(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】スラリー製造装置及びスラリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01F 25/64 20220101AFI20231109BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20231109BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231109BHJP
B01F 23/50 20220101ALI20231109BHJP
【FI】
B01F25/64
H01M4/04 Z
H01M4/139
B01F23/50
(21)【出願番号】P 2020528785
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2019024373
(87)【国際公開番号】W WO2020008885
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018128590
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】大西 慶一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅見 圭一
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-226612(JP,A)
【文献】特開2014-140814(JP,A)
【文献】特開2003-326281(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138192(WO,A1)
【文献】特開2018-130646(JP,A)
【文献】特表昭63-502796(JP,A)
【文献】米国特許第04211733(US,A)
【文献】特表平09-503828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/13 - 4/1399
H01M 10/00 - 10/667
B01F 21/00 - 25/90
B01F 27/00 - 27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合室で所定の粉体及び溶媒を混合しスラリーを生成する混合部と、
上記混合部によってスラリーを生成する際に反応ガスを上記混合室に供給する供給部と、
上記混合室から上記反応ガスの余剰分を回収し、上記混合室に再供給する循環部と、
上記混合室より生成されたスラリーを回収し、当該スラリーを貯留する貯留部と、を備え
、
上記循環部は、上記混合室と上記貯留部を接続し、上記混合室から上記貯留部にスラリー及び反応ガスの余剰分を回収する第1管と、上記貯留部と上記混合室を接続し、上記貯留部から上記混合室に上記反応ガスの余剰分を供給する第2管と、を有し、
上記反応ガスは、炭酸ガスあるいはスラリー中のアルカリ成分を中和するガスである、
ことを特徴とする二次電池用スラリー製造装置。
【請求項2】
上記混合室を減圧する減圧部を更に備える請求項1に記載の二次電池用スラリー製造装置。
【請求項3】
吸入ポート及び吐出ポートを有するポンプを更に有し、
上記第2管は、上記吸入ポートと上記貯留部を接続する第1部分と、
上記吐出ポートと上記混合室を接続する第2部分と、を備える請求項
1又は2に記載の二次電池用スラリー製造装置。
【請求項4】
上記混合部は、上記混合室内の混合ロータを回転させることでスラリーを生成し、
上記混合ロータの回転によって形成されるスラリーの流れに沿って上記第1管内にスラリーが導入されるように、上記第1管が上記混合室に接続されている請求項
1から3のいずれかに記載の二次電池用スラリー製造装置。
【請求項5】
上記第1管は、上記混合室の上部側から延びている請求項
1から4のいずれかに記載の二次電池用スラリー製造装置。
【請求項6】
混合室で所定の粉体及び溶媒を混合しスラリーを生成する混合工程と、
上記混合工程においてスラリーを生成する際に反応ガスを上記混合室に供給する供給工程と、
上記混合室から上記反応ガスの余剰分を回収し、上記混合室に再供給する循環工程と、
上記混合室より生成されたスラリーを回収し、当該スラリーを貯留部に貯留する工程と、を含
み、
上記循環工程は、上記混合室と上記貯留部を接続する第1管によりスラリー及び反応ガスの余剰分を回収し、上記貯留部と上記混合室を接続する第2管により上記反応ガスの余剰分を供給し、
上記反応ガスは、炭酸ガスあるいはスラリー中のアルカリ成分を中和するガスである、
ことを特徴とする二次電池用スラリー製造方法。
【請求項7】
上記混合室を減圧する減圧工程を更に含む請求項6に記載の二次電池用スラリー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー製造装置及びスラリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体と溶媒とを混合してスラリーを生成するスラリー製造装置が知られている。例えば、特許文献1には、粉体(アルカリ金属イオンを吸蔵、放出する活物質、カーボン系導電助剤及び水系バインダ)と、溶媒(水)とを混合することによって、非水電解質二次電池の正極用のスラリーを生成するスラリー製造装置が開示されている。
【0003】
ところで、正極用のスラリーに含まれるリチウム複合酸化物には、合成中に添加された水酸化リチウムが残存している。水酸化リチウムは水と接触してスラリーのpH値を上昇させる。そして、pH値が11を超えるような強アルカリ性のスラリーでは、塗工時にアルミニウム集電体が腐食するおそれがある。
【0004】
特許文献1に開示されたスラリー製造装置は、装置内に炭酸ガスを供給して、装置内で生成された正極用のスラリーに炭酸ガスを溶解させている。これにより、スラリー中のアルカリ成分が中和される。スラリー中のアルカリ成分が中和されることによって、アルミニウム集電体の腐食が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたスラリー製造装置は、装置内に供給した炭酸ガスのうちの余剰分を、空気の放出管から外部へ放出している。しかしながら、炭酸ガスの放出により、周辺環境への環境負荷が増えるおそれがある。
【0007】
また、装置内へ供給された炭酸ガスのうち、外部へ放出されている炭酸ガスは、スラリー中のアルカリ成分の中和に何ら寄与していない。そのため、スラリー中のアルカリ成分の中和に何ら寄与していない炭酸ガスの量を減らして、装置内へ供給する炭酸ガスの量を減らすことが求められる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置から放出される反応ガスの量を減らすと共に、装置内へ供給する反応ガスの量を減らすことができるスラリー製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスラリー製造装置は、混合室で所定の粉体及び溶媒を混合しスラリーを生成する混合部と、上記混合部によってスラリーを生成する際に反応ガスを上記混合室に供 給する供給部と、上記混合室から上記反応ガスの余剰分を回収し、上記混合室に再供給する循環部と、を備える。
【0010】
上記構成によれば、供給部によって混合室に供給された反応ガスの余剰分は、循環部によって回収されて混合室に再供給される。これにより、供給部が混合室に供給すべき反応ガスの少なくとも一部を、循環部から再供給される反応ガスで代用することできる。その結果、供給部が混合室に供給する反応ガスの量を減らすことができる。また、これにより、外部へ放出される反応ガスの量を減らすことができるため、環境負荷を低くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置から放出される反応ガスの量を減らすと共に、装置内へ供給する反応ガスの量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るスラリー製造装置100の概要を示す説明図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るスラリー製造装置100の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、分散混合ポンプ80の内部構造を示す説明図である。
【
図5】
図5は、分散混合ポンプ80の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例におけるスラリー製造装置100の概要を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係るスラリー製造装置101の概要を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係るスラリー製造装置102の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
[スラリー製造装置100の全体構成]
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係るスラリー製造装置100が説明される。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0015】
図1及び
図2に示されるスラリー製造装置100は、分散混合ポンプ80と、粉体供給部20と、溶媒供給部30と、気体供給部40と、循環部50と、を備える。なお、
図2において、粉体供給部20は省略されている。分散混合ポンプ80は、混合部の一例である。気体供給部40は、供給部の一例である。
【0016】
図3が示すように、分散混合ポンプ80は、混合室81を有する。
図1及び
図2に示される分散混合ポンプ80は、混合室81で粉体Pと溶媒Rとを混合し且つ供給された反応ガスGによってスラリーFを生成する。
図1に示される粉体供給部20は、混合室81に粉体Pを供給する。
図1及び
図2に示される溶媒供給部30は、混合室81に溶媒Rを供給する。
図1及び
図2に示される気体供給部40は、混合室81に反応ガスGを供給する。
図1及び
図2に示される循環部50は、混合室81から反応ガスGを回収し、混合室81に再供給する。
【0017】
本実施形態におけるスラリー製造装置100は、アルカリ金属複合酸化物を含む水系溶媒を用いた非水電解質二次電池の正極用スラリーを製造する装置である。粉体Pは、非水電解質二次電池用電極の製造に用いられるスラリー材料であり、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出する活物質、カーボン系導電助剤及び水系バインダである。溶媒Rは、水であり、反応ガスGは、炭酸ガスである。
【0018】
[粉体供給部20]
図1が示すように、粉体供給部20は、ホッパ21と、粉体供給管22と、バルブ23とを備える。
【0019】
ホッパ21は、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状に構成され、その中心軸が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている。ホッパ21は、上部開口部211から受け入れた粉体Pを下部開口部212から排出させる。ホッパ21の下部開口部212は、粉体供給管22に接続されている。
【0020】
粉体供給管22は、その中心軸が鉛直方向に対して傾斜する状態で配置された円筒状の管である。粉体供給管22の上部は、ホッパ21の下部開口部212に接続されている。粉体供給管22の下部は、分散混合ポンプ80(詳細には分散混合ポンプ80の第1供給部11)に接続されている。粉体供給管22と第1供給部11とが接続される位置が接続位置P1である。
【0021】
図1及び
図3が示すように、バルブ23は、エアシリンダ231(
図1参照)により移動されるシャッタ232(
図3参照)によって粉体供給管22を開閉するものある。なお、シャッタ232の移動手段はエアシリンダ231でなくとも良く、例えば油圧シリンダやモータであっても良い。バルブ23が開かれた状態において、ホッパ21と第1供給部11とは、粉体供給管22を介して連通されている。つまり、粉体Pは、ホッパ21から粉体供給管22を通って第1供給部11へ移動可能である。バルブ23が閉じられた状態において、ホッパ21と第1供給部11との連通は、シャッタ232によって遮断されている。このとき、粉体Pは、ホッパ21から第1供給部11へ移動不可能である。
【0022】
[溶媒供給部30]
図1が示すように、溶媒供給部30は、貯留タンク(貯留部の一例)31と、スラリー再供給管32とを備える。
【0023】
貯留タンク31には、溶媒R及びスラリーFが貯留される。溶媒Rは、溶媒供給ポート311を介して貯留タンク31へ供給される。スラリーFは、分散混合ポンプ80から循環部50の回収管51及び回収ポート312を介して回収される。
【0024】
貯留タンク31は、気体ポート313と、撹拌機構314とを備える。気体ポート313は、循環部50の吸気管52と接続されている。貯留タンク31の内部の反応ガスGは、気体ポート313を介して吸気管52へ移動可能である。撹拌機構314は、貯留タンク31の内部に配置されている。撹拌機構314は、モータ33によって駆動されて貯留タンク31の内部の溶媒R及びスラリーFを撹拌する。
【0025】
スラリー再供給管32は、貯留タンク31と粉体供給管22及び第1供給部11とを接続している。スラリー再供給管32の一端は、貯留タンク31に接続されている。スラリー再供給管32の他端は、接続位置P1において粉体供給管22及び第1供給部11に接続されている。
【0026】
スラリー再供給管32には、ポンプ34と、流量センサ35とが設けられている。ポンプ34は、貯留タンク31に貯留されている溶媒R及びスラリーFを吸引して、スラリー再供給管32の他端へ向けて、つまり第1供給部11へ向けて送出する。流量センサ35は、スラリー再供給管32を流れる溶媒RやスラリーFの流量に応じた信号を制御部(不図示)へ出力する。
【0027】
制御部は、スラリー製造装置100の動作を制御する。制御部は、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)によって実現されてもよいし、ハードウェア回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0028】
[気体供給部40]
図1及び
図2が示すように、気体供給部40は、ボンベ41と、気体供給管42と、バルブ43とを備える。
【0029】
ボンベ41には、反応ガスGが貯留される。
【0030】
図2が示すように、気体供給管42は、円筒状の管である。気体供給管42の一端は、ボンベ41の上端部に接続されている。
図1が示すように、気体供給管42の他端は、接続位置P2においてスラリー再供給管32と接続されている。接続位置P2は、スラリー再供給管32における流量センサ35と接続位置P1との間の位置である。
【0031】
図1及び
図2に示されるバルブ43は、気体供給管42を開閉するものである。バルブ43が開かれた状態において、ボンベ41と分散混合ポンプ80とは、気体供給管42、接続位置P2、スラリー再供給管32、接続位置P1、及び粉体供給管22を介して連通されている。このとき、反応ガスGは、気体供給管42と接続位置P2及び接続位置P1の間のスラリー再供給管32とを通って、第1供給部11へ移動可能である。バルブ43が閉じられた状態において、ボンベ41と第1供給部11との連通は、バルブ43によって遮断されている。このとき、反応ガスGは、ボンベ41から第1供給部11へ移動不可能である。
【0032】
[分散混合ポンプ80]
図1及び
図3が示すように、分散混合ポンプ80は、ケーシング1、第1供給部11、吐出部12、第2供給部17、混合ロータ5、ポンプ駆動モータ82、仕切板15、ステータ7、圧力センサ83、及び排出管84を備える。
【0033】
図3が示すように、ケーシング1は、両端開口が前壁部2と後壁部3とで閉じられた円筒状の外周壁部4を備える。ケーシング1は、その内部に、前壁部2と後壁部3と外周壁部4とによって区画された混合室81を有する。混合室81は、ステータ7によって、翼室8と導入室とに区画されている。導入室は、仕切板15によって、第1導入室13と第2導入室14とに区画されている。つまり、混合室81は、翼室8と第1導入室13と第2導入室14とで構成されている。
【0034】
第1供給部11は、前壁部2における中心軸(ケーシング1の軸心A3)よりも外周側に偏移した位置に設けられている。なお、本実施形態において、第1供給部11の水平方向(
図3の左右方向)に対する下向きの傾斜角度は、45度程度である。第1供給部11は、概ね円筒状である。
【0035】
第1供給部11の一端は、第1導入室13と連通している。
図1が示すように、第1供給部11の他端は、接続位置P1と連通している。
図3が示すように、第1供給部11の一端部(第1供給部11のケーシング1内に開口する開口部)は、前壁部2に形成された環状溝10の一部を内部に含んでいる。粉体供給部20によって供給された粉体P、溶媒供給部30によって供給された溶媒R、及び気体供給部40によって供給された反応ガスGは、第1供給部11を介して、第1導入室13に導入される。
【0036】
吐出部12は、混合室81において粉体Pと溶媒Rとが混合されて生成されたスラリーFを吐出するものである。吐出部12は、概ね円筒状である。吐出部12は、外周壁部4の周方向における1箇所に設けられており、翼室8に連通している。
【0037】
図4が示すように、吐出部12は、外周壁部4の接線方向に延びている。換言すると、吐出部12及び吐出管18は、混合室81から軸心A3と直交する方向に延びている。これにより、混合ロータ5の回転によって、混合室81から吐出部12及び吐出管18へ向けての気体の流れを生じさせることができる。この流れに沿って、混合室81内の反応ガスGを吐出部12及び吐出管18へ容易に送ることができる。
【0038】
なお、必ずしも吐出部12及び吐出管18と、軸心A3と、が直交していなくとも良い。混合ロータ5の回転によって形成される気体の流れに沿って吐出部12及び吐出管18へと気体が導入されるような方向に吐出部12、吐出管18が延びていれば、混合室81内の反応ガスGを容易に送る効果を得ることができる。つまり、吐出部12、吐出管18近傍における混合ロータ5の回転方向と、吐出部12、吐出管18の延在方向と、がおおよそ同じ方向となっていれば良い。
【0039】
また、吐出部12は、混合室81の上部側から延びている。混合室81の上部側とは、混合室81のうち、混合室81の上端811と下端812との中間の高さ813、つまり軸心A3と同じ高さ813よりも上方の位置である。混合室81において、気体である反応ガスGは、固体及び液体であるスラリーFより上方に位置し易い。そのため、吐出部12が混合室81の上部側から延びていることによって、反応ガスGを吐出管18へ容易に送ることができる。
【0040】
図3が示すように、第2供給部17は、前壁部2の中央部から突出している。第2供給部17の一端は、前壁部2と接続されており、第2導入室14と連通している。
図1が示すように、第2供給部17の他端は、再循環機構部70の循環流路16と接続されている。第2供給部17は、円筒状である。
図3が示すように、第2供給部17の軸心は、ケーシング1の軸心A3と一致している。第2供給部17には、絞り部171が形成されている。絞り部171の内径は、循環流路16の内径よりも小さく、仕切板15の筒状摺接部151の内径よりも小さい。つまり、絞り部171の流路面積は、循環流路16の流路面積よりも小さく、筒状摺接部151の流路面積よりも小さい。
【0041】
図3及び
図4が示すように、混合ロータ5は、ケーシング1の内部に回転自在に設けられている。混合ロータ5の軸心は、ケーシング1の軸心A3と一致している。
【0042】
混合ロータ5は、その前面が概ね円錐台状に膨出する形状に構成されている。混合ロータ5の外周側に、複数の回転翼6が取り付けられている。複数の回転翼6は、混合ロータ5から前方に突出する状態で等間隔に並べられている。なお、
図4では、周方向に等間隔に10個の回転翼6が配設されている。回転翼6は、内周側から外周側に向かうにつれて、回転方向後方に傾斜するように混合ロータ5の外周側から内周側に突出している。
【0043】
図3が示すように、混合ロータ5は、後壁部3を貫通してケーシング1内に挿入されたポンプ駆動モータ82の駆動軸19に連結されている。混合ロータ5は、ポンプ駆動モータ82により回転駆動される。
【0044】
回転翼6が上述したような構成であることにより、混合ロータ5が軸心方向視において回転翼6の先端部が前側となる向き(
図4~
図6に矢印で示される回転方向)に回転駆動したとき、回転翼6の回転方向の後側となる面である後面61の後側の空間に位置するスラリーFには、混合室81の内外の圧力差に応じてキャビテーション(局所沸騰)が発生する。
【0045】
図3及び
図5が示すように、仕切板15は、混合室81における前壁部2と混合ロータ5の間に配置されている。
図3が示すように、仕切板15は、混合室81のうちステータ7の内周側の空間である導入室を、前壁部2側の第1導入室13と、混合ロータ5側の第2導入室14とに区画する。
【0046】
図3及び
図5が示すように、仕切板15は、ステータ7の内径よりも僅かに小さい外径を有する概ね漏斗状に構成されている。仕切板15は、その中央部に、円筒状に突出した漏斗状部152を備える。漏斗状部152の頂部の筒状摺接部151は、開口されている。また、仕切板15は、漏斗状部152の外周部に、前面及び後面共にケーシング1の軸心A3に直交する状態となる環状平板部153を備える。
【0047】
仕切板15は、筒状摺接部151が前壁部2側を向く姿勢で、間隔保持部材24を介して、混合ロータ5の前面の取付部501に取り付けられる。
図6(C)が示すように、間隔保持部材24は、周方向に等間隔を隔てた複数箇所(この実施形態では、4箇所)に配設されている。間隔保持部材24には、撹拌羽根25が取り付けられている。
【0048】
図3及び
図5が示すように、仕切板15における前壁部2側の面に掻出翼9が設けられている。
図4~
図6が示すように、掻出翼9は、同心円上において周方向に等間隔で複数(
図4~
図6では、4つ)設けられている。
図3が示すように、掻出翼9は、第1導入室13に位置している。掻出翼9は、その先端部が環状溝10に嵌め込まれている。
【0049】
図5及び
図6が示すように、掻出翼9は、棒状に形成されている。掻出翼9は、混合ロータ5の径方向視(
図6(B)の紙面表裏方向視)で、その先端側ほど前壁部2側に位置し、かつ、混合ロータ5の軸心方向視(
図6(A)の紙面表裏方向視)で、その先端側ほど混合ロータ5の径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、掻出翼9の基端部92が混合ロータ5と一体回転するように固定されている。
【0050】
仕切板15は、混合ロータ5が回転すると、混合ロータ5と一体回転する。このとき各掻出翼9は、その先端部93が環状溝10内に進入した状態(
図3参照)で、混合ロータ5と一体的に周回する。
【0051】
図4及び
図5が示すように、ステータ7は、円筒状の部材である。
図3が示すように、ステータ7は、混合室81に配置されている。詳細には、ステータ7は、
図3が示すように前壁部2と混合ロータ5の間に配置されており、
図4が示すように軸心A3に沿った水平方向視において混合ロータ5を囲むように配置されている。
図5が示すように、ステータ7は、前壁部2の内面(混合ロータ5に対向する面)に取り付けられている。
図3が示すように、仕切板15は、混合室81を、外周壁部4側の翼室8と、混合ロータ側の導入室(第1導入室13及び第2導入室14)とに区画する。
【0052】
図4が示すように、翼室8は、環状である。翼室8には、混合ロータ5から突出した複数の回転翼6が位置している。
【0053】
図3及び
図5が示すように、ステータ7には、複数の透孔701、702が形成されている。複数の透孔701は、ステータ7における第1導入室13に臨む部分に周方向に等間隔で配設されている。複数の透孔702は、ステータ7における第2導入室14に臨む部分に周方向に等間隔で配設されている。よって、
図3が示すように、翼室8は、透孔701を介して第1導入室13と連通しており、透孔702を介して第2導入室14と連通している。
【0054】
図1及び
図3が示すように、圧力センサ83は、前壁部2に取り付けられている。圧力 センサ83は、第1導入室13の内部の圧力に応じた信号を制御部へ出力する。
【0055】
図1が示すように、排出管84は、混合室81の下部にバルブ85を介して接続されている。排出管84は、スラリー取出口へ通じている。バルブ85は、生成したスラリーFを取り出すときに開けられる。なお、排出管84が接続される位置は、混合室81に限らず、例えばスラリー再供給管32に接続されてもよい。
【0056】
[再循環機構部70]
図1に示される再循環機構部70は、円筒状容器71内において比重によって溶解液を分離するものである。詳細には、再循環機構部70は、分散混合ポンプ80の吐出部12から吐出管18を介して供給されるスラリーFのうち、完全に分散、混合していない粉体Pを含む可能性がある状態の未分散スラリーFrを、粉体Pが略完全に分散、混合した状態のスラリーFから分離する。未分散スラリーFrは、循環流路16に送られる。スラリーFは、スラリーFに含まれる気泡と共に、循環部50の回収管51に送られる。吐出管18及び循環流路16は、夫々、円筒状容器71の下部に接続されている。回収管51は、円筒状容器71の上部に接続されている。
【0057】
[循環部50]
図1及び
図2が示すように、循環部50は、回収管51と、吸気管52と、ポンプ53と、ガス再供給管54と、温度センサ55と、バルブ56と、吐出管18と、円筒状容器71と、を備える。ここで、以降の説明においてはスラリーF及び反応ガスの余剰分を混合室81から貯留タンク31へと回収する吐出管18及び回収管51を合わせて第1管とも称する。また、反応ガスの余剰分を貯留タンク31から混合室81へと再供給する吸気管52及びガス再供給管54を合わせて第2管とも称する。また、第2管のうち、吸気管52を第1部分、ガス再供給管54を第2部分とも称する。
【0058】
回収管51は、円筒状容器71と貯留タンク31とを接続している。回収管51の一端は、円筒状容器71の上部に接続されている。回収管51の他端は、貯留タンク31の回収ポート312に接続されている。
【0059】
回収管51に、温度センサ55が配置されている。温度センサTIは、回収管51の内部を流れるスラリーFの温度に応じた信号を制御部へ出力する。
【0060】
吸気管52は、貯留タンク31とポンプ53とを接続している。吸気管52の一端は、貯留タンク31の気体ポート313に接続されている。吸気管52の他端は、ポンプ53の吸入ポート531に接続されている。
【0061】
ポンプ53は、混合室81から吐出部12、吐出管18、円筒状容器71、回収管51、貯留タンク31、及び吸気管52を介して、反応ガスGを吸引する。
【0062】
また、ポンプ53は、吸引した反応ガスGを、ガス再供給管54を介して(詳細には、ガス再供給管54、接続位置P3及び接続位置P2の間の気体供給管42、接続位置P2及び接続位置P1の間のスラリー再供給管32、及び第1供給部11を介して混合室81へ送る。接続位置P3は、気体供給管42におけるバルブ43と接続位置P2との間の位置である。
【0063】
本実施形態において、ポンプ53は、真空ポンプである。真空ポンプの構成は公知であるため、ここでは詳細な説明は省略される。真空ポンプは、気体を引っ張る力が強いため、本実施形態に用いるポンプとして好適である。なお、ポンプ53は、真空ポンプに限らず、例えばダイヤフラムポンプなどの他種の公知のポンプが採用されてもよい。
【0064】
ポンプ53は、吸入ポート531と吐出ポート532とを備えている。吸入ポート531には、上述したように吸気管52が接続される。吐出ポート532には、ガス再供給管54が接続される。
【0065】
ガス再供給管54は、ポンプ53と気体供給管42とを接続している。ガス再供給管54の一端は、上述したように、ポンプ53の吐出ポート532に接続されている。ガス再供給管54の他端は、接続位置P3において気体供給管42に接続されている。
【0066】
ガス再供給管54に、バルブ56が配置されている。バルブ56は、管路開閉弁の一例である。バルブ56は、ガス再供給管54を開閉するものである。バルブ56が開かれた状態において、ポンプ53と混合室81とは、ガス再供給管54、接続位置P3及び接続位置P2の間の気体供給管42、接続位置P2及び接続位置P1の間のスラリー再供給管32、及び第1供給部11を介して連通されている。このとき、ポンプ53によって吸引された反応ガスGは、混合室81へ移動可能である。バルブ56が閉じられた状態において、ポンプ53と混合室81との連通は、バルブ56によって遮断されている。このとき、ポンプ53によって吸引された反応ガスGは、混合室81へ移動不可能である。
【0067】
なお、本実施形態において、バルブ56はガス再供給管54に設けられているが、バルブ56は、吸気管52またはガス再供給管54の少なくとも一つに設けられていればよい。また、バルブ56が設けられていなくてもよい。
【0068】
[スラリー製造装置100によるスラリーの製造方法]
以下、スラリー製造装置100によるスラリーの製造方法が、
図1及び
図3を参照しつつ説明される。なお、他の図が適宜参照される。
【0069】
以下の説明では、アルカリ金属複合酸化物を含む水系溶媒を用いた非水電解質二次電池の正極用スラリーの製造方法が説明される。
【0070】
まず、バルブ23を閉止して粉体供給管22を介する粉体Pの吸引を停止した状態で、ポンプ34が作動されながら混合ロータ5が回転駆動され、分散混合ポンプ80の運転が開始される。
【0071】
ポンプ34の作動により、貯留タンク31から混合室81へ溶媒Rが供給される。つまり、このとき、溶媒Rのみが第1供給部11を介して混合室81へ供給される。
【0072】
混合ロータ5が回転駆動されると、撹拌羽根25(
図6(C)参照)及び回転翼6が混合ロータ5と一体的に回転する。
【0073】
回転翼6が回転することにより、混合室81内の溶媒Rが吐出部12から吐出される。吐出された溶媒Rは、吐出管18を介して再循環機構部70に供給され、再循環機構部70から循環流路16を通して第2供給部17へ流れる。そして、第2供給部17の絞り部171を介して混合室81に溶媒Rが導入される。ここで、絞り部171の流路面積は、吐出部12の流路面積よりも小さい。そのため、混合室81が減圧されて、負圧状態となる。混合室81を減圧するもの、つまり混合ロータ5、吐出部12、絞り部171、及び回転翼6は、減圧部の一例である。
【0074】
混合室81が負圧状態となると、バルブ23が開放される。これにより、ホッパ21に貯留された粉体Pが、混合室81の負圧吸引力により、ホッパ21の下部開口部212から混合室81へ供給される。粉体Pと溶媒Rとは、第1供給部11において予備混合され、その予備混合物Fpが環状溝10に導入される。
【0075】
以上説明した、溶媒R及び粉体Pが混合室81に供給される工程が、材料供給工程の一例である。
【0076】
混合ロータ5が回転駆動されると、仕切板15が混合ロータ5と一体的に回転し、掻出翼9が周回する。このとき、掻出翼9の先端部93が環状溝10に嵌め込まれた状態である。これにより、環状溝10に導入された予備混合物Fpは、掻出翼9の先端部93により掻き出される。掻き出された予備混合物Fpは、第1導入室13内を混合ロータ5の回転方向に流動し、透孔701を通過して翼室8に流入する。
【0077】
環状溝10に導入された予備混合物Fpは、掻出翼9によって掻き出されるときに、剪断作用を受ける。ここで、混合室81が負圧状態であるため、混合室81の内外において圧力差が生じている。よって、このとき、回転翼6の後面61(
図5参照)の後側の空間に位置する予備混合物Fpには、キャビテーション(局所沸騰)が発生する。
【0078】
つまり、第1導入室13において、予備混合物Fpに剪断力を作用させるとともに、キャビテーション(局所沸騰)を発生させることができる。そのため、掻き出される予備混合物Fpは、掻出翼9及び透孔701から剪断作用を受けて混合されるとともに、キャビテーション(局所沸騰)によって溶媒Rに対する粉体Pの分散がより良好に行われることとなる。よって、このような予備混合物Fpを翼室8に供給することができるため、翼室8内において溶媒Rに対する粉体Pの良好な分散を期待することができる。これにより、粉体P及び溶媒Rが混合されてスラリーFが生成される。
【0079】
なお、本実施形態ではキャビテーションを生じさせたが、粉体Pの分散が好適に行われるのであれば、必ずしもキャビテーションを生じさせなくとも良い。
【0080】
翼室8に流入した予備混合物Fpは、混合ロータ5の回転方向に流動して、スラリーFとして吐出部12から吐出される。吐出部12から吐出されたスラリーFは、吐出管18を通して再循環機構部70に供給され、再循環機構部70において、未分散スラリーFrがスラリーFから分離されるとともに、溶媒Rの気泡が分離される。未分散スラリーFrは、循環流路16を介して、再び第2供給部17に供給され、スラリーF及び気泡は回収管51を通して貯留タンク31に移動する。
【0081】
未分散スラリーFrは、第2供給部17の絞り部171を介して流量が制限された状態で第2導入室14内に導入される。第2導入室14内において、未分散スラリーFrは、回転する複数の撹拌羽根25(
図6(C)参照)により剪断作用を受けて、さらに細かく解砕される。さらに、未分散スラリーFrは、透孔702の通過の際にも剪断作用を受けて解砕される。未分散スラリーFrは、透孔702を介して流量が制限された状態で翼室8に導入される。そして、翼室8において、高速で回転する回転翼6による剪断作用とキャビテーションを受けて解砕され、粉体Pの凝集物(ダマ)がさらに少なくなったスラリーFが第1導入室13からのスラリーFと混合されて吐出部12から吐出される。
【0082】
ホッパ21から所定量の粉体Pの供給が終わると、バルブ23が閉止され、混合室81への粉体Pの供給が停止される。
【0083】
この状態で分散混合ポンプ80の運転が所定時間継続される。このとき、貯留タンク31から混合室81へは、溶媒Rと置き換わったスラリーFが供給される。
【0084】
粉体Pの非供給時においては、第1供給部11から空気が吸引されることがないため、混合室81の真空度が高まる。この状態で回転翼6を回転することで、少なくとも翼室8内の領域を溶媒Rの微細気泡(マイクロバブル)が多数発生した微細気泡領域とすることができる。これにより、翼室8内の全周に亘って、粉体Pの凝集物(いわゆるダマ)に浸透した溶媒Rが発泡することで当該凝集物の解砕が促進され、さらに、その発生した微細気泡が翼室8において加圧され消滅する際或いは気泡の直径が小さくなる際の衝撃力によりさらに粉体Pの分散が促進されることになる。その結果、翼室8内の全周に存在するスラリーFのほぼ全体に亘って、より確実に、溶媒R中での粉体Pの分散が良好な高品質のスラリーFを生成することができる。
【0085】
以上説明した、混合ロータ5を駆動させて溶媒R及び粉体Pを混合する工程が、混合工程の一例である。
【0086】
分散混合ポンプ80の運転を継続しながら、混合工程において生成されたスラリーFに対して反応ガスGを供給する供給工程が実行される。
【0087】
供給工程では、分散混合ポンプ80の運転が所定時間継続された後、バルブ43が開放される。これにより、ボンベ41に貯留された反応ガスGが、混合室81の負圧吸引力により、混合室81へ供給される。
【0088】
なお、本実施形態において、反応ガスGを混合室81供給するタイミングは、分散混合ポンプ80の運転が所定時間継続された後、つまり混合工程の後であるが、このタイミングに限らない。例えば、反応ガスGを混合室81供給するタイミングは、材料供給工程以前のタイミングであってもよいし、材料供給工程より後且つ混合工程以前のタイミングであってもよい。この場合、予め溶媒Rの水の成分を酸性化させることで、スラリー中に含まれる水酸化リチウムと水との接触による急激なアルカリ化を抑制することができる。このため、pH値が11を超える強アルカリ性のスラリーが生成されるのを抑制できるため、塗工時のアルミニウム集電体の腐食を抑制できる。
【0089】
反応ガスGが混合室81に供給されることによって、混合室81を流動するスラリーFに反応ガスGが供給される。これにより、スラリーFに反応ガスGが溶解される。その結果、スラリーF中のアルカリ成分が中和される。
【0090】
ここで、上述したように、回転翼6の後面61の後側の空間に位置するスラリーFには、キャビテーション(局所沸騰)が発生する。これらの空間では、スラリーFに対して、キャビテーション(局所沸騰)を発生させつつ、中和処理が実行される。キャビテーション(局所沸騰)によって反応ガスGの気泡が膨張収縮を繰り返し、溶媒RあるいはスラリーFとの接触面積が増大することにより中和を迅速に進行させることができ、スラリーF中のアルカリ成分をより短時間で中和することが可能となる。
【0091】
供給工程を経ることによって、溶媒R中での粉体Pの分散が良好であることに加えて、アルカリ成分が中和された更に高品質のスラリーFを生成することができる。
【0092】
供給工程が実行されながら、以下に詳述する循環工程が実行される。
【0093】
循環工程では、ポンプ53が駆動される。これにより、混合室81に供給された反応ガスGの余剰分が、吐出管18、再循環機構部70、回収管51、貯留タンク31、及び吸気管52を介してポンプ53へ吸引されることによって回収される。
【0094】
ここで、反応ガスGの余剰分は、供給工程において混合室81に供給された反応ガスGのうち、スラリーFに溶解しなかったもの、及びスラリーFに溶解したがその後にスラリーFから脱気したものである。なお、反応ガスGは、分散混合ポンプ80の運転を行って混合室81内のスラリーFにキャビテーション(局所沸騰)を生じさせることによって、スラリーFから脱気される。
【0095】
また、ポンプ53が駆動されることによって、吸引された反応ガスGは、ガス再供給管54、接続位置P3及び接続位置P2の間の気体供給管42、接続位置P2及び接続位置P1の間のスラリー再供給管32、及び第1供給部11を介して混合室81へ再供給される。
【0096】
なお、バルブ56を開閉させることによって、混合室81への反応ガスGの再供給の有無を切り替えることができる。これにより、反応ガスGの過剰な再供給を防止することができる。
【0097】
混合室81へ再供給された反応ガスGの少なくとも一部は、スラリーFに溶解され、スラリーF中のアルカリ成分が中和される。
【0098】
なお、本実施形態において、循環工程は、供給工程が実行されながら実行された。つまり、ボンベ41からの反応ガスGの混合室81への供給が実行されつつ、ポンプ53による余剰分の反応ガスGの混合室81への再供給が実行された。しかし、循環工程は、供給工程の実行後に実行されてもよい。つまり、所定量の反応ガスGがボンベ41から混合室81へ供給されると、バルブ43を閉じて当該供給を停止し、その後にポンプ53による余剰分の反応ガスGの混合室81への再供給が実行開始されてもよい。また、供給工程が実行されながら循環工程が実行される場合に、供給工程のみ先に終了しても、循環工程は継続して実行されてもよい。
【0099】
気体供給部40によって混合室81に供給された反応ガスGの余剰分は、循環部50によって回収されて混合室81に再供給される。これにより、気体供給部40が混合室81に供給すべき反応ガスGの少なくとも一部を、循環部50から再供給される反応ガスGで代用することできる。その結果、気体供給部40が混合室81に供給する反応ガスGの量を減らすことができる。また、これにより、外部へ放出される反応ガスGの量を減らすことができるため、環境負荷を低くすることができる。
【0100】
なお、生成された高品質のスラリーFは、スラリーFの排出管84を介して、後続の工程に供給される。
[変形例]
【0101】
上記実施形態では、キャビテーション(局所沸騰)を発生させて粉体Pと溶媒Rを混合する例が説明された。しかし、キャビテーション(局所沸騰)を発生させずに混合ロータ5の回転による撹拌のみによって粉体Pと溶媒Rを混合してもよい。
【0102】
上記実施形態では、混合室81が減圧された状態で、粉体Pと溶媒Rを混合する例が説明された。しかし、混合室81を減圧させずに(例えば混合室81を大気圧に維持して)、粉体Pと溶媒Rを混合してもよい。
【0103】
上記実施形態では、反応ガスGは、混合室81の第1導入室13に供給されていたが、混合室81の第1導入室13以外(第2導入室14や翼室8)に供給されてもよい。
【0104】
粉体Pがポンプ53へ誤って到達することを防止するためのフィルタを、吸気管52、気体ポート313、及び吸入ポート531等に設けてもよい。フィルタは、例えば液体や固体の通過を制限し、且つ、気体の通過を許容する半透膜である。
【0105】
上記実施形態では、スラリー製造装置100は、
図1に示されるような構成であった。
図1に示されるスラリー製造装置100は外部循環用のものであり、貯留タンク31に貯留された溶媒RやスラリーFがスラリー再供給管32を介して分散混合ポンプ80の第1供給部11に供給されるものであった。しかし、スラリー製造装置100は、
図1に示されるような構成に限らない。例えば、スラリー製造装置100は、
図7に示されるような 内部循環用のものであってもよい。
図7に示されるスラリー製造装置100では、貯留タンク31に貯留された溶媒RやスラリーFは、供給管36を介して分散混合ポンプ80の第2供給部17に供給される。
【0106】
上記実施形態では、スラリーFは、アルカリ金属複合酸化物を含む水系溶媒を用いた非水電解質二次電池の正極用スラリーであった。そして、粉体Pは非水電解質二次電池用電極の製造に用いられる所定のスラリー材料であり、溶媒Rは水であり、反応ガスGは炭酸ガスであった。しかし、スラリーFは、固体と液体とを混合することで生成されるものであればよく、上記のような正極用スラリーに限らない。また、粉体P(固体)、溶媒R(液体)、反応ガスG(気体)は、前述した物質に限らない。
【0107】
<第2の実施形態>
図8には、本発明の第2の実施形態に係るスラリー製造装置101を示す。
図8に示す第2の実施形態としては、第1の実施形態の構成に加えて、第1圧力計57と第2圧力計58と制御部59を備え、制御部59は、第1圧力計57と第2圧力計58の値に基づいて、ポンプ53を制御することを特徴とするものである。なお、第1の実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0108】
第1圧力計57は、回収管51に設けられ、回収管51内の圧力を測定するものである。第2圧力計58は、貯留タンク31に設けられ、貯留タンク31内の圧力を測定するものである。第1圧力計57及び第2圧力計58は、圧力を測定できればその種類や材質等は問わない。
【0109】
第1の実施形態の供給工程では、気体供給部40から反応ガスGをスラリーFに供給するが、反応ガスGの導入中あるいは導入停止中に、スラリーFに溶解されなかった反応ガスGが貯留タンク31に溜まることで、貯留タンク31内の圧力が上昇する。そして、貯留タンク31の圧力が回収管51内の圧力よりも高くなると、回収管51をスラリーが流れなくなる場合がある。
そこで、第2の実施形態に係るスラリー製造装置101では、回収管51内の圧力及び貯留タンク31の圧力を、それぞれ第1圧力計57及び第2圧力計58を用いて測定することにより、スラリーFの流れる状態を検知することができる。そして、貯留タンク31内の圧力が回収管51内の圧力よりも高くなった場合には、ポンプ53を駆動させることにより、貯留タンク31内の未反応ガスを、ガス再供給管54を通じて混合室81へ循環させる。これにより、貯留タンク31内の圧力が低下し、回収管51にスラリーを流すことができる。
【0110】
なお、第1圧力計57は、貯留タンク31の手前の圧力を測定できればよく、例えば、円筒状容器71に設置してもよい。また、第2圧力計58は、貯留タンク31以降の圧力を測定できればよく、例えば、吸気管52に設置してもよい。
【0111】
制御部59とは、第1圧力計57と第2圧力計58及びポンプ53と電気的に接続されることで、第1圧力計57と第2圧力計58による測定結果に基づいてポンプ53を制御するものであり、例えば、コンピュータなどが挙げられる。なお、制御部59はコンピュータに限らず他の方法により制御するものであってもよい。例えば、監視員などによる人力での制御などが考えられる。
【0112】
制御部59により制御を行うことで、より正確かつ迅速に、回収管51内及び貯留タンク31内の圧力を制御し、効率よく回収管51にスラリーを流すことができる。
【0113】
<第3の実施形態>
図9には、本発明の第3の実施形態に係るスラリー製造装置102を示す。
図9に示す第3の実施形態としては、第2の実施形態の構成に加えて、ガス回収タンク60及び逆止弁601を備えることを特徴とするものである。なお、第2の実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0114】
ガス回収タンク60は、回収管51内の反応ガスGの余剰分を回収するものであり、ガス再供給管54に設置される。また、ガス回収タンク60は、回収管51内の反応ガスGの余剰分を回収できればどこに設置されていてもよく、例えば、回収管51や吸気管52に設置してもよい。なお、ガス回収タンク60はガスを回収し適宜出し入れすることのできる弁を有していれば、その種類や材質、大きさ等は問わない。
【0115】
逆止弁601は、逆止弁601によりガス回収タンク60に回収された未反応ガスが、貯留タンク31に逆流することを防止するための逆流防止手段であり、ガス回収タンク60に回収された未反応ガスの逆流を防ぐことができれば種類や材質等は問わない。逆止弁の具体例としては、例えば、ボール式逆止弁やノーバル式逆止弁等がある。
また、逆止弁601は、ガス回収タンク60に回収された未反応ガスが、貯留タンク53に逆流することを防止することができればどこに設置されていてもよく、例えば、ガス回収タンク60とガス再供給管54との連結部や、ガス再供給管54の貯留タンク31側に設置することができる。
【0116】
なお、逆流防止手段は、逆流防止弁以外のものでもよい。例えば、ポンプ53を駆動し続けることにより逆流を防止する手段や、バルブを閉じてガス回収タンク60に貯留された未反応ガスの流出を停止することにより逆流を防止する手段としてもよい。
【0117】
第3の実施形態に係るスラリー製造装置102では、ポンプ53を駆動して貯留タンク31の圧力を低下した際に、貯留タンク31から排出された未反応ガスを回収タンク60で回収することができる。回収タンク60に回収された未反応ガスは、下流側に設置されたバルブ56を開閉することにより、必要に応じて分散混合ポンプ80に供給される。なお、分散混合ポンプ80を駆動することにより、スラリー再供給管32の接続位置P2及び接続位置P1の間は負圧状態となるため、バルブ56を開弁すると、自然と回収タンク60から分散混合ポンプ80へ未反応ガスが供給される。
これにより、第3の実施形態に係るスラリー製造装置102では、回収タンク60で回収された未反応ガスを再度スラリー製造に用いることができるため、スラリー製造装置から放出される反応ガスGの量を低減するという効果だけでなく、気体供給部40からスラリー製造装置内へ供給する反応ガスGの供給量を減らすことができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0118】
1…ケーシング、2…前壁部、3…後壁部、4…外周壁部、5…混合ロータ(減圧部)、6…回転翼(減圧部)、7…ステータ、8…翼室、9…掻出翼、10…環状溝、11…第1供給部、12…吐出部(減圧部)、13…第1導入室、14…第2導入室、15…仕切板、16…循環流路、17…第2供給部、18…吐出管(第1管)、19…駆動軸、20…粉体供給部、21…ホッパ、22…粉体供給管、23…バルブ、24…間隔保持部材、25…撹拌羽根、30…溶媒供給部、31…貯留タンク(貯留部)、32…スラリー再供給管、33…モータ、34…ポンプ、35…流量センサ、36…供給管、40…気体供給部(供給部)、41…ボンベ、42…気体供給管、43…バルブ、50…循環部、51…回収管(第1管)、52…吸気管(第2管、第1部分)、53…ポンプ、54…ガス再供給管(第2管、第2部分)、55…温度センサ、56…バルブ(管路開閉弁)、57…第1圧力計、58…第2圧力計、59…制御部、60…ガス回収タンク、61…後面、70…再循環機構部、71…円筒状容器、80…分散混合ポンプ(混合部)、81…混合室、82…ポンプ駆動モータ、83…圧力センサ、84…排出管、85…バルブ、92…基端部、93…先端部、100,101,102…スラリー製造装置、151…筒状摺接部、152…漏斗状部、153…環状平板部、171…絞り部(減圧部)、211…上部開口部、212…下部開口部、231…エアシリンダ、232…シャッタ、311…溶媒供給ポート、312…回収ポート、313…気体ポート、314…撹拌機構、501…取付部、531…吸入ポート、532…吐出ポート、601…逆止弁、701,702…透孔、F…スラリー、Fp…予備混合物、Fr…未分散スラリー、G…反応ガス、P…粉体、R…溶媒