(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ポリマー用制酸剤
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20231109BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231109BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K3/34
C08J3/20 Z CES
(21)【出願番号】P 2020542162
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019016270
(87)【国際公開番号】W WO2019152790
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-01
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ミチョス、デメトゥリウス
(72)【発明者】
【氏名】レゴ、ホセ エム.
(72)【発明者】
【氏名】カルト、ジョン カルビ
(72)【発明者】
【氏名】モントヤゴニ、アマイヤ
(72)【発明者】
【氏名】ペイン、ミッシェル ニ
(72)【発明者】
【氏名】グ、フェン
(72)【発明者】
【氏名】プレオーニ、ジェイムス ニール
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-210442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー中の酸を中和する方法であって、前記方法が、ポリマーを所定量の非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムと接触させることを含み、
前記ポリマーがポリオレフィンであり、
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属、及びベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有し、
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの0.005重量%~2.0重量%の範囲であ
り、
前記ポリオレフィンが、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、20個以下の炭素原子を有する、
方法。
【請求項2】
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムであり、前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、好ましくは合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの0.5重量%~約10重量%の量の酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、約0.5μm~約10.0μmの範囲の平均粒径を有するか、又は前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、7~12の範囲のpHを有する、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.010重量%~約1.0重量%、好ましくは前記ポリマーの約0.015重量%~約0.8重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの屈折率が、前記ポリマーの屈折率と実質的に同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸性不純物を含有するポリマーの腐食性を低減するプロセスであって、前記プロセスが、
前記ポリマーに、所定量の非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムを組み込んで、6未満の腐食性指数を有するポリマー組成物を得ることを含み、
前記ポリマーがポリオレフィンであり、
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属、及びベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有し、
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの0.005重量%~2.0重量%の範囲であ
り、
前記ポリオレフィンが、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、20個以下の炭素原子を有する、
プロセス。
【請求項7】
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムであり、前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、好ましくは合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの0.5重量%~約10重量%の量の酸化マグネシウムを含む、請求項
6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、約0.5μm~約10.0μmの範囲の平均粒径を有するか、又は前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、7~12の範囲のpHを有する、請求項
7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの1未満の腐食性指数を提供するのに十分な量であるか、又は前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.005重量%~約2.0重量%の範囲であるか、又は前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.010重量%~約1.0重量%の範囲であるか、又は前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.015重量%~約0.5重量%の範囲であるか、又は前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの屈折率が、前記ポリマーの屈折率と実質的に同じである、請求項
6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ポリマー組成物の透明度が、約1mmの厚さを有するIMプラークで測定すると、少なくとも約60%である、請求項
6に記載のプロセス。
【請求項11】
酸性不純物を含むポリオレフィンと、所定量の非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムとを含む、ポリオレフィンから製造される製品を製造するための腐食性の低減されたポリマー組成物であって、前記ポリオレフィン中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの量が、前記ポリオレフィンの約0.005重量%~約2.0重量%の範囲であ
り、
前記ポリオレフィンが、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、20個以下の炭素原子を有する、
ポリマー組成物。
【請求項12】
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、約0.5μm~約10.0μmの範囲の平均粒径を有するか、又は前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、7~12の範囲のpHを有する、請求項
11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリオレフィン中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの量が、前記ポリオレフィンの約0.010重量%~約1.0重量%、又は、前記ポリオレフィンの約0.015重量%~約0.5重量%の範囲である、請求項
11に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記非晶質ケイ酸アルミニウム
ナトリウムマグネシウムの屈折率が、前記ポリオレフィンの屈折率と実質的に同じである、請求項
11に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記ポリマー組成物の透明度が、約1mmの厚さを有するIMプラークで測定すると、少なくとも約60%である、請求項
11に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
請求項
11に記載のポリマー組成物から作製された物品であって、前記物品が、好ましくは繊維、成形物品、押出成形形材、シート、ボード、接着剤、発泡体、ワイヤコーティング、又は他の加工部品からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記物品が、より好ましくはフィルム、又はシート、又は繊維、又は成形物品であり、前記物品が、最も好ましくはフィルムである、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制酸剤及びその使用方法に関する。本発明はまた、制酸剤を含有する改善されたポリマー組成物、及びポリマー組成物から形成される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、それらの汎用性、優れた機械的特性及び透明度などの望ましい特性、並びに一般的な生成コストの低さに起因して、多数の商業用途において広範に支持されかつ使用されている。多くの産業、特に包装産業では、これらのポリプロピレン材料を、押出成形、熱成形、射出成形、又はブロー成形などの多様なプロセスに利用して、多様な完成品を作製する。
【0003】
ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)を作製するプロセスは、多くの場合、触媒残留物を除去するための抽出を必要とせずに、許容可能な特性のポリマーを生成するために、高度に活性な重合触媒、例えばチーグラー型触媒を伴う。ポリマー中に残存する触媒残留物は、酸性である傾向があり、ポリオレフィンが加工されるときに問題を生じ得る。例えば、酸性材料(例えば、塩化水素の形態)の存在は、押出機又は射出成形装置などのポリマー加工装置の金属表面を腐食させ得る。
【0004】
ポリマーに関連する前述の問題に加えて、酸性残留物はまた、ポリマーから製造される製品に問題を生じ得る。例えば、ポリマーから調製された成形品にも、変色又は劣化を生じ得る。酸含有ポリマーからフィルムを製造すると、透明度又は透過性の乏しいフィルムがもたらされ得る。
【0005】
ポリマー及びポリマーから製造される製品へのかかる有害な影響を回避又は最小限に抑えるために、典型的には、ポリマー生成中に制酸剤をポリマーに組み込んで、酸性残留物を中和する。ポリマー、特にポリオレフィンポリマー及び製品の製造及び加工において、商業的に使用される1つの制酸剤は、ステアリン酸カルシウムである。典型的には、ステアリン酸カルシウム、又は酸性残留物を中和することから生成される生成物としてのステアリン酸(stearic acid、CA)は、ポリマー表面に移動し、ポリマー表面の粘着性又はぬるつきを生じ得る。この材料はまた、繊維紡糸の曇りにつながる場合がある。更に、ステアリン酸の移動により、ラフフィア及びフィルム用途に水分を持ち越す場合がある。
【0006】
ポリオレフィンの加工又は生成に商業的に使用されている別の種類の制酸剤は、ハイドロタルサイトである。(例えば、米国特許第4,347,353号を参照されたい)。しかしながら、これらの材料は、一般に、ステアリン酸カルシウムよりも高価であり、2配向ポリプロピレン(bi-oriented polypropylene、BOPP)用途などの高い透明度での用途にヘイズの増加を生じる傾向があるので、フィルムの外見が損なわれる。
【0007】
他の既知の制酸剤としては、結晶性ゼオライト及び酸化亜鉛が挙げられる。米国特許第5,510,413号では、不安定になったポリマーの酸性構成成分を中和又は効果的に除去するために、受酸剤として少量の合成塩基性結晶性ゼオライトを組み込むことについてが開示されている。米国特許第4,251,407号は、受酸剤としての酸化亜鉛をポリプロピレン中に使用することについて開示している。
【0008】
ポリマー産業において、費用効果が高く、ポリマー加工及び生成に現在使用されている制酸剤と関連する本明細書の問題を回避又は抑制する、改善された制酸組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ポリマー中の酸性不純物の中和のための新規な制酸剤に対する産業的必要性に対処する。具体的には、制酸剤として非晶質ケイ酸アルミニウムを利用することによって、ポリマー加工中に形成される酸性残留物の悪影響を最小限に抑えることが発見された。予想外にも、制酸剤として非晶質ケイ酸アルミニウムを利用するポリオレフィンポリマー組成物などのポリマー組成物は、低減された腐食性及び改善された色安定性、並びに優れたメルトフローレート(melt flow rate、MFR)安定性を伴う改善された透明度などの改善された特性を有する。
【0010】
したがって、本発明の一実施例は、腐食性、色安定性、及び透明度の向上した特性を有する酸含有ポリマー組成物を提供する。ポリマー組成物は、酸性不純物を含むポリマーと、酸中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムとを含み得る。一実施形態では、ポリマーは、ポリオレフィンである。
【0011】
一実施形態では、本発明は、6未満の腐食性指数及び良好な色安定性を有する酸性不純物を含有するポリマーを提供する。別の実施形態では、非晶質ケイ酸アルミニウムの屈折率は、ポリマーの屈折率と同じか又は実質的に同じであり得る。
【0012】
本発明の別の実施形態はまた、本発明のポリマー組成物を調製するプロセスを提供する。一般に、プロセスは、酸性不純物を含有するポリマーに、酸中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムを組み込むことを含み得る。別の実施形態では、プロセスは、ポリマー中に6未満の腐食性指数を提供するのに十分な量の非晶質ケイ酸アルミニウムを組み込むことを含み得る。
【0013】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の開示された実施形態の詳細な説明及び添付の「特許請求の範囲」の考察後に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、本開示の技術的解決策に対するより良好な理解を当業者に提供するために、実施形態を参照して更に詳細に説明する。
【0015】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用される次の用語は、次の定義を有する。
【0016】
本明細書における用語「非晶質」は、非結晶性であるか、又は結晶の特徴である長距離秩序を欠く固体形態の材料又は材料類を意味する。典型的には、X線回折では、非晶質固体は、多方向にX線を散乱させ、結晶性固体での高強度のより狭いピークの代わりに、広範囲に分布する大きな隆起をもたらす。
【0017】
本明細書における「約」によって修飾されている数値は、数値がその10%変動し得ることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「腐食性指数」は、金属表面に腐食又は錆を生じ、本明細書の実施例で以下に記載の方法を使用して測定される、組成物の電位の尺度を意味する。
【0019】
本明細書では、用語「中和量」は、ポリマー中の全ての又は実質的に全ての酸性残留物を中和するのに十分な量の非晶質制酸剤を示すために使用される。本明細書では、用語「実質的に全て」は、ポリマー中の全ての酸性残留物のうちの85%超、好ましくは90%超を示すために使用される。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「ポリオレフィン」としては、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ポリプロピレン」とも呼ばれる用語「プロピレン系ポリマー」としては、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0022】
本発明のプロセスは、ポリマー中の酸を中和する方法である。プロセスは、ポリマーを中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムと接触させることを含み得る。プロセスはまた、所望の腐食性指数を提供するのに十分な量の非晶質ケイ酸アルミニウムを提供することを含み得る。ポリマーは、ポリオレフィンであり得る。
【0023】
一実施形態では、ポリオレフィンは、プロピレン系ポリマーである。本開示で使用され得るプロピレン系ポリマーとしては、例えば、プロピレンホモポリマーが挙げられる。代替的に、プロピレン系ポリマーは、プロピレンコポリマーであり得る。このようなプロピレンコポリマーは、プロピレンランダムコポリマーであり得る。プロピレンコポリマーは、プロピレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり得る。α-オレフィンは、2~10個の炭素原子を有し得る。一実施形態では、α-オレフィンは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。プロピレン/α-オレフィンコポリマーの生成に利用される例示的なコモノマーは、C2~C10α-オレフィン、例えば、C2、C4、C6、及びC8α-オレフィンである。代替的に、このようなプロピレンコポリマーは、ヘテロ相プロピレンポリマーであり得る。ヘテロ相プロピレンポリマーは、例えば、マトリックス相及び少なくとも1つの分散相を含み得る。ヘテロ相プロピレンポリマーのマトリックス相は、例えば、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーなどのプロピレン系ポリマーを含み得る。プロピレンコポリマーは、例えば、エチレンプロピレンゴム相を有するインパクトコポリマーポリプロピレン(polypropylene、PP)、又はα-オレフィン-プロピレンゴム相を有するインパクトコポリマーPPであり得る。
【0024】
別の実施形態では、ポリオレフィンは、エチレン系ポリマーである。本開示で使用され得るエチレン系ポリマーとしては、例えば、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)などのエチレンホモポリマーが挙げられる。代替的に、エチレン系ポリマーは、例えば、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、又は線状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)などのエチレンコポリマーであり得る。エチレンコポリマーは、エチレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり得る。α-オレフィンは、3~10個の炭素原子を有し得る。一実施形態では、α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0025】
更に別の実施形態では、ポリオレフィンは、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマーである。α-オレフィンコモノマーは、20個以下の炭素原子を有し得る。例えば、α-オレフィンコモノマーは、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、限定されないが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。
【0026】
ポリオレフィン生成の具体的な様式は、本明細書では限定されない。ポリマーは、気相プロセスによって生成することが好ましい場合がある。代替的に、ポリマーは、液相又はスラリー相プロセスで生成してもよい。重合は、連続的、半連続的、又はバッチ様式で実行することができ、重合系は、当該技術分野において既知の分子水素などの他の材料を含有してもよい。
【0027】
ポリマーを望ましい量の非晶質ケイ酸アルミニウムと接触させる具体的な様式は、本明細書では限定されない。一実施形態では、ポリマーを非晶質ケイ酸アルミニウムと混合して、ポリマーの均一な又は不均一な混合物を形成してもよい。好ましい方法では、高剪断で操作される押出機又は混合デバイスを使用して、非晶質ケイ酸アルミニウム/ポリマーブレンドを混合してもよい。
【0028】
本発明に有用なアルミノケイ酸塩としても知られる非晶質ケイ酸アルミニウムは、酸化アルミニウム(Al2O3)及び二酸化ケイ素(SiO2)に由来する化学化合物である。非晶質ケイ酸アルミニウムは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を更に含有する、非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムであり得る。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、アルカリ金属は、ナトリウムである。
【0029】
非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムはまた、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有してもよい。一実施形態では、アルカリ土類金属は、マグネシウムである。
【0030】
好ましい一実施形態では、非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムは、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウム(sodium magnesium aluminum silicate)である。ケイ酸アルミニウム中のマグネシウム含有量(酸化マグネシウム(MgO)の形態)は、中和されるポリマー中の酸性基の量に応じて変動し得る。一実施形態では、酸化マグネシウム含有量は、合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの約0.5重量%~約10重量%の範囲である。好ましい一実施形態では、酸化マグネシウム含有量は、合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの1.0重量%~約9.0重量%の範囲である。最も好ましい一実施形態では、酸化マグネシウム含有量は、合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの1.5重量%~約8.0重量%の範囲である。
【0031】
一般に、非晶質ケイ酸アルミニウムは、約0.2μm~約10.0μm、好ましくは約0.5μm~5μmの範囲の平均粒径を有する。非晶質ケイ酸アルミニウムは、7.0~13.0の範囲、好ましくは8.0~12.0の範囲、より好ましくは9.0~11.0の範囲のpHを有し得る。
【0032】
一実施形態では、非晶質ケイ酸アルミニウムの屈折率は、ポリマーの屈折率と同じか又は実質的に同じであり得る。本明細書では、「実質的に同じ」は、2つの屈折率間の絶対差が、ポリマーの屈折率の1.5%以下であることを意味する。好ましくは、2つの屈折率間の絶対差は、ポリマーの屈折率の1.0%以下である。
【0033】
非晶質ケイ酸アルミニウムは、任意の従来の手段を使用して調製することができる。例えば、イギリス特許第925001号、米国特許第3798046号、同第3909286号、同第4339421号、又は欧州特許第07001534号に記載のものと同様の調製プロセスを用いる、ケイ酸ナトリウム、塩化アルミニウム、又はアルミン酸ナトリウム、塩化マグネシウム及び硫酸などの鉱酸を使用する沈殿プロセスから、ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムなどの非晶質ケイ酸アルミニウムを調製することができる。
【0034】
非晶質ケイ酸アルミニウムは、酸中和量で酸性不純物を含むポリマーに組み込まれるか、又はブレンドされる。一実施形態では、ポリマーに組み込まれる非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量は、ポリマーの約0.005重量%~約2.0重量%の範囲、好ましくはポリマーの約0.010重量%~約1.0重量%の範囲、より好ましくはポリマーの約0.015重量%~約0.8重量%の範囲であり得る。
【0035】
別の実施形態では、ポリマーに組み込まれる非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量は、ポリマーの腐食性指数を6未満、好ましくは3未満、より好ましくは1未満に低減するのに十分な量であり得る。
【0036】
非晶質ケイ酸アルミニウム制酸剤に加えて、本発明のポリマー組成物は、他のポリマー構成成分、並びにポリマー組成物の様々な目的のために当該技術分野において従来用いられている染料、顔料、充填剤、酸化防止剤、二次酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤(例えば、エルカミド)、離型剤、核形成剤(ポリマー性及び非ポリマー性のいずれか)、UV安定剤、抗ブロック剤、及び難燃剤などの成分又は添加剤を含む、追加の構成成分を含み得る。典型的には、これらの追加の構成成分は、ポリマー組成物の意図される用途に応じて従来の量で使用されるであろう。
【0037】
非晶質ケイ酸アルミニウム及び任意選択的な追加の構成成分をポリマーに組み込む具体的な様式は、本明細書では限定されない。本明細書では、ポリマーを非晶質ケイ酸アルミニウムと混合する任意の従来の方法を利用してもよい。一実施形態では、ポリマーを中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムと混合して、高剪断で操作される押出機又は混合デバイスによって、ポリマーと非晶質ケイ酸アルミニウムとの均一又は不均一な混合物を形成する。一実施形態では、ポリマーは、溶融状態で非晶質ケイ酸アルミニウムと混合される。別の実施形態では、ポリマーと非晶質ケイ酸アルミニウムとの混合物を加熱してポリマーを溶融させる。その後、溶融混合物を本明細書に上述のように混合して、均一又は不均一な混合物を形成する。更に別の実施形態では、ポリマー及び非晶質ケイ酸アルミニウムを好適な溶媒中に溶解して、溶液又は分散液を形成してもよく、次いでこれをキャスティングし、乾燥させてポリマー組成物を形成してもよい。
【0038】
本発明のポリマー組成物は、腐食性、色安定性、及び透明度の向上した特性を有する。予想外にも、ポリマー組成物は、6未満、好ましくは3未満、より好ましくは1未満の腐食性指数によって証明されるように、腐食が発生しにくい。ポリマー組成物はまた、増加した透明度を呈する。一般に、ポリマー組成物の透明度は、約1mmの厚さを有する射出成形(injection molding、IM)プラークで測定すると、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%である。ポリマー組成物の透明度の測定についての詳細は、実施例に更に下述される。
【0039】
本発明のポリマー組成物を加工して、従来ポリマーで作製されている多様な製品を提供することができる。かかる製品としては、例えば、フィルム、繊維、成形物品、押出成形形材、シート、ボード、接着剤、発泡体、ワイヤコーティング、又は他の加工部品などの物品を挙げることができる。ポリマー組成物から調製された物品は、押出成形、ブロー成形、キャストフィルム加工、又は射出成形などの従来の手段に従って調製することができる。一実施形態では、物品は、フィルム又は繊維である。
【0040】
本発明によるポリマー/制酸剤組成物を使用して調製された物品は、加工装置に有害であり得る酸性残留物が低減されている。更に、透明な又は透過性のポリマー組成物を必要とする物品では、改善された透明度を呈する。
【0041】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示を目的として提示されたものであり、包括的であることを意図するものでも、開示された実施形態に限定されるものでもない。記載された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実用的又は技術的改良、又は当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
【0042】
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に述べる。但し、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0043】
次の実施例は、本発明の非晶質ケイ酸アルミニウム制酸剤及びいくつかの他の種類の制酸物質をポリプロピレンに組み込むこと、試験方法、及び比較結果について説明する。これらの実施例は、例示目的のみを意図し、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
材料
【0044】
2.9g/10分(ASTM D-1238)(測定値)のホモポリマーポリプロピレン粉末サンプルを、Grace UNIPOL(登録商標)PPパイロットプラントで、CONSISTA(登録商標)(を用いて作製した。
【0045】
一次酸化防止剤Irganox(登録商標)1010及び二次酸化防止剤Irgafos(登録商標)168をBASFから取得した。下述の全ての実施例では、一定レベルの500ppmのIrganox(登録商標)1010及び750ppmのIrgafos(登録商標)168を使用した。Faci(Jurong Island、Singapore)からのCaSt(ステアリン酸カルシウム)、及びKyowa(日本)からの水酸化アルミニウムマグネシウム炭酸塩(水和物)。W.R.Graceからの非晶質カルシウムイオン交換シリカ(カルシウムイオン交換シリカゲル)。結晶性アルミノケイ酸ナトリウム1及び2(ゼオライト)は、異なる孔径(それぞれ4Å及び8Å)を有する市販の結晶性アルミノケイ酸ナトリウム粒子であり、両方ともW.R.Graceにより供給された。非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムを、下記のように調製した。
【0046】
典型的には、全てのサンプルに使用される制酸剤の量は、以下の実施例に記載のように、180ppm又は300ppmのいずれかであった。
【0047】
【表1】
非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムの調製:
【0048】
異なるMg含有量を有する非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムのサンプル1~6を次のように調製した:(所望の量のMg含有量で所定の比の)硫酸アルミニウム及び塩化マグネシウムの水溶液を、強く撹拌しながらケイ酸ナトリウム溶液(0.8%SiO2)に添加して、84℃で5分以内に溶液のpHを8.9まで低下させることによって、沈殿プロセスを開始した。5分後、硫酸アルミニウム/塩化マグネシウム、及びケイ酸ナトリウム溶液の両方を、添加中に溶液のpHが約8.9に保持されるような溶液に対する比で、同時に添加した。合計反応時間は、約74分であった。添加が完了した後、沈殿した粒子を濾過し、DI水で5回洗浄し、次いで120℃で一晩乾燥させ、流体エネルギーミル若しくはジェットミル、又は小規模分析ミルを利用して所望の粒径に粉砕した。
誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)を使用する、非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウム中のMg含有量の決定:
【0049】
約0.5gのアルミノケイ酸塩粒子を、47mmのID及び214mmの高さを有するテフロン製消化チューブに添加した。1mLの40ppmコバルト塩溶液を、内部標準物質としてアルミノケイ酸塩に添加した。25mLの60%HClO4、5mLの69%HNO3、3mLの37%HCl、及び12mLの48%HFを容器に添加した。混合物を加熱ブロック上に置き、550Fで90分間消化させた。次いで、残りの溶液を、DI水で250mLに希釈した。冷却したサンプルを、Spectro Arcos II機器で分析した。
水中での非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムの滴定:
【0050】
3グラムの非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムを40mLの水でスラリー化し、スラリーを0.1MのHClでpH6.0に滴定した。消費したHClの体積を記録した。
【0051】
表2は、上で調製した非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムのサンプル1~6の、MgOの量及びHClの滴定体積を列挙する。
【0052】
【0053】
表2から分かるように、HClの滴定体積は、サンプル中の組成物としてのMgOの量に比例する。
粒子の窒素細孔容積及び粒径の測定
【0054】
アルミノケイ酸塩又は他の粒子の窒素細孔体積を、Quantachrome Instrument(Boynton Beach,FL)から入手可能なAutosorb(登録商標)iQ分析器を使用して測定した。それぞれ、窒素圧を0.01%気圧から0.998%気圧に増加させ、その後、0.998%気圧から0.025%気圧に減少させて、77Kで窒素吸脱着等温線を測定した。BJH理論に基づくAsiQwin(商標)5.0バージョンプログラムを使用して、細孔体積を計算した。例えば、Barrett et al.,The Determination of Pore Volume and Area Distributions in Porous Substances.I.Computations from Nitrogen Isotherms,J.Am.Chern.Soc.、1951年、73(1)、pp373~380を参照されたい。その主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
ASTM B822-10に従って、Malvern Instruments Ltd.から入手可能なMalvern Mastersizer 2000又は3000を使用する光散乱によって、実施例で報告される粒径を決定した。
プロセス及び試験方法
ポリマー押出成形及び押出成形条件
【0056】
実施例で以下に示す量の制酸添加剤を含む、2.9g/10分(ASTM D-1238)と測定したサンプルを押出成形した。
【0057】
サンプル配合物を乾燥混転し、次いで、高エネルギースクリュー構造を有するW&P 28mm二軸押出機でペレット化した。50℃の水バッチに供給するストランドダイ、続いてペレット化ユニットを備えた押出機を、300rpm、210-220-235-235℃の温度プロファイル(供給ホッパーからダイまで)で運転した。供給口をN2ブランケット下に維持した。この工程から作製されたペレットを、押出機ゼロ回通過とみなし、MFR、腐食性、透明度、及び黄色度指数(Yellowness index、YI)試験に使用した。
【0058】
次いで、配合物の各々を、上述と同じ条件下で、このW&P 28mm二軸押出機で更に3回(再度)押出成形した。
メルトフローレート(MFR)及び黄色度指数(YI)の測定
【0059】
MFRは、Tinius Olsen Melt Indexer MP993を介してASTM D1238に従って測定した(PPについては、230℃で2.16kgを使用して試験を行った)。全てのペレットの黄色度指数を、ASTM D6290屈折率(Reflective index、RI)測定に従って、Hunter Lab Scan XE卓上分光光度計で測定した。
【0060】
正確なRIは、暗視野モードのNikon位相差顕微鏡でBeckeライン技法を介して、ASTM C1648に従って測定した。RIが一致する液体は、Cargille Laboratories(Cedar Grove,NJ 07009,USA)から購入した。ポリプロピレンフィルムの屈折率を、1.505と測定した。バルク材料屈折率として、この値を使用した。
腐食試験
【0061】
次の手順を使用して、炭素鋼プレート(軟鉄シート:5cm×5cm、厚さ0.07cm)上で、制酸剤の腐食防止能を測定した。
【0062】
炭素鋼プレートを、真鍮ブラシで軽石粉末を用いて研磨して、新たな表面を露出させた。プレートの表面積は、プレートの寸法に基づいて計算し、したがってSA=5×5×2+0.07×5×4であった。配合したペレットをアルミニウムパンに入れ、230℃のオーブンで加熱した。次いで、これらの新たに研磨した鋼プレートをポリマー溶融物(230℃)に入れ、4時間放置した。次いで、プレートをポリマー溶融物から取り出し、プレート表面上のポリマーを拭き取った。次いで、プレートを秤量し(m
0、初期重量)、次いで、室温で1週間、~75%の相対湿度の湿度チャンバ内に静置した。1週間後、プレートをチャンバから取り出し、慎重に秤量した(m
1、腐食後の重量)。腐食性指数は、等式1に従って計算した。
【数1】
等式から分かるように、腐食性指数が0に近いほど腐食が発生しにくい。
透明度の測定
【0063】
25mmバレルを備えたArburg Allrounder 221k 28Ton射出成形機で、多様な厚さのプラークを作製した。射出成形機には、13.8mm/秒の射出速度を使用した。バレル温度を、260℃(ノズル)に設定した。単一段階の射出形材を使用し、鋳型の温度を40℃(±2℃)に設定した。背圧を0バールに設定した。表3は、成形プロセス用に設定したサイクル時間を列挙する。
【表3】
成形後、プラークを23℃±2℃、相対湿度50±10%下で72時間調整し、ASTM D1746に従って、BYK Gardner Haze-Gard Plus 4725で、透明度を試験した。
実施例1
【0064】
180ppmの非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムのサンプル1と共に上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
実施例2
【0065】
300ppmの非晶質アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウムのサンプル1と共に上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例1
【0066】
任意の制酸添加剤を含まない上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例2
【0067】
300ppmのステアリン酸カルシウムを含む上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例3.
【0068】
180ppmの水酸化アルミニウムマグネシウム炭酸塩を含む上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例4
【0069】
180ppmの非晶質カルシウムイオン交換シリカを含む上述ポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例5
【0070】
300ppmの非晶質カルシウムイオン交換シリカを含む上述ポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例6
【0071】
180ppmの結晶性アルミノケイ酸ナトリウム1を含む上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例7
【0072】
300ppmの結晶性アルミノケイ酸ナトリウム1を含む上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例8
【0073】
180ppmの結晶性アルミノケイ酸ナトリウム2を含む上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
比較例9
【0074】
300ppmの結晶性アルミノケイ酸ナトリウム2を含む上述のポリプロピレンをブレンドし、押出成形した。
【0075】
全ての実施例(Exp1及びExp2)、比較例(CE1~CE9)の試験結果を次の表4に列挙した。
【表4】
【0076】
表4に示されるように、予想外にも、非晶質ケイ酸アルミニウムマグネシウムを含有するポリオレフィン組成物は、非安定化系、及び他の種類の制酸剤で安定化したものと比較して、優れたMFR及び色安定性、並びに腐食性の低減を伴い、透明度を顕著に改善する。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
ポリマー中の酸を中和する方法であって、ポリマーを中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムと接触させることを含む、方法。
[2]
前記ポリマーが、ポリオレフィンである、1に記載の方法。
[3]
前記ポリオレフィンが、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマー、又はそれらの混合物である、2に記載の方法。
[4]
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、又はそれらの混合物である、3に記載の方法。
[5]
前記プロピレンコポリマーが、プロピレンランダムコポリマーである、4に記載の方法。
[6]
前記プロピレンコポリマーが、プロピレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、2~10個の炭素原子を有する、5に記載の方法。
[7]
前記α-オレフィンが、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種である、6に記載の方法。
[8]
前記プロピレンコポリマーが、ヘテロ相プロピレンポリマーであり、前記ヘテロ相プロピレンポリマーが、マトリックス相及び少なくとも1つの分散相を含む、5に記載の方法。
[9]
前記ヘテロ相プロピレンポリマーの前記マトリックス相が、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを含む、8に記載の方法。
[10]
前記エチレン系ポリマーが、エチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、又はそれらの混合物である、3に記載の方法。
[11]
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、3~10個の炭素原子を有する、11に記載の方法。
[12]
前記α-オレフィンが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種である、12に記載の方法。
[13]
前記エチレン系ポリマーが、HDPE又はLLDPEである、10に記載の方法。
[14]
前記ポリオレフィンが、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとの前記コポリマーであり、前記α-オレフィンが、20個以下の炭素原子を有する、3に記載の方法。
[15]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムが、アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムである、1に記載の方法。
[16]
前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属を含有する、15に記載の方法。
[17]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有する、15に記載の方法。
[18]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムである、15に記載の方法。
[19]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの0.5重量%~約10重量%の量の酸化マグネシウムを含む、18に記載の方法。
[20]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、約0.5μm~約10.0μmの範囲の平均粒径を有する、1又は18に記載の方法。
[21]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、7~12の範囲のpHを有する、1又は18に記載の方法。
[22]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの6未満の腐食性指数を提供するのに十分な量である、1又は15に記載の方法。
[23]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.005重量%~約2.0重量%の範囲である、1又は15に記載の方法。
[24]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.010重量%~約1.0重量%の範囲である、15に記載の方法。
[25]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.015重量%~約0.8重量%の範囲である、15に記載の方法。
[26]
前記非晶質アルカリケイ酸アルミニウムの屈折率が、前記ポリマーの屈折率と実質的に同じである、15に記載の方法。
[27]
酸性不純物を含有するポリマーの腐食性を低減するプロセスであって、前記プロセスが、
前記ポリマーに、酸中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムを組み込んで、6未満の腐食性指数を有するポリマー組成物を得ることを含む、プロセス。
[28]
前ポリマーが、ポリオレフィンである、27に記載のプロセス。
[29]
前記ポリオレフィンが、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマー、又はそれらの混合物である、28に記載のプロセス。
[30]
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、又はそれらの混合物である、29に記載のプロセス。
[31]
前記プロピレンコポリマーが、プロピレンランダムコポリマーである、30に記載のプロセス。
[32]
前記プロピレンコポリマーが、プロピレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、2~10個の炭素原子を有する、30に記載のプロセス。
[33]
前記α-オレフィンが、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種である、32に記載のプロセス。
[34]
前記プロピレンコポリマーが、ヘテロ相プロピレンポリマーであり、前記ヘテロ相プロピレンポリマーが、マトリックス相及び少なくとも1つの分散相を含む、30に記載のプロセス。
[35]
前記ヘテロ相プロピレンポリマーの前記マトリックス相が、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを含む、34に記載のプロセス。
[36]
前記エチレン系ポリマーが、エチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、又はそれらの混合物である、29に記載のプロセス。
[37]
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、3~10個の炭素原子を有する、36に記載のプロセス。
[38]
前記α-オレフィンが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種である、37に記載のプロセス。
[39]
前記エチレン系ポリマーが、HDPE又はLLDPEである、36に記載のプロセス。
[40]
前記ポリオレフィンが、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとの前記コポリマーであり、前記α-オレフィンが、20個以下の炭素原子を有する、28に記載のプロセス。
[41]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムが、アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムである、27に記載のプロセス。
[42]
前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属を含有する、41に記載のプロセス。
[43]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有する、41に記載のプロセス。
[44]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムである、41に記載のプロセス。
[45]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、合計非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムの0.5重量%~約10重量%の量の酸化マグネシウムを含む、44に記載のプロセス。
[46]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムが、約0.5μm~約10.0μmの範囲の平均粒径を有する、27又は44に記載のプロセス。
[47]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムが、7~12の範囲のpHを有する、27又は44に記載のプロセス。
[48]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの1未満の腐食性指数を提供するのに十分な量である、41に記載のプロセス。
[49]
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.005重量%~約2.0重量%の範囲である、41に記載のプロセス。
[50]
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.010重量%~約1.0重量%の範囲である、41に記載のプロセス。
[51]
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.015重量%~約0.5重量%の範囲である、41に記載のプロセス。
[52]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの屈折率が、前記ポリマーの屈折率と実質的に同じである、41に記載のプロセス。
[53]
前記ポリマー組成物の透明度が、約1mmの厚さを有するIMプラークで測定すると、少なくとも約60%である、27に記載のプロセス。
[54]
酸性不純物を含むポリマーと、酸中和量の非晶質ケイ酸アルミニウムとを含む、腐食性の低減されたポリマー組成物。
[55]
前記ポリマーが、ポリオレフィンである、54に記載のポリマー組成物。
[56]
前記ポリオレフィンが、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとのコポリマー、又はそれらの混合物である、55に記載のポリマー組成物。
[57]
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、又はそれらの混合物である、56に記載のポリマー組成物。
[58]
前記プロピレンコポリマーが、プロピレンランダムコポリマーである、57に記載のポリマー組成物。
[59]
前記プロピレンコポリマーが、プロピレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、2~10個の炭素原子を有する、57に記載のポリマー組成物。
[60]
前記α-オレフィンが、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種である、59に記載のポリマー組成物。
[61]
前記プロピレンコポリマーが、ヘテロ相プロピレンポリマーであり、前記ヘテロ相プロピレンポリマーが、マトリックス相及び少なくとも1つの分散相を含む、57に記載のポリマー組成物。
[62]
前記ヘテロ相プロピレンポリマーの前記マトリックス相が、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを含む、61に記載のポリマー組成物。
[63]
前記エチレン系ポリマーが、エチレンホモポリマー、エチレンコポリマー、又はそれらの混合物である、56に記載のポリマー組成物。
[64]
前記エチレンコポリマーが、エチレンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであり、前記α-オレフィンが、3~10個の炭素原子を有する、63に記載のポリマー組成物。
[65]
前記α-オレフィンが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される少なくとも1種である、64に記載のポリマー組成物。
[66]
前記エチレン系ポリマーが、HDPE又はLLDPEである、65に記載のポリマー組成物。
[67]
前記ポリオレフィンが、少なくとも1種のα-オレフィンとジエンとの前記コポリマーであり、前記α-オレフィンが、20個以下の炭素原子を有する、56に記載のポリマー組成物。
[68]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムが、アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムである、54に記載のポリマー組成物。
[69]
前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属を含有する、68に記載のポリマー組成物。
[70]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有する、68に記載のポリマー組成物。
[71]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、非晶質ケイ酸アルミニウムナトリウムマグネシウムである、68に記載のポリマー組成物。
[72]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムが、約0.5μm~約10.0μmの範囲の平均粒径を有する、54又は71に記載のポリマー組成物。
[73]
前記非晶質ケイ酸アルミニウムが、7~12の範囲のpHを有する、54又は71に記載のポリマー組成物。
[74]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの腐食性指数を6未満に低減するのに十分な量である、54又は68に記載のポリマー組成物。
[75]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.005重量%~約2.0重量%の範囲である、54又は68に記載のポリマー組成物。
[76]
前記ポリマー中の前記非晶質ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.010重量%~約1.0重量%の範囲である、75に記載のポリマー組成物。
[77]
前記ポリマー中の前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの量が、前記ポリマーの約0.015重量%~約0.5重量%の範囲である、75に記載のポリマー組成物。
[78]
前記非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムの屈折率が、前記ポリマーの屈折率と実質的に同じである、68に記載のポリマー組成物。
[79]
前記ポリマー組成物の透明度が、約1mmの厚さを有するIMプラークで測定すると、少なくとも約60%である、71に記載のポリマー組成物。
[80]
54に記載のポリマー組成物から作製された、物品。
[81]
前記物品が、繊維、成形物品、押出成形形材、シート、ボード、接着剤、発泡体、ワイヤコーティング、又は他の加工部品からなる群から選択される少なくとも1つである、80に記載の物品。
[82]
前記物品が、フィルム、又はシート、又は繊維、又は成形物品である、81に記載の物品。
[83]
前記物品が、フィルムである、82に記載の物品。