(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ロボット作業ツール及びロボット作業ツールの作動方法
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
A01D34/64 M
A01D34/64 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021184968
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-04-18
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】511234781
【氏名又は名称】フスクバルナ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】パール フォシュマン
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-142515(JP,A)
【文献】特開2005-176677(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110933986(CN,A)
【文献】特開2017-176116(JP,A)
【文献】国際公開第2016/150503(WO,A1)
【文献】特開2016-195545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0170186(US,A1)
【文献】特表2020-528275(JP,A)
【文献】実開昭58-021217(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00-43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能かつ高さ調節可能な切断ディスク(6)を備えるロボット作業ツール(1)であって
、
スリット(12)が設けられた刃部(7a,7b)が、前記切断ディスク(6)の周縁部において前記スリット(12)を通るように設けられたピン(10)に回転自在に、前記ピン(10)に一定のクリアランスを空けて配置され
、
前記ロボット作業ツール(1)が、以下を実行するように構成される、ロボット作業ツール(1):
-切断ディスク(6)の最終的な所望の切断高さを得て;
-
作業領域の全体の植生の高さが前記最終的な所望の切断高さに到達するまで、以下のステップS1~S5を繰り返し行う。
S1:少なくとも前記最終的な所望の切断高さ
と、検出手段から受け取った作業領域における植生の高さの情報に基づいて、
前記最終的な所望の切断高さよりも高い第1の切断高さを決定し;
S2:前記切断ディスク(6)を前記第1の切断高さよりも高い持ち上げ位置まで上昇させ;
S3:前記切断ディスク(6)が前記持ち上げ位置にあるときに、前記切断ディスク(6)の回転を開始し
;
S4:その回転切断の最高速度を得た後に、前記切断ディスク(6)を決定された前記第1の切断高さまで下げ
て前記作業領域の全体にわたって切断作業を行い;及び
S5:前記切断作業後に、前記作業領域の全体の植生の高さが前記最終的な所望の切断高さに達したか否かを判定する。
【請求項2】
前記ロボット作業ツール(1)は、その回転速度を下げる前に、前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置まで上昇させるように構成されている、請求項1に記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項3】
前記ロボット作業ツール(1)は、切断セッションが完了した後に、前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置まで上昇させるように構成される、請求項1又は2に記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項4】
前記ロボット作業ツール(1)は、切断セッションが開始される前に、前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置まで上昇させるように構成される、請求項1~3のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項5】
前記ロボット作業ツール(1)は、前記切断ディスク(6)を自動的に昇降させるように配置された昇降手段E(18)を備える、請求項1~4のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項6】
前記ロボット作業ツール(1)は、前記切断ディスク(6)が下降する前に表示計器を作動させるように構成される、請求項1~5のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項7】
前記表示計器の起動は、警報信号を鳴らすことを含む、請求項6に記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項8】
前記持ち上げ位置は、前記決定された第1の切断高さより5~10mm高い、請求項1~7のうちのいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項9】
前記切断ディスク(6)が回転可能なナイフ(7)を備える、請求項1~8のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項10】
前記ロボット作業ツール(1)は、通常モード及び低位置モードを有するように構成され、前記通常モードでは、前記切断ディスク(6)の加速および減速中に前記切断ディスク(6)が前記持ち上げ位置から上昇せず、前記低位置モードのみで前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置まで上昇させ、前記切断ディスク(6)の回転を開始し、前記第1の切断高さよりも低い更なる切断高さまで前記切断ディスク(6)を下降させるように構成される、請求項1~9のうちのいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
【請求項11】
前記ロボット作業ツール(1)は、以下を実行するように構成される、請求項1~10のうちいずれかに記載のロボット作業ツール:
-少なくとも前記最終的な所望の切断高さに基づいて、前記第1の切断高さよりも低い1つまたは複数の更なる切断高さを決定し;
-前記更なる切断高さより5~10mm高く、前記持ち上げ位置を決定し;
-前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置へ持ち上げ;
-前記切断ディスク(6)の回転を開始し;及び
-前記切断ディスク(6)を前記決定された更なる切断高さまで下げる。
【請求項12】
次のステップを含む、請求項1~11のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)を実行するための方法:
-前記最終的な所望の切断高さを取得すること;
-少なくとも前記最終的な所望の切断高さ
と、検出手段から受け取った作業領域における植生の高さの情報に基づいて、
前記最終的な所望の切断高さよりも高い第1の切断高さを決定すること;
-
前記切断ディスク(6)を前記第1の切断高さよりも高い位置まで上げること;
-前記切断ディスク(6)の回転を開始すること;及び
-前記切断ディスク(6)を前記決定された
前記第1の切断高さまで下げること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能かつ高さ調節可能な、切断ディスク(cutting disk)を備えるロボット作業ツールに関する。また、本発明は、ロボット作業ツール(robotic work tool)を作動するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ロボット作業ツールの1つの例を開示しており、刃部(tool)は、可動であり、特に、旋回可能な方法でツールホルダによって支持されるように構成されており、切断ディスク上のピンは、刃部内の丸穴または長穴又はスリットに配置されてもよいことが開示されている。
【0003】
ピンは、切断ディスクの中心からある程度離して配置されているので、刃部は、ピン上に、幾つかの方向にある程度の遊びをもって移動可能に配置され、刃部は、切断ディスクの外縁から部分的に外側に延びるように配置されているので、刃部は、一端で垂れ下がることがある。このような場合、切断ディスクが静止位置にあるときには、工具の垂れ下がった端部が切断ディスクの面から数ミリ、時には最大10ミリまで垂れ下がることがある。本明細書では、刃部は、主として、切断ディスクの外側端部が切断ディスクの面から垂れ下がった状態で、切断ディスクに対してある角度に置かれていてもよい。
【0004】
刃部、すなわちナイフは、切断ディスクの面よりも下に伸びる傾向があるため、作業が不均一になる可能性が高く、少なくとも部分的には、ユーザが意図して設定した高さよりも低い高さに芝生等を切断するおそれがある。時折、刃部が地面に到達し、芝を損傷する危険性がある。この問題は、切断サイクルの開始と終了時に悪化する場合がある。これらは、意図された切断高さが非常に低い場合に特に顕著になることがある。
【0005】
刃部を切断ディスクに強固に固定することで課題を解決しようとする試みがなされている。残念ながら、切断できない障害物に曲げられる性質など、刃部の機能の一部は、それによって失われる可能性がある。また、刃部を堅固に固定するために、安全規則に準拠するべく切断ディスクを入手する機会がなければ、部品の異なる設計が求められる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決する、または少なくとも、その一部またはすべてを軽減することである。この目的のために、切断ディスクの最終的な所望の切断高さを得るように構成されたロボット作業ツールが提供され、少なくとも最終的な所望の切断高さに基づいて、第1の切断高さを決定し、切断ディスクを第1の切断高さよりも高い持ち上げ位置まで上昇させ、切断ディスクの回転を開始し、切断ディスクを決定された第1の切断高さまで下降させる。
【0008】
したがって、切断ディスクに取り付けられている刃部、つまりナイフの外端は、切断ディスクが十分な速度で回転すると、切断ディスクの面の高さまで上昇する可能性がある。各刃部に作用する求心力は、その二乗角速度に比例し、各刃部が円形経路に沿って移動し続けることになる。遠心作用によって、各刃部の質量中心は、角速度が増加するにつれて、切断ディスクの中心からより遠くの円形経路をたどる。各刃部の質量中心からディスクの中心までの距離は、刃部の質量中心が切断ディスクの面の高さまで上昇したときに最大になる。この状態では、刃部の自由端は切断ディスクから垂れ下がらない。
【0009】
一実施形態では、ロボット作業ツールは、切断ディスクがその持ち上げ位置にあるときに回転を開始するように構成される。
【0010】
この場合、刃部の外側、最初は垂下した端部が、植生、例えば下の草に接触することなく、垂下した位置からその上昇した位置に移動し、地面を損傷したり、不均一な切断を行うリスクをなくすことができる。
【0011】
更なる実施形態では、ロボット作業ツールは、回転切断の最高速度を得た後に、切断ディスクを第1の切断高さまで下げるように構成される。
【0012】
従って、旋回可能な刃部の利点を保ちながら、切断ディスク上の刃部は、切断ディスクが下げられたときに、切断ディスクの面と同じ高さになってもよい。
【0013】
別の実施形態では、ロボット作業ツールは、切断ディスクの回転速度を下げる前に、切断ディスクをその持ち上げ位置まで上昇させるように構成される。
【0014】
これにより、回転数を下げたときに、地面を傷つけたり、切断が不均一になり、刃部が垂れ下がり始めるリスクが除かれる。
【0015】
いくつかの実施形態では、ロボット作業ツールは、切断セッションが完了した後に、切断ディスクをその持ち上げ位置まで上昇させるように構成される。
【0016】
このため、切断セッション終了時に切断ディスクを持ち上げて速度を下げると、地面を傷つけたり、切断偏在が発生するリスクをなくすことができる。また、次のセッションが開始される前に、切断ディスクが持ち上げ位置にあってもよい。
【0017】
他の実施形態では、ロボット作業ツールは、切断セッションが開始される前に、切断ディスクをその持ち上げ位置まで上昇させるように構成される。
【0018】
従って、切断ディスクは、その後の再始動による延長された停止時間の後でも、切断開始前に持ち上げ位置にあることが保証される。
【0019】
更なる実施形態では、ロボット作業ツールは、切断ディスクを自動的に昇降させるように配置された昇降手段Eを備える。
【0020】
従って、ロボット作業ツールの適切な機能は、利用者によるいかなる手動操作も行わずに行われ得る。切断操作の結果は、均一で滑らかになる。
【0021】
更なる実施形態では、ロボット作業ツールは、切断ディスクが下降する前に表示計器を起動するように構成される。
【0022】
このため、切断開始前に利用者に警告を指示してもよい。そのため、ロボット作業ツールのすぐ近くに人や動物がいないことを確認することができる。これは、ロボット作業ツールの突然の移動による負傷や不快にさせる驚きを防止するための特別な安全対策である。
【0023】
更なる実施形態では、表示計器の起動は、アラーム信号を鳴らすことを含む。
【0024】
これにより、警告機能がさらに強化される。
【0025】
いくつかの実施形態では、持ち上げ位置は、決定された第1の切断高さよりも5~10mm高い。
【0026】
ここで、切断ディスクからわずかに垂下した刃部は、切断ディスクが回転切断の最高速度に達する前に、決定された第1の切断高さよりも下側を切断してはならない。その距離は、切断ディスクが静止しているときに切断ディスク上の刃部が下方向に伸びると予想される距離に基づいて設定される。
【0027】
いくつかの実施形態では、切断ディスクは、回転可能なナイフを含む。
【0028】
このため、切断ディスクに取り付けられた刃部は、特に芝刈りに最適である。回転可能なナイフは、抵抗が所定の制限を超えたときに曲がる可能性があるので、有利な選択肢である。そのため、ロボット作業ツールが芝上の枝などに引っかかったり、芝以外の植生に損傷を与えたりするリスクがない。回転可能なナイフを有する別の利点は、それらが幾つかの切断エッジを備えて配置され、それによって用具をナイフで最大限に利用することができることである。
【0029】
いくつかの実施形態では、ロボット作業ツールは、通常モード及び低位置モードを有するように構成され、低位置モードでのみ切断ディスクを持ち上げ位置まで上昇させるように構成される。
【0030】
従って、ロボット作業ツールは、通常モードでの均一な切断に対する限られた要求に対して、かなり高いレベルで芝の芝刈りに使用され得る。通常モードでは、切断ディスクの加速および減速中に切断ディスクが上昇する必要はない。低位置モードでは、均一な切断の要求が高くなり、切断高さは地面に非常に近くなる。従って、加速及び減速段階の切断ディスクの持ち上げによってもたらされる利点が必要である。
【0031】
更なる実施形態では、ロボット作業ツールは、少なくとも最終的な所望の切断高さに基づいて、第1の切断高さよりも下の1つ以上の更なる切断高さを決定し、更なる切断高さよりも5~10mm上の持ち上げ位置を決定し、切断ディスクを持ち上げ位置まで上昇させ、切断ディスクの回転を開始し、決定された更なる切断高さまで切断ディスクを下降させるように構成される。
【0032】
したがって、ロボット作業ツールは、最終的な所望の切断高さに達する前に、いくつかのステップで切断動作を実行することができる。持ち上げ位置は、最近の決定された切断高さに関連して決定されてもよく、したがって、持ち上げ位置は、最終的な所望の切断高さに関連する持ち上げ位置に到達するまで、徐々に下降されてもよい。従って、切断ディスクは十分に高い位置までに限り持ち上げられてもよく、これにより、ロボット作業ツールの起動および停止時にいくらかの時間を節約することができる。
【0033】
本発明の第2の態様では、最終的な所望の切断高さを得るステップと、少なくとも最終的な所望の切断高さに基づいて第1の切断高さを決定するステップと、切断ディスクを第1の切断高さより上の持ち上げ位置まで上昇させるステップと、切断ディスクの回転を開始するステップと、切断ディスクを決定された第1の切断高さまで下降させるステップとを含む、ロボット作業ツールの作動方法によって、上記課題のうちの一部またはすべてが解決され、または少なくとも緩和される。
【0034】
よって、不均一な切断の跡のない芝生などが得ることができる。
【0035】
本発明の実施形態は、クレームに記載された特徴の可能なすべての組み合わせによって具体化することができることに留意されたい。更に、装置について説明した様々な態様は、全て、本発明の第2の態様に従って定義された方法と組み合わせ可能であり、その逆も同様であることが理解されよう。
【0036】
本発明の上記の他の物、特徴及び利点は、添付図面を参照して、本発明の実施の形態の以下の例示的及び非限定的な詳細な説明を通して、より良く理解されるであろう。ここで、同一の参照番号は、類似の要素に使用されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】開示によるロボット作業ツールの上方からの概略図である;
【
図2a】開示に係るロボット作業ツールの側面からの概略図である;
【
図2b】ロボット作業ツールの側面からの断面図である;
【
図3】ロボット作業ツールに含まれる切断ディスクの概略側面図である;
【
図4a】切断ディスクおよびその上に配置されたナイフの部分的な図である;
【
図4b】切断ディスクおよびその上に配置されたナイフの部分的な図であり、
【
図5】開示によるロボット作業ツールに含まれる機能ユニットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
全ての図は、概略的であり、必ずしも縮尺通りではなく、概して、実施形態を解明するために必要な部分のみを示し、他の部分は省略されてもよい。
[例示的な実施形態の詳細な説明]
【0039】
図1は、ロボット作業ツール1を上方から見た概略的に示す。ロボット作業ツール1は、車輪3が取り付けられたシャーシ2を有する。ロボット作業ツール1は、車輪3を駆動するためのモータ4、並びに切断ディスク6を駆動するためのモータ5を更に備える。切断ディスク6は、いずれの方向、すなわち時計回りと反時計回りに交互に回転してもよい。切断ディスク6の高さを規制する機構(図示せず)を設けて、切断ディスク6と地面との距離を規制してもよい。
【0040】
多数の刃部7が、好ましくは等間隔で、切断ディスク6の周辺近くに配置される。図に開示された実施形態において、刃部7は、好ましくは、切断ナイフであるが、他の同様のタイプの刃部7が、本特許出願の技術的範囲に含まれる。
【0041】
ロボット作業ツール1が芝生のような作業領域を横切って進むと、切断ディスク6が回転する間に、切断ディスク6は、切断ディスク6の直径にほぼ対応する幅を有する切断経路を作成してもよい。芝の高さが刈り取りディスク6の設定された高さに近いと、切断経路がはっきり見えなくなることがある。
【0042】
ロボット作業ツール1が側面から見ると、
図2aのように、切断ディスク6を駆動するモータ5は、駆動軸9がモータ5から切断ディスク6に延びる状態で、切断ディスク6の上方に配置されていることは明らかである。駆動軸9は、
図2bに見られるように、垂直方向に対してわずかに傾いていてもよい。切断ディスク6は、当技術分野で知られているような昇降機構18によって高さ調節可能となるように配置されている。モータ5は、切断ディスク6が昇降機構によって昇降する際に、ほとんどの場合、切断ディスク6と共に移動するように配置されてもよい。任意に、スキッドプレート8(
図2b参照)を切断ディスク6の下方に配置してもよい。
【0043】
切断ディスク6を昇降させることにより、ロボット作業ツール1の切断高さを決めることができる。ロボット作業ツール1のオペレータは、当該技術分野で公知の任意の入力手段によって所望の最終的な切断高さを設定することができる。ロボット作業ツール1の構成および作業領域の状態に応じて、ロボット作業ツール1は、所望の最終的な切断高さに等しい第1の切断高さ、または所望の最終的な切断高さより高い第1の切断高さを決定することができる。言い換えると、所望の最終刈り取り高さは、単一のステップまたはいくつかの、より小さなステップで到達され得る。
【0044】
図3には、側面から切断ディスク6、モータ5、駆動軸9、スキッドプレート8が示されている。刃部7a、7b、例えばナイフのうちの2つが、切断ディスク6の周縁部に概略的に示されている。刃部7a,7bは、ピン10上に回転自在に配置されている。刃部7a,7bは、それぞれのピン10に一定のクリアランスを空けて配置されている。いくつかの実施態様において、各刃部7a、7bには、ピン10が通る細長いスリット12を設けてもよい(
図4a~b参照)。クリアランスによって、
図3に示唆されるように、刃部7a、7bをピン10上に傾斜して配置することができ、刃部7bの外端部が垂下することができる。傾斜は、クリアランスが大きいほど大きくすることができる。
図3中の刃部7a、7bは、切断ディスク6の回転速度に応じて、それらが達成し得る異なる位置のうちの2つに示されている。なお、実際には、刃部7a、7bは、相互的な同一の位置を同時に達成するものであり、
図3は単なる模式図である。左側の刃部7aは、高速回転で到達した位置をとっているのに対し、右側の刃部7bは、切断ディスク6が低速で回転している場合や静止している場合の位置を表示している。
【0045】
切断ディスク6の回転により、典型的には切断ナイフである刃部7a、7bは、それらの慣性を受け、それぞれのピン10によって加えられる求心力を受けることになる。ナイフ7a、7bの外側、自由端は、ここでは、遠心作用によって、切断ディスク6の中心からできるだけ離れて進むことができ、一方、ナイフ7a、7bの内側端部は、切断ディスク6上のピン10によって規定される位置に留まる。その結果、ナイフ7aの外端部は、切断ディスク6が回転するときに切断ディスク6の面の高さまで上昇することになる。
【0046】
図3に示すように、切断ディスク6が静止しているときには、刃部7bの外端は、切断ディスク6の面の高さよりも低い高さに配置されている。これは重力の作用があり、遠心力の作用がないためである。切断ディスク6が回転を開始すると、刃部7aの外端は徐々に切断ディスク6の面の高さまで上昇する。切断ディスク6の回転速度が変化するにつれて地上からの高さが変化する結果は、切断高さが各瞬間の速度に依存するので、ロボット作業ツール1が不均一な切断をしたり、地面に切り込んだりするリスクを生じる可能性がある。
【0047】
切断サイクルの開始に関連して、切断ディスク6は、完全な停止と最高速度との間の全ての回転速度を加速して経過することができる。切断サイクルの終了時には、速度を徐々に減少させることができ、刃部7a、7bの高さを徐々に下げることができる。したがって、刃部7aの高さは、切断ディスク6が全速で回転するときに予測可能である。なぜなら、刃部7aの外端は、それから、切断ディスク6と同じ面の高さ、または少なくとも一定の高さであってもよいからである。
【0048】
図4a及び4bは、スリット12を有する刃部7、すなわちナイフを開示している。スリット12が細長く、ナイフ7とピン10との間のクリアランスが少なくとも一方向に大きいので、ナイフ7が切断ディスク6の面の高さより下に垂れ下がる傾向が顕著である。精密さの要求が高い領域での不均一な切断を防止するために、切断ディスク6は、高くされた面の高さに配置されるべきであり、ナイフ7が切断ディスク6の面の高さで延びるまで、すなわち切断ディスク6がフルスピードで回転するときまで、下がらないようにすべきである。
【0049】
開示されるナイフ7の利点は、
図4に示すように、切断するには厚すぎる枝のような障害物11に接触した場合に、それが回転してもよいことである。ナイフ7は接触すると容易に回転するので、このような障害物に引っかかりにくい。また、ナイフ7の回転は、場合によってはナイフ7の完全な回転をもたらすことがあり、その結果、以前の前縁13が後縁14になってもよく、またその逆でもよい。ナイフ7の回転又は方向転換は、切断ディスク6が逆方向に回転し始めるときにも行われ得る。ナイフ7は、ランダムな時点で回転できるので、縁13、14の摩耗は均一であってもよい。
【0050】
図5は、ロボット作業ツール1の一般的な構成をブロック図の形成で開示している。ロボット作業ツール1は、ユーザによってスイッチを入れたり切ったりすることができる起動/停止手段S16を少なくとも含んでおり、起動/停止手段S16は、電気スイッチ等であってもよい。ロボット作業ツール1がスイッチを入れられたとき、ユーザが入力手段I19を介して所望の最終的な切断高さを入力することが可能である。所望の最終的な切断高さの値は、プロセッサP15に送ることができ、プロセッサP15はまた、種々の検出手段D17から、例えば、作業領域における植生の現在の高さ、気象条件などに関する情報を受け取ることができる。次いで、プロセッサP15は、少なくとも所望の最終的な切断高さと、おそらく関連すると考えられる他の要因に基づいて、決定された第1切断高さを計算することができる。場合によっては、計算の結果は、決定された第1の切断高さが所望の最終的な切断高さに等しいことであってもよい。他の場合には、プロセッサP15は、所望の最終的な切断高さよりも高いように、決定された第1の切断高さを計算することができる。すなわち、ロボット作業ツール1は、次第に下げられた決定された切断高さを用いて、作業領域をいくつかのステップで処理しなければならない場合がある。
【0051】
決定された切断高さに基づいて、プロセッサP15は、好ましくは、決定された切断高さより5~10mm高く、切断ディスク6の適切な持ち上げ高さを計算するように構成される。持ち上げ高さと、決定された切断高さとの間の距離は、切断ディスク6上の刃部7が、切断ディスク6の面の高さより下に垂下し得る最大距離に等しいか、またはわずかに大きくすることができる。
【0052】
計算された持ち上げ高さの指示は、プロセッサP15によって指示されたときに、切断ディスク6の高さを自動的に調節するように構成された昇降手段E18に送ってもよい。高さが達成されたことを昇降手段E18が確認すると、モータM5は、プロセッサP15から切断ディスク6の回転を開始する指示を受け取るように構成される。プロセッサP15は、さらに、切断モータM5の回転速度の情報を受け取り、回転速度が十分であると直ちに、すなわち切断ディスク6上の刃部7の外端部が切断ディスク6の面の高さまで上昇したと安全に想定される場合に、昇降手段E18に切断ディスク6を下降させるように指示するように構成される。
【0053】
プロセッサP15は、現場における知識に従って、切断サイクル中にロボット作業ツール1を作業領域内に向けるように構成されてもよく、検出手段D17は、全領域が、決定された第1の切断高さまで処理されるまで、必要な情報を収集してプロセッサP15に送るように構成されてもよい。プロセッサP15はまた、所望の最終的な切断高さが達成されたか否かを判定するように構成されてもよい。達成されていない場合、プロセッサP15は、別の決定された切断高さ、それに基づく別の持ち上げ高さを計算し、上述したように、昇降手段E18および切断モータM5に対応する指示を送るように構成することができる。
【0054】
プロセッサP15は、切断サイクルが終了したとき、又はロボット作業ツール1を切断サイクルを継続する前に再充電する必要がある場合に、切断ディスク6を前もって計算された上昇高さまで上昇させるように昇降手段E18に指示するようにさらに構成することができる。昇降手段E18が切断ディスク6を上昇させた後、切断モータM5は、プロセッサP15によって、切断ディスク6の回転を減速して停止させるように指示されてもよい。プロセッサP15は、それ以上切断サイクルが必要ないと判断した場合、すなわち所望の最終的な切断高さに達したと判断した場合、プロセッサP15が起動/停止手段S16を起動するように構成され、これにより、ロボット作業ツール1は停止され得る。
【0055】
本発明は、主に、いくつかの実施形態を参照して上述した。しかしながら、当業者であれば容易に理解できるように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲内で同様に可能である。
【0056】
請求項において、「含む」という語は、他の素子又は工程を除外せず、不定物品「a」又は「an」は、複数を除外しない。
なお、本発明の実施形態の態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
回転可能かつ高さ調節可能な切断ディスク(6)を備えるロボット作業ツール(1)であって、前記ロボット作業ツール(1)が、以下を実行するように構成される、ロボット作業ツール(1):
-切断ディスク(6)の最終的な所望の切断高さを得て;
-少なくとも前記最終的な所望の切断高さに基づいて、第1の切断高さを決定し;
-前記切断ディスク(6)を前記第1の切断高さよりも高い位置まで上昇させ;
-前記切断ディスク(6)の回転を開始し;及び
-前記切断ディスク(6)を決定された前記第1の切断高さまで下げる。
[態様2]
前記ロボット作業ツール(1)は、前記切断ディスク(6)がその持ち上げ位置にあるときに、前記回転を開始するように構成される、態様1に記載のロボット作業ツール(1)。
[態様3]
前記ロボット作業ツール(1)は、その回転切断の最高速度を得た後に、前記切断ディスク(6)を前記第1の切断高さまで下げるように構成される、態様2に記載のロボット作業ツール(1)。
[態様4]
前記ロボット作業ツール(1)は、その回転速度を下げる前に、前記切断ディスク(6)をその持ち上げ位置まで上昇させるように構成されている、態様1~3のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様5]
前記ロボット作業ツール(1)は、切断セッションが完了した後に、前記切断ディスク(6)をその持ち上げ位置まで上昇させるように構成される、態様1~4のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様6]
前記ロボット作業ツール(1)は、切断セッションが開始される前に、前記切断ディスク(6)をその持ち上げ位置まで上昇させるように構成される、態様1~4のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様7]
前記ロボット作業ツール(1)は、前記切断ディスク(6)を自動的に昇降させるように配置された昇降手段E(18)を備える、態様1~6のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様8]
前記ロボット作業ツール(1)は、前記切断ディスク(6)が下降する前に表示計器を作動させるように構成される、態様1~7のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様9]
前記表示計器の起動は、警報信号を鳴らすことを含む、態様8に記載のロボット作業ツール(1)。
[態様10]
前記持ち上げ位置は、前記決定された第1の切断高さより5~10mm高い、態様1~9のうちのいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様11]
前記切断ディスク(6)が回転可能なナイフ(7)を備える、態様1~10のうちいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様12]
前記ロボット作業ツール(1)は、通常モード及び低位置モードを有するように構成され、前記低位置モードのみで前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置まで上昇させるように構成される、態様1~11のうちのいずれかに記載のロボット作業ツール(1)。
[態様13]
前記ロボット作業ツール(1)は、以下を実行するように構成される、態様1~12のうちいずれかに記載のロボット作業ツール:
-少なくとも前記最終的な所望の切断高さに基づいて、前記第1の切断高さよりも低い1つまたは複数の更なる切断高さを決定し;
-前記更なる切断高さより5~10mm高く、前記持ち上げ位置を決定し;
-前記切断ディスク(6)を前記持ち上げ位置へ持ち上げ;
-前記切断ディスク(6)の回転を開始し;及び
-前記切断ディスク(6)を前記決定された更なる切断高さまで下げる。
[態様14]
次のステップを含む、ロボット作業ツール(1)を実行するための方法:
-最終的な所望の切断高さを取得すること;
-少なくとも前記最終的な所望の切断高さに基づいて、第1の切断高さを決定すること;
-切断ディスク(6)を前記第1の切断高さよりも高い位置まで上げること;
-前記切断ディスク(6)の回転を開始すること;及び
-前記切断ディスク(6)を前記決定された第1の切断高さまで下げること。