(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】歯ブラシハンドル、歯ブラシ及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
A46B5/00 B
(21)【出願番号】P 2020569100
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2019065639
(87)【国際公開番号】W WO2019238906
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-02
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516039918
【氏名又は名称】テぺ ムニジェンプロダクター アーベー
【氏名又は名称原語表記】TePe Munhygienprodukter AB
【住所又は居所原語表記】Bronsaldersgatan 5, 213 76 Malmo, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデル、ディンギジアン
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241445(JP,A)
【文献】特開2011-111494(JP,A)
【文献】特開2002-051835(JP,A)
【文献】特開2008-163120(JP,A)
【文献】特開2001-309818(JP,A)
【文献】米国特許第05458400(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM規格D6866に準拠して測定された場合に少なくとも
80重量%のバイオベースの含有量を有するペレット化されたポリオレフィンベースのポリマー材料を加熱するステップ(120)と、
前記加熱されたポリマー材料を成形キャビティ(30)内で射出成形することにより歯ブラシハンドル(10)を形成するステップ(130)であって、前記成形キャビティ(30)は、グリップ部(11、31)と剛毛支持部(12、32)とを備えた歯ブラシハンドル(10)の形状を有するステップと、
を備えた歯ブラシハンドル(10)を製造する方法において、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1500MPaの曲げ弾性率を有し、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも40J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びASTM規格D256に準拠して測定された場合に少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する、方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1550MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、5重量%未満、好適には2重量%未満の曲げ弾性率増強充填材料を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は
、少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ポリエチレンベースのポリマー材料である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、条件190/2.16下においてASTM規格D1238に準拠して測定された場合に5g/10分未満、好適には2g/10分未満のメルトフローレートを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも60J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、好適には、前記ポリオレフィンベースのポリマー材料を前記成形キャビティ内で射出成形する前に、前記ポリオレフィンベースのポリマー材料と着色マスターバッチとを混合するステップ(110)を更に備え、
前記マスターバッチは、好適には、ペレット化された着色樹脂である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチと前記ポリマー材料との混合物において、0.2乃至8重量%、好適には0.2乃至4重量%の量で提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記剛毛支持部(12)は、一群(20)の剛毛(21)を受容するようにそれぞれ構成された複数の凹部(15)を有し、
前記凹部(15)は、好適には、前記剛毛支持部(12)を形成する前記成形キャビティ(30)の部分(32)であって、前記成形キャビティ(30)内に延びる複数の凸部(35)を有する部分(32)により形成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法による歯ブラシハンドル(10)を提供するステップを備えた、歯ブラシを製造する方法であって、
前記方法は、複数の剛毛(21)を複数群(20)において提供し、一群(20)の前記剛毛(21)をアンカー要素(22)の周囲に折り畳むことにより各群(20)の剛毛(21)を前記剛毛支持部(12)に取り付け、前記アンカー要素(22)及び前記一群(20)の折り畳まれた剛毛(21)を、前記剛毛支持部(12)の複数の凹部(15)のうちの1つの凹部(15)に挿入することにより、剛毛(21)を前記剛毛支持部(12)に取り付けるステップを更に備える、方法。
【請求項12】
前記アンカー要素(22)は、当該アンカー要素(22)が挿入される前記凹部(15)の深さ方向(d)に沿って見た場合に、凹凸を設けられた少なくとも1つの面(22a、22b)を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
グリップ部(11)と、剛毛支持部(12)と、を備える歯ブラシハンドル(10)であって、
前記グリップ部(11)及び前記剛毛支持部(12)は、ASTM規格D6866に準拠して測定した場合に、少なくと
も80重量
%のバイオベースの含有量を有するポリオレフィンベースのポリマー材料から一体形成され、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1500MPaの曲げ弾性率を有し、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも40J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びASTM規格D256に準拠して測定された場合に少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する、歯ブラシハンドル(10)。
【請求項14】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1550MPaの曲げ弾性率を有する、請求項13に記載の歯ブラシハンドル(10)。
【請求項15】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、5重量%未満、好適には2重量%未満の曲げ弾性率増強充填材料を含む、請求項13又は14に記載の歯ブラシハンドル(10)。
【請求項16】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、条件190/2.16下においてASTM規格D1238に準拠して測定された場合に5g/10分未満、好適には2g/10分未満のメルトフローレートを有する、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル(10)。
【請求項17】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも60J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル(10)。
【請求項18】
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ポリエチレンベースのポリマー材料である、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル(10)。
【請求項19】
請求項13乃至18のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル(10)と、
複数の剛毛(21)を複数群(20)において提供することにより前記剛毛支持部(12)に取り付けられた複数の剛毛(21)と、
を備えた歯ブラシ(50)であって、
剛毛(21)の各群(20)は、前記剛毛支持部(12)に、アンカー要素(22)の周囲で折り畳まれた一群(20)の剛毛(21)により取り付けられ、前記アンカー要素(22)及び前記一群(20)の折り畳まれた剛毛(21)は、前記剛毛支持部(12)の複数の凹部(15)のうちの1つの凹部(15)に挿入されており、
前記アンカー要素(22)は、好適には、当該アンカー要素(22)が挿入される前記凹部(15)の深さ方向(d)に沿って見た場合に、凹凸を設けられた少なくとも1つの面(22a、22b)を有する、歯ブラシ(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシハンドルを製造する方法に関する。また、本発明は、歯ブラシを製造する方法に関する。また、本発明は、歯ブラシハンドルに関する。また、本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の歯ブラシは、通常、ポリマーを所望の歯ブラシの形状を有する型で射出成形することにより作製されている。歯ブラシは通常使い捨ての製品であるため、種々の環境問題に対処する様々な努力が試みられてきた。検討されることが多い1つの環境問題は、製品のライフサイクル全体で生成される二酸化炭素排出量である。
【0003】
環境問題に対処する1つの試みによると、TIO社は、分割可能な歯ブラシを開発した。そのハンドルは、サトウキビから構成されたいわゆる耐久性のあるバイオポリエチレン材料を使用して作成されている。剛毛支持部、すなわちヘッドは交換可能であり、FSC認定植物からなるいわゆるセルロースアセテート、別名木材から構成されている。この歯ブラシの設計は、DE 20 2015 002 964 U1に開示されている。しかしながら、これは十分な解決策ではない。このような歯ブラシは清潔に保ちにくい。例えば、グリップ部の奥の空洞であって、交換可能なヘッドをグリップ部に接続すべくヘッドの突起が挿入される空洞で、細菌が増殖する危険がある。ブラシを有するヘッドが何度も新しいものに交換される間、グリップ部は長期間保持される部分であることを考慮すれば、これは非常に望ましくない。
【0004】
他社による別の試みとして、歯ブラシハンドルに木や竹等を使用することが挙げられる。しかし、このような設計の製造は煩雑である。上述のDE 20 2015 002 964 U1に開示された歯ブラシの製造も煩雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、環境問題に対処するとともに、最終製品として使いやすく製造しやすい歯ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、歯ブラシハンドルを製造する方法であって、
少なくとも60重量%のバイオベースの含有量を有するペレット化されたポリオレフィンベースのポリマー材料を加熱するステップと、
前記加熱されたポリマー材料を成形キャビティ内で射出成形することにより歯ブラシハンドルを形成するステップであって、前記成形キャビティは、グリップ部と剛毛支持部とを備えた歯ブラシハンドルの形状を有するステップと、
を備えた歯ブラシハンドルを製造する方法において、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1500MPaの曲げ弾性率を有し、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも40J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びASTM規格D256に準拠して測定された場合に少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する、方法により達成される。
【0007】
グリップ部及び剛毛支持部の両者を有する歯ブラシハンドルの形成と組み合わせて少なくとも60重量%のバイオベースの含有量を有するポリオレフィンベースのポリマー材料を使用することにより、環境問題に対処する場合にも、快適で使いやすい歯ブラシを提供する場合にも有利な設計が提供される。グリップ部と剛毛支持部とを一体形成することにより、分割可能な歯ブラシと比較して、グリップ部に必要以上の材料を使用する必要がない。一体形成されていない場合、交換可能な剛毛支持部に対して十分に強い接続が提供されなくてはならないため、必要以上に材料が使用される。本発明の設計において、グリップ部と剛毛支持部とを一体形成することにより、バイオベースのポリオレフィン材料を効率的に使用して、快適で使いやすい歯ブラシを提供することができる。
【0008】
ポリオレフィンベースのポリマー材料は、好適には、少なくとも80重量%、より好適には少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有する。ポリオレフィンベースのポリマー材料は、好適には、ポリエチレンベースのポリマー材料である。少なくとも60重量%、より好適には少なくとも80重量%、最も好適には少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有するポリオレフィンベースのポリマー材料(好適にはポリエチレンベースのポリマー材料)は、本開示において、バイオベースのポリオレフィン材料、又はバイオベースのポリエチレン材料と頻繁に略して言及されることに留意されたい。剛毛支持部は、ヘッドとも称され得る。
【0009】
バイオベースの含有量は、ASTM規格D6866-「放射性炭素分析を利用して固体、液体、及び気体のサンプルのバイオベースの含有量を測定するための標準試験方法」に準拠して測定され得る。
【0010】
ポリエチレン及び他のポリオレフィンは、様々なグレードにおいて多様に提供されている。本方法は射出成形に関するが、ポリオレフィングレード、より具体的には射出成形での使用が推奨されるポリエチレングレードでは、歯ブラシの用途に必要な特性が提供されないことが、試験を通じて分かっている。1つのこのような特性は、曲げ弾性率である。曲げ弾性率は、剛毛支持部が剛毛を所定位置に保持するように十分に高くなければならない。試験によれば、約1350の曲げ弾性率を有するグレードでは、保持力が弱すぎることが示された。許容範囲の保持力は、約1500MPaの曲げ弾性率で達成されるため、曲げ弾性率は少なくとも1550MPaであることが好適である。したがって、好適には、ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1500MPa、好適には少なくとも1550MPaの曲げ弾性率を有する。ポリオレフィン材料は、好適には、ポリエチレンベースのポリマー材料であり、より好適には、高密度ポリエチレンである。曲げ弾性率は、ASTM規格D790-「非強化及び強化プラスチック、ならびに電気絶縁材料の曲げ特性の標準試験方法」に準拠して測定され得る。MPaで指定された値は、1%割線に関する。
【0011】
材料の十分な靭性は、材料の衝撃強度により示され得る。衝撃強度が高くなれば、靭性が増大するであろう。衝撃強度は、様々な方法で測定され得る。ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料は、2つの基準、すなわち、a)少なくとも40J/m、好適には少なくとも60J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びb)少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有することが好適である。アイゾット衝撃強度及びノッチ付きアイゾット衝撃強度は、ASTM規格D256-「プラスチックのアイゾット振り子衝撃抵抗を測定するための標準試験方法」に準拠して測定され得る。
【0012】
また、試験によれば、歯ブラシが剛毛を保持するためには、好適には、ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料自体により十分な曲げ弾性率が提供されるべきであることが示された。それ自体で十分な曲げ弾性率を有するポリエチレンベースのポリマー材料は、通常、比較的長いポリマー鎖を有するポリエチレンベースのポリマー材料に関連し、翻ってこれは高い靭性を有するポリエチレンベースのポリマー材料に関連する。試験によれば、低すぎる曲げ弾性率を有するポリエチレンベースのポリマー材料を使用し、所望の曲げ弾性率に到達するようにこのポリオレフィンベースのポリマー材料に弾性率増強充填材料を混合して十分な曲げ弾性率を達成した場合でも、結果として得られた材料は低すぎる靭性しか有さないことが示された。これではもろ過ぎて、剛毛は歯ブラシのヘッドの凹部から簡単に外れてしまう。したがって、好適には、ポリエチレンベースのポリマー材料は、5重量%未満、好適には2重量%未満の曲げ弾性率増強充填材料を含む。曲げ弾性率増強充填材料の例は、チョーク、繊維、硫酸バリウム(BaSO4)、及びタルクである。
【0013】
材料の十分な靭性は、材料のメルトフローレートによっても示され得る。メルトフローレートは、通常、材料中のポリマー鎖の長さが増大するにつれて減少する。したがって、好適には、ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料は、5g/10分未満、好適には2g/10分未満のメルトフローレートを有する。メルトフローレートは、ASTM規格D1238-「押出可塑度計による熱可塑性プラスチックのメルトフローレートの標準試験方法」に準拠して測定され得る。g/10分で指定された値は、別途規定のない限り、条件190/2.16に関連する。
【0014】
本方法は、好適には、ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料を成形キャビティ内で射出成形する前に、ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料と着色マスターバッチとを混合するステップを更に備え、前記マスターバッチは、好適には、ペレット化された着色樹脂である。これは、歯ブラシハンドルを着色する便利な方法である。ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料の異なるフラクションが、異なるマスターバッチ、例えば異なる色を有する異なるマスターバッチと混合され得ることに留意されたい。これは、例えば2色の歯ブラシハンドルの場合に利用され得る。例えば、それは、第1の色を有する第1混合物から成形された本体と、本体に成形された例えばグリップ部等の第2部分であって、第2の色を有する第2混合物から成形された第2部分と、を有し得る。着色の他に、その他の特性の違いも、異なるマスターバッチを介して提供され得る。このような特性は、例えば、グリップ部となる混合物に使用されるマスターバッチに摩擦増強充填材を設けることである。
【0015】
マスターバッチは、好適には、マスターバッチとポリマー材料との混合物において、0.2乃至8重量%、好適には0.2乃至4重量%の量で提供される。これは、例えば十分な着色を提供可能であるが、例えば歯ブラシハンドルの機械的特性に悪影響を及ぼす危険のある過剰な量では提供されないマスターバッチの適切な量である。
【0016】
剛毛支持部は、一群の剛毛を受容するようにそれぞれ構成された複数の凹部を有し得る。凹部は、好適には、剛毛支持部を形成する成形キャビティの部分であって、成形キャビティ内に延びる複数の凸部を有する部分により形成される。これは、剛毛用の取り付けポイントを提供する便利な方法である。
【0017】
上に開示された歯ブラシハンドルは、歯ブラシを製造する方法において使用され得る。前記方法は、複数の剛毛を複数群において提供するステップと、複数の剛毛を複数群において提供し、一群の前記剛毛をアンカー要素の周囲に折り畳むことにより各群の剛毛を前記剛毛支持部に取り付け、前記アンカー要素及び前記一群の折り畳まれた剛毛を、前記剛毛支持部の複数の凹部のうちの1つの凹部に挿入することにより、剛毛を前記剛毛支持部に取り付けるステップと、を備える。アンカー要素を使用することにより、剛毛が剛毛支持部から引き抜かれることに耐え得る引抜力が増加し得る。アンカー要素の使用は、曲げ弾性率が下限に近い場合に特に有用である。
【0018】
アンカー要素は、当該アンカー要素が挿入される凹部の深さ方向に沿って見た場合に、凹凸を設けられた少なくとも1つの面を有し得る。この面は、好適には、深さ方向に直交する主方向に面する主面である。凹凸は、凹部の壁部及び/又は剛毛とのより強い相互作用を提供し得る。このため、より強力な剛毛保持性能が提供される。好適な実施形態において、対向する両主面に、深さ方向に沿って見た場合に凹凸が設けられている。
【0019】
上述の目的は、グリップ部と、剛毛支持部と、を備える歯ブラシハンドルであって、
前記グリップ部及び前記剛毛支持部は、ASTM規格D6866に準拠して測定した場合に少なくとも60重量%、より好適には80重量%、最も好適には少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有するポリオレフィンベースのポリマー材料から一体形成され、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、少なくとも1500MPaの曲げ弾性率を有し、
前記ポリオレフィンベースのポリマー材料は、ASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも40J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びASTM規格D256に準拠して測定された少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する、歯ブラシハンドルにより達成される。
【0020】
グリップ部及び剛毛支持部の両者を有する歯ブラシハンドルの形成と組み合わせて少なくとも60重量%、より好適には80重量%、最も好適には少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有するポリオレフィンベースのポリマー材料を使用することにより、環境問題に対処する場合にも、快適で使いやすい歯ブラシを提供する場合にも有利な設計が提供される。グリップ部と剛毛支持部と一体形成することにより、分割可能な歯ブラシと比較して、グリップ部に必要以上の材料を使用する必要がない。一体形成されていない場合、交換可能な剛毛支持部に対して十分に強い接続が提供されなくてはならないため、必要以上に材料が使用される。本発明の設計において、グリップ部と剛毛支持部とを一体形成することにより、バイオベースのポリオレフィン材料、特にバイオベースのポリエチレン材料を効率的に使用して、快適で使いやすい歯ブラシを提供することができる。
【0021】
ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料は、少なくとも1550MPaの曲げ弾性率を有する。
【0022】
ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料は、2つの基準、すなわち、a)少なくとも40J/m、好適には少なくとも60J/mのアイゾット衝撃強度を有する基準、及びb)ASTM規格D256に準拠して測定された場合に少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する基準のうち、少なくとも一方を満たす衝撃強度を有する。これにより、材料の十分な靭性が確保される。
【0023】
好適な実施形態が、従属請求項及び詳細な説明に記載される。それぞれの特徴に関連する利点及び考察は、製造方法に関して上述した。また、これらの利点及び考察は、以下で説明する歯ブラシハンドル及び歯ブラシの文脈においてそれぞれの特徴にも適用可能である。
【0024】
ポリオレフィンベースのポリマー材料は、好適には、ポリエチレンベースのポリマー材料である
【0025】
ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、5重量%未満、好適には2重量%未満の曲げ弾性率増強充填材料を含む。
【0026】
ポリオレフィンベースのポリマー材料、又は特にポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、5g/10分未満、好適には2g/10分未満のメルトフローレートを有する。
【0027】
上述の目的は、歯ブラシハンドル-これは、上記の開示において一般的な用語で開示され、詳細な説明において開示される特徴により更に定義され得る-と、複数の剛毛を複数群において提供することにより剛毛支持部に取り付けられた複数の剛毛と、を備えた歯ブラシであって、剛毛の各群は、前記剛毛支持部に、アンカー要素の周囲で折り畳まれた一群の剛毛により取り付けられ、前記アンカー要素及び前記一群の折り畳まれた剛毛は、前記剛毛支持部の複数の凹部のうちの1つの凹部に挿入された歯ブラシにより達成される。
【0028】
アンカー要素は、好適には、当該アンカー要素が挿入される凹部の深さ方向に沿って見た場合に、凹凸を設けられた少なくとも1つの面を有する。この面は、好適には、深さ方向に直交する主方向に面する主面である。凹凸は、凹部の壁部及び/又は剛毛とのより強い相互作用を提供し得る。このため、より強力な剛毛保持性能が提供される。好適な実施形態において、対向する両主面に、深さ方向に沿って見た場合に凹凸が設けられている。
【0029】
別途規定のない限り、特性とは、ASTM規格D4703-「熱可塑性材料を試験片、プラーク、又はシートに圧縮成形するための標準的技法」に準拠して作成された圧縮成形シートから準備された試験片のプラーク特性を指す。
【0030】
参照した規格に代えて他の試験手順又は規格が採用され得ることに留意されたい。但し、このような他の試験手順又は規格に準拠して実施された測定が、明示された規格に準拠して実施された測定と有効に比較され得る場合に限る。
【0031】
本発明の現在好適とされる実施形態を示す添付の概略図を参照して、本発明を例示的により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】歯ブラシハンドルの剛毛支持部、すなわちヘッドの拡大図であって、一群の剛毛を受容するようにそれぞれ構成された複数の凹部を示す図。
【
図3】
図2に対応する図であって、一群の剛毛、及び凹部に挿入される関連するアンカー要素も示す図。
【
図4】
図3に対応する図であって、剛毛がアンカー要素の周囲で折り畳まれていることを示す図。
【
図5】
図3及び4に対応する図であって、剛毛及びアンカー要素が凹部に挿入された状態を示す図。
【
図7b】アンカー要素の別の実施形態を開示する図。
【
図7c】アンカー要素の別の実施形態を開示する図。
【
図7d】アンカー要素の別の実施形態を開示する図。
【
図9】歯ブラシを製造する方法を概略的に開示する図。
【
図10】
図1の歯ブラシハンドルの射出成形に使用され得る型を概略的に開示する図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図9を参照すると、本開示は、歯ブラシハンドル10を製造する方法に概して関すると言うことができる。歯ブラシハンドル10は、グリップ部11と、剛毛支持部12と、を備えている。剛毛支持部12は、ヘッドとも称され得る。歯ブラシハンドル10は、好適には、グリップ部11と剛毛支持部12とを相互接続するネック部13も備えている。
【0034】
図1の歯ブラシハンドル10は、
図9を参照すると、要するに、少なくとも60重量%、より好適には少なくとも80重量%、最も好適には少なくとも90重量%のバイオベース含有量を有するペレット化されたポリオレフィンベースのポリマー材料、好適には、ペレット化されたポリエチレンベースのポリマー材料を加熱するステップ120、及び加熱されたポリマー材料を成形キャビティで射出成形して歯ブラシハンドル10を形成するステップ130により製造される。成形キャビティは、グリップ部31、11、及び剛毛支持部32、12を備えた歯ブラシハンドル10の形状を有している。
【0035】
成形キャビティ30を、
図10に概略的に示す。成形キャビティ30は、2つの凹部30a、30bから形成されている。そのそれぞれは、各成形半体40a、40b内にある。成形半体40a、40bが一体にクランプされて型が閉鎖されると、2つの凹部30a、30bは、一体としてキャビティ30を形成する。ポリマー材料は、例えば、成形キャビティ30の入口ポート36に注入される。入口ポート36は、
図10に示すものとは別の位置や設計を有し得る。
【0036】
図1及び
図2に示すように、剛毛支持部12は、複数の凹部15を有している。各凹部15は、(
図3乃至
図6に示すような)一群20の剛毛21を受容するように構成されている。凹部15は、好適には、剛毛支持部12を形成することが意図された成形キャビティ30の部分32であって、(
図10に示すように)成形キャビティ30内に延びる複数の凸部35を有する部分32により形成される。
図10に概略的に開示された成形半体40a、40bは、単一の成形キャビティ30を形成していることに留意されたい。しかしながら、実際には、成形半体40a、40bは、半体同士が一体にクランプされて型が閉鎖されたときに複数の成形キャビティ30を形成することが意図された複数の凹部30a、30bを有し得る。
【0037】
上述のように、ポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、少なくとも1500MPa、好適には少なくとも1550MPaの曲げ弾性率を有している。更に、ポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、5重量%未満、好適には2重量%未満の曲げ弾性率増強充填材料を含んでいる。ポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、5g/10分未満、好適には2g/10分未満のメルトフローレートを有している。ポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、少なくとも40J/m、好適には少なくとも60J/mのアイゾット衝撃強度を有している。ポリエチレン材料は、好適には、少なくとも20J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を有している。
【0038】
好適な実施形態において、歯ブラシハンドルは、以下の特性及び特徴を有するポリエチレンベースのポリマー材料から全体として形成される。
高密度ポリエチレンホモポリマー、
約96%のバイオベースの含有量、
約1600MPaの曲げ弾性率(1%割線)、
約0.70g/10分のメルトフローレート(190/2.16)、
約50g/10分のメルトフローレート(190/2.16)、
約89J/mのアイゾット衝撃強度。
【0039】
このような高密度ポリエチレンホモポリマーは、特にブロー成形プロセス用に設計され、通常、(その低いメルトフローレート(約0.70g/10分のメルトフローレート190/2.16)を理由として)射出成形プロセスには適していないと考えられている。射出成形用に開発された対応する高密度ポリエチレンは、約20g/10分のメルトフローレート(190/2.16)を通常有する。しかしながら、このようなポリエチレンは、必要とされる曲げ弾性を有していない。
【0040】
剛毛又はタフト(房)を歯ブラシハンドルに取り付ける種々の材料や設計に関する試験が実施された。
【0041】
以下の表に、試験された材料とそれらの特性を示す。
【表1】
【0042】
CAは、セルロース・アセテートの略である。CAPは、セルロース・アセテート・プロピオネートの略である。PEは、ポリエチレンの略である。未充填バイオベースポリエチレンの3つの異なるグレード(A、B、C)が試験された。充填バイオベースポリエチレンの3つの異なるグレード(D、E、F)が試験された。
【0043】
以下の表に示す材料を、歯ブラシハンドルの異なる設計において試験した。これらの試験の結果及び総合成績評価を以下の表に示す。
【表2】
【0044】
上記のように、PE(C)と表示された材料は、高い再生可能な含有量を有するとともに必要な機械的特性を有することにより、環境に優しいという基準を満たすことが分かった。
【0045】
上に開示したような好適な高密度ポリエチレンホモポリマー等のポリエチレンベースのポリマー材料は、好適な実施形態によれば、着色マスターバッチと混合される。マスターバッチは、好適には、マスターバッチとポリマー材料との混合物において、0.2乃至8重量%、好適には0.2乃至4重量%で提供される。好適な実施形態において、マスターバッチは、ポリエチレンベースのポリマー材料の約1重量%の量で添加される。ポリエチレンベースのポリマー材料と着色マスターバッチとの混合は、ポリエチレンベースのポリマー材料が成形キャビティで射出成形される前に実施される。混合は、ペレット化されたポリエチレンベースのポリマー材料の加熱前、加熱中、又は加熱後に生じ得る。マスターバッチは、例えばペレット化された着色樹脂であり得る。このような場合、材料の加熱前に、ペレット化されたマスターバッチとペレット化されたポリエチレンベースのポリマー材料とを混合することが有利であろう。
【0046】
好適な実施形態において、成形キャビティで射出成形される混合物は、約0%の曲げ弾性率増強充填材料を有している。
【0047】
図9及び
図3乃至
図6を参照すると、
図1の歯ブラシハンドル10は、剛毛21を剛毛支持部12に取り付けるステップ(
図9のステップ140)により、(
図8に示すような)歯ブラシ50に変換され得る。
図3乃至
図6に示すように、これは、複数の剛毛21を複数群20において提供し、剛毛21の各群20を剛毛支持部12に取り付けることにより達成され得る。一群20の剛毛21は、(
図4に示すように)アンカー要素22の周囲で折り畳まれ、アンカー要素22及び折り畳まれた一群20の剛毛21は、剛毛支持部12の複数の凹部15のうちの1つの凹部15に挿入される。
図3乃至
図6に示す動作は、基本的に、一群20の剛毛21を提供し、次いで、(
図4及び
図6に示すように)一群20の剛毛21がアンカー要素22と凹部15の底部や壁部との間に挟まれた状態で、アンカー要素22を凹部15に押し込むことによりなされる。
【0048】
アンカー要素22は、アンカー要素22及び一群20の剛毛21の挿入に関連して短い断片に切断される長いストリップとして提供され得る。これは
図3に示され、ここでストリップ23の延長部を破線で示し、切断部を矢印24で示している。
【0049】
アンカー要素22は、種々の断面形状で設計され得る。
図7a乃至
図7dに、このような種々の断面形状を示す。
図7aにおいて、アンカー要素22は、2つの平坦な主面22a、22bを持つ断面形状を有している。
図7bにおいて、アンカー要素22は、一方の主面22bが平坦であり、他方の主面22aが凹凸、すなわち溝及び隆起を持つ断面形状を有している。凹凸、すなわち溝及び隆起は、アンカー要素22の中心平面Pの法線方向Nにおいて異なる範囲を有している。中心平面Pは、アンカー要素22の(そして通常ストリップ23の)長手方向に沿って、且つ深さ方向dに沿って延びていると言える。
図7cにおいて、アンカー要素22は、両主面22a、22bが凹凸、すなわち溝及び隆起を持つ断面形状を有している。凹凸、すなわち溝及び隆起は、アンカー要素22の中心平面Pの法線方向Nにおいて異なる範囲を有している。
図7dにいて、アンカー要素22は、凹凸のある材料片から形成される断面形状を有している。深さ方向dに従う場合、材料の位置は法線方向Nに沿って変化する。したがって、(法線方向Nに沿った)厚さtは、深さ方向dに沿って同一であり得るが、両主面に凹凸が設けられている。
【0050】
アンカー要素22は、好適には、アンカー要素22が挿入される凹部15の深さ方向dに沿って見た場合に、凹凸が設けられた少なくとも1つの面を有している。好適には、アンカー要素22は、アンカー要素22が挿入される凹部15の深さ方向dに沿って見た場合に、凹凸が設けられた2つの主面を有している。
【0051】
上に開示された製造プロセスの結果、グリップ部11と、剛毛支持部12と、を備えた歯ブラシハンドル10が得られる。グリップ部11及び剛毛支持部12は、少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンベースのポリマー材料から一体形成されている。
図1に開示された実施形態において、グリップ部11と剛毛支持部12との間にネック部13が存在する。グリップ部11と、ネック部13と、剛毛支持部12とは、少なくとも90重量%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンベースのポリマー材料から一体形成されている。ポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、少なくとも1500MPa、好適には少なくとも1550MPaの曲げ弾性率を有している。歯ブラシハンドル10の好適な実施形態において、ポリエチレンベースのポリマー材料は、約1600MPaの曲げ弾性率(1%割線)を有している。ポリエチレンベースのポリマー材料は、5重量%未満、好適には2重量%未満の曲げ弾性率増強充填材料を含んでいる。歯ブラシハンドル10の好適な実施形態において、ポリエチレンベースのポリマー材料は、約0%の曲げ弾性率増強充填材料を含んでいる。ポリエチレンベースのポリマー材料は、好適には、5g/10分未満、好適には2g/10分未満のメルトフローレートを有している。歯ブラシハンドル10の好適な実施形態において、ポリエチレンベースのポリマー材料は、約0.7g/10分のメルトフローレートを有している。上述のように、このような(
図1に示す)歯ブラシハンドル10は、剛毛21を剛毛支持部12に取り付けるステップにより、(
図8に示すような)歯ブラシ50に変換される。
図8に示すように、一群20の剛毛21が、剛毛支持部12の各凹部15に挿入される。剛毛21の各群20は、好適にはアンカー要素22の周囲で折り畳まれ、アンカー要素22とともに各凹部15に挿入される。
【0052】
本明細書に記載の実施形態について多数の変形例が存在するが、それらは添付の特許請求の範囲によて定義される本発明の範囲にあると考えられる。
【0053】
歯ブラシハンドルは、例えば
図8に破線で全体が示されるグリップ改善部51bを有するように設計され得る。
【0054】
剛毛支持部12は、例えば好適な実施形態に示した均一な設計でなく、異なる種類、サイズ、向き等の剛毛21を備え得る。