(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20231109BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2020558285
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2019044084
(87)【国際公開番号】W WO2020105485
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018218382
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 利美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/097266(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/097264(WO,A1)
【文献】特開2002-206078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-201/10
H01L23/12-23/15
H05K3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージの製造方法であって、
(a)基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層を備えた、粘着シートを用意する工程と、
(b)第1支持基板上に再配線層を備えた第1積層体を作製する工程と、
(c)前記粘着シートを用いて、前記第1積層体の前記再配線層側の表面に、第2支持基板が前記可溶性粘着層を介して結合された第2積層体を得る工程と、
(d)前記第2積層体から前記第1支持基板を剥離して、前記再配線層の前記第2支持基板から離れた側の表面が露出した第3積層体を得る工程と、
(e)前記第3積層体の前記再配線層側の表面に半導体チップを実装し、かつ、前記半導体チップを樹脂封止して、上端面、下端面、右端面及び左端面からなる外周端面を備えた第4積層体を得る工程と、
(f)前記第4積層体の前記右端面及び前記左端面を1対の封止部材で封止し、前記第4積層体を前記下端面が下にかつ前記上端面が上になるような角度で、前記下端面を溶液に選択的に浸漬させる工程と、
(g)前記第4積層体の前記第2支持基板及び前記再配線層間の内部空間と、前記溶液との間に圧力差を与えて、該圧力差により前記溶液を前記内部空間内に浸透させ、それにより前記可溶性粘着層を溶解又は軟化させる工程と、
(h)前記可溶性粘着層が溶解又は軟化された状態で、前記第4積層体から前記第2支持基板を剥離して半導体パッケージを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(f)において、前記第4積層体の前記下端面から上端面までの長さを100%として、下端面から長さ0%超90%以下の範囲内の下方領域のみを前記溶液に浸漬させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(f)が、前記第4積層体の一面側を背面板に接触させて固定する工程を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(g)における前記圧力差が、5kPa以上である、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(g)における前記圧力差が、前記第4積層体の前記上端面に接続されたポンプを用いて前記内部空間を減圧することにより与えられる、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプが、エジェクタポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ及びアスピレータポンプからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(f)が、吸引冶具と前記背面板とで前記第4積層体を挟み込むことにより行われ、前記吸引冶具が、
正面板と、
前記正面板上に互いに平行に離間して設けられる、前記1対の封止部材と、
前記正面板上に前記1対の封止部材間に懸架して設けられる、第2の封止部材と、
前記正面板の上端及び/又は前記1対の封止部材の上端に接続され、前記正面板、前記1対の封止部材、前記第2の封止部材及び前記背面板と共に、減圧用密閉空間を形成可能な上部キャップと、
前記上部キャップに設けられる吸引口と、
を備えたものであり、前記吸引口に前記ポンプが接続される、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記封止部材が、ゴム製の部材、接着フィルム、エラストマーから選択される少なくとも1種である、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記封止部材がゴム製の部材であり、前記ゴムが、EPDM、シリコーンゴム及びフッ素含有ゴムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記封止部材の前記第4積層体と接触する面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される最大高さRzが0.01μm以上500μm以下である、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記背面板が耐アルカリ性を有する、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記背面板が塩化ビニルで構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記背面板の前記第4積層体と接触する面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される最大高さRzが0.01μm以上500μm以下である、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記可溶性粘着層が溶液可溶型樹脂を含む、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液可溶型樹脂がアルカリ可溶型樹脂である、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記間欠パターンが島状又はストライプ状のパターンである、請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記島状のパターンがドットパターンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記粘着シートが接着型粘着シートであり、前記工程(c)が、前記第1積層体の前記再配線層側の表面に前記粘着シートを貼り付けて、前記基材シート自体を前記第2支持基板として用いる工程を含む、請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記粘着シートが転写型粘着シートであり、前記工程(c)が、前記第1積層体と前記第2支持基板との結合に先立ち、前記第2支持基板、又は前記第1積層体に前記粘着シートを貼り付けて、前記可溶性粘着層を前記第2支持基板、又は前記第1積層体に転写するとともに、前記基材シートを剥離する工程を含む、請求項1から請求項18までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げて小型化するために、プリント配線板の多層化が広く行われるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化や小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚みの低減、及び配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たす技術として、コアレスビルドアップ法を用いた多層プリント配線板の製造方法が採用されている。コアレスビルドアップ法とは、いわゆるコア(芯材)上にビルドアップ法と呼ばれる手法で絶縁層と配線層とを交互に積層(ビルドアップ)して多層化した後、コア(芯材)を除去してビルドアップ層のみで配線板を形成する方法である。コアレスビルドアップ法においては、支持体と多層プリント配線板との剥離を容易に行えるように、キャリア付銅箔を使用することが提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-101137号公報)には、キャリア付銅箔のキャリア面に絶縁樹脂層を貼り付けて支持体とし、キャリア付銅箔の極薄銅層側にフォトレジスト加工、パターン電解銅めっき、レジスト除去等の工程により第一の配線導体を形成した後、ビルドアップ配線層を形成し、キャリア付支持基板を剥離し、極薄銅層を除去することを含む、半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法が開示されている。
【0004】
とりわけ、電子デバイスのより一層の小型化及び省電力化に伴い、半導体チップ及びプリント配線板の高集積化及び薄型化へのニーズが高まっている。かかるニーズを満たす次世代パッケージング技術として、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Packaging)やPLP(Panel Level Packaging)の採用が近年検討されている。そして、FO-WLPやPLPにおいても、コアレスビルドアップ法の採用が検討されている。そのような工法の一つとして、コアレス支持体表面に配線層及び必要に応じてビルドアップ配線層を形成し、さらに必要に応じて支持体を剥離した後に、チップの実装を行う、RDL-First(Redistribution Layer-First)法と呼ばれる工法がある。例えば、特許文献2(特開2015-35551号公報)には、ガラス又はシリコンウエハからなる支持体の主面への金属剥離層の形成、その上への絶縁樹脂層の形成、その上へのビルドアップ層を含む再配線層(Redistribution Layer)の形成、その上への半導体集積回路の実装及び封止、支持体の除去による剥離層の露出、剥離層の除去による2次実装パッドの露出、並びに2次実装パッドの表面への半田バンプの形成、並びに2次実装を含む、半導体装置の製造方法が開示されている。
【0005】
FO-WLPやPLPの採用が検討される近年の技術動向を受けて、ビルドアップ層の薄型化が求められている。しかしながら、ビルドアップ層が薄い場合、コアレスビルドアップ法を用いて作製したビルドアップ層付基材から、基材を剥離する際、ビルドアップ層が局部的に大きく湾曲することがある。かかるビルドアップ層の大きな湾曲は、ビルドアップ層内部の配線層の断線や剥離を引き起こし、その結果、配線層の接続信頼性を低下させうる。かかる問題に対処すべく、多層積層体に補強シートを積層してハンドリング性を向上させることが提案されている。例えば、特許文献3(国際公開第2018/097265号)には、多層積層体に可溶性粘着層を介して補強シートを積層させることにより、多層配線層を局部的に大きく湾曲させないように補強することが開示されており、それにより多層配線層の接続信頼性と多層配線層表面の平坦性(コプラナリティ)を向上できるとされている。また、特許文献4(国際公開第2018/097266号)には、島状又はストライプ状等の間欠パターンで構成された可溶性粘着層を備えた粘着シートが開示されている。特許文献4には、かかる粘着シートをプリント配線板等の被着体に貼り付けて補強した後、当該粘着シートを剥離する際に、溶液を可溶性粘着層の上記パターンの隙間に効果的に浸透させて粘着剤の溶解等を促進することや、当該溶液に界面活性剤やアルコール溶液等を添加することで浸透性を改善することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-101137号公報
【文献】特開2015-35551号公報
【文献】国際公開第2018/097265号
【文献】国際公開第2018/097266号
【発明の概要】
【0007】
補強シートを再配線層に貼り付けるための粘着層として間欠パターンで構成された可溶性粘着層を採用すること、及び可溶性粘着層を溶解可能な溶液(以下、「溶解液」と称することがある)に界面活性剤等を添加することは、補強シートの迅速な剥離に寄与するため好ましい。しかしながら、溶解液の浸透には未だ時間を要するため、更なる改善が望まれる。また、可溶性粘着層を溶解又は軟化する際には、半導体チップ等のデバイスが再配線層に実装及び樹脂封止された状態の積層体を溶解液に浸漬するため、当該溶解液との接触によりデバイス及び樹脂封止材が受けるダメージを抑制することも望まれる。
【0008】
本発明者らは、今般、半導体パッケージの製造において、役目を果たした補強シートを剥離する際、積層体の下端面部分を溶解液に選択的に浸漬させ、圧力差により溶解液を粘着層が存在する内部空間内に浸透させることで、溶解液に起因するデバイスのダメージを抑制しつつ、粘着層を速やかに溶解又は軟化できるとの知見を得た。
【0009】
したがって、本発明の目的は、溶解液に起因するデバイスのダメージを抑制しつつ、粘着層を速やかに溶解又は軟化させて、役目を果たした補強シートを剥離することが可能な、半導体パッケージの製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の一態様によれば、半導体パッケージの製造方法であって、
(a)基材シートと、該基材シートの少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層を備えた、粘着シートを用意する工程と、
(b)第1支持基板上に再配線層を備えた第1積層体を作製する工程と、
(c)前記粘着シートを用いて、前記第1積層体の前記再配線層側の表面に、第2支持基板が前記可溶性粘着層を介して結合された第2積層体を得る工程と、
(d)前記第2積層体から前記第1支持基板を剥離して、前記再配線層の前記第2支持基板から離れた側の表面が露出した第3積層体を得る工程と、
(e)前記第3積層体の前記再配線層側の表面に半導体チップを実装し、かつ、前記半導体チップを樹脂封止して、上端面、下端面、右端面及び左端面からなる外周端面を備えた第4積層体を得る工程と、
(f)前記第4積層体の前記右端面及び前記左端面を1対の封止部材で封止し、前記第4積層体を前記下端面が下にかつ前記上端面が上になるような角度で、前記下端面を溶液に選択的に浸漬させる工程と、
(g)前記第4積層体の前記第2支持基板及び前記再配線層間の内部空間と、前記溶液との間に圧力差を与えて、該圧力差により前記溶液を前記内部空間内に浸透させ、それにより前記可溶性粘着層を溶解又は軟化させる工程と、
(h)前記可溶性粘着層が溶解又は軟化された状態で、前記第4積層体から前記第2支持基板を剥離して半導体パッケージを得る工程と、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明による半導体パッケージの製造方法の一例における、初期の工程を示す工程流れ図である。
【
図1B】本発明による半導体パッケージの製造方法の一例における、
図1Aに示される工程に続く工程を示す工程流れ図である。
【
図2A】吸引冶具及び背面板を用いた第4積層板の固定及び浸漬を説明するための断面模式図である。
【
図2B】
図2Aに示される第4積層板を含む構造物を吸引冶具の正面板側から正面板等を取り外した状態で観察した正面模式図である。
【
図3A】本発明で用意する粘着シートの一態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による半導体パッケージの製造方法は、(a)粘着シートの用意、(b)第1積層体の作製、(c)補強シートの積層、(d)第1支持基板の剥離、(e)半導体チップの実装、(f)溶解液への浸漬、(g)粘着層の溶解又は軟化、及び(h)補強シートの剥離の各工程を含む。
【0013】
以下、図面を参照しながら、工程(a)から工程(h)までの各々について説明する。
【0014】
(a)粘着シートの用意
図3A及び
図3Bに示されるように、基材シート15と、基材シート15の少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層16とを備えた、粘着シート17を用意する。粘着シート17の詳細については後述するものとする。なお、粘着シートには、粘着層を介して基材シート自体を被着体に接着させるために用いられる「接着型粘着シート」と、粘着層を被着体又は第二の基材シートに転写させて当初の基材シートを剥離することで、被着体又は第二の基材シートに粘着性を付与するために用いられる「転写型粘着シート」の2つのタイプが存在する。この点、本発明で用意する粘着シート17は接着型粘着シート及び転写型粘着シートのいずれであってもよい。
【0015】
(b)第1積層体の作製
図1A(i)に示されるように、第1支持基板10上に再配線層12を備えた第1積層体14を作製する。第1支持基板10は再配線層12を形成するためのベースとなるものである。第1支持基板10は、いわゆるキャリア付金属箔の形態であってもよく、公知の層構成が採用可能である。第1支持基板10は、基材、剥離層及び金属層を順に備えるものであってもよく、例えば特許文献3(国際公開第2018/097265号)に開示される積層シートを好ましく用いることができる(この積層シートの基材は樹脂フィルム、ガラス又はセラミックスで構成されうる)。この場合、再配線層12が第1支持基板10の金属層表面に作製されるのが好ましい。
【0016】
本発明において、再配線層とは、絶縁層と当該絶縁層の内部及び/又は表面に形成された配線層とを含む層を意味する。この再配線層を介して、例えば半導体チップ上に配置されたチップ電極と、プリント配線板上にチップ電極よりも大きいピッチで配置された端子とを電気的に接続することができる。再配線層12の形成は、公知の手法に従って行えばよく、特に限定されない。例えば、前述したビルドアップ法により、絶縁層と配線層とを交互に積層して多層化することで再配線層12を形成することができる。
【0017】
(c)補強シートの積層
図1A(ii)に示されるように、粘着シート17を用いて、第1積層体14の再配線層12側の表面に、第2支持基板18が可溶性粘着層16を介して結合された第2積層体20を得る。例えば、第1積層体14の再配線層12側の表面に粘着シート17を用いて第2支持基板18を貼り付けることにより、第2積層体20を得ることができる。こうすることで、再配線層12は第2支持基板18によって大きく湾曲されないように補強されることができる。すなわち、第2支持基板18が補強シートとして機能するため、再配線層12の表面及び/又は内部の配線層の断線や剥離を回避して、再配線層12の接続信頼性を向上することができる。また、湾曲が効果的に防止ないし抑制されることで、再配線層12表面の平坦性(コプラナリティ)を向上することができる。
【0018】
粘着シート17が接着型粘着シートである場合には、第1積層体14の再配線層12側の表面に粘着シート17を貼り付けて、基材シート15自体を第2支持基板18として用いるのが好ましい。一方、粘着シート17が転写型粘着シートである場合には、第1積層体14と第2支持基板18との結合に先立ち、第2支持基板18、又は第1積層体14に粘着シート17を貼り付けて、可溶性粘着層16を第2支持基板18、又は第1積層体14に転写するとともに、基材シート15を剥離するのが好ましい。転写方法は特に限定されるものではなく、例えばロールラミネーション等の公知の手法が採用可能である。
【0019】
第2支持基板18は第1支持基板10よりもビッカース硬度が低いものであるのが好ましい。これにより、第2支持基板18自体が撓むことで、積層又は剥離時に発生しうる応力を上手く逃がすことができ、その結果、再配線層12の湾曲を効果的に防止ないし抑制することができる。第2支持基板18のビッカース硬度は再配線層12のビッカース硬度の2%以上99%以下であるのが好ましく、より好ましくは6%以上90%以下、さらに好ましくは10%以上85%以下である。第2支持基板18のビッカース硬度が50HV以上700HV以下であるのが好ましく、より好ましくは150HV以上550HV以下、さらに好ましくは170HV以上500HV以下である。なお、本明細書においてビッカース硬度はJIS Z 2244-2009に記載される「ビッカース硬さ試験」に準拠して測定されるものである。
【0020】
参考のため、候補となりうる各種材料のビッカース硬度HVを以下に例示する:サファイアガラス(2300HV)、超硬合金(1700HV)、サーメット(1650HV)、石英(水晶)(1103HV)、SKH56(高速度工具鋼鋼材、ハイス)(722HV)、強化ガラス(640HV)、SUS440C(ステンレス鋼)(615HV)、SUS630(ステンレス鋼)(375HV)、チタン合金60種(64合金)(280HV前後)、インコネル(耐熱ニッケル合金)(150HV以上280HV以下)、S45C(機械構造用炭素鋼)(201HV以上269HV以下)、ハステロイ合金(耐食ニッケル合金)(100HV以上230HV以下)、SUS304(ステンレス鋼)(187HV)、SUS430(ステンレス鋼)(183HV)、鋳鉄(160HV以上180HV以下)、チタン合金(110HV以上150HV以下)、黄銅(80HV以上150HV以下)、及び青銅(50HV以上100HV以下)。
【0021】
第2支持基板18の材質は特に限定されないが、樹脂、金属、ガラス、又はそれらの組合せが好ましい。樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、及びフェノール樹脂が挙げられ、このような樹脂と繊維補強材とからなるプリプレグであってもよい。金属の例としては、上記ビッカース硬度やばね限界値Kb0.1の観点から、ステンレス鋼、銅合金(例えば青銅、リン青銅、銅ニッケル合金、銅チタン合金)が挙げられるが、耐薬品性の観点からステンレス鋼が特に好ましい。第2支持基板18の形態は、再配線層12の湾曲を防止ないし抑制できるかぎり、シート状に限らず、フィルム、板、及び箔の他の形態であってもよく、好ましくはシート又は板の形態である。第2支持基板18はこれらのシート、フィルム、板、及び箔等が積層されたものであってもよい。第2支持基板18の典型例としては、金属シート、樹脂シート(特に硬質樹脂シート)、ガラスシートが挙げられる。第2支持基板18の厚さは、第2支持基板18の強度保持及び第2支持基板18のハンドリング容易性の観点から、好ましくは10μm以上1mm以下であり、より好ましくは50μm以上800μm以下、さらに好ましくは100μm以上600μm以下である。第2支持基板18が金属シート(例えばステンレス鋼シート)である場合、金属シートにおける、可溶性粘着層16と密着する側の表面の十点平均粗さRz-jis(JIS B 0601-2001に準拠して測定される)は0.05μm以上500μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5μm以上400μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。このような表面粗さであると、表面の凹凸に起因するアンカー効果によって、可溶性粘着層16との密着性が高まり、可溶性粘着層16における適度な剥離強度が実現すると考えられる。
【0022】
(d)第1支持基板の剥離
図1A(iii)に示されるように、第2積層体20から第1支持基板10を剥離して、再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面が露出した第3積層体22を得る。こうすることで、例えば第1支持基板10を構成する基材及び剥離層等が再配線層12から剥離除去される。この剥離除去は物理的な剥離により行われるのが好ましい。物理的剥離法は、手や治工具、機械等で第1支持基板10を再配線層12から引き剥がすことにより分離する手法である。このとき、可溶性粘着層16を介して密着した第2支持基板18が再配線層12を補強していることで、再配線層12が局部的に大きく湾曲するのを防止することができる。すなわち、第2支持基板18は、第1支持基板10が剥離される間、引き剥がし力に抗すべく再配線層12を補強し、湾曲をより一層効果的に防止ないし抑制することができる。こうして湾曲により引き起こされることがある再配線層12の内部及び/又は表面の配線層の断線や剥離を回避して、再配線層12の接続信頼性を向上することができる。また、湾曲が効果的に防止ないし抑制されることで、再配線層12表面の平坦性(コプラナリティ)を向上することができる。なお、第1支持基板10が金属層を含む場合には、第1支持基板10の剥離後に第3積層体22の表面に残留しうる金属層をエッチングにより除去するのが好ましい。金属層のエッチングはフラッシュエッチング等の公知の手法に基づき行えばよい。
【0023】
(e)チップ実装
図1B(iv)に示されるように、第3積層体22の再配線層12側の表面に半導体チップ24を実装し、かつ、半導体チップ24を封止材26で樹脂封止して、上端面、下端面、右端面及び左端面からなる外周端面を備えた第4積層体28を得る。本発明の方法においては、再配線層12の表面に可溶性粘着層16を介して第2支持基板18を積層することで、半導体チップ24の実装に有利となる優れた表面平坦性(コプラナリティ)を再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面において実現することができる。すなわち、半導体チップ24の実装時においても、再配線層12は第2支持基板18によって局部的に大きく湾曲されずに済む。その結果、半導体チップ24の接続歩留まりを高くすることができる。なお、第4積層体28の各端面の長さはそれぞれ異なっていてもよい。例えば、第4積層体28が矩形状の場合、長辺側の両端面をそれぞれ上端面及び下端面と設定してもよく、短辺側の両端面をそれぞれ上端面及び下端面と設定してもよい。この点、後述する粘着層の溶解又は軟化工程において、第4積層体28の上端面に接続されたポンプを用いて吸引を行う場合には、吸引する面積を広げる観点から、長辺側の両端面をそれぞれ上端面及び下端面とするのが好ましい。
【0024】
チップ実装に先立ち、再配線層12の第2支持基板18から離れた側の表面に前処理を施してもよく、そのような前処理の例としては、半導体チップ上に配置されたチップ電極と接続するための電極(例えば柱状電極)の形成等が挙げられる。電極の形成は公知の手法を用いて行えばよく、例えばドライフィルムレジストを用いた選択的な電解銅めっきの形成により好ましく行うことが可能である。
【0025】
半導体チップ24の例としては、半導体素子、チップコンデンサ、抵抗体等が挙げられる。チップ実装の方式の例としては、フリップチップ実装方式、ダイボンディング方式等が挙げられる。フリップチップ実装方式は、半導体チップ24の実装パッドと、再配線層12の配線層との接合を行う方式である。この実装パッド上には柱状電極(ピラー)やはんだバンプ等が形成されてもよく、実装前に再配線層12の表面に封止樹脂膜であるNCF(Non-Conductive Film)等を貼り付けてもよい。また、接合は、はんだ等の低融点金属を用いて行われるのが好ましいが、異方導電性フィルム等を用いてもよい。ダイボンディング接着方式は、配線層に対して、半導体チップ24の実装パッド面と反対側の面を接着する方式である。この接着には、熱硬化樹脂と熱伝導性の無機フィラーを含む樹脂組成物である、ペーストやフィルムを用いるのが好ましい。いずれの方式にしても、半導体チップ24は
図1B(iv)に示されるように封止材26で樹脂封止される。こうすることで、再配線層12と半導体チップ24との積層体全体の剛性をさらに向上することができる。封止材26は、半導体チップの樹脂封止に用いられる公知の材料(例えばエポキシ樹脂等)で構成すればよく、特に限定されない。
【0026】
(f)溶解液への浸漬
図1B(v)に示されるように、第4積層体28の一部を、可溶性粘着層16を溶解可能な溶液(すなわち溶解液)に浸漬させる。この操作は、
図2A及び
図2Bに示されるように、第4積層体28の右端面及び左端面を1対の封止部材36で封止し、第4積層体28を下端面が下にかつ上端面が上になるような角度で、下端面を溶液Lに選択的に浸漬させることにより行う。こうすることで、後述する粘着層の溶解又は軟化工程において、溶液Lを第2支持基板18及び再配線層12間の内部空間(以下、単に「内部空間」と称することがある)内に浸透させた際に、溶液Lが第4積層体28の左右端面から漏れ出すことなく、下端面から上端面に向かって万遍なく行き渡る。その結果、可溶性粘着層16の溶解又は軟化を効率良く行うことが可能となる。さらに、本発明の方法では、第4積層体28の下端面を溶液Lに選択的に浸漬させるため、第4積層体28の全体を溶液Lに浸漬させる場合と比べて、溶液Lとの接触により半導体チップ24及び封止材26が受けるダメージが効果的に抑制される。この点、従来の方法では、デバイス等に悪影響を及ぼしにくいpH領域の溶解液を用いる等、使用可能な溶解液の種類が制限されていた。一方、本発明の方法では、上記態様とすることで半導体チップ24等に与えるダメージを抑制できるため、可溶性粘着層16をより効果的に溶解可能な性質を有する溶解液を柔軟に採用することが可能となる。
【0027】
上記観点から、第4積層体28の下端面から上端面までの長さを100%として、下端面から長さ0%超90%以下の範囲内の下方領域のみを溶液Lに浸漬させるのが好ましく、より好ましくは1%以上70%以下、さらに好ましくは1%以上50%以下、さらにより好ましくは1%以上30%以下、特に好ましくは2%以上20%以下、特により好ましくは2%以上10%以下、最も好ましくは2%以上5%以下である。また、上記同様の観点から、第4積層体28の下端面から長さ200mmの範囲内の下方領域のみを溶液Lに浸漬させるのが好ましく、より好ましくは100mm、さらに好ましくは50mm、さらにより好ましくは30mm、特に好ましくは20mm、特により好ましくは10mm、最も好ましくは5mmである。
【0028】
第4積層体28の変形を防止しながら第4積層体28の右端面及び左端面の封止をより確実に行う観点から、第4積層体28の一面側を背面板32に接触させて固定するのが好ましい。背面板32と接触させる第4積層体28の面は、再配線層12側であってもよいし、第2支持基板18側であってもよい。より好ましくは、
図2Aに示されるように、吸引冶具44と背面板32とで第4積層体28を挟み込むことにより封止を行う。吸引冶具44は、正面板34と、1対の封止部材36と、第2の封止部材38と、上部キャップ40と、吸引口42とを備える。1対の封止部材36は、正面板34上に互いに平行に離間して設けられる。第2の封止部材38は正面板34上に1対の封止部材36間に懸架して設けられ、第4積層体28の第2支持基板18及び再配線層12間の内部空間と、溶液Lとの間に圧力差を発生させ、内部空間内への溶液Lの浸透を促進させる役割を担う。上部キャップ40は、正面板34の上端及び/又は1対の封止部材36の上端に接続され、正面板34、1対の封止部材36、第2の封止部材38及び背面板32と共に、減圧用密閉空間を形成可能とする。吸引口42は上部キャップ40に設けられる。吸引口42には、ポンプ(図示せず)が接続される。このように、簡素な構成で着脱容易な吸引冶具44を用いることにより、可溶性粘着層16の溶解又は軟化をより一層効率良く行うことができる。
【0029】
封止部材(すなわち1対の封止部材36及び第2の封止部材38の両方を含む封止部材)の好ましい例としては、ゴム製の部材、接着フィルム、エラストマー、及びそれらの組み合わせが挙げられ、より好ましくはゴム製の部材である。第4積層体28との密着性を向上する観点から、ゴム製部材を構成するゴムの好ましい例としては、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーンゴム、フッ素含有ゴム、及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくはシリコーンゴムである。また、表面平滑性に優れた封止部材を用いることで、第4積層体28との密着性をより一層高めることができる。この観点から、封止部材の第4積層体28と接触する面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される最大高さRzが0.01μm以上500μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.02μm以上100μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上60μm以下、特に好ましくは0.05μm以上20μm以下である。
【0030】
背面板32は耐アルカリ性を有するのが好ましい。これは、
図2A及び
図2Bに示されるように、背面板32も溶液Lと接触することが想定されるところ、後述するように、可溶性粘着層16はアルカリ可溶性樹脂を含むのが好ましく、この場合、溶液Lとしてアルカリ溶液が典型的に用いられるためである。この観点から、背面板32は塩化ビニルで構成されるのが好ましい。また、第4積層体28との密着性をより一層高める観点から、背面板32の第4積層体28と接触する面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される最大高さRzが0.01μm以上500μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.02μm以上100μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上60μm以下、特に好ましくは0.05μm以上20μm以下である。
【0031】
溶液Lは、可溶性粘着層16の材質に合わせて所望の溶解力を有する溶液を適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、可溶性粘着層16がアルカリ可溶型樹脂を含む場合には、溶液Lはアルカリ性溶液を用いればよい。そのようなアルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液が挙げられる。これらの溶液の好ましい濃度は0.5重量%以上50重量%以下である。この範囲内であると、アルカリ性が高くなり、溶解力が向上するとともに、溶解液使用時の室温が低い場合であっても水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムが析出しにくくなる。また、水溶液がアルカリ性を示す有機物(例えばエタノールアミン)を単独又は上記溶液と共に用いてもよい。なお、後述するように、可溶性粘着層16に予めアルカリを添加しておく場合には、水又は水溶液を溶解液として用いてもよい。
【0032】
可溶性粘着層16の溶解時間の短縮のため、アルカリ性溶液に、アクリル樹脂及び/又はノボラック樹脂を溶解可能な有機溶媒(例えば2-プロパノール)を添加してもよい。この有機溶媒の好ましい添加量は、アルカリ性溶液100重量%に対して、5重量%以上50重量%以下である。この範囲内であると、溶解時間の短縮を望ましく実現しながら、作業中における揮散量が低減するため、アルカリ性物質の濃度管理がしやすくなり、安全性も向上する。好ましい有機溶媒はアルコールであり、アルコールの好ましい例としては2-プロパノール、メタノール、エタノール、及び2-ブタノールが挙げられる。
【0033】
アルカリ性溶液に適量の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の添加によって樹脂に対する溶液の浸透性や濡れ性が向上するため、可溶性粘着層16の溶解時間の更なる短縮を図ることができる。界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、いかなるものであってもよい。例えば、水溶性の界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系のいずれも使用することができる。
【0034】
(g)粘着層の溶解又は軟化
第4積層体28の下端面を溶液Lに浸漬させた状態で、第4積層体28の第2支持基板18及び再配線層12間の内部空間と、溶液Lとの間に圧力差を与えて、溶液Lを内部空間内に浸透させる。こうして可溶性粘着層16を溶解又は軟化させる。すなわち、第4積層体28の内部空間内を減圧する、及び/又は溶液Lを加圧することにより、第4積層体28の下端面付近に存在する溶液Lが、第4積層体28の上端面側に向かって内部空間内を上昇する。その結果、内部空間内が溶液Lで満たされ、内部空間内に存在する可溶性粘着層16と溶液Lとが接触することで、可溶性粘着層16が溶解又は軟化する。この点、可溶性粘着層16は間欠パターンで構成されているので、溶液Lが可溶性粘着層16の間欠パターンの隙間に効果的に浸透して、可溶性粘着層16の溶解又は軟化が促進される。このように、本発明の方法では、可溶性粘着層16が存在する内部空間と溶解液との間に圧力差を与えることで溶解液の浸透を強制的に行うため、積層体の全体を溶解液に浸漬させることで毛細管現象により溶解液を粘着層の隙間に徐々に浸透させる従来の方法と比べて、粘着層の溶解又は軟化を極めて短時間で行うことができる。
【0035】
溶液Lを内部空間内に速やかに浸透させる観点から、内部空間と溶液Lとの間の圧力差は、ゲージ圧力計による測定で5kPa以上であるのが好ましく、より好ましくは20kPa以上100kPa以下、さらに好ましくは40kPa以上100kPa以下、特に好ましくは60kPa以上100kPa以下である。
【0036】
上述したように、圧力差は、溶液Lを加圧することにより与えられてもよいが、内部空間を減圧することにより与えられるのが簡便な構成で実現できる点で好ましい。すなわち、内部空間の減圧は、第4積層体28の上端面に接続されたポンプを用いて好ましく行うことができる。好ましいポンプの例としては、エジェクタポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、アスピレータポンプ及びそれらの組合せが挙げられる。第4積層体28の上端面にポンプを直接接続して減圧を行ってもよいが、
図2A及び
図2Bに示されるように、吸引冶具44によって第4積層体28の上端部分に減圧用密閉空間を形成し、吸引冶具44の吸引口42にポンプを接続して減圧を行うのが好ましい。
【0037】
(h)補強シートの剥離
図1B(vi)に示されるように、可溶性粘着層16が溶解又は軟化された状態で、第4積層体28から第2支持基板18を剥離して、半導体パッケージ30を得る。第2支持基板18は可溶性粘着層16の溶解又は軟化に起因して極めて剥離しやすい状態となっているため、手や治工具、機械等で第2支持基板18を第4積層体28から軽く引き剥がすことにより極めて容易に分離することができる。なお、第2支持基板18は、可溶性粘着層16の溶解に起因して自然剥離した状態となっていてもよい。いずれにしても、本発明の方法によれば、再配線層12に与える応力を最小化しながら極めて短時間で第2支持基板18の剥離を行うことができる。こうして再配線層12に加わる応力が最小化されることで、再配線層12における配線の断線や実装部の断線を効果的に回避することができる。
【0038】
粘着シート
図3A及び
図3Bを参照しつつ上述したとおり、本発明の方法に用いられる粘着シート17は、基材シート15と、基材シート15の少なくとも一方の面に間欠パターンで設けられた可溶性粘着層16とを備える。可溶性粘着層16は基材シート15の両面に設けられてもよい。間欠パターンとは、可溶性粘着層16が間欠的(途切れ途切れ)に存在する形状を意味し、可溶性粘着層16が存在する粘着性領域16aと、可溶性粘着層16が存在しない非粘着性領域16b(例えば空間)とによって形成される。間欠パターンは島状又はストライプ状のパターンであるのが好ましく、より好ましくは島状のパターンである。島状のパターンとは、個々の粘着性領域16aが、その周りに存在する非粘着性領域16bによって取り囲まれた形状を意味する。島状のパターンを構成する個々の粘着性領域16aの具体的形状としては、多角形、円形等の様々な形状が挙げられ、星形多角形のような直線の輪郭線が入り組んだ多角形、曲線の輪郭線が入り組んだ異形状であってもよい。
【0039】
可溶性粘着層16が島状のパターンを構成する場合、個々の粘着性領域16aの外接円の直径が0.1mm以上10mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。また、可溶性粘着層16がストライプ状のパターンを構成する場合、個々の粘着性領域16aのストライプ幅が0.1mm以上10mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。このような範囲内であると、溶解液浸漬前における可溶性粘着層16による粘着力を十分に確保しながらも、可溶性粘着層16のパターンの隙間への溶解液の浸透を促進させて溶解剥離等による再配線層12からの第2支持基板18の剥離を容易にすることができる。島状のパターンはドットパターンであるのが好ましく、個々のドットの形状は典型的には円であるが、円に近い形状であってもよい。ドットパターンを構成する個々のドットの外接円の直径として定義される、ドット径は10mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1mm以上5.0mm以下、さらに好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。こうすることで可溶性粘着層16の表面積が増加して溶解性が向上する結果、剥離性が向上する。
【0040】
可溶性粘着層16は、厚さが0.5μm以上50μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0μm以上30μm未満、さらに好ましくは1.0μm以上20μm以下、特に好ましくは2.0μm以上15μm以下、最も好ましくは3.0μm以上10μm以下である。上記範囲内の厚さであると、溶解液が可溶性粘着層16のパターンの隙間に速やかに浸透するため、可溶性粘着層16の溶解又は軟化が促進されると同時に、間欠パターンの再配線層12への圧痕を低減することができる。特に、半導体パッケージ製造において、可溶性粘着層16を介して第2支持基板18を貼り付けて再配線層12を補強した上で、チップ実装、はんだリフロー及び圧縮成型を行った場合に、可溶性粘着層16に起因する圧痕が再配線層12に残ることがあるが、可溶性粘着層16の厚さが7.0μm以下であると圧縮成型後の再配線層12に圧痕が残りにくくなるとの利点がある。この点、可溶性粘着層16をドットパターンとする場合、ドット径が0.7mm以下であり、かつ、可溶性粘着層16の厚さが1.0μm以上7.0μm以下であると、圧痕の低減と剥離性の両方をより効果的に実現できるため特に好ましい。
【0041】
粘着性領域16aの外接円の中心間の間隔は、外接円の直径の平均値よりも大きいことが個々の粘着性領域16aの間に十分な隙間を確保できる点で好ましい。かかる観点から、粘着性領域16aの外接円の中心間の間隔は0.1mm超20mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.2mm以上10mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上5.0mm以下、特に好ましくは0.4mm以上2.0mm以下である。このような範囲とすることで、溶解液が可溶性粘着層16のパターンの隙間に速やかに浸透するため、剥離性が向上する。
【0042】
島状のパターンは、全体として、多角形、円、円環状、帯状又は格子状の模様をもたらす1又は複数個のクラスターで構成されてもよく、クラスターの各々は、3つ以上の粘着性領域16aの集合体で構成されうる。
【0043】
可溶性粘着層16は、室温で粘着性を呈するのは勿論のこと、溶解液に接触して溶解又は軟化可能な層である。したがって、可溶性粘着層16は溶液可溶型樹脂を含むのが好ましく、例えば酸可溶型樹脂又はアルカリ可溶型樹脂を含む。この溶液可溶型樹脂は、溶解液との接触により効率的に溶解又は軟化することができるので、再配線層12からの第2支持基板18の剥離をより効果的に行うことが可能となる。
【0044】
好ましい溶液可溶型樹脂はアルカリ可溶型樹脂である。半導体パッケージの製造では、洗浄工程等において中性又は酸性の溶液を用いることが想定されるため、溶液可溶型樹脂は中性又は酸性の溶液に溶解しないことが望まれるからである。アルカリ可溶型樹脂はカルボキシル基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリマーを含むのが特に好ましい。このようなポリマーはアルカリ性溶液に特に溶解しやすいため、可溶性粘着層16の溶解を促進し、再配線層12からの第2支持基板18の剥離をより短時間で行うことを可能にする。カルボキシル基及びフェノール性水酸基の少なくとも一方を含有するポリマーの例としては、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂、及びフェノール性水酸基を含有するフェノールノボラック樹脂が挙げられる。アクリル樹脂系粘着剤は、カルボキシル基を有し、かつ、分子内に不飽和二重結合を有するアクリル系モノマー(例えばアクリル酸やメタクリル酸)と、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチルとを共重合させることにより合成することができる。合成の際に、アクリル系モノマーの種類及び比率を調整することにより、可溶性粘着層16の粘着力及びアルカリ性溶液に対する溶解性の制御が可能となる。また、可溶性粘着層16の粘着力及びアルカリ性溶液に対する溶解性の制御はカルボキシル基を含有するアクリル樹脂に対して、カルボキシル基の架橋反応を起こす樹脂(例えばエポキシ樹脂)を添加することによっても行うことができる。すなわち、アクリル樹脂中の一部のカルボキシル基がエポキシ樹脂等の樹脂により架橋されることにより分子量が増大するため、耐熱性が向上する反面、粘着力が低下するとともに、アルカリ性溶液に対する溶解性が低下する。一方、アルカリ可溶型樹脂としてフェノール性水酸基を含有するフェノールノボラック樹脂を用いる場合は、この樹脂単独では可溶性粘着層16の粘着力が弱くなるため、ロジン等の粘着性付与剤を混入することにより適度な粘着性を付与することが好ましい。
【0045】
アルカリ可溶型樹脂に予めアルカリを添加しておいてもよい。こうすることで、水又は水溶液を溶解液として用いて可溶性粘着層16を溶解又は軟化させることが可能となる。すなわち、可溶性粘着層16が水又は水溶液に接触することで、予め添加したアルカリによって当該水等の液性がアルカリ性へと変化し、それによりアルカリ可溶型樹脂を含む可溶性粘着層16を溶解又は軟化させることが可能となる。
【0046】
基材シート15の形態は、一般的にシートと称されるものに限らず、フィルム、板、箔等の他の形態であってもよい。基材シート15はこれらのシート、フィルム、板、及び箔等が積層されたものであってもよい。また、基材シート15と可溶性粘着層16との間の接着力を調整するために、基材シート15の可溶性粘着層16が塗布されることになる表面に、研磨処理、離型剤塗布、プラズマ処理等の公知の手法で表面処理を予め施してもよい。
【0047】
本発明の好ましい態様によれば、基材シート15はポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)の少なくとも一方の樹脂で構成されるのが好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)である。特に、粘着シート17が転写型粘着シートとして用いられる場合、基材シート15は可溶性粘着層16を保持する機能及び別に用意する第2支持基板18に可溶性粘着層16を転写する機能を有することが望まれるが、かかる用途に本態様の基材シート15は適している。転写型粘着シートとして用いられる場合の基材シート15の好ましい厚さは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは20μm以上150μm以下、さらに好ましくは25μm以上75μm以下である。一方、粘着シート17を接着型粘着シートとして用いる場合には、基材シート15は第2支持基板18に準じたものとすればよく、上述した第2支持基板18の好ましい態様は基材シート15にもそのまま当てはまる。すなわち、粘着シート17が接着型粘着シートとして用いられる場合、基材シート15は可溶性粘着層16を保持する機能に加え、半導体パッケージの製造工程における、再配線層12のハンドリング性向上及び湾曲を防止ないし抑制する補強シートとしての機能が望まれるが、かかる用途に本態様の基材シート15は適している。