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特許7382341赤血球沈降速度及び他の関連パラメータを決定するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】赤血球沈降速度及び他の関連パラメータを決定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20231109BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20231109BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G01N35/08 C
G01N33/49 C
G01N35/08 B
G01N35/08 E
G01N37/00 101
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020557217
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 IT2019050077
(87)【国際公開番号】W WO2019202621
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】102018000004630
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518079770
【氏名又は名称】アリファックス ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ALIFAX S.R.L.
【住所又は居所原語表記】VIA PETRARCA 2/1 35020 POLVERARA (PD) ITALY
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ガリアーノ パオロ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523580(JP,A)
【文献】特開昭51-058373(JP,A)
【文献】特開昭55-125472(JP,A)
【文献】特開平07-083807(JP,A)
【文献】特表2004-511788(JP,A)
【文献】特開平06-058942(JP,A)
【文献】特表2009-501324(JP,A)
【文献】特表2005-526481(JP,A)
【文献】特開2011-075417(JP,A)
【文献】特開2009-288228(JP,A)
【文献】特開2005-077148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00-15/14
G01N33/48-33/98
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球沈降速度を決定するための装置であって、
試験管(22)内にある分析される血液サンプルを取得するためのサンプリング部材(11)と、
内部に前記血液サンプルを導入可能なパイプ(12)であって、100~2000nmの範囲内の電磁放射線を通すパイプ(12)と、
前記サンプリング部材(11)を前記パイプ(12)に接続するとともに、内部を前記血液サンプルが循環するよう構成された回路(13)と、
前記回路(13)に関連付けられたポンプ(14)であって、2つの連続的な血液サンプルの間に気泡を作成する手段と協働するポンプ(14)と、
前記分析後に前記血液サンプルを排出するための排出パイプ(15)と、
相手方の検出器デバイス(17)に関連付けられた放射線エミッタデバイス(16)を備え、前記検出器デバイス(17)と前記放射線エミッタデバイス(16)とで測定ゾーンを画定する測定機器であって、
前記装置の機能をマネジメント可能な制御及び処理ユニット(20)と、
前記デバイス(16及び17)を前記制御及び処理ユニット(20)に接続するためのインターフェースユニット(18)と、を備え、
前記ポンプ(14)は、各測定サイクルにおいて、30マイクロリットルから180マイクロリットルの範囲の血液の量を取得するよう構成され、
前記測定機器は、前記初めのサンプルの量の最後の約1マイクロリットルについて測定を行うよう構成され、
前記装置は、前記試験管(22)内に含まれる前記血液についてプログラムされた混合サイクルを行うために、前記サンプリングの前に前記試験管(22)を回転又は傾斜させる手段(23)をさらに備え、
前記サンプリング部材は、ストッパが上を向くよう配向された前記試験管(22)とストッパが下を向くよう配向された前記試験管(22)とから前記血液サンプルを取得するための手段(11,11a)を備え、
前記検出器デバイス(17)は、所定閾値よりも低い温度値の血液サンプルが廃棄されるよう前記血液サンプルの温度値を検出する機能と、ヘマトクリット値が25%未満の血液サンプルが廃棄されるよう前記血液サンプルのヘマトクリット値を検出する機能と、のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパイプ(12)に関連付けられた読み取りチャンバ(50)を備え、
前記読み取りチャンバ(50)は、少なくとも部分的にある範囲の波長の放射線を通すよう構成されるとともに、内部に前記分析される血液サンプルが導入される減じたサイズを有する略直線的なセグメントを少なくとも1つ有し、
前記読み取りチャンバ(50)は、前記パイプ(12)と流体連通するよう連結された毛細管チャネルを画定する、プラスチック材料又はガラスからなる管(51)から構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記読み取りチャンバ(50)は、無重力の条件下でも前記血液サンプルを読み取ることができるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記読み取りチャンバ(50)及び/又は前記毛細管(51)は断面積が0.8μm2
である、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記読み取りチャンバ(50)はサーモスタット手段と関連付けられている、請求項2~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記サンプルを分析する前に当該サンプルを混合する手段であって、傾ける又は回転させるタイプの手段を備える、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記検出器デバイス(17)は、700nm~1mmの波長の電磁波を検出するよう構成されている、請求項1~6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ポンプ(14)は、設定された読み取りポイントに前記血液サンプルを移動させるよう構成されたぜん動ポンプである、請求項1~7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記制御及び処理ユニット(20)は、前記検出器デバイス(17)によって検出された値とあらかじめ決められた値とを比較し、前記血液サンプルが不適切である可能性があることをユーザに信号で伝えるよう構成されている、請求項1~8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の回路(13)から独立した別の回路(13a)が設けられた第2の外部サンプリング部材(11a)を備え、
前記第2のサンプリング部材(11a)は、前記試験管内に下から上向きに挿入される、請求項1~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
赤血球沈降速度を決定するための方法であって、
エミッタ手段(16)によって、試験管(22)内に配置された検査すべきサンプルを通過する放射線を放出することと、
検出器手段(17)によって、前記サンプルを通過後の放射線を検出することと、を有し、
前記サンプルは、ポンプ(14)による作用によって、測定ゾーンを通過するパイプ(12)内に導入され、
前記検出器手段(17)は、読み取り及び測定ポイントを画定しており、
前記方法は、
気泡が検出ポイントを通過した時から開始するゼロ検出ポイントを決定するために、前記パイプ(12)内で2つの連続的な血液サンプル間に前記気泡を作成することと、
前記エミッタ手段(16)及び前記検出器手段(17)によって、前記血液サンプルの既知のあらかじめ決められた量の最後のフラクションについて検出結果を得るために、前記ポンプ(14)を制御しながら駆動させることと、を有し、
前記方法は、前記検出器手段(17)を用いて、所定閾値よりも低い温度値の血液サンプルが廃棄されるよう前記血液サンプルの温度値を検出する機能と、ヘマトクリット値が25%未満の血液サンプルが廃棄されるよう前記血液サンプルのヘマトクリット値を検出する機能と、のうちの少なくとも1つを実行する、方法。
【請求項12】
前記気泡の下流にある数マイクロリットルという血液のあらかじめ決められた量が、当該量について測定が行われることなく、不活性通路としての前記測定ゾーンを通過して流され、前記サンプルの読み取りが1マイクロリットルの体積の部分について開始されるように、前記測定ゾーンに対して前記読み取り及び測定ポイントが位置している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法を、EDTA/クエン酸塩タイプの試験管から取得された全血の体積を用いて及び/又は患者から採取されたばかりの未変性血液の体積を用いて行う、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定の精度をキャリブレートするために濁り度を有するラテックスを用いる、請求項11~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルを外気にさらすために、分析前に前記試験管(22)のストッパを穿孔する、請求項11~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルの1回の読み取り中に複数の検出器デバイス(17)によって放射線を検出する、請求項11~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記試験管(22)内に含まれる血液の量について前記サンプルの可変混合を行うことよって、赤血球の凝集体を検出する、したがって前記赤血球沈降速度を測定する、請求項11~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
混合の後に、前記ストッパが設けられた部分が下を向くように前記試験管(22)をひっくり返す、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記エミッタ手段(16)及び前記検出器手段(17)によって、毎秒1000パルスの電磁放射線を用いて、赤血球の凝集体を検出する、したがって前記赤血球沈降速度を測定する、請求項11~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
データベース(27)内に含まれる値に基づいて集団の統計的管理を行う、請求項11~19の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分析の分野において赤血球沈降速度(ESR)及びこれに関連する他のパラメータを決定するために使用される装置及び対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学分析の分野において、炎症性と定義される病理学的状態は、血液の小体部分、特に赤血球(erythrocytes)又は赤血球(red cells)の沈降速度を測定することによって確認される。特に、赤血球沈降速度は炎症の状態の非特異的診断試験を代表するものである。
【0003】
ESRを決定するために様々な方法が採用されているが、検出のスピードと実用性の観点からは完全に満足できるものであるとは証明されていない。
【0004】
異なる測定システムを用いるこれらの方法では、患者から採取した血液を筒状容器又は試験管に導入し、続いて、遠心分離を行うのであれば遠心分離を行った後、血液サンプルについて必要な測定が行われる。
【0005】
いくつかの知られているシステムでは、所定の時間インターバルで、実質的に透明な血液の流体原形質部分と、より混濁している赤血球及び白血球及び血小板からなる血液体部分と、の分離境界の位置を検出する。
【0006】
他のシステムでは、代わりに分離境界に関係する血液の光学濃度又は吸光度を検出する。
【0007】
これまでに提案されたESRを決定する方法は、一般的に、分析の総合時間に大きく影響する最初のデッドタイムによって特徴付けられ、したがって、例えば血球計算分析のような他のはるかに速い分析と連続的に行うことができない。
【0008】
さらに、知られている方法は使い捨て容器を使用しなければならず、これにはそれらの購入及び廃棄の両方の面で費用の増大を伴う。この場合も分析に必要な血液量は多く、例えば小児について分析を行わなければならない場合など特定の場合に問題となる。
【0009】
また、分析対象の血液をこれが保存されている容器から取得し、これを減じた厚さの測定体積内に挿入する方法も知られており、この方法は様々なサンプルについて行われる様々な測定に使用される。この方法は、血液の沈降を加速するために回転される測定体積の固定ポイントにおける血液の光学濃度又は吸光度の検出に基づいている。
【0010】
吸光度を検出するために使用される手段は、測定体積に関連付けられた電磁放射線エミッタ/検出器デバイスを含む。検出された吸光度の値は、観測ポイントにおける血液サンプル中に存在する血球数に正比例し、この数は血球自体の沈降により経時的に変化する。
【0011】
吸光度を経時的に調べることによって、最初のデッドタイムをなくすことでESRの値をトレースすることができ、分析に使い捨て容器を使う必要がなくなる。
【0012】
さらに、分析対象の血液の必要量が少なくなり、したがって、小児患者にも無理なく分析を行うことができる。
【0013】
これらのメリットにもかかわらず、この方法においては、この方法の完全に満足のいく使用を制限するいくつかの課題が特徴的に存在する。
【0014】
ESR測定装置の大きさと複数の遠心分離手段の管理の困難さによって、このシステムを血球カウント用の統合機器と結合させる可能性が制限される。さらに、その大きさは実験室で分析を行う必要性を伴い、分析手順そのものもかなりの量の血液を必要とする。
【0015】
さらに、各測定の後、遠心分離手段及びこれに関連するボリュームは、エミッタ/検出手段に対して常に再配置せねばならず、これにより血液の流れの制御に障害及び異常が生じる。
【0016】
この装置では、分析後に血液サンプルが排出され、新しい血液サンプルが測定体積に導入される。
【0017】
排出後に測定量を洗い流すことを避けるために、すでに分析されたサンプルの残留物は、新たな分析対象血液サンプルによって排出されるが、汚染を避けるために血液が完全に通過しなければならない水路はかなり長くなり、これにより使用血液量が増大する。
【0018】
この方法におけるさらなる制限は、光度計データの取得が測定体積の回転速度に依存し、したがって連続的現象として考慮することができないという事実によりもたらされる。
【0019】
例えば、本出願人によるUS 5,827,746、EP 1.907.819又はEP 2.880.418において、上記の問題の一部に対する解決手段が提案されている。しかしながら、精密性、効率及び汎用性の観点から、広範囲の患者及び異なる動作条件にさらに適応可能な方法論的解決手段を提供するために、従来技術装置をさらに完璧にする必要性がある。
【0020】
したがって、本発明の目的の1つは、高速かつ簡易かつ信頼性の高い分析を行うことができるとともに、異なるタイプの血液学分析と組み合わせて行うこともできる、赤血球沈降速度及び他の関連パラメータを決定するための方法及び対応する装置を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、この装置を既存の血球カウントシステムに組み込み、したがって同じ血球カウンタによって既に行われた血液の均質化を利用できるようにすることである。
【0022】
本発明の別の目的は、コンパクトで、輸送が簡単で、いかなる条件及び環境下でも実用的であり、例えば所謂POC(ポイント・オブ・ケア)用などの廃棄可能な歩行用又は病院機器として使用することができ、そして小児患者に関する分析に特に適した装置を提供することである。
【0023】
本出願人は、従来技術の欠点を克服するため及び上記の及び他の目的及び利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具現化した。
【発明の概要】
【0024】
本発明は独立請求項において記載され特徴づけられており、従属請求項においては本発明の他の特徴又は主要な発明の思想に対するバリエーションが記載されている。
【0025】
上記の目的にしたがって、本発明に係るESRを決定するための装置は、その大まかな構造において、ある範囲の波長の放射線を通すよう構成されるとともに、内部に分析対象の血液サンプルが導入されて通過させられる大幅に減じたサイズを有する略直線的なセグメントを少なくとも1つ有する毛細管を備える。
【0026】
本明細書において、放射(線)とは、特に可視領域の電磁波と、例えば音波、超音波又は機械的振動及びこの文脈において用いることができるあらゆる他のタイプの放射などの、しかしながらこれらに限定されない、波動メカニクスの原理に従う異なる波と、の両方を指すことを意図している。
【0027】
したがって、以下において、特に図面についての詳細な記載において、光放射及び光学エミッタ/検出器を参照しているものの、本発明は上述のように全てのタイプの放射に同等に適用可能であることは理解されよう。
【0028】
また、上記装置は、毛細管内部に血液サンプルを送ることができるポンプ手段を備え、これにより、エミッタデバイスにより発せられ、かつ、当該エミッタ手段の対向側において測定ゾーンに対応する毛細管のポイントに対応して配置された相手方検出器デバイスによって検出される放射線が、測定ゾーンにおいて、血液サンプルを通過することができるように構成されている。
【0029】
検出器デバイスは、沈降速度又はこれと関連する他のパラメータの表現で検出された値を、通常使用される単位と互換性のある測定単位に変換可能な制御及び処理ユニットに接続されている。
【0030】
可能な実施形態では、ポンプ手段は、毛細管を通って流れる血液の流れを急に中断させるのに適したものとすることができ、これにより血液の流れを大きく減速させ(即ちストップフロー(ストップした流れ)(stopped-flow)となる)、したがって血球の圧縮により血球の凝集及び沈降を生じさせることができる。
【0031】
この圧縮によって、検出器手段によって検出される信号にバリエーションが生じ、その結果としての情報の取得がESRの決定に有用なものとなる。
【0032】
検出の最後において、分析された血液サンプルは回路から排出され、そして、毛細管において、新たな分析対象血液サンプルの受け取りの準備が整う。
【0033】
変形例では、毛細管は読み取りチャンバを備え、この読み取りチャンバと関連しながら測定が行われる。
【0034】
具体的には、本発明のある態様では、読み取りチャンバは、例えば円筒状断面(この形状に限定されない)を有する小さい(毛細管的な)測定管であって、例えばアクリル材料(これに限定されない)などのプラスチック材料又はガラスから作成された毛細管から構成される。毛細管は、これらの材料を用いることで、特に、受信手段によって検出される放射線の入射面及び出射面としても形作ることができる。
【0035】
小さい毛細管は、通常はテフロン(登録商標)から作成された供給パイプと流体連通するよう連結された、分析対象サンプルの通過チャネルを画定する。
【0036】
アクリル材料又はガラスの測定管の具体的な形状は、光、音波又は他の適切な放射線の入射ゾーンが従来の管の場合のように曲面を成す円筒面ではなく略平坦面又は適切に成形された面を有するように、作成されている。
【0037】
さらなる進化的特徴によれば、測定管は対向端即ち出射端においても平坦面を有し、これにより光、音又は他のタイプの放射線の経路はその情報の内容を変えるような曲面によって偏向/屈折されないように構成されている。
【0038】
エミッタ/検出器デバイスに向いた上記略平坦面があることで、放出された放射線は、測定の正確さ及び精度を無くし得る摂動的要因にさらされることがより少なくなる。
【0039】
特に、平坦面を有する上記読み取りウィンドウは、これに入射する放射線と、機械加工に関する基準位置付け公差内のその位置付けとは独立して相互作用する。
【0040】
本発明のさらなる変形例では、上記平坦ウィンドウは、一般的にテフロン(登録商標)から作成された従来の管のものなどのような透明かつ非拡散性の面を成し、光又は音の検出感度を非常に高くすることができる。
【0041】
本発明の変形例では、アクリル材料又はガラスから作成された測定管を有する読み取りチャンバは、上流及び下流において、内部を血液サンプルが移動する例えばテフロン(登録商標)から作成された従来タイプのパイプに接続される。
【0042】
さらなる特徴として、ガラス又はアクリル製の読み取りチャンバは固い容器内に収容され、この固い容器は、分析対象の血液サンプルの経路を画定する上流及び下流のパイプのためのハウジング台座を画定するものである。
【0043】
さらなる実施形態では、上記の固い容器はコリメーション手段も有しており、このコリメーション手段は、読み取りチャンバを通過する光、音又は他のタイプのビームの経路を画定する。
【0044】
測定チャンバのこの構成によって、血液サンプルの粘度の測定を簡単にするとともにより精度の高いものとするストップフロー(ストップした流れ)又はストップ・アンド・フローのステップにおいて、流速を測定することが可能となる。
【0045】
本発明のさらなる特徴では、測定方法は、上記装置の、特に測定セルの上述した特徴によって、サンプルとサンプルの間のコンタミネーションを回避することができ、つまり、連続するサンプル間のコンタミネーションを引き起こすことで誤った測定値の取得又はサンプル間の洗い流しの必要性を生じる所謂「キャリーオーバー」現象が回避される。
【0046】
本発明に係る方法は、極めて少量の血液のサンプルを回収することを含み、例えば30マイクロリットルから180マイクロリットルの範囲の小児の又は毛細管的なサンプリングを容易にすることが可能である。
【0047】
可能な実施形態では、上記方法は、測定機器のキャリブレーション及び調整を改善するためにラテックスを使用することを含む。例えば、測定の精度をキャリブレートするためにレベル3の濁り度を有するラテックスを用いることができる。
【0048】
具体的には、ラテックスを用いることで、機器による計測が正しく機能することを保証する測定及びキャリブレーション性能を保証するために、機器の内部センサの機能を検知することが可能となる。このような側面は、ESRの測定が、例えば血糖の分析などのように外部制御を伴う検査ではないことから、より重要である。
【0049】
本発明によれば、エミッタ及び検出器デバイスを備えた測定機器は、読み取られる各サンプルの移動の終端に対応する、血液の流れにおける特定ポイントに、配置されている。
【0050】
固い支持体の内部に配置されたアクリル又はガラス質材料から作成された読み取りチャンバを使用することで、また、放出された放射線のコリメーションによって、本発明では、前のサンプルのコンタミネーションのない、所謂サンプルの尾と称されるサンプルの末端を、常に測定することが可能となる。
【0051】
さらに、このようにすることで、後続の血液サンプルは全て、測定ポイントにおいて、前のサンプルによって汚染されていない。
【0052】
本発明のある実施形態では、個々の患者についての各小児サンプルの血液の量が30マイクロリットル~180マイクロリットルの範囲となることがある一方で、読み取りチャンバ内の血液の体積は約1マイクロリットルに等しい。
【0053】
特に、本発明によって、血液サンプルがパイプ内の1つのポイントで分析されるものであろうとなかろうと、あるいは読み取りチャンバ内で分析されるものであろうとなかろうと、1マイクロリットルの体積の全血でもサンプルを読み取ることが可能となる。
【0054】
本発明のある特徴によれば、数マイクロリットルという血液が、この部分について測定が行われることなく不活性通路としての読み取りチャンバを通過して流されるように、測定チャンバ、特にガラス又はアクリル管に対して、読み取り及び測定ポイントが位置している。
【0055】
サンプルの読み取りは、初めの体積の最後の5マイクロリットルにおける体積1マイクロリットルの部分について開始される。
【0056】
1マイクロリットルの読み取りチャンバ内を数マイクロリットルの不活性血液が通過することは、機械的な押し出し又は洗い流しの機能を果たす。
【0057】
測定が行われない押し出し体積によって、最後の5マイクロリットルにおいてサンプルとサンプルの間のコンタミネーションを無くすことができる。したがって、分析対象のサンプルの通過によって、前のサンプルに対する自己洗浄効果が得られる。
【0058】
これにより、本発明によって、毛細管サンプリングから得た少量(drops)(例えば25マイクロリットル)に対して測定を行うことができ、同時に、サンプル間の洗浄が不要となり、その結果、本発明は所謂ポイント・オブ・ケア(POC)及び小児への使用に特に適したものとなる。
【0059】
換言すれば、サンプルの順次的な自己洗浄によってキャリーオーバー現象を回避することができる。
【0060】
要約すると、本発明、特に読み取りチャンバの形態及び構造により得られる利点は以下の通りである。
- 小児患者及び毛細管サンプルに非常に適した減じたサンプリング体積を用いてESR測定を行うことが可能である。
- 従来の管の製造に関連する問題によって生じる放射線の偏向に起因する測定精度の低下がない。
- 小児サンプル及び大人の患者のサンプルの両方が、サンプルとサンプルの間のキャリーオーバーを回避するサンプル自体の自己洗浄システムから利益を得る。
- 非常に高いサンプル及び非常に低い代替のサンプルにおける実験的ESR測定試験において、これらの同じサンプルを逆にしたとしても、同じ結果が確認される。
【0061】
本発明に係る装置では、毛細管、血液サンプリング手段及び測定機器は、制御及び処理ユニットから及び結果を表示するシステムがある場合にはこのシステムから区別され分離された輸送可能な構造を成すことができ、また、これら制御及び処理ユニット及びシステムと伝送ケーブルを介して又は無線で接続可能である。
【0062】
このようにして、サンプリング及び分析機器を小型化することができ、これを例えば患者のベッドから直接あるいは困難な条件下のあらゆるケースにおいて使用することができるようになることから、使用に関して極めて高い柔軟性及び汎用性が得られる。
【0063】
また、複数の上記装置を並行して用いること及び異なる血液サンプルについて同じ分析を同時に行うことの両方が可能であり、また、同じ装置を他のデバイスと連続で用いることが可能であり、同じサンプルについて異なるタイプの血液学的分析を行うことが可能となる。
【0064】
さらに、上記装置は、分析に要する時間が非常に短いので、地方診療所、病室、移動式血液学的ユニットにおいて使用することもでき、あるいは、上述のように、他のタイプの血液学的分析用の機器に組み込むこともできる。
【0065】
また、上記装置は、患者から未変性血液を取り出した直後に連続的分析を行うことができるので、血栓の形成前に血液を分析できることから、抗凝血性物質の使用が不要である。
【0066】
特に、検出器手段による連続的なデータ取得によって、血液サンプルの光学濃度をより良く評価することができ、したがって非常に高精度のESR測定が可能となり、例えば気泡又は血栓に起因する血液の流れの潜在的な異常状態を検出することができる。
【0067】
また、流れの連続的な調査は、濃度又は粘度などの血液レオロジーの他のパラメータを決定するのにも用いることができる。
【0068】
可能な実施形態では、制御及び処理ユニットは、サンプルの粘度を、取得されたESR値と比較するよう構成することができる。
【0069】
本発明の好適な解決手段において、ポンプ手段はリバーシブルであり回路内の流れを反転させることができ、これにより、血液サンプルの再均質化をすることができるとともにこれに対する測定を迅速に繰り返すことができる。
【0070】
必要に応じてあらかじめ決めることができる一定温度で分析ができるように、毛細管はサーモスタットで温度管理することができる。
【0071】
したがって、異なる温度に温度管理されかつ直列に配置された毛細管のなかに同じ血液サンプルを通過させることが可能であり、さまざまな分析温度でESR値を評価することができる。
【0072】
この場合、一部の血液成分の沈殿を防止するため及び信頼性のある比較モデルを保証するために、少なくとも1つの毛細管を約37℃の温度に維持することが好ましい。
【0073】
本発明の上記の及び他の特徴は、図面を参照しながら非限定的な例として示されるいくつかの実施形態に関する以下の記載から明らかとなるであろう。
【0074】
なお、理解を補助するため、図面では可能な場合同一の共通要素については同じ参照符号を用いている。ある実施形態の要素及び特徴を追加説明なしに他の実施形態に好都合に組み込むことができることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明に係る赤血球沈降速度及び他のパラメータを決定するための装置の第1実施形態を概略的に示す。
図2図1の装置の変形例を概略的に示す。
図3図2の装置の詳細を示す。
図4図3の詳細の展開図である。
図5】本発明に係る装置を用いて得られた測定結果の図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は赤血球沈降速度及びこれに関連するほかのパラメータを決定するための装置10の全体を概略的及び非限定的に示し、当該装置は以下のコンポーネントを備える。
- 分析対象の血液サンプルを取得するためのサンプリング部材11
- 内部に血液サンプルを導入可能な、例えばテフロン(登録商標)から形成されたパイプ12であって、100~2000nm、好適には200~1000nmの範囲内の電磁放射線を通すパイプ12
- サンプリング部材11をパイプ12に接続するとともに、内部を血液サンプルが循環するよう構成された回路13
- 回路13に関連付けられたポンプ14
- 分析後に血液サンプルを排出する排出パイプ15
- 相手方検出器デバイス17に関連付けられた放射線エミッタデバイス16を備える測定機器であって、本具体例ではパイプ12における特定ポイントの対向側に配置された測定機器
- 装置10の機能をマネジメント可能な制御及び処理ユニット20
- 上記デバイス16及び上記デバイス17を制御及び処理ユニット20に接続するためのインターフェースユニット18
【0077】
本具体例ではシリンジタイプであるサンプリング部材11は容器又は保存ドラム21の試験管22から分析対象の血液サンプルを選択的に取り込むことが可能であり、容器又は保存ドラム21の試験管22は、試験管22内に含まれる血液についてプログラムされた混合サイクルを実行するためにモータ23によって回転可能である。考え得る手段としては、モータ23は保存ドラム21の傾斜サイクルによって混合を実行することができる。
【0078】
血液回収管内でのサンプリングと試験の実行との間の時間内で凝集しなかった赤血球について検査を正しく行うためには正確な混合が重要となる。したがって、混合は、赤血球を解凝集しその後ESR測定を正しく行うために用いられる。
【0079】
可能な実施形態では、試験管22は、例えば血液測定に用いられる標準的な試験管とすることができる。
【0080】
図1及び図2の実施形態では、サンプリング部材11を用いて患者の指28から未変性血液(native blood)を直接採取することもでき、これは例えば、上記デバイス16,17及び測定が行われるパイプ12におけるポイントを内部に収容した指穿刺型のランセットデバイスを用いて行われる。
【0081】
さらに、装置10全体が内部に組み込まれた他の分析を行うのに適するデバイス29からパイプ12に血液を送ることもでき、これによって他の追加的処理が不要であるすでに均質化された血液がパイプ12に到達する。
【0082】
変形例では、サンプリング部材11は、採取された血液サンプルを均質化するための振動手段に一体的に設けられる。
【0083】
パイプ12は、サーモスタット手段が設けられた金属支持体19に関連付けられており、これにより必要に応じてあらかじめ決めることができる一定温度にパイプ12を維持して、分析が行われる温度を調整することができる。
【0084】
パイプ12の上流と下流の両方に配置することができるポンプ14は、サンプリング部材11を駆動させて回路13及びパイプ12内の血液サンプルを循環させることができる。
【0085】
可能な実施形態では、ポンプ14は、設置された読み取りポイントまで血液サンプルを移動させるよう構成されたぜん動ポンプとすることができる。
【0086】
読み取りポイントはキャリーオーバー現象を防ぐために精密に決定される。
【0087】
例えば毛細管(capillary tube)における何らかの閉塞が原因で検査の反応が流れの欠如を示した場合、ぜん動ポンプは採取したサンプルを戻り移動させて流れを切り替えて検査を繰り返すことができる。あるいは、流れの欠如を示す反応が続く場合には、プライマリ試験管からサンプルを取り込む新たなサイクルを開始してもよい。
【0088】
可能な実施形態では、連続的な流れ、即ち中断のない流れにおける読み取りポイントを通過する測定機器によって血液サンプルを読み取ることができる。
【0089】
あるいは、ポンプ14は、血液サンプルの流れを瞬時に中断して強い減速(停止した流れ)を生じさせるしたがって赤血球を凝集させるよう構成することができる。
【0090】
図1及び図2に示す可能な実施形態では、ポンプ14はリバーシブルであり、回路13内においてそれぞれ実線(吸引)及び点線(押し出し)で示される2つの方向に血液を循環させることができる。
【0091】
インターフェースユニット18は、エミッタデバイス16を作動/停止することが可能であるとともに、検出器デバイス17で受信した信号を制御及び処理ユニット20が読み取り可能な信号に変換することが可能である。
【0092】
可能な実施形態では、測定機器は複数の検出器デバイス17を備えることができる。これにより、測定方法においてサンプルについての1回の読み取りで複数の検出器デバイス17から放射線を検出することができ、潜在的な補整を向上させることができる。
【0093】
例えば、検出器デバイス17は互いに等距離に位置付けられた3つの検出器デバイス17とすることができる。
【0094】
可能な実施形態では、検出器デバイス17は、700nm~1mmの波長の電磁波、即ち赤外線であってもよい電磁波を検出するよう構成することができる。
【0095】
これらの実施形態では、測定機器は血液サンプルの温度を測定するよう構成することができる。
【0096】
さらに、赤外線検出器デバイス17を用いてサンプルの有効な混合を達成することが可能である。
【0097】
したがって、得られた赤血球の凝集体は低温の影響を受けていない。
【0098】
本発明の実施形態では、制御及び処理ユニット20は、検出器デバイス17によって検出された温度値を所定値と比較するよう構成することができ、これにより、例えば18℃といった所定閾値よりも低い温度の血液サンプルを廃棄することも可能である。
【0099】
本発明では、マイクロプロセッサ電子プロセッサから構成された制御及び処理ユニット20は、装置10の異なる機能モードをマネジメントするようプログラム可能である。
【0100】
可能な実施形態では、制御及び処理ユニット20は、検出器デバイス17によって検出された値をあらかじめ決められた値と比較し、血液サンプルの潜在的な不適切性をユーザに知らせるよう構成することができる。例えば、ヘマトクリット値が25%未満の場合に、制御及び処理ユニット20は血液サンプルの不適切性をユーザに知らせることができる。
【0101】
制御及び処理ユニット20は、一連のパラメータを数値データ、テーブル又はグラフの形態で含むデータベース又は内部メモリ27を備える。
【0102】
具体的には、データベース27は、試験集団の平均を決定するように、複数のサンプル、例えば5,000個の異なるサンプルの値を含む統計的メモリを有してもよい。
【0103】
可能な実施形態では、本発明に係る方法は、データベース27に含まれる値に基づいて試験集団の統計的管理(statistical control)を行うことを含むことができる。データベース27は連続的に更新することができ、したがって試験された集団の平均に関係する値は行われた試験の結果によって常に更新されたものとなっている。
【0104】
可能な実施形態では、制御及び処理ユニット20は、集団マネジメントソフトウェアと協働して、生じ得る測定エラー即ちドリフトを検出するために測定グラフを提供するよう構成することができる。
【0105】
具体的には、制御及び処理ユニット20は、試験集団の平均に対する、装置10から取得された血液サンプルの測定値の生じ得るドリフトを検出するよう構成することができる。
【0106】
さらに、可能な実施形態では、測定機器は、サンプルが適切でないことを制御及び処理ユニット20が検出した場合であっても、少なくとも1回の試験を試みるよう構成することができる。
【0107】
したがって、この実施形態では、測定機器は、例えば3回の試みなどの所望回数の試みを行った後に停止するよう構成することができる。
【0108】
可能な実施形態では、制御及び処理ユニット20はマネジメントソフトウェアと協働するよう構成することができる。
【0109】
マネジメントソフトウェアは、その多数の機能のなかでもとりわけ、測定精度をキャリブレートするため使用されるラテックスの使用期限を格納することができ、これによりラテックスがその使用期限後に使用されることが回避されるよう構成されている。
【0110】
また、マネジメントソフトウェアは、異なる国における衛生法規を測定方法が満たすことを検証するよう構成することができる。例えば、マネジメントソフトウェアは、測定方法が、アメリカ合衆国のアメリカ食品医薬品局(FDA)によって確立された基準を満たすことを検証することができる。
【0111】
また、制御及び処理ユニット20は、分析結果を表示するとともに統計目的で処理するために、本具体例ではデータ入力のためのキーボード26からなるユーザとのインターフェースとなる手段と、モニター又はディスプレイ24と、プリンタ25と、を備える。
【0112】
可能な実施形態では、測定機器は、赤血球の凝集体を検出し、この値を決定されたESR値と相関づけるよう構成することができる。
【0113】
具体的には、この相関づけは、貧血症(例えば鎌状赤血球症)などの赤血球症の影響を受けた血液サンプルや小球性貧血に関するサンプルなどについても行うことができる。
【0114】
可能な実施形態では、図2において単なる例として示すように、パイプ12はサンプルを読み取りチャンバ50に向けて輸送することができ、読み取りチャンバ50は、毛細測定管51(図3及び図4)を備え、例えばアクリル材料などのプラスチック材料又はガラスから作成された小さいシリンダから構成されている。
【0115】
読み取りチャンバ50は固い容器52(図3)の中に作成されており、本具体例では容器52は毛細管51を収容する中央貫通孔54を有する。変形例では、毛細管51は、貫通孔54付近に配置された(図面では見えない)透明なレンズによって画定された閉じた体積の中に収容される。
【0116】
毛細管51は、前方の孔56aと後方の孔56bとの一対の孔を介してパイプ12の上流と下流を接続し、内部に検査対象の血液サンプルを流して、エミッタデバイス16により放出された電磁波ビームがこの血液サンプルを通るように構成されている。
【0117】
可能な実施形態では、読み取りチャンバ50は、無重力の条件下でも血液サンプルを読み取り可能に構成することができる。
【0118】
具体的には、無重力の条件下では、ぜん動ポンプにおける流れ、即ちその押し出し力は、自身が受けている抵抗の減少に適合するために減速する。
【0119】
可能な実施形態では、読み取りチャンバ50は、金属支持体19に設けられ得るサーモスタット手段の代替物としての又はこれに加えて設けられるサーモスタット手段に関連付けることができる。
【0120】
制御されたサーモスタットによって、外部温度の変化によって決まるESR測定の実行中における変化を抑制することが可能となり、これは、外部温度が2/3℃変化する場合であっても可能である。
【0121】
固い容器52は、パイプ12の対応するセグメントのためのハウジング台座55を有し、これによりパイプ12と毛細管51との間において最適なかつ安定した流体連通を確保するよう構成されている。
【0122】
有利な実施形態では、エミッタデバイス16及び相手方検出器デバイス17は毛細管51の反対側に向かい合って配置されており、それぞれ、有利には200~1000nmの波長の電磁放射線を放出及び検出可能に構成されている。
【0123】
毛細管51は、エミッタデバイス16の方に向いた対向平坦面53を有し、電磁波が有する情報の内容を変えてしまう曲面によって電磁波の経路が偏向/屈折されないように構成されている。
【0124】
固い容器52には、電磁波のビームを毛細管51と対応するようにのみ集中させることができるチャネル59が設けられており、測定の影響を受けるのが血液サンプルの一部のみとなるよう構成されている。具体的には、以下の記載からより明確になるように、分析にさらされるサンプルの減じた部分によって、1つのサンプルと後続のサンプルとの間において重要な自己洗浄効果(self-washing effect)を得ることができる。
【0125】
可能な実施形態では、パイプ12及び/又は読み取りチャンバ50を自己洗浄デバイスと関連付けることができ、これにより後続の血液サンプルのかなりの部分、例えば合計25ml中20ml、を通過させる場合に、測定を行わずに不活性通路(inert passage)としてのパイプ12及び/又は読み取りチャンバ50を通過させて、パイプ12及び/又は読み取りチャンバ50内に存在するサンプルに対して機械的押し出し又は洗浄作用を行うように構成することができる。
【0126】
測定が行われない20マイクロリットルの押し出し体積によって、最後の5マイクロリットルにおいてサンプル間のコンタミを無くすことができ、歪められた測定結果の取得をもたらす所謂「キャリーオーバー」現象が回避される。
【0127】
毛細管51を使用することによって、光信号は完全にコリメートされ且つ妨げとなる厚み又は要素によってそらされない又は変更されないので、幾何学的及び製造公差による測定精度への影響が、排除されないにしても抑制される。また、ガラス又はアクリル材料は、本質的に、典型的なテフロン(登録商標)管の使用に関する問題に直面しないことも考慮すべきである。
【0128】
さらに、上記した毛細管51の使用によって、エミッタデバイス16によって放出された放射線の入射面を適切に設計することができる。
【0129】
例えば、放出特性(波形、波長、距離など)に関連して、サンプルの通過チャネルの周囲のデバイス内部において一定強度の平面波を得るように放射線入射面のサイズを設定することが可能である。こうすることで、チャネル自体の位置決めエラーの影響を受けにくくすることが可能となり、潜在的な組み立て誤差にかかわらず測定において高い再現性が保証されるとともに、感度の向上が保証され、分析対象のサンプルの量がマイクロリットルのオーダーでも測定を行うことが可能となる。
【0130】
可能な実施形態では、読み取りチャンバ50及び/又は毛細管51の断面積を0.8μm2とすることができる。有利なことに、この断面積は人間の血管の血流をシミュレートすることができる。
【0131】
したがって、本発明によって、例えば血中のタンパク質含有量を示す血漿の屈折率の測定などの他の種類の測定を行うことが可能となる。これによって、本発明に係る装置10は、以下の機能を果たすことができる。
- 光学濃度(屈折率の虚部)の測定をタンパク質含有量(屈折率の実部)から独立したものとする吸収の測定。
- 全血及び血漿からの血漿の屈折率の測定。
- 2つの量の相乗作用の測定(屈折率の実部と虚部の両方を測定)。この測定は、測定前にサンプルの入った試験管をひっくり返す、ESRの測定の代替的検査を表すZSR(ゼータ沈降率)の測定を得るためのものである。
- 血液の屈折率の実部及び虚部についての測定であって、血液が流れる間にその流れに平行及び垂直な電場の偏光におけるこれらの値を比較することによる測定。
【0132】
特に、本発明によって、ヘマトクリット値の低い血液サンプルからもESRを測定することができる。
【0133】
可能な実施形態では、ESR測定は、EDTA/クエン酸塩タイプの試験管から取得された全血の体積を用いて及び/又は患者から採取されたばかりの未変性血液の体積を用いて行うことができる。
【0134】
特に、EDTA/クエン酸塩タイプの試験管は、最小体積が8ml~30mlの全血を有する。
【0135】
可能な実施形態では、赤血球沈降速度を決定するための方法は、試験管からの血液サンプルを分析する工程と、分析前に試験管のストッパを穿孔する工程を有する。
【0136】
このようにして、サンプルは測定を行う前に外気にさらされ(予防排出)、これにより、血液の流れにおけるストップ・アンド・フロー読み取りダイナミクスが向上する。
【0137】
具体的には、上記排出により内部が真空である管内の圧力を標準化することができ、これにより、決められたモータステップ数に応じて最適化されたぜん動ポンプは、取得されて読み取りセンサに吸引された全血液サンプルについて同じポジションとすることができる。
【0138】
さらに、これによって、全血液サンプルについて同じ気泡長を発生させることができ、混合ロータ内に位置するサンプリング管の異なる内圧に起因する引き延ばされた形状の気泡を得ないようにすることができ、そして、充填シーケンスで取得された全サンプルについて同じポジションとすることができ(読み取りポイント又は頭-尾血液サンプル参照)、さらに、血液サンプルの効率的な頭-尾自己洗浄を保証することができる。
【0139】
これらの可能な実施形態では、検出器デバイス17は、試験管22の異なる内圧を補償するよう構成することができる。
【0140】
一部の実施形態では、血液サンプルは外気と接触するよう露出させることはできず、よって、試験管はサンプルを外気にさらすことなく穿孔される。したがって、サンプリング試験管内では内圧の調整はされず、針は圧力変動にさらされることとなる。
【0141】
真空試験管内部の負の圧力は変化し、このため、パイプ12内で分析対象のサンプルの移動を的確且つリズミカルに開始することができない。
【0142】
可能な実施形態では、上記方法は、血液サンプルを取得する前に、例えば24、32又は60rpmなどのプログラム可能な混合速度で試験管を回転させる工程を有する。
【0143】
可能な実施形態では、回転数は1~1000回転とすることができる。
【0144】
可能な実施形態では、上記方法は、試験管内に含まれる血液の量に関しサンプルの可変混合を実行開始することで赤血球の凝集体を検出する、したがってESRを測定する工程を有する。よって、以前から存在する連銭の山の形成によって決定された高ESRを有する、故に検出器デバイス17によって検出可能な不適切なサンプルを得ないようにするために、良好に混合された血液サンプルを用いて即ち良好に解凝集され散らされた赤血球を用いて赤血球沈降速度(ESR)試験を行うことが可能である。
【0145】
第1の例では、3ml~7mlの血液を含む血液サンプル試験管を、32rpmの速度で140回転させて混合することができる。
【0146】
さらなる例では、5mLの血液を含む血液サンプル試験管を、24rpmの速度で140回転させて混合することができる。したがって、第2の例での混合を実行する時間は、第1の例で要する時間よりも長い。
【0147】
通常、血液は表面張力によって試験管の底に付着する傾向がある。試験管の底に付着した血液の分析を可能とするために、本発明に係る方法のある態様では、試験管の底に付着した血液を解放するように試験管をまず高速で混合する第1工程と、例えば32rpmの慣習的な速度で140回転混合する第1工程と、を有することができる。これによって、有利なことに、減じた血液量を含む試験管からもチェックを行うことができる。特に、本発明は、小児サンプルからESRを検出するために用いることができる。例えば、血液サンプルは、内容量が50μl~100μlの間でさまざまである小児用ミクロキュベットから取得することができる。
【0148】
可能な実施形態では、分析中もサンプルを混合し続けることができる。
【0149】
図2に例示した可能な実施形態では、本発明に係る装置10は、第1の回路13から独立した別の回路13aが設けられた第2の外部サンプリング部材11aを備えることができ、第2のサンプリング部材11aは、血液サンプルを試験管から、上部から下向きに取得することができる。この方法は小児サンプル及び/又は緊急要請のあったサンプルに特に適している。
【0150】
第2のサンプリング部材によって、緊急状況にあるサンプルの検査を、混合モジュール内に既に挿入されたサンプルの流れと相互作用させることなく行うことができる。具体的には、このような検査を、例えば外部構成を有していない小児における使用のためのカップでありしたがって混合機内に挿入可能な大人用サンプリング試験管とは異なるサイズを有するカップにおいて、行うことができる。このような小児用サンプリングカップは、使用可能な血液量が少なく、試験が行われる取得可能血液体積が大人用試験管により供給される血液量とは異なる。
【0151】
これらの実施形態では、上記方法は、混合の後に試験管をひっくり返す、即ち試験管を180°回転させる工程を有し、これによりストッパが設けられた部分を下向きに配置するようになっている。このようにして、第2のサンプリング部材11aは試験管内に下から上向きに挿入される。
【0152】
これによって、有利なことに、第2のサンプリング部材11aを制限された長さだけ試験管内に挿入することができ、例えば約2~3mmだけ試験管内に挿入することができ、またこれにより、試験管22のストッパを穿孔する針が試験管内に決められた長さだけ進入して血液サンプルを正確かつ確実に回収することができることから、臨界体積に相当する血液量のサンプルを試験管内に回収することができる。
【0153】
さらに、この構成において、小児用ミクロキュベットなどの減じた血液量を含む試験管からであっても、そしてこれが血球カウントなどの他の分析で用いられた後であっても、血液を効率的かつ迅速に回収することが可能である。
【0154】
本発明によれば、サンプリング部材11,11aが試験管内に挿入された後すぐに、例えば175μlといった所定理論血液量を吸引することで、血液の回収が行われる。
【0155】
本発明のさらなる態様では、サンプリング部材11,11aとポンプ14との間においてパイプ12内に気泡が形成されてもよく、これによって例えば2つの連続的な血液サンプルを分離することができる。
【0156】
可能な実施形態では、制御及び処理ユニット20は、移動が開始するポイント0(ゼロ)を定めるように、検出器デバイス17を用いて気泡の位置を検出することができる。このようにして、制御及び処理ユニット20はポンプ14の駆動を調節して、所定ポイントから開始して順次的即ち段階的な移動を決定することができ、よって、2つの連続的なサンプル間の不確かな距離に起因する測定エラーが回避される。段階的な移動によって、所定の読み取り及び測定ポイントでサンプルの最終部分即ち尾部分においてしたがって確かな所定の血液量について、血液サンプルを読み取ることが可能となり、これによって、前のサンプルによって汚染されていないサンプル部分の読み取りを確実に行うことができ、即ち、充填シーケンスで回収されたサンプル間のキャリーオーバーの影響を排除することができる。
【0157】
気泡は、サンプルとサンプルの血液の流れを及び測定管内の血液の量を分離することができ、これによりサンプル/サンプルキャリーオーバーを排除することができる。
【0158】
気泡によって決定されたセロポイントを用いることで、血液の移動により、蛍光センサによって検出される読み取りポイントを非常に高い精度で特定することができ、サンプル/サンプル自己洗浄が可能となる。
【0159】
空気と血液の分離を示す、気泡によって決定される光度計による読み取りのゼロポイントによって、光度計による読み取り(NF)が何らかの理由(例えば、ゴムの残留物の存在、あるいは、例えばサンプリングされた血液が30マイクロリットル未満などサンプリングされた血液の体積が測定に不十分であるといった理由)で流れがないことを示した場合に、血液サンプルを再読み取りすることができる。したがって、ぜん動ポンプによって決められる気泡によって、血液の流れの正しい移動を検証するために組み立て手順をキャリブレートすることができる。よって、気泡はアクティブな機能を有し、単に血液を気泡から分離するだけではない。
【0160】
測定機器の下流にあるポンプ14における降下及び大気圧の影響により、血液が測定機器に向かって供給される。
【0161】
可能な実施形態では、制御及び処理ユニット20は、ポンプ14を駆動させて血液を検出器デバイス17に向けて供給するよう構成されており、気泡の終端とモニタリングされる血液サンプルの開始とを検出するための信号のレベルを維持するよう構成されている。
【0162】
このようにして、試験管内の落ち込み(depression)によって生じる考え得る位置決めエラーを補償するためにサンプルの尾部分において読み取りが行われる。
【0163】
ポンプ14がぜん動ポンプであるような可能な実施形態では、制御及び処理ユニット20は、血液サンプルをポンプ14の第1ロールよりも下に位置決めするよう構成することができる。このようにすることで、有利なことに、ポンプ14の第1ロールが閉じた弁として機能し、血液が読み取り中に回路13,13aに移動することが防止される。
【0164】
さもなければ、血液はポンプ14に向かって移動を続け、ストップフロー(ストップした流れ(stopped-flow))手順を正しく実行できなくなり、また測定の精度及び再現性も低下するであろう。
【0165】
本発明の可能な実施形態では、検出器デバイス17は、検査中のサンプルを後続のサンプルから分離する気泡を検出するよう構成することができる。
【0166】
このようにして、制御及び処理ユニット20は、パイプ12内のサンプルの移動の時間を測るよう、気泡の検出と移動ゼロポイントの始まりとを関連付けることができる。
【0167】
したがって、本発明に係る方法は、回路13,13a内におけるサンプルの移動を所望のゼロポイントで開始させるように、検査中のサンプルを後続のサンプルから分離する気泡を検出器デバイス17を用いて検出する工程を有する。
【0168】
したがって、本発明を用いることで、サンプルの排出をしない場合であってもキャリーオーバー現象を回避するように、サンプルの尾部分を正確に再現性をもって測定することが可能である。
【0169】
図5を参照すると、異なる速度でのESR値が示されたシレクトグラムが示されている。
【0170】
第1の曲線、即ち図5の上側の曲線について説明する。この曲線は、進行中の炎症性病変又は過程に関連するサンプルの凝集体の動力学に対応し、本発明に係る方法を用いて取得されたESRが103mm/hである。
【0171】
AポイントからBポイントまでのセグメント(OTF(流れ中の光透過度(Optical Transmittance during Flux))としても知られている)は、ポンプ14が停止する前にセンサ前で依然として移動している血液を表している。
【0172】
BポイントからCポイントまでのセグメント(OT(光透過度)としても知られている)は、ポンプ14が停止した後の赤血球のランダム再分布によって生じた血液の混濁を表している。
【0173】
AポイントからBポイントまでのセグメントにおいて、赤血球はポンプ14の吸引中に血液の流れを受けて略水平に整列しており、そして、Bポイントにおいてポンプ14が停止すると、赤血球は自身を中心に回転することで自身をランダムに配置し始めて懸濁液を混濁させる(BポイントからCポイントまでのセグメント)。
【0174】
その後、赤血球は凝集を開始して連銭の山を形成し、懸濁液はよりクリアになり、CポイントからDポイント(ED(検出の終わり)とも称される)まで凝集体の動力学を示す。
【0175】
第2の曲線、即ち図5の下側の曲線は、病変のないサンプルの凝集体の動力学に対応し、内径2.55mm及び高さ200mmのガラスロッドについて典型的なウェスターグレン法を行って取得された赤血球沈降速度(ESR)は2mm/hである。
【0176】
図5に示すシレクトグラムからわかるように、本発明によって、短時間で得られたESR値と従来の方法で取得可能なESR値とを相互に関連付けることができる。したがって、本発明によって、赤血球の凝集体の動力学とウェスターグレン法による重力沈降の最終結果とを相互に関連付けることができる。
【0177】
可能な実施形態では、本発明は、エミッタデバイス16及び検出器デバイス17によって毎秒1000パルスの電磁放射線を用いることで赤血球の凝集体を検出する工程、したがってESRを測定する工程を有する。このパルス測定によって、有利なことに、図5に示すような沈降のグラフのかたちでもサンプルの凝集過程を検出することができる。
【0178】
可能な実施形態では、試験管に例えばバーコードなどの識別コードを与えることができ、試験管内に含まれるサンプルによって測定された値をラボラトリー情報システム(LIS)及び/又はデータベース27内のあらかじめ決められた値と結び付けるように構成することができる。
【0179】
本発明のフィールド及び範囲を逸脱することなく本明細書に記載した装置及び方法への部分的修正及び/又は追加が可能であることは明らかである。
【0180】
例えば、エミッタデバイス16及び検出器デバイス17は、パイプ12又は毛細管51の同じ側に位置付けられて、発せられた放射線の反射を検出するよう構成することができる。
【0181】
さらに、エミッタデバイス16は、偏光に応じた特徴的な分析結果を得るために、偏光を発するのに適したものとすることができる。
【0182】
あるいは、回路13及び/又はパイプ12に関連付けられたバルブ手段によって、血液サンプルの流れを瞬間的にブロックすることができる。
【0183】
本発明についていくつかの具体的な例を参照して説明したが、当業者であれば特許請求の範囲に記載された特徴を有する装置及び方法の多くの他の同等形態を無論達成可能であろうし、したがってそれらは全て特許請求の範囲に記載された保護範囲に含まれる。
【0184】
特許請求の範囲において、カッコ内の参照符号は理解を深めることだけを目的としており、特定の特許請求の範囲に記載の保護範囲に関する限定をするものであると考えてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5