IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディディピー スペシャリティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス インコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】車両窓を設置するために有用な接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20231109BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20231109BHJP
   B60J 1/10 20060101ALI20231109BHJP
   B60J 1/18 20060101ALI20231109BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20231109BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231109BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231109BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C08G18/42 044
B60J1/02 101N
B60J1/10 A
B60J1/18 G
C08G18/10
C08G18/48
C09J11/04
C09J11/06
C09J175/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020540636
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2018064853
(87)【国際公開番号】W WO2019152096
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】62/625,516
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マルヴァダカル、ニランジャン
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア、ダニエル、ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ドネート、フィリップ、エー.
(72)【発明者】
【氏名】チュー、フイド、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ、マシュー、ティ.
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-255712(JP,A)
【文献】特開2017-149899(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106433096(CN,A)
【文献】特開2003-301102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00- 18/87
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00-201/10
B60J 1/02
B60J 1/10
B60J 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種以上のイソシアネート官能性構成要素;b)ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート;c)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種以上の触媒;及びd)一種以上のカーボンブラックを含み、
前記1種以上のイソシアネート官能性構成要素が、ジオールとトリオールとの混合物をポリイソシアネートと反応させて調製された、組成物。
【請求項2】
a)前記1種以上のイソシアネート官能性構成要素が、約20~約60重量パーセントの量で存在し;b)ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートが、約5~約40重量パーセントの量で存在し;c)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種以上の触媒が、約0.005~約2重量パーセントの量で存在し、及びd)1種以上のカーボンブラックが、約10~約35重量部で存在し、百分率が前記組成物の重量を基準とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、23℃で固体である1種以上のイソシアネート官能性ポリエステル系プレポリマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が約3以上の名目官能価を有する1種以上のポリイソシアネートを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
2種以上の基材を一緒に、前記基材が接触しているエリアの少なくとも一部に沿って配置された請求項1に記載の組成物と接触させる工程を含む、前記2種以上の基材の接合方法。
【請求項6】
前記基材の少なくとも1つが窓ガラスである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
他の基材の少なくとも1つが建物又は車両である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が車両である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
車両の窓の交換方法であって、i)前記窓を前記車両から取り外す工程と、ii)請求項1に記載の組成物を、交換窓に又は前記窓を前記車両へ保持するように適合させられた前記車両のフランジに塗布する工程と、iii)前記車両の前記フランジ及び前記交換窓を、前記交換窓と前記車両の前記フランジとの間に配置された前記組成物と接触させる工程と、iv)接着剤を硬化させる工程とを含む、方法。
【請求項10】
前記車両が前記車両への前記窓の設置から60分後に安全に運転することができる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤として有用な組成物及び本組成物を使用する2種以上の基材の接合方法であって、そのような基材として、建物及び車両に使用するためのガラス、プラスチック、複合材料、被覆金属が挙げられる組成物及び方法に関する。本組成物は、車両における窓を交換するために利用することができる。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物は、ガラス(窓)を建物及び車両へ接合するために使用され、全て参照により本明細書に援用される、Rizkの米国特許第4,780,520号明細書;Bhatの米国特許第5,976,305号明細書;Hsiehらの米国特許第6,015,475号明細書及びZhouの米国特許第6,709,539号明細書を参照されたい。自動車工場において、窓は、様々な高性能接着剤、例えば非導電性接着剤及び高弾性率接着剤の使用を容易にする、ロボット及びコンピューター制御処理を用いて設置される。新車両は窓設置後の数日間かなりの距離を運転されないので、硬化の速度は重大な問題ではない。車両が窓交換を必要とする場合、それは、多くの場合、修理される車両で作業する設置業者によって、遠く離れた場所で行われる。この環境では、車両所有者が窓の設置後できるだけすぐに車両を運転したいと切望するので、硬化の速度は重要である。速いドライブアウェイ時間を容易にする車両用窓の交換に有用な接着剤は公知であり、Bhatの米国特許第5,976,305号明細書及びZhouの米国特許第6,709,539号明細書を参照されたい。自動車工場において窓を設置するために使用される様々な高性能接着剤組成物の導入は、交換窓設置業者に問題を提起する。第一に、様々な性能要件を全て満たす接着剤は、商業界で入手できない。第二に、垂れない又は糸を曳かない多くの高性能接着剤組成物を配合して速いドライブアウェイ時間を可能にすることは困難である。垂れは、多くの場合重力の結果としての、接着剤ビーズの形状の喪失である。十分に深刻な場合、この変形は、車両への窓の適切な設置及びシーリングを妨げ得る。接着剤の糸曳きは、計量分配後のビーズの端での接着剤の長い糸の形成であり、それは、塗布を複雑にし、且つ、設置された接着剤ビーズに欠陥を生じさせ得る。交換窓設置業者は、多くの場合、使用された元の接着剤の特性に接着剤をマッチさせるために様々な接着剤を持っている。
【0003】
イソシアネート官能性接着剤は、ガラスを構造物へ接合するために利用され、これらの接着剤のレオロジー及び計量分配性を調節するために可塑剤を含有する。典型的には、イソシアネート官能性接着剤に使用される可塑剤は、それらのコスト及び入手可能性のためにポリ塩化ビニルプラスチゾル組成物に使用するために開発された可塑剤から当初は採用された。イソシアネート官能性接着剤に使用される可塑剤の1つの共通クラスは、アルキルフタレート(alkyl phathates)である。そのような化合物は、今まで、入手可能であったし、コスト効率が高かった。しかしながら、最近、コスト及び入手可能性にマイナスの影響を与えるEH&S(環境衛生安全)懸念がこれらの物質に関して提起されている。イソシアネート官能性接着剤用の新しい可塑剤を見いだすことが必要とされている。
【0004】
自動車ペイント技術は、過去数十年にわたって進化してきた。最新のペイントは、それらの酸エッチ耐性及び引っ掻き抵抗性を改善するために低表面エネルギーの、疎水性材料(例えば、シロキサン、アクリルポリオール系ポリウレタン)から構成されるトップコートを有する。そのようなペイントは、非常に硬質であり、表面上に極性基をほとんどから全く持たず、それは、接着を極めて困難にする。それ故、伝統的なウレタンゴム弾性接着剤は、これらの低表面エネルギーペイントに十分に接合することができない。自動車接着剤に関する別の態様は、接着剤が加水分解条件(例えば、高温及び高湿度)下で接合強度を維持すべきであることである。クリアコートとウレタン接着剤との間に形成された接着接合は、高温及び高湿度条件に曝された場合に急速に破損する傾向がある。これらの条件に耐えるのに十分に耐久性のある接着剤が必要とされている。そのような接着剤は、低い温度条件下で硬化し、低エネルギーペイント表面に接合できることが望ましい。伝統的な接着剤では、これは、硬化を加速するための追加の触媒を含めることによって達成される。しかしながら、そのようなアプローチは、不十分な貯蔵安定性並びに硬化接着剤の不十分な加水分解安定性をもたらし得る。
【0005】
必要とされるものは、ガラスを構造物へ接合するための接着剤として有用であり、配合して様々な高性能特性(高い弾性率及び非導電性などの)を示し得、様々な条件下で塗布された場合に速い安全ドライブアウェイ時間、速い強度成長を示し、接着剤を加熱する必要性なしに塗布することができ、広範囲の環境条件下で塗布することができ、高価な原料を必要とせず、プライマーの必要性なしにガラスに塗布することができ、且つ、塗布されるときに垂れない又は糸を曳かない組成物である。低表面エネルギーの、疎水性材料(例えば、シロキサン、アクリルポリオール系ポリウレタン)コーティングにプライマーなしの方法で接合することができる組成物が必要とされている。約23℃よりも下の、低温条件下で、そのような表面に接合することができる組成物が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
a)1種以上のイソシアネート官能性構成要素;b)1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート;及びc)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種以上の触媒を含む組成物が開示される。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、式
【化1】
(式中:R及びRは、独立して、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジルであり;Rは、独立して、水素、メチル又はエチルのどれかであり;Rは、0~5個の炭素原子を含有する炭素鎖であり、二重結合を含有してもよく;nは、独立して、1~4である)
に相当し得る。R及びRは、独立して、C~Cアルキル基であり得る。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、ビス-ジプロピレングリコールn-プロピルエーテルアジペート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルマロネート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルスクシネート、及びビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルマレエートの1種以上の1種以上を含み得る。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートを含み得る。本組成物は、1種以上のカーボンブラックを更に含み得る。1種以上のカーボンブラックは、1種以上の導電性カーボンブラック及び/又は1種以上の非導電性カーボンブラックを含み得る。導電性カーボンブラックが存在する場合、それらは、形成された組成物が非導電性であるように約18重量パーセント以下の量で存在することが望ましいかもしれない。
【0007】
本組成物は、a)約20~約60重量パーセントの量で存在する1種以上のイソシアネート官能性構成要素;b)約5~約40重量パーセントの量で存在する1種以上のアルコキシアルキルベンゾエート;c)約0.005~約2重量パーセントの量で存在するイソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種以上の触媒及びd)約10~約35重量部の量で存在する1種以上のカーボンブラックを含み得;ここで、百分率は組成物の重量を基準とする。本組成物は、23℃で固体である1種以上のイソシアネート官能性ポリエステル系プレポリマーを更に含み得る。本組成物は、約3以上の名目官能価を有する1種以上のポリイソシアネートを更に含み得る。
【0008】
2種以上の基材を一緒に、基材が接触しているエリアの少なくとも一部に沿って配置された本明細書に開示される組成物と接触させる工程を含む2種以上の基材の接合方法が開示される。基材の少なくとも1つは、窓ガラスであり得る。他の基材の1つは、建物又は車両であり得る。
【0009】
車両の窓の交換方法であって、i)窓を車両から取り外す工程と、ii)開示される組成物を、交換窓に又は窓を車両へ保持するように適合させられた車両のフランジに塗布する工程と、iii)車両のフランジ及び交換窓を、車両の交換窓とフランジとの間に配置された組成物と接触させる工程と、iv)接着剤を硬化させる工程とを含む方法が開示される。
【0010】
本組成物は、基材を接合するための接着剤として有用である。似ているか又は似ていない、様々な基材、例えば、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、金属、耐摩耗性コーティングをその上に配置されたプラスチックなどの、被覆基材等が、本組成物を使用して接合され得る。本組成物は、ガラス又は耐摩耗性コーティングをその上に配置されたプラスチックを、車両及び建物などの他の基材に接合するためにとりわけ有用である。本組成物は、車両モジュール構成部品などの、モジュール構成部品の部分を接合するのにも有用である。ガラス又は耐摩耗性コーティングをその上に配置されたプラスチックは、車両の被覆及び非被覆部分に接合することができる。
【0011】
本組成物は、2週間硬化した後に、25℃で測定されるASTM D4065に従って約2.0MPa以上、好ましくは約2.5MPa以上、及び典型的には約5.0MPa以下の弾性率を典型的には実証する。本発明の組成物は、完全に、例えば25℃/50パーセント相対湿度で7日間硬化した後に、約1×10MPa以上、好ましくは約1.3×10MPa以上、最も好ましくは約1.8×10MPa以上の貯蔵弾性率、G’を典型的には実証する。
【0012】
本組成物のポンプ送液性は、本明細書に記載される試験に従ってプレスフロー粘度を測定することによって表され得、好ましくは約25~約100秒、最も好ましくは約25~約50秒のプレスフロー粘度を示す。本組成物は、低下した充填材レベル及び非硬化状態で許容できる弾性率(G-弾性率)の接着剤の調製を可能にする、すなわち、本組成物は、低下した充填材レベルで弾性率を維持する。本組成物は、低表面エネルギーの、疎水性コーティング(例えば、シロキサン、アクリルポリオール系ポリウレタン)によく接合する。本組成物は、低温条件下で、低表面エネルギーの、疎水性コーティング(例えば、シロキサン、アクリルポリオール系ポリウレタン)によく接合する。
【0013】
開示される組成物は、伝統的な可塑剤(例えば、ジイソノニルフタレート、大豆メチルエステル、トリメチルペンタニルジイソブチレート)を含有する接着剤と比較して低表面エネルギーペイントへの改善された室温接着性を示す。開示される組成物は、伝統的な可塑剤(例えば、ジイソノニルフタレート、大豆メチルエステル、トリメチルペンタニルジイソブチレート)を含有する接着剤と比較して低表面エネルギーペイントへの改善された低温接着性を示す。開示される組成物は、伝統的な可塑剤(例えば、ジイソノニルフタレート、大豆メチルエステル、トリメチルペンタニルジイソブチレートを含有する接着剤と比較して、改善された加水分解安定性を示し、且つ、高温及び高湿度条件下で低表面エネルギーペイントへの接着性を維持する。本組成物は、水分から防護されるパッケージングでの安定性である、優れた貯蔵性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1つ以上は、本明細書で用いるところでは、列挙された構成要素のうちの、少なくとも1つ、又は2つ以上が開示された通りに使用され得ることを意味する。官能価に関して用いられるような名目は、使用される原料の化学量論から計算することができる、理論的官能価を意味する。一般に、実際の官能価は、原材料における不完全さ、反応剤の不完全な転化及び副生成物の形成のために異なる。本明細書における「耐久性」は、組成物が、一旦硬化すると、その設計された機能を行うのに十分に強いままであることを意味し、硬化組成物が接着剤である実施形態において、接着剤は、硬化組成物を含有する構造物の寿命又は寿命のほとんどの間、基材を一緒に保持する。この耐久性の指標として、硬化性組成物(例えば接着剤)は、本明細書に記載されるような加速老化試験中に優れた結果を好ましくは示す。好ましくは、これは、本発明の接着剤で接合された一連の基材が熱老化に曝された後に、クイックナイフ(Quick Knife)接着試験又はラップ剪断(Lap Shear)試験における破壊モードが凝集的であることを意味し、接着剤の基材への接合が壊れる前に接着剤が壊れることを意味する。「イソシアネート含有量」は、プレポリマーの総重量を基準とするイソシアネート部分の重量百分率を意味する。用語「イソシアネート反応性化合物」には、本明細書で用いるところでは、名目上少なくとも2個のイソシアネート反応性部分を有する任意の有機化合物が含まれる。この発明の目的のためには、イソシアネート反応性部分は、活性水素含有部分を含み、分子におけるその位置のために、Journal of the American Chemical Society,Vol.49,p.3181(1927)にWohlerによって記載されたZerewitinoff試験に従って顕著な活性を示す、水素原子を含有する部分を好ましくは言う。イソシアネート反応性部分には、-COOH、-OH、-NH、-NH-、-CONH、-SH、及び-CONH-が含まれる。好ましいイソシアネート反応性部分含有化合物としては、ポリオール、ポリアミン、ポリメルカプタン及びポリ酸、より好ましくはポリオール、最も好ましくはポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0015】
本組成物発明は、硬化性であるイソシアネート官能性構成要素を含有する任意の反応性システムであることができる。「反応性の」は、本明細書では、硬化性組成物(例えば、接着剤)が、一旦硬化すると不可逆的に硬化しているポリマーマトリックスを反応して形成する構成要素を含有することを意味する。硬化性システムは、1パート系か又は2パート系であることができる。好ましくは、硬化性システムは、接着剤として有用である。
【0016】
イソシアネート系(ポリウレタン又はポリ尿素形成)硬化性システムは、イソシアネート官能性構成要素を含む。イソシアネート官能性構成要素は、1分子当たり平均して2個以上のイソシアネート基を有する1種以上の化合物を含有する。イソシアネート官能性化合物は、平均して2個以上のイソシアネート部分を含有する任意の化合物であることができる。イソシアネート官能性化合物は、イソシアネート官能性プレポリマーの形態に、又は平均して1個超のイソシアネート基、好ましくは2個以上のイソシアネート基を有するモノマー若しくはオリゴマーの形態にあることができる。イソシアネートプレポリマーは、調製されるプレポリマーが1分子当たり平均して2個以上のイソシアネート部分(基)を有するような条件下で、イソシアネート官能性化合物と、ヒドロキシル、アミン、チオール、カルボキシル等などの、平均して2個以上のイソシアネート反応性官能基を有する1種以上の化合物との反応によって調製される任意のプレポリマーであることができる。好ましくは、イソシアネート反応基を有する化合物は、平均して約2~約4個のイソシアネート反応基を有する。イソシアネート官能性構成要素は、硬化条件に曝された場合に硬化構成要素を形成するのに十分な量で硬化性組成物中に存在する。2パート接着剤組成物において、イソシアネート官能性構成要素は、イソシアネート反応性化合物と組み合わせられた場合に、10年などの、長期間の間約-30℃~約100℃の温度に;及び30分までの短い期間約180℃の温度までに曝された場合に、基材が接合したままであるように基材を接合することができる。
【0017】
1パート系において、イソシアネート官能性構成要素は、本明細書で以下に記載されるような触媒及び他の構成要素を更に含む。1液形接着剤システムは、典型的には、水分硬化によって硬化する。配合されるとすぐに、1パート接着剤システムは、一般に、塗布前の硬化を防ぐために気密及び防湿容器中に入れられる。
【0018】
硬化性システムは、2パートのポリイソシアネート含有硬化性システムであり得る。2つのパートは、互いに反応性であり、接触した場合に硬化反応を受ける。組成物の1パートは、典型的には樹脂サイド又はAサイドと言われる、イソシアネート官能性構成要素を含む、又は含有する。組成物の他の構成要素は、硬化剤サイド又はBサイドとして一般に知られる、本明細書に記載されるようなイソシアネート部分と反応する平均して2個以上の基を有する1種以上の化合物、オリゴマー又はプレポリマーを含む、又は含有するイソシアネート反応性構成要素である。平均して1個以上のイソシアネート反応基を有する化合物は、プレポリマーであることができるか、又は当技術分野において公知の二官能性鎖延長剤若しくは多官能性架橋剤などの小鎖化合物であることができる。本明細書に記載されるような触媒は、硬化剤サイドに利用され得る。反応生成物は、ある種の基材を接合するなどの、所望の機能を果たすことができる硬化生成物である。
【0019】
イソシアネート官能性プレポリマーなどの、イソシアネート官能性構成要素は、接着性を組成物に提供するのに十分な量で存在する。そのようなイソシアネート官能性構成要素は、硬化時に架橋ポリウレタンの調製を可能にするのに十分な、及び硬化性組成物が不安定であるほどに高くはない平均イソシアネート官能価を有する。安定性は、これに関連して、イソシアネート官能性構成要素又はイソシアネート官能性構成要素から調製された接着剤が、その塗布又は使用を妨げる粘度の増加をそのような期間中に実証しないという点において、周囲温度で少なくとも6ヶ月の保存可能期間を有することを意味する。好ましくは、それは、定められた期間中に約50パーセント超の粘度の増加を受けない。イソシアネート官能性構成要素は、60分後にそれらから調製された接着剤で許容できる強度及び硬化性組成物の安定性を容易にする遊離イソシアネート含有量を好ましくは有する。イソシアネート官能性構成要素は、好ましくは30分後に、より好ましくは15分後に、それらから調製された組成物で許容できる強度を容易にする遊離イソシアネート含有量を好ましくは有する。一液形接着剤において、遊離イソシアネート含有量は、プレポリマーの重量を基準として約0.8重量パーセント以上、より好ましくは約0.9重量パーセント以上、及び好ましくは約2.2重量パーセント以下、より好ましくは約2.0以下、更により好ましくは約1.4重量パーセント以下、更により好ましくは約1.1重量パーセント以下、最も好ましくは約1.0重量パーセント以下である。2パート組成物において、イソシアネート官能性構成要素中のイソシアネート含有量は、イソシアネート官能性構成要素の重量を基準として、好ましくは約1重量パーセント以上、より好ましくは約2重量パーセント以上、更により好ましくは約6パーセント以上、更により好ましくは約8重量パーセント以上、最も好ましくは約10重量パーセント以上である。2パート組成物のイソシアネート官能性構成要素中のイソシアネート含有量は、イソシアネート官能性構成要素の重量を基準として、好ましくは約35重量パーセント以下、より好ましくは約25重量パーセント以下、更により好ましくは約20重量パーセント、最も好ましくは約15重量パーセント以下である。
【0020】
イソシアネート官能性構成要素を調製するのに使用するためのポリイソシアネートとしては、参照により本明細書に援用される米国特許第5,922,809号明細書に欄3、行32~欄4、行24で開示されたものが挙げられる。ポリイソシアネートは、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチル-キシレンジイソシアネートなどの、芳香族又は脂環式ポリイソシアネートであり得、最も好ましくはジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートである。ポリイソシアネートと反応させられるポリオールは、約2~約4個のヒドロキシル基を有する1種以上のポリオールを好ましくは含み、好ましくは、ジオールとトリオールとの混合物である。この発明に有用なポリオールは、参照により本明細書に援用される、米国特許第5,922,809号明細書に欄4、行60~欄5、行50で記載されたポリオールに相当するジオール及びトリオールである。好ましくは、ポリオール(ジオール及びトリオール)は、ポリエーテルポリオール、より好ましくはポリオキシアルキレンオキシドポリオールである。最も好ましいトリオールは、グリセリンをプロピレンオキシドと反応させ、続いてその生成物をエチレンオキシドと反応させることによって調製されるエチレンオキシド-キャップドポリオールである。
【0021】
イソシアネート官能性プレポリマーは、その中に分散した又はそれの主鎖にグラフトした1種以上の有機系ポリマー粒子を含有し得る。有機系ポリマー粒子は、その中に分散しているか又は有機系ポリマーの主鎖粒子にグラフトしているトリオールの包含によってプレポリマー中に含まれ得る。好ましいトリオールは、参照により本明細書に援用される、Zhouの米国特許第6,709,539号明細書に欄4、行13~欄6、行18で開示されている。好ましくは、トリオールは、ポリエーテルトリオール、より好ましくはポリオキシアルキレン系トリオールである。好ましくは、そのようなポリオキシアルキレンオキシドトリオールは、ポリオキシエチレンエンドキャップ付きポリオキシ-プロピレン鎖を含む。好ましくは、有機系ポリマー粒子は、トリオール中に分散した熱可塑性ポリマー、ゴム変性熱可塑性ポリマー又はポリ尿素を含む。好ましい熱可塑性ポリマーは、モノビニリデン芳香族モノマーをベースとするもの、及びモノビニリデン芳香族モノマーと共役ジエン、アクリレート、メタクリレート、不飽和ニトリル又はそれらの混合物とのコポリマーである。コポリマーは、ブロック又はランダムコポリマーであることができる。より好ましくは、粒子は、不飽和ニトリルと、共役ジエンとモノビニリデン芳香族モノマーとのコポリマー、不飽和ニトリルとモノビニリデン芳香族モノマーとのコポリマー又はポリ尿素、更により好ましくは、ポリ尿素又はポリスチレン-アクリロニトリルコポリマーを含み、ポリスチレン-アクリロニトリルコポリマーが最も好ましい。有機ポリマー粒子は、最終硬化接着剤の衝撃特性及びゴム弾性特性を改善するのに十分に大きいが、硬化後の接着剤の極限強度を低下させるほどに大きくない粒径を好ましくは有する。好ましくは、粒径は約10ミクロン以上であり、より好ましくは、粒径は約20ミクロン以上である。好ましくは、粒径は約50ミクロン以下であり、より好ましくは、粒径は約40ミクロン以下である。トリオールは、接着剤が硬化すると所望の使用にとって十分な硬度を有するように十分な量の、及び硬化接着剤が伸びによって定義されるような過大な弾性を有するほどに多くない量の有機ポリマー粒子を含有する。好ましくは、ポリオールは、ポリオール及び粒子を基準として約20重量パーセント以上、好ましくは約30重量パーセント以上、より好ましくは約35重量パーセント以上の有機ポリマー粒子コポリマーを含有する。好ましくは、ポリオールは、ポリオール及び粒子を基準として約60重量パーセント以下、好ましくは約50重量パーセント以下、より好ましくは約45重量パーセント以下の有機ポリマー粒子を含有する。トリオール中に有機ポリマー粒子を含有するポリオールは、プレポリマーの約10重量パーセント以上、より好ましくは約12重量パーセント以上、及びプレポリマーの約18重量パーセント以下の量でプレポリマー中に存在し得る。
【0022】
ポリオールは、イソシアネート基のほとんどと反応して、イソシアネート官能性構成要素の所望の遊離イソシアネート含有量に相当するのに十分なイソシアネート基を残すのに足りる量で存在する。好ましくは、ポリオールは、プレポリマーを基準として約30重量パーセント以上、より好ましくは約40重量パーセント以上、最も好ましくは約55重量パーセント以上の量で存在する。好ましくは、ポリオールは、プレポリマーを基準として約75重量パーセント以下、より好ましくは約65重量パーセント以下、最も好ましくは約60重量パーセント以下の量で存在する。
【0023】
イソシアネート官能性構成要素プレポリマーは、上で考察された判定基準を満たすイソシアネート官能価及び遊離イソシアネート含有量を有するプレポリマーを形成するのに十分な反応条件下で、ポリオールを、化学量論量を超える過剰の1種以上のポリイソシアネートと反応させることによってなどの、任意の好適な方法によって調製され得る。イソシアネート官能性構成要素の好ましい調製方法は、参照により本明細書に援用される米国特許第5,922,809号明細書に欄9、行4~51で開示されている。イソシアネート官能性構成要素は、結果として生じる接着剤が硬化する場合に基材が接合されるように十分な量で接着剤組成物中に存在する。好ましくは、イソシアネート官能性構成要素は、接着剤組成物の約20重量部以上、より好ましくは約30重量部以上、最も好ましくは約35重量部以上の量で存在する。好ましくは、イソシアネート官能性構成要素は、接着剤組成物の約60重量部以下、より好ましくは約50重量部以下、更により好ましくは約45重量部以下の量で存在する。
【0024】
イソシアネート官能性構成要素は、1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート;1種以上の一般的な可塑剤又はそれらの混合物を更に含み得る。イソシアネート官能性構成要素に有用な可塑剤は、ポリウレタン接着剤アプリケーションに有用な及び当業者に周知の一般的な可塑剤である。可塑剤は、イソシアネート官能性構成要素を最終接着剤組成物中に分散させるのに十分な量で存在する。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート及び任意選択的に他の一般的な可塑剤は、イソシアネート官能性構成要素の調製中にか又は接着剤組成物の配合中に接着剤に添加することができる。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート及び任意選択的に一般的な可塑剤は、イソシアネート官能性構成要素調合物(例えばプレポリマープラス可塑剤又は接着剤組成物)の約1重量パーセント以上、約20重量パーセント以上又は約30重量パーセント以上で存在し得る。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート及び任意選択的に他の一般的な可塑剤は、イソシアネート官能性構成要素調合物の約45重量パーセント以下、約40重量パーセント又は約35重量パーセント以下で存在し得る。
【0025】
組成物は、1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートを含む。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、式:
【化2】
(式中:
及びRは、独立して、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジルであり;
は、独立して、水素、メチル又はエチルのどれかであり;
は、0~5個の炭素原子を含有する炭素鎖であり、二重結合を含有してもよく;
nは、独立して、1~4であり、ここで、Rは、直鎖若しくは分岐鎖アルキルであり、Rは、直鎖若しくは分岐鎖アルキレンである)
に相当し得る。R及びRは、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であり得る。R及びRアルキル基は直鎖であり得る。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、ビス-ジプロピレングリコールn-プロピルエーテルアジペート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルマロネート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルスクシネート、及びビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルマレエートの1種以上を含み得る。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートの1種以上を含む。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、その全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される、国際公開第2015/200088号パンフレットに開示された方法によって調製され得る。1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートは、EPA Method 24によって定義されるような1%未満の揮発性有機化合物を含有してもよく;ASTM D1209に従って測定されるように、25APHA未満の色を示してもよい及び/又は2004/42/EC Solvents Directive for Decorative Paintsに定義されるように測定される、760mmHgで250℃よりも上の沸点を示す。
好ましくは、組成物は、好ましくは15~35℃の温度で、特にオリジナル設備製造において及びガラス交換プロセスにおいて用いられる標準塗布設備で、それらをポンプ送液する及び塗布することができるような十分な低粘度を示す。いくつかの実施形態において、組成物の粘度は、25℃で約100,000パスカル秒(Pascal Second)以下~25℃で約60,000パスカル秒以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、組成物の粘度は、25℃で約1,000パスカル秒以上~25℃で約10,000パスカル秒以上であり得る。粘度は、1000ミクロンギャップ及び25mm平行板の、TA Instruments製Model DHR-1レオメーターで、0.2s-1の剪断速度で25℃の温度で測定される。
【0026】
例示的な一般的な可塑剤としては、スルホン酸のアルキルエステル、アルキルアルキルエーテルジエステル、ポリエステル樹脂、ホルマール、ポリグリコールジエステル、高分子ポリエステル、トリカルボン酸エステル、ジアルキルエーテルジエステル、ジアルキルエーテル芳香族エステル、芳香族ホスフェートエステル、及び芳香族スルホンアミド、芳香族ジエステル、芳香族トリエステル、脂肪族ジエステル、エポキシ化エステル、エポキシ化オイル、塩素化炭化水素、芳香族オイル、アルキルエーテルモノエステル、ナフテン系オイル、アルキルモノエステル、グリセリドオイル、パラフィン系オイル並びにシリコーンオイルの1種以上が挙げられる。一般的な可塑剤は、接着剤組成物の重量を基準として約5重量部以上、より好ましくは約10重量部以上、最も好ましくは約18重量部以上の量で接着剤組成物に使用され得る。一般的な可塑剤は、接着剤組成物の総量を基準として約40重量部以下、より好ましくは約30重量部以下、最も好ましくは約25重量部以下の量で使用され得る。
【0027】
組成物は、周囲温度、約23℃で固体である1種以上のポリエステル系ポリオールを含有する1種以上のイソシアネート官能性プレポリマーを含み得る。ポリエステル系ポリオールは,基材が周囲温度で重力により互いに関して移動するのを防ぐのに十分な生強度をプレポリマーが提供するような融点を有する。車両又は建物における窓の設置に関して、ポリエステル系プレポリマーは、設置後に窓が滑るのを防ぐ。好ましくは、ポリエステルポリオールは、約40℃以上、更により好ましくは約45℃以上、最も好ましくは約50℃以上の融点を有する。好ましくは、ポリエステルポリオールは、約85℃以下、更により好ましくは約70℃以下、最も好ましくは約60℃以下の融点を示す。ポリエステル系イソシアネートプレポリマーは、1種以上のポリエステルポリオールを使用して調製することができる。プレポリマー中のポリエステルポリオールの量は、必要とされる生強度を本発明の組成物に提供するのに及び周囲温度でそれを固体にするのに十分な量である。好ましくは、ポリエステルポリオールは、プレポリマーの重量を基準として約70重量パーセント以上、より好ましくは約80重量パーセント以上の量でポリエステルポリオール系イソシアネートプレポリマー中に存在する。好ましくは、ポリエステルポリオールは、プレポリマーの重量を基準として約95重量パーセント以下、より好ましくは約90重量パーセント以下の量でポリエステルポリオール系イソシアネートプレポリマー中に存在する。好ましくは、ポリエステルポリオール系イソシアネートプレポリマーは、組成物の必要とされる生強度及び所望のレオロジーを与えるのに十分な量で接着剤組成物中に存在する。好ましくは、ポリエステルポリオール系イソシアネートプレポリマーは、接着剤組成物の重量を基準として約0重量部以上、より好ましくは約1重量部以上、最も好ましくは約2重量部以上の量で接着剤組成物中に存在する。好ましくは、ポリエステルポリオール系イソシアネートプレポリマーは、約10重量部以下、更により好ましくは約5重量部以下、最も好ましくは約2.5重量部以下の量で接着剤組成物中に存在する。ポリエステルポリオールは、周囲温度で結晶性である及び所望の温度範囲において溶融する、規定の特性要件を満たす任意のポリエステル組成物であることができる。好ましいポリエステルポリオールは、商品名Dynacol並びに名称7360及び7330でCreanovaから入手可能であり、7360がより好ましい。
【0028】
組成物は、硬化形態での組成物の弾性率を改善するという目的で多官能性イソシアネートを更に含み得る。多官能性は、イソシアネートとの関連で用いられるところでは、3以上、より好ましくは約3.2以上の官能価を有するイソシアネートを言う。好ましくは、多官能性イソシアネートは、約5以下、更により好ましくは約4.5以下、最も好ましくは約4.2以下の名目官能価を有する。多官能性イソシアネートは、組成物に使用されるイソシアネートポリイソシアネートプレポリマーと反応する、及び硬化組成物の弾性率を改善する任意のイソシアネートであることができる。ポリイソシアネートは、モノマー;モノマーイソシアネートの三量体イソシアヌレート又はビウレット;オリゴマー又はポリマーの、1種以上のモノマーイソシアネートの幾つかの単位の反応生成物であることができる。好ましい多官能性イソシアネートの例としては、商標及び名称Desmodur(登録商標)N3300でBayerから入手可能なものなどの、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、並びにPAPI(商標)20高分子イソシアネートを含めて、PAPI(商標)の商標でThe Dow Chemical Companyによって市販されているものなどの高分子MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)などの高分子イソシアネートが挙げられる。多官能性イソシアネートは、本発明の硬化組成物の弾性率に影響を及ぼすのに十分な量で存在する。多官能性イソシアネートは、接着剤組成物の重量を基準として約0.5重量部以上、より好ましくは約1.0重量部以上、最も好ましくは約1.4重量部以上の量で好ましくは存在する。多官能性イソシアネートは、接着剤組成物の重量を基準として、約8重量部以下、より好ましくは約5重量部以下、最も好ましくは約2重量部以下の量で好ましくは存在する。
【0029】
組成物は、1種以上の強化充填材を含み得る。そのような充填材は、当業者に周知であり、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、表面処理シリカ、酸化チタン、ヒュームドシリカ、タルク等を含む。好ましい強化充填材は、カーボンブラックを含む。2種以上の強化充填材が使用され得、好ましくは、1つはカーボンブラックである。強化充填材は、接着剤の強度を高めるのに、チキソトロピック特性を接着剤に提供するのに、並びに組成物に所望の粘度及び垂れ抵抗性を与えるのに十分な量で使用される。カーボンブラックは、一般に、所望の黒色を提供するために使用される。この発明に使用されるカーボンブラックは、それを非導電性にするために特別に処理されていない(表面処理又は酸化されていない)標準カーボンブラックであり得る。或いはまた、1種以上の非導電性カーボンブラックが、独占的に、又は標準カーボンブラックと併せて使用され得る。組成物中のカーボンブラックの量は、所望の色、粘度、垂れ抵抗性を提供する量、及び非導電性が重要である場合には組成物が本明細書で規定されるレベルまで非導電性であるような量である。強化充填材は、組成物の重量を基準として約10重量部以上、より好ましくは約12重量部以上、最も好ましくは約14重量部以上の量で好ましくは使用される。非導電性特性が望まれる場合、標準カーボンブラックは、組成物の重量を基準として約20重量部以下、より好ましくは約18重量部以下、最も好ましくは約16重量部以下の量で好ましくは存在する。導電性つまり標準及び非導電性カーボンブラックを含めて、存在する全強化充填材は、組成物の重量を基準として好ましくは約35重量部以下、より好ましくは約30重量部以下、最も好ましくは約20重量部以下である。標準カーボンブラックは、当技術分野において周知であり、Colombianから入手可能なRAVEN(商標)790、RAVEN(商標)450、RAVEN(商標)500、RAVEN(商標)430、RAVEN(商標)420及びRAVEN(商標)410カーボンブラック並びにCabotから入手可能なCSX(商標)カーボンブラック、並びにDegussaから入手可能なPRINTEX(商標)30カーボンブラック;ELFTEX S7100、MONARCH 470、MONARCH 570及びMONARCH 580カーボンブラックを含む。非導電性カーボンブラックは、当技術分野において周知であり、Colombian製のRAVEN(商標)1040及びRAVEN(商標)1060カーボンブラックを含む。
【0030】
組成物は、当技術分野において周知である、イソシアネート部分と水又は活性水素含有化合物との反応を触媒する触媒を含有する。例示的な触媒は、有機スズ化合物、金属アルカノエート、及び第三級アミン、並びにそれらの混合物である。ジモルホリノジエチルエーテルなどの、第三級アミンと、オクタン酸ビスマスなどの、金属アルカノエートとの混合物が好ましい。有機スズ化合物には、アルキルスズオキシド、第一スズアルカノエート、ジアルキルスズカルボキシレート及びスズメルカプチドが含まれる。第一スズアルカノエートには、オクタン酸第一スズが含まれる。アルキルスズオキシドには、ジブチルスズオキシド及びその誘導体などの、ジアルキルスズオキシドが含まれる。有機スズ化合物には、好ましくは、ジアルキルスズジカルボキシレート又はジアルキルスズジメルカプチドが含まれる。好ましいジアルキルジカルボキシレートには、1,1-ジメチルスズジラウレート、1,1-ジブチルスズジアセテート及び1,1-ジメチルジマレエートが含まれる。好ましい金属アルカノエートには、オクタン酸ビスマス又はネオデカン酸ビスマスなどの、ビスマスアルカノエート及びジルコニウムアルカノエートが含まれる。有機スズ化合物又は金属アルカノエート触媒は、接着剤の重量を基準として百万当たり約60部以上、より好ましくは百万当たり120部以上の量で存在する。有機スズ化合物又は金属アルカノエート触媒は、接着剤の重量を基準として約1.0パーセント以下、より好ましくは0.5重量パーセント以下、最も好ましくは0.1重量パーセント以下の量で存在する。例示的な第三級アミン触媒としては、ジモルホリノジアルキルエーテル、ジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテル、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルピペラジン 4-メトキシエチルモルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン及びそれらの混合物が挙げられる。好ましいジモルホリノジアルキルエーテルは、ジモルホリノジエチルエーテルである。好ましいジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテルは、ジ-(2-(3,5-ジメチルモルホリノ)エチル)エーテルである。第三級アミンは、約0.01重量パーセント以上、より好ましくは約0.05重量パーセント以上、更により好ましくは約0.1重量パーセント以上、最も好ましくは約0.2重量パーセント以上、及び約2.0重量パーセント以下、より好ましくは約1.75重量パーセント以下、更により好ましくは約1.0重量パーセント以下、最も好ましくは約0.4重量パーセント以下の、接着剤の重量を基準とする、量で好ましくは用いられる。
【0031】
接着剤は、接着剤組成物での使用について従来技術において公知の充填材及び添加剤と配合され得る。そのような材料の添加によって、粘度 流動速度等などの物理的特性を変性することができる。しかしながら、イソシアネート官能性化合物の感湿基の時期尚早の加水分解を防ぐために、充填材は、それとの混合の前に十分に乾燥させられるべきである。例示的な充填材としては、粘土が挙げられる。本発明に有用な、好ましい粘土としては、カオリン、表面処理カオリン、か焼カオリン、ケイ酸アルミニウム及び表面処理無水ケイ酸アルミニウムが挙げられる。粘土は、ポンプ送液可能な接着剤の配合を容易にする、任意の形態で使用することができる。好ましくは、粘土は、粉砕粉末、噴霧乾燥ビーズ又は細かくすり潰した粒子の形態にある。粘土は、接着剤組成物の約10重量パーセント以上、より好ましくは約12重量部以上、更により好ましくは約18重量パーセント以上の量で使用され得る。好ましくは、粘土は、接着剤組成物の約30重量パーセント以下、より好ましくは約28重量パーセント以下、最も好ましくは約24重量パーセント以下の量で使用される。接着剤組成物に一般に使用される他の構成要素が、この発明の組成物に使用され得る。そのような材料は、当業者に周知であり、紫外線安定剤及び酸化防止剤等を含み得る。本明細書で用いるところでは、接着剤組成物の構成要素に関する全ての重量部は、接着剤組成物の100全重量部を基準としている。
【0032】
組成物は、接着剤組成物を水分から防護し、それによって前進を阻害し、及び接着剤調合物中のイソシアネートの時期尚早の架橋を防ぐために機能する、安定剤を更に含み得る。水分硬化性接着剤について当業者に公知の安定剤が、本明細書で好ましく使用され得る。そのような安定剤の中に、ジエチルマロネート、アルキルフェノールアルキレート、パラトルエンスルホニルイソシアネート、ベンゾイルクロリド及びオルトギ酸アルキルが含まれる。そのような安定剤は、接着剤組成物の総重量を基準として約0.1重量部以上、好ましくは約0.5重量部以上、より好ましくは約0.8重量部以上の量で好ましくは使用される。そのような安定剤は、接着剤組成物の重量を基準として約5.0重量部以下、より好ましくは約2.0重量部以下、最も好ましくは約1.4重量部以下の量で使用される。
【0033】
組成物は、参照により本明細書に援用されるMahdiの米国特許出願公開第2002/0100550号明細書段落0055~0065及びHsiehの米国特許第6,015,475号明細書欄5、行27~欄6、行41に開示されたものなどの、接着促進剤又は接着促進構成要素を更に含み得る。好ましくは、接着促進剤は、ある形態で存在するシランを含有する。組成物中にシラン官能性を含める好ましい方法は、関連部分が参照により本明細書に援用される、Wuらの米国特許第6,512,033号明細書に欄5、行38~欄7、行27で;米国特許第5,623,044号明細書;同第4,374,237号明細書;同第4,345,053号明細書及び同第4,625,012号明細書に開示されている。シランは、プレポリマーとブレンドされてもよい。いくつかの実施形態において、シランは、イソシアネートと反応する1個以上の活性水素原子を有する。好ましくは、そのようなシランは、メルカプト-シラン又はアミノ-シランであり、より好ましくはメルカプト-トリアルコキシ-シラン又はアミノ-トリアルコキシシランである。いくつかの実施形態において、イソシアネート部分と反応する活性水素原子を有するシランは、プレポリマーの末端イソシアネート部分と反応させることができる。そのような反応生成物は、関連部分が参照により本明細書に援用される米国特許第4,374,237号明細書及び同第4,345,053号明細書に開示されている。他の実施形態において、イソシアネート部分と反応する反応性水素部分を有するシランは、そのようなシランを出発原料とプレポリマーの調製中に反応させることによってプレポリマーの主鎖中へ反応して入れることができる。主鎖にシランを含有するプレポリマーの調製方法は、関連部分が参照により本明細書に援用される、米国特許第4,625,012号明細書に開示されている。活性水素部分を有する、そのようなシランは、ポリイソシアネートと反応して付加体を形成することができ、付加体は、ポリウレタンプレポリマーと反応した又はポリイソシアネートと反応したプレポリマー、及びイソシアネート部分と反応する平均して2つ以上の部分を有する化合物とブレンドされる。好ましくは、付加体は、第二級アミノ-又はメルカプト-アルコキシシランとポリイソシアネートとの反応生成物であり、付加体は、1分子当たり平均少なくとも1個のシラン基及び少なくとも1個のイソシアネート基を有する(本明細書で以下「付加体」)。接着促進剤として又は付加体を調製するために有用な例示的な有機官能性シランとしては、アミノ-又はメルカプト-アルコキシシラン、イソシアナトアルコキシシラン、メタクリルオキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アルケニルアルコキシシラン等が挙げられる。そのような化合物の例としては:N,N-ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]アミン;N,N-ビス[(3-トリプロポキシ-シリル)プロピル]アミン;N-(3-トリメトキシシリル)プロピル-3-[N-(3-トリメトキシシリル)-プロピルアミノ]プロピオンアミド;N-(3-トリエトキシシリル)プロピル-3-[N-3-トリエトキシシリル)-プロピル-アミノ]プロピオンアミド;N-(3-トリメトキシシリル)プロピル-3-[N-3-トリエトキシシリル)-プロピルアミノ]プロピオンアミド;3-トリメトキシシリルプロピル 3-[N-(3-トリメトキシシリル)-プロピルアミノ]-2-メチルプロピオネート;3-トリエトキシシリルプロピル 3-[N-(3-トリエトキシシリル)-プロピルアミノ]-2-メチルプロピオネート;3-トリメトキシシリルプロピル 3-[N-(3-トリエトキシシリル)プロピルアミノ]-2-メチルプロピオネート等が挙げられる。好ましくは、有機官能性シランは、ガンマ-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(Union CarbideからA189として入手可能な)又はN,N’-ビス((3-トリメトキシシリル)プロピル)アミンである。存在する接着促進剤の量は、基材表面への接着剤の接着を高める量である。存在する接着促進剤の量は、接着剤の重量を基準として好ましくは約0.1重量パーセント以上、最も好ましくは約0.5重量パーセント以上である。使用される接着促進剤の量は、好ましくは約10重量パーセント以下、最も好ましくは約2.0重量パーセント以下である。接着促進剤は、2パート接着剤のどちらかのパート若しくは両パート中に又は1パート接着剤中にあることができる。
【0034】
組成物は、大気水分を組成物中に引き入れるために機能する親水性物質を更に含み得る。この物質は、大気水分を組成物に引き寄せることによって調合物の硬化速度を高める。好ましくは、親水性物質は液体である。好ましい吸湿性物質の中に、商標M-Pyrolでから入手可能な、1-メチル-2-ピロリジノンなどのピロリジノンがある。親水性物質は、約0.1重量部以上、より好ましくは約0.3重量部以上、及び好ましくは約1.0重量部以下、最も好ましくは約0.6重量部以下の量で好ましくは存在する。任意選択的に、接着剤組成物は、チキソトロープ剤を更に含み得る。そのようなチキソトロープ剤は、当業者に周知であり、アルミナ、石灰石、タルク、酸化亜鉛、硫黄酸化物、炭酸カルシウム、パーライト、粘板岩粉、塩(NaCl)、シクロデキストリン等を含む。チキソトロープ剤は、所望のレオロジー特性を与えるのに十分な量で組成物の接着剤に添加され得る。好ましくは、チキソトロープ剤は、接着剤組成物の重量を基準として約0重量部以上、好ましくは約1重量部以上の量で存在する。好ましくは、任意選択のチキソトロープ剤は、接着剤組成物の重量を基準として約10重量部以下、より好ましくは約2重量部以下の量で存在する。
【0035】
2パート組成物は、Bサイド中にある硬化剤を含有し得る。そのような硬化剤は、1個超のイソシアネート反応基を含有する1種以上の化合物を含む。硬化剤は、ヒドロキシル基を好ましくは含有する。硬化剤は、1種以上の低分子量化合物又はポリオールであることができる。本明細書で前に記載されたようなポリオールを硬化剤として利用することができる。ポリオールの1クラスは、結果として生じるプレポリマーがイソシアネート反応基、好ましくはヒドロキシルを含有するように、過剰当量のイソシアネート反応基を利用して調製される本明細書で前に記載されたようなプレポリマーであることができる。1種以上の低分子量化合物は、2個以上のイソシアネート反応基及び炭化水素主鎖を有し、ここで、主鎖は、1個以上のヘテロ原子を更に含み得る。そのような低分子量化合物は、鎖延長剤として当技術分野において公知の化合物であり得、そのような化合物は、二官能性であるか、又は架橋剤であり、それらは、平均して、1化合物当たり2個超の活性水素基を有する。主鎖中のヘテロ原子は、酸素、硫黄、窒素又はそれらの混合物であることができ、ここで、酸素、窒素又はそれらの混合物がより好ましく、酸素が最も好ましい。好ましくは、低分子量化合物の分子量は、約120以下、より好ましくは約100以下である。好ましくは、低分子量化合物は、1種以上の多官能性アルコール、若しくは多官能性アルコールとアルキレンオキシドとの1種以上の付加体又はそれらの混合物を含む。好ましい多官能性アルコールの中に、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等がある。様々な低分子量化合物のブレンド物が使用され得る。低分子量化合物は、所望のG-弾性率(E-弾性率)を得るのに十分な量で使用される。2パート組成物において、低分子量化合物は、樹脂サイド、硬化剤サイド又は両方にあってもよい。好ましくは、低分子量化合物は硬化剤サイドにある。好ましくは、低分子量化合物は、約2重量パーセント以上、より好ましくは約2.5重量パーセント以上、最も好ましくは約3.0重量パーセント以上の量で組成物中に存在する。好ましくは、低分子量化合物は、約10重量パーセント以下、より好ましくは約8重量パーセント以下、最も好ましくは約6重量パーセント以下の量で組成物中に存在する。
【0036】
組成物又は調合物のパートは、当技術分野において周知の手段を用いて構成要素を一緒にブレンドすることによって配合され得る。一般に、構成要素は、好適なミキサーにおいてブレンドされる。そのようなブレンディングは、好ましくは、時期尚早の反応を防ぐために酸素及び大気水分の不在下に不活性雰囲気中で行われる。ポリエステル系イソシアネート官能性プレポリマーが使用される実施形態において、接着剤組成物は、ポリエステル系イソシアネート官能性プレポリマーの融点よりも上の温度及び有意な副反応が起こる温度よりも下の温度でブレンドされる。この実施形態において、利用される温度は、約40℃~約90℃未満、より好ましくは約50℃~約70℃である。そのような混合物が容易に混合され、取り扱われ得るようにイソシアネート含有プレポリマーを調製するために、任意の可塑剤及び/又は1種以上のアルケノエートのアルキルエステルと1種以上のアルカノエートのアルキルエステルとのブレンド物を反応混合物に添加することが有利であり得る。或いはまた、可塑剤及び/又は1種以上のアルケノエートのアルキルエステルと1種以上のアルカノエートのアルキルエステルとのブレンド物を、構成要素全てのブレンディング中に添加することができる。接着剤組成物が配合されるとすぐに、それは、大気水分及び酸素から防護されるように、好適な容器中に入れられる。大気水分及び酸素との接触は、イソシアネート官能性プレポリマーの時期尚早の架橋をもたらす可能性がある。
【0037】
組成物は、本明細書で前に記載されたように様々な基材を接合するために使用される。組成物は、多孔性及び非多孔性基材を接合するために使用することができる。接着剤組成物が基材に塗布され、第1基材上の接着剤がその後第2基材と接触させられる。好ましい実施形態において、接着剤が塗布される表面は、塗布の前にきれいにされ、下塗りされる、例えば、米国特許第4,525,511号明細書;同第3,707,521号明細書及び同第3,779,794号明細書を参照されたい;全ての関連部分は、参照により本明細書に援用される。一般に、本発明の接着剤は、大気水分の存在下に周囲温度で塗布される。大気水分への暴露は、1パート接着剤の硬化をもたらすのに十分である。硬化は、追加の水の添加によって、又は対流熱、マイクロ波、赤外若しくは超音波加熱等により硬化性接着剤に熱を加えることによって加速させることができる。好ましくは、本発明の接着剤は、約6分以上、より好ましくは約10分以上の作業時間を提供するように配合される。好ましくは、作業時間は、約15分以下、より好ましくは約12分以下である。
【0038】
組成物は、ガラス又は耐摩耗性コーティングでコートされたプラスチックを、金属又はプラスチックなどの他の基材に接合するために使用され得る。好ましい実施形態において、第1基材は、ガラス、又は耐摩耗性コーティングでコートされたプラスチック、窓であり、第2基材は窓枠である。別の好ましい実施形態において、第1基材は、ガラス、又は耐摩耗性コーティングでコートされたプラスチック、窓であり、第2基材は、自動車の窓枠である。好ましくは、ガラス窓は、きれいにされ、接着剤が接合されるべきエリアにガラスプライマーを塗布される。耐摩耗性コーティングでコートされたプラスチックは、ポリカーボネート、アクリル樹脂、水素化ポリスチレン又は50パーセント超のスチレン含有量を有する水素化スチレン共役ジエンブロックコポリマーなどの、きれいである任意のプラスチックであることができる。コーティングは、ポリシロキサンコーティングなどの耐摩耗性である任意のコーティングを含むことができる。好ましくは、コーティングは、紫外線顔料入り遮光性添加剤を有する。好ましくは、ガラス又はプラスチック窓は、UV光が接着剤に達するのをブロックするために、接着剤と接触することになる領域に不透明コーティングを配置されている。
【0039】
組成物は、構造物又は車両における、最も好ましくは車両における窓を交換するために使用され得る。第1工程は、以前の窓の除去である。これは、古い窓を所定の位置に保持する接着剤のビーズをカットし、次に古い窓を取り除くことによって達成することができる。その後、新しい窓がきれいにされ、下塗りされる。窓フランジ上にある古い接着剤は、それが必要ではなく、ほとんどの場合にそれが所定の位置に残されているけれども、取り除くことができる。窓フランジは、好ましくは、ペイントプライマーで下塗りされる。接着剤は、車両に配置されたときに窓フランジと接触するであろうように、位置する窓の周囲にビーズで塗布される。接着剤がその上にある窓は、次に、接着剤が窓とフランジとの間に位置する状態でフランジ中へ配置される。接着剤ビーズは、窓と窓フランジとの間の接合部をシールするために機能する連続ビーズである。接着剤の連続ビーズは、接触するときにビーズが各端部で連結して窓とフランジとの間に連続シールを形成するように位置するビーズある。その後、接着剤は硬化させられる。使用に当たって、2パート組成物の構成要素は、そのような材料を使って作業するときに通常行われるであろうようにブレンドされる。商業的及び工業的環境において最も容易に使用される2パート組成物のためには、2つのパートが組み合わせられる容積比は、好都合な整数であるべきである。これは、静的及び動的混合を含む従来の、商業的に入手可能な計量分配装置を使った硬化性組成物の塗布を容易にする。静的混合付きのそのような計量分配装置は、米国特許第4,538,920号明細書及び同第5,082,147号明細書(参照により本明細書に援用される)に示されており、Sulzer Ltd.,Switzerlandの商品名MIXPAC又はSULZER(商標)QUADROでConprotec,Inc.(Salem,New Jersey)から入手可能である。典型的には、これらの計量分配装置は、各チューブが重合性組成物の2つのパートのうちの1つを受け入れることを意図している状態でサイド-バイ-サイドに配置されたペアのチューブ状容器を使用する。2つのプランジャー(各チューブ用の1つ)は、同時に前進して(例えば、手動により又は手発動ラチェッティング機構により)チューブの内容物を、2つのパートのブレンディングを容易にするための静的ミキサーをまた含有し得る、共通の、中空の、細長い混合室中へ排出させる。ブレンドされた重合性組成物は、混合室から基材上へ押し出される。電気駆動設備を用いる場合、動的混合が用いられ得る。チューブが空になってしまうとすぐに、それらを新たなチューブと取り替え、塗布プロセスを続けることができる。重合性組成物の2つのパートが組み合わせられる容積比は、チューブの直径によって制御される(各プランジャーは、固定直径のチューブ内に受け入れられるための大きさに作られており、プランジャーは、同じ速度でチューブ中へ前進させられる)。単一計量分配装置は、多くの場合、様々な異なる2パート重合性組成物での使用を意図しており、プランジャーは、好都合な混合比で重合性組成物の2つのパートを送出するための大きさに作られている。或いはまた、2パート組成物は、硬化性パートが樹脂内のバッグ中にある状態で単一チューブ中に配置され得る。この実施形態において、単一チューブが使用され、2パートがチューブから押し出される場合に、それらは、組成物が混合されるとすぐに硬化を受けることができるように十分に構成要素を混合するために混合エレメントを含有するノズルを通過させられる。いくつかの一般的な混合比は、1:1、2:1、4:1及び10:1であり、不規則な比であることもできる。好ましくは、2つのパートは、約1:1の混合比でブレンドされる。
【0040】
好ましくは、本発明の混合された2パート組成物は、液だれなしの塗布を可能にするのに好適な粘度を有する。好ましくは、2つの個々の構成要素の粘度は、同じオーダーの大きさのものであるべきである。より低い粘度については、構成要素は、未硬化接着剤システムの垂れを防ぐために当技術分野において公知のゲル化剤を必要とし得る。2パート接着剤組成物は、2つのパートを混合すると硬化し始める。硬化は、赤外線加熱、誘導加熱、対流加熱、マイクロ波加熱、超音波振動の印加等によって硬化性接着剤に熱を加えることにより加速させることができる。
【0041】
別の実施形態において、本発明の組成物は、モジュール構成部品を車体に又は互いに接合するために使用することができる。モジュール構成部品の例としては、ドア、窓又は車体などの、車両モジュールが挙げられる。本明細書に記載されるような分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPCとも言われる)によって測定され得る数平均分子量である。ポリウレタンプレポリマーについては、イソシアネート化合物の、及び当業者に公知であるようにそれらが反応するポリオール化合物の当量比からおよその数平均分子量を計算することも可能である。本明細書に記載されるような粘度は、参照により本明細書に援用される、Bhatの米国特許第5,922,809号明細書に欄12、行38~49で開示された手順に従って測定される。ポリウレタンプレポリマーに関して、平均イソシアネート官能価は、参照により本明細書に援用される、Bhatの米国特許第5,922,809号明細書に欄12、行65~欄13、行26で開示された手順に従って測定される。
本発明は次の態様も含む。
(1)a)1種以上のイソシアネート官能性構成要素;b)1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレート;及びc)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種以上の触媒を含む、組成物。
(2)前記1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートが、前記式([化1])で示される化合物(式中:R 及びR は、独立して、C ~C アルキル基、フェニル又はベンジルであり;R は、独立して、水素、メチル又はエチルのどれかであり;R は、0~5個の炭素原子を含有する炭素鎖であり、二重結合を含有してもよく;nは、独立して、1~4である)に相当する、上記(1)に記載の組成物。
(3)R 及びR が、独立して、C ~C アルキル基である、上記(2)に記載の組成物。
(4)前記1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートが、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、ビス-ジプロピレングリコールn-プロピルエーテルアジペート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルマロネート、ビス-ジエチレングリコールn-ブチルエーテルスクシネート、及びビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルマレエートの1種以上を含む、上記(1)に記載の組成物。
(5)前記1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートが、ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートの1種以上を含む、上記(4)に記載の組成物。
(6)1種以上のカーボンブラックを更に含む、上記(1)に記載の組成物。
(7)a)前記1種以上のイソシアネート官能性構成要素が、約20~約60重量パーセントの量で存在し;b)前記1種以上のビス(グリコールエーテル)アルキレートが、約5~約40重量パーセントの量で存在し;c)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種以上の触媒が、約0.005~約2重量パーセントの量で存在し、及びd)1種以上のカーボンブラックが、約10~約35重量部で存在し、百分率が前記組成物の重量を基準とする、上記(1)に記載の組成物。
(8)前記組成物が、23℃で固体である1種以上のイソシアネート官能性ポリエステル系プレポリマーを更に含む、上記(1)に記載の組成物。
(9)前記組成物が約3以上の名目官能価を有する1種以上のポリイソシアネートを更に含む、上記(1)に記載の組成物。
(10)2種以上の基材を一緒に、前記基材が接触しているエリアの少なくとも一部に沿って配置された上記(1)に記載の組成物と接触させる工程を含む、前記2種以上の基材の接合方法。
(11)前記基材の少なくとも1つが窓ガラスである、上記(10)に記載の方法。
(12)他の基材の少なくとも1つが建物又は車両である、上記(10)に記載の方法。
(13)前記基材が車両である、上記(10)に記載の方法。
(14)車両の窓の交換方法であって、i)前記窓を前記車両から取り外す工程と、ii)上記(1)に記載の組成物を、交換窓に又は前記窓を前記車両へ保持するように適合させられた前記車両のフランジに塗布する工程と、iii)前記車両の前記フランジ及び前記交換窓を、前記交換窓と前記車両の前記フランジとの間に配置された前記組成物と接触させる工程と、iv)接着剤を硬化させる工程とを含む、方法。
(15)前記車両が前記車両への前記窓の設置から60分後に安全に運転することができる、上記(14)に記載の方法。
【実施例
【0042】
本発明の例示的な実施形態
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、それの範囲を限定することを意図しない。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り、重量による。
【0043】
次の構成要素がプレポリマー合成のために必要とされる。
【0044】
【表1】
【0045】
次の構成要素が接着剤配合のために必要とされる。
【0046】
【表2】
【0047】
VORANOL(商標)220-056ポリオールは、2000の平均分子量を有する。VORANOL(商標)232-236ポリオールは、4500の平均分子量を有する。VORANOL(商標)は、The Dow Chemical Companyの商標である)
【0048】
実施例1(発明):ビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートを含有する非シラン化ゴム弾性接着剤
プレポリマー合成:
表1は、接着剤を製造するために使用されるウレタンプレポリマーの組成を示す。プレポリマーは、2つのポリオール:2のヒドロキシル官能価の1つ及び3のヒドロキシル官能価の他のものの組み合わせを使用して、並びに両方を過剰のMDIと反応させて調製して2.33%のNCO含有量のプレポリマーをもたらした。2つのポリオールのモル比(f=2/f=3)を1.075に維持した。
【0049】
プレポリマーを調製するために、18.12gのIsonate 125Mを、いかなる水分反応も防ぐためにグローブボックス中で1Lの丸底フラスコに添加した。40.51gのVoranol 220-56N(Dow Chemical Companyから入手可能な、Mn=2000及びヒドロキシル価=56mg KOH/gのポリエーテルジオール)並びに59.43gのVoranol 232-036N(Dow Chemical Companyから入手可能な、Mn=4500及びヒドロキシル価=36mg KOH/gのポリエーテルトリオール)を次にフラスコに添加した。冷却器、オーバーヘッド撹拌シャフト、Nイン、Nアウト、及びゴムセプタムからなるガラス製品アセンブリを取り付けた。丸底フラスコを次に加熱マントル上に置き、ヒーターのスイッチを入れ、70℃にセットした。オーバーヘッド撹拌シャフトを用いて構成要素を200rpmで混合した。ゴムセプタムを通して注射器を使用して3gのビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートを次に丸底フラスコに添加した。Dabco T-9触媒溶液を、次に、0.075gの触媒を5gのVoranol 220-56Nに添加することによって調製した。0.5gのこの触媒溶液を次にフラスコに注入した。触媒添加後の発熱を、温度が上昇するので監視した。温度が70℃に低下したとき、1.44gのジエチルマロネートを次に丸底フラスコに注入した。最後に、27gのビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートをフラスコ中へ添加し、反応を2時間続行した。フラスコの内容物を次に、あらかじめ乾燥させたガラスジャーに移し、低湿度条件下で保管した。
【0050】
接着剤配合
接着剤を、Flacktek SpeedMixer(二軸回転ミキサー)を用いて配合した。21.97gの上記プレポリマーをMax 60ポリプロピレンカップに添加した。8.7gのElftex S7100(カーボンブラック)を次に添加し、これに5.9gのIceberg粘土が続いた。構成要素を、2500rpmで1分間Flacktek SpeedMixer内で混合した。5.54gのビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート、0.07gのJeffcat DMDEE及び0.07gのオクタン酸ビスマスを次にカップに添加した。構成要素を2500rpmで別の2分間更に混合した。接着剤を次にカートリッジに移した。0.5インチ接着剤ビーズを、2K非イソシアネートクリアコートと共にPPG NCT X自動車ペイントシステムでコートされた金属パネル上にコーキングガンを用いてカートリッジから計量分配した。
【0051】
実施例3(比較):ジイソノニルフタレートを含有する非シラン化ゴム弾性接着剤、
可塑剤をビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートからジイソノニルフタレートに切り替えたことを除いて、実施例1について記載された方法を用いてプレポリマー及び相当する接着剤を調製した。プレポリマー及び接着剤の組成を、それぞれ、表1及び2に示す。
【0052】
実施例4(比較):大豆メチルエステルを含有する非シラン化ゴム弾性接着剤
可塑剤をビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートから大豆メチルエステル(Chempointによって販売されるSoygold 1500)に切り替えたことを除いて、実施例1について記載された方法を用いてプレポリマー及び相当する接着剤を調製した。プレポリマー及び接着剤の組成を、それぞれ、表1及び2に示す。
【0053】
実施例6(比較):トリメチルペンタニルジイソブチレートを含有する非シラン化ゴム弾性接着剤
可塑剤をビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペートからトリメチルペンタニルジイソブチレート(Eastman Chemical Companyによって販売されるEastman TXIB)に切り替えたことを除いて、実施例1について記載された方法を用いてプレポリマー及び相当する接着剤を調製した。プレポリマー及び接着剤の組成を、それぞれ、表1及び2に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
接着剤試験
粘度測定
円錐及びプレート付属品並びにスピンドル#6付きBrookfield Cap 2000+粘度計をプレポリマーの粘度のために用いた。初期プレポリマーの粘度を先ず測定した。9000~9500cPの粘度が達成されるまで可塑剤を次にプレポリマーに添加した。この粘度に達するために必要とされる追加の可塑剤を書き留めた。追加の可塑剤入りのプレポリマーを次に最終接着剤配合のために使用した。
【0057】
室温連結試験
接着性能を、クイックナイフ試験(SAE J1720)に従って測定した。これらの接着剤を試験するために、PPG NCT X、銀を塗装基材として使用した。6.3mm(幅)×6.3mm(高さ)×100mm(長さ)のビーズの接着剤を塗装基材上に置いた。接着剤を24時間23℃及び50パーセント相対湿度の条件下で硬化させた。硬化ビーズを、次に、180°の角度でビーズの端部を引き戻しながら、45°の角度で基材までカミソリの刃でカットした。基材上で3mm毎に刻み目をカットした。接着不良を、%AF又はCFとして表される凝集破壊(CF)、すなわち、接着剤内で起こる破壊若しくは接着破壊(AF)、すなわち、接着剤/ペイント接合部分で起こる破壊又は2つの組み合わせとして書き留めた。
【0058】
別のセットの接着剤ビーズを、23℃及び50パーセント相対湿度での7日硬化後に試験した。
【0059】
低温連結試験
接着剤ビーズをPPG NCT X、銀基材上に塗布し、14日間-6℃で硬化させた。クイックナイフ試験(SAE J1720)を次にこれらの接着剤ビーズに関して行った。
【0060】
加水分解安定性試験
接着剤ビーズをPPG NCT X、銀基材上に塗布し、7日間23℃及び50パーセント相対湿度で硬化させた。パネルを次に7日間90℃水浴中に入れた。パネルを次に取り出し、紙タオルを使用して乾燥させた。クイックナイフ試験(SAE J1720)を接着剤ビーズに関して行った。
【0061】
接着剤性能
配合段階中に添加された追加の可塑剤を含むプレポリマーの粘度を表3にリストアップする。9000~9500cPの粘度を維持するために可塑剤の量を調節した。実施例2及び3について、プレポリマー中の可塑剤量は、表3に示されるように、より低い粘度をもたらした。結果として、これらの場合には追加の可塑剤を配合段階で全く使用しなかった。
【0062】
【表5】
【0063】
クイックナイフ試験によって測定されるような接着剤性能を表4にリストアップする。明らかに、本発明の接着剤は、比較接着剤と比較してはるかにより良好な全体的接着性能を有する。これは、とりわけ、室温で及び低温で硬化させられた接着剤ビーズについて真実である。本発明の接着剤の加水分解安定性は、実施例2及び4のそれよりも良好であるが、実施例3のそれと似ている。データは、周囲温度及び低温硬化条件下でビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアジペート可塑剤が低表面エネルギークリアコートへの接合を促進することを例示する。加えて、接合強度は、加水分解条件下で保持され、業界標準可塑剤を使って製造された接着剤と比べてより耐久性のある接着剤をもたらす。
【0064】
【表6】