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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ステータ組立装置及びステータ組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20231109BHJP
   H02K 3/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H02K15/085
H02K3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021188911
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075791
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大橋 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】引間 紀彦
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-136755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/085
H02K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材を装着したステータコアのスロットに、前記ステータコアの内方からコイルを挿入してステータを組み立てるステータ組立装置であって、
前記ステータコアの中心軸方向に沿って移動可能に設けられ、前記ステータコアに向けて移動することにより、少なくとも一部が前記絶縁部材の開口端内に掛かった状態で、前記コイルが挿入される前の前記絶縁部材の内側に挿入されるとともに、前記スロットに向けて移動する前記コイルの移動方向前方に配置される先行ガイド部材を備え、
前記先行ガイド部材は、長手方向から見て四辺形状をなし、
前記先行ガイド部材の先端部は、前記ステータコアの径方向の一方端部側を頂点として前記ステータコアの径方向に沿って傾斜するとともに、前記先端部における前記ステータコアの周方向に面する両側面が先端に向かうに従って徐々に近づくように形成され、前記ステータコアの径方向に沿う前記先行ガイド部材の中心線上で互いに突き合わされた先細り形状を有し、
前記頂点は、前記ステータコアの径方向外側に配置される、ステータ組立装置。
【請求項2】
前記ステータコアの周方向に沿う前記先行ガイド部材の横幅は、前記ステータコアの周方向に沿う前記コイルの幅以上である、請求項1に記載のステータ組立装置。
【請求項3】
絶縁部材を装着したステータコアのスロットに、前記ステータコアの内方からコイルを挿入してステータを組み立てるステータ組立方法であって、
前記コイルを前記スロット内に挿入する前に、前記ステータコアの中心軸方向外側から、少なくとも一部が前記絶縁部材の開口端内に掛かった状態で、前記スロットに向けて移動する前記コイルの移動方向前方に配置されるように、先行ガイド部材を前記絶縁部材の内側に挿入する工程を備え、
前記先行ガイド部材は、長手方向から見て四辺形状をなし、
前記先行ガイド部材の先端部は、前記ステータコアの径方向の一方端部側を頂点として前記ステータコアの径方向に沿って傾斜するとともに、前記先端部における前記ステータコアの周方向に面する両側面が先端に向かうに従って徐々に近づくように形成され、前記ステータコアの径方向に沿う前記先行ガイド部材の中心線上で互いに突き合わされた先細り形状を有し、
前記頂点は、前記ステータコアの径方向外側に配置される、ステータ組立方法。
【請求項4】
前記ステータコアの周方向に沿う前記先行ガイド部材の横幅は、前記ステータコアの周方向に沿う前記コイルの幅以上である、請求項3に記載のステータ組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ組立装置及びステータ組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁部材を装着したステータコアのスロットに、絶縁部材の噛み込みを防止しながら、ステータコアの内方からコイルを挿入する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、絶縁部材が装着されたコイル挿入前のステータコアのスロット内に、ステータコアの中心軸方向の外側から2つのガイド治具を挿入して絶縁部材を開放させ、その状態でコイルを一方のガイド治具に当てながらスロット内に移動させ、ガイド部材同士が当接した後に、2つのガイド治具をスロット内から退避させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6733823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガイド治具の先端側の形状は、断面略四辺形の一対の側面をステータコアの径方向に沿って先細りさせているだけであるため、スロット内の絶縁部材の開口端が閉じた状態に近い状態まで狭くなっている場合、ガイド治具をスロット内に挿入することが困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、スロット内の絶縁部材の開口端が閉じた状態に近い状態まで狭くなっている場合でも、コイルの挿入に先立って、絶縁部材を開口状態に復帰させることができ、ステータの組立作業性の良いステータ組立装置及びステータ組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るステータ組立装置は、絶縁部材(例えば、後述の絶縁紙24)を装着したステータコア(例えば、後述のステータコア2)のスロット(例えば、後述のスロット22)に、前記ステータコアの内方からコイル(例えば、後述の帯状コイル100)を挿入してステータ(例えば、後述のステータ200)を組み立てるステータ組立装置(例えば、後述のステータ組立装置1)であって、前記ステータコアの中心軸方向に沿って移動可能に設けられ、前記ステータコアに向けて移動することにより、少なくとも一部が前記絶縁部材の開口端(例えば、後述の開口端24a)内に掛かった状態で、前記コイルが挿入される前の前記絶縁部材の内側に挿入され、前記スロットに向けて移動する前記コイルの移動方向前方に配置される先行ガイド部材(例えば、後述の先行ガイド部材61)を備え、前記先行ガイド部材は、長手方向から見て四辺形状をなし、前記先行ガイド部材の先端部(例えば、後述の先端部61a)は、前記ステータコアの径方向の一方端部(例えば、後述の一方端部61b)側を頂点(例えば、後述の頂点P)として前記ステータコアの径方向に沿って傾斜するとともに、前記ステータコアの径方向に沿う前記先行ガイド部材の中心線(例えば、後述の中心線O)に向けて先細りする形状を有し、前記頂点は、前記ステータコアの径方向外側に配置される。
【0008】
(2) 上記(1)に記載のステータ組立装置において、前記ステータコアの周方向に沿う前記先行ガイド部材の横幅(例えば、後述の横幅W12,W22)は、前記ステータコアの周方向に沿う前記コイルの幅(例えば、後述の幅W0)以上であることが好ましい。
【0009】
(3) 本発明に係るステータ組立方法は、絶縁部材(例えば、後述の絶縁紙24)を装着したステータコア(例えば、後述のステータコア2)のスロット(例えば、後述のスロット22)に、前記ステータコアの内方からコイル(例えば、後述の帯状コイル100)を挿入してステータ(例えば、後述のステータ200)を組み立てるステータ組立方法であって、前記コイルを前記スロット内に挿入する前に、前記ステータコアの中心軸方向外側から、少なくとも一部が前記絶縁部材の開口端(例えば、後述の開口端24a)内に掛かった状態で、前記スロットに向けて移動する前記コイルの移動方向前方に配置されるように、先行ガイド部材(例えば、後述の先行ガイド部材61)を前記絶縁部材の内側に挿入する工程を備え、前記先行ガイド部材は、長手方向から見て四辺形状をなし、前記先行ガイド部材の先端部(例えば、後述の先端部61a)は、前記ステータコアの径方向の一方端部(例えば、後述の一方端部61b)側を頂点(例えば、後述の頂点P)として前記ステータコアの径方向に沿って傾斜するとともに、前記ステータコアの径方向に沿う前記先行ガイド部材の中心線(例えば、後述の中心線O)に向けて先細りする形状を有し、前記頂点は、前記ステータコアの径方向外側に配置される。
【0010】
上記(3)に記載のステータ組立方法において、前記ステータコアの周方向に沿う前記先行ガイド部材の横幅(例えば、後述の横幅W12,W22)は、前記ステータコアの周方向に沿う前記コイルの幅(例えば、後述の幅W0)以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)によれば、絶縁部材の開口端が閉じた状態に近い状態まで狭くなっている場合でも、ステータコアの中心軸方向に沿って絶縁部材の内側に先行ガイド部材を円滑に挿入することができる。先行ガイド部材は、長手方向から見て四辺形状をなし、ステータコアの径方向の一方端部側を頂点としてステータコアの径方向に沿って傾斜するとともに、ステータコアの径方向に沿う中心線に向けて先細りする形状を有し、頂点が、ステータコアの径方向外側に配置される構成を有しており、少なくとも一部が絶縁部材の開口端内に掛かった状態でスロット内に挿入されるため、先行ガイド部材を絶縁部材の内側に挿入するだけで、コイルの挿入に先立って、絶縁部材の開口端を開口した状態に復帰させることができる。そのため、ステータの組立作業性の良いステータ組立装置を提供することができる。
【0012】
上記(2)によれば、絶縁部材の開口端を、コイルの幅よりも広く開口させることができるため、コイルの挿入性がさらに向上する。
【0013】
上記(3)によれば、絶縁部材の開口端が閉じた状態に近い状態まで狭くなっている場合でも、ステータコアの中心軸方向に沿って絶縁部材の内側に先行ガイド部材を円滑に挿入することができる。先行ガイド部材は、長手方向から見て四辺形状をなし、ステータコアの径方向の一方端部側を頂点としてステータコアの径方向に沿って傾斜するとともに、ステータコアの径方向に沿う中心線に向けて先細りする形状を有し、頂点が、ステータコアの径方向外側に配置される構成を有しており、少なくとも一部が絶縁部材の開口端内に掛かった状態でスロット内に挿入されるため、先行ガイド部材を絶縁部材の内側に挿入するだけで、コイルの挿入に先立って、絶縁部材の開口端を開口した状態に復帰させることができる。そのため、ステータの組立作業性の良いステータ組立方法を提供することができる。
【0014】
上記(4)によれば、絶縁部材の開口端を、コイルの幅よりも広く開口させることができるため、コイルの挿入性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ステータ組立装置の外観を示す側面図である。
図2】ステータ組立装置における位置決め治具とコイル巻取治具を分解して示す斜視図である。
図3】ステータコアのスロットに装着された絶縁部材を示す斜視図である。
図4】コイルの一例を示す展開図である。
図5】ステータコアの内側に装着されたコイル巻取治具にコイル拡張装置を装着する様子を示す斜視図である。
図6】ステータ組立装置におけるガイド機構を中心軸方向から見た図である。
図7】ガイド機構における先行ガイド部材を示す断面図である。
図8】ガイド機構における強化ガイド部材を示す断面図である。
図9A】先行ガイド部材の先端部をステータコアの径方向に沿って見た図である。
図9B】先行ガイド部材の先端部をステータコアの周方向に沿って見た図である。
図9C】先行ガイド部材の先端部をステータコアの中心軸方向に沿って見た図である。
図10】ステータコアのスロットにガイド部材を挿入する様子を示す図である。
図11A】先行ガイド部材がスロット内に図9A及び図9B中のA部の位置まで挿入されたときのスロット内における先行ガイド部材の断面形状を示す図である。
図11B】先行ガイド部材がスロット内に図9A及び図9B中のB部の位置まで挿入されたときのスロット内における先行ガイド部材の断面形状を示す図である。
図11C】先行ガイド部材がスロット内に図9A及び図9B中のC部の位置まで挿入されたときのスロット内における先行ガイド部材の断面形状を示す図である。
図12A】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12B】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12C】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12D】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12E】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12F】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12G】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12H】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12I】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図12J】ステータコアの内方からスロットにコイルを挿入する動作過程を説明する図である。
図13A】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13B】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13C】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13D】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13E】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13F】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13G】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13H】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13I】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図13J】スロットにコイルが挿入される様子を示す図である。
図14】ステータの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1図2に示すように、ステータ組立装置1は、ステータコア2と、ステータコア2を位置決めして固定する位置決め治具3と、帯状コイル100を円環状に巻き取ったコイル巻取治具4と、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を拡張させるコイル拡張機構部5と、ステータコア2のスロット22への帯状コイル100の挿入をガイドするガイド機構部6と、を備える。
【0017】
ステータコア2は、図2及び図3に示すように、例えば、薄肉のコアプレートが複数積層された積層体からなる円環部21を有する。円環部21の中心には、軸方向に貫通する貫通孔20を有する。ステータコア2は、ステータコア2の軸方向に貫通する複数のスロット22を有する。スロット22は、円環部21の周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列され、円環部21の径方向内側の貫通孔20に向けて開口する開口部22aを有する。本実施形態のステータコア2は、72個のスロット22を有する。ステータコア2の円環部21の外周には、一定の間隔で突出する6つの耳部23を有する。
【0018】
なお、図2に示すように、ステータコア2及び位置決め治具3において、スロット22が配列されるX方向が周方向である。貫通孔20の中心から放射方向に沿うY方向が径方向である。X方向及びY方向に直交し、ステータコア2の貫通孔20の中心軸に沿うZ方向が中心軸方向である。
【0019】
位置決め治具3は、図1及び図2に示すように、ステータコア2の中心軸方向の寸法に略等しい中心軸方向の寸法を有する六角柱形状に形成され、ステータコア2を挿入して配置可能なステータコア挿入孔31を中央に有する。位置決め治具3は、ステータコア2の6つの耳部23をそれぞれ支持することによって、ステータコア2をステータコア挿入孔31内の所定の位置及び姿勢に固定する。本実施形態のステータ組立装置1において、位置決め治具3は、ステータコア挿入孔31内に固定されたステータコア2の中心軸方向が水平方向になるように、ステータ組立装置1の基台11の中央部に固定される。
【0020】
ステータコア2のスロット22には、図3に示すように、それぞれ絶縁部材である絶縁紙24が予め装着されている。絶縁紙24は、ステータコア2を軸方向から見たときのスロット22の略コ字状の内面形状に倣うように、略コ字状に折り曲げられて形成される。絶縁紙24は、ステータコア2の径方向内側の貫通孔20に向けて開口している。その開口端24aは、スロット22の開口部22aに配置され、絶縁紙24の内側を貫通孔20に向けて開放している。
【0021】
図2に示すように、位置決め治具3の中心軸方向の両端面3a,3aには、長尺な薄板状に形成される複数のカフスガイド32が、周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列されている。カフスガイド32は、後述の帯状コイル100をステータコア2のスロット22内に挿入する際に、ステータコア2の中心軸方向の両端面から突出する絶縁紙24を支持するとともに、帯状コイル100のスロット22内への移動を案内する。カフスガイド32は、それぞれ図示しないシリンダ等のアクチュエータの駆動によって、ステータコア2の径方向に沿って進退移動可能に設けられる。
【0022】
コイル巻取治具4は、略円筒状の治具本体41と、治具本体41の外周に放射状に突出する複数の櫛歯部42と、を有する。櫛歯部42は、治具本体41の中心軸方向の両端部にそれぞれ設けられる。治具本体41の周方向に隣り合う櫛歯部42,42間の数は、ステータコア2に設けられるスロット22の数に一致している。コイル巻取治具4は、ステータコア2の貫通孔20に挿入可能となるように、櫛歯部42の先端の位置によって規定されるコイル巻取治具4の外径が、ステータコア2の貫通孔20の孔径以下になるように形成されている。
【0023】
コイル巻取治具4の複数の櫛歯部42には、ステータコア2に装着するための帯状コイル100が円環状に巻き取られる。帯状コイル100は、図4に示すように、断面形状が略矩形状の平角導線101によって形成される長尺帯状の連続する波巻コイルからなる。連続する波巻コイルは、コイルをステータコア2にセットする際、世間一般の主流である、コイルを複数のセグメントに分割成形し、スロット内への挿入後にコイルエンドを溶接する技術を必要としないため、溶接個所の熱加工に対応できるように、例えば、コイルに高純度の銅材を使用する必要がない。そのため、不純物を含むリサイクル銅材を使用することも可能となり、資源の循環利用の実現に貢献することができる。しかも、波巻コイルは、溶接の必要がないことから、コイルの軽量化が可能であり、このコイルを使用した回転電機の軽量化を図ることができる。回転電機がハイブリッドカーに搭載される場合、車両重量が軽量化されることによって、二酸化炭素の削減が可能であり、地球環境上の悪影響を軽減することができる。
【0024】
帯状コイル100は、複数の直線部102と複数のコイルエンド部103とを有する。直線部102は、ステータコア2のスロット22内に挿入される部位であり、それぞれ略直線状に延びて一定の間隔で平行に配置される。コイルエンド部103は、直線部102よりも帯状コイル100の側端寄りの位置にそれぞれ配置され、隣り合う直線部102の一方端部同士と他方端部同士とを、帯状コイル100の長さ方向に沿って、略三角形の山型状に交互に連結する。コイルエンド部103は、帯状コイル100がステータコア2のスロット22に装着された際に、スロット22からステータコア2の軸方向にそれぞれ突出し、帯状コイル100をスロット22内に挿入する際に、後述するコイル拡張機構部5によって押圧される部位である。本実施形態の帯状コイル100は、複数の直線部102と複数のコイルエンド部103とがそれぞれ折り曲げ形成された6本の平角導線101を、直線部102が一定の間隔で平行に並列するように束ねることによって、長尺帯状に形成される。
【0025】
コイル巻取治具4は、ステータコア2の貫通孔20に挿入される前に、帯状コイル100の直線部102を櫛歯部42,42の間に外方から順次挿入することによって、帯状コイル100を多重に巻き取っている。これによって、図2に示すように、帯状コイル100が円環状に巻き取られたコイル巻取治具4が構成される。
【0026】
ステータコア2の内側の貫通孔20に挿入されたコイル巻取治具4は、位置決め治具3を間に挟んで、ステータコア2の中心軸方向の両側に対面するように一対配置されるコイル拡張機構部5に支持されることによって、所定の位置及び姿勢に保持される。本実施形態のコイル拡張機構部5は、図5に示すように、略円柱状の外観形状を有し、図1に示すように、ステータコア2の内側に挿入されたコイル巻取治具4に対して、その中心軸方向から対向するように配置される。コイル拡張機構部5は、図示しないアクチュエータの駆動によって、基台11上を直線的に移動し、コイル巻取治具4に対して当接する方向及び離隔する方向にそれぞれ移動可能に設けられる。
【0027】
コイル拡張機構部5は、略円筒状に形成され、先端側の外周に複数のコイル押圧部51を有する。複数のコイル押圧部51は、コイル拡張機構部5の先端側の外周に沿って配列され、図示しないアクチュエータの駆動によって径方向に沿って拡径及び縮径可能に設けられる。縮径状態のコイル押圧部51の外径は、コイル巻取治具4に巻き取られた円環状の帯状コイル100の内径以下である。拡径状態のコイル押圧部51の外径は、コイル巻取治具4の外径よりも大きい。コイル拡張機構部5は、縮径状態のコイル押圧部51をコイル巻取治具4に巻き取られた円環状の帯状コイル100の内側に挿入することによって、コイル巻取治具4を保持する。帯状コイル100の内側に挿入されたコイル押圧部51が拡径すると、帯状コイル100が外側に向けて押圧されて拡径する。これによって、帯状コイル100の直線部102が、径方向外側に配置されるスロット22内の絶縁紙24の内側に向けて移動し、スロット22内に挿入される。コイル拡張機構部5のコイル押圧部51は、帯状コイル100を径方向外側に向けて押圧して、帯状コイル100の直線部102をスロット22内の絶縁紙24の内側に移動させる押圧手段を構成する。
【0028】
ガイド機構部6は、図1に示すように、コイル拡張機構部5と同様に、位置決め治具3を間に挟んで、ステータコア2の中心軸方向の両側に対面するように一対配置される。一対のガイド機構部6は、コイル拡張機構部5の外周側にそれぞれ同芯状に配置されている。
【0029】
一対のガイド機構部6は同一構成であるため、図6図9を参照して、一方のガイド機構部6の構成について説明する。図6は、一方のガイド機構部6をステータコア2の中心軸方向に沿う方向から見た図である。ガイド機構部6は、円環状に配列される複数の先行ガイド部材61と、先行ガイド部材61の外側に円環状に配列される複数の強化ガイド部材62と、を有する。
【0030】
先行ガイド部材61は、スロット22内に装着された絶縁紙24の内側に対して、ステータコア2の中心軸方向に沿って挿入可能な十分な長さを有する棒状体からなる。先行ガイド部材61の長手方向に直交する断面は、先細り状の先端部を除き、角部が丸められた四辺形状である。そのため、先行ガイド部材61は、長手方向から見た場合、四辺形状をなしている。先行ガイド部材61の長手方向は、ステータコア2の中心軸方向に沿って配置されている。
【0031】
ステータコア2の径方向に沿う先行ガイド部材61の縦幅W11(図13A参照)は、ステータコア2の径方向に沿うスロット22の深さよりも十分に小さい。本実施形態の先行ガイド部材61の縦幅W11は、スロット22の深さの略1/5に設定されている。ステータコア2の周方向に沿う先行ガイド部材61の横幅W12(図13A参照)は、スロット22内の絶縁紙24の内側におけるステータコア2の周方向に沿う幅以下である。この先行ガイド部材61の横幅W12は、スロット22内に挿入される帯状コイル100の直線部102におけるステータコア2の周方向に沿う幅W0(図13A参照)よりも大きい。
【0032】
先行ガイド部材61は、1つのスロット22に対して少なくとも1つずつ設けられ、スロット22の配列ピッチと同じ配列ピッチで円環状に配列されている。本実施形態の先行ガイド部材61は、1つのスロット22に対して1つずつ設けられるが、先行ガイド部材61は、1つのスロット22に対して複数設けられてもよい。
【0033】
図7に示すように、先行ガイド部材61の先端は先細り状に形成される。この先行ガイド部材61の先端形状については後述する。先行ガイド部材61の基端側には、円環状の径方向外側に向けて突出する操作部611がそれぞれ形成される。操作部611には、径方向外側に向けて長尺に延びるガイド孔612が設けられる。ガイド孔612内には、ガイド機構部6に設けられる支持板部601が径方向(図7の上下方向)にスライド可能に係合している。これによって、先行ガイド部材61は、ガイド機構部6に径方向に移動可能に支持される。
【0034】
操作部611の先端側には、連結板613の一端が回転軸613aによって回転可能に取り付けられている。連結板613の他端は、操作部611に対する先行ガイド部材61の延び方向と反対方向(図7の右方向)に延び、回転軸613bによってガイド機構部6の先行ガイド部材支持部602に回転可能に取り付けられている。回転軸613bに対して操作部611と反対側の連結板613の他端側には、連結板613の他端側を径方向外側に向けて付勢するコイルスプリング等からなる弾発部材614が設けられている。
【0035】
弾発部材614が連結板613の他端側を径方向外側に向けて付勢することによって、先行ガイド部材61は、連結板613に押されて径方向内側に向けて常に押し付けられている。しかし、先行ガイド部材61に対して、径方向内側から外側に向けて弾発部材614の付勢力を上回る押圧力が作用すると、先行ガイド部材61は、図7中の白抜き矢印に沿って、径方向外側に向けて拡径するように移動可能である。押圧力が解除されると、先行ガイド部材61は、弾発部材614の付勢力が作用することによって、径方向内側に向けて縮径して定常状態に復帰する。
【0036】
複数の先行ガイド部材61は、図6に示すガイド機構部6に設けられる第1ガイド部材駆動用のアクチュエータ610の駆動によって、ステータコア2の中心軸方向に移動可能に設けられる。アクチュエータ610は、図1に示すステータ組立装置1の制御部10によって制御される。アクチュエータ610が駆動すると、アクチュエータ610は、先行ガイド部材支持部602をステータコア2の中心軸方向に沿って、ステータコア2に向かう方向及びステータコア2から離れる方向に移動させる。先行ガイド部材支持部602がステータコア2に向かう方向に移動することによって、複数の先行ガイド部材61は、それぞれ対応するスロット22内の絶縁紙24の内側に、ステータコア2の中心軸方向から挿入される。先行ガイド部材支持部602がステータコア2から離れる方向に移動することによって、複数の先行ガイド部材61は、スロット22内の絶縁紙24の内側からステータコア2の中心軸方向の外側に離脱する。
【0037】
強化ガイド部材62は、スロット22内に装着された絶縁紙24の内側に対して、ステータコア2の中心軸方向に沿って挿入可能な長さで、且つ先行ガイド部材61の長さよりも短い棒状体からなる。強化ガイド部材62の長手方向に直交する断面は、先細り状の先端部を除き、角部が丸められた四辺形状をなしている。ステータコア2の径方向に沿う強化ガイド部材62の縦幅W21(図13A参照)は、先行ガイド部材61の縦幅W11と略同一である。ステータコア2の周方向に沿う強化ガイド部材62の横幅W22(図13A参照)は、先行ガイド部材61の横幅W12と略同一である。
【0038】
強化ガイド部材62は、1つのスロット22に対して3つずつ設けられる。すなわち、強化ガイド部材62は、図8に示すように、最も内径側の第1強化ガイド部材62aと、第1強化ガイド部材62aの径方向外側に配置される第2強化ガイド部材62bと、第2強化ガイド部材62bの径方向外側に配置される第3強化ガイド部材62cと、によって構成される。第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cは、それぞれスロット22の配列ピッチと同じ配列ピッチで円環状に配列され、径方向に積層されている。しかし、強化ガイド部材62の最も内径側の第1強化ガイド部材62aと先行ガイド部材61との間は、1本分の先行ガイド部材61の縦幅W11及び1本分の第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cの縦幅W21に相当する距離Lで離隔している(図10図13A参照)。具体的な距離Lは、スロット22の仕様、絶縁紙24の種類等によって適宜設定されるものであり、特に限定されないが、本実施形態においては4.2mmに設定されている。
【0039】
図8に示すように、第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cの先端はそれぞれ先細り状に形成される。第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cの基端側には、円環状の径方向外側に向けて突出する操作部621a,621b,621cがそれぞれ形成される。操作部621a,621b,621cは、ガイド機構部6のアクチュエータ620にそれぞれ個別に連結されている。
【0040】
第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cは、ガイド機構部6に設けられる強化ガイド部材駆動用のアクチュエータ620の駆動によって、ステータコア2の中心軸方向に個別に移動可能に設けられる。アクチュエータ620は、図6に示すように、第1強化ガイド用アクチュエータ620a、第2強化ガイド用アクチュエータ620b、第3強化ガイド用アクチュエータ620cからなり、図1に示すステータ組立装置1の制御部10によってそれぞれ個別に制御される。
【0041】
アクチュエータ620が駆動すると、アクチュエータ620は、第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cをステータコア2の中心軸方向に沿って、ステータコア2に向かう方向及びステータコア2から離れる方向にそれぞれ個別に移動させる。第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cがステータコア2に向かう方向に移動することによって、第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cは、それぞれ対応するスロット22内の絶縁紙24の内側に、ステータコア2の中心軸方向から挿入される。第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cがステータコア2から離れる方向に移動することによって、第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cは、それぞれスロット22内の絶縁紙24の内側からステータコア2の中心軸方向の外側に個別に離脱可能である。
【0042】
ここで、先行ガイド部材61の先端形状について図9A図9Cを参照して説明する。先行ガイド部材61の先端部61aは、ステータコア2の径方向に沿う先行ガイド部材61の一方端部61b側に頂点Pを有する。先行ガイド部材61の先端部61aは、この頂点Pからステータコア2の径方向に沿う先行ガイド部材61の他方端部61c側に向けて、ステータコア2の径方向に沿って傾斜している。本実施形態の先行ガイド部材61における先端部61aは、図9Bに示すように直線的に傾斜しているが、曲線を描くように傾斜していてもよい。
【0043】
さらに、図9A及び図9Cに示すように、先行ガイド部材61の先端部61aは、ステータコア2の径方向に沿う先行ガイド部材61の中心線Oに向けて先細りする形状を有する。ステータコア2の周方向に面している先行ガイド部材61の両側面61d,61dは、先端に向かうに従って徐々に細くなり、略中心線O上で互いに突き合わされる。これによって、先行ガイド部材61の先端部61aには、一方端部61b側の頂点Pから他方端部61c側に向けて傾斜する稜線Paが形成される。この稜線Paは、先行ガイド部材61の中心線Oに略一致している。本実施形態の先行ガイド部材61において、両側面61d,61dが先細りすることによって形成される傾斜面61d1,61d1は、図9Aに示すように直線的に傾斜する平面によって形成されているが、曲面によって形成されていてもよい。
【0044】
このような先端形状を有する先行ガイド部材61は、図9B及び図9Cに示すように、頂点Pがステータコア2の径方向外側(Y1側)に配置されるように、ガイド機構部6に取り付けられる。
【0045】
次に、ステータ組立装置1において、ステータコア2のスロット22内の絶縁紙24の内側に帯状コイル100の直線部102を挿入する工程について説明する。図10図11A図11C及び図12A図12Jは、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100を、ステータコア2の内方からステータコア2のスロット22内の絶縁紙24の内側に挿入する動作過程を模式的に示している。ステータコア2の中心軸方向の両側の動作過程は同期して進行するため、図12A図12Jは、ステータコア2の中心軸方向の一方側の動作過程のみを示す。図13A図13Jは、ステータコア2の1つのスロット22内の先行ガイド部材61及び強化ガイド部材62を模式的に示している。図13A図13Jは、図12A図12Jに時間的に対応している。なお、図10図12A図12J及び図13A図13Jにおいて、位置決め治具3は図示を省略している。
【0046】
まず、図10に示すように、帯状コイル100が巻き取られたコイル巻取治具4が、コイル拡張機構部5によってステータコア2の貫通孔20内に支持された後、ガイド機構部6のアクチュエータ610,620が制御部10によって駆動制御され、先行ガイド部材61及び強化ガイド部材62の全てを、ステータコア2の中心軸方向の両外側から、それぞれスロット22内の絶縁紙24の内側に挿入する。スロット22内の絶縁紙24の内側に挿入された先行ガイド部材61及び強化ガイド部材62の先端同士は、スロット22内で対向するように配置される。
【0047】
先行ガイド部材61は、ガイド機構6における最も内径側に配置され、ステータコア2に向けて移動してスロット22内に挿入される際、スロット22の開口部22a付近に配置される。したがって、先行ガイド部材61は、ステータコア2に向けて移動することにより、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態で、絶縁紙24の内側に挿入される(図11C)。
【0048】
このとき、先行ガイド部材61は、頂点P側から絶縁紙24の内側に進入する。先行ガイド部材61において、頂点Pは、ステータコア2の径方向外側(Y1側)に配置されているため、先行ガイド部材61は、絶縁紙24の開口端24aよりもスロット22内の奥側(Y1側)寄りの位置から絶縁紙24の内側に進入する(図11A)。
【0049】
その後、先行ガイド部材61の挿入が進むと、先行ガイド部材61の先端部61aの傾斜に沿って、2つの傾斜面61d1,61d1が絶縁紙24の開口端24a,24aに向けて内側から徐々に進入していく。これによって、絶縁紙24の開口端24a,24aが閉じた状態に近い状態まで狭くなっていても、絶縁紙24の内側から開口端24a,24aを開くように案内することができる。これと同時に、先行ガイド部材61の両側面61d,61dも、絶縁紙24の開口端24a,24a付近を内側から外側に向けて徐々に開くように案内する(図11B)。
【0050】
先行ガイド部材61の挿入が完了すると、先行ガイド部材61は、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態でスロット22内に配置される。先行ガイド部材61における他方端部61c側の側面は、絶縁紙24の開口端24a,24aと同一もしくは開口端24a,24aよりもスロット22の外側、すなわちステータコア2の径方向内側(Y2側)に配置される(図11C)。これによって、絶縁紙24の開口端24a,24aは、帯状コイル100の幅W0以上に広がり、帯状コイル100の直線部102が先行ガイド部材61に当接することによって、直線部102を絶縁紙24の内側に円滑に導入することができる。
【0051】
なお、強化ガイド部材62(第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62c)の先端も、先行ガイド部材61の先端と同様の形状に形成されてもよい。
【0052】
先行ガイド部材61及び強化ガイド部材62の全てがスロット22内の絶縁紙24の内側に挿入された直後の状態においては、先行ガイド部材61は、上記のとおり、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態でスロット22内に配置される。一方、強化ガイド部材62の第1強化ガイド部材62a、第2強化ガイド部材62b、第3強化ガイド部材62cは、スロット22内の径方向外側(スロット22の奥側)に積層された状態で配置される。先行ガイド部材61と最も内径側の第1強化ガイド部材62aとの間は、距離Lで離隔している。
【0053】
このようにスロット22内の絶縁紙24の内側に先行ガイド部材61及び強化ガイド部材62が挿入された状態は、絶縁紙24の内側に帯状コイル100の直線部102が挿入された状態に近い。そのため、帯状コイル100の直線部102が挿入される前の絶縁紙24は、帯状コイル100の直線部102が挿入された後の絶縁紙24の状態になり、帯状コイル100の挿入に先立って、絶縁紙24の形状は適正な形状に保持される。しかも、先行ガイド部材61の少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態でスロット22内に配置されているため、帯状コイル100の挿入に先立って、絶縁紙24の開口端24a,24aを開いた状態に保持することができる。これにより、絶縁紙24が、移動する帯状コイル100と接触することが抑制されるため、帯状コイル100を絶縁紙24の内側に円滑に導入することができる。
【0054】
先行ガイド部材61及び強化ガイド部材62の挿入完了後、制御部10は、コイル拡張機構部5を動作させて、図12A中に示す白抜き矢印の方向にコイル押圧部51を拡径させる。これによって、コイル巻取治具4に巻き取られた帯状コイル100のコイルエンド部103が、拡径するコイル押圧部51によって押圧され、ステータコア2の径方向外側に向けて移動する。この移動に伴って、帯状コイル100が次第に拡径し、直線部102がスロット22内の絶縁紙24の内側に向けて徐々に移動する(図12A図13A)。
【0055】
拡径した帯状コイル100は、帯状コイル100の移動方向の前方に配置される先行ガイド部材61に当接し、さらにコイル押圧部51に押圧されることによって、先行ガイド部材61をステータコア2の径方向外側に向けて押圧する。先行ガイド部材61は、帯状コイル100に押されることによって、弾発部材614の付勢力に抗して距離Lを縮めるように、径方向外側に向けて移動する。これによって、帯状コイル100に押された先行ガイド部材61は、強化ガイド部材62の最も内径側に配置される第1強化ガイド部材62aに当接あるいは近接する(図12B図13B)。
【0056】
先行ガイド部材61が帯状コイル100に押圧されると、弾発部材614の付勢力によって、先行ガイド部材61には径方向内側に向けた押し付け力が発生する。そのため、先行ガイド部材61は、帯状コイル100に押されて移動する間、コイル押圧部51に向けて径方向内側に向けて押し付けながら絶縁紙24の内側を移動する。これによって、帯状コイル100は、移動中、常に先行ガイド部材61とコイル押圧部51との間で挟着されるため、帯状コイル100の移動方向前方側のバラケが抑制される。本実施形態において、連結板613及び弾発部材614は、帯状コイル100に対してステータコア2の径方向内側に向けて押し付ける押し付け手段を構成する。
【0057】
先行ガイド部材61が、距離Lを縮めるように移動して最も内径側の第1強化ガイド部材62aに当接あるいは近接すると、制御部10は、第1強化ガイド用アクチュエータ620aを駆動させ、第1強化ガイド部材62aをステータコア2の中心軸方向の外側に向けて移動させる。これによって、第1強化ガイド部材62aは、スロット22内の絶縁紙24の内側から退避する。第1強化ガイド部材62aの退避後の先行ガイド部材61と第2強化ガイド部材62bとの間は、距離Lで離隔する(図12C図13C)。
【0058】
さらに帯状コイル100が拡径するのに伴い、先行ガイド部材61は、帯状コイル100に押されて、第2強化ガイド部材62bとの間の距離Lを縮めるように、径方向外側に向けて移動する。これによって、帯状コイル100に押された先行ガイド部材61は、スロット22内に残存する第2強化ガイド部材62bと第3強化ガイド部材62cとのうちの最も内径側に配置される第2強化ガイド部材62bに当接あるいは近接する(図12D図13D)。
【0059】
先行ガイド部材61が、距離Lを縮めるように移動して第2強化ガイド部材62bに当接あるいは近接すると、制御部10は、第2強化ガイド用アクチュエータ620bを駆動させ、第2強化ガイド部材62bをステータコア2の中心軸方向の外側に向けて移動させる。これによって、第2強化ガイド部材62bは、スロット22内の絶縁紙24の内側から退避する。第2強化ガイド部材62bの退避後の先行ガイド部材61と第3強化ガイド部材62cとの間は、距離Lで離隔する(図12E図13E)。
【0060】
さらに帯状コイル100が拡径するのに伴い、先行ガイド部材61は、帯状コイル100に押されて、第3強化ガイド部材62cとの間の距離Lを縮めるように、径方向外側に向けて移動する。これによって、帯状コイル100に押された先行ガイド部材61は、スロット22内に残存する最も内径側に配置される第3強化ガイド部材62cに当接あるいは近接する(図12F図13F)。
【0061】
先行ガイド部材61が、距離Lを縮めるように移動して第3強化ガイド部材62cに当接あるいは近接すると、制御部10は、第3強化ガイド用アクチュエータ620cを駆動させ、第3強化ガイド部材62cをステータコア2の中心軸方向の外側に向けて移動させる。これによって、第3強化ガイド部材62cは、スロット22内の絶縁紙24の内側から退避する。第3強化ガイド部材62cの退避後の絶縁紙24の内側には、先行ガイド部材61よりも径方向外側に、距離Lに相当する空隙が形成される(図12G図13G)。
【0062】
さらに帯状コイル100が拡径するのに伴い、先行ガイド部材61は、帯状コイル100に押されて、スロット22内に残存する距離Lを縮めるように、径方向外側に向けて移動する。これによって、帯状コイル100に押された先行ガイド部材61は、スロット22内の径方向の最も奥側の壁面22bに当接あるいは近接する(図12H図13H)。
【0063】
先行ガイド部材61が、距離Lを縮めるように移動してスロット22の最も奥側の壁面22bに当接あるいは近接すると、制御部10は、アクチュエータ610を駆動させ、先行ガイド部材61をステータコア2の中心軸方向の外側に向けて移動させる。これによって、先行ガイド部材61は、スロット22内の絶縁紙24の内側から退避する。先行ガイド部材61の退避後の絶縁紙24の内側には、帯状コイル100の直線部102と壁面22bとの間に、距離Lに相当する空隙が形成される(図12I図13I)。
【0064】
さらに帯状コイル100が拡径すると、帯状コイル100は、スロット22内に残存する距離Lを縮めるように、径方向外側に向けて移動する。これによって、帯状コイル100の直線部102が、スロット22内の絶縁紙24の内側に収容される(図12J図13J)。これによって、帯状コイル100がステータコア2のスロット22に装着され、ステータ200が完成する(図14)。
【0065】
以上の実施形態に係るステータ組立装置1及びステータ組立方法によれば、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態に係るステータ組立装置1は、絶縁紙24を装着したステータコア2のスロット22に、ステータコア2の内方から帯状コイル100を挿入してステータ200を組み立てるステータ組立装置である。ステータコア2の中心軸方向に沿って移動可能に設けられ、ステータコア2に向けて移動することにより、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a内に掛かった状態で、帯状コイル100が挿入される前の絶縁紙24の内側に挿入されるとともに、スロット22に向けて移動する帯状コイル100の移動方向前方に配置される先行ガイド部材61を備える。先行ガイド部材61は、長手方向から見て四辺形状をなし、先行ガイド部材61の先端部61aは、ステータコア2の径方向の一方端部側(Y1側)を頂点Pとしてステータコア2の径方向に沿って傾斜するとともに、ステータコア2の径方向に沿う先行ガイド部材61の中心線Oに向けて先細りする形状を有し、頂点Pは、ステータコア2の径方向外側に配置される。これによれば、絶縁紙24の開口端24a,24aが閉じた状態に近い状態まで狭くなっている場合でも、ステータコア2の中心軸方向に沿って絶縁紙24の内側に先行ガイド部材61を円滑に挿入することができる。先行ガイド部材61は、長手方向から見て四辺形状をなし、ステータコア2の径方向の一方端部側(Y1側)を頂点Pとしてステータコア2の径方向に沿って傾斜するとともに、ステータコア2の径方向に沿う中心線に向けて先細りする形状を有し、頂点Pが、ステータコア2の径方向外側に配置される構成を有しており、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態でスロット22内に挿入されるため、先行ガイド部材61を絶縁紙24の内側に挿入するだけで、帯状コイル100の挿入に先立って、絶縁紙24の開口端24a,24aを開口した状態に復帰させることができる。そのため、ステータ200の組立作業性の良いステータ組立装置1を提供することができる。
【0066】
本実施形態において、ステータコア2の周方向に沿う先行ガイド部材61の横幅W12は、ステータコア2の周方向に沿う帯状コイル100の直線部102の幅W0以上である。これによれば、絶縁紙24の開口端24a,24aを、帯状コイル100の直線部102の幅W0よりも広く開口させることができるため、帯状コイル100の挿入性がさらに向上する。
【0067】
本実施形態に係るステータ組立方法は、絶縁紙24を装着したステータコア2のスロット22に、ステータコア2の内方から帯状コイル100を挿入してステータ200を組み立てるステータ組立方法である。帯状コイル100をスロット22内に挿入する前に、ステータコア2の中心軸方向外側から、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態で、スロット22に向けて移動する帯状コイル100の移動方向前方に配置されるように、先行ガイド部材61を絶縁紙24の内側に挿入する工程を備える。先行ガイド部材61は、長手方向から見て四辺形状をなし、先行ガイド部材61の先端部61aは、ステータコア2の径方向の一方端部側(Y1側)を頂点Pとしてステータコア2の径方向に沿って傾斜するとともに、ステータコア2の径方向に沿う先行ガイド部材61の中心線Oに向けて先細りする形状を有し、頂点Pは、ステータコア2の径方向外側に配置される。これによれば、絶縁紙24の開口端24a,24aが閉じた状態に近い状態まで狭くなっている場合でも、ステータコア2の中心軸方向に沿って絶縁紙24の内側に先行ガイド部材61を円滑に挿入することができる。先行ガイド部材61は、長手方向から見て四辺形状をなし、ステータコア2の径方向の一方端部側(Y1側)を頂点Pとしてステータコア2の径方向に沿って傾斜するとともに、ステータコア2の径方向に沿う中心線Oに向けて先細りする形状を有し、頂点Pが、ステータコア2の径方向外側に配置される構成を有しており、少なくとも一部が絶縁紙24の開口端24a,24a内に掛かった状態でスロット22内に挿入されるため、先行ガイド部材61を絶縁紙24の内側に挿入するだけで、帯状コイル100の挿入に先立って、絶縁紙24の開口端24a,24aを開口した状態に復帰させることができる。そのため、ステータ200の組立作業性の良いステータ組立方法を提供することができる。
【0068】
本実施形態において、ステータコア2の周方向に沿う先行ガイド部材61の横幅W12は、ステータコア2の周方向に沿う帯状コイル100の直線部102の幅W0以上である。これによれば、絶縁紙24の開口端24a,24aを、帯状コイル100の直線部102の幅W0よりも広く開口させることができるため、帯状コイル100の挿入性がさらに向上する。
【0069】
以上説明した実施形態のステータ組立装置1は、ステータコア2及びコイル巻取治具4の中心軸方向が水平方向に配置されるように構成されるが、ステータコア2及びコイル巻取治具4の中心軸方向が垂直方向等の水平方向以外の方向に配置されるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 ステータ組立装置
2 ステータコア
22 スロット
24 絶縁紙(絶縁部材)
24a 開口端
61 先行ガイド部材
61a 先端部
100 帯状コイル
200 ステータ
P 頂点
W0 帯状コイルの幅
W12,W22 横幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図12I
図12J
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図13H
図13I
図13J
図14