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特許7382347電気加熱式エアロゾル発生システムにおける有害なヒーター状態の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電気加熱式エアロゾル発生システムにおける有害なヒーター状態の検出
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/53 20200101AFI20231109BHJP
   A24F 40/51 20200101ALI20231109BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/51
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020562176
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019063266
(87)【国際公開番号】W WO2019228894
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】18175207.2
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ビラ ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コロット ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ン ワイ レオン ダリル
(72)【発明者】
【氏名】チャン ホ キート
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507476(JP,A)
【文献】特表2017-532011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042306(US,A1)
【文献】特表2015-531600(JP,A)
【文献】国際公開第2016/150922(WO,A2)
【文献】特表2017-514463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体を加熱するための発熱体と、
前記発熱体に電力を供給するための電源と、
前記発熱体の温度を感知するための温度センサーと、
前記発熱体、前記温度センサーおよび前記電源と通信している電気回路と、を備える電気的に作動するエアロゾル発生システムであって、前記電気回路が、メモリを備え、かつ
前記温度センサーからの測定された温度に基づいて、前記発熱体への前記電力供給を調節するように構成されていて、
一定の加熱サイクルで前記発熱体に供給される前記電力を一つ以上の先行サイクルで供給される電力と比較することによって、連続的加熱サイクルにわたって所定の温度を達成もしくは維持するために必要な前記発熱体に供給される電力の減少が、予め定義された範囲外になった時に、有害状態を判定するように構成されていて、前記予め定義された範囲が前記メモリに保存されていて、
有害状態があるかどうかに基づいて前記発熱体に供給される電力を制御する、または有害状態がある時に表示を提供するように構成されていて、
前記システムが装置と取り外し可能なカートリッジとを備え、前記電源および前記電気回路が前記装置の中にあり、前記発熱体が前記取り外し可能なカートリッジの中にあり、前記カートリッジが液体エアロゾル形成基体を含む、電気的に作動するエアロゾル発生システム。
【請求項2】
前記電気回路が、前記発熱体の温度が初期温度から目標温度に上昇した後でのみ、有害状態を判定するように構成されている、請求項1に記載の電気的に作動するエアロゾル発生システム。
【請求項3】
前記予め定義された範囲が、供給される電力の変化率の最大閾値または連続的加熱サイクルにわたって供給される電力の減少の最小閾値に基づいている、請求項1または2に記載の電気的に作動するエアロゾル発生システム。
【請求項4】
前記温度センサーが、前記発熱体の電気抵抗を測定するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気的に作動するエアロゾル発生システム。
【請求項5】
ユーザーが前記システムで吸煙している時を検出するための吸煙検出器をさらに備え、前記吸煙検出器が前記電気回路と通信していて、各吸煙が加熱サイクルに対応するように、前記吸煙検出器によって吸煙が検出された時に前記電源から前記発熱体に電力を供給するように前記電気回路が構成されていて、前記電気回路が、各加熱サイクル中に有害状態があるかどうかを判定するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気的に作動するエアロゾル発生システム。
【請求項6】
電気的に作動するエアロゾル発生システムの発熱体への電力供給を制御する方法であって、
発熱体の温度を測定する工程と、
前記測定された温度に基づいて、前記発熱体への前記電力供給を調節する工程と、
一定の加熱サイクルで前記発熱体に供給される前記電力を一つ以上の先行サイクルで供給される電力と比較することによって、連続的加熱サイクルにわたって所定の温度を達成もしくは維持するために必要な供給される電力の減少が、予め定義された範囲外になった時に、有害状態を判定する工程であって、前記予め定義された範囲がメモリに保存されている工程と、
有害状態があるかどうかに基づいて前記発熱体に供給される電力を制御する工程、または有害状態がある時に表示を提供する工程と、を含む方法。
【請求項7】
電気的に作動するエアロゾル発生システム中のマイクロプロセッサ上でコンピュータプログラム製品が実行される時に、請求項6に記載の工程を実施するためのソフトウェアコード部分を備える、マイクロプロセッサの内部メモリに直接ロード可能な前記コンピュータプログラム製品であって、前記システムがエアロゾル形成基体を加熱するための発熱体と、前記発熱体の温度を感知するためのセンサーと、前記発熱体に電力を供給するための電源と、を備え、前記マイクロプロセッサが電気ヒーター、前記センサーおよび前記電源に接続されている、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル発生システムに関連する。特に、本発明は、エアロゾル発生システムにおける乾燥した発熱体、またはその他の望ましくない状態の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
一部のエアロゾル発生装置において、液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵部分から電気発熱体に送達される。目標温度まで加熱されると、エアロゾル形成基体は気化してエアロゾルを形成する。液体基体は通常、芯によって発熱体に送達される。芯のエアロゾル形成基体の量が枯渇すると、発熱体は過熱してエアロゾルの品質に悪影響を与えうる。これは、ユーザーの吸入のためにエアロゾルを発生するように構成されているエアロゾル発生システムにおいて特に重要である。
【0003】
WO2012/085203号は、発熱体での温度上昇をモニターするエアロゾル発生システムを開示していて、ヒーター温度の急速な増加は芯の乾燥を示す。より具体的に、システムは、温度上昇の速度を、メモリに保存された閾値と比較する。温度上昇の速度が閾値を超えた場合、システムは発熱体への電力供給を停止する。WO2012/085203号に開示される装置は、ヒーターの電気抵抗に基づいてヒーター温度をモニターし、それによって専用の温度センサーの必要性を無くす。
【0004】
WO2016/1050922号およびWO2018/019533号では、発熱体でのエアロゾル形成基体の枯渇を検出する、より複雑な方法を開示している。WO2016/1050922号では、所定の初期電気抵抗に対する電気抵抗の変化の比、または割合に依存するシステムを教示している。初期電気抵抗は、電気接点および接続などの補助構成要素から生じる寄生抵抗、ならびに加熱前の発熱体の電気抵抗を考慮する。これは、基体枯渇の、より正確で応答性の高い検出をもたらす。WO2018/019533号は、初期加熱抵抗を考慮しないシステムを開示している。むしろ、システムは加熱中の電気抵抗の絶対的増加を測定し、電気抵抗の増加が所定の閾値を超えた時にシャットダウンするように構成されている。これは、堅牢かつ信頼できる様態で、幅広い発熱体およびエアロゾル発生システムに同じ検出機構を適用することを可能にする。
【0005】
しかしながら、エアロゾル形成基体の枯渇を検出するためのこれらの技法のすべては、結果として得られる電気抵抗の変化を検出するためにヒーター温度を実質的に上昇させる必要があるか、または遅い場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様によると、エアロゾル形成基体を加熱するための発熱体と、発熱体に電力を供給するための電源と、発熱体の温度を感知するための温度センサーと、発熱体、センサーおよび電源と通信している電気回路とを備え、電気回路がメモリを備え、かつ温度センサーからの測定された温度に基づいて発熱体への電力供給を調節するように構成されていて、i)所定の温度を達成もしくは維持するために必要な発熱体に供給される電力の変化率、またはii)連続的加熱サイクルにわたって所定の温度を達成もしくは維持するために必要な発熱体に供給される電力の減少が、予め定義された範囲外になった時に、有害状態を判定するように構成されていて、前記予め定義された範囲がメモリに保存されていて、有害状態があるかどうかに基づいて発熱体に供給される電力を制御する、または有害状態がある時に表示を提供するように構成されている、電気的に作動するエアロゾル発生システムが提供されている。
【0007】
本明細書で使用される「電気的に作動するエアロゾル発生システム」は、一つ以上のエアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるシステムを意味する。エアロゾル形成基体は、カートリッジの中に含有されてもよい。カートリッジを提供する利点は、エアロゾル形成基体が周囲環境から保護されることである。さらに、高いレベルの衛生を維持することができる。システムは、一つ以上のエアロゾル形成基体を加熱するための装置を備えうる。電気エアロゾル発生システムは、電気的に作動するエアロゾル発生装置の中の搭載型電力供給源を再充電するための充電ユニットなど、追加的な構成要素を含んでもよい。エアロゾル発生システムは、吸入器、個人用気化器またはe-シガレットなど、ユーザーの吸入のためにエアロゾルを発生するように構成されたシステムであってもよい。
【0008】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成しうる揮発性化合物を放出する能力を有する基体を意味する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。
【0009】
有利なことに、電気回路は、発熱体への電力供給をモニターすることによって、エアロゾル形成基体の枯渇またはシステム誤作動などの有害状態を判定しうる。電気回路は、発熱体での液体エアロゾル形成基体の枯渇を判定するように構成されうる。この文脈において「枯渇」とは、発熱体にて不十分な量のエアロゾル形成基体が提供されていること、またはエアロゾル形成基体の完全な枯渇のいずれかを意味する。どちらにしても、これは、液体エアロゾル形成基体で浸されている「湿った」発熱体とは対照的に、「乾燥した」発熱体をもたらしうる。例えば、カートリッジが空またはほぼ空である時に、不十分な液体エアロゾル形成基体が発熱体に供給されうる。これは、生成されたエアロゾルが望ましい属性(例えば、エアロゾル粒子のサイズや化学組成)を有しないことを意味しうる。これはユーザーにとって良くない体験をもたらしうる。
【0010】
電気回路は、有害状態を検出すると、電力供給を停止しうる。これは、発熱体の乾燥が検出されると、ユーザーがそれ以上エアロゾル発生システムを使用できなくなるため、有利である。これは、望ましい特性を有しないエアロゾルの生成を回避しうる。また従って、これはユーザーにとって良くない経験を回避しうる。電気回路は、発熱体と電源の間の電気ヒューズを飛ばすことによって、発熱体を停止するように配設されてもよい。電気回路は、発熱体と電源の間のスイッチをオフに切り替えることによって、発熱体を停止するように配設されてもよい。発熱体を停止する代替的な方法は、当業者に明らかであろう。
【0011】
別の方法として、または追加的に、電気回路は、ユーザーに有害状態を警告するためにユーザーに表示を提供してもよい。表示は、音声表示、視覚的表示、振動などの機械的表示、嗅覚表示、または当業者に周知のその他の任意の表示手段のうちの一つ以上としうる。すると、ユーザーはカートリッジを交換または再充填するために準備することができる。
【0012】
有利なことに、電気回路は、発熱体に供給される電力をモニターすることに基づいて有害状態を判定しうる。一般に、気化のためにヒーターに送達されるエアロゾル形成基体がより少ないほど、所与の適用電力に対する発熱体の温度はより高くなる。従って、目標温度を維持または達成するために発熱体で必要な電力は、エアロゾル形成基体の枯渇に伴いそれに応じて減少しうる。これは、発熱体が加熱する必要がありうるエアロゾル形成基体がより少ない、または空のカートリッジの場合、全くないためである。
【0013】
従って、電気回路は、所定の温度を達成または維持するために必要な発熱体への電力供給の変化率をモニターすることによって、有害状態を判定する。例えば、有害状態は、目標温度を維持する一方で、電力供給の急激なサージまたは低下を検出すると判定されうる。有利なことに、この方法は、先行技術システムで開示されている通り、電力供給が所定の閾値に達する前でも、有害状態を容易に判定できるため、有害状態のより迅速な検出を可能にしうる。さらに、この方法は電力供給の絶対的増加のモニタリングに依存せず、それ故に有利なことに、周囲条件からより独立して有害状態を判定することを可能にし、また異なる基体を可能にしうる。
【0014】
別の方法として、または追加的に、電気回路は、連続的加熱サイクルにわたって所定の温度を達成または維持するために必要な電力供給の減少、またはより具体的には必要な最小電力供給をモニターすることによって、有害状態を判定しうる。この文脈における「加熱サイクル」は、発熱体への電力供給の期間を意味する。典型的に、各加熱サイクルはユーザー吸煙に対応する。異なる発熱体と基体の組み合わせの間の変動のため、一定温度を維持するために必要な電力は、異なるエアロゾル発生システム間で変化しうる。従って、所与の加熱サイクルにおける最小電力供給を、同じエアロゾル発生システムにおける先行の加熱サイクルで供給された電力と比較することによって、電気回路は電力消費量の小さい変化を検出しうる。これは有利なことに、有害状態をより早く検出することを可能にする。
【0015】
随意に、電気回路は、発熱体の温度が初期温度から目標温度に上昇した後でのみ、有害状態を判定するように構成されている。電気回路は、発熱体が所定の時間にわたり目標温度に維持された後でのみ、有害状態を判定するように構成されうる。より具体的に、発熱体を初期温度から目標温度に上昇させるために必要な電力は、特に周囲条件に依存して変化しうる。従って、有害状態の判定が、これらの期間中の電力供給に基づく場合、こうした判定は信頼性が低くなりうる。これと比較して、発熱体が目標温度に維持されている時に、一貫した一定のレベルの電力供給が観察されうる。電力供給は、発熱体でのエアロゾル形成基体の枯渇、またはエアロゾル発生システムの誤作動など、有害状態がある時のみ一定の値から逸脱しうる。それ故に、電気回路は、発熱体の温度が目標温度に達して維持されると、有害状態を判定しうる。電気回路は、検出された抵抗が目標温度を示す所定の値に達すると、有害な状態を判定しうることが好ましい。
【0016】
予め定義された範囲は、電力供給の変化率の最大値閾の値に基づいてもよい。有害状態は、電力供給の変化率が前記最大閾値を超えた時に判定されうる。これは有利なことに、周囲条件の変化による有害状態がない時に、電力供給の小さい変動を可能にしうる。
【0017】
別の方法として、予め定義された範囲は、連続的加熱サイクルにわたって供給される最小電力の減少の最小閾値に基づく。有害状態は、連続的加熱サイクルにわたって発熱体に供給される電力の減少が最小閾値よりも増加した時に、判定されうる。これは有利なことに、有害状態が判定される前に、連続的加熱サイクルにわたる電力供給の小さい減少を可能にしうる。
【0018】
本明細書で使用される「発熱体」という用語は、搭載型電力供給源によって電力供給される電気発熱体を意味する。電気発熱体は単一の発熱体を含みうる。別の方法として、発熱体は、複数の別個の発熱体、例えば2個、または3個、または4個、または5個、または6個、またはそれ以上の発熱体を含みうる。発熱体(単数または複数)は、最も効果的に液体エアロゾル形成基体を加熱するように適切に配設される場合がある。
【0019】
発熱体は抵抗発熱体であってもよい。少なくとも一つの電気発熱体は、電気抵抗性の材料を含むことが好ましい。適切な電気抵抗性の材料には例えば、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、金属合金、セラミック材料製・金属材料製の複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な金属合金の例には、ステンレス鋼、コンスタンタン、ニッケル含有、コバルト含有、クロム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオビウム含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、および鉄含有の合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、鉄-アルミニウム系合金、鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。Timetal(登録商標)は、Titanium Metals Corporationの登録商標である。複合材料において、電気抵抗性材料は、必要とされるエネルギー伝達の動態学および外部の物理化学的特性に応じて随意に、断熱材料中に包埋、断熱材料中に封入、もしくは断熱材料で被覆されてもよく、またはその逆も可である。発熱体は、二層の不活性材料の間で絶縁された、金属製でエッチング加工が施された箔を含んでもよい。その場合、不活性材料はKapton(登録商標)、全層ポリイミドまたはマイカ箔を含んでもよい。Kapton(登録商標)は、E.I. du Pont de Nemours and Companyの登録商標である。
【0020】
抵抗発熱体は、導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維の形態を取りうる。導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定してもよく、隙間は10 μm~100 μmの幅を有してもよい。導電性フィラメントは160~600メッシュUS(±10%)(すなわち、1インチ当たりのフィラメント数が160~600個(±10%))のサイズのメッシュを形成してもよい。隙間の幅は75 μm~25 μmであることが好ましい。メッシュの総面積に対する間隙の面積の比であるメッシュの開口部分の面積率は25~56%が好ましい。メッシュは、異なるタイプの織り構造または格子構造を使用して形成されてもよい。別の方法として、導電性フィラメントは、互いに平行に配置されたフィラメントのアレイから成る。導電性フィラメントは8 μm~100 μmの直径を有することができ、8μm~50μmの直径を有することが好ましく、8μm~39μmの直径を有することがより好ましい。フィラメントは丸い断面を有してもよく、または扁平な断面を有してもよい。
【0021】
導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維の面積は小さくてもよく、25mm2以下であることが好ましく、手持ち式システムに組み込まれることを可能にする。導電性フィラメントのメッシュ、アレイまたは繊維は、例えば5mm×2mmの寸法の長方形であってもよい。導電性フィラメントのメッシュまたはアレイは、ヒーター組立品の面積の10%~50%の面積を覆うことが好ましい。導電性フィラメントのメッシュまたはアレイは、ヒーター組立品の面積の15~25%の面積を覆うことがより好ましい。
【0022】
フィラメントは、シート材料(箔など)のエッチングによって形成されてもよい。これは、ヒーター組立品が平行のフィラメントのアレイを備える時に、特に有利である場合がある。発熱体がフィラメントのメッシュまたは繊維を含む場合、フィラメントは個別に形成されてもよく、まとめて編まれてもよい。
【0023】
導電性フィラメント用の好ましい材料は、304、316、304L、および316Lステンレス鋼である。
【0024】
メッシュ配設の代わりに、少なくとも一つの電気発熱体は、抵抗ヒーターコイル、または異なる導電性部分を有するケーシングもしくは基体、または電気抵抗性の金属チューブの形態を取ってもよい。カートリッジがエアロゾル発生装置のくぼみの中に受容されている時に、ヒーターは、カートリッジの少なくとも一部分を囲むように配設されうる。カートリッジは使い捨て発熱体を組み込んでもよい。別の方法として、液体エアロゾル形成基体を貫通する一つ以上の加熱用の針またはロッドも適切である場合がある。別の方法として、少なくとも一つの電気発熱体は材料の可撓性シートを含んでもよい。他の代替物としては、加熱ワイヤまたはフィラメント、例えばNi-Cr(ニッケルクロム)、白金、タングステン、または合金のワイヤもしくは加熱プレートが挙げられる。随意に、発熱体は剛直な担体材料内またはその上に配置されてもよい。
【0025】
少なくとも一つの発熱体は伝導によってエアロゾル形成基体を加熱する場合がある。発熱体は、基体と少なくとも部分的に接触する場合がある。別の方法として、発熱体からの熱は熱伝導性要素の手段によって基体に伝導される場合がある。
【0026】
少なくとも一つの発熱体は、使用中に電気的に作動するエアロゾル発生システムを通して引き出された、入ってくる周囲空気に熱を伝達する場合があり、これが次にエアロゾル形成基体を加熱する。周囲空気はエアロゾル形成基体を通過する前に加熱されてもよい。別の方法として、周囲空気は最初に、基体を通して引き出され、次に加熱されてもよい。
【0027】
抵抗発熱体は温度センサーとして機能しうる。少なくとも一つの発熱体が抵抗温度係数の適切な特徴を有する場合、少なくとも一つの発熱体の電気抵抗を測定することは、発熱体の温度を確認することを可能にする。電気回路は、少なくとも一つの発熱体を流れる電流と少なくとも一つの発熱体の両端の電圧とを測定すること、および測定した電流および電圧から少なくとも一つの発熱体の電気抵抗を判定することによって、少なくとも一つの発熱体の電気抵抗を測定するように配設されうる。この場合において、電気回路は、既知の抵抗を有し、少なくとも一つの発熱体と直列の抵抗器を備えてもよく、また、この電気回路は、既知の抵抗の抵抗器の両端の電圧を測定すること、および測定した電圧および既知の抵抗から少なくとも一つの発熱体を流れる電流を判定することによって少なくとも一つの発熱体を流れる電流を測定するよう配設されうる。従って、エアロゾル発生システム中の貴重な空間を占め、高価ともなりうる、専用の温度センサーを含める必要がない場合がある。この実施形態において、電気抵抗は発熱体とセンサーの両方として使用されることが強調されている。
【0028】
エアロゾル形成基体は室温で液相であってもよい。本明細書で使用される「液体」および「固体」という用語は、室温でのエアロゾル形成基体の状態を指す。エアロゾル形成基体は室温で流動性液体であってもよい。液体エアロゾル形成基体については、基体のある特定の物理的特性、例えば蒸気圧または粘性は、エアロゾル発生システムでの使用に適しているように選ばれる。
【0029】
エアロゾル形成基体は植物由来材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、たばこを含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は均質化した植物由来材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は均質化したたばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成体を含んでもよい。エアロゾル形成体は、使用時に高密度の安定したエアロゾルの形成を容易にし、かつシステムの動作温度にて熱分解に対して実質的に抵抗性である任意の適切な周知の化合物または化合物の混合物でありうる。適切なエアロゾル形成体は当業界で周知であり、これには多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテート、またはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいエアロゾル形成体は、多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリン(最も好ましい)など)である。エアロゾル形成基体は、その他の添加物および成分(風味剤など)を含んでもよい。
【0030】
液体エアロゾル形成基体の場合、基体のある一定の物理的特性、例えば蒸気圧または粘性は、エアロゾル発生システムでの使用に適しているように選ばれる。液体は、加熱されると液体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含むことが好ましい。別の方法として、または追加的に、液体は非たばこ材料を含んでもよい。液体は水、エタノール、または他の溶媒、植物エキス、ニコチン溶液、および天然もしくは人工の風味を含む場合がある。液体はエアロゾル形成体をさらに含むことが好ましい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0031】
エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置の再充填可能な液体貯蔵部分に含有されてもよく、またはエアロゾル発生システムの中の使い捨てカートリッジであってもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生システムの中の使い捨てカートリッジに含有されていることが好ましい。前記カートリッジは、単一の使用セッション後に交換されてもよく、または複数の使用セッション後に交換されてもよい。これは、ユーザーが枯渇したカートリッジを安全かつ効率的な方法で交換することを可能にしうる。
【0032】
液体エアロゾル形成基体は、例えば手動ポンプまたは電気ポンプなどの機械的装置によって、カートリッジから発熱体に送達されてもよい。
【0033】
電気的に作動するエアロゾル発生システムは、液体エアロゾル形成基体を発熱体に運ぶための毛細管芯をさらに備えることが好ましい。これは、エアロゾル発生装置の可動部品の数を減少させることができ、それ故に信頼性を向上させ、重量およびコストを低減しうる。
【0034】
随意に、毛細管芯はカートリッジの液体と接触するように配設されている。随意に、毛細管芯はカートリッジの中に延びる。その場合、使用時に、液体は毛細管芯の毛細管作用によって、カートリッジから発熱体に移動されうる。一実施形態において、毛細管芯は第一の端と第二の端を有してもよく、第一の端はカートリッジの中の液体と接触するためにカートリッジの中に延びてもよく、発熱体は第二の端の中の液体を加熱するように配設されてもよい。発熱体が作動すると、毛細管芯の第二の端の液体が少なくとも一つの発熱体によって気化されて、過飽和蒸気を形成しうる。過飽和蒸気は気流と混合され、気流中で運ばれうる。流れる間に、蒸気は凝縮されてエアロゾルを形成し、エアロゾルはユーザーの口に向かって運ばれうる。液体エアロゾル形成基体は、液体が毛細管作用によって毛細管芯を通して運ばれることを可能にする、粘性および表面張力を含む物理的特性を有しうる。
【0035】
毛細管芯は繊維質または海綿状の構造を有してもよい。毛細管芯は一束の毛細管を含むことが好ましい。例えば、毛細管芯は複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含む場合がある。繊維または糸は概してエアロゾル発生システムの長軸方向に整列されてもよい。別の方法として、毛細管芯はロッド形状に形成された海綿体様または発泡体様の材料を含む場合がある。ロッド形状はエアロゾル発生システムの長軸方向に沿って延びてもよい。芯の構造は複数の小さい穴またはチューブを形成してもよく、それを通して液体を毛細管作用によって搬送することができる。毛細管芯は任意の適切な材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の実施例は毛細管材料であり、例えば海綿体または発泡体材料、繊維または焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属またはプラスチックの材料、例えば紡がれたまたは押出成形された繊維(セルロースアセテート、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンまたはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)でできた繊維性材料がある。毛細管芯は異なる液体物理特性で使用されるように、任意の適切な毛細管および空隙率を有する場合がある。液体は、毛細管作用によって毛細管装置を通して搬送されることを可能にする粘性、表面張力、密度、熱伝導率、沸点および蒸気圧を含むがこれに限定されない物理的特性を有しうる。液体エアロゾル形成基体の特性と組み合わせられた芯の毛細管特性は、通常の使用中、多くのエアロゾル形成基体がある時に、芯が加熱領域中で常に湿っていることを確実にする。
【0036】
毛細管芯および発熱体、ならびに随意にカートリッジは、単一の構成要素としてエアロゾル発生システムから取り外し可能であってもよい。
【0037】
システムはエアロゾル発生装置および取り外し可能なカートリッジを備えてもよく、電源および電気回路が装置の中に提供されていて、発熱体は取り外し可能なカートリッジの中に提供されてもよく、カートリッジは液体エアロゾル形成基体を備える。発熱体は、適切なコネクターによって電源および電気回路に接続するように構成されうる。発熱体は使い捨て発熱体であってもよい。発熱体は、取り外し可能なカートリッジと交換可能であってもよい。
【0038】
随意に、異なる特性を有するカートリッジを装置で使用することができる。例えば、異なるサイズの発熱体を有する2つの異なるカートリッジを装置に提供しうる。例えば、より高い電力定格を有する発熱体を使用して、より多くのエアロゾルを送達しうる。容量がより高いカートリッジを使用して、カートリッジ交換の頻度を低減させうる。
【0039】
エアロゾル発生装置はハウジングを備えることが好ましい。ハウジングは細長いことが好ましい。エアロゾル発生装置が毛細管芯を含む場合、毛細管芯の長軸方向軸およびハウジングの長軸方向軸は実質的に平行でありうる。
【0040】
ハウジングは、任意の適切な材料または材料の組み合わせを含みうる。適切な材料の例としては、金属、合金、プラスチック、もしくはこれらの材料のうちの一つ以上を含有する複合材料、または食品もしくは医薬品用途に適切な熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリエチレンが挙げられる。材料は軽く、かつ脆くないことが好ましい。
【0041】
随意に、エアロゾル発生装置は、ユーザー入力装置を備える。ユーザー入力装置は、押しボタン、スクロールホイール、タッチボタン、タッチスクリーン、およびマイクロフォンのうちの少なくとも一つを備えうる。ユーザー入力装置は、ユーザーがエアロゾル発生装置の動作の一つ以上の態様を制御することを可能にしうる。ユーザー入力装置は、ユーザーがヒーターへの電力供給を起動すること、またはヒーターへの電力供給を停止すること、またはその両方を可能にしうる。
【0042】
随意に、電気回路はマイクロプロセッサを備え、プログラマブルマイクロプロセッサを備えることがより好ましい。システムは、ソフトウェアをマイクロプロセッサ上にアップロードすることを可能にするために、データ入力ポートまたはワイヤレスレシーバーを備えてもよい。電気回路は追加的な電気的構成要素を備えてもよい。
【0043】
随意に、エアロゾル発生システムは、ユーザーがシステムを吸煙している時を検出するための吸煙検出器をさらに備える。吸煙検出器は電気回路と通信していてもよい。電気回路は、各吸煙が加熱サイクルに対応するように、吸煙が吸煙検出器によって検出された時に、電力を電源から発熱体に供給するように構成されてもよい。電気回路は、各加熱サイクル中に有害状態があるかどうかを判定するように構成されうる。吸煙検出器はエアロゾル発生装置にあるユーザー入力装置を形成しうる。すなわち、ユーザーは、加熱サイクルを開始するために機械的ボタンを押下する必要がない場合がある。
【0044】
エアロゾル発生装置は、マウスピースをさらに備えてもよい。マウスピースは、エアロゾル発生装置のハウジングまたはカートリッジと係合するように構成されうる。随意に、マウスピースはエアロゾル発生装置と係合するように構成されていて、エアロゾル発生装置とマウスピースとの組み合わせは、紙巻たばこ、葉巻、または細い葉巻などの可燃性喫煙物品の形状および寸法をまねてもよい。有利なことに、こうした実施形態において、エアロゾル発生装置とマウスピースとの組み合わせは、紙巻たばこの形状および寸法をまねてもよい。
【0045】
電源は、任意の適切な電源であってもよく、例えば電池などの直流電圧源であってもよい。電源は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、またはリチウム系電池(例えば、リチウムコバルト電池)、リチウム鉄リン酸塩電池、チタン酸リチウム、もしくはリチウムポリマー電池であってもよい。
【0046】
随意に、電源は再充電可能リチウムイオン電池を含みうる。電力供給源は、コンデンサーなどの別の形態の電荷蓄積装置を備えうる。電力供給源は再充電を必要とする場合がある。電力供給源は、エアロゾル発生装置の1回以上の使用のために十分なエネルギーの蓄積を可能にする容量を有してもよい。例えば、電力供給源は従来の紙巻たばこ1本を喫煙するのにかかる一般的な時間に対応する約6分間、また6分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電力供給源は所定の吸煙回数、または不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0047】
電気回路は、加熱サイクルの開始時に、電力供給源からヒーターへの電力供給を開始するように構成されてもよい。電気回路は、加熱サイクルの終了時に、電力供給源からヒーターへの電力供給を終了するように構成されてもよい。
【0048】
電気回路は、電力供給源からヒーターへの電力の連続的供給を提供するように構成されてもよい。
【0049】
電気回路は、電力供給源からヒーターへの電力の断続的供給を提供するように構成されてもよい。電気回路は、電力供給源からヒーターへの電力のパルス供給を提供するように構成されてもよい。
【0050】
有利なことに、ヒーターへの電力のパルス供給は、期間中のヒーターからの全出力の制御を容易にしうる。有利なことに、期間中のヒーターからの全出力を制御することは、温度の制御を容易にしうる。
【0051】
電気回路は、電力供給源からヒーターへの電力の供給を変化させるように構成されてもよい。電気回路は電力のパルス供給の負荷サイクルを変化させるように構成されうる。電気回路は、パルス幅および負荷サイクルの期間のうち少なくとも一つを変化させるように構成されうる。
【0052】
随意に、エアロゾル発生システムは携帯型である。エアロゾル発生システムは喫煙システムであってもよく、また従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有してもよい。喫煙システムの全長は、およそ30mm~およそ150mmであってもよい。喫煙システムの外径は、およそ5mm~およそ30mmであってもよい。
【0053】
本発明の第二の態様によると、電気的に作動するエアロゾル発生システム中の発熱体への電力供給を制御する方法が提供されていて、発熱体の温度を測定する工程と、測定された温度に基づいて発熱体への電力供給を調節する工程と、i)所定の温度を達成もしくは維持するために必要な発熱体に供給される電力の変化率、またはii)連続的加熱サイクルにわたって所定の温度を達成もしくは維持するために必要な発熱体に供給される電力の減少が、予め定義された範囲外になった時に、有害状態を判定する工程であって、前記予め定義された範囲がメモリに保存されている工程と、有害状態があるかどうかに基づいて発熱体に供給される電力を制御する工程、または有害状態がある時に表示を提供する工程とを含む。
【0054】
本発明の第三の態様によると、電気的に作動するエアロゾル発生システム中のマイクロプロセッサ上でコンピュータプログラム製品が実行される時に、第二の態様の工程を実施するためのソフトウェアコード部分を備える、マイクロプロセッサの内部メモリの中に直接ロード可能な前記コンピュータプログラム製品が提供されていて、システムはエアロゾル形成基体を加熱するための発熱体と、発熱体の温度を感知するためのセンサーと、発熱体に電力を供給するための電源とを備え、マイクロプロセッサは発熱体、センサー、および電源に接続されている。
【0055】
誤解を避けるために、本発明の一つの態様に関する上述の特徴はまた、本発明の他の態様に適用されてもよい。
【0056】
一態様に関して説明された特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
【0057】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1a図1aは、本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
図1b図1bは、本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
図1c図1cは、本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
図1d図1dは、本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
図2図2は、図1a~図1dに示したシステムで使用するカートリッジの分解組立図である。
図3図3は、図2に示したカートリッジ中のヒーター組立品のヒーターフィラメントの詳細図であり、フィラメント間の液体エアロゾル形成基体のメニスカスを示す。
図4図4は、複数回の吸煙中のヒーター組立品の電気抵抗の変化を示すプロットである。
図5図5は、図4に示す通りの複数回の吸煙に対応する、ヒーター組立品への電力供給の変化を示すプロットである。
図6図6は、図4および図5に示す通りの複数回の吸煙に対応する、ヒーター組立品への最小電力供給の差を示すプロットである。
図7図7は、図4および図6に示す通りの複数回の吸煙に対応する、ヒーター組立品への電力供給の変化率を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1a~図1dは、本発明の実施形態による電気加熱式エアロゾル発生システムの概略図である。エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生装置10とカートリッジ20とを備える。
【0060】
カートリッジ20は、カートリッジハウジング24中にエアロゾル形成基体を含有し、装置内のくぼみ18の中に受容されるように構成されている。カートリッジ20は使い捨てカートリッジである。ユーザーは、カートリッジ中のエアロゾル形成基体が枯渇すると、カートリッジ20を交換しうる。カートリッジは、カートリッジハウジング24に密封シールを提供するための取り外し可能なシール26を備える。これは、カートリッジハウジング24に含有されているエアロゾル形成基体が、その最初の使用前に環境から遮蔽されることを可能にする。図1aは、装置の中への挿入直前のカートリッジ20を示し、図1aの矢印1は、カートリッジの挿入方向を示す。
【0061】
エアロゾル発生装置10は携帯型であり、従来の葉巻たばこ、または紙巻たばこに匹敵するサイズを有する。装置10は、本体11およびマウスピース部分12を備える。本体11は、電池14(リン酸鉄リチウム電池など)、電気回路16、およびくぼみ18を包含する。電気回路16はプログラマブルマイクロプロセッサを備える。マウスピース部分12は、ヒンジ接続21によって本体11に接続されていて、図1aに示す開位置と図1dに示す閉位置との間で移動可能である。マウスピース部分12は、カートリッジ20の挿入および取り外しを可能にするように開位置に置かれていて、またシステムがエアロゾルの発生に使用される時に閉位置に置かれている。マウスピース部分は、複数の空気吸込み口13および空気出口15を備える。使用時に、ユーザーは出口で吸うかまたは吸煙して、空気を空気吸込み口13からマウスピース部分を通して出口15に引き出し、その後ユーザーの口または肺に入れる。内部バッフル17は、マウスピース部分12を通してカートリッジを通過する空気の流れを強制するために提供されている。
【0062】
くぼみ18は円形断面を有し、カートリッジ20のハウジング24を受容するようにサイズ設定されている。電気コネクター19は、制御電子回路16と電池14とカートリッジ20の対応する電気接点との間の電気的接続を提供するために、くぼみ18の側部に提供されている。
【0063】
図1bは、くぼみ18の中に挿入されたカートリッジを有し、取り外し可能なシール26が取り外されている図1aのシステムを示す。この位置において、電気コネクターは、カートリッジ上の電気接点に対して置かれている。
【0064】
図1cは、取り外し可能なシール26が取り外され、マウスピース部分12が閉位置に移動されている図1bのシステムを示す。
【0065】
図1dは、マウスピース部分12が閉位置にある図1cのシステムを示す。マウスピース部分12は、留め金機構によって閉位置に保持されている。システムの向きに関係なく、使用時に良好な電気的接続が維持されるように、閉位置にあるマウスピース部分12は、カートリッジを電気コネクター19と電気的に接触した状態に保つ。
【0066】
図2はカートリッジ20の分解組立図である。カートリッジハウジング24は、くぼみ18の中に受容されるように選択されたサイズおよび形状を有する。ハウジングは、液体エアロゾル形成基体に浸された毛細管材料27、28を包含する。この例において、エアロゾル形成基体は、39重量パーセントのグリセリン、39重量パーセントのプロピレングリコール、20重量パーセントの水および風味剤、および2重量パーセントのニコチンを含む。毛細管材料は、液体濃度の相対的な差に基づいて、液体を一方の端から他方の端に能動的に運ぶ材料である。毛細管材料は任意の適切な材料から作製されうる。この例において、毛細管材料はポリエステルから形成されている。
【0067】
カートリッジハウジング24は、ヒーター組立品30が固定されている開放端を有する。ヒーター組立品30は、中に開口部35が形成された基体34と、基体に固定されかつギャップ33によって相互に分離された一対の電気接点32と、開口部にまたがって、かつ開口部35の反対側にある電気接点に固定された複数の導電性ヒーターフィラメント36とを備える。
【0068】
ヒーター組立品30は、剥離可能なシール26によって覆われている。剥離可能なシール26は、ヒーター組立品30に接着されているが簡単に剥がすことができる、液体不透過性プラスチックシートを含む。剥がす時にユーザーが剥離可能なシール26を掴むことを可能にするように、タブが剥離可能なシール26の側面に提供されている。接着は不浸透性プラスチックシートをヒーター組立品に固定する方法として説明されているものの、消費者によってカバーが簡単に取り外されうる限り、ヒートシールまたは超音波溶接を含む当業者が精通している他の方法も使用してもよいことが、当業者には明らかとなろう。
【0069】
図2のカートリッジには2つの別個の毛細管材料27、28がある。第一の毛細管材料27のディスクが、使用時にヒーター要素36、32と接触するように提供されている。第二の毛細管材料28のより大きい本体は、ヒーター組立品に対して第一の毛細管材料27の反対側に提供されている。第一の毛細管材料と第二の毛細管材料の両方は、液体エアロゾル形成基体を保持する。ヒーター要素と接触する第一の毛細管材料27は、第二の毛細管材料28より高い熱分解温度(少なくとも160℃以上、例えば約250℃など)を有する。第二の毛細管材料がその熱分解温度を上回る温度にさらされないように、第一の毛細管材料27はヒーター要素36、32を第二の毛細管材料28から分離するスペーサーとしての役目を効果的に果たす。第一の毛細管材料全体の熱勾配は、第二の毛細管材料がその熱分解温度を下回る温度にさらされるようにするためである。第二の毛細管材料28は第一の毛細管材料27よりも優れた芯の性能を有するように選択されることができ、単位体積あたり第一の毛細管材料よりも多くの液体を保持でき、また第一の毛細管材料よりも安価なものとしうる。この例において、第一の毛細管材料は耐熱材料(ガラス繊維またはガラス繊維含有材料など)であり、また第二の毛細管材料はポリマー(適切な毛細管材料など)である。例示的な適切な毛細管材料としては、本明細書で説明した毛細管材料が挙げられ、また代替的な実施形態において、高密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられうる。
【0070】
毛細管材料27、28は、液体をヒーター組立品30に運ぶために、ハウジング24の中で有利に方向付けられている。カートリッジが組み立てられた時に、ヒーターフィラメント36は毛細管材料27と接触してもよく、そのためエアロゾル形成基体はメッシュヒーターに直接運ばれることができる。図3は、ヒーター組立品30のフィラメント36の詳細図であり、ヒーターフィラメント36間の液体エアロゾル形成基体のメニスカス40を示す。ヒーター組立品30によって発生された熱の大半がエアロゾル形成基体の中に直接入るように、エアロゾル形成基体はそれぞれのフィラメント36の表面の大半に接触することが分かる。
【0071】
そのため、通常動作において、液体エアロゾル形成基体はヒーターフィラメント36の表面の大きい部分に接触する。ところが、カートリッジ中の液体基体の大半が使用された時に、ヒーターフィラメント36に送達される液体エアロゾル形成基体は、より少なくなる。気化する液体がより少ないと、気化のエンタルピーが要するエネルギーがより小さくなり、ヒーターフィラメント36に供給されるより多くのエネルギーが、ヒーターフィラメントの温度を上げることに向けられる。同様に、目標温度を維持するために必要なエネルギーはまた、ヒーターフィラメント36が乾燥するにつれて減少する。ヒーターフィラメント36は、カートリッジ中のエアロゾル形成基体が枯渇したために、乾燥する場合がある。別の方法として、ただし可能性はあまりないが、ヒーターフィラメント36は、ユーザーが非常に長くまたは非常に頻繁に吸煙を行っていて、かつ液体が気化されるのと同じ速さでヒーターフィラメント36に液体を送達することができないため、乾燥する場合がある。
【0072】
使用時に、ヒーター組立品30は抵抗加熱によって動作する。電流は、制御電子回路16の制御の下で、フィラメント36を通過し、フィラメントを望ましい温度範囲内に加熱する。フィラメントのメッシュまたはアレイは、高い温度がフィラメントに限局されるように、電気接点32および電気コネクター19よりも著しく高い電気抵抗を有する。これは、エアロゾル発生装置10の他の部品に対する熱損失を最小化する。この実施例において、システムは、ユーザーの吸煙に応答して電流をヒーター組立品30に提供することによって熱を発生するように構成されている。
【0073】
システムは、ユーザーがマウスピース部分を通して空気を引き出している時を検出するように構成された吸煙センサーを含む。吸煙センサー(図示せず)は制御電子回路16に接続されていて、制御電子回路16は、ユーザーが装置を吸煙していることが判定された時にのみ電流をヒーター組立品30に供給するよう構成されている。任意の適切な気流センサーは吸煙センサー(マイクロフォンまたは圧力センサーなど)として使用されてもよい。
【0074】
温度の増加を検出するために、電気回路16はヒーターフィラメントの電気抵抗を測定するように構成されている。この実施例におけるヒーターフィラメント36は、ステンレス鋼から形成されていて、そのため正の温度抵抗係数を有する。加えて、吸煙により作動するこうしたシステムにおいて、高電流パルスを使用する短時間のバーストで熱が発生されるため、比較的高い比熱容量を有するステンレス鋼フィラメントが理想的である。
【0075】
ヒーターフィラメント36の温度が上昇するにつれて、それらの電気抵抗も上昇する。その他の実施形態において、ヒーターフィラメント36は、ヒーターフィラメントの温度が上昇するとそれらの電気抵抗が減少する負の抵抗係数を有する材料から形成されてもよいことが理解されよう。
【0076】
図4は、ユーザーによる複数回の吸煙中に検出されたヒーターの抵抗の変化を示すプロットである。吸煙のそれぞれは、吸煙時間Δtの間持続する。x軸は時間を表し、y軸はヒーター組立品30で検出された電気抵抗を表す。図4では、電気抵抗の変化が3つの異なる加熱サイクルで検出されていて、それぞれが、1)ヒーターフィラメント36がエアロゾル形成基体で浸されている、例えば正常動作下の加熱サイクル500中、2)エアロゾル形成基体の不十分な供給がヒーターフィラメント36に提供されている、例えば液体基体がヒーターフィラメント36に完全に補充されていない加熱サイクル502中、および3)ヒーターフィラメント36のエアロゾル形成基体が枯渇している加熱サイクル504中のユーザー吸煙に対応する。電気回路は、加熱サイクル502と加熱サイクル504の両方が有害状態を含むことを判定するように構成されうる。別の方法として、電気回路は、加熱サイクル504のみが有害状態であることを判定するように構成されうる。
【0077】
ヒーター組立品30は、初期抵抗R基準を有する。前記初期抵抗R基準は、ヒーター組立品30の固有特性である。これは、室温でのヒーター組立品30の基準抵抗を示す。初期抵抗R基準は、寄生抵抗RPと室温でのヒーターフィラメントの抵抗R0との組み合わせである。従って、R0はR0= R基準 - RPから決定することができる。より具体的に、寄生抵抗RPは、電気接点32および電気コネクター19ならびにそれらの間の接点からもたらされる抵抗である。R0は、周囲温度でのヒーターフィラメント36の抵抗である。
【0078】
新しいカートリッジ20の初期抵抗R基準は、加熱が適用される前に少なくとも1回測定される。検出システムは、新しいカートリッジ20が挿入された時を判定するために使用される。一部の場合において、R基準は、各カートリッジについて1回のみ測定されうる。R基準は、システムのスイッチをオンにするたびに測定してもよい。この実施形態において、電気回路は、電力がヒーターフィラメント36に供給されなかった所定の時間後に、R基準の更新された測定値を定期的に取るように構成されている。所定の時間はそれぞれ3分間継続するが、ヒーターフィラメント36が冷却されてその動作温度から周囲温度に戻るのに必要な任意の適切な時間を選択しうる。R基準のこうした定期的な更新は、電気回路を再調整して、周囲温度の変化およびヒーターフィラメント36の状態の変化を補正する。
【0079】
ユーザーの吸煙中にヒーター組立品30に電力がかけられるにつれて、ヒーターフィラメント36の温度は周囲温度から上昇する。これは、ヒーターフィラメント36の電気抵抗Rを上昇させる。ただし、寄生抵抗RP は一定にとどまると仮定される。これは、RPが、電気接点32および電気コネクター19などの加熱されない構成要素に起因するためである。加えて、RPの値はすべてのカートリッジで同一であると仮定され、異なるカートリッジに変えることによる影響を受けない。特定のエアロゾル発生装置20の寄生抵抗RP値は、電気回路のメモリに保存される。
【0080】
ヒーターフィラメント36の抵抗は、その温度に直線的に相関する。従って、ヒーター組立品の温度は、因数Kに基づいて抵抗Rを目標抵抗RTに制御することによって調節されうる。ここで、RT = (R0)・K、またはRT =(R基準 - RP)・K。 Kは、予め定義された値であってもよく、電気回路のメモリに保存されてもよい。
【0081】
図4は、周囲温度から加熱されている際の、およびその後ユーザー吸煙中に目標ヒーター温度に維持されている際の、ヒーター組立品30にわたる電気抵抗ΔRの変化を図示する。加熱サイクル500、502、504のそれぞれは、ユーザー吸煙に対応し、Δtの持続時間を有する。図示した例において、各加熱サイクルは、周囲温度の加熱組立品30および加熱組立品の抵抗(R基準)で始まる。ただし、必ずしもそうではない場合があり、その理由はヒーター組立品30が吸煙間で完全に冷却されない場合があるためである。従って、実際の使用における電気抵抗Rは、R基準よりも高いレベルで開始しうる。しかし、加熱サイクルの開始時のヒーター組立品30の温度または対応する電気抵抗Rは有意ではない。これは、ヒーター組立品30がその目標温度に達すると電気回路が有害状態を判定するように構成されているためである。
【0082】
加熱サイクル500中のヒーター組立品30は、液体エアロゾル形成基体で浸されている。これは正常な作業状態を示す。この例において、加熱組立品30の温度は、1.2の因数Kによって調節されるように構成されている。加熱サイクルの開始時に、電気回路はヒーター抵抗Rを測定しながら、電気エネルギーをヒーター組立品30に供給する。この加熱の期間は加熱段階と呼ばれうる。加熱段階中に、電気回路は、測定されたヒーター抵抗RがRT(この場合は1.2R0)に等しくなるまで、ヒーター組立品30に電力を供給し続けうる。
【0083】
T に達すると、電気回路は、低減されたレベルにて、または断続的な方法で電力を供給し続け、目標ヒーター抵抗RTにヒーター抵抗Rを調節しうる。これは一定のヒーター温度をもたらす。この温度維持期間は維持段階と呼ばれうる。こうした維持段階中に、ヒーター抵抗Rは一定の値のままであるように調節される。
【0084】
因数Kは工場出荷時にデフォルト値として設定されてもよい。因数Kは、ヒーターフィラメント36のデフォルト目標温度と相関する。加えて、ユーザーは、例えば機械的ボタンまたはスクロールホイールなどのユーザー入力装置を使用して、因数Kをそのデフォルト値から調節してもよい。これは、ユーザーが自身の好みによって目標ヒーター温度を調節することを可能にする。
【0085】
ヒーター組立品が低減された量の液体基体を受容する場合、加熱段階中にヒーターフィラメント36での温度上昇率(dT/dt)が増加する。その結果、この期間中のヒーターフィラメント36での抵抗の増加率dR/dtも増加する。こうした状況は、例えば液体基体がヒーターフィラメント36で完全に補充できない時に生じうる。これは図4の加熱サイクル502に図示されている。ヒーターフィラメント36は不十分な液体基体供給を有する。加熱サイクル502の加熱段階中に、電気抵抗dR/dtの増加率は、加熱サイクル500中の増加率よりも高い。図4の加熱サイクル504に示される通り、ヒーターフィラメント36の液体基体が完全に枯渇している時に、電気抵抗dR/dtの増加率はさらに上昇する。一部の場合において、液体基体が存在しないため、ヒーター温度が急速に上昇してヒーター組立品30は熱を十分に速く放散することができず、電気抵抗をRTより高く上昇させる。これは加熱サイクル504で見られうる。
【0086】
一実施形態において、電気回路は、電気抵抗dR/dtの増加率が上限閾値を超えたことを検出すると、ヒーター組立品への電力供給を停止するように構成されている。例えば、こうした上限閾値は、カートリッジが空の時にのみ示される電気抵抗の増加率でありうる。さらに、点滅するLED信号などの視覚的警告が、カートリッジ交換を促すためにユーザーに与えられてもよい。
【0087】
ヒーター組立品30への電力供給も、ヒーターフィラメント36でのエアロゾル形成基体の枯渇を判定するために使用されうる。これは、図5に示した加熱サイクル510、512および514によって図示されていて、それぞれが図4の加熱サイクル500、502および504中に供給される電力を示す。供給される電力は、特定の時間間隔内の電力(ΔW)の変化に基づいて決定される。例えば、供給される電力は100ミリ秒ごとに検出される。
【0088】
加熱サイクル510は、ヒーターフィラメント36が液体基体で浸されている吸煙中に供給される電力の変化を示す。電力供給は加熱期間中に徐々に最高レベルまで上昇することが分かる。これはヒーター組立品30が急速に加熱することを可能にする。一部の場合において、電力供給は加熱サイクルの開始時に最も高いレベルで開始されてもよく、これはさらに速い加熱を可能にする。
【0089】
その後、電力供給は減少し、維持段階中に、より低いレベルで安定化する。電気回路は、ヒーター組立品30への最大電力供給を制限するために、所定の電力供給限度516を設定する。電力供給限度516は、過熱を防止するための受動的安全機構を形成する。図示した例において、電力供給限度516は変動可能であり、加熱段階中は維持段階と比較して高い限度を有する。
【0090】
加熱サイクル512は、不十分な液体基体がヒーターフィラメントに供給されている吸煙中の電力供給の変化を示す。加熱サイクル512の加熱段階中の電力供給は、加熱サイクル510に示される通り、ヒーターフィラメント36が液体基体で浸されている時に供給される電力と類似している。ところが、液体基体の流入がヒーターフィラメント36で気化された基体を補充することに失敗すると、ヒーター組立品30をその目標温度に維持するために必要な電力は、ユーザーによる吸煙の終わりに近づくにつれて徐々に減少する。
【0091】
加熱サイクル514は、ヒーターフィラメントで液体基体が枯渇している吸煙中の電力供給の変化を示す。液体基体が欠如しているため、加熱段階中にヒーター組立品30に供給される電力は、加熱サイクル510および512のそれよりも著しく低い。加熱サイクル512と同様に、液体基体がヒーターフィラメント36で枯渇すると、その目標温度を維持するために必要な電力は、ユーザー吸煙の終わりに近づくにつれて急速に減少する。
【0092】
電気回路は、供給される電力の減少に基づいて、維持段階中にヒーターフィラメント36での不十分な液体基体を検出するように構成されている。より具体的に、ヒーター組立品30が目標温度を示す目標抵抗に達すると、電力供給は所定の最小電力閾値(P最小)に達するまで徐々に減少する。その後、電気回路は、加熱サイクル512に示される通り、ヒーターフィラメント36での不十分な液体基体のレベル、または加熱サイクル514に示される通り、カートリッジが空の時を判定する。
【0093】
対照的に、液体基体で浸されているヒーターフィラメントは、その電気抵抗Rを目標抵抗(RT)に維持するために最小電力閾値(P最小)よりも多くの電力を必要とする。それ故に、所定の最小電力閾値(P最小)より下の電力消費は、ヒーターフィラメント36に液体基体がない場合にのみ達成されうる。
【0094】
この実施形態において、電気回路は、電力供給が最小電力閾値(P最小)より下に低下したことを検出する場合に、電力供給を直ちに停止するように構成されている。
【0095】
別の方法として、ヒーターフィラメント36での不十分な液体基体を検出しても、電気回路は電力供給を直ちに停止しない。代わりに、電気回路は、1回以上のさらなる吸煙のために電力供給を継続しうる。例えば、電気回路は、さらなる2回の吸煙のために電力供給を継続しうる。これは、ヒーターフィラメント36での基体の枯渇を確認するために、電気回路が連続的吸煙において電力供給をモニターし続けることを可能にする。
【0096】
別の実施形態において、液体基体の枯渇は、連続的吸煙にわたる最小電力供給の減少をモニターすることによって判定されうる。より具体的に、電気回路は、連続的吸煙のそれぞれで記録された最小電力供給P最小を比較しうる。電気回路は次に、連続的サイクルにわたる最小電力供給(P最小)間の差がオフセット閾値(ΔPオフセット)を超える時に、有害な状態を判定しうる。これは図6に図示されていて、1)正常な動作状態である、ヒーターフィラメントがエアロゾル形成基体で浸されている加熱サイクル520中、2)エアロゾル形成基体の不十分な供給がヒーターフィラメントに提供されている加熱サイクル522中、および3)ヒーターフィラメントでエアロゾル形成基体が枯渇している加熱サイクル524中の、ユーザーによる3回の連続的吸煙に対応する3つの連続的加熱サイクルにわたる電力供給を示す。
【0097】
ヒーターフィラメント36が液体エアロゾル形成基体で浸されている時の正常な動作状態下で、1回の吸煙中の最小電力供給はP最小1である。特定のセッション内の連続的吸煙のすべてが正常な動作下で行われる場合、各加熱サイクル中に記録される最小電力供給P最小は、およそP最小1となる。つまり、正常な動作状態下で、吸煙から吸煙までの記録された最小電力供給P最小は実質的に一貫している。最小電力供給P最小のオフセットは、非常に小さいことが期待される。特に、ヒーターフィラメント36が液体基体で浸されている時に、最小電力供給のオフセットは所定の閾値(ΔPオフセット)を超えない。
【0098】
ところが、カートリッジ中の利用可能な液体エアロゾル形成基体の量は、各連続的吸煙で減少する。カートリッジがほぼ空の時に、液体エアロゾル形成基体はヒーターフィラメント36で枯渇し始める。この場合において、吸煙中に記録される最小電力供給(P最小)は、各連続的吸煙で減少する。例えば、P最小2は、第二の加熱サイクル522中に記録される最小電力供給を表し、これは先行する加熱サイクル中に記録されるP最小1よりも低い。この場合において、 P最小2とP最小1の間の差は、所定のΔPオフセットを超え、そのためP最小2 <(P最小1 - ΔPオフセット)となる。従って、電気回路は、ヒーター組立品での液体基体の供給が不十分であると判定する。結果として、電気回路はヒーターフィラメント36への電力供給を直ちに停止し、空のカートリッジを交換するようにユーザーに示す。
【0099】
別の方法として、電気回路は、少なくとも一つ以上の加熱サイクルの間、最小電力供給をモニターし続けてもよい。この場合において、第二の加熱サイクル522に続く第三の加熱サイクル524中にP最小3が記録される。この場合において、 P最小3とP最小2の間の差は、所定のΔPオフセットを再び超え、そのためP最小3 <(P最小2 - ΔPオフセット)となる。最小電力供給(P最小)は連続的サイクルにおいて減少し続けるため、電気回路は液体基体がヒーターフィラメント36で枯渇していると判定する。結果として、電気回路はヒーター組立品30への電力供給を停止し、空のカートリッジを交換するようにユーザーに示す。
【0100】
別の方法として、電気回路は、記録された最小電力供給P最小を、第一の加熱サイクル520中に記録されたもの、すなわちP最小1と比較するように構成されうる。この場合において、電気回路はP最小3をP最小1と比較するように構成されている。P最小3とP最小1の間の差が所定のΔPオフセット閾値を超え、そのためP最小3 <(P最小1 - ΔPオフセット)である場合、電気回路は、液体基体がヒーターフィラメント36で枯渇していると判定する。これは、比較が常に、新しいカートリッジ、または少なくとも液体エアロゾルが枯渇していないカートリッジに対して行われることを確実にする。
【0101】
別の方法として、電気回路は最小電力供給を、先行するn回の加熱サイクルにわたる最小電力供給のローリング平均P最小平均と比較してもよく、ここでnは1より大きい正の整数である。例えば、電気回路は最後のn回の吸煙で記録されたP最小を平均して、前記ローリング平均P最小平均を生成するように構成されている。P最小とP最小平均の間の差が所定のΔPオフセット閾値を超え、そのためP最小 <(P最小平均 - ΔPオフセット)である場合、電気回路は、液体基体がヒーターフィラメント36で枯渇していると判定する。これは、比較が周囲条件の変動による影響を受ける可能性が低いことを確実にする。
【0102】
維持段階中の最小電力供給の減少は、ヒーターフィラメント36での液体基体が不十分であることを示す良い指標である。ただし、電力供給が最小電力閾値より下に減少するまで、電気回路は有害状態を確認することはできない。つまり、前記有害状態に対する応答は迅速に発せられない場合がある。別の実施形態において、電気回路は、時間に関する電力供給の一次導関数(dP/dt)から不十分な液体基体を判定するように構成されている。これは図7に図示されていて、1)正常な動作状態である、ヒーターフィラメント36がエアロゾル形成基体で浸されている加熱サイクル530中、2)エアロゾル形成基体の不十分な供給がヒーターフィラメント36に提供されている加熱サイクル532中、および3)ヒーターフィラメントでエアロゾル形成基体が枯渇している加熱サイクル534中の、ユーザーによる吸煙に対応する3つの加熱サイクル中の電力供給の変化率を示す。
【0103】
正常な動作下で、加熱サイクル530に示される通り、ヒーターフィラメントが液体基体に浸されている時に、dP/dtはヒーター組立品30が加熱するにつれて徐々に減少する。電気抵抗が目標抵抗RTに達して維持されると、dP/dt概ね一定のレベルにとどまる。これは、基体気化の量が目標温度で一定に維持されるためである。
【0104】
しかしながら、加熱サイクル532に示される通り、液体基体の供給が不十分である場合、電気抵抗を目標抵抗RTに維持するためにdP/dtは減少する。電気回路は、dP/dtが所定の最小変化率閾値(dP/dt最小)より下に減少する時に、有害状態を判定するように構成されている。例えば、ヒーターフィラメント36での液体基体供給の突然の喪失は、電力供給を急速に減少させることになる。これはdP/dtの減少をもたらす。深刻な場合、dP/dtは所定の最小変化率閾値(dP/dt最小)より下に減少する。
【0105】
最悪の場合、加熱サイクル524に示される通り、カートリッジの液体基体が完全に枯渇すると、dP/dtはより急速に減少するので、dP/dt最小に達する時間がより短い。ヒーターフィラメント36がより乾燥しているほど、有害状態がより迅速に検出され、より素早く電力供給を停止または減少させることができる。
【0106】
様々な実施形態に記載の通りの方法はそれぞれ、有害状態を判定するために適用されうる。別の方法として、有害状態の前記判定は、記載の複数の方法の組み合わせに基づいてもよい。エアロゾル発生システムは、異なるモードで有害状態を判定する異なる方法を使用するように構成されうる。記載の方法はまた、内部システム診断ツールで使用されてもよい。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7