(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】リスク管理装置、リスク管理方法及びリスク管理システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20231109BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20231109BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231109BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20231109BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20231109BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20231109BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/095
B60W40/04
B60W40/06
B60W40/08
B60W50/14
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020208963
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラジト アンジャリ
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴広
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025232(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100408(WO,A1)
【文献】特開2017-091371(JP,A)
【文献】特開2016-130966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の走行に対するリスクを管理するリスク管理装置であって、
前記自動車及び前記自動車の周辺環境に関するセンサ情報を取得するセンサ部と、
前記自動車の走行中に前記センサ情報を分析するリスク分析部と、
前記自動車の走行状況を特徴付ける走行シナリオを管理するシナリオ管理部と、
前記走行シナリオを格納するシナリオデータベースと、
を含み、
前記リスク分析部は、
前記センサ部によって取得される前記センサ情報の中から、前記自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する第1のパラメータ特定部と、
前記リスクパラメータの信用度を計算する信用度計算部と、
前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている既存の走行シナリオに対する相関度を計算する相関度計算部と、
前記リスクパラメータの信用度と、前記既存の走行シナリオに対する相関度とに基づいて、前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する対応度を判定するシナリオ判定部と、
前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する前記対応度に基づいて、前記自動車の運転を制御する運転制御アクションを判定するアクション判定部と、
を含み、
前記シナリオ管理部は、
前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、前記リスクパラメータの中から、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存のシナリオに含まれない新規のリスクパラメータを特定する第2のパラメータ特定部と、
少なくとも前記新規のリスクパラメータに基づいて新規の走行シナリオを生成し、前記シナリオデータベースに追加するシナリオ生成部と、
を含
み、
前記シナリオ判定部は、
前記リスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たし、且つ前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている第1の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たす場合、前記リスクパラメータが前記第1の走行シナリオに対応すると判定し、
前記アクション判定部は、
前記第1の走行シナリオに基づいて前記自動車の運転を制御する第1の運転制御アクションを判定する、
ことを特徴とするリスク管理装置。
【請求項2】
前記シナリオ判定部は、
前記リスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たし、且つ前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、前記リスクパラメータが未知の走行シナリオに対応すると判定し、
前記アクション判定部は、
前記リスクパラメータを解消する第2の運転制御アクションを判定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のリスク管理装置。
【請求項3】
前記シナリオ判定部は、
前記リスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たさない、且つ前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、前記リスクパラメータが未定義の走行シナリオに対応すると判定し、
前記アクション判定部は、
所定の安全性基準を満たす走行状態に入るように前記自動車の運転を制御する第3の運転制御アクションを判定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のリスク管理装置。
【請求項4】
前記シナリオ管理部は、
特定の走行シナリオにおいて、特定の危険が発生した場合の対応策を示す安全条件を、所定の評価基準に基づいて評価することで、前記安全条件の有効性を示す有効性スコアを計算する安全条件判定部と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のリスク管理装置。
【請求項5】
前記所定の評価基準は、
前記安全条件に対応する危険の発生頻度、前記安全条件に対応する危険の深刻度、前記安全条件がリスクパラメータとなる頻度、前記安全条件に対応する危険を回避する効果、及び特定のODDパラメータを含む、
ことを特徴とする、
請求項4に記載のリスク管理装置。
【請求項6】
前記シナリオ管理部は、
前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する影響度を計算し、
前記影響度が所定の影響度基準を満たす場合、前記既存の走行シナリオを前記リスクパラメータに基づいて更新するシナリオ更新部と、
を更に含むことを特徴とする、
請求項4に記載のリスク管理装置。
【請求項7】
前記シナリオ更新部は、
前記安全条件の有効性を示す前記有効性スコアが所定の有効性基準を満たす場合、前記既存の走行シナリオを前記有効性スコアに基づいて更新する、
ことを特徴とする、
請求項6に記載のリスク管理装置。
【請求項8】
前記シナリオ管理部は、
前記新規の走行シナリオが前記シナリオデータベースに追加された場合、
前記新規の走行シナリオを、通信ネットワークを介して前記自動車の周辺に存在する周辺自動車に転送する転送部と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のリスク管理装置。
【請求項9】
自動車の走行に対するリスクを管理するリスク管理方法であって、
前記自動車に搭載されるセンサ部によって取得される、前記自動車及び前記自動車の周辺環境に関するセンサ情報の中から、前記自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する工程と、
前記リスクパラメータの信用度を計算する工程と、
前記自動車の走行状況を特徴付ける走行シナリオを管理するシナリオデータベースに格納されている既存の走行シナリオに対する前記リスクパラメータの相関度を計算する工程と、
前記リスクパラメータの信用度と、前記既存の走行シナリオに対する相関度とに基づいて、前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する対応度を判定する工程と、
前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する前記対応度に基づいて、前記自動車の運転を制御する運転制御アクションを判定する工程と、
前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、前記リスクパラメータの中から、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存のシナリオに含まれない新規のリスクパラメータを特定する工程と、
前記新規のリスクパラメータと、前記新規のリスクパラメータが発生した走行状況を示す走行状況情報と、前記走行状況において発生する可能性があるリスクを示すリスク指標とに基づいて新規の走行シナリオを生成し、前記シナリオデータベースに追加する工程と、
前記リスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たし、且つ前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている第1の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たす場合、前記リスクパラメータが前記第1の走行シナリオに対応すると判定する工程と、
前記第1の走行シナリオに基づいて前記自動車の運転を制御する第1の運転制御アクションを判定する工程と、
を含むことを特徴とするリスク管理方法。
【請求項10】
自動車の走行に対するリスクを管理するリスク管理システムであって、
自動車と、
前記自動車の周辺に存在する周辺自動車と、
クラウドサーバとを含み、
前記自動車は、
前記自動車及び前記自動車の周辺環境に関するセンサ情報を取得するセンサ部と、
前記自動車の走行中に前記センサ情報を分析するリスク分析部と、
前記自動車の走行状況を特徴付ける走行シナリオを管理するシナリオ管理部と、
前記走行シナリオを格納するシナリオデータベースと、
を含み、
前記リスク分析部は、
前記センサ部によって取得される前記センサ情報の中から、前記自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する第1のパラメータ特定部と、
前記リスクパラメータの信用度を計算する信用度計算部と、
前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている既存の走行シナリオに対する相関度を計算する相関度計算部と、
前記リスクパラメータの信用度と、前記既存の走行シナリオに対する相関度とに基づいて、前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する対応度を判定するシナリオ判定部と、
前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する前記対応度に基づいて、前記自動車の運転を制御する運転制御アクションを判定するアクション判定部と、
を含み、
前記シナリオ管理部は、
前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、前記リスクパラメータの中から、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存のシナリオに含まれない新規のリスクパラメータを特定する第2のパラメータ特定部と、
前記新規のリスクパラメータと、前記新規のリスクパラメータが発生した走行状況を示す走行状況情報と、前記走行状況において発生する可能性があるリスクを示すリスク指標とに基づいて新規の走行シナリオを生成し、前記シナリオデータベースに追加するシナリオ生成部と、
前記新規の走行シナリオが前記シナリオデータベースに追加された場合、前記新規の走行シナリオを、前記クラウドサーバを経由して前記周辺自動車に送信する転送部と、
を含むことを特徴とするリスク管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リスク管理装置、リスク管理方法及びリスク管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転の関連技術が徐々に登場している。そして、交通手段、特に車両の自動運転機能の高度化が一層望まれている。自動運転機能の中でも、システムの安全性は最も重要な性能の一つとなっている。
【0003】
自動車は走行するにつれて周辺環境が常に変化する。この変化する環境の中で、安全性を確保するために、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで正確に検出し、当該リスクを考慮した適切な運転制御を動的に行う必要がある。
【0004】
従来から、自動運転機能を備えた自動車の安全性を確保するための様々な提案がなされている。
例えば、米国特許出願公開第2020/0148200号明細書(特許文献1)には、「方法は、それぞれが、車両事故に巻き込まれた車両に対して、事故の間の車両動作パラメータを示すデータを記述している情報を含む少なくとも1つの事故プロファイルにアクセスすることと、リアルタイムで、車両及び少なくとも1台のすぐ近くの車両から、車両に対する現在の車両動作パラメータを記述しているデータを収集することと、車両衝突の確率を決定するために、リアルタイムで収集されたデータを、少なくとも1つの事故プロファイルと比較する」技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2020/0148200号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、車両とその近くの少なくとも1台の車両からリアルタイムでデータを収集し、収集したデータを予め作成されている事故プロファイルと比較することで交通事故の確率を決定し、この確率に基づいて交通事故を防ぐための防止行動を実行する手段が記載されている。
【0007】
しかし、特許文献1では、交通事故の確率は、現在の走行シナリオに基づいて収集したデータと、予め作成されている既存の事故プロフィールとの類似度に基づいて決定されるため、事前に想定され、事故プロフィールが予め作成されている走行シナリオに対応することに重点が置かれており、自動車の走行を阻止する可能性がある新たなリスクが存在する未知の走行シナリオへの対応が限られてしまう。
【0008】
従って、自動運転の安全性を更に向上するためには、事前に想定され、事故プロフィールが予め作成されている走行シナリオのみならず、自動車の走行を阻止する可能性がある新たなリスクが存在する未知の走行シナリオの場合に対しても、当該リスクを考慮した適切な運転制御を動的に行うことができる手段が望まれる。
【0009】
そこで、本開示は、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することにより、任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上するリスク管理手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のリスク管理装置の一つは、自動車及び前記自動車の周辺環境に関するセンサ情報を取得するセンサ部と、前記自動車の走行中に前記センサ情報を分析するリスク分析部と、前記自動車の走行状況を特徴付ける走行シナリオを管理するシナリオ管理部と、前記走行シナリオを格納するシナリオデータベースと、 を含む。そして、前記リスク分析部は、前記センサ部によって取得される前記センサ情報の中から、前記自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する第1のパラメータ特定部と、前記リスクパラメータの信用度を計算する信用度計算部と、前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている既存の走行シナリオに対する相関度を計算する相関度計算部と、前記リスクパラメータの信用度と、前記既存の走行シナリオに対する相関度とに基づいて、前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する対応度を判定するシナリオ判定部と、前記リスクパラメータの前記既存の走行シナリオに対する前記対応度に基づいて、前記自動車の運転を制御する運転制御アクションを判定するアクション判定部と、を含む。更に、前記シナリオ管理部は、前記リスクパラメータの、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合には、前記リスクパラメータの中から、前記シナリオデータベースに格納されている前記既存のシナリオに含まれない新規のリスクパラメータを特定する第2のパラメータ特定部と、少なくとも前記新規のリスクパラメータに基づいて新規の走行シナリオを生成し、前記シナリオデータベースに追加するシナリオ生成部と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することにより、任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上するリスク管理手段を提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施例を実施するためのコンピュータシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るリスク管理システムの全体のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るリスク管理装置の詳細構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係るシナリオDBのデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係るリスク管理システムの論理構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る走行シナリオ判定の流れの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る走行シナリオ判定の結果、センサ情報に含まれるリスクパラメータが、未知の走行シナリオに対応すると判定された場合の処理の流れの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係るリスク分析部によるリスク分析処理の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係るシナリオDBの中から、リスクパラメータとの相関度が所定の相関度基準を満たす走行シナリオを特定する一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係る運転管理装置による処理の流れの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る安全条件の、評価基準毎の有効性を示す安全条件評価テーブルの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係るリスクパラメータの、時間毎の影響度を示すパラメータ影響度テーブルの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係る新規の走行シナリオを他の自動車に共有する場合の一例を示す図である。
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0014】
まず、
図1を参照して、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステム300について説明する。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。コンピュータシステム300の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ302、メモリ304、端末インターフェース312、ストレージインタフェース314、I/O(入出力)デバイスインタフェース316、及びネットワークインターフェース318を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス306、I/Oバス308、バスインターフェースユニット309、及びI/Oバスインターフェースユニット310を介して、相互的に接続されてもよい。
【0015】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302と総称される1つ又は複数の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)302A及び302Bを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム300は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム300は単一のCPUシステムであってもよい。各プロセッサ302は、メモリ304に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。
【0016】
ある実施形態では、メモリ304は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。メモリ304は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ304は、リスク管理アプリケーション350を格納していてもよい。ある実施形態では、リスク管理アプリケーション350は、後述する機能をプロセッサ302上で実行する命令又は記述を含んでもよい。
【0017】
ある実施形態では、リスク管理アプリケーション350は、プロセッサベースのシステムの代わりに、またはプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、および/または他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、リスク管理アプリケーション350は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、または他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット309、プロセッサ302、またはコンピュータシステム300の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0018】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、表示システム324、及びI/Oバスインターフェースユニット310間の通信を行うバスインターフェースユニット309を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス308と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、I/Oバス308を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインタフェースユニット312,314,316、及び318と通信してもよい。
【0019】
表示システム324は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置326に提供することができる。また、コンピュータシステム300は、データを収集し、プロセッサ302に当該データを提供するように構成された1つまたは複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。
【0020】
例えば、コンピュータシステム300は、心拍数データやストレスレベルデータ等を収集するバイオメトリックセンサ、湿度データ、温度データ、圧力データ等を収集する環境センサ、及び加速度データ、運動データ等を収集するモーションセンサ等を含んでもよい。これ以外のタイプのセンサも使用可能である。表示システム324は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置326に接続されてもよい。
【0021】
I/Oインタフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インタフェースユニット312は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス320の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス320及びコンピュータシステム300に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム300からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス320を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されたりしてもよい。
【0022】
ストレージインタフェース314は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置322(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置322は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ304の内容は、ストレージ装置322に記憶され、必要に応じてストレージ装置322から読み出されてもよい。I/Oデバイスインタフェース316は、プリンタ、ファックスマシン等の他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース318は、コンピュータシステム300と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク330であってもよい。
【0023】
ある実施形態では、コンピュータシステム300は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム300は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピュータ、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0024】
次に、
図2を参照して、本開示の実施形態に係るリスク管理システムの構成について説明する。
【0025】
図2は、本開示の実施形態に係るリスク管理システム200の全体のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、本開示の実施形態に係るリスク管理システム200は、情報管理装置210、リスク管理装置220、運転管理装置230、及びクラウド240を主に含む。
図2に示す情報管理装置210、リスク管理装置220、及び運転管理装置230は、自動車205に搭載され、通信ネットワーク(
図2に図示せず)を介してクラウド240と接続されてもよい。ただし、本開示はこれに限定されず、情報管理装置210、リスク管理装置220、及び運転管理装置230における機能の一部をクラウド240や外部のコンピューティングデバイスによって実施する構成も可能である。
【0026】
情報管理装置210は、自動車205や、自動車205の周辺環境に関する情報を収集し、分析するための装置である。
図2に示すように、情報管理装置210は、センサ部212と、オブジェクト検出部214とを含む。
【0027】
センサ部212は、自動車205に設置され、自動車205や、自動車205の周辺環境に関する各種情報を取得するための機能部である。センサ部212は、例えば、映像情報、音響情報、温度情報、道路情報、位置情報、移動情報、気圧情報、湿度情報、加速度情報、交通情報、信号機情報、災害情報、雨量情報、風向情報、風量情報、風速情報、風圧情報等、自動車205及び自動車205の周辺環境の様々な側面に関する観測結果を示すデータをセンサ情報として取得するように構成されたセンサを含んでもよい。
例えば、ある実施形態では、センサ部212は、自動車205の速度、加速度、現在位置、天気予報、自動車205の周辺を示す映像等を取得してもよい。
センサ部212は、センサ情報をリアルタイムで継続的に取得し、取得した情報をオブジェクト検出部214及びリスク管理装置220に転送すると共に、クラウド240に送信する。
【0028】
オブジェクト検出部214は、センサ部212によって取得されたセンサ情報に基づいて、自動車205の周辺環境におけるオブジェクトを検出するための機能部である。ある実施形態では、オブジェクト検出部214は、例えば、センサ部212によって取得された映像を用いて、他の自動車、木、人間、建物、動物等、自動車205の走行を阻止する可能性があるオブジェクトのカテゴリーを検出するように学習されたニューラルネットワーク(畳み込みニューラルネットワーク)であってもよい。
オブジェクト検出部214は、オブジェクト検出の結果を、リスク管理装置220に転送すると共に、クラウド240に送信する。
【0029】
リスク管理装置220は、自動車205の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成するための装置である。本開示では、「新たなリスク」との表現は、後述するシナリオDB224に含まれている既存の走行シナリオに対応しないリスクを意味する。
図2に示すように、リスク管理装置220は、リスク分析部222と、シナリオDB224と、シナリオ管理部226とを含む。
【0030】
リスク分析部222は、センサ部212によって取得されたセンサ情報及び/又はオブジェクト検出部214によって生成されるオブジェクト検出の結果に基づいて、自動車205の走行を阻止する可能性があるリスクを判定するための機能部である。ここでは、リスクとは、自動車205の安全性又は走行快適性を損なう可能性があるイベント、状況、又はオブジェクトを意味する。一例として、ここでのリスクは、他の自動車との衝突、道路を滑りやすくする雨や雪、倒木、動物等を含んでもよく、特に限定されない。
なお、リスク分析部222の機能の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0031】
シナリオデータベース(以下、シナリオDB)224は、リスクの影響度を定量的に評価し、自動車の安全性を確保するための運転制御アクションを判定する際に用いられる走行シナリオや、ODD(Operational Design Domain)パラメータ、安全条件、リスク指標、リスクモデル等を格納するためのデータベースである。
ここでの走行シナリオとは、自動車の走行状況を特徴付ける情報である。より具体的には、走行シナリオは、特定の時刻における走行の状況を表現するデータ構造であり、例えば道路の情報(道路のタイプ、道路の形状、道路の状態等)、交通の情報(交通量、速度制限、他の自動車の平均速度等)、車線数、物体の存在、他の自動車との送受信で取得したV2V(Vehicle to Vehicle)情報、ODDパラメータを含んでもよい。
また、走行シナリオは、特定のイベントや事象に対応する情報を含んでもよい。一例として、シナリオDB224は、走行シナリオとして、「雨天時」や「先行車が急ブレーキした場合」等を含んでもよい。また、後述するように、シナリオDB224に格納されている各走行シナリオは、当該シナリオにおいて発生する可能性があるリスクを示すリスク指標を含んでもよい。例えば、「先行車が急ブレーキを操作した場合」との走行シナリオは、「先行車に衝突する」とのリスク指標を含んでもよい。
更に、それぞれの走行シナリオは、自動車205の安全性を確保するための運転制御アクションの候補や、特定の走行シナリオにおける特定の危険(hazard)を回避するための安全条件に対応付けらてもよい。後述するように、アクション判定部は、走行シナリオに対応付けられている運転制御アクションの候補に基づいて適切な運転制御アクションを判定することができる。
なお、シナリオDB224の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0032】
シナリオ管理部226は、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成し、シナリオDB224に格納される走行シナリオを更新するための機能部である。
なお、シナリオ管理部226の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0033】
運転管理装置230は、自動車205の走行ルートを決定すると共に、自動車の運転を制御するための装置である。
図2に示すように、運転管理装置230は、走行ルート決定部232と、運転制御部234とを含む。
【0034】
走行ルート決定部232は、自動車205の走行ルートを決定するための機能部である。走行ルート決定部232は、リスク管理装置220によって生成される運転制御アクション、センサ部212によって取得されたセンサ情報、及び/又は自動車が適切に動作するように設計されている特定の動作条件(道路の種類、自動車の現在位置、速度範囲、環境条件、交通法規)を規定するODD(Operational Design Domain)パラメータDB(
図2に図示せず)に基づいて自動車の走行ルートを判定してもよい。
なお、ここでの走行ルート決定部として、既存の自動運転機能に用いられているものを適宜に用いてもよく、本開示では特に限定されない。
【0035】
運転制御部234は、走行ルート決定部232によって決定された走行ルートに従って自動車に走行させるための機能部である。運転制御部234は、走行ルート決定部232によって決定された走行ルートに基づいて、自動車が所定の目的地に安全に到着するための加速、減速、方向転換等の各種制御を実行する。
【0036】
クラウド240は、情報管理装置210、リスク管理装置220、運転管理装置230の各種機能を支援するためのコンピューティング、データベース、ストレージ等の各種サービスを、インターネット等の通信ネットワーク経由で提供するためのプラットフォームである。クラウド240は、例えば、センサ部212によって取得されたセンサ情報、オブジェクト検出部214によって生成されるオブジェクト検出結果、シナリオDB224等のバックアップを格納したり、リスク管理装置220や運転管理装置230による演算処理を部分的に担ったりしてもよい。
【0037】
以上説明したように構成したリスク管理システム200によれば、自動車205の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することが可能となる。また、これにより任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車205の安全性を向上することができる。
【0038】
次に、
図3を参照して、本開示の実施形態に係るリスク管理装置220の構成の詳細について説明する。
【0039】
図3は、本開示の実施形態に係るリスク管理装置220の詳細構成の一例を示す図である。
図3に示すように、リスク管理装置220は、リスク分析部222、シナリオDB224、シナリオ管理部226、ODDセンサ優先度テーブル361、及びリスクデータベース(以下、リスクDB)381を含む。
【0040】
上述したように、リスク分析部222は、センサ部(例えば、
図2に示すセンサ部212)によって取得されるセンサ情報及び/又はオブジェクト検出部(例えば、
図2に示すオブジェクト検出部214)によって生成されるオブジェクト検出の結果に基づいて、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクを判定するための機能部である。
図3に示すように、リスク分析部222は、第1のパラメータ特定部362と、信用度計算部364と、相関度計算部366と、シナリオ判定部367と、リスク評価部368と、アクション判定部370とを含む。
【0041】
第1のパラメータ特定部362は、センサ部によって取得されるセンサ情報の中から、自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する機能部である。ここでのリスクパラメータとは、特定の走行シナリオにおいてリスクを評価するための有用な情報である。例えば、ここでのリスクパラメータは、自動車の速度、道路の種類(砂利の道、舗装道路)、現在時刻、車間距離等を含んでもよい。第1のパラメータ特定部362は、センサ部によって取得されるセンサ情報に対する統計解析を行うことで所定の分布を有するパラメータをリスクパラメータとして特定してもよく、特定の走行シナリオにおけるリスクパラメータを指定するテーブルを参照することでリスクパラメータを特定してもよい(例えば、「雨天時」という走行シナリオにおいては、「タイヤの種類」はリスクパラメータとして特定されてもよい)。
リスクパラメータの例として、例えば、TimeToCollision, SafeMergingDistance, AverageVelocityofIncominglane, AverageNoofVehicles等が考えられる。ただし、本開示はこれに限定されず、任意のパラメータをリスクパラメータとしてもよい。
【0042】
信用度計算部364は、リスクパラメータの確実性を示す信用度を計算する機能部である。ここでの信用度は、リスクパラメータの確実性を示す尺度であり、ODDセンサ優先度テーブル361に格納されているODDセンサプロフィールに基づいて判定されてもよい。この信用度は、例えば0~1の範囲内の数値として表現されてもよい(より大きな値は信用度がより高い)。
ここでのODDセンサプロフィールとは、走行シナリオ毎にセンサ情報の優先度を指定するデータである。例えば、ODDセンサプロフィールは、「夜間走行」との走行シナリオの場合には、「RGB映像情報」とのセンサ情報に「0.4」の優先度を付与し、「LIDAR映像情報」とのセンサ情報に「0.8」の優先度を付与してもよい(すなわち、暗い環境にはRGB映像よりも、LIDAR映像を信頼性の高い情報として優先すべきである)。
【0043】
相関度計算部366は、リスクパラメータの、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対する相関度を計算する機能部である。ここでの相関度とは、リスクパラメータの、既存の走行シナリオに対する類似度を示す尺度であり、例えば0~1の範囲内の数値として表現されてもよい(より大きな値は相関度がより高い)。後述するように、この相関度に基づいて、あるリスクパラメータが既存の走行シナリオに対応するか、未知の走行シナリオに対応するか、未定義の走行シナリオに対応するかを判定することができる。
【0044】
シナリオ判定部367は、信用度計算部364によって計算されたリスクパラメータの信用度と、当該リスクパラメータの、シナリオDB224に格納される既存の走行シナリオに対する相関度とに基づいて、当該リスクパラメータの既存の走行シナリオに対する対応度を判定するための機能部である。ここでの対応度とは、リスクパラメータと既存の走行シナリオとの関連度を示す尺度である。後述するように、この対応度は、リスクパラメータが既存の走行シナリオに対応するか、リスクパラメータが未知の走行シナリオに対応する(つまり、既存の走行シナリオに対応しない)か、未定義の走行シナリオに対応する(つまり、リスクパラメータが不確実であり、既存の走行シナリオとの対応度が不明)か否かを示してもよい。
【0045】
リスク評価部368は、所定のリスクモデルを用いて、特定の走行シナリオにおけるリスク指標を解析することで当該走行シナリオに基づいて判定された運転制御アクションの危険度を判定するための機能部である。ここでの運転制御アクションの危険度とは、当該運転制御アクションを実行した場合の危険性を示す尺度であり、例えば0~1の範囲内の数値として表現されてもよい(より大きな値は危険度がより高い)。
【0046】
アクション判定部370は、リスクパラメータの既存の走行シナリオに対する対応度に基づいて、自動車の運転を制御する運転制御アクションを判定する機能部である。本開示では、「運転制御アクション」とは、走行の安全性又は快適性を向上するために、自動車を加速したり、減速したり、方向転換したりする等、自動車の運転を制御する任意の動作であってもよい。
上述したように、アクション判定部370は、リスクパラメータが既存の走行シナリオに対応するか、未知の走行シナリオに対応するか、未定義の走行シナリオに対応するかによって、異なる運転制御アクションを判定することができる。
【0047】
上述したように、シナリオ管理部226は、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成し、シナリオDB224に格納される走行シナリオを更新するための機能部である。
図3に示すように、シナリオ管理部226は、第2のパラメータ特定部372と、シナリオ生成部374と、安全条件判定部376と、シナリオ更新部378と、転送部380とを含む。
【0048】
第2のパラメータ特定部372は、リスクパラメータの、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、これらのリスクパラメータの中から、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに含まれていない新規のリスクパラメータを特定する機能部である。ここでは、新規のリスクパラメータとは、既存の走行シナリオに対応しないリスクパラメータを意味し、後述するように、これらの新規のリスクパラメータを用いて新規の走行シナリオを生成することができる。
【0049】
シナリオ生成部374は、第2のパラメータ特定部372によって特定される新規のリスクパラメータと、新規のリスクパラメータが発生した走行状況を示す走行状況情報と、当該走行状況において発生する可能性があるリスクを示すリスク指標とに基づいて新規の走行シナリオを生成し、シナリオDB224に追加する機能部である。ここで、新規の走行シナリオを生成する際に、当該走行状況において発生する可能性があるリスクを示すリスク指標の情報は、リスクDB381に格納されている。このリスクDB381は、過去の走行状況において発生したリスクや、当該リスクを軽減するために事前に規定されるルール等を含んでもよい。
【0050】
安全条件判定部376は、特定のリスクを軽減させるために用いられる安全条件(safety barriers)の有効性を判定するための機能部である。これらの安全条件は、例えば、特定の走行シナリオにおいて発生する特定の危険を軽減させ、自動車の安全性を確保するための策であってもよい。
なお、安全条件判定部376による処理の詳細については後述するため、ここではその説明を省略する。
【0051】
シナリオ更新部378は、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオを更新するための機能部である。シナリオ更新部378は、例えば、リスクパラメータの影響度や、安全条件判定部376によって計算される安全条件の有効性スコアに基づいてシナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオを更新してもよい。
【0052】
転送部380は、新規の走行シナリオがシナリオDB224に追加された場合、当該新規の走行シナリオを、通信ネットワークを介して自動車の周辺に存在する周辺自動車に転送するための機能部である。転送部380は、新規の走行シナリオを直接に周辺自動車に転送してもよく、例えばクラウドにおけるクラウドサーバを経由して新規の走行シナリオを周辺自動車に転送してもよい。
【0053】
以上説明したように構成したリスク管理装置220によれば、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することが可能となる。また、これにより任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上することができる。
【0054】
次に、
図4を参照して、本開示の実施形態に係るシナリオDBについて説明する。
【0055】
図4は、本開示の実施形態に係るシナリオDB224のデータ構成の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係るシナリオDB224は、リスクの影響度を定量的に評価し、自動車の安全性を確保するための運転制御アクションを判定する際に用いられる走行シナリオを格納するためのデータベースである。
【0056】
図4に示すように、シナリオDB224は、走行シナリオを管理するための走行シナリオ管理テーブル460を含む。この走行シナリオ管理テーブル460は、現在の交通量や予測される交通量を示す交通情報410、自動車に設置されるセンサや設備によって取得される自動車設備情報420、道路の状態や自動車の経路を示す走行情報430、自動車が走行するエリアに対応する地図を含む地図情報440、自動車の周辺に存在する他の自動車との距離関係を示す自動車関係情報450等の、情報管理装置210によって取得される各種情報に基づいて生成されてもよい。
【0057】
ある実施形態では、走行シナリオ管理テーブル460は、各種情報410、420、430、440、450を、クラウド(例えば、
図2に示すクラウド240)のビッグデータ解析及び機械学習手法に基づく生成処理455によって生成されてもよい。この生成処理455により、各種情報410、420、430、440、450に基づいて走行シナリオが生成される。ここで、走行シナリオを生成する手段として、既存のビッグデータ解析や機械学習手法を用いてもよく、ここでは特に限定されない。
【0058】
図4に示すように、走行シナリオ管理テーブル460は、「車線変更」や「雨天」等の走行シナリオ462、自動車の速度や目的地までの距離等の自動車パラメータ464、「高速道路」等の道路情報466、照明条件468、「制動距離」や「車との衝突」等の、当該走行シナリオにおいて発生する可能性があるリスクを示すリスク指標を含む。
ただし、走行シナリオ管理テーブル460はこの情報に限定されない。例えば、ある実施形態では、シナリオDB224に格納されている各走行シナリオ462は、運転制御アクションの候補及び安全条件に対応付けられている。また、ある実施形態では、走行シナリオ管理テーブル460に含まれるリスク指標、運転制御アクションの候補、及び/又は安全条件は、優先度が付与されてもよい。例えば、歩行者の多い横断歩道、狭い道路、悪天気等の危険度がより高い走行シナリオに対応するリスク指標は、より高い優先度が付与されてもよい。この場合、後述するリスク評価部及びアクション判定部は、リスク指標、運転制御アクションの候補、及び/又は安全条件に付与されている優先度に基づいて運転制御アクション及び当該運転制御アクションの危険度を判定することができる。
【0059】
ある実施形態では、シナリオDB224における走行シナリオ462は、{Egostate1, Egostate2, Egostaten ,V1state1, v1state2,{(r1,i1), {(rn,in)}, hazard,{sc1, sc2,scn}}のようなタプルとして表現されてもよい。ここでは、「Egostate」とは、自動車のODD状態を示す情報であり、「Vstate」は周辺の自動車の状態を示す情報であり、「r」はリスク指標を示す情報であり、「i」はリスクの影響度を示す情報であり、「sc」は安全条件を示す情報である。
【0060】
以上説明したように構成したシナリオDB224によれば、様々な走行シナリオ毎に、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクに関する情報を格納することができる。また、後述するように、このシナリオDB224に格納されている走行シナリオを用いることで、任意の状況において、自動車の安全性を確保するための運転制御アクションを正確に判定することができる。更に、本開示では、既存の走行シナリオには含まれていない新たなリスクを含む未知の状況が発生した場合、当該未知の状況に対応する新規の走行シナリオが動的に生成され、シナリオDB224に追加される。これにより、任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上することができる。
【0061】
次に、
図5を参照して、本開示の実施形態に係るリスク管理システムの論理構成の一例について説明する。
【0062】
図5は、本開示の実施形態に係るリスク管理システム200の論理構成の一例を示す図である。
図5に示すように、リスク管理システム200は、リスク分析部222、シナリオDB224、及びシナリオ管理部226を主に含む。リスク分析部222、シナリオDB224、及びシナリオ管理部226の詳細構成は、
図2~
図4を参照して上述したため、ここではその説明を省略する。
なお、説明の便宜上、
図5は、リスク管理システム200の主要な機能のみを示しており、一部の機能部の記載は省略されている。
【0063】
図5に示すように、まず、リスク分析部222における第1のパラメータ特定部362は、情報管理装置(例えば、
図2に示す情報管理装置210)によって取得されるセンサ情報510を取得し、当該センサ情報510の中から、自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する。その後、信用度計算部364は、第1のパラメータ特定部362によって特定されたリスクパラメータの確実性を示す信用度を、例えばODDセンサ優先度テーブルに格納されているODDセンサプロフィールに基づいて計算する。
【0064】
次に、相関度計算部366は、リスクパラメータの、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対する相関度を計算する。上述したように、ここでの相関度とは、リスクパラメータの、既存の走行シナリオに対する類似度を示す尺度であり、例えば0~1の範囲内の数値として表現されてもよい(より大きな値は相関度がより高い)。この相関度に基づいて、第1のパラメータ特定部362によって特定されたリスクパラメータに対応する走行シナリオが既にシナリオDB224において存在するか否かを判定することができる。
【0065】
次に、シナリオ判定部367は、信用度計算部364によって計算されたリスクパラメータの信用度と、当該リスクパラメータの、シナリオDB224に格納される既存の走行シナリオに対する相関度とに基づいて、当該リスクパラメータの既存の走行シナリオに対する対応度を判定する。上述したように、ここでの対応度とは、リスクパラメータと既存の走行シナリオとの関連度を示す尺度である。後述するように、この対応度は、リスクパラメータが既存の走行シナリオに対応するか、リスクパラメータが未知の走行シナリオに対応する(つまり、既存の走行シナリオに対応しない)か、未定義の走行シナリオに対応する(つまり、リスクパラメータが不確実であり、既存の走行シナリオとの対応度が不明)か否かを示してもよい。
【0066】
リスクパラメータの、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対する相関度と、信用度計算部364によって計算される信用度とに基づいて、当該リスクパラメータは、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオ(例えば、第1の走行シナリオ)に対応すると判定された場合、シナリオ判定部367は、当該走行シナリオを特定する。
【0067】
次に、リスクパラメータの、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対する相関度と、信用度計算部364によって計算される信用度とに基づいて既存の走行シナリオが特定された後、アクション判定部370は、特定した走行シナリオに基づいて、運転制御アクションを判定する。例えば、アクション判定部370は、特定した走行シナリオに対応付けられている運転制御アクションの候補の中から、自動車の安全性を向上した実績がある運転制御アクションを判定してもよい。
【0068】
次に、リスク評価部368は、シナリオ判定部367によって特定された走行シナリオに対応するリスク指標515をシナリオDB224から取得する。上述したように、このリスク指標515は、特定の走行シナリオにおいて特定の運転制御アクションに伴う可能性があるリスクを示す情報であり、走行シナリオ毎に異なる。ここでは、リスク指標に優先度が付与されている場合、リスク評価部368は、優先度が所定の優先度基準を満たすリスク指標を取得してもよい。
【0069】
次に、リスク評価部368は、取得したリスク指標515を、当該走行シナリオに対応するリスクモデルを用いて解析することで、アクション判定部によって判定された運転制御アクションの危険度を判定する。
より具体的には、リスク評価部368は、シナリオ判定部367によって特定された走行シナリオにおいて、アクション判定部によって判定された運転制御アクションに対応するリスク指標515の深刻度を評価することで、運転制御アクションの危険度を判定することができる。
ここでは、リスク評価部368は、当該既存の走行シナリオに対応するリスクモデルを例えばシナリオDB224から取得してもよく、運転制御アクションの危険度を評価するリスクモデルを格納する別のデータベースから取得してもよい
【0070】
次に、リスク評価部368は、運転制御アクションについて計算した危険度が、所定の危険度基準を満たすか否かを判定する。計算した危険度が、所定の危険度基準を満たす場合、リスク評価部は、この運転制御アクションを運転制御アクション520として運転管理装置230に転送し、計算した危険度が、所定の危険度基準を満たさない場合、リスク評価部368は、当該運転制御アクションを所定の危険度基準に満たすように変更する指示をアクション判定部370に転送する。
運転制御アクション520を受信した運転管理装置230は、運転制御アクション520を実行してもよく、運転制御アクション520を変更してもよく、運転制御アクション520を破棄して異なる運転制御アクション520を実行してもよい。
【0071】
以上では、リスクパラメータがシナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対応すると判定された場合の処理を説明したが、リスクパラメータが未知の走行シナリオに対応する(つまり、既存の走行シナリオに対応しない)場合や、リスクパラメータが未定義の走行シナリオに対応する場合には、処理が異なる。
より具体的には、例えば、リスクパラメータの、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対する相関度と、信用度計算部364によって計算される信用度とに基づいて、当該リスクパラメータは、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオに対応しないと判定された場合、シナリオ生成部374は、既存の走行シナリオに対応すると判定されなかったリスクパラメータ(すなわち、新規のリスクパラメータ)を用いて、新規の走行シナリオを生成し、シナリオDB224に格納する。
また、シナリオ更新部378は、リスクパラメータの影響度を計算した後、所定の影響度基準を満たすリスクパラメータを用いて、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオを更新する。
なお、シナリオ判定の詳細については、
図6を参照して後述するため、ここではその説明を省略する。
【0072】
以上説明したように構成したリスク管理装置220によれば、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することが可能となる。また、これにより任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上することができる。
【0073】
次に、
図6を参照して、本開示の実施形態に係る走行シナリオ判定について説明する。
【0074】
図6は、本開示の実施形態に係るシナリオ判定部367によるシナリオ判定処理の流れの一例を示す図である。上述したように、本開示では、自動車の安全性を確保するための運転制御アクションを判定するためには、センサ情報に含まれるリスクパラメータが、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオ610に対応するか、未知の走行シナリオ620に対応するか、未定義の走行シナリオ630に対応するかを判定することが望ましい。
ここでは、既存の走行シナリオ610とは、既にシナリオDBに格納されている走行シナリオである。未知の走行シナリオ620とは、シナリオDBに格納されていない走行シナリオである。未定義の走行シナリオ630とは、リスクパラメータの信用度の欠如により、リスクパラメータとの対応度が不明な走行シナリオである。
【0075】
上述したように、本開示の実施形態に係る走行シナリオ判定は、信用度計算部(例えば、
図3及び
図4に示す信用度計算部364)によって計算される信用度と、相関度計算部366によって計算される相関度計算部366とに基づいて行われる。
【0076】
より具体的には、シナリオ判定部(例えば、
図3及び
図5に示すシナリオ判定部367)は、第1のパラメータ特定部(例えば、
図3及び
図5に示す第1のパラメータ特定部362)によって特定されるリスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たし、且つ当該リスクパラメータの、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオ(例えば、第1の走行シナリオ)に対する相関度が所定の相関度基準を満たす場合、当該リスクパラメータが、既存の走行シナリオ610に対応すると判定する。
【0077】
リスクパラメータが既存の走行シナリオ610に対応すると判定される場合には、上述したように、アクション判定部(例えば
図3及び
図5に示すアクション判定部370)は、既存の走行シナリオ610に基づいて、運転制御アクション(第1の運転制御アクション)を判定する。
その後、リスク評価部(例えば
図3及び
図5に示すリスク評価部368)は、当該既存の走行シナリオ610のリスク指標をシナリオDB(例えば、
図2~5に示すシナリオDB224)から取得し、当該既存の走行シナリオ610に対応するリスクモデルを用いて、取得されたリスク指標を解析することで、アクション判定部によって判定された運転制御アクションの危険度を判定する。
【0078】
計算した危険度が、所定の危険度基準を満たす場合、リスク評価部は、この運転制御アクションを運転管理装置230に転送し、計算した危険度が、所定の危険度基準を満たさない場合、リスク評価部は、当該運転制御アクションを所定の危険度基準に満たすように変更する指示をアクション判定部に転送する。
【0079】
一方、シナリオ判定部は、第1のパラメータ特定部によって特定されるリスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たし、且つ当該リスクパラメータの、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、当該リスクパラメータが、未知の走行シナリオ620に対応すると判定する。
【0080】
図7は、本開示の実施形態に係る走行シナリオ判定の結果、センサ情報に含まれるリスクパラメータが、未知の走行シナリオに対応すると判定された場合の処理の流れの一例を示す図である。
リスクパラメータが未知の走行シナリオ(
図6に示す未知の走行シナリオ620)に対応すると判定される場合には、リスク分析部222のアクション判定部は、当該リスクパラメータを解消するための運転制御アクション(第2の運転制御アクション)を判定し、運転管理装置230に転送すると共に、当該リスクパラメータを新規のリスクパラメータとして、シナリオ管理部226に転送する。
【0081】
運転制御アクションの一例として、例えばリスクパラメータが「先行車との車間距離が所定値未満」の場合、アクション判定部は、自動車と先行車との車間距離がこの所定値を満たすように自動車の速度を落とす運転制御アクションを判定してもよい。
また、ここでは、アクション判定部は、当該リスクパラメータを直接にシナリオ管理部226に送信してもよく、シナリオ管理部226にアクセス可能なステージングDB(図示せず)に格納してもよい。
【0082】
運転制御アクションを受信した運転管理装置230は、この運転制御アクションを実行してもよく、運転制御アクションを変更してもよく、運転制御アクションを破棄して異なる運転制御アクションを実行してもよい。
【0083】
また、既存の走行シナリオに対応しない新規のリスクパラメータを受信したシナリオ管理部226は、これらの新規のリスクパラメータに対応する新規の走行シナリオを生成し、シナリオDB224に格納する。運転管理装置230は、シナリオDB224にアクセスすることで、シナリオDB224に新しく追加された新規の走行シナリオを含めて、任意の走行シナリオを参照することで、適切な運転制御アクションを決定することができる。
【0084】
次に、
図6に戻り、リスクパラメータが未定義の走行シナリオに対応する場合について説明する。
第1のパラメータ特定部によって特定されるリスクパラメータの信用度が所定の信用度基準を満たさない、且つ当該リスクパラメータの、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオに対する相関度が所定の相関度基準を満たさない場合、当該リスクパラメータは、
図6に示す未定義の走行シナリオ630に対応すると判定される。
リスクパラメータは、未定義の走行シナリオ630に対応すると判定される場合、アクション判定部は、所定の安全基準を満たす走行状態に移行する運転制御アクション(第3の運転制御アクション)を判定する。この安全基準を満たす走行状態とは、停車の状態や、一部の機能を無効化した作動状態である「MRC」(Minimal Risk Condition、最小リスク条件)であってもよい。
【0085】
以上説明したように、センサ情報に含まれるリスクパラメータが、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオに対応するか、未知の走行シナリオに対応するか、未定義の走行シナリオに対応するかを判定することにより、自動車の安全性を確保するための運転制御アクションを判定すると共に、新規の走行シナリオを動的に生成することが可能となる。
【0086】
次に、
図8及び
図9を参照し、本開示の実施形態に係るリスク分析部によるリスク分析処理について説明する。
【0087】
図8は、本開示の実施形態に係るリスク分析部によるリスク分析処理700の一例を示す図である。
図8に示すリスク分析処理700は、リスク分析部における各機能部によって実行される処理である。また、
図8に示すリスク分析処理700によれば、自動車の安全性を確保するための運転制御アクションを判定することができる。
【0088】
まず、ステップ704では、第1のパラメータ特定部(例えば、
図3に示す第1のパラメータ特定部362)は、センサ部(例えば、
図2に示すセンサ部212)によって取得されるセンサ情報の中から、自動車の走行に対するリスクを示すリスクパラメータを特定する。上述したように、第1のパラメータ特定部は、センサ部によって取得されるセンサ情報に対する統計解析を行うことで所定の分布を有するパラメータをリスクパラメータとして特定してもよく、特定の走行シナリオにおいて重要なリスクパラメータを所定のODD状態(VehiclePosition, SpeedLimit, RoadType, TimeOfDay, Weather, NumberofLanes等)に基づいて指定するテーブルを参照することでリスクパラメータを特定してもよい(例えば、雨が降っている走行シナリオにおいては、「タイヤの種類」とのパラメータをリスクパラメータとして特定してもよい)。
リスクパラメータの例として、例えば、TimeToCollision, SafeMergingDistance, AverageVelocityofIncominglane, AverageNoofVehicles等が考えられる。ただし、本開示はこれに限定されず、任意のパラメータをリスクパラメータとしてもよい。
【0089】
次に、ステップ706では、信用度計算部(例えば、
図3に示す信用度計算部364)は、リスクパラメータの確実性を示す信用度を計算する。上述したように、ここでの信用度は、リスクパラメータの確実性を示す尺度であり、ODDセンサ優先度テーブル361に格納されているODDセンサプロフィールの情報と、オブジェクト検出部によるオブジェクト検出結果に基づく確実性パラメータRとに基づいて計算される。オブジェクト検出結果において、自動車の周辺環境に存在する全てのオブジェクトのカテゴリー(木、建物、自動車、動物等)が検出された場合には、この確実性パラメータRは「1」となり、オブジェクト検出結果において、カテゴリーを検出されなかった不明なオブジェクトがある場合には、この確実性パラメータRはマイナスの値となる。
また、上述したように、ODDセンサプロフィールは、走行シナリオ毎にセンサ情報の優先度及び各種センサの検出範囲を示すデータ構造である。
【0090】
リスクパラメータの信用度は、以下の数式1によって求められる。
【数1】
ここでは、w1、w2、w3は、ODDセンサプロフィールに指定される各センサの優先度に基づく重み付けパラメータであり、σはODDセンサプロフィールに格納される各センサの検出範囲であり、Rは上述したオブジェクト検出結果に基づく確実性パラメータである。
【0091】
次に、ステップ708では、シナリオ判定部は、ステップ706で計算された信用度が所定の信用度基準を満たすか否かを判定する。この信用度判定基準は、必要最低限の信用度を指定する値であり、過去の信用度計算に基づいて定められてもよく、リスク管理システム200の管理者によって定められてもよい。
ステップ706で計算された信用度が所定の信用度基準を満たす場合、本処理はステップ712へ進み、ステップ706で計算された信用度が所定の信用度基準を満たさない場合、本処理はステップ710へ進む。
【0092】
ステップ706で計算された信用度が所定の信用度基準を満たさない場合、ステップ710では、シナリオ判定部は、当該リスクパラメータが未定義の走行シナリオに対応すると判定する。その後、上述したように、アクション判定部は、自動車を、所定の安全基準を満たす走行状態に移行する運転制御アクション(第3の運転制御アクション)を判定する。
【0093】
ステップ706で計算された信用度が所定の信用度基準を満たす場合、ステップ712では、相関度計算部(例えば、
図3~4に示す相関度計算部366)は、リスクパラメータの、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオに対する相関度を計算する。ここでは、相関度計算部は、リスクパラメータの、シナリオDBに格納されている既存の走行シナリオに対する類似度を計算する類似度関数(ユークリッド距離、コサイン類似度)を用いてもよい。
【0094】
ステップ714では、シナリオ判定部は、ステップ712で計算された相関度が所定の相関度基準を満たすか否かを判定する。この所定の相関度基準は、必要最低限の相関度を指定する値であり、過去の相関度計算に基づいて定められてもよく、リスク管理システム200の管理者によって定められてもよい。
ステップ712で計算された相関度が所定の相関度基準を満たす場合、本処理はステップ718へ進み、ステップ712で計算された相関度が所定相関度基準を満たさない場合、本処理はステップ716へ進む。
【0095】
ステップ712で計算された相関度が所定相関度基準を満たさない場合、ステップ716では、シナリオ判定部は、当該リスクパラメータが未知の走行シナリオに対応すると判定する。その後、上述したように、アクション判定部は、当該リスクパラメータを解消するための運転制御アクション(第2の運転制御アクション)を判定すると共に、シナリオ生成部は、新規の走行シナリオの生成を開始する。その後、本処理はステップ728へ進む。
ここでは、リスクパラメータを解消するための運転制御アクションとは、当該リスクパラメータが、以降に取得されるセンサ情報に含まれないように、自動車の走行シナリオを変更するための運転制御アクションである。一例として、「速度制限を超えた」とのリスクパラメータの場合、リスクパラメータを解消するための運転制御アクションは、自動車の速度を落とした後、通常の走行を継続するアクションであってもよい。また別の一例として、リスクパラメータを解消するための運転制御アクションは、自動車を異なる走行ゾーン(例えば別の車線等)に移動させた後、通常の走行を継続するアクションであってもよい。
【0096】
次に、ステップ718では、アクション判定部は、(例えば、
図3、5に示すアクション判定部370)シナリオDBの中から、リスクパラメータとの相関度が所定の相関度基準を満たす走行シナリオを特定する。
図9は、シナリオDBの中から、リスクパラメータとの相関度が所定の相関度基準を満たす走行シナリオを特定する一例を示す図である。
図9に示すように、シナリオDBに格納されている走行シナリオ管理テーブル460の中には、走行シナリオ810毎に、当該走行シナリオについて計算されたリスクパラメータRP
1、RP
2、RP
3の相関度基準820が格納される。この中から、リスクパラメータRP
1、RP
2、RP
3との相関度が所定の相関度基準を満たす走行シナリオ(例えば、相関度が最も高い走行シナリオ)が特定される。一例として、
図9に示すように、走行シナリオS
3は、リスクパラメータRP
1、RP
2、RP
3との総合的な相関度が最も高いため、走行シナリオS
3が特定される。
【0097】
リスクパラメータとの相関度が所定の相関度基準を満たす走行シナリオが特定された後、アクション判定部は、特定した走行シナリオに基づいて、運転制御アクションを判定する。ある実施形態では、アクション判定部は、特定した走行シナリオに対応付けられている運転制御アクションの候補の中から、自動車の安全性を向上した実績がある運転制御アクションを判定してもよい。
【0098】
次に、ステップ720では、リスク評価部(例えば、
図3、
図5に示すリスク評価部368)は、ステップ718で特定した走行シナリオのリスク指標をシナリオDBから取得し、取得したリスク指標を、当該走行シナリオに対応するリスクモデルを用いて解析することで、ステップ718で判定した運転制御アクションの危険度を判定する。ここでは、リスク指標に優先度が付与されている場合、リスク評価部368は、優先度が所定の優先度基準を満たすリスク指標を取得してもよい。
一例として、リスク評価部は、取得したリスク指標を、当該走行シナリオに対応するリスクモデルを用いて解析した結果、「雨天時」との走行シナリオにおいて、「ブレーキをかける」との運転制御アクションについて、「自動車が滑り、運転が不安定となること」とのリスク指標に「0.2」の深刻度を与え、「後続車に衝突すること」とのリスク指標に「0.3」の深刻度を与えた後、これらのリスク指標に基づいて当該運転制御アクションの危険度を判定してもよい。例えば、リスク評価部は、それぞれのリスク指標について計算した深刻度の平均値を当該運転制御アクションの危険度としてもよい。この場合、当該運転制御アクションの危険度が「0.25」となる。
【0099】
次に、ステップ722では、リスク評価部は、ステップ720で計算した危険度が、所定の危険度基準を満たすか否かを判定する。この危険度基準とは、許容範囲の危険度を指定する値であり、例えばリスク管理システムの管理者によって定められてもよい。一例として、所定の危険度基準が「0.3以下」の場合、危険度が「0.25」である上述の運転制御アクションが、当該所定の危険度基準を満たすと判定される。
ステップ720で計算した危険度が、所定の危険度基準を満たす場合、本処理はステップ726へ進み、ステップ720で計算した危険度が、所定の危険度基準を満たさない場合、本処理はステップ724へ進む。
【0100】
ステップ720で計算した危険度が、所定の危険度基準を満たさない場合、ステップ724では、アクション判定部は、運転制御アクションを、当該所定の危険度基準を満たすように変更する。例えば、アクション判定部は、運転制御アクションを、当該所定の危険度基準を満たすように、運転制御アクションによって指定される速度、加速度、車間距離等の自動車作動パラメータをより安全な値に変更してもよい。
【0101】
ステップ720で計算した危険度が、所定の危険度基準を満たす場合、ステップ726では、この運転制御アクションが承認される。
【0102】
次に、ステップ728では、アクション判定部は、ステップ726で承認された運転制御アクション、又はステップ716で判定された運転制御アクションを、運転管理装置に転送する。その後、運転管理装置は、運転制御アクションを実行してもよく、運転制御アクションを変更してもよく、運転制御アクションを破棄して異なる運転制御アクションを実行してもよい。
【0103】
以上説明したリスク分析処理700によれば、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することが可能となる。また、これにより任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上することができる。
【0104】
次に、
図10を参照して、本開示の実施形態に係る運転管理装置による処理の流れについて説明する。
【0105】
図10は、本開示の実施形態に係る運転管理装置230による処理の流れの一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係る運転管理装置230は、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成し、シナリオDB224に格納される走行シナリオを継続的に更新するための機能部であり、
図10に示すように、第2のパラメータ特定部372、シナリオ生成部374、安全条件判定部376、及びシナリオ更新部378を含む。
なお、説明の便宜上、
図10は、シナリオ管理部226の主要な機能のみを示しており、一部の機能部の記載は省略されている。
以下、それぞれの機能部の処理の流れについて説明する。
【0106】
まず、ステップ905では、第2のパラメータ特定部372は、リスク分析部の第1のパラメータ特定部(例えば、
図3に示すリスク分析部222の第1のパラメータ特定部362)によって特定されたリスクパラメータの中から、シナリオDB224に格納されている既存のシナリオに含まれていないリスクパラメータを、新規のリスクパラメータとして特定する。
【0107】
次に、ステップ910では、シナリオ生成部374は、センサ部(例えば、
図2に示すセンサ部212)によって取得されたセンサ情報を解析することで、ステップ905で特定された新規のリスクパラメータが測定された走行状況を示す走行状況情報を抽出する。例えば、「平均車両数」が新規のリスクパラメータとして特定された場合、シナリオ生成部374は、センサ情報を解析することで、「大都市の高速道路を走行中」との走行状況情報を抽出してもよい。これにより、当該新規のリスクパラメータがどのような走行状況において発生したかを判定することができる。
【0108】
次に、ステップ915では、シナリオ生成部374は、リスクDB381を参照することで、ステップ910で抽出した走行状況に対応するリスク指標を判定する。ここでのリスクDB381は、過去の走行状況において発生したリスクや、当該リスクを軽減するために事前に規定されるルール等を含んでもよい。リスクDB381は、例えば過去の走行状況情報や、専門家の知識に基づいて事前に作成されたデータベースであってもよい。
一例として、「大都市の高速道路を走行中」との走行状況の場合、シナリオ生成部374は、リスクDB381を参照することで、「歩行者との衝突」や「交通渋滞」等をリスク指標として判定してもよい。
なお、ここで判定されるリスク指標のそれぞれは、当該リスク指標の重要性を示す重み付けに対応付けられてもよい。
【0109】
次に、ステップ920では、シナリオ生成部374は、ステップ905で特定した新規のリスクパラメータと、ステップ910で抽出した走行状況と、ステップ915で判定したリスク指標とに基づいて、新規の走行シナリオを生成し、シナリオDB224に追加すると共に、当該新規の走行シナリオにフラグを付与する。より具体的には、シナリオ生成部374は、所定のAPIやライブラリーを用いて、特定したパラメータ(リスクパラメータ、ODDパラメータ)と、これらのパラメータが発生した走行状況と、当該走行状況に対応するリスク指標とを新規の走行シナリオとして、シナリオDB224において登録する。
なお、この新規の走行シナリオに基づいて自動車の運転を制御する運転制御アクションを決定する前に、更なる安全性の検証を行うことが望ましい場合がある。従って、作成される時点では、当該新規の走行シナリオは、更なる安全性の検証を推奨するフラグが付与される。その後、シナリオ管理部226は、ユーザによる確認や安全条件の更新等によって当該新規の走行シナリオの安全性を検証した後、このフラグを削除してもよい。
【0110】
ある実施形態では、新規の走行シナリオがシナリオ管理部226に追加された場合には、シナリオ管理部226の転送部(
図10には図示せず)は、インターネット等の通信ネットワークを介して、新規の走行シナリオを周辺で走行中の自動車に共有してもよい。
なお、新規の走行シナリオを周辺で走行中の自動車に共有する場合の詳細については
図13を参照して後述するため、ここではその説明を省略する。
【0111】
上述したように、シナリオ管理部226は、特定のリスクを軽減させるために用いられる安全条件の有効性を判定するための安全条件判定部376を含む。ここで、安全条件とは、例えば、特定の走行シナリオにおいて発生する特定の危険を軽減させ、自動車の安全性を確保するための策であり、シナリオDB224に格納されてもよい。
ステップ930では、安全条件判定部376は、特定の走行シナリオにおいて発生する可能性がある危険に対応する安全条件を所定の評価基準に基づいて評価することで、それぞれの安全条件の有効性を示す有効性スコアを計算する。
より具体的には、安全条件判定部376は、危険データベース(以下、危険DB)945から、特定の走行シナリオにおいて発生する可能性がある危険(hazard)に対応する安全条件を取得する。ここでの危険DB945(hazard database)は、走行シナリオ毎に、当該走行シナリオに発生する可能性がある危険と、当該危険による危険度を軽減するための安全条件を格納するためのデータベースである。一例として、危険DB945は、「雨天時」との走行シナリオについて、「自動車のスリップによる衝突」との危険と、「車間距離を拡大する」との安全条件を含んでもよい。
【0112】
安全条件判定部376は、特定の危険に対応する安全条件を取得した後、取得した安全条件を、所定の評価基準に基づいて評価することで、当該安全条件の有効性を示す有効性スコア944を計算する。ここでの評価基準は、安全条件の有効性を評価するために選択されたパラメータである。一例として、ここでの評価基準は、対象の安全条件に対応する危険の発生頻度(fh)、対象の安全条件に対応する危険の深刻度(sh)、対象の安全条件がリスクパラメータとなる頻度(fa)、対象の安全条件が対応する危険を回避する効果(er)、雨量、積雪量及び照度などのODDパラメータを検出するための有効性(Odd1)等を含んでもよいが、本開示における評価基準はこれに限定されず、安全策の有効性を評価するための任意のパラメータであってもよい。
なお、ここでの評価基準は、当該評価基準の重要性を示す重み付けに対応付けられてもよい。
【0113】
ある実施形態では、安全条件判定部376は、それぞれの安全条件の有効性を示す有効性スコアを、評価基準毎に計算してもよい。ここで、安全条件の有効性を示すスコアは、以下の数式2によって求められる。
【数2】
ここでは、f(λ)は、特定の安全条件が所定の時間内に用いられた頻度の関数であり、w
nは、評価基準の重み付けである。
【0114】
図11は、本開示の実施形態に係る安全条件の、評価基準毎の有効性を示す安全条件評価テーブル1000の一例を示す図である。
図11に示すように、安全条件1、安全条件2...安全条件n等の任意の数の安全条件1010の、評価基準1005毎の有効性スコア1015が示されている。
【0115】
それぞれの安全条件の有効性スコアが計算された後、安全条件判定部376は、それぞれの安全条件について計算した有効性スコア944を出力する。ある実施形態では、安全条件判定部376は、この有効性スコア944をシナリオ更新部378に転送してもよい。
以上説明した安全条件評価によれば、特定のリスクを軽減させるために用いられる安全条件の有効性を評価することができる。これにより、走行シナリオ毎に、当該走行シナリオにおける危険を軽減するそれぞれの安全条件の効果を把握することが可能となるため、有効性の低い安全条件を削除・変更すると共に、有効性がより高い安全条件を追加することで、自動車の走行安全性を確保することができる。
【0116】
また、上述したように、シナリオ管理部226は、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオを更新するためのシナリオ更新部378を含む。
図10に示すステップ940では、このシナリオ更新部378は、例えば第1のパラメータ特定部によって特定されたリスクパラメータの影響度を計算すると共に、これらのリスクパラメータの影響度や、安全条件判定部376によって計算される安全条件の有効性スコアに基づいてシナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオを更新してもよい。
【0117】
より具体的には、ステップ940では、シナリオ更新部378は、第1のパラメータ特定部によって特定されたリスクパラメータを、自動車の速度、加速度、現在位置、周辺に走行中の自動車の数等の動作条件に基づいて解析することで、これらのリスクパラメータの時間毎の影響度を計算する。ここでの影響度とは、リスクパラメータが交通事故につながる可能性を示す尺度であり、「安全」、「危険性がある」、「交通事故の可能性が高い」等のカテゴリーとして表現されてもよく、0~1の範囲内の数値として表現されてもよい(より大きな値は影響度、すなわち、交通事故の可能性がより高い)。
ある実施形態では、シナリオ更新部378は、過去のリスクパラメータに基づいて学習されたMLP(Multilayer Perceptron)等のニューラルネットワークを用いてリスクパラメータの時間毎の影響度を計算してもよい。
【0118】
図12は、本開示の実施形態に係るリスクパラメータの、時間毎の影響度を示すパラメータ影響度テーブル1100の一例を示す図である。
図12に示すように、リスクパラメータp1,p2...pn等のリスクパラメータ1105の、時間帯1110毎の影響度1115が示されている。
このように、時間の流れと共に、特定のリスクパラメータの影響度の変動を判定することができる。
【0119】
次に、リスクパラメータの影響度を計算した後、シナリオ更新部378は、計算したリスクパラメータの影響度と、ステップ930で計算された安全条件について計算した有効性を示す有効性スコア944とに基づいて、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオを更新する。ここで、シナリオ更新部378は、影響度が所定の影響度基準を満たすリスクパラメータを含む走行シナリオの安全条件を、有効性スコア944に基づいて調整してもよい。例えば、シナリオ更新部378は、影響度が所定の影響度基準を満たすリスクパラメータを含む走行シナリオを特定した後、当該走行シナリオに対応する安全条件のうち、有効性スコアが低い安全条件を削除したり、有効性スコアを向上するように変更したりしてもよい。ただし、ここでの走行シナリオの更新はこれに限定されず、任意のパラメータを追加したり、削除したり、変更したりすることを含んでもよい。
これにより、シナリオDB224に格納されている既存の走行シナリオは、常に最新の状態で維持されるため、任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上することができる。
【0120】
次に、
図13を参照して、本開示の実施形態に係る新規の走行シナリオを他の自動車に共有する場合の一例について説明する。
【0121】
図13は、本開示の実施形態に係る新規の走行シナリオを他の自動車に共有する場合の一例を示す図である。
図13に示すように、シナリオ生成部(例えば、
図3に示すシナリオ生成部374)によって新規の走行シナリオが生成され、自動車205に搭載されているローカルのシナリオDB224に追加された場合には、リスク管理装置220における転送部380は、ローカルのシナリオDB224と、クラウド240におけるシナリオDB1224とを同期させる。これにより、自動車側で生成された新規の走行シナリオがクラウド240におけるシナリオDB1224にも追加される。
【0122】
この際、クラウド240におけるシナリオDB1224は、新しく追加された新規の走行シナリオの情報を含む通知を、自動車205の周辺の自動車である周辺自動車1205、1210に送信してもよい。ここでの周辺自動車1205、1210は、例えば、自動車205から所定の距離以内(500メートル以内、1キロ以内)に存在する自動車であってもよい。
これにより、周辺自動車1205、1210は、クラウド240から受信した新規の走行シナリオをローカルのシナリオDBに登録し、この新規の走行シナリオに基づいて走行安全性を確保するための運転制御アクションを判定してもよい。
このように、1台の自動車によって生成された走行シナリオを他の周辺自動車に共有することで、例えば雨天時や大雪等の悪天気の場合に、発生する可能性があるリスクや、当該リスクを軽減させるための運転制御アクションをより効率良く判定することが可能となる。
【0123】
なお、
図13では、新しく追加された新規の走行シナリオの情報を含む通知を2台の周辺自動車に送信する場合を一例として説明したが、本開示はこれに限定されず、この通知は任意の数の自動車に送信されてもよい。
また、
図13では、クラウド240のシナリオDB1224を経由して新規の走行シナリオの情報を含む通知を自動車205から周辺自動車1205、1210に送信する場合を一例として説明したが、本開示はこれに限定されず、自動車205の転送部380は、クラウド240を経由せずに、新規の走行シナリオの情報を含む通知をLAN等の通信ネットワークを介して直接に周辺自動車1205、1210に送信してもよい。
【0124】
以上説明したリスク管理装置、リスク管理方法及びリスク管理システムによれば、自動車の走行を阻止する可能性があるリスクをリアルタイムで評価すると共に、新たなリスクが存在する場合に新規の走行シナリオを動的に生成することにより、任意の走行状況においても、適切な運転制御を行い、自動車の安全性を向上することができる。また、以上では、自動車の安全性を向上することを主に目的とした場合を一例として本開示の態様を説明したが、本開示はこれに限定されず、自動車の安全性に加えて、自動車の乗客の快適性を向上するために用いてもよい。
【0125】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0126】
200 リスク管理システム
205 自動車
210 情報管理装置
212 センサ部
214 オブジェクト検出部
220 リスク管理装置
222 リスク分析部
224 シナリオDB
226 シナリオ管理部
230 運転管理装置230
232 走行ルート決定部
234 運転制御部
240 クラウド