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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20231109BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20231109BHJP
   G01S 13/76 20060101ALI20231109BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20231109BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20231109BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20231109BHJP
【FI】
E05B49/00 K
B60R25/24
G01S13/76
H04W4/00 110
H04W4/40
H04W12/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020099819
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021193260
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-31871(JP,A)
【文献】特開2019-197993(JP,A)
【文献】特開2019-169790(JP,A)
【文献】特開2020-70676(JP,A)
【文献】特開2020-31351(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174242(WO,A1)
【文献】特開2015-63875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/24
G01S 13/76
H04W 4/00
H04W 4/40
H04W 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置と無線通信を行うよう通信部を制御する制御部を備え、
前記制御部は
記他の装置から前記無線通信により送信される所定の信号の受信待ち時間を制御し、
前記受信待ち時間の制御として、前記所定の信号の受信待ちを開始し、開始から第1の規定時間経過後に当該受信待ちを終了する制御を行い、
前記受信待ち中に前記所定の信号を受信したことを示す情報を取得した際、当該取得した取得情報に応じて、次の信号の受信待ち時間を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記取得情報に応じた所定のタイミングで、前記次の信号の受信待ちを開始する制御を行う、請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の信号を前記他の装置から受信して当該受信した信号を取り込む処理を実行することを、前記受信待ちとする、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記受信待ち中に前記所定の信号を受信した場合は、前記受信待ちを終了する制御を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の信号を用いて、前記他の装置と前記通信部との間の距離を測定するための測距処理を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定の信号を受信せずに前記受信待ちを終了した場合、当該終了から第2の規定時間経過後に、前記所定の信号の受信待ちを再度開始する制御を行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記他の装置との無線通信により得られた情報を用いて前記他の装置を認証する認証処理を行い、
前記所定の信号は、前記認証処理を開始することを知らせる信号である、請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記他の装置と前記通信部との間の距離を測定し、当該測定した距離に基づいて前記他の装置を認証する処理を前記認証処理とする、請求項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、記所定の信号が送信される前に前記他の装置との間で応答が行われたことを示す情報を取得し、当該取得した情報に基づいて、前記所定の信号が前記他の装置から送信される時間を予測し、前記所定の信号の受信待ちを開始する制御を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記応答は、前記所定の信号の送受信に用いられる無線通信規格とは異なる他の無線通信規格を用いて行われる、請求項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記所定の信号を受信するために前記通信部が前記他の装置との間で行う前記無線通信では、UWB(Ultra-Wide Band)が用いられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御装置は、移動体に搭載され、
前記他の装置は、前記移動体のユーザに携帯される、請求項1~11のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
プロセッサが、
他の装置と無線通信を行うよう通信部を制御することと、
記他の装置から前記無線通信により送信される所定の信号の受信待ち時間を制御することと、
を含み、
前記受信待ち時間の制御として、前記所定の信号の受信待ちを開始し、開始から第1の規定時間経過後に当該受信待ちを終了する制御を行い、
さらに、前記受信待ち中に前記所定の信号を受信したことを示す情報を取得した際、当該取得した取得情報に応じて、次の信号の受信待ち時間を制御することを含む、
制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で信号を送受信した結果に従って装置を認証する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1では、第1の通信部により車載器が携帯機との間で信号を送受信して携帯機の認証を行っている。携帯機は、車両の施錠や解錠を行うためのリモートコントローラであって、スマートキーとも称される。また、携帯機は運転者に携帯される。さらに、下記特許文献1では、第1の通信部による認証に加えて、第2の通信部により車載器が携帯機との距離を測って車両操作の許否を判定するスマートキーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-31871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、認証のために装置間で信号が送受信される際に、信号を受信する側が信号の受信待ち期間において電力の消費を強いられていた。このような事情は、装置を認証するための信号以外の信号についても同様に存在し得る。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは信号の受信待ちのための消費電力を低減することが可能な、新規かつ改良された制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、他の装置と無線通信を行うよう通信部を制御する制御部を備え、前記制御部は、取得した取得情報に応じて、前記他の装置から前記無線通信により送信される所定の信号の受信待ち時間を制御する、制御装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、プロセッサが、他の装置と無線通信を行うよう通信部を制御することと、取得した通知信号に応じて、前記他の装置から前記無線通信により送信される所定の信号の受信待ち時間を制御することと、を含む、制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、信号の受信待ちのための消費電力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態による認証処理の基本的な流れの一例を示すシーケンス図である。
図3】本実施形態に係るシステムにおいて実行される測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100、及び制御装置200を含む。本実施形態における制御装置200は、一例として、車両に搭載される。車両は、ユーザの利用対象の一つとして挙げられる移動体の一例である。
【0012】
本発明には、被認証側である通信装置と、当該通信装置との通信により得られた情報を用いて当該他の通信装置を認証する認証処理を行う制御部を備える制御装置と、が関与する。図1に示した例では、携帯機100が通信装置の一例であり、制御装置200が制御装置の一例である。システム1においては、例えば車両20の運転者等のユーザが携帯機100を携帯して車両に近付くと、携帯機100と車両20に搭載された制御装置200との間で認証のための無線通信が行われる。そして、認証が成功すると、車両20のドア錠がアンロックされたりエンジンが始動されたりして、車両20はユーザにより利用可能な状態となる。システム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0013】
(1-1)携帯機100
携帯機100は、任意の装置として構成される。任意の装置の一例として、運転者等のユーザに携帯して使用される、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等の装置が挙げられる。図1に示すように、携帯機100は、第1の無線通信部110、第2の無線通信部120、記憶部130、及び制御部140を備える。
【0014】
第1の無線通信部110は、制御装置200との間で、第1の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。第2の無線通信部120は、制御装置200との間で、第1の無線通信規格とは異なる第2の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。とりわけ、第2の無線通信規格は、第1の無線通信規格よりも測距に適し、第2の無線通信部120は、測距に関する通信を主に担当する。
【0015】
ここで、第1の無線通信規格は、第2の無線通信規格と比較して、利得が高いこと、及び受信側の消費電力が低いこと、の少なくともいずれかを満たしてもよい。これらの要件を満たす具体例として、第2の無線通信規格では、第1の無線通信規格における搬送波の周波数よりも高い周波数の搬送波が用いられてもよい。搬送波の周波数が高いほど距離に応じた減衰が大きくなるため利得が低くなり、搬送波の周波数が低いほど距離に応じた減衰が小さくなるため利得が高くなり、利得に関する上記要件が満たされるためである。また、搬送波の周波数が高いと、人体による吸収などの人体影響が大きくなり、利得が低下する。
【0016】
なお、サンプリング周波数が、搬送波の周波数の最大値に応じて設定されることを考慮すれば、第2の無線通信規格における搬送波の最大周波数が第1の無線通信規格における搬送波の最大周波数よりも高いこと、が少なくとも満たされればよい。
【0017】
例えば、第1の無線通信規格では、RF(Radio Frequency)帯の信号及びLF(Low Frequency)帯の信号が使用されてもよい。典型的なスマートエントリーシステムにおいては、携帯機100から車両20の制御装置200への送信にRF帯の信号が使用され、車両20の制御装置200から携帯機100への送信にLF帯の信号が使用される。以下では、第1の無線通信部110は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されているものとして説明する。即ち、以下では、車両20の制御装置200への送信にRF帯の信号を使用し、車両20の制御装置200からの受信にLF帯の信号を使用するものとする。
【0018】
例えば、第2の無線通信規格では、UWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号が使用されてもよい。UWBによるインパルス方式の信号は、測位及び測距を高精度に行うことができるという特性を有する。即ち、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測位及び測距を高精度に行うことができる。以下では、第2の無線通信部120は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。
【0019】
なお、UWBを用いた信号は、測距用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信される信号である。測距用信号は、例えば、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。データ信号は、データを搬送するための信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが望ましい。以下では、測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されるものとする。また、データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されるものとする。
【0020】
記憶部130は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部130は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(識別情報の一例)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部130は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0021】
制御部140は、携帯機100による動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部140は、第1の無線通信部110及び第2の無線通信部120を制御して車両の制御装置200との通信を行う。また、制御部140は、記憶部130からの情報の読み出し及び記憶部130への情報の書き込みを行う。制御部140は、車両の制御装置200との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。制御部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0022】
(1-2)制御装置200
制御装置200は、車両に対応付けて設けられる。ここでは、制御装置200は、車両20に搭載されるものとする。搭載位置の例として、車両20の車室内に制御装置200が設置される、又は、制御モジュール若しくは通信モジュールとして車両20に内蔵される等が挙げられる。他にも、車両20の駐車場に制御装置200が設けられる等、ユーザの利用対象と制御装置200とが別体として構成されてもよい。その場合、制御装置200は、携帯機100との通信結果に基づいて、車両20に制御信号を無線送信し、車両20を遠隔で制御し得る。図1に示すように、制御装置200は、第1の無線通信部210、第2の無線通信部220、記憶部230、及び制御部240を備える。
【0023】
第1の無線通信部210は、携帯機100との間で、第1の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。以下では、第1の無線通信部210は、RF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。
【0024】
第2の無線通信部220は、携帯機100との間で、第1の無線通信規格とは異なる第2の無線通信規格に準拠した通信を行う機能を有する。以下では、第2の無線通信部220は、UWBを用いた信号での通信が可能な通信インタフェースとして構成されるものとする。第2の無線通信部220は車両20に複数搭載されていてもよい。
【0025】
記憶部230は、制御装置200の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部230は、制御装置200の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(識別情報の一例)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部230は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0026】
制御部240は、制御装置200、及び車両に搭載された車載機器の動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部240は、第1の無線通信部210及び第2の無線通信部220を制御して携帯機100との通信を行う。また、制御部240は、記憶部230からの情報の読み出し及び記憶部230への情報の書き込みを行う。制御部240は、携帯機100との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。また、制御部240は、車両のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、制御部240は、車両のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。制御部240は、例えばECU(Electronic Control Unit)として構成される。
【0027】
なお、図1に示す制御装置200は、本発明による制御装置の一例である。本発明による制御装置の構成は、図1に示す例に限定されず、例えば第1の無線通信部210を含む通信モジュールと、第2の無線通信部220を含む通信モジュールと、制御部240を含む制御モジュールと、から構成されていてもよい。また、本発明による制御装置の構成は、第1の無線通信部210を含む通信モジュール、第2の無線通信部220を含む通信モジュール、または制御部240を含む制御モジュールとして実現されてもよい。各モジュールは、有線または無線の通信ネットワークにより接続される。通信ネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、又はLAN(Local Area Network)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってもよい。
【0028】
また、図1に示す各装置の構成は一例である。例えば図1に示す構成では携帯機100および制御装置200は、それぞれ第1の無線通信部及び第2の無線通信部を有するが、本発明はこれに限定されず、携帯機100および制御装置200が、それぞれ一の無線通信規格に準拠した通信を行う無線通信部を有する構成であってもよい。無線通信部は、車両20に複数設けられていてもよい。無線通信部は、認証処理に用いる信号の送受信を行う。また、当該無線通信部が認証処理に用いられる信号を送信する際に使用される周波数帯は任意である。例えば、認証処理に用いられる信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。
【0029】
<2.認証処理>
スマートエントリーシステムにおいては、携帯機100と車両の制御装置200との間の距離に基づいて、携帯機100の認証が行われる場合がある。本実施形態による認証処理は、携帯機100と制御装置200との距離を測定する処理(以下、本明細書において「測距処理」とも称する)、及び距離の測定結果に基づき認証する処理を含む。距離に基づく認証を行うことで、中継器を用いて車両の制御装置(認証装置)の送信信号を中継して携帯機(被認証装置)と制御装置との通信を間接的に実現させ、制御装置による携帯機の認証を不正に成立させるリレーアタックのような被認証装置の偽装、距離の偽装を低減し、認証精度を効果的に高めることが可能となる。
【0030】
図2は、本実施形態による認証処理の基本的な流れの一例を示すシーケンス図である。図2に示すように、まず、制御装置200は、測距トリガ信号の受信待ちを開始する(ステップS100)。本実施形態では、一例として、制御装置200からの第1の測距用信号の送信に先立って、当該第1の測距用信号を送信するよう指示する信号(測距トリガ信号)が携帯機100から送信される。測距トリガ信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。また、測距トリガ信号は、携帯機100により例えば第2の無線通信部120から送信される。制御装置200では、第2の無線通信部220により測距トリガ信号を受信することが想定される。かかる測距トリガ信号の受信に備えて、制御装置200は、第2の無線通信部220を受信待ちに制御する。受信待ちとは、信号を受信すると、その受信した信号を取り込む処理を実行する状態を指す。受信待ち状態とも称する。また、受信待ちは、所望の信号を得るための各種処理を含む。各種処理とは、例えば、第2の無線通信部220を構成するアンテナが信号を受信すること、第2の無線通信部220により受信した信号のサンプリングを行うこと、さらに、第2の無線通信部220により、サンプリングして得られた信号に基づく処理を行うことなどが挙げられる。サンプリングして得られた信号に基づく処理には、例えば、アンテナを介して受けた信号が所望の信号であるか否かを判定する処理や、その信号に含まれる情報を確認する処理などの後続処理が挙げられる。また、受信待ちの時間、すなわち受信待ちの状態にある期間は、受信待ち期間とも称される。
【0031】
一方、携帯機100は、測距トリガ信号を送信する(ステップS103)。測距トリガ信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、携帯機100は、第2の無線通信部120により測距トリガ信号を送信してもよい。
【0032】
次いで、制御装置200は、測距トリガ信号を受信すると、第1の測距用信号として、測距処理のための応答を要求する測距要求信号を送信する(ステップS106)。測距要求信号を送信する処理は、上記後続処理の一例である。測距要求信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、制御装置200は、第2の無線通信部220により測距要求信号を送信してもよい。
【0033】
次に、携帯機100は、制御装置200から測距要求信号(第1の測距用信号)を受信すると、測距要求信号を受信してから時間ΔT2経過後に、第2の測距用信号として、測距要求に応答する測距応答信号を送信する(ステップS109)。測距応答信号には、例えばUWBを用いた信号が使用される。具体的には、携帯機100は、第2の無線通信部120により測距応答信号を送信してもよい。時間ΔT2は、予め規定された時間である。時間ΔT2は、携帯機100において第1の測距用信号を受信してから第2の測距用信号を送信するまでの処理のために要されると想定される時間よりも長く設定される。これにより、第2の測距用信号の送信準備を、第1の測距用信号を受信してから時間ΔT2が経過するまでに確実に完了させることが可能となる。また、時間ΔT2は、制御装置200にも既知であってもよい。
【0034】
続いて、制御装置200の制御部240は、測距応答信号(第2の測距用信号)を受信すると、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出する(ステップS112)。詳しくは、制御装置200は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測し、計測したΔT1と既知な時間ΔT2とに基づいて距離を計算する。制御装置200は、ΔT1からΔT2を差し引いた値を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間を計算し、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と制御装置200との間の距離を計算し得る。なお、時間ΔT2は、制御装置200に既知でなくともよい。例えば、携帯機100は、時間ΔT2を計測し、制御装置200に報告してもよい。かかる報告は、時間ΔT2を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信することで行われ得る。データ信号は、測距処理のための信号の他の一例である。データ信号は、データを格納して搬送する信号である。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成される。また、データ信号は、UWBを用いた信号として送受信され得る。
【0035】
なおステップS112に示す距離の算出は、第2の無線通信部220が通信ユニットとして構成されている際は通信ユニットの制御部で行われてもよい。この場合、通信ユニットは算出結果を制御部140に車載通信ネットワークで送信する。また、車両20には第2の無線通信部220が複数搭載されていてもよい。制御部240は、複数の第2の無線通信部220がそれぞれ携帯機100と送受信したデータに基づいて、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出してもよい。
【0036】
そして、制御装置200の制御部240は、算出した距離が所定条件を満たすか否かに応じて、携帯機100の認証を行う(ステップS115)。例えば制御部240は、算出した距離が所定値以下であれば認証成功と判定し、そうでない場合には認証失敗と判定する。また、制御部240は、算出した距離が所定の範囲内であれば、対応する所定の制御を行うための認証の成功と判定してもよい。例えば、制御部240は、携帯機100を携帯するユーザと、制御装置200が搭載された車両20との間の距離が所定の範囲内の場合には、車両20に設けられた照明を点灯する制御を行うための認証の成功と判定して、照明を点灯する制御を行う。そして、ユーザがさらに車両20に近付いた場合、制御部240は、車両20のドア錠をアンロックする制御を行うための認証の成功と判定して、ドア錠のアンロック制御を行うようにしてもよい。
【0037】
<3.課題の整理>
本実施形態に係る携帯機100及び制御装置200は、距離に基づく認証のために、測距処理を行う。本実施形態に係る測距処理は、図2に示したように、測距用信号を送受信すること、及び測距用信号の送受信にかかる時間に基づいて距離を計算することを含む。また、測距用信号は、例えば、第1の測距用信号を送信するよう指示する測距トリガ信号、測距処理のための応答を要求する測距要求信号、および、測距要求に応答する測距応答信号を含む。
【0038】
また、本実施形態に係る測距処理は、複数回行われてもよい。制御装置200は、例えば複数回の測距処理の結果に基づいて、より精度の高い測距値を代表値として取得することができる。また、制御装置200は、測距処理が複数回繰り返し行われることで、測距処理が1度失敗しても、次に行われる測距処理で成功する等、測距値の精度が向上する。測距処理が複数回繰り返し行われることには、携帯機100から測距トリガ信号が再送信されることが含まれる。
【0039】
ここで、一般的に、信号を受信する側は信号の受信待ち期間において電力の消費を強いられる。例えば図2に示す例で、第2の無線通信部220が受信待ちとなっている際に、携帯機100から送信される測距トリガ信号を受信し損ねた場合、次に測距トリガ信号が携帯機100から送信されるまで受信待ちの状態が継続する。このように受信待ち期間が続くことで、消費電力が増加する。とりわけUWBでは、受信待ち状態での消費電力が大きいので、受信待ち期間の継続により制御装置200の消費電力が増大する。これにより、例えば制御装置200を含め車両20に搭載される各機器に電力を供給している蓄電池に蓄えられた電力が減少し、エンジンの始動が行えないといった現象の一因ともなる。このような事情は、装置間の距離を測定するための信号以外の信号についても同様に存在し得る。また、装置を認証するための信号以外の信号についても同様に存在し得る。
【0040】
そこで、本発明の一実施形態では、受信側の信号の受信待ちの時間を適切なタイミングで制御する。具体的には、本発明の一実施形態では、受信側の信号の受信待ちを適切なタイミングで開始および終了する制御を行う。これにより、受信待ち期間を短縮し、受信側の消費電力を低減することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態に係る受信待ち状態への遷移は、任意のタイミングで行われる。制御装置200は、例えば、測距トリガ信号の送信に先立って行われる携帯機100と制御装置200との間で行われる応答により取得された情報に応じて、受信待ちを開始する。かかる情報を、以下では取得情報とも称する。また、応答に用いられる信号と測距処理に用いられる測距用信号とは、異なる無線通信規格に準拠して送受信されてもよい。例えば、応答に用いられる信号の送受信に第1の無線通信規格が使用され、測距用信号の送受信に第2の無線通信規格が使用される。
【0042】
以下、本発明の実施形態による技術的特徴について詳しく説明する。
【0043】
<4.技術的特徴>
図3は、本実施形態に係るシステム1において実行される測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。本シーケンスには、携帯機100及び制御装置200が関与する。本明細書において、「距離に基づく認証処理」は、携帯機100と制御装置200との距離を測定する測距処理、及び、当該測距処理により測定された距離に基づき認証する認証処理を含む。
【0044】
また、本実施形態による制御部240は、任意のタイミングで、第2の無線通信部220を測距トリガ信号の受信待ち状態に遷移させ、測距トリガ信号の受信を待つ。任意のタイミングとは、例えば携帯機100からのUWBを用いた測距トリガ信号の送信に先行して行われる携帯機100と制御装置200との通信に基づいて決定される。測距トリガ信号の送受信に先行して携帯機100と制御装置200との間で行われる通信は、例えばRF帯の信号及びLF帯の信号での通信が可能な第1の無線通信部により行われてもよい。
【0045】
図3に示す例では、測距トリガ信号の送受信に先行して携帯機100と制御装置200との間で行われる通信として、要求応答認証を挙げる。要求応答認証では、認証要求信号、及び認証要求に基づいて生成される認証応答信号の送受信が行われる。距離に基づく認証処理の前に他の方法での認証処理を1段階踏まえることで、認証精度をさらに高めることができる。
【0046】
図3に示すように、まず、携帯機100は、第1の無線通信部110から認証要求信号を送信する(ステップS203)。次に、制御装置200は、第1の無線通信部210により認証要求信号を受信すると、認証要求信号に対する応答として、認証応答信号を第1の無線通信部210から送信する(ステップS206)。
【0047】
要求応答認証とは、認証者が認証要求信号を生成して被認証者に送信し、被認証者が認証要求信号に基づいて認証応答信号を生成して認証者に送信し、認証者が認証応答信号に基づき被認証者の認証を行う方式である。典型的には、認証要求信号は乱数であり認証のたびに変化するので、要求応答認証は反射攻撃に耐性を有する。また、認証応答信号は被認証者の情報に基づいて生成される。被認証者の情報とは、例えば、ID及びパスワード等である。ID及びパスワードそのものは送受信されないため、盗聴が低減される。より具体的には、例えば携帯機100が認証要求として送信した第1の認証信号に対し、制御装置200が第1の認証信号と予め保存されたパスワード等の鍵情報とに基づき演算した第2の認証信号を認証応答として送信する。認証応答として送信された第2の認証信号が、認証要求である第1の認証信号と上記の鍵情報とから算出される正規の値を示すことが認められた場合、携帯機100は、制御装置200の認証を成功としてよい。なお、制御装置200が認証者で、携帯機100が被認証者であってもよい。また、認証者の携帯機100は、認証結果を被認証者の制御装置200に通知してもよい。
【0048】
続いて、制御部240は、要求応答認証に関する情報を取得し、当該取得情報に応じて、所定のタイミングで、第2の無線通信部220による測距トリガ信号の受信待ちを開始する制御を行う(ステップS209)。要求応答認証は、上述したように、測距トリガ信号の送信先立って行われる通信の一例である。制御部240は、取得情報として、測距トリガ信号の送信先立って行われる通信に関する情報を取得する。
【0049】
要求応答認証に関する取得情報には、例えば、認証要求信号の送信または受信時刻、認証応答信号の送信または受信時刻、要求応答認証の結果等が含まれ得る。制御部240は、当該取得情報に応じた所定のタイミングとして、例えば認証応答信号の送信または受信時刻から所定時間経過後、または要求応答認証が成功した時点で、測距トリガ信号の受信待ちを開始してもよい。所定時間には、例えば、携帯機100において認証応答信号を受信してから測距トリガ信号を送信するまでの処理のために要されると想定される時間より短い時間が設定されてもよい。すなわち、制御部240は、上記取得情報に基づいて、測距トリガ信号が送信される時間を予測し、測距トリガ信号の受信待ちを開始する制御を行い得る。なお、認証応答信号を受信してから何クロック(何秒)後に測距トリガ信号を送信するか等、各信号の時間同期に関する情報は予め携帯機100と制御装置200との間で共有されていてもよい。
【0050】
制御部240は、測距トリガ信号の送信が予測されるタイミングのできるだけ直前に受信待ちを開始することで、受信待ち期間を短縮し、受信側の消費電力をより低減することが可能となる。
【0051】
上記取得情報は、複数取得元から取得されてもよい。例えば、制御部240は、認証要求信号の送信または受信時刻、認証応答信号の送信または受信時刻に関する上記取得情報については、第1の無線通信部210から取得してもよい。第1の無線通信部210が、制御装置200と異なる装置に設けられている場合は、当該異なる装置から取得され得る。当該異なる装置とは、例えば車両20に搭載される通信装置が挙げられる。また、要求応答認証が制御装置200と異なる装置により行われる場合、制御部240は、要求応答認証の結果については、当該異なる装置から取得してもよい。当該異なる装置とは、例えば車両20に搭載された照合ECU等が挙げられる。また、制御部240が第1の無線通信部210を制御する機能や、要求応答認証を行う機能を有している場合、制御部240内において、上記取得情報が取得される。
【0052】
次いで、制御部240は、受信待ちを開始してから規定時間が経過後、受信待ちを終了する(ステップS215)。当該規定時間は、本発明における第1の規定時間である。制御部240は、受信待ちを開始してから第1の規定時間が経過後、受信待ちを終了する制御を行う。すなわち、制御部240は、第1の規定時間中に測距トリガ信号を受信できなかった場合、測距トリガ信号を受信しないまま受信待ちを終了する。なお、第1の規定時間の経過前に測距トリガ信号を受信した場合、制御部240は、受信した時点で当該受信待ちを終了する。図3に示す例では、受信待ち中に測距トリガ信号を受信し損ねた場合について説明する。
【0053】
第1の規定時間は、例えば、距離に基づく認証が成功する許容範囲内の距離を想定した場合において測距トリガ信号が制御装置200に到達する時間より長い時間が設定されてもよい。かかる「到達する時間より長い時間」には、誤差も考慮され得る。これにより、受信成功の確率を上げる。
【0054】
また、制御部240は、受信待ち終了後は、例えば、受信待ちの状態よりも電力消費が少なく、携帯機100との信号の受信および送信のいずれも行わない通常状態に制御する。
【0055】
続いて、制御部240は、測距トリガ信号を受信せずに受信待ちを終了してから規定時間経過後に、第2の無線通信部220において測距トリガ信号を受信する受信待ちを開始する(ステップS218)。当該規定時間は、本発明における第2の規定時間である。第2の規定時間は、例えば、測距トリガ信号が再送される時間間隔より短い時間が設定されてもよい。このように、本実施形態では、測距トリガ信号を受信し損ねた場合も、次の測距トリガ信号の受信まで受信待ちを継続しないよう制御することで、受信側の消費電力を削減することができる。制御部240は、再度、規定時間(期間)が経過するまで受信待ちを継続する。かかる規定時間は、上記第1の規定時間と同じであってもよい。
【0056】
次に、携帯機100から測距トリガ信号が送信される(ステップS221)。
【0057】
次いで、制御装置200の制御部240は、受信待ち中に測距トリガ信号を受信すると、当該受信待ちを終了する(ステップS224)。なお、再度測距トリガ信号を受信できないまま第1の規定時間が経過した場合、制御部240は、上記ステップS215~S218を繰り返す。すなわち、制御部240は、測距トリガ信号を受信できずに受信待ち情報が終了したことを示す情報を取得情報として取得し、当該取得情報に応じて所定のタイミング、具体的には第2の規定時間経過後に、再度、受信待ちを開始する制御を行う。第2の規定時間の間は通常状態に制御することで、消費電力を削減することが可能となる。なお、測距トリガ信号を受信できるまで上記ステップS215~S218を繰り返す回数には上限を設けてもよい。
【0058】
続いて、測距トリガ信号を正常に受信できた場合、制御部240は、測距トリガ信号に応じて、第1の測距用信号として、測距処理のための応答を要求する測距要求信号を第2の無線通信部220から送信する制御を行う(ステップS227)。測距要求信号を送信する際、制御部240は、例えば、送信状態に制御する。送信状態とは、信号を電波としてアンテナから送り出す各種処理を実行する状態である。各種処理とは、例えば、送信する信号の生成、送信する信号に基づく変調、及びアンテナからの電波の送信などが挙げられる。また、送信状態の電力消費は受信待ちの状態よりも少ない。
【0059】
次いで、制御装置200の制御部240は、所望の信号(ここでは測距トリガ信号)を受信して受信待ちを終了してから規定時間経過後に、受信待ちを開始する(ステップS230)。当該規定時間は、本発明における第3の規定時間である。第3の規定時間は、例えば、携帯機100において測距要求信号を受信してから測距応答信号を送信するまでの処理のために要されると想定される時間より短い時間が設定されてもよい。
【0060】
すなわち、本実施形態による制御部240は、所望の信号(ここでは測距トリガ信号)を正常に受信したことを示す情報を取得し、当該取得情報(正常取得情報とも称する)に応じて、所定のタイミングで(ここでは第3の規定時間経過後)、第2の無線通信部220による所望の信号(ここでは測距応答信号)の受信待ちを開始する制御を行う。正常取得情報は、例えば、第2の無線通信部220から取得されてもよい。また、制御部240が第2の無線通信部220を制御する機能を有している場合、制御部240内において上記取得情報が取得され得る。また、当該正常取得情報には、測距トリガ信号の受信時刻が含まれていてもよい。
【0061】
なお、第3の規定時間の計測開始時点は、測距トリガ信号の受信時刻に限定されず、例えば、測距要求信号を送信してからであってもよい。この場合、上記正常取得情報には、測距要求信号の送信時刻が含まれていてもよい。
【0062】
また、正常取得情報に応じて所定のタイミングで開始した受信待ちの時間(期間)には、第4の規定時間が設定される。第4の規定時間は、例えば、距離に基づく認証が成功する許容範囲内の距離を想定した場合において測距応答信号が制御装置200に到達する時間より長い時間が設定されてもよい。また、第4の規定時間は、第1の規定時間より短くてもよい。正常取得情報に応じた所定のタイミングで受信待ちを開始しているため、より正確なタイミングが予測出来ていると言える。したがって、受信待ち時間を、第1の規定時間より短い第4の規定時間としても、所望の信号を受信できる。第1の規定時間より短い第4の規定時間とは、例えば第1の規定時間で考慮していた誤差を除いた時間である。このように受信待ち時間をより短縮することで、消費電力を削減することが可能となる。
【0063】
一方、携帯機100は、制御装置200から測距要求信号を受信すると、測距要求信号を受信してから時間ΔT2経過後に、第2の測距用信号として、測距要求に応答する測距応答信号を送信する(ステップS233)。
【0064】
次に、制御装置200の制御部240は、測距応答信号を受信すると、受信待ちを終了する(ステップS236)。そして、制御部240は、携帯機100と制御装置200との間の距離を算出する。詳しくは、制御部240は、図2を参照して説明した通り、測距要求信号の送信時刻から測距応答信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測し、計測したΔT1と既知な時間ΔT2とに基づいて距離を計算する。
【0065】
なお、制御部240は、測距応答信号を受信せずに第4の規定時間が経過した場合、受信待ちを終了する。この際、制御部240は、測距応答信号を受信せずに受信待ちを終了したことを示す情報を取得し、当該取得情報に基づく所定のタイミングで、測距トリガ信号の受信待ちを再度開始する。例えば、制御部240は、測距トリガ信号の受信時刻から再送される時刻を予測し、その時刻より前から、測距トリガ信号の受信待ちを開始する制御を行ってもよい。
【0066】
また、制御部240は、測距応答信号を正常に受信して受信待ちを終了した後、再度、次の測距トリガ信号の受信に備えて、所定のタイミングで受信待ちに制御してもよい。すなわち、制御部240は、測距応答信号を正常に受信して受信待ちを終了したことを示す情報(正常取得情報の一例)を取得し、当該取得情報に基づく所定のタイミングで、測距トリガ信号の受信待ちを再度開始する。例えば、制御部240は、前回の測距トリガ信号の受信時刻から次に再送される時刻を予測し、その時刻より前から、測距トリガ信号の受信待ちを開始する制御を行ってもよい。また、制御部240は、測距応答信号の受信時刻から次の測距トリガ信号が再送される時刻を予測し、その時刻より前から、測距トリガ信号の受信待ちを開始する制御を行ってもよい。また、制御部240は、この場合の受信待ち時間を、第4の規定時間と同じとしてもよい。より具体的には、制御部240は、距離に基づく認証が成功する許容範囲内の距離を想定した場合において測距トリガ信号が制御装置200に到達する時間より長い時間であって、かつ、第1の規定時間より短い時間を設定してもよい。制御部240は、測距トリガ信号を正常に受信したことや測距応答信号を正常に受信したことを示す正常取得情報に応じた所定のタイミングで受信待ちを開始しているため、より正確なタイミングが予測出来ていると言える。したがって、受信待ち時間を、第1の規定時間より短い時間としても、所望の信号を受信できる。
【0067】
以上、説明した図3では、第2の無線通信部220を1つ用いたが、第2の無線通信部220は複数であってもよい。複数の第2の無線通信部220は、それぞれ携帯機100の第2の無線通信部120と信号の送受信を行う。この場合、制御部240は、各第2の無線通信部220と携帯機100との間のそれぞれの距離を算出し得る。
【0068】
また、制御部240は、複数の第2の無線通信部220のうち少なくともいずれかで測距トリガ信号が正常に受信できたにも関わらず、他の第2の無線通信部220で受信できていない場合、当該他の第2の無線通信部220の受信待ちを終了する制御を行ってもよい。これにより、受信待ち時間をより短縮することができ、電力消費を低減することが可能となる。
【0069】
また、図3を参照して上述した実施形態では、測距トリガ信号の送受信に先行して携帯機100と制御装置200との間で行われる通信として、認証要求信号を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、携帯機100と制御装置200との間で、起動を指示するウェイクアップ信号、及びウェイクアップ信号に対する応答の送受信が行われてもよい。ウェイクアップ信号により、受信側をスリープ状態から復帰させることができる。ウェイクアップ信号に対する応答としては、起動することを示す肯定応答(ACK:Acknowledgement)信号、及び起動しないことを示す否定応答(NACK:Negative Acknowledgement)信号が挙げられる。
【0070】
若しくは、測距トリガ信号の受信待ちに先立って、携帯機100と制御装置200との間で、ウェイクアップ信号の応答と、要求応答認証との両方が順次行われてもよい。制御装置200は、このようなウェイクアップ信号の応答や要求応答認証に応じて、上記測距トリガ信号の受信待ちを開始する。
【0071】
なお、ウェイクアップ信号の応答や要求応答認証において、一方の装置から他方の装置へ送信される信号を第1の通知信号とも称する。そして、第1の通知信号を受信した装置から、第1の通知信号を送信した装置へ送信される信号を、第2の通知信号とも称する。各装置は、第1の認証信号への応答として、第1の認証信号に対応する正規の第2の認証信号が送信された場合にのみ、相手装置の認証を成功とする。
【0072】
第1、第2の通知信号が送信される際に使用される周波数帯は任意である。例えば、通知信号は、測距トリガ信号や測距要求信号等の測距用信号と同一の周波数帯を使用して送信されてもよいし、測距用信号と異なる周波数帯を使用して送信されてもよい。また、通知信号は、UWBを用いた信号として送信されてもよいし、LF帯の信号として送信されてもよいし、RF帯の信号として送信されてもよいし、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))の信号として送信されてもよい。
【0073】
<5.まとめ>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上記実施形態では、認証者側が第1の測距用信号を送信する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。認証者側とは、例えば、車両20の制御装置200である。例えば、被認証者側が第1の測距用信号を送信してもよい。被認証者側とは、例えば、携帯機100である。制御装置200は、携帯機100から第1の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の応答として第2の測距用信号を送信する。携帯機100は、第2の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1を計測する。次いで、携帯機100は、計測したΔT1を示す情報を暗号化した情報を含むデータ信号を送信する。他方、制御装置200は、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2を計測しておく。そして、制御装置200は、携帯機100からデータ信号を受信すると、携帯機100から受信したデータ信号により示されるΔT1と、計測したΔT2とに基づいて、携帯機100と制御装置200との間の距離を計算する。例えば、ΔT1-ΔT2を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間が計算され、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機と通信ユニットとの間の距離が計算される。このように、第1の測距用信号及び第2の測距用信号の送受信の方向を逆にした場合、制御装置200は、携帯機100から送信される第1の測距用信号を待つ受信待ち状態に遷移する制御を行う。第1の測距用信号を待つ受信待ち状態の制御には、上述した本実施形態を適用し得る。
【0075】
また、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が車両20の制御装置200である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び車両20の制御装置200の役割は逆であってもよいし、役割が動的に交換されてもよい。また、車両20の制御装置200同士で測距及び認証が行われてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、携帯機100が通信装置の一例であり、制御装置200が制御装置の一例である旨を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100が制御装置の一例であってもよいし、制御装置200が通信装置の一例であってもよい。
【0077】
他にも例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、信号を送受信することで測距及び認証を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、ユーザが利用する対象物として、ドローン、車両、船舶、飛行機、建築物、ロボット、ロッカー、家電製品等が挙げられる。建築物には、住宅などが含まれる。また、本発明は、携帯機、車両、船舶、飛行機、スマートフォン、ドローン、建築物、ロボット、ロッカー及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに適用可能である。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。この場合、一方の装置が第1の通信装置として動作し、他方の装置が第2の通信装置として動作する。
【0078】
他にも例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いるものを挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信規格として、赤外線を用いるものが使用されてもよい。
【0079】
他にも例えば、上記では、制御部240がECUとして構成され、制御装置200の動作全般を制御するものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1の無線通信部210および第2の無線通信部220がそれぞれECUを含んでいてもよい。この場合、第1の無線通信部210および第2の無線通信部220は、移動体搭載通信装置とも称される。移動体搭載通信装置は、上述した制御装置200と同様に、受信した信号に含まれる認証情報に基づく処理や、受信待ち状態への遷移を制御する処理を実行してもよい。
【0080】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0081】
また、本明細書においてシーケンス図やフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1:システム、100:携帯機、110:第1の無線通信部、120:第2の無線通信部、130:記憶部、140:制御部、20:車両、200:制御装置、210:第1の無線通信部、220:第2の無線通信部、230:記憶部、240:制御部
図1
図2
図3