(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】硝化脱窒装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20230101AFI20231109BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
C02F3/34 101C
C02F3/34 101Z
(21)【出願番号】P 2020124083
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】館野 覚俊
(72)【発明者】
【氏名】舩石 圭介
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-238294(JP,A)
【文献】特開2001-017992(JP,A)
【文献】特開平09-155380(JP,A)
【文献】特開昭58-043294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化脱窒素槽と、
前記硝化脱窒素槽に汚水を供給する汚水供給ラインと、
前記硝化脱窒素槽内において前記汚水が活性汚泥により処理されている内液を、前記硝化脱窒素槽から引き出して送出する循環ポンプと、
前記内液と空気とを混合して前記硝化脱窒素槽内に噴射する噴射部と、
前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介して前記硝化脱窒素槽へと循環させる循環ラインと、
前記循環ラインから分岐し、前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介さずに前記硝化脱窒素槽へと循環させるバイパスラインと、
前記循環ポンプを制御可能であり、前記バイパスラインへと導かれる前記内液の流量を調整可能な制御部と、
を備えることを特徴とする、硝化脱窒装置。
【請求項2】
前記バイパスラインは、前記硝化脱窒素槽内における水面下部へ、前記内液を循環させることを特徴とする、請求項1に記載の硝化脱窒装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記循環ポンプを第1出力で駆動させる第1制御と、前記循環ポンプを、前記第1出力よりも小さな第2出力で駆動させる第2制御とを交互に実行可能であり、
前記第1制御において、前記循環ポンプから送出された前記内液の全量が前記噴射部へと導かれることを特徴とする、請求項1または2に記載の硝化脱窒装置。
【請求項4】
前記第2制御において、前記循環ポンプから送出された前記内液の全量が前記バイパスラインへと導かれることを特徴とする、請求項3に記載の硝化脱窒装置。
【請求項5】
前記第2制御において、前記循環ポンプから送出された前記内液の一部が前記バイパスラインへと導かれ、前記内液の他部が前記噴射部へと導かれることを特徴とする、請求項3に記載の硝化脱窒装置。
【請求項6】
前記第2制御の期間中に、前記硝化脱窒素槽へ前記汚水を供給することを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の硝化脱窒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝化脱窒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿などの汚水を生物学的硝化脱窒法により処理することが知られている。このような生物学的硝化脱窒法は、硝化工程と脱窒素工程とを含む。硝化工程において、活性汚泥(微生物)が、汚水中のアンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素まで酸化する。脱窒素工程において、活性汚泥が、亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する。
【0003】
このような硝化工程および脱窒素工程を単一槽内において同時に実施可能な硝化脱窒装置が実用化されている。
【0004】
例えば、硝化脱窒素槽と、循環ラインと、循環ポンプと、オーバーフローシャフトと、制御部とを備えるポンプ循環式ばっき装置が提案されている(例えば、非特許文献1の
図3.3.2-4参照)。循環ポンプは、硝化脱窒素槽の内液を硝化脱窒素槽から引き出して送出する。循環ラインは、硝化脱窒素槽から引き出された内液を循環させる。オーバーフローシャフトは、循環ラインから送られた内液と空気とを混合して、硝化脱窒素槽内に噴射する。制御部は、循環ポンプを制御して、オーバーフローシャフトへと導かれる内液の流量を調整する。
【0005】
このようなポンプ循環式ばっき装置の硝化脱窒素槽において、オーバーフローシャフトの近傍に位置する内液は、溶存酸素濃度が比較的高い好気状態となる。そして、溶存酸素濃度が比較的高い好気状態の領域(以下、好気領域とする。)では、硝化工程が進行して、酸素が消費される。
【0006】
また、硝化脱窒素槽の内液の溶存酸素濃度は、オーバーフローシャフトから離れるにつれて、徐々に低下する。そのため、硝化脱窒素槽において、好気領域に対してオーバーフローシャフトの反対側に位置する内液は、溶存酸素濃度が比較的低い嫌気状態となる。そして、溶存酸素濃度が比較的低い嫌気状態の領域(以下、嫌気領域とする。)では、脱窒素工程が進行する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「汚泥再生処理センター等施設設備の計画・設計要領 2006改訂版」、社団法人全国都市清掃会議 編集発行、2006年3月19日、p.185~195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載のポンプ循環式ばっき装置では、制御部が、循環ポンプの出力を制御して、オーバーフローシャフトへと導かれる内液の流量を調整することにより、硝化脱窒素槽に供給される空気量を調整する。循環ポンプの出力が大きくなると、硝化脱窒素槽に供給される空気量が増加して、好気領域が広がり、硝化工程が優位となる。一方、循環ポンプの出力が小さくなると、硝化脱窒素槽に供給される空気量が低下して、嫌気領域が広がり、脱窒素工程が優位となる。また、循環ポンプは、槽内の撹拌もおこなうため、硝化脱窒処理を継続する場合、停止することはできない。
【0009】
しかし、非特許文献1に記載のポンプ循環式ばっき装置では、循環ポンプの出力を小さくしても、硝化脱窒素槽に供給される空気量の低減を図るには限度がある。そのため、脱窒素工程が不十分となる場合があり、処理水における硝酸態窒素濃度の低減を図るには限度がある。
【0010】
本発明は、処理水における硝酸態窒素濃度の低減を図ることができる硝化脱窒装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、硝化脱窒素槽と、前記硝化脱窒素槽に汚水を供給する汚水供給ラインと、前記硝化脱窒素槽内において前記汚水が活性汚泥により処理されている内液を、前記硝化脱窒素槽から引き出して送出する循環ポンプと、前記内液と空気とを混合して前記硝化脱窒素槽内に噴射する噴射部と、前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介して前記硝化脱窒素槽へと循環させる循環ラインと、前記循環ラインから分岐し、前記硝化脱窒素槽から引き出された前記内液を前記噴射部を介さずに前記硝化脱窒素槽へと循環させるバイパスラインと、前記循環ポンプを制御可能であり、前記バイパスラインへと導かれる前記内液の流量を調整可能な制御部と、を備える、硝化脱窒装置を含む。
【0012】
このような構成によれば、バイパスラインが、硝化脱窒素槽から引き出された内液を、噴射部を介さずに硝化脱窒素槽へと循環させることができる。そして、制御部が、循環ポンプを制御可能であり、バイパスラインへと導かれる内液の流量を調整できる。
【0013】
そのため、硝化脱窒素槽から引き出された内液が、バイパスラインを通って硝化脱窒素槽へと循環するときに、硝化脱窒素槽に供給される空気量の低減を図ることができる。その結果、硝化脱窒素槽において脱窒素工程を十分に進行させることができ、処理水における硝酸態窒素濃度の低減を図ることができる。
【0014】
本発明[2]は、前記バイパスラインは、前記硝化脱窒素槽内における水面下部へ、前記内液を循環させる、上記[1]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0015】
このような構成によれば、バイパスラインから内液が硝化脱窒素槽に流入するときに、硝化脱窒素槽の内液に、空気が混入することを抑制できる。
【0016】
本発明[3]は、前記制御部は、前記循環ポンプを第1出力で駆動させる第1制御と、前記循環ポンプを、前記第1出力よりも小さな第2出力で駆動させる第2制御とを交互に実行可能であり、前記第1制御において、前記循環ポンプから送出された前記内液の全量が前記噴射部へと導かれる、上記[1]または[2]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0017】
このような構成によれば、制御部が第1制御を実行しているときに、循環ポンプは、第1出力で駆動する。このとき、循環ポンプから送出された内液の全量が、噴射部へと導かれる。そして、噴射部は、循環ポンプから送出された内液と空気とを混合して硝化脱窒素槽内に噴射する。そのため、第1制御において、硝化脱窒素槽に空気を十分に供給でき、硝化工程を進行させることができる。
【0018】
また、制御部が第2制御を実行しているときに、循環ポンプは、第1出力よりも小さな第2出力で駆動する。そのため、第2制御では、第1制御と比較して、循環ポンプから噴射部へと導かれる内液の流量を低減できる。その結果、第2制御において、硝化脱窒素槽に供給される空気量を低減でき、脱窒素工程を進行させることができる。
【0019】
本発明[4]は、前記第2制御において、前記循環ポンプから送出された前記内液の全量が前記バイパスラインへと導かれる、上記[3]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0020】
このような構成によれば、第2制御において、循環ポンプから送出された内液の全量が、バイパスラインを通じて、硝化脱窒素槽に循環される。そのため、硝化脱窒素槽に供給される空気量を確実に低減でき、脱窒素工程を効率よく進行させることができる。
【0021】
本発明[5]は、前記第2制御において、前記循環ポンプから送出された前記内液の一部が前記バイパスラインへと導かれ、前記内液の他部が前記噴射部へと導かれる、上記[3]に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0022】
このような構成によれば、第2制御において、循環ポンプから送出された内液の一部が、バイパスラインを通じて硝化脱窒素槽に循環されるとともに、循環ポンプから送出された内液の他部が、噴射部から空気と混合されて噴射される。そのため、第2制御において、硝化脱窒素槽に供給される空気量を調整でき、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく進行させることができる。
【0023】
本発明[6]は、前記第2制御の期間中に、前記硝化脱窒素槽へ前記汚水を供給する、上記[3]~[5]のいずれか一項に記載の硝化脱窒装置を含む。
【0024】
このような構成によれば、第2制御で硝化脱窒素槽内の酸素供給量が減少し、第1制御で生成した硝酸性窒素や亜硝酸性窒素が残留して溶存酸素濃度が低下した時間帯に汚水を投入することができ、汚水中の有機物を脱窒素反応に有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の硝化脱窒装置では、処理水における硝酸態窒素濃度の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の硝化脱窒装置の一実施形態の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す硝化脱窒装置の動作を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.硝化脱窒装置
本発明の硝化脱窒装置の一実施形態としての硝化脱窒装置1を、
図1を参照して説明する。
【0028】
硝化脱窒装置1は、供給された汚水を活性汚泥により生物学的に硝化および脱窒素して、処理水を排出する。汚水および活性汚泥については、後で説明する。
【0029】
硝化脱窒装置1は、硝化脱窒素槽2と、汚水供給ユニット3と、循環ユニット4と、バイパスユニット7と、処理液排出ユニット5と、制御部6とを備える。
【0030】
硝化脱窒素槽2は、活性汚泥を収容する。活性汚泥は、硝化細菌と、脱窒細菌とを少なくとも含む。活性汚泥は、好ましくは、従属栄養細菌をさらに含む。
【0031】
硝化細菌は、好気条件下で、アンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素まで酸化する。脱窒細菌は、嫌気条件下で、亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する。従属栄養細菌は、好気条件および/または嫌気条件下で、汚水中の有機物を分解する。
【0032】
硝化脱窒素槽2は、密閉される中空形状を有する。硝化脱窒素槽2は、側壁21と、上壁22と、底壁23とを備える。
【0033】
側壁21は、角筒形状または円筒形状を有する。側壁21は、上下方向に延びる。上壁22は、側壁21の上端を閉鎖する。底壁23は、側壁21の下端を閉鎖する。底壁23の内面は、上壁22と上下方向に向かい合う。底壁23の内面は、角錐状または円錐状に凹む。
【0034】
汚水供給ユニット3は、硝化脱窒素槽2に汚水を供給する。汚水供給ユニット3は、汚水供給ライン31と、投入ポンプ32とを備える。
【0035】
汚水供給ライン31は、硝化脱窒素槽2に汚水を供給するための配管である。汚水供給ライン31の供給方向の上流端は、図示しない汚水貯留槽に接続される。汚水供給ライン31の供給方向の下流端は、側壁21の下端に接続される。汚水供給ライン31の供給方向の下流端における内部空間は、硝化脱窒素槽2の内部空間における下方部分と通じる。
【0036】
投入ポンプ32は、投入ポンプ32が駆動したときに、図示しない汚水貯留槽内の汚水を、汚水供給ライン31を通じて硝化脱窒素槽2に投入する。投入ポンプ32は、汚水供給ライン31に設けられる。投入ポンプ32は、例えば、公知の送液ポンプである。
【0037】
循環ユニット4は、硝化脱窒素槽2の内液の一部を、硝化脱窒素槽2から引き出して循環させる。硝化脱窒素槽2の内液は、硝化脱窒素槽2内において活性汚泥により処理されている汚水である。循環ユニット4は、循環ライン41と、循環ポンプ42と、噴射部の一例としてのオーバーフローシャフト43とを備える。
【0038】
循環ライン41は、硝化脱窒素槽2の内液の一部を、硝化脱窒素槽2から引き出して、オーバーフローシャフト43に供給するための配管である。循環ライン41は、硝化脱窒素槽2から引き出された内液をオーバーフローシャフト43を介して硝化脱窒素槽2へと循環させる。なお、以下では、循環ライン41を通る内液を循環液として、硝化脱窒素槽2に収容される内液と区別する。循環ライン41は、中間部411と、上流部412と、下流部413とを有する。
【0039】
中間部411は、上下方向に延びる。上流部412は、中間部411の下端と連続する。上流部412は、中間部411の下端から水平方向に延びた後、下方に向かって屈曲する。上流部412における水平方向に延びる部分は、側壁21を貫通する。上流部412は、上流端41Aを有する。上流端41Aは、循環ライン41の循環方向の上流端であって、開放されている。上流端41Aは、側壁21に対して、中間部411と上流部412との連続部分の反対側に位置する。上流端41Aは、硝化脱窒素槽2の内部空間における下方部分に位置する。上流端41Aは、底壁23の内面と向かい合う。
【0040】
下流部413は、中間部411の上端と連続する。下流部413は、中間部411の上端から水平方向に延びる。下流部413は、下流端41Bを有する。下流端41Bは、循環ライン41の循環方向の下流端である。下流端41Bは、オーバーフローシャフト43に接続される。
【0041】
循環ポンプ42は、循環ポンプ42が駆動したときに、硝化脱窒素槽2の内液を、硝化脱窒素槽2から引き出して、循環ライン41を介してオーバーフローシャフト43に送出する。循環ポンプ42は、循環ライン41に設けられる。詳しくは、循環ポンプ42は、硝化脱窒素槽2外に位置し、中間部411と上流部412との連続部分に設けられる。循環ポンプ42は、例えば、公知の送液ポンプである。
【0042】
オーバーフローシャフト43は、循環液と空気とを混合して、硝化脱窒素槽2内に噴射する。オーバーフローシャフト43は、上壁22に支持される。オーバーフローシャフト43は、例えば、エジェクター構造を有する。オーバーフローシャフト43は、ボディ431と、ディフューザ432とを有する。
【0043】
ボディ431は、上壁22に対して底壁23の反対側に位置する。ボディ431は、円筒形状を有する。ボディ431は、上下方向に延びる。循環ライン41の下流端41Bは、ボディ431の側壁に接続される。ボディ431の内部空間は、循環ライン41の下流端41Bにおける内部空間と通じる。
【0044】
ディフューザ432は、円筒形状を有する。ディフューザ432の内径は、ボディ431の内径よりも小径である。ディフューザ432は、上下方向に延びる。ディフューザ432は、上壁22を貫通する。ディフューザ432の上端432Aは、ボディ431の下端に接続される。ディフューザ432の内部空間は、ボディ431の内部空間と通じる。ディフューザ432の下端432Bは、硝化脱窒素槽2の内部空間における上方部分に位置する。ディフューザ432の下端432Bは、循環ライン41の上流端41Aに対して、底壁23の反対側に位置する。ディフューザ432の下端432Bは、上流端41Aから上方に離れて位置する。ディフューザ432の下端432Bは、上下方向において、硝化脱窒素槽2の上壁22と、上流端41Aとの間に位置する。
【0045】
バイパスユニット7は、循環液をオーバーフローシャフト43を介さずに硝化脱窒素槽2へと循環させる。バイパスユニット7は、バイパスライン71と、バルブ72とを有する。
【0046】
バイパスライン71は、循環ライン41から分岐部にて分岐して、硝化脱窒素槽2に接続される配管である。詳しくは、バイパスライン71は、中間部411から分岐して水平方向に延び、側壁21を貫通する。また、バイパスライン71は、下流部413から分岐して下方に延び、上壁22を貫通してもよい。バイパスライン71は、循環液をオーバーフローシャフト43を介さずに硝化脱窒素槽2へと循環させる。バイパスライン71は、好ましくは、硝化脱窒素槽2内における水面Sの下部へ、循環ポンプ42から送出された循環液を循環させる。バイパスライン71は、硝化脱窒素槽2内における水面Sの上部へ循環液を循環させることもできる。
【0047】
バイパスライン71は、一端71Aと、他端71Bとを有する。バイパスライン71の一端71Aは、循環ライン41(中間部411または下流部413)に接続される。バイパスライン71の一端71Aの内部空間は、循環ライン41(中間部411または下流部413)の内部空間と通じる。バイパスライン71の他端71Bは、硝化脱窒素槽2内に位置する。バイパスライン71が中間部411に接続される場合、バイパスライン71の他端71Bは、側壁21に対して一端71Aの反対側に位置する。バイパスライン71が下流部413に接続される場合、バイパスライン71の他端71Bは、上壁22に対して一端71Aの反対側に位置する。バイパスライン71の他端71Bの内部空間は、硝化脱窒素槽2の内部空間における上方部分と通じる。バイパスライン71の他端71Bは、循環ライン41の上流端41Aから上方に離れて位置する。バイパスライン71の他端71Bは、上下方向において、硝化脱窒素槽2の上壁22と、上流端41Aとの間に位置する。バイパスライン71の他端71Bは、水平方向において、ディフューザ432の下端432Bに対して間隔を空けて配置される。バイパスライン71の他端71Bは、硝化脱窒素槽2に収容される内液の水面Sよりも下であることが好ましい。
【0048】
バルブ72は、例えば、公知の開閉弁であって、バイパスライン71を開閉する。バルブ72は、バイパスライン71に設けられる。詳しくは、バルブ72は、硝化脱窒素槽2外に位置し、バイパスライン71における一端71Aと側壁21との間に位置する。バルブ72は、電磁式、電動式、エア作動などによって開度が調整される。
【0049】
処理液排出ユニット5は、硝化脱窒素槽2から処理液を排出する。処理液は、硝化脱窒素槽2において生物学的硝化脱窒処理が実施され、硝化脱窒素槽2から排出される内液である。処理液排出ユニット5は、排出ライン51を有する。
【0050】
排出ライン51は、硝化脱窒素槽2から処理液を排出するための配管である。排出ライン51の排出方向の上流端は、側壁21に接続される。排出ライン51の排出方向の上流端における内部空間は、硝化脱窒素槽2の内部空間と通じる。排出ライン51の排出方向の下流端は、図示しない水槽に接続される。なお、図示しない水槽では、処理液に含まれる活性汚泥を、沈殿や膜分離、機械分離などにより固液分離する。
【0051】
制御部6は、投入ポンプ32と、循環ポンプ42と、バルブ72とを制御可能である。制御部6は、投入ポンプ32と、循環ポンプ42と、バルブ72とに電気的に接続される。詳しくは、制御部6は、投入ポンプ32の駆動状態と駆動停止状態とを切り替え可能である。
【0052】
また、制御部6は、循環ポンプ42およびバルブ72を制御して、バイパスライン71への導かれる内液の流量を調整可能である。制御部6は、第1制御と第2制御とを交互に実施可能である。
【0053】
制御部6が第1制御を実行したときに、循環ポンプ42から送出された循環液の全量が、オーバーフローシャフト43へと導かれる。第1制御において、制御部6は、循環ポンプ42を第1出力で駆動するとともに、バルブ72を閉鎖させる。
【0054】
また、本実施形態では、制御部6が第2制御を実行したときに、循環ポンプ42から送出された循環液の全量が、バイパスライン71へと導かれる。第2制御において、制御部6は、循環ポンプ42を第2出力で駆動させるとともに、バルブ72を開放させる。循環ポンプ42の第2出力は、循環ポンプ42の第1出力よりも小さい。循環ポンプ42が第2出力で駆動すると、循環ポンプ42は、循環液をバイパスライン71に供給可能な一方、循環液をオーバーフローシャフト43に供給不能である。なお、小型の硝化脱窒素槽2であれば、循環ライン41に、バルブを設けてもよい。バルブ72とバルブは、分岐部にて、三方弁の1つのバルブであってもよい。
【0055】
2.汚水処理方法
次に、硝化脱窒装置1を用いた汚水処理方法について説明する。
【0056】
汚水処理方法では、まず、制御部6が、投入ポンプ32を駆動させる。これによって、汚水を、処理が必要な量、硝化脱窒素槽2に供給する。
【0057】
汚水として、例えば、下水汚泥、し尿系汚水などが挙げられる。
【0058】
下水汚泥は、下水道により回収された汚水を処理したときに出来る汚泥であり、水洗式便所からのし尿排水、生活に伴ない発生する生活排水、雨水などを処理対象として含む。し尿系汚水は、下水とは別途回収される汚水であり、汲み取り式便所の便壺に貯留されるし尿や、し尿や生活排水などを処理する浄化槽において生じる浄化槽汚泥などを含む。
【0059】
汚水は、1種類からなってもよく、2種類以上が混合されていてもよい。汚水は、好ましくは、し尿系汚水を含む。
【0060】
汚水の総窒素量(T-N)は、例えば、92mg/L以上5000mg/L以下である。なお、T-Nは、例えば、汚水をケルダール法により前処理して、中和滴定法や総和法により測定できる(以下同様)。
【0061】
汚水のアンモニア性窒素濃度は、例えば、20mg/L以上3000mg/L以下である。なお、アンモニア性窒素濃度は、例えば、中和滴定法やイオン電極法により測定することができる(以下同様)。
【0062】
汚水の硝酸態窒素濃度は、例えば、0.0mg/L以上1.0mg/L以下である。なお、硝酸態窒素濃度は、例えば、比色法やイオンクロマトグラフ法により測定できる(以下同様)。
【0063】
次いで、
図1および
図2に示すように、制御部6は、上記した第1制御および上記した第2制御を交互に実行する。
【0064】
第1制御において、制御部6は、循環ポンプ42を第1出力で駆動するとともに、バルブ72を閉鎖する。これによって、硝化脱窒素槽2の内液が、循環液として、循環ライン41の上流端41Aに吸い込まれる。そして、循環液の全量が、バイパスライン71を通過することなく、循環ライン41を通過してオーバーフローシャフト43に流入する。
【0065】
第1制御における循環液の循環速度は、例えば、100m3/h以上3000m3/h以下である。
【0066】
そして、循環液が、循環ライン41からディフューザ432に向かってボディ431を通過するときに、ボディ431の内部に負圧を生じる。これによって、ボディ431の上端近傍の空気が、ボディ431の内部に吸引される。そして、オーバーフローシャフト43内において、循環液と空気とが混合され、ディフューザ432の下端432Bから、循環液と空気とが噴射される。
【0067】
そのため、硝化脱窒素槽2に収容される内液において、ディフューザ432の下端432Bの近傍領域が、好気状態となる。好気状態である領域において、硝化細菌が、アンモニア性窒素を亜硝酸または硝酸性窒素まで酸化する(硝化工程)。
【0068】
また、硝化脱窒素槽2に収容される内液において、循環ライン41の上流端41Aの近傍領域は、好気領域において酸素が消費されているため、嫌気状態となる。嫌気状態である領域において、脱窒素細菌が、亜硝酸または硝酸性窒素を窒素に還元する(脱窒素工程)。なお、生成した窒素は、図示しない排気管を介して、硝化脱窒素槽2から排出される。
【0069】
そして、嫌気状態である内液は、上記と同様に、循環ライン41の上流端41Aに吸い込まれ、循環液として循環ライン41を通過し、オーバーフローシャフト43に流入する。その後、オーバーフローシャフト43は、循環液を空気とともに硝化脱窒素槽2内に噴射する。
【0070】
制御部6は、上記した第1制御を、第1の所定時間が経過するまで継続する。なお、第1の所定時間は、汚水の性状に応じて適宜変更される。そして、第1の所定期間が経過すると、制御部6は、第1制御を第2制御に切り替える。
【0071】
第2制御において、制御部6は、循環ポンプ42を第2出力で駆動するとともに、バルブ72を開放する。これによって、硝化脱窒素槽2の内液が、循環液として、循環ライン41の上流端41Aから中間部411とバイパスライン71との接続部分まで、循環ライン41を通過した後、バイパスライン71に流入する。そして、バイパスライン71は、循環液を硝化脱窒素槽2に戻す。
【0072】
第2制御における循環液の循環速度は、第1制御における循環液の循環速度よりも小さい。第2制御における循環液の循環速度は、第1制御における循環液の循環速度に対して、例えば、1/3以上1/1以下である。第2制御における循環液の循環速度は、例えば、33m3/h以上3000m3/h以下である。
【0073】
第2制御における循環液の循環速度が上記下限以上であれば、硝化脱窒素槽2に収容される内液を安定して攪拌できる。第2制御における循環液の循環速度が上記上限以下であれば、硝化脱窒素槽2に収容される内液を安定して嫌気状態にできる。
【0074】
第2制御において、循環液は、オーバーフローシャフト43を通過していないため、第1制御と比較して、空気が積極的に混合されない。そのため、第2制御において、硝化脱窒素槽2の内液の大部分が、嫌気状態となる。これにより、硝化脱窒素槽2の内液の大部分において、脱窒素工程が進行する。
【0075】
制御部6は、上記した第2制御を、第2の所定時間が経過するまで継続する。なお、第2の所定時間は、汚水の性状に応じて適宜変更される。
【0076】
また、処理水は、好ましくは、第1制御および第2制御において、オーバーフローにより、硝化脱窒素槽2から排出ライン51を介して排出される。
【0077】
また、処理液の総窒素量(T-N)は、例えば、1mg/L以上20mg/L以下である。
【0078】
処理液のアンモニア性窒素濃度は、例えば、0.1mg/L以上10mg/L以下である。
【0079】
処理液の硝酸態窒素濃度は、例えば、0.1mg/L以上10mg/L以下である。
【0080】
また、制御部6は、好ましくは、第2制御の期間中に、硝化脱窒素槽2へ汚水を供給する。詳しくは、制御部6は、第2制御の期間中に、投入ポンプ32を、所定時間駆動させた後、駆動を停止する。これによって、汚水が、汚水供給ライン31を介して硝化脱窒素槽2に供給される。
【0081】
各第2制御の期間中における汚水の供給量は、汚水の性状に応じて適宜変更されるが、硝化脱窒素槽2の容積に対して、例えば、1/192以上1/240以下である。
4.作用効果
硝化脱窒装置1では、バイパスライン71により、循環液をオーバーフローシャフト43を介さずに硝化脱窒素槽2へと循環させることができる。そして、制御部6は、循環ポンプ42を制御可能であり、バイパスライン71へと導かれる循環液の流量を調整できる。
【0082】
そのため、循環ポンプ42から送出された循環液が、バイパスライン71を通って硝化脱窒素槽2へと循環するときに、硝化脱窒素槽2に供給される空気量の低減を図ることができる。その結果、硝化脱窒素槽2において脱窒素工程を十分に進行させることができ、処理水における全窒素量の低減を図ることができる。
【0083】
また、バイパスライン71は、硝化脱窒素槽2内における水面Sの下部へ、循環液を循環させる。そのため、バイパスライン71を通して循環液を循環させたときに、硝化脱窒素槽2の内液に空気が混入することを安定して抑制できる。
【0084】
また、制御部6は、第1制御と第2制御とを交互に実施可能である。制御部6が第1制御を実行するときに、循環ポンプ42は、第1出力で駆動する。このとき、循環ポンプ42から送出された循環液の全量が、オーバーフローシャフト43へと導かれる。そして、オーバーフローシャフト43は、循環液と空気とを混合して硝化脱窒素槽2内に噴射する。そのため、第1制御において、硝化脱窒素槽2に空気を十分に供給でき、硝化工程を進行させることができる。
【0085】
また、制御部6が第2制御を実行するときに、循環ポンプ42は、第1出力よりも小さな第2出力で駆動する。そのため、循環ポンプ42からオーバーフローシャフト43へと導かれる循環液の流量を低減できる。そのため、第2制御において、硝化脱窒素槽2に供給される空気量を低減でき、脱窒素工程を進行させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、制御部6が第2制御を実行するときに、循環ポンプ42から送出された循環液の全量が、バイパスライン71を通じて、硝化脱窒素槽2に循環される。そのため、硝化脱窒素槽2に供給される空気量を確実に低減でき、脱窒素工程を効率よく進行させることができる。
【0087】
また、制御部6は、第2制御の期間中に、硝化脱窒素槽2へ汚水を供給する。そのため、溶存酸素濃度が低下した時間帯に汚水を投入することができ、汚水中の有機物を脱窒素反応に有効に利用することができる。
【0088】
4.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0089】
第1実施形態では、第2制御において、循環ポンプ42から送出された循環液の全量がバイパスライン71へと導かれるが、本発明はこれに限定されない。
【0090】
第2実施形態では、第2制御において、循環ポンプ42から送出された循環液の一部がバイパスライン71へと導かれ、循環液の他部がオーバーフローシャフト43へと導かれる。
【0091】
この場合、制御部6は、第2制御において、循環液が所望の割合でバイパスライン71とオーバーフローシャフト43とに分配されるように、バルブ72の開度を適宜調整できる。また、制御部6は、第2制御において、循環液が所望の割合でバイパスライン71とオーバーフローシャフト43とに分配されるように、循環ポンプ42の第2出力の出力値を適宜調整することもできる。
【0092】
このような第2実施形態によれば、制御部6が第2制御を実行するときに、循環液の一部が、バイパスライン71を通じて、硝化脱窒素槽2に循環されるとともに、循環液の他部が、オーバーフローシャフト43から、空気と混合されて噴射される。そのため、第2制御において、硝化脱窒素槽2に供給される空気量を調整でき、汚水の性状に応じて、硝化工程および脱窒素工程をバランスよく実施することができる。
【0093】
このような第2実施形態によっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 硝化脱窒装置
2 硝化脱窒素槽
31 汚水供給ライン
41 循環ライン
42 循環ポンプ
43 オーバーフローシャフト
6 制御部
71 バイパスライン