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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020099074
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193319
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】井手 和成
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
(72)【発明者】
【氏名】森山 慧
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-022131(JP,A)
【文献】特開平07-190327(JP,A)
【文献】特開2019-207048(JP,A)
【文献】特開2000-046323(JP,A)
【文献】米国特許第06145453(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御する制御部、
を備え
前記制御部は、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化する前記給じん装置の制御値を、前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の制御値として算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記引込速度に最大値を設定したときに、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の平均値が前記ゴミの必要供給量を満たす前記押出速度を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記給じん装置の押し出し過程においてn回の休止期間を設け、前記引込速度に最大値を設定した場合の1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の平均値が、前記ゴミの必要供給量を満たす前記給じん装置の押出速度を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御する制御部、
を備え
前記制御部は、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する、
御装置。
【請求項6】
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御する制御部、
を備え
前記制御部は、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、
1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の計測値の時刻歴を記録する処理を、前記複数組の候補の各々について実行し、
当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する、
御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記候補について、前記引込速度には最大値を設定し、前記押出速度に
は、前記引込速度が最大の場合に1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量が前記必要供給量を満たす速度を設定し、前記往復幅には任意の値を設定し、
前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記往復幅を選定する、
請求項又は請求項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記候補について、前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に加えて、前記押し出し過程における休止回数、をさらに含む前記候補を複数組作成し、前記蒸気流量の時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、前記休止回数と、に基づいて前記往復動作を制御する、
請求項から請求項の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記候補について、前記引込速度には最大値を設定し、前記押出速度には、前記引込速度が最大で前記押し出し過程において同じ前記組に含まれる前記休止回数だけ休止期間を設けた場合の1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量が前記必要供給量を満たす速度を設定する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項10】
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御するステップ、を有し、
前記制御するステップでは、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する、
制御方法。
【請求項11】
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御するステップ、を有し、
前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する、
制御方法。
【請求項12】
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御するステップ、を有し、
前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、
1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の計測値の時刻歴を記録する処理を、前記複数組の候補の各々について実行し、
当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する、
制御方法。
【請求項13】
コンピュータに、
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備の前記給じん装置の制御について、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置制御するステップ、を有し、
前記制御するステップでは、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する処理を実行させるプログラム。
【請求項14】
コンピュータに、
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備の前記給じん装置の制御について、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置制御するステップ、を有し、
前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する処理を実行させるプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備の前記給じん装置の制御について、
前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置制御するステップ、を有し、
前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、
1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の計測値の時刻歴を記録する処理を、前記複数組の候補の各々について実行し、
当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴミ焼却設備の制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉にボイラを設置し、ゴミ焼却の際に発生する熱を回収し、発生した蒸気により発電を行なうゴミ発電では、ゴミを燃料として使用する。ゴミの燃料としての付加価値を向上するには、ゴミの燃焼により発生する蒸気量を安定化させ、計画したとおりの発電ができるようにすることが効果的である。
【0003】
図1を参照する。一般に、都市ゴミや産業廃棄物等を焼却処理するゴミ焼却炉にはホッパ1が付設され、ゴミはクレーンで掴み上げられてホッパ1内に投入される。ホッパ1内のゴミはシュート2を経てその下部に配される給じん装置(プッシャ10)により、順次焼却炉6に供給されるようになっている。給じん装置には種々の形式のものがあるが、図1に例示される往復動によりゴミ焼却炉へ向けてゴミを押し出すプッシャ式のものが多く用いられている。プッシャ10は、ホッパ1およびシュート2の下方に位置しており、プッシャ10が伸展するときにその周囲にあるゴミを焼却炉6に押し出す。プッシャ10のストロークには限度があり、ある位置まで伸展すると、それ以上ゴミを押し出すことができない。このため、プッシャ10が伸展したあとは、プッシャ10を引込んで再び伸展するという動作を繰り返すことになる。このように、プッシャ式の給じん装置によるゴミ投入は間欠性から逃れることができない。
【0004】
特許文献1には、廃棄物焼却炉へ供給される廃棄物の水分率が変動しても、その変動に応じた燃焼制御を速やかに行うことができ、安定した燃焼状態を良好に維持することができる廃棄物焼却方法が開示されている。具体的には、単位時間あたりに焼却炉に供給するごみ量を、単位時間あたりのプッシャの往復動作の回数で調節し、特に、廃棄物の水分率の変動に応じて単位時間あたりのプッシャの往復動作の回数を増減して蒸気流量の変動を抑制する。特許文献1の方法によれば、単位時間あたりのゴミ供給量を安定化するができる。プッシャ10の往復動作によって、ゴミが間欠的に焼却炉に供給されることによって生じるゴミ供給量の変動、それによる蒸気流量の変動を抑制することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-178850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プッシャ式の給じん装置を有するゴミ焼却炉から生じる蒸気流量を安定化させるためには、ゴミが間欠的に焼却炉に供給されることによって生じる蒸気流量の変動を抑制する必要がある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、制御方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の制御装置は、給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置の動作を制御する制御部、を備え、前記制御部は、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する。また、一実施形態によれば、前記制御部は、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御してもよい。また、一実施形態によれば、前記制御部は、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の計測値の時刻歴を記録する処理を、前記複数組の候補の各々について実行し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御してもよい。
【0009】
また、本開示の制御方法は、給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置の動作を制御するステップ、を有し、前記制御するステップでは、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する。また、一実施形態によれば、前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御してもよい。また、一実施形態によれば、前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の計測値の時刻歴を記録する処理を、前記複数組の候補の各々について実行し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御してもよい。
【0010】
また、本開示のプログラムは、コンピュータを、給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備の前記給じん装置の制御について、前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置の動作を制御するステップ、を有し、前記制御するステップでは、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する処理を実行させる。また、一実施形態によれば、前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する処理を実行させてもよい。また、一実施形態によれば、前記制御するステップでは、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の計測値の時刻歴を記録する処理を、前記複数組の候補の各々について実行し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する処理を実行させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述の制御装置、制御方法およびプログラムによれば、プッシャ式の給じん装置が往復動作することによって生じるゴミ供給量の変動を抑制し、ゴミ焼却炉から生じる蒸気流量を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】各実施形態に係るゴミ焼却設備の要部の一例を示す図である。
図2】第一実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図3】第一実施形態に係るプッシャ速度とゴミ供給量の関係を示す図である。
図4】第二実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図5】第三実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図6】第四実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図7】第四実施形態に係るプッシャ速度とゴミ供給量の関係を示す図である。
図8】第五実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図9】第六実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図10】各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各実施形態に係るゴミ焼却設備の制御装置について、図1図10を参照しながら詳しく説明する。
【0014】
(システム構成)
図1は、各実施形態に係るゴミ焼却設備の要部の一例を示す図である。
ゴミ焼却設備100は、ゴミが投入されるホッパ1と、ホッパ1に投入されたゴミを下部へ導くシュート2と、シュート2を通じて供給されたゴミを燃焼室6内に供給するプッシャ10と、プッシャ10によって供給されたゴミを受けて、ゴミを移送しながら乾燥と燃焼を行うストーカ3と、ゴミを燃焼する燃焼室6と、灰を排出する灰出口7と、空気を供給する送風機4と、送風機4によって供給された空気をストーカ3の各部へ導く複数の風箱5A~5Eと、ボイラ9と、を備える。
【0015】
プッシャ10は、矢印αの方向に移動して、シュート2を通じて供給されたゴミを押し出すことにより、ゴミをストーカ3へ供給する給じん装置である。プッシャ10は、矢印αの方向にゴミを押し出した後、逆方向に引き込まれ、運転状態に応じて定めた原点まで完全に引き込まれると、再度、矢印αの方向に移動してゴミを押し出すという往復動作を行う。以下、プッシャ10が完全に引き込まれた位置を原点、最大限に押し出された位置を最大押出位置と記載する。プッシャ10は、制御装置20から制御信号を受け、往復動作を行う。
【0016】
ストーカ3は、シュート2及び燃焼室6の底部に設けられゴミを搬送する。ストーカ3は、プッシャ10によって供給されたゴミの水分を蒸発させて乾燥させる乾燥域3Aと、乾燥域3Aの後流に位置し、乾燥したゴミを燃焼させる燃焼域3Bと、燃焼域3Bの後流に位置し、燃焼されずに通過してきた固定炭素分等の未燃分を灰になるまで燃焼させる後燃焼域3Cとを備えている。制御装置20からの制御信号を受け、ストーカ3の動作速度が制御される。
【0017】
送風機4は、ストーカ3の下方に設けられ、風箱5A~5Eを介して、空気をストーカ3の各部に供給する。送風機4と風箱5A~5Eを接続する管路には、各々バルブ8A~8Eが設けられ、バルブ8A~8Eの開度を調節することにより、風箱5A~5Eへ供給される空気流量を調節することができる。制御装置20からの制御信号を受け、送風機4の送風量、バルブ8A~8Eの開度が制御される。
【0018】
燃焼室6は、ストーカ3の上方に、一次燃焼室6Aと二次燃焼室6Bとからなり、ボイラ9は、燃焼室6の後流に配設されている。ボイラ9は、燃焼室6から送られた排ガスとボイラ9内を循環する水と熱交換して蒸気を発生させる。蒸気は管路13を通じて発電所へ供給される。管路13には、蒸気の流量を検出する蒸気流量センサ11が設けられている。蒸気流量センサ11は制御装置20と接続されていて、蒸気流量センサ11が計測した計測値は、制御装置20へ送信される。ボイラ9の排ガス出口には、煙道12が接続されていて、ボイラ9で熱回収された排ガスは煙道12を通過して不図示の排ガス処理設備を通過後、外部に排出される。
【0019】
制御装置20は、データ取得部21と、蒸気流量制御部22と、給じん装置制御部23と、記憶部24と、を備える。
データ取得部21は、センサの計測値、ユーザの指示値など各種データを取得する。例えば、データ取得部21は、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量の計測値を取得する。
蒸気流量制御部22は、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量の計測値が、所定の設定値となるような単位時間あたりのゴミの供給量r(m/s)を算出する。例えば、蒸気流量制御部22は、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量が設定値を下回ると、ゴミの供給量を増大させ、蒸気流量の計測値が設定値を超過すると、ゴミの供給量を減少させる。
給じん装置制御部23は、プッシャ10の押し出しと引き込みの往復動作を制御する。プッシャ10の往復移動によって、ゴミは間欠的に燃焼室6に供給される。給じん装置制御部23は、ゴミの間欠的な供給により生じる蒸気流量の変動を抑制するプッシャ10の移動速度を算出し、この速度に基づいてプッシャ10を制御する。
記憶部24は、プッシャ10の制御等に必要な情報、例えば、蒸気流量設定値などを記憶する。
制御装置20は、このほかにもストーカ3によるゴミの搬送速度の制御、送風機4が送出する風量の制御、バルブ8A~8Eの開度制御などを行う機能を有している。
【0020】
<第一実施形態>
図2図3を用いて第一実施形態に係るプッシャ10の制御について説明する。
(構成)
図2は、第一実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図2に制御装置20のうち蒸気流量制御部22と給じん装置制御部23を示す。
データ取得部21、記憶部24については、図1を用いて説明したものと同様である。
蒸気流量制御部22は、所定の蒸気流量設定値と蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量計測値を取得し、両者の差に基づいて、蒸気流量計測値が蒸気流量設定値となるような単位時間あたりのゴミ供給量を算出する。蒸気流量制御部22は、単位時間あたりのゴミ供給指示値r(m/s)を、給じん装置制御部23へ出力する。
給じん装置制御部23は、プッシャ押出速度算出手段230と、プッシャ速度指示部231とを備える。プッシャ押出速度算出手段230は、プッシャ10の引込速度の最大値vと、単位時間あたりのゴミ供給指示値r(m/s)を取得して、以下の式(1)により、プッシャ10の押出速度vを算出する。後述するように、押出速度vはプッシャ10の往復動作によるゴミ供給の変動を最小にする速度である。
【0021】
【数1】
【0022】
プッシャ速度指示部231は、プッシャ10に速度指示値と移動量を出力する。例えば、プッシャ10の押し出し時には、プッシャ速度指示部231は、移動量(ストロークL)と共にプッシャ押出速度算出手段230が算出したv(m/s)を速度指示値として出力する。プッシャ10の後退時には、プッシャ速度指示部231は、v(m/s)を速度指示値として出力する。プッシャ10は、プッシャ速度指示部231が指示した速度指示値で動作する。
【0023】
ここで、図3を参照しつつ、式(1)について説明する。
図3は、第一実施形態に係るプッシャ速度とゴミ供給量の関係を示す図である。
図3(a)にプッシャ10の位置の時間変化、図3(b)にゴミ供給速度の時間変化を示す。図3(a)の縦軸は、プッシャ10の位置(m)を示し、横軸は時間を示す。図3(b)の縦軸は、単位時間あたりのゴミ供給量u(m/s)を示し、横軸は時間を示す。図3(a)、図3(b)の横軸の同じ位置は同時刻を示す。図3(a)を参照すると、プッシャ10が1往復するときの押出時間L/v(s)が、引込時間L/v(s)より長い。これは、引込速度を実現可能な最大速度vに設定していることに依っている。
【0024】
1つの往復過程についてのゴミ供給の時間平均値u ̄(m/s)は、プッシャ10の断面積をA(m)と記すと式(2)で表される。
【0025】
【数2】
【0026】
給じん装置(プッシャ10)は,蒸気流量制御部22が指示した指示値r(m/s)どおりにゴミを供給することが役割だからu ̄=rとなるように押出速度v(m/s)と引込速度v(m/s)の値を適切に定める必要がある。また、蒸気流量を安定化するためには、間欠的なゴミ供給によるゴミ供給量の変動をなるべく抑えることが必要である。ここで、u ̄=rとなるようなvとvの値の組み合わせは無数にあるが、第一実施形態では、往復過程の各時刻のゴミ供給u(m/s)の分散が最小となるようにv(m/s)とv(m/s)の値を定める。1つの往復過程についての単位時間あたりのゴミ供給u(m/s)の分散は、以下の式(3)で表される。
【0027】
【数3】
【0028】
分散Var[u]は,往復動作の過程でのゴミ供給の変動を示す。分散Var[u]の値を小さくすると、往復動作の過程でのゴミ供給の変動は小さくなり、蒸気流量の変動を抑制することができる。式(3)から分散Var[u]の値を小さくするためには、v・v -1の値を小さくすればよいことが分かる。すなわち、v(m/s)を小さくし、v(m/s)を大きくすることによって、単位時間あたりのゴミ供給の分散の値を小さくし、蒸気流量の変動を抑制することができる。そこで、プッシャ10の後退速度v(m/s)には、プッシャ10の最大引込速度を設定し、プッシャ10の押出速度v(m/s)には、v(m/s)に最大値を設定した場合に、単位時間あたりのゴミ供給量の平均値u ̄が指示値rとなるような速度を設定する。このような速度は、上記の式(2)の左辺をrとし、vについて解くことによって得られ、その結果、式(1)が得られる。
【0029】
(動作)
まず、蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値を取得し、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)を算出する。例えば、蒸気流量制御部22は、蒸気流量設定値別に、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値の差と、その差を補償するための指示値rの値の関係を定めた関数等を有しており、この関数を用いて、指示値r(m/s)を算出する。蒸気流量制御部22は、指示値rを給じん装置制御部23へ出力する。
【0030】
次に、給じん装置制御部23は、単位時間あたりのゴミ供給量の指示値r(m/s)に基づいて、速度指示値を算出し、プッシャ10にその速度指示値を出力する。具体的には、給じん装置制御部23は、ゴミ供給指示値rと、引込速度の指示値vと、プッシャ10のストロークL(Lは最大押出位置までの伸展長さ)を取得する。まず、プッシャ押出速度算出手段230は、式(1)によって、押出速度vを算出する。プッシャ10の断面積A(m)は所与であるとする。プッシャ押出速度算出手段230は、押出速度vをプッシャ速度指示部231へ出力する。例えば、プッシャ10の位置が原点の場合、プッシャ速度指示部231は、押出速度vを速度指示値として、移動量指示値Lと共にプッシャ10へ出力する。この指示により、プッシャ10は、押出速度vで最大押出位置まで移動する。プッシャ10の位置が最大押出位置の場合、プッシャ速度指示部231は、引込速度vを速度指示値として、移動量指示値-Lと共にプッシャ10へ出力する。この指示により、プッシャ10は、速度vで原点まで後退する。プッシャ速度指示部231は、プッシャ10の押し出しと引き込みを繰り返し指示する。これにより、プッシャ10は、最大速度で後退し、指示値rを満たす最低の速度でゴミを押し出す動作を反復して行う。
【0031】
上記説明したように本実施形態によれば、蒸気流量制御部22が算出したゴミ供給指示値rを満足しつつ、押出速度と引込速度の差を最大化してプッシャ10の移動を制御する。具体的には、(1)蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値に基づき単位時間あたりのゴミ供給指示値r(m/s)を算出する。(2)プッシャ10の押出と引込の往復動作を制御する給じん装置制御部23が、プッシャ10の引込速度指示値v(m/s)を実現可能な最大値に設定し、(3)その条件の下で、式(1)によって、プッシャ10の押出速度指示値v(m/s)を、ゴミ供給指示値r(m/s)を満たすように定める。この引込速度指示値vと押出速度指示値vとに基づいて、プッシャ10の往復動作を制御することにより、タービン側へ供給する蒸気流量を確保しつつ、プッシャ10の往復動作による間欠的なゴミ供給によって生じる蒸気流量の変動を抑制することができる。つまり、ゴミ焼却設備100における燃焼状態を安定化し、発電所へ供給する蒸気量を所望の値に制御することができる。また、蒸気流量設定値を最大付近に設定することにより、ゴミ焼却設備100の設備能力の上限に近い状態で連続運転することが可能となり、設備利用率が向上する。また、燃焼の安定化により,NOXやCOなどの排出を抑制することができる。本実施形態では、押出速度vを一定値としているがこれに限らない。押出の途中で速度を変更してもよい。例を挙げると、押出速度vについて、速度の時間当たりの増減に制約があって、それをステップ状に変更できない場合には、その制約のなかで、式(3)で述べた1つの往復過程についての単位時間あたりのゴミ供給u(m/s)の分散が最小になるよう押出速度の時刻歴を定めてもよい。別の例としては、往復過程の途中で式(3)を再度評価して押出速度vの値を更新することも考えられる。これらも本実施形態の一部である。
【0032】
<第二実施形態>
第一実施形態では、ゴミ供給の分散を小さくして蒸気流量の変動を抑制した。第二実施形態では、蒸気流量を計算する数値モデルを用いて蒸気流量を計算し、蒸気流量の分散が小さくなるプッシャ10の押出速度および引込速度を決定する。また、第一実施形態では、プッシャ10の移動幅を固定(ストロークL)し、押出速度vを最適化したが、第二実施形態では、さらに移動幅Lを最適化の対象とする。
【0033】
(構成)
図4は、第二実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図4に制御装置20Aのうち蒸気流量制御部22と給じん装置制御部23Aを示す。
制御装置20Aは、データ取得部21と、蒸気流量制御部22と、給じん装置制御部23Aと、記憶部24と、を備える。データ取得部21、蒸気流量制御部22、記憶部24については、図1図2を用いて説明したものと同様である。
給じん装置制御部23Aは、指示値候補決定手段232と、時刻歴決定手段233と、蒸気流量応答計算手段234と、指示値選定手段235と、プッシャ速度指示部231Aと、を備える。
【0034】
指示値候補決定手段232は、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)にしたがって、上記の式(1)を満たすv(m/s)の候補と、v(m/s)の候補を定める。また、指示値候補決定手段232は、プッシャ10の往復の移動幅であるストロークL(m)の候補を定める。L(m)の候補は、ゴミ供給の指示値r(m/s)と独立して定めてよい。Lには、最大押出位置に相当する最大押出長さ以下の任意の値を設定することができる。1組の指示値候補を{v,v,L}とすると、指示値候補決定手段232は、指示値候補をN組用意する。N組集めた指示値候補を以下の式(4)で表す。
【0035】
【数4】
【0036】
時刻歴決定手段233は、押出速度v(m/s)の候補と、引込速度v(m/s)の候補とに基づき、図3に示すようにゴミ供給開始の時刻0sから時刻L(v -1+v -1)sまで(1往復の時間)のゴミ供給uの時刻歴を定める。時刻0sから時刻L(v -1+v -1)sまでのゴミ供給uの時刻歴を以下の式(5)のように表す。
【0037】
【数5】
【0038】
例えば,時刻歴を1秒ごとに定めるならば、以下の式(6)のように表される。
【0039】
【数6】
【0040】
蒸気流量応答計算手段234は、以下の式(7)に示すように、例えば、サンプリング間隔を1秒としたパルス伝達関数モデルG(z)に、ゴミ供給の時刻歴(上記の式(6))を入力して、蒸気流量の応答{y}を計算する。zはパルス伝達関数が表す離散時間システムについてのラプラス演算子である。
【0041】
【数7】
【0042】
蒸気流量応答計算手段234は、この計算をゴミ供給の時刻歴N個(以下式(8))の各々について実施して、蒸気流量の応答の時刻歴N個(以下式(9))を計算する。
【0043】
【数8】
【0044】
【数9】
【0045】
蒸気流量応答計算手段234が使用する蒸気流量の応答モデルは,パルス伝達関数G(z)に限らない。物理保存則に基づく解析モデル、ニューラルネットワークや深層学習、ガウス過程回帰など、ゴミ供給量の推定値と蒸気流量の計測値など実データから導出したモデルであってもよい。
【0046】
指示値選定手段235は、蒸気流量の応答の時刻歴N個(上記式(9))の中から、例えば、分散の値が最小のものi*を選出し、そのもととなった指示値候補{v,v,L} *を指示値に採用する。分散は変動を評価する指標の一例である。指示値選定手段235は、例えば、蒸気流量変動の絶対値、最頻値、誤差面積など他の指標に基づいて,指示値候補の中から指示値を選択してもよい。
プッシャ速度指示部231Aは、指示値選定手段235が選定した最適な指示値{v *,v *,L*}に基づいてプッシャ10の往復動作を制御する。第一実施形態のプッシャ速度指示部231と異なり、プッシャ速度指示部231Aは、原点から位置L*の間でプッシャ10を往復動作させる。
【0047】
(動作)
まず、蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値を取得し、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)を算出する。蒸気流量制御部22は、指示値rを給じん装置制御部23Aへ出力する。次に、給じん装置制御部23Aは、単位時間あたりのゴミ供給量の指示値rに基づいて、押出速度指示値vの候補、引込速度指示値vの候補、移動幅指示値Lの候補を要素とする複数の指示値候補の中から、数値モデルに基づいて計算された蒸気流量の変動が最小となる指示値候補の組合せを選択し、この指示値に基づいてプッシャ10の往復動作を制御する。具体的には、まず、指示値候補決定手段232が指示値候補{v,v,L}を複数組作成する。このとき、vは、指示値rと、任意のv(最大値でなくてもよい)と、式(1)によって計算する。次に時刻歴決定手段233が、単位時間あたりのゴミ供給量を、プッシャ10の断面積×速度(候補)×時間で計算し、指示値候補ごとにゴミ供給の時刻歴を計算する。次に蒸気流量応答計算手段234が、ゴミ供給と蒸気流量の関係を示す所定のモデルと、ゴミ供給の時刻歴に基づいて、ゴミ供給の時刻歴ごと(指示値の候補ごと)に蒸気流量の時刻歴を計算する。次に指示値選定手段235が、指示値候補ごとの蒸気流量の時刻歴の中から、変動(例えば、分散)が最小となる蒸気流量の時刻歴を選択する。指示値選定手段235は、選択した蒸気流量の時刻歴に対応する指示値候補{v *,v *,L*}を選定して、これをプッシャ速度指示部231Aへ出力する。また、給じん装置制御部23Aは、選定されたL*に応じてプッシャ10の原点を設定する。例えば、プッシャ10の最大押出位置からL*だけ引き込んだ位置を原点に設定する。
【0048】
プッシャ速度指示部231Aは、指示値選定手段235が選定した指示値候補に基づいてプッシャ10の往復動作を制御する。例えば、プッシャ10の位置が原点の場合、プッシャ速度指示部231は、プッシャ10を選定された押出速度vF*で位置L*まで移動するようプッシャ10へ指示する。この指示により、プッシャ10は、速度vF*で位置L*まで移動する。プッシャ10が選定された位置L*に存在する場合、プッシャ速度指示部231は、プッシャ10を選定された引込速度v *で原点まで引き込むようプッシャ10へ指示する。この指示により、プッシャ10は、速度v *で原点まで引き込まれる。プッシャ10は、この往復動作を反復して行う。
給じん装置制御部23Aは、指示値r(m/s)が変更になったり、最適な指示値の選定後、所定時間が経過すると、再び、上記処理を行って最適な指示値候補{v *,v *,L*}を選定し直して、プッシャ10の制御を行ってもよい。
【0049】
上記説明したように第二実施形態によれば、蒸気流量の時刻歴によって示される変動が最小となるプッシャ10の最適な押出速度指示値vと、最適な引込速度指示値vと、往復動作における最適な移動幅の指示値Lと、に基づいてプッシャ10を制御する。具体的には、(1)プッシャ10の押出速度指示値v(m/s)の候補と、引込速度指示値v(m/s)の候補と、ストロークの指示値L(m)の候補と、を定める指示値候補決定手段232と、(2)これらの指示値の候補に基づいて単位時間あたりのゴミ供給の時刻歴を定める時刻歴決定手段と、(3)ゴミ供給に対する蒸気流量の応答を表す数値モデルと、(4)ゴミ供給の時刻歴を数値モデルに入力して蒸気流量の応答の時刻歴を計算する蒸気流量応答計算手段と、(5)指示値候補の中から蒸気流量の応答の時刻歴の変動が最小となるものを、プッシャ10の押出速度の最適な指示値v *(m/s)と、同引込速度の最適な指示値v *(m/s)と、ストロークの最適な指示値L*(m)と、として選定する指示値選定手段235と、を有する。選定されたv *、v *、L*を用いてプッシャ10を制御することにより、必要な蒸気流量を確保しつつ、その変動を抑制することができる。その他、設備利用率の向上、NOX等の排出抑制など第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
<第三実施形態>
第二実施形態では、プッシャ10の指示値候補を複数用意し、それらの中から、ゴミ供給に対する蒸気流量の応答モデルによって計算される蒸気流量の変動を最小化する指示値候補を選択した。第三実施形態では、プッシャ10の指示値候補を複数用意し、それぞれの指示値候補でプッシャ10を実際に制御し、その結果得られた蒸気流量の計測値に基づいて、指示値候補の中から最適の指示値を選択する。
【0051】
(構成)
図5は、第三実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図5に制御装置20Bのうち蒸気流量制御部22と給じん装置制御部23Bを示す。
制御装置20Bは、データ取得部21と、蒸気流量制御部22と、給じん装置制御部23Bと、記憶部24と、を備える。データ取得部21、蒸気流量制御部22、記憶部24については、図1図2を用いて説明したものと同様である。
【0052】
給じん装置制御部23Bは、指示値候補決定手段232Bと、モード切替手段236と、蒸気流量応答記録手段237と、指示値選定手段235と、プッシャ速度指示部231Aと、を備える。
指示値候補決定手段232Bは、第二実施形態の指示値候補決定手段232と同様に、{v,v,L}をN組集めた指示値候補(式(4))を作成する。v(m/s)の候補とv(m/s)の候補は、式(1)を満たすように(指示値rを満たすように)決定される。第三実施形態では,実際にゴミ焼却設備100が出力する蒸気流量を計測し、その計測値を用いて最適な候補値を探索するため、候補数Nは少数であることが好ましい。例えば、プッシャ10の1往復に1分を要し、1時間を掛けて最適の指示値を探索するならば、その間に評価可能な候補数は、最大で(重複して同じ指示値候補を抽出しない場合でも)60個に限られる。そこで、v(m/s)の候補とv(m/s)の候補を、第一実施形態のようにそれぞれ式(1)によって得られる速度と実現可能な最大値に固定し、ストロークL(m)のみ複数の候補を用意し、ストロークLのみを探索するようにしてもよい。
【0053】
モード切替手段236は、探索モードと通常モードを切り替える。探索モードとは、指示値候補の何れかでプッシャ10の往復動作を制御し、そのときの蒸気流量の応答を記録し、蒸気流量計測値の変動を最小にする最適な指示値候補を探索する制御モードである。通常モードとは、指示値候補の中から選定された最適な指示値に基づいてプッシャ10を往復動作させる制御モードである。探索モードにおいて,モード切替手段236は、指示値候補決定手段232Bが用意するN組の候補値の中からi番目の候補値{v,v,L}を取り出して、プッシャ速度指示部231Aに指示値として出力する。プッシャ速度指示部231Aは、i番目の指示値候補の組{v,v,L}に基づきプッシャ10の往復動作を制御する。
指示値選定手段235によって、最適な指示値が選定されると、モード切替手段236は、制御モードを通常モードに切り替え、最適な指示値{v *,v *,L*}をプッシャ速度指示部231Aに出力する。
【0054】
蒸気流量応答記録手段237は、最適な指示値の探索中、データ取得部21が取得した蒸気流量の計測値を記憶部24に記録する。具体的には、蒸気流量応答記録手段237は、i番目の指示値の組{v,v,L}に基づきプッシャ10を動作させた結果として発生する蒸気流量の応答の時刻歴(以下の式(10))を記憶部24に記録する。
【0055】
【数10】
【0056】
これを,iが1~Nまで、全ての候補値の組に対して実行すると、記憶部24には、蒸気流量の応答の時刻歴がN個記録される。これは上記の式(9)で表される。プッシャ速度指示部231Aが、1つの指示値候補の組につき、プッシャ10を1往復~数往復させ、蒸気流量応答記録手段237は、その間の蒸気流量の計測値を記録してもよい。
【0057】
指示値選定手段235は、蒸気流量の応答の時刻歴N個の中から分散が最小のものi*を選出し、そのもととなった指示値{v *,v *,L*}を最適な指示値に選定する。プッシャ速度指示部231Aは、最適な指示値に基づいてプッシャ10を制御する。なお、分散は変動を評価する指標の一例である。例えば、指示値選定手段235は、蒸気流量の変動の絶対値(最小のもの)、最頻値、誤差面積(最小のもの)などに基づいて最適な指示値を選定してもよい。
【0058】
(動作)
まず、蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値を取得し、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)を算出する。蒸気流量制御部22は、指示値rを給じん装置制御部23Bへ出力する。次に、給じん装置制御部23Bは、単位時間あたりのゴミ供給量の指示値rに基づいて、押出速度vの候補、引込速度vの候補、移動幅Lの候補、を要素とする複数の指示値候補の中から、それぞれの指示値候補で運転したときに実際に計測された蒸気流量の変動が最小となる指示値候補の組合せを選定し、この指示値に基づいてプッシャ10の往復動作を制御する。具体的には、まず、モード切替手段236が制御モードを探索モードに設定する。また、指示値候補決定手段232Bが指示値候補{v,v,L}を複数組作成する。このとき、指示値候補決定手段232Bは、{v,v,L}の各値を任意に(但し、v,vは式(1)を満たす。)設定した指示値の候補を探索可能な数だけ作成する。あるいは、指示値候補決定手段232Bは、{v,v,L}のうちv,vを第一実施形態と同様に固定してLのみを探索可能な数だけ用意して複数組の指示値候補を作成してもよい。
【0059】
次にモード切替手段236は、指示値候補決定手段232Bが作成した複数組の指示値の候補から1つずつ順に取り出して、プッシャ速度指示部231Aに指示値として出力する。プッシャ速度指示部231Aは、指示値に基づいてプッシャ10を制御する。指示値を{vFi,vBi,L}とすると、プッシャ10を押し出すときには、プッシャ速度指示部231Aは、速度vFiで原点から位置Lまで移動させる。プッシャ10を引き込むときには、プッシャ速度指示部231Aは、速度vBiで位置Lから原点からまで引き込む。プッシャ速度指示部231Aが、i番目の指示値に基づいてプッシャ10の制御を行っている間、蒸気流量応答記録手段237は、蒸気流量計測値の時刻歴を記録する。例えば、蒸気流量応答記録手段237は、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量計測値および計測時刻と、この計測値がi番目の指示値に基づくものであることを対応付けて記憶部24に記録する。
モード切替手段236と蒸気流量応答記録手段237は、全ての指示値の候補i=1~Nについて以上の処理を繰り返し行う。
【0060】
全ての指示値候補について蒸気流量計測値の記録が完了すると、指示値選定手段235は、記録された蒸気流量の時刻歴の分散などを計算し、分散(変動)が最小となる蒸気流量の時刻歴を選定する。指示値選定手段235は、選定した蒸気流量の時刻歴に対応する指示値の候補を選定する。指示値選定手段235が、最適な指示値の候補を選定すると、モード切替手段236は、指示値選定手段235が、選定した最適な指示値をプッシャ速度指示部231Aへ出力する。そして、モード切替手段236は、制御モードを探索モードから通常モードに切り替える。選定された最適な指示値を{v *,v *,L*}とすると、給じん装置制御部23Bは、選定されたL*に応じてプッシャ10の原点を設定し、プッシャ速度指示部231Aの制御により、プッシャ10は、速度vF*で原点から位置L*まで移動し、引込速度v *で位置L*から原点からまで後退する往復動作を繰り返す。
給じん装置制御部23Aは、指示値r(m/s)が変更になったり、最適な指示値の選定後、所定時間が経過すると、再び、上記処理を行って最適な指示値候補{v *,v *,L*}を選定し直して、プッシャ10の制御を行ってもよい。
【0061】
上記説明したように第三実施形態によれば、蒸気流量の時刻歴によって示される変動が最小となるプッシャ10の押出速度と、引込速度と、ストローク長に基づいてプッシャ10を制御する。具体的には、(1)プッシャ10の押出速度指示値v(m/s)の候補と、引込速度指示値v(m/s)の候補と、ストロークの指示値L(m)の候補と、の組を実施可能な数だけ作成する指示値候補決定手段232Bと、(2)プッシャ速度指示部231Aに指示値候補を出力するモード切替手段と、(3)指示値候補に対する蒸気流量の応答の時刻歴を記録する蒸気流量応答記録手段237と、(4)指示値候補の中から蒸気流量の応答の時刻歴の変動が最小となるものを、プッシャ10の押出速度の最適な指示値v *(m/s)、同引込速度の最適な指示値v *(m/s)、ストロークの最適な指示値L*(m)として選定する指示値選定手段235と、を有する。これにより、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
<第四実施形態>
第四実施形態では、第一実施形態に係る制御装置20の機能を拡張する。第一実施形態に係る制御装置20が、プッシャ10を原点から終点(最大押出位置)まで一度に押出すのに対し、第四実施形態に係る制御装置20Cは、原点から終点までの移動の途中で休止期間を設ける。プッシャ10は、途中で休止しながら原点から終点まで移動し、原点へは一度に引き込まれる。
【0063】
(構成)
図6は、第四実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図6に制御装置20Cのうち蒸気流量制御部22と給じん装置制御部23Cを示す。
制御装置20Cは、データ取得部21と、蒸気流量制御部22と、給じん装置制御部23Cと、記憶部24と、を備える。データ取得部21、蒸気流量制御部22、記憶部24については、図1図2を用いて説明したものと同様である。
給じん装置制御部23Cは、プッシャ押出速度算出手段230Cと、プッシャ速度指示部231Cとを備える。プッシャ押出速度算出手段230Cは、プッシャ10の引込速度の最大値vと、単位時間あたりのゴミ供給指示値r(m/s)と、押出過程における停止回数nを取得して、以下の式(11)により、プッシャ10の押出速度指示値vを算出する。
【0064】
【数11】
【0065】
プッシャ速度指示部231Cは、押出速度指示値v(m/s)と、引込速度指示値v(m/s)と、押出過程における停止回数nを取得して、押出過程であれば、指示値v(m/s)と、押出速度指示値L/(n+1)(m)を、休止期間を設けながら断続的にプッシャ10に出力する。引込過程であれば、引込速度指示値v(m/s)と原点への移動指示をプッシャ10へ出力する。プッシャ10は、プッシャ速度指示部231Cが指示した速度で、プッシャ速度指示部231Cが指示した移動幅だけ移動する。
【0066】
ここで、図7を参照しつつ、式(11)について説明する。
図7は、第四実施形態に係るプッシャ速度とゴミ供給量の関係を示す図である。
図7(a)に押出過程の途中で1回の休止期間を設ける場合のプッシャ10の位置(m)の時間変化を示す。図7(a)の縦軸は、プッシャ10の位置(m)を示し、横軸は時間を示す。休止期間の長さは、便宜的にL/v(s)としている。
図7(b)にゴミ供給の時間変化を示す。図7(b)の縦軸は単位時間あたりのゴミ供給量u(m/s)を示し、横軸は時間を示す。図7(a)、図7(b)の横軸の同じ位置は同時刻を示す。
ここで、プッシャ10の断面積をA(m)とすると、1つの往復過程について1回の休止期間を設けた場合のゴミ供給の時間平均値u ̄(m/s)は、A/(v -1+2・v -1)となる。同様に、n回の休止期間を設ける場合のゴミ供給の時間平均値u ̄(m/s)は、下の式(12)で表される。
【0067】
【数12】
【0068】
ここで,給じん装置は,蒸気流量制御器の指示値r(m/s)どおりにゴミを供給することが役割だから、u ̄=rとなるように、v(m/s)とv(m/s)の値を設定する必要がある。そのようなvとvの値の組み合わせは無数にあるが、例えば、往復過程の各時刻のゴミ供給u(m/s)の分散が最小となるようにv(m/s)とv(m/s)の値を定める。1つの往復過程についてのゴミ供給u(m/s)の分散は式(13)で表される。
【0069】
【数13】
【0070】
分散Var[u]は,往復動作の過程でのゴミ供給の変動を示す。分散Var[u]の値を小さくすると、往復動作の過程でゴミ供給の変動は小さくなり、蒸気流量の変動を抑制することができる。式(13)からv(m/s)を大きくすると分散を小さくできることが分かる。そこで、v(m/s)にはプッシャ10の引込速度として実現可能な最大値を設定し、その条件下でu ̄=rとなるようにv(m/s)を求めると、上記の式(11)が得られる。
【0071】
(動作)
まず、蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値を取得し、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)を算出する。蒸気流量制御部22は、指示値rを給じん装置制御部23Cへ出力する。次に、給じん装置制御部23Cは、ゴミ供給指示値rと、引込速度指示値v(最大値)と、プッシャ10のストロークL(最大の移動幅)と、休止回数nと、を取得する。まず、プッシャ押出速度算出手段230Cは、式(11)によって、押出速度vを算出し、この値をプッシャ速度指示部231Cへ出力する。プッシャ速度指示部231Cは、押出過程では、押出速度指示値vとストロークL/(n+1)をプッシャ10へ出力する。プッシャ10は、速度vでL/(n+1)だけ移動する。プッシャ速度指示部231Cは、プッシャ10の移動後、L/vの休止期間を設け、その後、再びプッシャ10へ押出速度指示値vとストロークL/(n+1)を出力する。プッシャ10が終点(最大押出位置)に至ると、プッシャ速度指示部231Cは、引込速度指示値v(最大値)をプッシャ10へ出力する。この指示により、プッシャ10は、速度vで原点まで後退する。プッシャ速度指示部231は、プッシャ10の押し出しと引き込みを繰り返し行う。
【0072】
上記説明したように本実施形態によれば、制御装置20Cは,押出過程の途中でn回の休止期間を設けた場合に、ゴミ供給指示値rを満たしつつ、ゴミ供給の分散を最小にする押出速度vを算出し、この押出速度指示値vと、押出移動幅の指示値L/(n+1)を、休止期間を挟みながらプッシャ10に出力し、引込過程では引込最大速度指示値vをプッシャ10に出力する。これにより、1回のゴミ供給(次の休止期間までの移動)で必要とされるゴミ供給量が少ない場合でも、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
途中に停止期間を設けることは,例えば、1回の押出量を短くしたいときに必要となる。ゴミは弾性があるので,プッシャ10が移動しても、その一部はゴミの減容に使われ、実際に供給されるゴミの量はストローク相当量よりも少ない。例えば,プッシャを1cmだけ押し出したとしても,最初の1cmは減容に消費され,供給量はゼロとなる可能性がある。このような場合でも、複数回連続して押し出すことにより所望の量のゴミを供給することができる。複数回押し出すと、ゴミはやがて充分に減容されるので、押し出した分だけ供給されるようになる。第四実施形態において、休止回数nの値を1回のストロークで必要とされるゴミ供給量に合わせて適切に設定することで、1回の押出量を短く設定する場合でも、必要な蒸気流量を確保しつつその変動を抑制する制御が可能である。
【0074】
なお、上記の式(11)は、一例として、途中の休止期間の長さをL/vと仮定したときの押出速度指示値vを表すものであるが、休止期間の長さや回数に関係なく、ゴミ供給の変動抑制(蒸気流量の変動抑制)にvの最大化が有効であることは式(13)より明らかであるから、休止期間の長さを任意に設定した場合の押出速度指示値vについても同様に計算することができる。例えば、プッシャ10が1往復したときのゴミ供給量(AL)と1往復に要する時間から単位時間あたりのゴミ供給の平均値u ̄を式で表し(式(12)に相当)、その式のu ̄をrで置き換えてvについて解くことで、休止期間の長さを任意に設定した場合の押出速度指示値vについて計算することができる。
【0075】
<第五実施形態>
第五実施形態では、第二実施形態に係る制御装置20Aの機能を拡張する。第五実施形態に係る制御装置20Dは、第二実施形態に係るプッシャ10の制御において、始点から終点までの押出過程の途中で休止期間を設ける場合の最適な指示値を探索する。
【0076】
(構成)
図8は、第五実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図8に制御装置20Dのうち蒸気流量制御部22と給じん装置制御部23Dを示す。
制御装置20Dは、データ取得部21と、蒸気流量制御部22と、給じん装置制御部23Dと、記憶部24と、を備える。データ取得部21、蒸気流量制御部22、記憶部24については、図1図2を用いて説明したものと同様である。
給じん装置制御部23Dは、指示値候補決定手段232Dと、時刻歴決定手段233Dと、蒸気流量応答計算手段234Dと、指示値選定手段235Dと、プッシャ速度指示部231Dと、を備える。
【0077】
指示値候補決定手段232Dは、指示値r(m/s)に従って、上記の式(11)を満たすv(m/s)の候補と、v(m/s)の候補を定める。また、指示値候補決定手段232Dは、ストロークL(m)の候補と、押出過程における停止回数n(回)を定める。1組の指示値候補を{v,v,L,n}とすると、指示値候補決定手段232Dは、指示値候補をN組用意する。N組集めた指示値候補を以下で表す。
【0078】
【数14】
【0079】
時刻歴決定手段233Dは、v(m/s)の候補と、v(m/s)の候補と、Lの(m)候補と、押出過程における休止回数n(回)の候補と、に基づき、図7に示すようにゴミ供給速度の時刻0sから時刻L(v -1+(n+1)v -1)(s)まで(1往復)のゴミ供給uの時刻歴を定める。時刻0sから時刻L(v -1+(n+1)v -1)(s)までのゴミ供給uの時刻歴を以下のように表す。
【0080】
【数15】
【0081】
例えば,時刻歴を1秒ごとに定めるならば、以下が成り立つ。
【0082】
【数16】
【0083】
蒸気流量応答計算手段234Dは、以下の式(17)に示すように、例えば、サンプリング間隔を1秒としたパルス伝達関数モデルG(z)に、ゴミ供給の時刻歴(上記の式(16))を入力して、蒸気流量の応答{y}を計算する。zはラプラス演算子である。
【0084】
【数17】
【0085】
蒸気流量応答計算手段234Dは、この計算をゴミ供給の時刻歴N個(以下式(18))の各々について実施して、蒸気流量の応答の時刻歴N個(以下式(19))を計算する。
【0086】
【数18】
【0087】
【数19】
【0088】
第二実施形態と同様、蒸気流量応答計算手段234Dが使用する蒸気流量の応答モデルは、パルス伝達関数Gに限定されず、他の方法で構築されたモデルであってもよい。
【0089】
指示値選定手段235Dは、蒸気流量の応答の時刻歴N個(上記式(19))の中から、例えば、分散が最小のものi*を選出し、そのもととなった指示値候補{v,v,L,n} *を最適な指示値として選定する。第二実施形態と同様、指示値選定手段235Dは、分散以外の、例えば、蒸気流量変動の絶対値、最頻値、誤差面積などの他の指標に基づいて最適な指示値を選定してもよい。
【0090】
(動作)
まず、蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値を取得し、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)を算出し、指示値rを給じん装置制御部23Dへ出力する。次に、給じん装置制御部23Dの指示値候補決定手段232Dが指示値候補{v,v,L,n}を複数組作成する。次に時刻歴決定手段233Dが、指示値候補ごとにゴミ供給の時刻歴を計算する。次に蒸気流量応答計算手段234Dが、ゴミ供給に対する蒸気流量の応答モデルと、ゴミ供給の時刻歴に基づいて、ゴミ供給の時刻歴ごと(指示値候補ごと)に蒸気流量の時刻歴を計算する。次に指示値選定手段235Dが、指示値候補ごとの蒸気流量の時刻歴の中から、変動が最小となる蒸気流量の時刻歴を選択する。次に指示値選定手段235Dは、選択した蒸気流量の時刻歴に対応する指示値候補{v *,v *,L*,n*}を選定して、これをプッシャ速度指示部231Dへ出力する。
【0091】
プッシャ速度指示部231Dは、指示値選定手段235Dが選定した指示値候補に基づいてプッシャ10の往復動作を制御する。例えば、プッシャ速度指示部231Dは、プッシャ10を、選定された押出速度v *で位置L*/(n+1)まで伸展するようプッシャ10へ指示する。L*/v(s)の休止の後、再び、プッシャ速度指示部231Dは、同様の動作をプッシャ10へ指示する。プッシャ速度指示部231Dは、プッシャ10が位置L*へ至るまで、この処理を繰り返す。プッシャ10が選定された位置L*へ至ると、プッシャ速度指示部231Dは、プッシャ10を選定された引込速度vで原点まで引き込むようプッシャ10へ指示する。
【0092】
上記説明したように第五実施形態によれば、制御装置20Dは、蒸気流量の応答モデルに基づいて計算された蒸気流量の時刻歴によって示される蒸気流量の変動が最小となる、最適な押出速度指示値v *と、最適な引込速度指示値v *と、最適なストローク指示値L*と、最適な休止回数指示値n*と、の組合せを選定し、選定した指示値に基づいてプッシャ10を制御する。これにより、1回の押出動作で必要とされるゴミ供給量が少ない場合でも、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
<第六実施形態>
第六実施形態では、第三実施形態に係る制御装置20Bの機能を拡張する。第六実施形態に係る制御装置20Eは、第三実施形態に係るプッシャ10の制御において、押出過程の途中で休止期間を設ける場合の最適な指示値を探索する。
【0094】
(構成)
図9は、第六実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
制御装置20Eは、データ取得部21と、蒸気流量制御部22と、給じん装置制御部23Eと、記憶部24と、を備える。データ取得部21、蒸気流量制御部22、記憶部24については、図1図2を用いて説明したものと同様である。
図9に制御装置20Eのうち蒸気流量制御部22と給じん装置制御部23Eを示す。
【0095】
給じん装置制御部23Eは、指示値候補決定手段232Eと、モード切替手段236Eと、蒸気流量応答記録手段237Eと、指示値選定手段235Dと、プッシャ速度指示部231Dと、を備える。
指示値候補決定手段232Eは、第二実施形態の指示値候補決定手段232Dと同様に、{v,v,L,n}をN組集めた指示値候補(式(14))を作成する。v(m/s)の候補とv(m/s)の候補は、式(11)を満たすように決定される。また、第三実施形態と同様、指示値の候補の数Nは少数であることが好ましい。例えば、式(11)を満たす任意のv,vと、任意のL,nの組合せを60組程度作成してもよい。あるいは、v(m/s)の候補とv(m/s)の候補を、第四実施形態の速度vと速度vに固定し、ストロークL(m)と休止回数n(回)のみ複数の候補(例えば、10~20組程度)を用意し、Lとnのみを探索するようにしてもよい。
【0096】
モード切替手段236Eは、探索モードと通常モードの何れかを設定する。探索モードにおいて,モード切替手段236Eは、N組の指示値候補の中からi番目の候補値{v,v,L,n}を取り出して、プッシャ速度指示部231Dに指示値として出力する。モード切替手段236Eは、全てのi=1~Nについてこの処理を行う。指示値選定手段235Dによって、最適な指示値が選定されると、モード切替手段236Eは、制御モードを通常モードに切り替え、最適な指示値{v *,v *,L*,n*}をプッシャ速度指示部231Dに出力する。
【0097】
蒸気流量応答記録手段237Eは、指示値の探索中、データ取得部21が取得した蒸気流量の計測値を記憶部24に記録する。具体的には、蒸気流量応答記録手段237Eは、i番目の指示値の組{v,v,L,n}に基づきプッシャ10を動作させた結果、発生する蒸気流量の時刻歴(以下の式(20))を記録する。
【0098】
【数20】
【0099】
探索モードにおいて、i=1~Nまで全ての指示値候補の組についてプッシャ10の制御が実行されると、記憶部24には、蒸気流量の応答の時刻歴がN個記録される。これは上記の式(19)で表される。
【0100】
指示値選定手段235Dは、蒸気流量の応答の時刻歴N個の中から変動(分散など)が最小のものi*を選出し、そのもととなった指示値{v *,v *,L*,n*}を最適な指示値として選定する。プッシャ速度指示部231Dは、指示値選定手段235Dが選定した指示値に基づいて、プッシャ10を制御する。
【0101】
(動作)
まず、蒸気流量制御部22が、蒸気流量設定値と蒸気流量計測値を取得し、単位時間あたりのゴミ供給の指示値r(m/s)を算出する。蒸気流量制御部22は、指示値rを給じん装置制御部23Eへ出力する。次に、給じん装置制御部23Eのモード切替手段236Eが制御モードを探索モードに設定する。次に、指示値候補決定手段232Eが指示値候補{v,v,L,n}を探索可能な数だけ作成する。例えば、指示値候補決定手段232Bは、{v,v,L,n}のうちv,vを第四実施形態と同様に固定してLとnのみを探索可能な数だけ用意して複数組の指示値候補を作成してもよい。
【0102】
モード切替手段236Eは、制御モードを探索モードに設定する。探索モードにおいて、モード切替手段236Eは、指示値候補決定手段232Eが作成した複数組の指示値の候補から1つずつ順に取り出して、プッシャ速度指示部231Dに指示値として出力する。プッシャ速度指示部231Dは、この指示値に基づいてプッシャ10を制御する。指示値を{vFi,vBi,L,n}とすると、プッシャ速度指示部231Dは、速度vFで現在位置からL/n+1の長さだけプッシャ10をゴミの押出方向に移動させる。プッシャ速度指示部231Dは、その位置で、L/vだけ休止させ、その後、再び、速度vFでその位置から更にL/n+1の長さだけプッシャ10を移動させる。プッシャ速度指示部231Dは、プッシャ10が選定されたストロークL*に至るまでこの処理を繰り返す。プッシャ10を引き込むときには、プッシャ速度指示部231Dは、引込速度vBで位置Lから原点からまで後退させる。プッシャ速度指示部231Dが、i番目の指示値に基づいてプッシャ10の制御を行っている間、蒸気流量応答記録手段237Eは、蒸気流量計測値および計測時刻と、i番目の指示値とを対応付けて、記憶部24に記録する(蒸気流量の時刻歴の記録)。
モード切替手段236Eと蒸気流量応答記録手段237Eは、全ての指示値の候補について以上の処理を繰り返し行う。プッシャ速度指示部231Dは、1つの指示値候補の組についてプッシャ10を1往復以上動作させる。
【0103】
全ての指示値の候補について蒸気流量の記録が完了すると、指示値選定手段235Dは、分散などの変動を示す指標値が最小となる蒸気流量の時刻歴、それに対応する指示値の候補を選定する。指示値選定手段235Dが、最適な指示値の候補を選定すると、モード切替手段236Eは、指示値選定手段235Dが、選定した最適な指示値をプッシャ速度指示部231Dへ出力する。そして、モード切替手段236Eは、制御モードを探索モードから通常モードに切り替える。モード切替手段236Eは、選定された指示値{v *,v *,L*,n*}をプッシャ速度指示部231Dへ出力する。プッシャ速度指示部231Dは、押出過程では、押出速度指示値v *、ストローク指示値L*/(n+1)を、休止期間L/vを挟みながら、n回プッシャ10へ出力する。プッシャ10が位置L*に至ると、プッシャ速度指示部231Dは、押出速度v *をプッシャ10へ出力する。
【0104】
上記説明したように第六実施形態によれば、制御装置20Eは、押出速度指示値v(m/s)、引込速度指示値v(m/s)、ストローク指示値L(m)、押出過程における停止回数指示値n(回)、に基づいてプッシャ10の往復動作を制御する。そして、制御装置20Eは、そのときに計測された蒸気流量計測値の時刻歴によって示される蒸気流量の変動が最小となるプッシャ10の最適な押出速度v *と、引込速度v *と、ストロークL*と、休止回数n*の組合せを選定し、選定した指示値に基づいてプッシャ10を制御する。これにより、1回のゴミ供給で必要とされるゴミ供給量が少ない場合でも、第三実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
図10は、各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の制御装置20~20Eは、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0106】
なお、制御装置20~20Eの全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0107】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0108】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置20~20E、制御方法およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0109】
(1)第1の態様に係る制御装置20~20Eは、給じん装置(プッシャ10)を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備100において、前記ゴミ焼却設備100から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量(指示値r)を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値(v、v、L、n)を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御する制御部(給じん装置制御部23~23E)、を備える。
これにより、発電所に供給する蒸気流量を確保しつつ、プッシャ式の給じん装置の往復動作によって生じる間欠的なゴミ供給が原因となって生じる蒸気流量の変動を抑制し、蒸気流量を安定化することができる。
【0110】
(2)第2の態様に係る制御装置20、20Cは、(1)の制御装置20、20Cであって、前記制御部(給じん装置制御部23,23C)は、前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化する前記給じん装置の制御値を、前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の制御値として算出する。
ゴミ供給量の変動を最小化する速度でプッシャ10の往復動作を制御することで、蒸気流量の変動を最小化することができる。
【0111】
(3)第3の態様に係る制御装置20、20Cは、(1)~(2)の制御装置20、20Cであって、前記制御部(給じん装置制御部23,23C)は、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の変動を最小化し、且つ、前記給じん装置を引き込むときの引込速度と、前記給じん装置の押し出すときの押出速度との差が最大となる前記引込速度および前記押出速度を算出する。
プッシャを押出速度と引込速度の差を最大化することで、ゴミ供給量の変動を最小化し、ひいては、蒸気流量の変動を最小化することができる。
【0112】
(4)第4の態様に係る制御装置20は、(3)の制御装置20であって、前記制御部(給じん装置制御部23)は、前記引込速度に最大値を設定したときに、1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の平均値が前記ゴミの必要供給量を満たす前記押出速度を算出する。
引込速度を実現可能な最大速度に設定することで、ゴミの必要供給量を満たしつつ蒸気流量の変動を最小化するプッシャ10の押出速度を決定することができる。
【0113】
(5)第5の態様に係る制御装置20Cは、(3)の制御装置20Cであって、前記制御部(給じん装置制御部23C)は、前記給じん装置の押し出し過程においてn回の休止期間を設け、前記引込速度に最大値を設定した場合の1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量の平均値が、前記ゴミの必要供給量を満たす前記給じん装置の押出速度を算出する。
これにより、ゴミの必要供給量を満たすために必要なプッシャ10の1回の押出量が短い場合でも、蒸気流量の変動を抑制することができる。
【0114】
(6)第6の態様に係る制御装置20A、20Dは、(1)の制御装置20A、20Dであって、前記制御部(給じん装置制御部23A,23D)は、前記給じん装置(プッシャ10)を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅と、の候補を複数組作成し、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答モデルに基づいて、前記複数組の候補ごとに、1回又は複数回の前記往復動作における前記蒸気流量の時刻歴を計算し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する。
蒸気流量の時刻歴を計算するので、ゴミ供給量の変動抑制を介さずに、直接的に蒸気流量に基づく、蒸気流量の変動を抑制する制御値(v,v、L、n)の選定が可能になる。
【0115】
(7)第7の態様に係る制御装置20B、20Eは、(1)の制御装置20B、20Eであって、前記制御部(給じん装置制御部23B,23E)は、前記給じん装置(プッシャ10)を引き込むときの引込速度と、押し出すときの押出速度と、前記往復動作の往復幅(移動幅、ストロークL)と、の候補を複数組作成し、1組の候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記給じん装置の往復動作を実際に制御したときに計測された前記蒸気流量の時刻歴を記録する処理を前記複数組の候補の各々について実行し、当該時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に基づいて前記往復動作を制御する。
蒸気流量計測値の時刻歴を記録するので、ゴミ供給量の変動抑制を介さずに、直接的に蒸気流量に基づく、蒸気流量の変動を抑制する制御値(v,v、L)の選定が可能になる。
【0116】
(8)第8の態様に係る制御装置20A、20B、20D、20Eは、(6)~(7)の制御装置20A、20B、20D、20Eであって、前記制御部(給じん装置制御部23A,23B,23D,23E)は、前記候補について、前記引込速度には最大値を設定し、前記押出速度には、前記引込速度が最大の場合に1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量が前記必要供給量を満たす速度を設定し、前記往復幅には任意の値を設定し、前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記往復幅を選定する。
押出速度と引込速度を固定し、往復幅だけを探索するので、最適な制御値の選定処理の負荷を低減することができる。
【0117】
(9)第9の態様に係る制御装置20D、20Eは、(6)~(8)の制御装置20D、20Eであって、前記制御部(給じん装置制御部23D,23E)は、前記候補について、前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、に加えて、前記押し出し過程における休止回数、をさらに含む前記候補を複数組作成し、前記蒸気流量の時刻歴が示す前記蒸気流量の変動が最小となる場合の前記候補を選定し、選定した候補に含まれる前記引込速度と、前記押出速度と、前記往復幅と、前記休止回数と、に基づいて前記往復動作を制御する。
これにより、ゴミの必要供給量を満たすために必要なプッシャ10の1回の押出量が短い場合でも、蒸気流量の変動を抑制することができる。また、ゴミ供給量の変動抑制を介さずに、直接的に蒸気流量に基づく、蒸気流量の変動を抑制する制御値(v,v、L、n)の選定が可能になる。
【0118】
(10)第10の態様に係る制御装置20D、20Eは、(9)の制御装置20D、20Eであって、前記制御部(給じん装置制御部23D,23E)は、前記候補について、前記引込速度には最大値を設定し、前記押出速度には、前記引込速度が最大で前記押し出し過程において同じ前記組に含まれる前記休止回数だけ休止期間を設けた場合の1回の前記往復動作における単位時間あたりの前記ゴミの供給量が前記必要供給量を満たす速度を設定する。
押出速度と引込速度を固定し、往復幅と休止回数だけを探索するので、最適な制御値の選定処理の負荷を低減することができる。
【0119】
(11)第11の態様に係る制御方法は、給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備において、前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御する。
【0120】
(12)第12の態様に係るプログラムは、コンピュータに、給じん装置を押し出して引き込む往復動作によって、ゴミを焼却炉へ供給するゴミ焼却設備の前記給じん装置の制御について、前記ゴミ焼却設備から発生する蒸気流量が所定の設定値となるように定められた前記ゴミの必要供給量を満たし、且つ、前記往復動作における前記蒸気流量の変動を最小化する前記給じん装置の前記往復動作の制御値を算出し、前記制御値に基づいて前記給じん装置を制御する処理を実行させる。
【符号の説明】
【0121】
100・・・ゴミ焼却設備、1・・・ホッパ、2・・・シュート、3・・・ストーカ、3A・・・乾燥域、3B・・・燃焼域、3C・・・後燃焼域、4・・・送風機、5A~5E・・・風箱、6・・・燃焼室、7・・・灰出口、8A~8E・・・バルブ、9・・・ボイラ、10・・・プッシャ、11・・・蒸気流量センサ、12・・・煙道、13・・・管路、20・・・制御装置、21・・・データ取得部、22・・・蒸気流量制御部、23,23A,23B,23C,23D,23E・・・給じん装置制御部、230,230C・・・プッシャ押出速度算出手段、231,231A,231C,231D・・・プッシャ速度指示部、232,232B,232D,232E・・指示値候補決定手段、233,233D・・・時刻歴決定手段、234,234D・・・蒸気流量応答計算手段、235,235D・・・指示値選定手段、236,236E・・・モード切替手段、237,237E・・・蒸気流量応答記録手段、24・・・記憶部、900・・・コンピュータ、901・・・CPU、902・・・主記憶装置、903・・・補助記憶装置、904・・・入出力インタフェース、905・・・通信インタフェース
図1
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