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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】産生細胞株エンハンサー
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20231109BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20231109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231109BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20231109BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231109BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/56
C12N15/13
C12P21/08
C07K16/18
C07K16/22
C12N15/12
C12N15/85 Z
【請求項の数】 55
(21)【出願番号】P 2021212131
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2019210124の分割
【原出願日】2013-05-29
(65)【公開番号】P2022044609
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】61/652,549
(32)【優先日】2012-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/904,587
(32)【優先日】2013-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン ギャング
(72)【発明者】
【氏名】ブラコフ ダリア
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ ジパーリ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504943(JP,A)
【文献】特表2007-537728(JP,A)
【文献】特表2008-513465(JP,A)
【文献】J. Biol. Chem (2005) Vol.280, No.4, pp.2424-2428
【文献】Metabolic Engineering (2006) Vol.8, pp.264-272
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 1/00-7/08
C07K 1/00-19/00
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成的なプロモーターに機能的に連結されている、小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)をコードする第1のポリヌクレオチド、
抗体重鎖をコードする第2のポリヌクレオチド、および
抗体軽鎖をコードする第3のポリヌクレオチド
を含み、前記重鎖および前記軽鎖を含む抗体を分泌する、単離された細胞。
【請求項2】
前記EDEM2が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項4】
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、およびSEQ ID NO:6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
前記抗体軽鎖が、SEQ ID NO:45のアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
前記抗体重鎖が、SEQ ID NO:43のアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
XBP-1のスプライスされた形態をコードする第4のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
前記XBP-1のスプライスされた形態が、SEQ ID NO:9と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
前記XBP-1のスプライスされた形態が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の細胞。
【請求項10】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項11】
前記細胞が、CHO細胞である、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
前記第1のポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、またはSEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項13】
前記第4のポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載の細胞。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の細胞に由来する、細胞株。
【請求項15】
少なくとも3g/Lの力価で前記抗体重鎖および前記抗体軽鎖を含む抗体を産生する、請求項14に記載の細胞株。
【請求項16】
EDEM2をコードする第1のポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、少なくとも30%大きい積分細胞密度を有する、請求項14に記載の細胞株。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の細胞を培地中で培養する段階を含む、抗体を生成する方法であって、前記抗体重鎖および前記抗体軽鎖を含む抗体が該細胞によって該培地に分泌される、方法。
【請求項18】
前記分泌された抗体が、少なくとも3g/Lの培地中力価に達する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、前記培地中で少なくとも5×107細胞-日/mLの積分細胞密度まで分裂する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記分泌された抗体を前記培地から精製する段階をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、SEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む、抗GDF8抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、SEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含む、抗ANG2抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、SEQ ID NO:36およびSEQ ID NO:38のアミノ酸配列を含む、抗AngPtl4抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
(a)SEQ ID NO:9と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む第1の産生向上タンパク質をコードする核酸配列および該第1の産生向上タンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結している構成的プロモーターを含む第1のポリヌクレオチド、
(b)抗体重鎖をコードする核酸配列を含む第2のポリヌクレオチド、および
(c)抗体軽鎖をコードする核酸配列を含む第3のポリヌクレオチド
を含み、
該重鎖がSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含み、及び/または該軽鎖がSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含み、
該重鎖および該軽鎖を含む抗体を、32 pg/細胞/日より大きい割合で細胞培地中に分泌する、
細胞。
【請求項25】
第1のポリヌクレオチドの構成的プロモーターが、ユビキチンCプロモーター、CMV-IEプロモーターおよびSV40プロモーターからなる群から選択される、請求項24に記載の細胞。
【請求項26】
第1のポリヌクレオチドが、細胞の転写的活性な位置に組み込まれている、請求項24に記載の細胞。
【請求項27】
第1の産生向上タンパク質が、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項24に記載の細胞。
【請求項28】
SEQ ID NO:1と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む第2の産生向上タンパク質をコードする核酸配列を含む第4のポリヌクレオチドをさらに含み、該第2の産生向上タンパク質が小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)である、請求項24に記載の細胞。
【請求項29】
第4のポリヌクレオチドが、第2の産生向上タンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結している構成的プロモーターをさらに含む、請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
第4のポリヌクレオチド中の構成的プロモーターが、ユビキチンCプロモーター、CMV-IEプロモーターおよびSV40プロモーターからなる群から選択される、請求項29に記載の細胞。
【請求項31】
第2の産生向上タンパク質が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の細胞。
【請求項32】
細胞が、抗体を、少なくとも37 pg/細胞/日の割合で細胞培地中に分泌する、請求項28に記載の細胞。
【請求項33】
抗体が、SEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項24に記載の細胞。
【請求項34】
抗体が、SEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項24に記載の細胞。
【請求項35】
抗体が、抗GDF8抗体、抗ANG2抗体、または抗AngPtl4抗体である、請求項33に記載の細胞。
【請求項36】
細胞が、CHO細胞である、請求項24に記載の細胞。
【請求項37】
請求項24~36のいずれか一項に記載の細胞由来のクローン増殖による子孫である複数の細胞を含む、細胞株。
【請求項38】
(a)請求項24に記載の細胞由来のクローン増殖による子孫である複数の細胞を培地中で培養する工程;
(b)細胞に、抗体を、少なくとも32 pg/細胞/日の割合で培地中に分泌させる工程;
(c)培地から抗体を精製する工程、
を含む、抗体を製造する方法。
【請求項39】
第1の産生向上タンパク質が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第1のポリヌクレオチド中の構成的プロモーターが、ユビキチンCプロモーター、CMV-IEプロモーターおよびSV40プロモーターからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
第1のポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:18の核酸配列を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
第1のポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:17の核酸配列を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
工程(a)の前に、
(aa)任意の順序で、
(i)細胞を、第1のポリヌクレオチドでトランスフェクトする工程;および
(ii)細胞を、第2のポリヌクレオチドおよび第3のポリヌクレオチドでトランスフェクトする工程;ならびに
(bb)第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチドおよび第3のポリヌクレオチドを含む細胞をクローン増殖する工程;
をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
細胞が、SEQ ID NO:1と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む第2の産生向上タンパク質をコードする核酸を含む第4のポリヌクレオチドをさらに含み、該第2の産生向上タンパク質が小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)であり、且つ工程(b)で、細胞に、抗体を、37 pg/細胞/日以上の割合で培地中に分泌させる、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
第2の産生向上タンパク質が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第2の産生向上タンパク質をコードする核酸配列が、構成的プロモーターに機能的に連結している、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
構成的プロモーターが、ユビキチンCプロモーター、CMV-IEプロモーターおよびSV40プロモーターからなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第4のポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:16の核酸配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
第4のポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:14またはSEQ ID NO:15の核酸配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
工程(a)の前に、
(aa)任意の順序で、
(i)細胞を、第1のポリヌクレオチドでトランスフェクトする工程;
(ii)細胞を、第2のポリヌクレオチドおよび第3のポリヌクレオチドでトランスフェクトする工程;および
(iii)細胞を、第4のポリヌクレオチドでトランスフェクトする工程;ならびに
(bb)第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、第3のポリヌクレオチド、および第4のポリヌクレオチドを含む細胞をクローン増殖する工程;
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
抗体が、2.1 g/L以上の力価で培地中に蓄積する、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
抗体が、5.3 g/L以上の力価で培地中に蓄積する、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
抗体が、SEQ ID NO:46のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項54】
抗体が、SEQ ID NO:44のアミノ酸配列を有する重鎖を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項55】
抗体が、抗GDF8抗体、抗ANG2抗体、または抗AngPtl4抗体である、請求項53または54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年5月29日に出願された米国仮特許出願第61/652,549号に対する米国特許法第119条(e)の下での恩典を主張するものであり、この出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本発明は、多サブユニットタンパク質の産生を改善するための、組換えストレス応答レクチンを発現する1個の細胞または複数の細胞に関する。具体的には、本発明は、EDEM2をコードする遺伝子を含み、かつ高力価の抗体を産生する哺乳動物細胞、およびそれに由来する細胞株を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
治療的に活性なタンパク質の製造は、分泌に先立って適切なフォールディングとプロセッシングを必要とする。適切なフォールディングは、分泌前に適切に組み立てられる必要がある複数のサブユニットから構成される、抗体などのタンパク質に特に直接的に関連する。真核細胞は、タンパク質の適切なフォールディングと、分泌経路からのミスフォールドしたタンパク質の除去とを確実にするシステムに適応している。このシステムは小胞体ストレス応答(unfolded protein response)(UPR)経路と呼ばれており、それは小胞体(ER)におけるミスフォールドしたタンパク質の蓄積によって誘発される。
【0004】
UPRの初期イベントは転写因子Xbp1の活性化であり、これが次に、小胞体関連分解(ERAD)経路のメンバーである小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)の転写を活性化する。EDEM2はミスフォールドしたタンパク質の除去を容易にする。ERAD経路は5つの段階を含む:(1)変質したタンパク質のシャペロン介在性認識;(2)EDEM2を含む、逆行輸送(retrotranslocation)機構またはE3リガーゼへの変質したタンパク質のターゲティング;(3)逆行輸送の開始;(4)ユビキチン化およびさらなる逆行輸送;ならびに(5)プロテオソームターゲティングおよび分解。
【0005】
抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む多サブユニットタンパク質であり、機能的なヘテロ四量体を形成するためには適切に折りたたまれて結合されねばならない。機能的な抗体ヘテロ四量体の収量または力価を向上させるために、重鎖と軽鎖の効率的かつ正確なプロセッシングの何らかの改善が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
概要
本出願人らは、タンパク質産生細胞株におけるEDEM2の異所性発現が、細胞あたりのタンパク質の平均出力を増加させ、培地に分泌されるタンパク質の力価を増加させ、産生細胞株の積分細胞密度を増加させる、という驚くべき発見をした。
【0007】
したがって、一局面において、本発明は、(a)ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドと、(b)多サブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含有する、細胞を提供する。いくつかの態様では、ストレス誘導性マンノース結合レクチンはEDEM2タンパク質であり、その非限定的な例が表1に提供され、かつ多サブユニットタンパク質は抗体である。他の態様では、該細胞はまた、XBP1のスプライスされた活性形態をコードするポリヌクレオチドを含有し、その非限定的な例が表2に提供される。一態様では、該細胞は、生物製剤の製造に使用されるCHO細胞などの哺乳動物細胞である。
【0008】
別の局面において、本発明は、前述の局面で説明した細胞に由来する細胞株を提供する。「~に由来する」とは、それが意味するものは、個々の細胞からのクローン的な子孫であり、かついくつかの優れた性質、例えば、活性タンパク質を既定の力価で産生する能力、または特定の密度に増殖する能力などを有する、細胞の集団のことである。いくつかの態様では、細胞株は、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドおよび多サブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドを保有する細胞に由来するものであり、多サブユニットタンパク質を培地1リットルあたり少なくとも3グラム(g/L)、少なくとも5g/L、または少なくとも8g/Lの力価で産生することが可能である。いくつかの態様では、細胞株は、本質的に同じ細胞であるものに由来するがストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株によって達成される積分細胞密度よりも、少なくとも30%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも60%大きい、または少なくとも90%大きい積分細胞密度(integrated cell density)(ICD)を達成することができる。
【0009】
別の局面において、本発明は、EDEM2タンパク質をコードする核酸配列を含み、該核酸配列が、ユビキチンCプロモーターなどの普遍的に発現される構成的な哺乳動物プロモーターに(シスで)機能的に連結されている、単離されたまたは組換えポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、EDEM2タンパク質は、SEQ ID NO:8のアミノ酸、またはSEQ ID NO:1~7のいずれかと少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:16の核酸配列を含む。ある特定の態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:14の核酸配列からなり;別の特定の態様では、SEQ ID NO:15の核酸配列からなる。
【0010】
別の局面において、本発明は、XBP1タンパク質をコードする核酸配列を含み、該核酸配列が、ユビキチンCプロモーターなどの普遍的に発現される構成的な哺乳動物プロモーターに(シスで)機能的に連結されている、単離されたまたは組換えポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、XBP1タンパク質は、SEQ ID NO:13のアミノ酸、またはSEQ ID NO:9~12のいずれかと少なくとも86%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:18の核酸配列を含む。ある特定の態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:17の核酸配列からなる。
【0011】
別の局面において、本発明は、前述の局面で説明したような、EDEM2をコードするポリヌクレオチドと、抗体などの多サブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含有する細胞を提供する。いくつかの態様では、細胞はまた、前述の局面で説明したような、XBP1をコードするポリヌクレオチドを含有する。一態様では、多サブユニットタンパク質は抗体であり、抗体の重鎖はSEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含み、抗体の軽鎖はSEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む。このいくつかの態様では、多サブユニットタンパク質の各ポリペプチドサブユニットは、別々のポリヌクレオチドによりコードされる。こうして、例えば、抗体をコードするポリヌクレオチドは、重鎖をコードするポリヌクレオチドと軽鎖をコードするポリヌクレオチド、それゆえに2つのサブユニットを含むことができる。いくつかの態様では、細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0012】
一態様では、コードされる多サブユニットタンパク質は、SEQ ID NO:20の重鎖可変領域アミノ酸配列およびSEQ ID NO:22の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗GDF8抗体である。一態様では、抗GDF8抗体は、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有する重鎖およびSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一態様では、抗GDF8抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:23の核酸配列を含み;抗GDF8抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:25の核酸配列を含む。一態様では、抗GDF8抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:24の核酸配列からなり;抗GDF8抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:25の核酸配列からなる。
【0013】
別の態様では、コードされる多サブユニットタンパク質は、SEQ ID NO:28の重鎖可変領域アミノ酸配列およびSEQ ID NO:30の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗ANG2抗体である。一態様では、抗ANG2抗体は、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を有する重鎖およびSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一態様では、抗ANG2抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:31の核酸配列を含み;抗ANG2抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:33の核酸配列を含む。一態様では、抗ANG2抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:32の核酸配列からなり;抗ANG2抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:34の核酸配列からなる。
【0014】
別の態様では、コードされる多サブユニットタンパク質は、SEQ ID NO:36の重鎖可変領域アミノ酸配列およびSEQ ID NO:38の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗ANGPTL4抗体である。一態様では、抗ANGPTL4抗体は、SEQ ID NO:35のアミノ酸配列を有する重鎖およびSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一態様では、抗ANGPTL4抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:39の核酸配列を含み;抗ANGPTL4抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:41の核酸配列を含む。一態様では、抗ANGPTL4抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:40の核酸配列からなり;抗ANGPTL4抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドはSEQ ID NO:42の核酸配列からなる。
【0015】
別の局面において、本発明は、前述の局面の細胞を培地で培養することによって、多サブユニットタンパク質を製造する方法を提供し、多サブユニットタンパク質は該細胞内で合成され、続いて培地中に分泌される。いくつかの態様では、多サブユニットタンパク質は抗体であり、例えば、抗GDF8、抗ANG2、抗ANGPTL4、またはSEQ ID NO:43および44の重鎖配列とSEQ ID NO:45および46の軽鎖配列を有する抗体である。いくつかの態様では、多サブユニットタンパク質は、少なくとも3g/L、少なくとも5g/L、少なくとも6g/L、または少なくとも8g/Lの力価に達する。いくつかの態様では、細胞は、培地中で増殖し、約≧5×107細胞-日/mL、約≧1×108細胞-日/mL、または約≧1.5×108細胞-日/mLの積分細胞密度を確立する。
【0016】
別の局面において、本発明は、前述の局面で説明した方法に従って製造される、多サブユニットタンパク質を提供する。一態様では、製造されるタンパク質は抗体である。いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む軽鎖からなる。ある特定の態様では、製造される多サブユニットタンパク質は、SEQ ID NO:20の重鎖可変領域アミノ酸配列およびSEQ ID NO:22の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗GDF8抗体である。別の特定の態様では、製造される多サブユニットタンパク質は、SEQ ID NO:28の重鎖可変領域アミノ酸配列およびSEQ ID NO:30の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗ANG2抗体である。さらに別の特定の態様では、製造される多サブユニットタンパク質は、SEQ ID NO:36の重鎖可変領域アミノ酸配列およびSEQ ID NO:38の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する抗ANGPTL4抗体である。
[本発明1001]
ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドと、多サブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む、細胞。
[本発明1002]
前記ストレス誘導性マンノース結合レクチンが小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)である、本発明1001の細胞。
[本発明1003]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、本発明1002の細胞。
[本発明1004]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1002の細胞。
[本発明1005]
前記多サブユニットタンパク質が抗体である、本発明1001~1004のいずれかの細胞。
[本発明1006]
前記抗体が、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む、本発明1005の細胞。
[本発明1007]
EDEM2の上流ではたらく小胞体ストレス応答転写因子をコードするポリヌクレオチドを含む、本発明1001~1006のいずれかの細胞。
[本発明1008]
前記転写因子が、XBP-1のスプライスされた形態である、本発明1007の細胞。
[本発明1009]
前記XBP-1が、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む、本発明1008の細胞。
[本発明1010]
前記XBP-1が、SEQ ID NO:9と少なくとも86%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1008の細胞。
[本発明1011]
哺乳動物細胞である、本発明1001~1010のいずれかの細胞。
[本発明1012]
CHO細胞である、本発明1001~1011のいずれかの細胞。
[本発明1013]
本発明1001~1012のいずれかの細胞に由来する、細胞株。
[本発明1014]
少なくとも3g/Lの力価で前記タンパク質を産生する、本発明1013の細胞株。
[本発明1015]
少なくとも5g/Lの力価で前記タンパク質を産生する、本発明1013または本発明1014の細胞株。
[本発明1016]
少なくとも8g/Lの力価で前記タンパク質を産生する、本発明1013~1015のいずれかの細胞株。
[本発明1017]
前記ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、少なくとも約30%大きい積分細胞密度を有する、本発明1013~1016のいずれかの細胞株。
[本発明1018]
前記ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、少なくとも約50%大きい積分細胞密度を有する、本発明1013~1017のいずれかの細胞株。
[本発明1019]
前記ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、少なくとも約60%大きい積分細胞密度を有する、本発明1013~1018のいずれかの細胞株。
[本発明1020]
前記ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、少なくとも約90%大きい積分細胞密度を有する、本発明1013~1019のいずれかの細胞株。
[本発明1021]
EDEM2をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1022]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、本発明1021の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1023]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列からなる、本発明1021または本発明1022の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1024]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1021~1023のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1025]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列からなる、本発明1021~1024のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1026]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む、本発明1021~1025のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1027]
前記EDEM2が、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列からなる、本発明1021~1026のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1028]
SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、本発明1021~1027のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1029]
SEQ ID NO:14またはSEQ ID NO:15のヌクレオチド配列を含む、本発明1021~1028のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1030]
SEQ ID NO:14またはSEQ ID NO:15のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1021~1029のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1031]
Xbp-1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1032]
前記Xbp-1タンパク質が、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む、本発明1031の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1033]
前記Xbp-1タンパク質が、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列からなる、本発明1031または本発明1032の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1034]
前記Xbp-1タンパク質が、SEQ ID NO:9と少なくとも86%同一であるアミノ酸配列を含む、本発明1031~1033のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1035]
前記Xbp-1タンパク質が、SEQ ID NO:9と少なくとも86%同一であるアミノ酸配列からなる、本発明1031~1034のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1036]
前記Xbp-1タンパク質が、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む、本発明1031~1035のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1037]
前記Xbp-1タンパク質が、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列からなる、本発明1031~1036のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1038]
SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、本発明1031~1037のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1039]
SEQ ID NO:17のヌクレオチド配列を含む、本発明1031~1038のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1040]
SEQ ID NO:17のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1031~1039のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1041]
抗GDF8抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターまたはヒトCMV-IEプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1042]
前記抗GDF8抗体重鎖が、SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む、本発明1041の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1043]
前記抗GDF8抗体重鎖が、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む、本発明1041または本発明1042の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1044]
前記抗GDF8抗体重鎖が、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列からなる、本発明1041~1043のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1045]
SEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、本発明1041~1044のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1046]
SEQ ID NO:24のヌクレオチド配列を含む、本発明1041~1045のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1047]
SEQ ID NO:24のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1041~1046のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1048]
抗GDF8抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターまたはヒトCMV-IEプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1049]
前記抗GDF8抗体軽鎖が、SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む、本発明1048の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1050]
前記抗GDF8抗体軽鎖が、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む、本発明1048または本発明1049の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1051]
前記抗GDF8抗体軽鎖が、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列からなる、本発明1048~1050のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1052]
SEQ ID NO:25のヌクレオチド配列を含む、本発明1048~1051のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1053]
SEQ ID NO:26のヌクレオチド配列を含む、本発明1048~1052のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1054]
SEQ ID NO:26のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1048~1053のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1055]
抗ANG2抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターまたはヒトCMV-IEプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1056]
前記抗ANG2抗体重鎖が、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む、本発明1055の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1057]
前記抗ANG2抗体重鎖が、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含む、本発明1055または本発明1056の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1058]
前記抗ANG2抗体重鎖が、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列からなる、本発明1055~1057のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1059]
SEQ ID NO:31のヌクレオチド配列を含む、本発明1055~1058のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1060]
SEQ ID NO:32のヌクレオチド配列を含む、本発明1055~1059のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1061]
SEQ ID NO:32のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1055~1060のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1062]
抗ANG2抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターまたはヒトCMV-IEプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1063]
前記抗ANG2抗体軽鎖が、SEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含む、本発明1062の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1064]
前記抗ANG2抗体軽鎖が、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含む、本発明1062または本発明1063の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1065]
前記抗ANG2抗体軽鎖が、SEQ ID NO:29のアミノ酸配列からなる、本発明1062~1064のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1066]
SEQ ID NO:33のヌクレオチド配列を含む、本発明1062~1065のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1067]
SEQ ID NO:34のヌクレオチド配列を含む、本発明1062~1066のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1068]
SEQ ID NO:34のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1062~1067のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1069]
抗AngPtl4抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターまたはヒトCMV-IEプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1070]
前記抗AngPtl4抗体重鎖が、SEQ ID NO:36のアミノ酸配列を含む、本発明1069の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1071]
前記抗AngPtl4抗体重鎖が、SEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含む、本発明1069または本発明1070の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1072]
前記抗AngPtl4抗体重鎖が、SEQ ID NO:35のアミノ酸配列からなる、本発明1069~1071のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1073]
SEQ ID NO:39のヌクレオチド配列を含む、本発明1069~1072のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1074]
SEQ ID NO:40のヌクレオチド配列を含む、本発明1069~1073のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1075]
SEQ ID NO:40のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1069~1074のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1076]
抗AngPtl4抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が哺乳動物ユビキチンCプロモーターまたはヒトCMV-IEプロモーターに機能的に連結されている、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1077]
前記抗AngPtl4抗体軽鎖が、SEQ ID NO:38のアミノ酸配列を含む、本発明1076の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1078]
前記抗AngPtl4抗体軽鎖が、SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含む、本発明1076または本発明1077の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1079]
前記抗AngPtl4抗体軽鎖が、SEQ ID NO:37のアミノ酸配列からなる、本発明1076~1078のいずれかの単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1080]
SEQ ID NO:41のヌクレオチド配列を含む、本発明1076~1079のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1081]
SEQ ID NO:42のヌクレオチド配列を含む、本発明1076~1080のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1082]
SEQ ID NO:42のヌクレオチド配列から本質的になる、本発明1076~1081のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1083]
SEQ ID NO:43のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1084]
SEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1085]
SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1086]
SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1087]
SEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1088]
SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1089]
本発明1021~1030のいずれかの単離されたポリヌクレオチドと、(b)多サブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを含む、細胞。
[本発明1090]
前記多サブユニットタンパク質が抗体である、本発明1089の細胞。
[本発明1091]
前記抗体が、本発明1083~1088のいずれかのアミノ酸配列を含む、本発明1090の細胞。
[本発明1092]
前記抗体が、本発明1085および1088のアミノ酸配列を含む、本発明1091の細胞。
[本発明1093]
本発明1031~1040のいずれかのポリヌクレオチドをさらに含む、本発明1089~1092のいずれかの細胞。
[本発明1094]
本発明1041~1047のいずれかのポリヌクレオチドと本発明1048~1054のいずれかのポリヌクレオチドとを含む、本発明1089~1093のいずれかの細胞。
[本発明1095]
本発明1055~1061のいずれかのポリヌクレオチドと本発明1062~1068のいずれかのポリヌクレオチドとを含む、本発明1089~1093のいずれかの細胞。
[本発明1096]
本発明1069~1075のいずれかのポリヌクレオチドと本発明1076~1082のいずれかのポリヌクレオチドとを含む、本発明1089~1093のいずれかの細胞。
[本発明1097]
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、本発明1089~1096のいずれかの細胞。
[本発明1098]
本発明1089~1097のいずれかの細胞を培地中で培養する段階を含む、多サブユニットタンパク質を生成する方法であって、該多サブユニットタンパク質が該細胞によって該培地に分泌される、方法。
[本発明1099]
分泌された前記多サブユニットタンパク質が、少なくとも約3g/Lの培地中力価に達する、本発明1098の方法。
[本発明1100]
前記分泌された多サブユニットタンパク質が、少なくとも約5g/Lの培地中力価に達する、本発明1098または本発明1099の方法。
[本発明1101]
前記分泌された多サブユニットタンパク質が、少なくとも約6g/Lの培地中力価に達する、本発明1089~1091のいずれかの方法。
[本発明1102]
前記分泌された多サブユニットタンパク質が、少なくとも約8g/Lの培地中力価に達する、本発明1089~1092のいずれかの方法。
[本発明1103]
前記細胞が、前記培地中で少なくとも約5×107細胞-日/mLの積分細胞密度まで分裂する、本発明1089~1093のいずれかの方法。
[本発明1104]
前記細胞が、前記培地中で分裂して、少なくとも約1×108細胞-日/mLの積分細胞密度をもたらす、本発明1089~1094のいずれかの方法。
[本発明1105]
前記細胞が、前記培地中で分裂して、少なくとも約1.5×108細胞-日/mLの積分細胞密度をもたらす、本発明1089~1095のいずれかの方法。
[本発明1106]
前記分泌された多サブユニットタンパク質を前記培地から精製する段階をさらに含む、本発明1089~1096のいずれかの方法。
[本発明1107]
本発明1098~1106のいずれかの方法により産生された、多サブユニットタンパク質。
[本発明1108]
抗体である、本発明1107の多サブユニットタンパク質。
[本発明1109]
前記抗体が、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む、本発明1108の多サブユニットタンパク質。
[本発明1110]
前記抗体が抗GDF8抗体である、本発明1109の多サブユニットタンパク質。
[本発明1111]
前記抗体が、SEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む、本発明1110の多サブユニットタンパク質。
[本発明1112]
前記抗体が抗ANG2抗体である、本発明1109の多サブユニットタンパク質。
[本発明1113]
前記抗体が、SEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含む、本発明1112の多サブユニットタンパク質。
[本発明1114]
前記抗体が抗AngPtl4抗体である、本発明1109の多サブユニットタンパク質。
[本発明1115]
前記抗体が、SEQ ID NO:36およびSEQ ID NO:38のアミノ酸配列を含む、本発明1114の多サブユニットタンパク質。
[本発明1116]
SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1117]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:18の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1118]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1119]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:23の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:25の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1120]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:31の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:33の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1121]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:39の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:41の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1122]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:18の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1123]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:18の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:23の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:25の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1124]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:18の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:31の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:33の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1125]
(a)SEQ ID NO:16の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:18の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:39の核酸配列を含むポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:41の核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1126]
SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1127]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:17の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1128]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1129]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:24の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:26の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1130]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:32の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:4の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1131]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:40の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:42の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1132]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:17の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1133]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:17の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:24の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:26の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1134]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:17の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:32の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:34の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
[本発明1135]
(a)SEQ ID NO:14または15の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(b)SEQ ID NO:17の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(c)SEQ ID NO:40の核酸配列からなるポリヌクレオチドと、(d)SEQ ID NO:42の核酸配列からなるポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボ哺乳動物細胞。
【発明を実施するための形態】
【0017】
説明
本発明を説明する前に、本発明は記載された特定の方法および実験条件に限定されるものではなく、このような方法および条件は変わることがあることを理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明する目的のためであり、限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解すべきである。
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される「約」という用語は、記載された特定の数値または数値の範囲に関して使用される場合、記載された値とその値が1%ほどしか異ならないことがあることを意味する。例えば、本明細書で使用される「約100」という表現は、99および101、ならびにその間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を包含する。
【0019】
本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料はどれも本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料が以下に記載される。本明細書で言及したすべての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」と交換可能に使用される「組換えポリヌクレオチド」という用語は、遺伝子工学的操作によって生じる、一本鎖または二本鎖のいずれかのリボ核酸またはデオキシリボ核酸などの核酸ポリマーを意味する。組換えポリヌクレオチドは、インビトロで存在するかまたは細胞内でエピソームとして存在する、環状プラスミドまたは線状構築物であり得る。組換えポリヌクレオチドは、線状または環状染色体などの、より大きなポリヌクレオチド分子内または超分子構造内に組み込まれた構築物であり得る。より大きなポリヌクレオチド分子または超分子構造は細胞内にあってもまたは細胞の核内にあってもよい。したがって、組換えポリヌクレオチドは細胞の染色体内に組み込まれてもよい。
【0021】
本明細書で使用される「ストレス誘導性マンノース結合レクチン」という用語は、マンノース結合タンパク質を指し、これは、マンノース、マンノース-6-リン酸などのマンノースの誘導体、または、グリコカリックス中にマンノースもしくはマンノース誘導体を発現する糖タンパク質を結合させるかまたは結合させることが可能であり、かつ、その活性がストレスの間に上方制御される、タンパク質を意味する。細胞ストレスには、とりわけ、飢餓、DNA損傷、低酸素症、中毒、せん断応力および他の機械的ストレス、腫瘍ストレス、ならびに小胞体におけるミスフォールドしたタンパク質の蓄積が含まれる。例示的なストレス誘導性マンノース結合レクチンとしては、EDEMタンパク質EDEM1、EDEM2およびEDEM3、Yos 9、OS9、ならびにXTP3-Bが挙げられる(Vembar and Brodsky, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 9(12): 944-957, 2008およびそこに引用された文献を参照されたい)。
【0022】
本明細書で使用される「EDEM2」という用語は、小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質の任意のオルソログ、相同体、または保存的に置換された変異体を意味する。EDEM2タンパク質は、小胞体関連分解(ERAD)に関与することが当技術分野で一般に知られており、Xbp-1により上方制御されて、除去のためにカルネキシンサイクルからのミスフォールドした糖タンパク質の抽出を容易にする。(Mast et al., Glycobiology 15(4): 421-436, 2004; Olivari and Molinari, FEBS Lett. 581: 3658-3664, 2007; Olivari et al., J. Biol. Chem. 280(4): 2424-2428, 2005; およびVembar and Brodsky 2008を参照されたい;これらは参照により本明細書に組み入れられる。)例示的なEDEM2配列は、配列表と相互参照される表1に示される。
【0023】
(表1)
【0024】
本明細書で使用される「Xbp1」という用語は、XBP1またはXボックス結合タンパク質1の別名でも知られており、Xbp1の任意のオルソログ、相同体、または保存的に置換された変異体を意味する。Xbp1はUPRの転写因子および機能的エレメントである。ERストレスは、(1)後でXbp1 mRNAの転写を上方制御する転写因子ATF6と、(2)活性Xbp1を生成するために前駆体Xbp1 mRNAのスプライシングを媒介するER膜タンパク質IRE1との両方を活性化する。上述したように、活性化されたXbp1は次にEDEM2の活性を上方制御する。(Yoshida et al., Cell Structure and Function 31(2): 117-125, 2006; およびOlivari, 2005を参照されたい。)例示的なXbp1アミノ酸配列は、配列表と相互参照される表2に示される。
【0025】
(表2)
【0026】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、一般に、4本のポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合により相互接続された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えばIgM)を指すことが意図されるが;しかしながら、重鎖のみからなる(すなわち、軽鎖を欠いている)免疫グロブリン分子もまた、「抗体」という用語の定義内に包含される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL1)を含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が介在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRと4つのFRから構成されており、アミノ末端からカルボキシ末端へ次の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「単離された抗体」または「精製された抗体」は、他の細胞物質または化学物質を実質的に含んでいない。
【0027】
「特異的に結合させる」という用語または同様の用語は、生理学的条件下で比較的安定している、抗原との複合体を、抗体またはその抗原結合断片が形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6Mまたはそれ以上の解離定数を特徴とすることができる。2つの分子が特異的に結合させるか否かを判定するための方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが含まれる。しかし、ヒトGDF8(例として)を特異的に結合させる、単離された抗体は、他の種由来のGDF8分子(オルソログ)などの他の抗原に対する交差反応性を有していてもよい。
【0028】
種々の抗体は、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードするポリヌクレオチドを保有する細胞によって分泌される、多サブユニットタンパク質の例として使用される。これらの例として、抗GDF8、抗ANG2、および抗ANGPTL4抗体が挙げられる。これらおよび同様の抗体は、それぞれ米国特許出願第20110293630号、同第20110027286号、および同第20110159015号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0029】
本明細書で使用される「細胞」という用語は、DNAを複製すること、RNAを転写すること、ポリペプチドを翻訳すること、およびタンパク質を分泌することが可能な原核または真核細胞を指す。細胞には、生物学的産物の商業生産に用いられる動物細胞が含まれ、例えば、昆虫細胞(例えば、Schneider細胞、Sf9細胞、Sf21細胞、Tn-368細胞、BTI-TN-5B1-4細胞;Jarvis, Methods Enzymol. 463: 191-222, 2009; およびPotter et al., Int. Rev. Immunol. 10(2-3): 103-112, 1993参照)、および哺乳動物細胞(例えば、CHOまたはCHO-K1細胞、COSまたはCOS-7細胞、HEK293細胞、PC12細胞、HeLa細胞、ハイブリドーマ細胞;Trill et al., Curr. Opin. Biotechnol. 6(5): 553-560, 1995; Kipriyanov and Little, Mo. Biotechnol. 12(2): 173-201, 1999)である。一態様では、細胞は、記載したUPR経路のポリヌクレオチドを含有するCHO-K1細胞である。CHO-K1細胞については、Kao et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 60: 1275-1281, 1968をも参照されたい。
【0030】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、タンパク質コード配列の上流に位置しかつタンパク質コード配列の転写を容易にする、一般的にはシスでの遺伝子配列を意味する。プロモーターは調節可能であっても(発生、組織特異的、もしくは誘導性(化学物質、温度))または構成的に活性であってもよい。特定の態様では、タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、構成的プロモーターに機能的に連結されている。「機能的に連結」とは、それが意味することは、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、プロモーターの3'側(下流)にシスでかつプロモーターの制御下に配置されることである。特定の態様では、プロモーターは構成的哺乳動物プロモーターであり、例えば、ユビキチンCプロモーター(Schorpp et al., Nucl. Acids Res. 24(9): 1787-1788, 1996; Byun et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 332(2): 518-523, 2005参照)、またはCMV-IEプロモーター(Addison et al., J. Gen. Virol. 78(7): 1653-1661, 1997; Hunninghake et al., J. Virol. 63(7): 3026-3033, 1989)、またはhCMV-IEプロモーター(ヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター)(Stinski and Roehr, J. Virol. 55(2): 431-441, 1985; Hunninghake et al., J. Virol. 63(7): 3026-3033, 1989参照)である。
【0031】
本明細書で使用される「積分細胞密度」または「ICD」という語句は、細胞-日/mLとして表される、ある期間にわたって積分としてとられた培地中の細胞の密度を意味する。いくつかの態様では、ICDは培養中の細胞の12日目ごろに測定される。
【0032】
本明細書で使用される「培養物/培養(culture)」という用語は、(1)細胞、培地、および分泌された多サブユニットタンパク質を含む、組成物と、(2)細胞が活発に分裂しているかどうかに関係なく細胞を培地中でインキュベートする行為との両方を意味する。細胞は、25mLフラスコもしくはそれより小さい容器で、または10,000リットルまたは10,000リットル超の商業的バイオリアクターほどに大きい容器で培養することができる。「培地」は、細胞の成長、増殖、または維持を可能にし、かつ細胞による多サブユニットタンパク質の産生を可能にするための、とりわけ、栄養素、脂質、アミノ酸、核酸、緩衝剤、および微量元素を含む培養培地を指す。細胞培養培地には、血清を含まないおよび加水分解物を含まない規定培地、ならびに血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS))またはタンパク質加水分解物を添加した培地が含まれる。商業的に入手することができる培地の非限定的な例としては、RPMI培地1640、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM/F12混合物、F10栄養混合物、HamのF12栄養混合物、および最小必須培地(MEM)が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドに適用される際の「保存的に置換された変異体」という語句は、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)をもつ別のアミノ酸残基で置換されることである。一般的に、保存的アミノ酸置換はタンパク質の機能特性を実質的に変化させないと考えられる。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換で互いに異なる場合には、類似性のパーセントまたは程度は、置換の保存的性質を補正するために上方に調整され得る。この調整を行うための手段は当業者に周知である。例えば、Pearson (1994) Methods Mol. Biol. 24: 307-331を参照されたく;これは参照により本明細書に組み入れられる。類似の化学的特性を有する側鎖をもつアミノ酸のグループの例には、以下が含まれる:(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、およびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに(7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニン。好ましい保存的アミノ酸置換グループは、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、参照により本明細書に組み入れられるGonnet et al. (1992) Science 256: 1443-45に開示された、PAM250対数尤度行列(log-likelihood matrix)において正の値を有するいずれかの変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列において負でない値を有するいずれかの変化である。
【0034】
態様 - 細胞
一局面において、本発明は、治療的有用性または研究有用性があるタンパク質の生成に有用な細胞を提供する。いくつかの態様では、該タンパク質は複数のサブユニットからなり、これらのサブユニットは、十分な量の活性タンパク質を生成するために正しく折りたたまれ、かつ組み立てられる必要がある。抗体は、治療的有用性または研究有用性がある多サブユニットタンパク質の一例である。いくつかの態様では、細胞は、多サブユニットタンパク質の個々のサブユニットの1つまたはそれ以上をコードする組換え遺伝子構築物(すなわち、ポリヌクレオチド)を保有する。他の態様では、個々のポリペプチドサブユニットをコードする遺伝子構築物は、天然に存在しており、例えば、B細胞中の抗体のサブユニットをコードする核酸配列などである。
【0035】
多サブユニットタンパク質の適切な組み立ておよび分泌を容易にするために、細胞は、いくつかの態様ではERADの構成要素である、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、ストレス誘導性マンノース結合レクチンは、小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)である。コードされたEDEM2またはその保存的に置換された変異体はどれも、本発明において成功裏に使用され得ることが想定される。表1は、脊椎動物EDEM2タンパク質のいくつかの例を示す。これらのタンパク質配列の多重ペアワイズ比較は、Thompson et al., Nucl. Acids Rev. 22(22): 4673-80, 1994に記載のClustal Wプログラムを用いて行ったところ(Yuan et al., Bioinformatics 15(10): 862-3, 1999も参照)、開示されたEDEM2ポリヌクレオチド配列の各々が他のそれぞれのEDEM2配列と少なくとも69%同一であることを明らかにした。開示された哺乳動物EDEM2配列のClustal W比較は、各配列が他の配列と少なくとも92%同一であることを明らかにした。したがって、いくつかの態様では、細胞は、哺乳動物EDEM2のいずれかと少なくとも92%同一である配列を有するEDEM2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。コンセンサスEDEM2アミノ酸配列は、マウス、ラット、ハムスター、チンパンジー、およびヒトEDEM2ポリペプチドのアミノ酸配列をアライメントすることによって構築された。そのコンセンサス配列はSEQ ID NO:8として示される。かくして、いくつかの態様では、細胞は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有するEDEM2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。
【0036】
さまざまな態様において、細胞は、マウスEDEM2(mEDEM2)アミノ酸配列と少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を有するEDEM2ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを含んでおり;特定の態様では、該ポリペプチドはmEDEM2またはその保存的に置換された変異体である。
【0037】
いくつかの態様では、多サブユニットタンパク質は抗体であり、細胞はSEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含むポリペプチドのいずれか1つまたはそれ以上をコードするポリヌクレオチドを含んでいる。SEQ ID NO:43および44はそれぞれ、特定の抗体重鎖のおおよそN末端部分およびC末端部分それぞれのコンセンサス配列を表す。こうして、一態様では、タンパク質サブユニットをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44の両方を含むポリペプチドをコードする。SEQ ID NO:45および46はそれぞれ、特定の抗体軽鎖のおおよそN末端部分およびC末端部分それぞれのコンセンサス配列を表す。こうして、一態様では、タンパク質サブユニットをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46の両方を含むポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、EDEM2タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドに加えて、細胞は、それぞれが多サブユニットタンパク質の特定のサブユニットをコードする、少なくとも2つのポリヌクレオチドを含んでいる。例えば、以下で例示するように、細胞は、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖をコードする別のポリヌクレオチドとを含有する。
【0038】
いくつかの態様では、細胞は、上記のように、ストレス応答ポリヌクレオチドおよびポリペプチドサブユニットをコードする1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含むことに加えて、EDEM2の上流ではたらく小胞体ストレス応答転写因子をコードするポリヌクレオチドをも含有する。この上流の転写因子は、場合によってはXBP1のスプライスされた形態である。コードされたXBP1はどれも、本発明において成功裏に使用され得ると想定される。表2は、脊椎動物XBP1のスプライスされた形態のポリペプチドの配列のいくつかの例を示す。これらのポリペプチド配列の多重ペアワイズ比較は、Clustal W(Thompson 1994; Yuan 1999)を用いて行ったところ、開示されたスプライス型XBP1ポリヌクレオチド配列の各々が他のそれぞれのXBP1配列と少なくとも48%同一であることを明らかにした。開示された哺乳動物XBP1配列のClustal W比較は、各配列が他の配列と少なくとも86%同一であることを明らかにした。こうして、いくつかの態様では、細胞は、哺乳動物スプライス型XBP1のいずれかと少なくとも86%同一である配列を有するXBP1ポリペプチドのスプライスされた形態をコードするポリヌクレオチドを含有する。コンセンサスXBP1アミノ酸配列は、マウス、ハムスター、およびヒトXBP1のアミノ酸配列をアライメントすることによって構築された。そのコンセンサス配列はSEQ ID NO:13として示される。かくして、いくつかの態様では、細胞は、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を有するXBP1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。
【0039】
さまざまな態様において、細胞は、マウスXBP1(mXBP1)アミノ酸配列(SEQ ID NO:9)と少なくとも86%同一であるアミノ酸配列を有するXBP1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでおり;特定の態様では、該ポリペプチドはmXBP1またはその保存的に置換された変異体である。
【0040】
本発明は、適切に折りたたまれた活性多サブユニットタンパク質の産生のための、レクチンをコードするポリペプチドを保有させるために、任意の細胞が使用され得ることを想定している。このような細胞には、以下のような周知のタンパク質産生細胞が含まれる:大腸菌(Escherichia coli)および同様の原核細胞、酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)と他のピキアおよび非ピキア酵母、植物細胞外植片、例えばタバコ属(Nicotiana)のもの、昆虫細胞、例えばSchneider 2細胞、Sf9およびSf21、キンウワバ(Trichoplusia ni)由来のHigh Five細胞、ならびにバイオ生産に一般的に用いられる哺乳動物細胞、例えばCHO、CHO-K1、COS、HeLa、HEK293、Jurkat、およびPC12細胞。いくつかの態様では、細胞はCHO-K1または改変されたCHO-K1細胞、例えば、米国特許第7,435,553号、同第7,514,545号、および同第7,771,997号、ならびに米国特許出願公開第US 2010-0304436 A1号に教示されるものであり、それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
いくつかの特定の態様では、本発明は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:43および44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)SEQ ID NO:45および46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボCHO-K1細胞を提供する。
【0042】
ある特定の態様では、本発明は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)SEQ ID NO:25のヌクレオチド配列を含む、抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボCHO-K1細胞を提供する。
【0043】
別の特定の態様では、本発明は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:31のヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)SEQ ID NO:33のヌクレオチド配列を含む、抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボCHO-K1細胞を提供する。
【0044】
さらに別の特定の態様では、本発明は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:39のヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)SEQ ID NO:41のヌクレオチド配列を含む、抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドとを含有する、エクスビボCHO-K1細胞を提供する。
【0045】
細胞株
別の局面において、本発明は、上記の細胞由来のクローン増殖による子孫である複数の細胞を含む、細胞株を提供する。この細胞株の構成細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%は、いくつかの態様ではERADの構成要素である、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、ストレス誘導性マンノース結合レクチンは、小胞体分解促進性αマンノシダーゼ様タンパク質2(EDEM2)である。コードされたEDEM2またはその保存的に置換された変異体はどれも、本発明において成功裏に使用され得ることが想定される。表1は、前のセクションで述べたように、脊椎動物EDEM2タンパク質のいくつかの例を示す。いくつかの態様では、構成細胞は、任意の哺乳動物EDEM2と少なくとも92%同一である配列を有するEDEM2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、構成細胞は、SEQ ID NO:8の哺乳動物コンセンサスアミノ酸配列を有するEDEM2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、構成細胞は、SEQ ID NO:1の組換えポリヌクレオチドまたはその保存的に置換された変異体を含んでいる。
【0046】
いくつかの態様では、前記細胞株により産生される多サブユニットタンパク質は抗体であり、該細胞株の構成細胞は、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44(特定の抗体重鎖のN末端部分およびC末端部分それぞれのコンセンサス配列を表す)、ならびにSEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46(特定の抗体軽鎖のN末端部分およびC末端部分それぞれのコンセンサス配列を表す)のアミノ酸配列を含むポリペプチドのいずれか1つまたはそれ以上をコードするポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、EDEM2タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドに加えて、該細胞株の構成細胞は、それぞれが多サブユニットタンパク質の特定のサブユニットをコードする、少なくとも2つのポリヌクレオチドを含有する。例えば、構成細胞は、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含む抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、SEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖をコードする別のポリヌクレオチドとを含有する。
【0047】
いくつかの態様では、構成細胞は、上記のように、ストレス応答ポリヌクレオチドおよびポリペプチドサブユニットをコードする1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含むことに加えて、XBP1のスプライスされた形態などの、EDEM2の上流ではたらく小胞体ストレス応答転写因子をコードするポリヌクレオチドをも含有する。コードされたXBP1はどれも、本発明において成功裏に使用され得ると想定される。表2は、前のセクションで述べたように、脊椎動物XBP1のスプライスされた形態のポリペプチドの配列のいくつかの例を示す。これらの配列のClustal W解析は、開示されたスプライス型XBP1ポリヌクレオチド配列の各々が他のそれぞれのXBP1配列と少なくとも48%同一であることを明らかにした。哺乳動物XBP1配列の比較は、各配列が他の配列と少なくとも86%同一であることを明らかにした。こうして、いくつかの態様では、細胞株の構成細胞は、哺乳動物スプライス型XBP1のいずれかと少なくとも86%同一である配列を有する、XBP1ポリペプチドのスプライスされた形態をコードするポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、構成細胞は、SEQ ID NO:13のコンセンサスアミノ酸配列を有するXBP1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。
【0048】
さまざまな態様において、前記細胞は、マウスXBP1(mXBP1)アミノ酸配列(SEQ ID NO:9)と少なくとも86%同一であるアミノ酸配列を有するXBP1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでおり;特定の態様では、該ポリペプチドはSEQ ID NO:9のmXBP1またはその保存的に置換された変異体である。
【0049】
本発明は、細胞株を構成する細胞の親が、以下のような周知のタンパク質産生細胞のリストから選択されることを想定している:大腸菌および同様の原核細胞、酵母ピキア・パストリスと他のピキアおよび非ピキア酵母、植物細胞外植片、例えばタバコ属のもの、昆虫細胞、例えばSchneider 2細胞、Sf9およびSf21、キンウワバ由来のHigh Five細胞、ならびにバイオ生産に一般的に用いられる哺乳動物細胞、例えばCHO、CHO-K1、COS、HeLa、HEK293、Jurkat、およびPC12細胞。いくつかの態様では、該細胞はCHO-K1または改変されたCHO-K1細胞、例えば、米国特許第7,435,553号、同第7,514,545号、および同第7,771,997号、ならびに米国特許出願公開第US 2010-0304436 A1号に教示されるものである。
【0050】
いくつかの態様では、培地で培養される前記細胞株は、多サブユニットタンパク質を産生すること、および適切に組み立てられた多サブユニットタンパク質を少なくとも3g/L、少なくとも5g/L、または少なくとも8g/Lの力価で培地中に分泌することが可能である。
【0051】
さらに、前記細胞株の構成細胞は、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、約30%大きい積分細胞密度を達成するような程度に、培養中に増殖することが可能である。場合によっては、該細胞株は、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードする組換えポリヌクレオチドを含まない細胞株の積分細胞密度と比べて、少なくとも約50%大きいか、少なくとも60%大きいか、または少なくとも90%大きい積分細胞密度を達成することができる。いくつかの態様では、細胞株の積分細胞密度は培養の約12日後に評価される。
【0052】
いくつかの特定の態様において、本発明は、クローンに由来する構成細胞を含む細胞株を提供し、該構成細胞は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:43および44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)抗体軽鎖をコードしSEQ ID NO:45および46のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドとを含有する、CHO-K1細胞である。
【0053】
ある特定の態様では、本発明は、クローンに由来する構成細胞を含む細胞株を提供し、該構成細胞は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:23のヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)抗体軽鎖をコードしSEQ ID NO:25のヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドとを含有する、CHO-K1細胞である。
【0054】
別の特定の態様では、本発明は、クローンに由来する構成細胞を含む細胞株を提供し、該構成細胞は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:31のヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)抗体軽鎖をコードしSEQ ID NO:33のヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドとを含有する、CHO-K1細胞である。
【0055】
さらに別の特定の態様では、本発明は、クローンに由来する構成細胞を含む細胞株を提供し、該構成細胞は、(1)SEQ ID NO:16のヌクレオチド配列を含む、mEDEM2をコードするポリヌクレオチドと、(2)SEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を含む、XBP1をコードするポリヌクレオチドと、(3)SEQ ID NO:39のヌクレオチド配列を含む、抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドと、(4)抗体軽鎖をコードしSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドとを含有する、CHO-K1細胞である。
【0056】
EDEM2ポリヌクレオチド
別の局面において、本発明は、EDEM2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。EDEM2をコードするポリヌクレオチドは組換え型であり、インビトロで、例えば試験管内もしくはインビトロ翻訳系において、またはインビボで、例えば細胞培養のようなエクスビボもしくは生物のようなインビボであり得る細胞内において、製造、貯蔵、使用、または発現され得る。いくつかの態様では、EDEM2をコードするポリヌクレオチドは遺伝子内にあり、すなわち、それはプロモーターの制御下にあり、プロモーターの下流に、かつポリアデニル化部位の上流にある。EDEM2をコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子は、プラスミドまたは他の環状もしくは線状ベクター内にあり得る。EDEM2をコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子は、エピソームとして細胞内にあってもよいか、または細胞ゲノムに組み込まれてもよい、環状または線状DNA構築物内にあり得る。
【0057】
上述したように、EDEM2をコードするポリヌクレオチドは、表1の任意のオルソログ、相同体もしくは保存的に置換されたEDEM2ポリペプチド、またはSEQ ID NO:8の哺乳動物コンセンサス配列を含めて、SEQ ID NO:1~5および8のいずれかと少なくとも92%同一であるアミノ酸配列を有するEDEM2ポリペプチドをコードしている。
【0058】
場合によっては、EDEM2をコードする組換えまたは単離されたポリヌクレオチドは、哺乳動物プロモーターに機能的に連結されている。プロモーターは任意のプロモーターとすることができるが、場合によっては、それは、例えばユビキチンCプロモーターなどの哺乳動物プロモーターである。
【0059】
特定の態様では、EDEM2をコードするポリヌクレオチドは、5'から3'へ、プロモーター、例えばユビキチンCプロモーター、続いて任意のイントロン、例えばβグロビンイントロン、続いてEDEM2コード配列、その後ポリアデニル化配列、例えばSV40pA配列から本質的になる。このようなEDEM2をコードするポリヌクレオチドの具体例は、これもまた特定の態様であるが、SEQ ID NO:16により記載される。その配列の保存された変異体も本発明の態様であると考えられる。
【0060】
場合によっては、EDEM2をコードする組換えポリヌクレオチドは、プラスミドの一部であり、該プラスミドは線状、環状、エピソーム、組込み型、静止DNA構築物、またはEDEM2遺伝子を送達するもしくはEDEM2タンパク質を発現するためのベクターであり得る。ある特定の態様では、プラスミドは、(1)ユビキチンCプロモーターの制御下にありかつSV40ポリアデニル化シグナルで終止するEDEM2遺伝子と、(2)SV40プロモーターなどのプロモーターの制御下にあり、PGK pA配列などのポリアデニル化配列で終止する選択マーカー、例えばゼオシンに対する耐性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはネオマイシンに対する耐性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する。ある特定の態様では、プラスミドは、5'から3'の方向へ向かう環状フォーマットで、ユビキチンCプロモーター、βグロビンイントロン、EDEM2コード配列、SV40 pA配列、SV40プロモーター、ネオマイシン耐性コード配列、およびPGK pA配列を含んでいる。この態様の具体例は、SEQ ID NO:14の配列を有するプラスミドにより例示される。別の特定の態様では、プラスミドは、5'から3'の方向へ向かう環状フォーマットで、ユビキチンCプロモーター、βグロビンイントロン、EDEM2コード配列、SV40 pA配列、SV40プロモーター、ゼオシン耐性コード配列、およびPGK pA配列を含んでいる。この態様の具体例は、SEQ ID NO:15の配列を有するプラスミドにより例示される。
【0061】
XBP1ポリヌクレオチド
別の局面において、本発明は、XBP1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。XBP1をコードするポリヌクレオチドは組換え型であり、インビトロで、例えば試験管内もしくはインビトロ翻訳系において、またはインビボで、例えば細胞培養のようなエクスビボもしくは生物のようなインビボであり得る細胞内において、製造、貯蔵、使用、または発現され得る。いくつかの態様では、XBP1をコードするポリヌクレオチドは遺伝子内にあり、すなわち、それはプロモーターの制御下にあり、プロモーターの下流で、かつポリアデニル化部位の上流にある。XBP1をコードするポリヌクレオチドは、プラスミドまたは他の環状もしくは線状ベクター内にあり得る。XBP1をコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子は、エピソームとして細胞内にあってもよいか、または細胞ゲノムに組み込まれてもよい、環状または線状DNA構築物内にあり得る。
【0062】
上述したように、XBP1をコードするポリヌクレオチドは、表2の任意のオルソログ、相同体もしくは保存的に置換されたXBP1ポリペプチド、またはSEQ ID NO:13の哺乳動物コンセンサス配列を含めて、SEQ ID NO:9、10および11のいずれかと少なくとも86%同一であるアミノ酸配列を有するXBP1ポリペプチドをコードしている。
【0063】
場合によっては、XBP1をコードする組換えまたは単離されたポリヌクレオチドは、哺乳動物プロモーターに機能的に連結されている。プロモーターは任意のプロモーターとすることができるが、場合によっては、それは、例えばユビキチンCプロモーターなどの哺乳動物プロモーターである。
【0064】
特定の態様では、XBP1をコードするポリヌクレオチドは、5'から3'へ、プロモーター、例えばユビキチンCプロモーター、続いて任意のイントロン、例えばβグロビンイントロン、続いてXBP1コード配列、その後ポリアデニル化配列、例えばSV40 pA配列から本質的になる。SEQ ID NO:18は、XBP1をコードするポリヌクレオチドの例を記載する。この例示的な配列の保存された変異体も本発明の態様であると考えられる。
【0065】
場合によっては、XBP1をコードする組換えポリヌクレオチドは、プラスミドの一部であり、該プラスミドは線状、環状、エピソーム、組込み型、静止DNA構築物、またはXBP1遺伝子を送達するもしくはスプライスされた活性XBP1タンパク質を発現するためのベクターであり得る。ある特定の態様では、プラスミドは、(1)ユビキチンCプロモーターの制御下にありかつSV40ポリアデニル化シグナルで終止するXBP1遺伝子と、(2)SV40プロモーターなどのプロモーターの制御下にあり、PGK pA配列などのポリアデニル化配列で終止する選択マーカー、例えばゼオシンに対する耐性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはネオマイシンに対する耐性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する。ある特定の態様では、プラスミドは、5'から3'の方向へ向かう環状フォーマットで、ユビキチンCプロモーター、βグロビンイントロン、XBP1コード配列、SV40 pA配列、SV40プロモーター、ゼオシン耐性コード配列、およびPGK pA配列を含んでいる。この態様の具体例は、SEQ ID NO:17の配列を有する環状プラスミドにより例示される。
【0066】
抗体の重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド
別の局面において、本発明は、抗体重鎖ポリペプチド(HC)をコードするポリヌクレオチドを提供する。HCをコードするポリヌクレオチドは組換え型であり、インビトロで、例えば試験管内もしくはインビトロ翻訳系において、またはインビボで、例えば細胞培養のようなエクスビボもしくは生物のようなインビボであり得る細胞内において、製造、貯蔵、使用、または発現され得る。いくつかの態様では、HCをコードするポリヌクレオチドは遺伝子内にあり、すなわち、それはプロモーターの制御下にあり、プロモーターの下流で、かつポリアデニル化部位の上流にある。HCをコードするポリヌクレオチドは、プラスミドまたは他の環状もしくは線状ベクター内にあり得る。HCをコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子は、エピソームとして細胞内にあってもよいか、または細胞ゲノムに組み込まれてもよい、環状または線状DNA構築物内にあり得る。
【0067】
場合によっては、HCをコードする組換えまたは単離されたポリヌクレオチドは、哺乳動物プロモーターに機能的に連結されている。プロモーターは任意のプロモーターとすることができるが、場合によって、それは、例えばユビキチンCプロモーターまたはhCMV-IEプロモーターなどの哺乳動物プロモーターである。
【0068】
特定の態様では、HCをコードするポリヌクレオチドはHC遺伝子であり、該遺伝子は、5'から3'へ、プロモーター、例えばhCMV-IEプロモーター、続いて任意のイントロン、例えばβグロビンイントロン、続いて重鎖コード配列、例えばSEQ ID NO:43および44、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:27、またはSEQ ID NO:35のアミノ酸配列をコードする配列、その後ポリアデニル化配列、例えばSV40 pA配列を本質的に含んでいる。HC遺伝子の具体例は、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:31、またはSEQ ID NO:39により記載される。これらの配列のいずれかの保存された変異体も本発明の態様であると考えられる。
【0069】
場合によっては、HCをコードする組換えポリヌクレオチドは、プラスミドの一部であり、該プラスミドは線状、環状、エピソーム、組込み型、静止DNA構築物、または重鎖遺伝子を送達するもしくは重鎖サブユニットを発現するためのベクターであり得る。ある特定の態様では、プラスミドは、(1)hCMV-IEプロモーターの制御下にありかつSV40ポリアデニル化シグナルで終止するHC遺伝子と、(2)SV40プロモーターなどのプロモーターの制御下にあり、PGK pA配列などのポリアデニル化配列で終止する選択マーカー、例えば、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する。ある特定の態様では、プラスミドは、5'から3'の方向へ向かう環状フォーマットで、hCMV-IEプロモーター、βグロビンイントロン、抗体重鎖コード配列(SEQ ID NO:43および44、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:27、またはSEQ ID NO:35のアミノ酸配列を有するHCをコードする)、SV40 pA配列、SV40プロモーター、ハイグロマイシン耐性コード配列、およびPGK pA配列を含んでいる。このようなHC遺伝子を含むプラスミドの具体例および特定の態様は、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:32、またはSEQ ID NO:40により記載される。これらの配列のいずれかの保存された変異体も本発明の態様であると考えられる。
【0070】
別の局面において、本発明は、抗体軽鎖ポリペプチド(LC)をコードするポリヌクレオチドを提供する。LCをコードするポリヌクレオチドは組換え型であり、インビトロで、例えば試験管内もしくはインビトロ翻訳系において、またはインビボで、例えば細胞培養のようなエクスビボもしくは生物のようなインビボであり得る細胞内において、製造、貯蔵、使用、または発現され得る。いくつかの態様では、LCをコードするポリヌクレオチドは遺伝子内にあり、すなわち、それはプロモーターの制御下にあり、プロモーターの下流で、かつポリアデニル化部位の上流にある。LCをコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子は、プラスミドまたは他の環状もしくは線状ベクター内にあり得る。LCをコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子は、エピソームとして細胞内にあってもよいか、または細胞ゲノムに組み込まれてもよい、環状または線状DNA構築物内にあり得る。
【0071】
場合によっては、LCをコードする組換えまたは単離されたポリヌクレオチドは、哺乳動物プロモーターに機能的に連結されている。プロモーターは任意のプロモーターとすることができるが、場合によって、それは、例えばユビキチンCプロモーターまたはhCMV-IEプロモーターなどの哺乳動物プロモーターである。
【0072】
特定の態様では、LCをコードするポリヌクレオチドはLC遺伝子であり、該遺伝子は、5'から3'へ、プロモーター、例えばhCMV-IEプロモーター、続いて任意のイントロン、例えばβグロビンイントロン、続いて軽鎖コード配列、例えばSEQ ID NO:45および46、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:29、またはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列をコードする配列、その後にポリアデニル化配列、例えばSV40 pA配列を本質的に含んでいる。このようなLC遺伝子の具体例および特定の態様は、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:33、またはSEQ ID NO:41により記載される。これらの配列のいずれかの保存された変異体も本発明の態様であると考えられる。
【0073】
場合によっては、LCをコードする組換えポリヌクレオチドは、プラスミドの一部であり、該プラスミドは線状、環状、エピソーム、組込み型、静止DNA構築物、または軽鎖遺伝子を送達するもしくは軽鎖サブユニットを発現するためのベクターであり得る。ある特定の態様では、プラスミドは、(1)hCMV-IEプロモーターの制御下にありかつSV40ポリアデニル化シグナルで終止するLC遺伝子と、(2)SV40プロモーターなどのプロモーターの制御下にあり、PGK pA配列などのポリアデニル化配列で終止する選択マーカー、例えばハイグロマイシンに対する耐性を付与するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含有する。ある特定の態様では、プラスミドは、5'から3'の方向へ向かう環状フォーマットで、hCMV-IEプロモーター、βグロビンイントロン、抗体軽鎖コード配列(SEQ ID NO:45および46、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:29、またはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を有するLCをコードする)、SV40 pA配列、SV40プロモーター、ハイグロマイシン耐性コード配列、およびPGK pA配列を含んでいる。このようなLC遺伝子を含むプラスミドの具体例および特定の態様は、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:34、またはSEQ ID NO:42により記載される。これらの配列のいずれかの保存された変異体も本発明の態様であると考えられる。
【0074】
多サブユニットタンパク質を製造する方法
別の局面において、本発明は、適切に組み立てられた多サブユニットタンパク質を比較的多量に産生して分泌することができる細胞、または細胞株の構成細胞を、培地中で培養することによって、多サブユニットタンパク質を製造するための方法を提供し、この方法では、多サブユニット成分が比較的高い力価で培地中に分泌される。この製造方法で用いられる細胞は、本明細書に記載のERADレクチンをコードするポリヌクレオチドを含有する、前述の局面で説明した細胞である。
【0075】
有用な組換えタンパク質を産生する目的で、細胞、特に哺乳動物細胞を培養する方法は、当技術分野で周知である(例えば、De Jesus and Wurm, Eur. J. Pharm. Biopharm. 78:184-188, 2011、およびそこに引用された文献を参照されたい)。簡単に述べると、記載されたポリヌクレオチドを含む細胞は、培地中で培養されるが、該培地は、血清もしくは加水分解物を含んでいてもよいか、または、化学的に規定されてタンパク質産生用に最適化されたものでもよい。培養は、流加培養、または、ケモスタットにおけるような連続培養であり得る。細胞は、実験室ベンチサイズのフラスコ(約25mL)、生産スケールアップのバイオリアクター(1~5L)、または工業規模のバイオリアクター(5,000~25,000L)内で培養することができる。生産ランは数週間から1ヶ月間続けることができ、その期間中多サブユニットタンパク質は培地中に分泌される。
【0076】
対象となる細胞は、適切に組み立てられた多サブユニットタンパク質を産生して分泌する能力が向上している。いくつかの態様では、多サブユニットタンパク質、例えば抗体は、培地中に、少なくとも94ρg/細胞/日、少なくとも37ρg/細胞/日、または少なくとも39ρg/細胞/日の割合で分泌される。いくつかの態様では、多サブユニットタンパク質は、培養の約12日後に少なくとも3g/L、少なくとも5g/L、少なくとも6g/L、または少なくとも8g/Lの力価に達する。
【0077】
さらに、対象となる細胞は、増殖して比較的高い細胞密度を達成する能力に優れており、生産性をさらに最適化する。いくつかの態様では、細胞または細胞株シードトレイン(seed train)は、少なくとも5×107細胞-日/mL、少なくとも1×108細胞-日/mL、または少なくとも1.5×108細胞-日/mLの培養中積分細胞密度を達成する。
【0078】
任意で、分泌された多サブユニットタンパク質は、その後、それが分泌された培地から精製される。タンパク質の精製方法は当技術分野で周知である(例えば、Kelley, mAbs 1(5):443-452を参照されたい)。いくつかの態様では、該タンパク質は、液体培地上清から細胞を取り除くための遠心分離、その後の、とりわけウイルスおよび他の汚染物または不純物を除去するための種々のクロマトグラフィー工程およびろ過工程によって回収される。いくつかの態様では、クロマトグラフィー工程は、陽イオン交換または陰イオン交換などのイオン交換工程を含む。各種のアフィニティークロマトグラフ媒体を用いることもでき、例えば、抗体精製用のプロテインAクロマトグラフィーなどがある。
【0079】
任意で、前記製造方法は、細胞を作製するための先行段階を含むことができる。かくして、いくつかの態様では、多サブユニットタンパク質を製造する方法は、上述したように、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードするベクターで細胞をトランスフェクトし、続いてそれらの安定した組込み体を選択する段階を含む。ベクターの非限定的な例には、SEQ ID NO:1~8のいずれかのアミノ酸配列、SEQ ID NO:1~8のいずれかと少なくとも92%同一であるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1~8の保存的に置換された変異体のいずれか、を有するEDEM2をコードするポリヌクレオチドを含有する遺伝子構築物が含まれる。有用なベクターにはまた、例えば、SEQ ID NO:16の遺伝子を保有するプラスミド、SEQ ID NO:15のプラスミド、およびSEQ ID NO:14のプラスミドが含まれる。プラスミドの配列(例えば、SEQ ID NO:14、15、17、24、26、32、34、40、および42)は、配列表では直線的に記載されている環状の配列であることに留意すべきである。したがって、これらの場合では、記載された配列の最も3'側のヌクレオチドは、記載された配列の最も5'側のヌクレオチドのすぐ5'側にあると考えることができる。SEQ ID NO:14のプラスミドの例では、形質転換体はネオマイシンに対する耐性を介して選択され;SEQ ID NO:15では、ゼオシン耐性を介した選択による。
【0080】
ポリヌクレオチドおよびそれを含むベクターの構築のための詳細な方法は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,435,553号および同第7,771,997号、ならびに、例えば、Zwarthoff et al., J. Gen. Virol. 66(4):685-91, 1985; Mory et al., DNA. 5(3):181-93, 1986; およびPichler et al., Biotechnol. Bioeng. 108(2):386-94, 2011に記載されている。
【0081】
ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードするベクターが配置される出発細胞は、多サブユニットタンパク質のサブユニット、またはXBP1を用いる態様ではXBP1、をコードするかまたはその発現を調節する構築物または遺伝要素をすでに含んでいてよい。あるいは、ストレス誘導性マンノース結合レクチンをコードするベクターを最初に細胞の内部に入れて、その後で他の構築物を入れてもよい。
【0082】
前記方法により製造された多サブユニットタンパク質
別の局面において、本発明は、本明細書に開示された方法に従って生成される多サブユニットタンパク質を提供する。抗体などの多サブユニットタンパク質の適切なフォールディング、組み立て、および翻訳後修飾を容易にする1つまたはそれ以上の要素を含めるならば、当業者は当然、そうしたタンパク質が特有の構造的および機能的品質を有することを期待するであろう。例えば、開示された方法により製造される抗体は、当然、特定のグリコシル化パターンおよび量的に高い割合の非凝集ヘテロ四量体を有すると考えられる。
【実施例
【0083】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をいかにして作製し使用するかの完全な開示と説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明と見なしているものの範囲を限定するものではない。用いる数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、若干の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。特に明記しない限り、部はモル部であり、分子量は平均分子量であり、パーセント濃度(%)は、ミリリットル単位の溶液の体積で割ったグラム単位の溶質の質量の100倍%を意味し(例えば、10%物質Xは、溶液のミリリットルあたり0.1グラムの物質Xを意味する)、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【0084】
実施例1:細胞株
CHO-K1由来の宿主細胞株を、ヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする2つのプラスミドでトランスフェクトした。両方のプラスミドには、ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するhph遺伝子が含まれている(Asselbergs and Pronk, 1992, Mol. Biol. Rep., 17(1):61-70)。細胞はリポフェクタミン試薬(Invitrogen社カタログ#18324020)を用いてトランスフェクトした。簡単に述べると、トランスフェクションの1日前に、350万個の細胞を、10cmプレート上で10%ウシ胎児血清(FBS)(Invitrogen社カタログ#10100)を含有する完全F12(Invitrogen社カタログ#11765)中にまいた。トランスフェクション当日、細胞を1回洗浄し、培地を(Invitrogen社カタログ#31985)からのOPTIMEMと交換した。DNA/リポフェクタミン複合体をOPTIMEM培地中で調製し、その後細胞に加えた。6時間後、培地を、10%FBSを含む完全F12に再び交換した。プラスミドの安定な組込みは、400μg/mlのハイグロマイシンB選択剤を用いて選択した。クローン性抗体を発現する細胞株はFASTR技術(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,919,183号に記載される)を用いて単離した。
【0085】
次に、抗体を発現する株を、EDEM2をコードするプラスミドで再トランスフェクトした。EDEM2プラスミドは、G418またはゼオシンに対する耐性を付与するために、それぞれネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(「p3」と指定されたプラスミド構築物)またはsh ble遺伝子(プラスミド「p7」)のいずれかを含んでいた。同じトランスフェクション法を用いた。選択マーカーに応じて、細胞は、それぞれ400μg/mlまたは250μg/mlのG418またはゼオシンのいずれかを用いて選択した。その後、クローン細胞株はFASTR技術を用いて単離した。
【0086】
(表3)細胞株
【0087】
実施例2:
抗体産生は、振とうフラスコを用いるスケールダウンした12日間の流加プロセスにおいて評価した。この方法では、細胞を、産生培地(高アミノ酸を含む規定培地)中80万個/mLの細胞密度で振とうフラスコに播種した。この培養物を約12日間維持し、グルコースならびに供給物を3回補充した。生細胞密度および抗体価はバッチを通してモニターされた。
【0088】
タンパク質の産生向上に及ぼすmEDEM2の効果を判定するために、mEDEM2とmXBP1を含むCHO細胞株によるタンパク質の産生を、mXBP1を含むがmEDEM2を含まない対照細胞による産生と比較した。タンパク質力価は、mEDEM2を発現しない細胞株と比べて、mEDEM2を発現する細胞株において高かった。
【0089】
(表4)力価
【0090】
実施例3:積分細胞日数
積分細胞日数(integrated Cell Days)(ICD)は、流加プロセスを通して培養物の増殖を記載するために用いられる語句である。12日間の産生アッセイ法の過程で、我々は0、3、5、7、10、および12日目に生細胞密度をモニターした。次にこのデータを時間に対してプロットした。ICDは、細胞密度の曲線下面積として算出された、生細胞密度の積分である。EDEM2トランスフェクト株は、12日間の流加プロセスにおいてより高いICDを有する(表5参照)。
【0091】
(表5)積分細胞密度
【0092】
実施例4:抗GDF8抗体の産生
SEQ ID NO:19の重鎖配列とSEQ ID NO:21の軽鎖配列を有する抗GDF8抗体の産生に及ぼすEDEM2、XBP1、またはこれらの両方の異所性発現の効果を調べた。個々の細胞株を力価および積分細胞密度について調べて、「ビン」または値域(ranges of values)に入れた。EDEM2の異所性発現は、5~6g/Lの力価範囲の抗体を発現する細胞株の数を著しく増加させた。XBP1とEDEM2の組み合わせは、高力価細胞株の増加に向けて相加効果を上回る効果を示した。抗体分泌細胞におけるEDEM2の発現はまた、高いICDを達成する細胞株の数を著しく増加させた(表6参照)。
【0093】
(表6)
【配列表】
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