔT2経過後に、第2の測距用信号として、測距要求信号に応答する測距応答信号を送信する(ステップS218)。
【0064】
続いて、制御ユニット210は、測距応答信号(第2の測距用信号)を受信すると、携帯機100と制御ユニット210との間の距離を算出する(ステップS221)。詳しくは、制御ユニット210は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測し、計測したΔT1と既知な時間ΔT2とに基づいて距離を計算する。
【0065】
以上、測距用信号の送受信に先立って、測距トリガ信号を受信する測距処理について説明した。制御ユニット210は、測距トリガ信号を受信すると、第1の測距用信号として、測距要求信号を送信する処理を行う。ここで、制御ユニット210は、
図2のステップS106に示す所定の条件を満たすと判定した場合、携帯機100から測距トリガ信号を受信しても、測距要求信号を送信しないことで、距離に基づく認証処理を非実行としてもよい。所定の条件を満たすか否かの判定は、受信待ち状態へ遷移する制御の前であってもよいし、後であってもよいし、並列していてもよい。また、所定の条件を満たすか否かを判定するための所定の情報は、例えば第2の通知信号に付加されていてもよい。
【0066】
また、制御ユニット210は、
図2のステップS106に示す所定の条件を満たすと判定した場合、受信待ち状態に制御しない、若しくは受信待ち状態を停止する(通常状態に戻す)ことで、
図2のステップS112に示す距離に基づく認証処理を非実行としてもよい。制御ユニット210は、所定の条件を満たすか否かの判定を、受信待ち状態へ遷移する制御の前に行ってもよいし、後に行ってもよいし、並列して行ってもよい。受信待ち期間を短縮若しくは発生させないことにより、消費電力を低減することができる。とりわけ測距トリガ信号にUWBを用いた信号が使用される場合、消費電力低減の効果が大きい。具体的には、受信側のサンプリング周波数は搬送波の周波数の最大値に応じて設定されるところ、UWBは、周波数帯域が非常に広いことを特徴としているため、受信側の消費電力が大きい。したがって、UWBでは、消費電力が大きい受信待ち期間の短縮や、当該受信待ち状態に制御しないことで、制御ユニット210の消費電力を大きく低減することができる。
【0067】
以下、このように受信待ち状態への遷移を制御することで消費電力を低減する動作処理について、
図5および
図6を参照して複数の具体例を用いて説明する。
【0068】
(第1の具体例)
図5は、本実施形態の変形例による制御ユニット210の動作処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、制御ユニット210は、距離による認証処理を実行するか否かを判定するために用いる所定の情報を取得する(ステップS303)。所定の情報は、例えば携帯機100から送信される第2の通知信号に付加されていてもよい。所定の情報の詳細は、
図2のステップS103に示す処理で説明した場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0069】
次に、制御ユニット210は、所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS306)。所定の条件の詳細は、
図2のステップS106に示す処理で説明した場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0070】
次いで、所定の条件を満たすと判定した場合(ステップS306/Yes)、制御ユニット210は、測距トリガ信号の受信を待つ受信待ち状態への制御を行わないことで、距離に基づく認証処理を実行しないようにする(ステップS312)。「受信待ち状態への制御を行わない」とは、換言すると、受信待ちを開始しない、ということである。また、受信待ち状態への制御を行わないとは、より具体的には、アンテナで受信した信号のサンプリングを行わないこと、又は、サンプリングして得られた信号に基づく処理を行わない状態(例えば、サンプリングして得た情報を後段処理に送らない状態)などが挙げられる。
【0071】
これにより、所定の条件を満たす場合には受信待ち状態としないことで、不要な認証処理の実行を抑制し、消費電力を低減させることができる。所定の条件を満たす場合とは、上述したように、例えば測距処理に用いる信号(測距トリガ信号を含む)の送受信を行うことが可能な通信部を携帯機100が有しない場合である。この場合、制御ユニット210が測距トリガ信号の受信待ちを開始しても、携帯機100からは測距トリガ信号が送信されず、受信待ち期間の消費電力が無駄となる。したがって、制御ユニット210は、所定の条件を満たす場合は受信待ち状態にしないことで、消費電力を低減させることを可能とする。また、所定の条件を満たす場合、距離に基づく認証処理は非実行となるが、制御ユニット210は、要求応答認証など他の手法による認証の結果に従って各種制御を行うようにしてもよい。「各種制御」とは、例えば、車両200のドア錠のアンロックや、エンジンの始動などの制御である。
【0072】
一方、所定の条件を満たさないと判定した場合(ステップS306/No)、制御ユニット210は、測距トリガ信号の受信を待つ受信待ち状態への制御を行うことで、距離に基づく認証処理を実行する(ステップS309)。これにより、適切な環境下の場合に距離に基づく認証を実行することが可能となり、受信待ちにおける電力消費を無駄なものにしないようにすることができる。
【0073】
(第2の具体例)
図6は、本実施形態の変形例による制御ユニット210の動作処理の流れの他の例を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御ユニット210は、距離による認証処理を実行するか否かを判定するために用いる所定の情報を取得する(ステップS353)。所定の情報は、例えば携帯機100から送信される第2の通知信号に付加されていてもよい。所定の情報の詳細は、
図2のステップS103に示す処理で説明した場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
次に、制御ユニット210は、測距トリガ信号の受信を待つ受信待ち状態への制御を行うことで、距離に基づく認証処理を実行する(ステップS356)。制御ユニット210は、かかる受信待ち状態への制御を、任意のタイミングで行い得る。「任意のタイミング」とは、例えば、携帯機100から送信された第2の通知信号の受信などである。したがって、当該受信待ち状態への制御は、上記ステップS353に示す所定の情報の取得と並列または前後して行われてもよい。
【0075】
次いで、制御ユニット210は、所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS359)。所定の条件の詳細は、
図2のステップS106に示す処理で説明した場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
そして、所定の条件を満たすと判定した場合(ステップS359/Yes)、制御ユニット210は、測距トリガ信号の受信を待つ受信待ち状態を停止(解除)、すなわち通常状態へ戻す制御を行うことで、距離に基づく認証処理を非実行とする(ステップS362)。受信待ち状態の停止とは、より具体的には、アンテナで受信した信号のサンプリングを取りやめること、又は、サンプリングして得られた信号に基づく処理を取りやめることなどが挙げられる。「サンプリングして得られた信号に基づく処理を取りやめること」としては、例えば、サンプリングして得た情報を後段処理へ送ることを取りやめることが挙げられる。このように受信待ち状態を停止した状態は、通常状態と称される状態となる。これにより、受信待ち期間を、例えばタイムアウトを待たずに終了することができ、とりわけUWBを用いた場合には、消費電力を大幅に低減することができる。上記「タイムアウトを待たずに終了する」とは、具体的には、予め規定された一定期間が経過するまで待たずに終了する、ということである。
【0077】
このように、
図6に示す例では、所定の条件を満たすか否かの判定を行う前に、任意のタイミングで受信待ち状態に制御することが可能である。これにより、所定の条件を満たすか否かの判定を待たずに、より早い段階で受信待ち状態に遷移することを可能とする一方で、所定の条件を満たす場合には速やかに受信待ち状態を停止して消費電力を低減することも可能とする。
【0078】
<5.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態では、認証者側が第1の測距用信号を送信する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。認証者側とは、例えば、車両200の制御ユニット210である。例えば、被認証者側が第1の測距用信号を送信してもよい。被認証者側とは、例えば、携帯機100である。制御ユニット210は、携帯機100から第1の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の応答として第2の測距用信号を送信する。携帯機100は、第2の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測する。次いで、携帯機100は、計測したΔT1を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信する。他方、制御ユニット210は、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2を計測しておく。そして、制御ユニット210は、携帯機100からデータ信号を受信すると、携帯機100から受信したデータ信号により示されるΔT1と、計測したΔT2とに基づいて、携帯機100と制御ユニット210との間の距離を計算する。例えば、ΔT1-ΔT2を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間が計算され、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と制御ユニット210との間の距離が計算される。このように、第1の測距用信号及び第2の測距用信号の送受信の方向を逆にした場合、制御ユニット210は、携帯機100から送信される第1の測距用信号を待つ待ち状態に遷移する制御を行う。第1の測距用信号を待つ待ち状態への遷移は、任意のタイミングで行われ得る。制御ユニット210は、このような場合も、上記ステップS106に示す所定の条件を満たすか否かの判定を行い、所定の条件を満たす場合は、第1の測距用信号を待つ待ち状態への遷移を取りやめる、若しくは停止することで、消費電力を低減することを可能とする。
【0080】
また、上記実施形態では、所定の条件として、距離に基づく認証処理を実行するか否かを判定するための条件を規定しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、要求応答認証など、他の認証処理を実行するか否かを判定するための条件を規定してもよい。かかる条件を満たす場合、制御ユニット210は、対応する他の認証処理を非実行とすることで、消費電力を低減することを可能とする。
【0081】
また、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が車両200の制御ユニット210である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び車両200の制御ユニット210の役割は逆であってもよいし、役割が動的に交換されてもよい。また、車両200の制御ユニット210同士で測距及び認証が行われてもよい。
【0082】
他にも例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、信号を送受信することで測距及び認証を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、ユーザが利用する対象物として、ドローン、車両、船舶、飛行機、建築物、ロボット、ロッカー、家電製品等が挙げられる。建築物には、住宅などが含まれる。また、本発明は、携帯機、車両、船舶、飛行機、スマートフォン、ドローン、建築物、ロボット、ロッカー及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに適用可能である。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。この場合、一方の装置が第1の通信装置として動作し、他方の装置が第2の通信装置として動作する。
【0083】
他にも例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いるものを挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信規格として、赤外線を用いるものが使用されてもよい。
【0084】
他にも例えば、上記では、制御部213がECUとして構成され、制御ユニット210の動作全般を制御するものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信部211がECUを含んでいてもよい。そして、無線通信部211は、所定の条件が満たされるか否かを判定する処理や、受信待ち状態への遷移を制御する処理を実行してもよい。また、無線通信部211は、アンテナから受信した信号をサンプリングして得た信号に基づく処理を行う処理を実行してもよい。「アンテナから受信した信号をサンプリングして得た信号に基づく処理」とは、例えば、所望の信号であるか否かを判定する処理である。
【0085】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0086】
また、本明細書においてシーケンス図やフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
100 携帯機、120 制御部、110 無線通信部、130 記憶部、200 車両、210 制御ユニット、211 無線通信部、213 制御部、215 記憶部