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特許7382388金属パイプの成形方法、金属パイプ、及び成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】金属パイプの成形方法、金属パイプ、及び成形システム
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/033 20110101AFI20231109BHJP
   B21D 26/035 20110101ALI20231109BHJP
【FI】
B21D26/033
B21D26/035
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021503485
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004985
(87)【国際公開番号】W WO2020179360
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019039830
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】井手 章博
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168259(WO,A1)
【文献】特開2006-122979(JP,A)
【文献】特開2016-064702(JP,A)
【文献】特開2013-158785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033 - 26/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状を呈する金属パイプ材料を、一対の型の間に配置する工程と、
流体の供給により前記金属パイプ材料を膨張させ、前記金属パイプ材料を前記一対の型に接触させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する工程と、
を備え、
前記金属パイプを成形する前記工程では、前記フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、前記パイプ部の内部空間に連通する隙間が形成された第1の領域を形成し、
前記フランジ部の前記第1の領域には、前記隙間につながる貫通孔が設けられ
前記金属パイプを成形する前記工程では、前記パイプ部の軸方向に沿って間欠的に配置される複数の前記第1の領域を形成し、
前記軸方向に沿って隣り合う前記第1の領域の間では、前記一対の内面が前記フランジ部の先端に至るまで密着する第2の領域が形成される、金属パイプの成形方法。
【請求項2】
前記フランジ部には、複数の前記第1の領域のそれぞれに対して前記貫通孔が設けられる、請求項1に記載の金属パイプの成形方法。
【請求項3】
中空形状を呈する金属パイプ材料を、一対の型の間に配置する工程と、
流体の供給により前記金属パイプ材料を膨張させ、前記金属パイプ材料を前記一対の型に接触させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する工程と、
を備え、
前記金属パイプを成形する前記工程では、前記フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、前記パイプ部の内部空間に連通する隙間を形成し、
前記フランジ部には、前記隙間につながる貫通孔が設けられ、
前記隙間は、前記パイプ部の軸方向に沿って連続的に設けられており、
前記一対の内面の一部が密着することで突出部が形成され、
前記貫通孔は、前記軸方向と直交する方向において、前記突出部を挟んで前記パイプ部の反対側に位置する、金属パイプの成形方法。
【請求項4】
中空形状を呈する金属パイプ材料を、一対の型の間に配置し、流体の供給により前記金属パイプ材料を膨張させ、前記金属パイプ材料を前記一対の型に接触させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形部と、
前記金属パイプに貫通孔を設ける加工部と、を備え、
前記成形部は、前記フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、前記パイプ部の内部空間に連通する隙間が形成された第1の領域を形成し、
前記加工部は、前記フランジ部の前記第1の領域に、前記隙間につながる貫通孔を設け
前記成形部は、
前記パイプ部の軸方向に沿って間欠的に配置される複数の前記第1の領域を形成し、
前記軸方向に沿って隣り合う前記第1の領域の間では、前記一対の内面が前記フランジ部の先端に至るまで密着する第2の領域を形成する、
金属パイプの成形システム。
【請求項5】
中空形状を呈する金属パイプ材料を、一対の型の間に配置し、流体の供給により前記金属パイプ材料を膨張させ、前記金属パイプ材料を前記一対の型に接触させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形部と、
前記金属パイプに貫通孔を設ける加工部と、を備え、
前記成形部は、前記フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、前記パイプ部の内部空間に連通する隙間を形成し、
前記加工部は、前記フランジ部に、前記隙間につながる貫通孔を設け、
前記成形部は、前記隙間を、前記パイプ部の軸方向に沿って連続的に設け、前記一対の内面の一部を密着させることで突出部を形成し、
前記加工部は、前記貫通孔を、前記軸方向と直交する方向において、前記突出部を挟んで前記パイプ部の反対側に位置させる、
金属パイプの成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属パイプの成形方法、金属パイプ、及び成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱した金属パイプ材料内に気体を供給して膨張させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプの成形を行う成形装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、互いに対になる上下金型と、上下金型の間に保持された金属パイプ材料内に気体を供給する気体供給部と、当該金属パイプ材料を加熱する加熱機構と、上下金型が合わさることによって形成されるキャビティ部とを備える成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるような成形装置を用いて成形された金属パイプは、継ぎ目のない中空形状を呈する。このような金属パイプ内に水等の液体が浸入した場合、当該液体は金属パイプから排出されにくい。このため、液体が溜まった金属パイプには錆が生じることがある。したがって、上述したような金属パイプに対する錆対策が求められている。
【0005】
本開示は、錆の発生を抑制可能な金属パイプの成形方法、金属パイプ、及び成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る金属パイプの成形方法は、中空形状を呈する金属パイプ材料を一対の型の間に配置する工程と、流体の供給により金属パイプ材料を膨張させ、金属パイプ材料を一対の型に接触させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する工程と、を備える。金属パイプを成形する工程では、フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、パイプ部の内部空間に連通する隙間を形成し、フランジ部には、隙間につながる貫通孔が設けられる。
【0007】
この金属パイプの成形方法によれば、金属パイプを成形する工程では、フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、パイプ部の内部空間に連通する隙間を形成する。そしてフランジ部には、当該隙間につながる貫通孔が設けられる。これにより、例えばパイプ部の内部空間に水等の液体が浸入した場合であっても、隙間及び貫通孔を介して当該液体を容易に排出できる。これにより、金属パイプの内部に液体が溜まりにくくなるので、金属パイプの錆の発生を抑制できる。
【0008】
金属パイプを成形する工程では、一対の内面の間に位置すると共に、パイプ部の軸方向に沿って間欠的に配置される複数の隙間を形成し、軸方向に沿って隣り合う隙間の間では、一対の内面が密着してもよい。この場合、一対の内面において互いに密着した部分と、他の部材とをスポット溶接できる。加えて、フランジ部の内部に複数の隙間が形成されることによって、パイプ部の内部空間に液体がより溜まりにくくなる。このため、金属パイプの本体部であるパイプ部の強度劣化の発生を抑制できる。
【0009】
フランジ部には、複数の隙間のそれぞれに対して貫通孔が設けられてもよい。この場合、金属パイプの内部に液体が溜まることを良好に抑制できる。
【0010】
隙間は、パイプ部の軸方向に沿って連続的に設けられており、一対の内面の一部が密着してもよい。この場合、互いに密着した一対の内面の一部と、他の部材とをスポット溶接できる。また、フランジ部に形成される貫通孔の数を低減した場合であっても、隙間及び貫通孔を介して液体を良好に排出できる。
【0011】
本開示の他の一側面に係る金属パイプは、中空形状を呈するパイプ部と、パイプ部に一体化するフランジ部とを備える。フランジ部は、一対の内面と、貫通孔とを有し、一対の内面の間には、パイプ部の内部空間に連通する隙間が位置しており、貫通孔は、隙間につながっている。
【0012】
この金属パイプでは、フランジ部が有する一対の内面の間には、パイプ部の内部空間に連通する隙間が位置している。また、貫通孔は、隙間につながっている。これにより、例えばパイプ部の内部空間に水等の液体が浸入した場合であっても、隙間及び貫通孔を介して当該液体を容易に排出できる。これにより、金属パイプの内部に液体が溜まりにくくなるので、金属パイプの錆の発生を抑制できる。
【0013】
本開示の一側面に係る成形システムは、中空形状を呈する金属パイプ材料を、一対の型の間に配置し、流体の供給により金属パイプ材料を膨張させ、金属パイプ材料を一対の型に接触させることによって、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形部と、金属パイプに貫通孔を設ける加工部と、を備え、成形部は、フランジ部に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、パイプ部の内部空間に連通する隙間を形成し、加工部は、フランジ部に、隙間につながる貫通孔を設ける。
【0014】
この成形システムによれば、上述の成形方法と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一側面によれば、錆の発生を抑制可能な金属パイプの成形方法、金属パイプ、及び成形システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、金属パイプを示す概略図である。
図2図2(a)は、図1のα-α線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1のβ-β線に沿った断面図であり、図2(c)は、図1のγ-γ線に沿った断面図である。
図3図3は、実施形態に係る成形装置の概略断面図である。
図4図4(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図であり、図4(b)は電極に気体供給ノズルが当接した状態を示す図であり、図4(c)は電極の正面図である。
図5図5(a),(b)は、成形金型の概略断面図である。
図6図6(a)~(c)は、成形金型の動作と金属パイプ材料の形状の変化を示す図である。
図7図7は、成形金型の動作と金属パイプ材料の形状の変化を示す図である。
図8図8は、変形例に係る金属パイプを示す概略斜視図である。
図9図9(a)は、図8の要部拡大斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のδ-δ線に沿った断面図であり、図9(c)は、フランジ部における液体の流れを示す模式図である。
図10】成形システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一側面に係る金属パイプ、その成形方法、及び成形システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る金属パイプを示す概略斜視図である。図2(a)は、図1のα-α線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1のβ-β線に沿った断面図であり、図2(c)は、図1のγ-γ線に沿った断面図である。図1及び図2(a)~(c)に示される金属パイプ1は、例えば自動車等の車両に装着される補強部材、車両の骨材等に用いられる中空部材であり、その軸方向に沿って延在する長尺部材である。本実施形態に係る金属パイプ1は、一本の金属パイプ材料から構成される。すなわち、金属パイプ1は、複数の板金を溶接することによって構成されるものではなく、1枚の板金への加工(例えば、ロールフォーミング等)によって構成されるものでもない。このため、金属パイプ1の断面には合口(ジョイント)が存在しない。なお、上記金属パイプ材料は、例えば、高張力鋼もしくは超高張力鋼から構成される筒状部材である。高張力鋼は、400MPa以上の引張強度を示す鋼材である。超高張力鋼は、1GPa以上の引張強度を示す鋼材である。また、金属パイプ1の厚さは、特に限定されないが、例えば1.0mm以上2.3mm以下である。なお、以下では図1等に示されるように、金属パイプ1の軸方向を長手方向Xとし、長手方向Xに直交する方向を短手方向Yとする。
【0019】
金属パイプ1は、パイプ部100と、フランジ部101,102とを備える。パイプ部100は、中空形状を呈する本体部であり、例えば断面略四角形状を呈している。パイプ部100の内周面100aによって、内部空間S1が画成されている。本実施形態では、パイプ部100の内周面100a及び外周面100bのそれぞれは、平面形状を呈しているが、これに限られない。耐圧強度の向上等の観点から、パイプ部100には凹凸等が適宜設けられてもよい。
【0020】
フランジ部101は、短手方向Yに沿ってパイプ部100から突出する突出部である。フランジ部101は、長手方向Xに沿って設けられている。本実施形態では、長手方向Xにおけるフランジ部101の寸法は、長手方向Xにおけるパイプ部100の寸法と略同一である。フランジ部101は、パイプ部100から突出した部分が折りたたまれることによって形成される。このため、フランジ部101とパイプ部100とは、互いに継ぎ目なく一体化している。溶接等の観点から、フランジ部101の突出量は、例えば1mm以上100mm以下である。フランジ部101の先端は丸まっているが、これに限られない。
【0021】
フランジ部102は、短手方向Yに沿ってパイプ部100から突出する突出部であり、短手方向Yにおいてパイプ部100を介してフランジ部101の反対側に設けられる。フランジ部102は、フランジ部101と同様に、長手方向Xに沿って設けられている。フランジ部102もまた、パイプ部100から突出した部分が折りたたまれることによって形成される。このため、フランジ部102とパイプ部100とは、互いに継ぎ目なく一体化している。溶接等の観点から、フランジ部102の突出量は、例えば1mm以上100mm以下である。フランジ部102の先端は丸まっているが、これに限られない。
【0022】
図2(a)~(c)に示されるように、フランジ部101が有する一対の内面101a,101bは、全体的に隙間なく密着している。また、図2(a)に示されるように、フランジ部102が有する一対の内面102a,102bの一部同士は隙間なく密着している。一対の内面102a,102b同士が密着した箇所は、例えば金属パイプ1と他の部材とのスポット溶接部として機能する。本実施形態では、図1に示される領域R1にて一対の内面102a,102bは、互いに密着している。
【0023】
図2(b),(c)に示されるように、一対の内面102a,102bの他部同士は離間している。すなわち、フランジ部102の一対の内面102a,102bの間には、フランジ部101と異なり、パイプ部100の内部空間S1に連通する隙間S2が位置している。本実施形態では、領域R2にて一対の内面102a,102bは互いに離間している。
【0024】
領域R1,R2は、長手方向Xにおいて互いに交互に設けられる。このため、金属パイプ1には複数の隙間S2が形成されており、複数の隙間S2は、長手方向Xに沿って間欠的に配置される。長手方向Xにおける金属パイプ1の寸法のうち、長手方向Xにおける領域R1の寸法の割合は、例えば90%以下である。長手方向Xにおける金属パイプ1の寸法のうち、長手方向Xにおける領域R2の寸法の割合は、例えば10%以上50%以下である。
【0025】
図2(c)に示されるように、フランジ部102は、貫通孔110を有する。貫通孔110は、隙間S2につながるように設けられる開口である。これにより、例えば内部空間S1に水が浸入した場合、貫通孔110を介して当該水を金属パイプ1の外部へ排出できる。また、例えば金属パイプ1を塗液内に浸漬させるとき、貫通孔110が空気の逃げ穴となる。これにより、パイプ部100の内周面100a等を良好に塗装できる。加えて、内周面100a等における当該塗液の溜まりの発生も抑制できる。貫通孔110は、領域R2における任意の箇所に設けられる。貫通孔110は、複数の領域R2のそれぞれに設けられてもよいし、複数の領域R2の少なくとも何れかに設けられてもよい。貫通孔110は、一つの領域R2内に複数設けられてもよい。フランジ部102に複数の貫通孔110が設けられる場合、貫通孔110の間隔は、長手方向Xにおいて一定でもよい。
【0026】
本実施形態では、貫通孔110はフランジ部102の先端に設けられるが、これに限られない。貫通孔110は、フランジ部102において最も下方に位置する箇所(すなわち、最も液体が溜まりやすい箇所)に設けられればよい。このため、例えば金属パイプ1においてフランジ部102が最も下方に位置する場合、貫通孔110は、フランジ部102において最も突出した部分に設けられてもよい。また、貫通孔110に液体が到達しやすいように、フランジ部102の形状が調整されてもよい。例えば、フランジ部102の内面102a,102b等に折曲加工等が施されてもよいし、内面102a,102b等に勾配が設けられてもよい。
【0027】
次に、図3図7を参照しながら本実施形態に係る金属パイプ1の成形方法を説明する。まず、図3図5を参照しながら、金属パイプ1を成形するための成形装置について説明する。
【0028】
<成形装置の構成>
図3は、成形装置の概略構成図である。図3に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、互いに対となる上型(型)12及び下型(型)11を有する成形金型(成形部)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内にガス(気体)を供給するための気体供給ユニット60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14の内部に気体供給ユニット60からの気体を供給するための一対の気体供給部40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給ユニット60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備える。なお以下では、金属パイプは、成形装置10にて成形完了後の中空物品を指し、金属パイプ材料14は、成形装置10にて成形完了前の中空物品を指す。
【0029】
成形金型13は、金属パイプ材料14を金属パイプに成形するために用いられる型である。このため、成形金型13に含まれる下型11及び上型12のそれぞれには、金属パイプ材料14が収容されるキャビティ(凹部)が設けられる(詳細は後述する)。
【0030】
下型11は、大きな基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面にキャビティ16を備える。下型11には冷却水通路19が形成されている。また、下型11は、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。熱電対21は、スプリング22により上下移動自在に支持されている。熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いてもよい。
【0031】
下型11の左右端(図3における左右端)近傍には、電極収納スペース11aが設けられている。電極収納スペース11a内には、上下に進退動可能に構成された電極(下側電極)17,18が設けられる。下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0032】
下側電極17,18の上面には、金属パイプ材料14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されている(図4(c)を参照)。このため、下型11側に位置する一対の下側電極17,18は、パイプ保持機構30の一部を構成しており、金属パイプ材料14を上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。下側電極17,18にて支持される金属パイプ材料14は、例えば凹溝17a,18aにて嵌め込まれ載置される。下側電極17,18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。なお、絶縁材91には、上記凹溝17a,18aに連通すると共に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。
【0033】
上型12は、下型11と同様に大きな鋼鉄製ブロックによって構成されており、駆動機構80を構成するスライド81(詳細は後述)に固定されている。上型12の下面にはキャビティ24が形成されている。キャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられている。上型12の内部には、冷却水通路25が設けられている。
【0034】
上型12の左右端(図3における左右端)近傍には、下型11と同様な電極収納スペース12aが設けられている。電極収納スペース12a内には、下型11と同じく、上下に進退動可能に構成された電極(上側電極)17,18が設けられる。上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材92がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材92は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80側に保持されている。
【0035】
上側電極17,18の下面には、金属パイプ材料14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されている(図4(c)を参照)。このため、上側電極17,18は、パイプ保持機構30の他の一部を構成している。上下一対の電極17,18で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、金属パイプ材料14の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができる。上側電極17,18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。なお、絶縁材92には、上記凹溝17a,18aに連通すると共に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。
【0036】
図5(a),(b)は、成形金型13の概略断面図である。成形金型13において図5(a)に示される部分は、図2(a)に示される金属パイプ1の断面を形成する部分に相当する。成形金型13において図5(b)に示される部分は、図2(b),(c)に示される金属パイプ1の断面を形成する部分に相当する。図5(a),(b)に示されるように、下型11の上面及び上型12の下面には、いずれも段差が設けられている。
【0037】
下型11の上面には、下型11の中央のキャビティ16表面を基準ラインLV2とすると、第1突起11b、第2突起11c、第3突起11d、第4突起11eによる段差が形成されている。キャビティ16の右側(図5(a),(b)において右側、図3において紙面奥側)に第1突起11b及び第2突起11cが形成され、キャビティ16の左側(図5(a),(b)において左側、図3において紙面手前側)に第3突起11d及び第4突起11eが形成されている。第2突起11cは、キャビティ16と第1突起11bとの間に位置している。第3突起11dは、キャビティ16と第4突起11eとの間に位置している。第2突起11c及び第3突起11dのそれぞれは、第1突起11b及び第4突起11eよりも上型12側に突出している。第1突起11b及び第4突起11eにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一であり、第2突起11c及び第3突起11dにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一である。
【0038】
図5(a)に示されるように、上型12の下面には、上型12の中央のキャビティ24表面を基準ラインLV1とすると、第1突起12b、第2突起12c、第3突起12d、第4突起12eによる段差が形成されている。キャビティ24の右側に第1突起12b及び第2突起12cが形成され、キャビティ24の左側に第3突起12d及び第4突起12eが形成されている。第2突起12cは、キャビティ24と第1突起12bとの間に位置している。第3突起12dは、キャビティ24と第4突起12eとの間に位置している。第1突起12b及び第4突起12eのそれぞれは、第2突起12c及び第3突起12dよりも下型11側に突出している。第1突起12b及び第4突起12eにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一であり、第2突起12c及び第3突起12dにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一である。
【0039】
また、図5(b)に示されるように、上型12の下面には、第2突起12cの代わりに第5突起12fが形成されている箇所がある。第2突起12cの突出量を突出量P1とし、第5突起12fの突出量を突出量P2としたとき、突出量P2は突出量P1よりも小さい。なお、上型12における第2突起12cと第5突起12fとは、例えば、金属パイプ1の長手方向Xにおいて交互に設けられる。
【0040】
上型12の第1突起12bは下型11の第1突起11bと対向しており、上型12の第2突起12c及び第5突起12fは下型11の第2突起11cと対向しており、上型12のキャビティ24は下型11のキャビティ16と対向しており、上型12の第3突起12dは、下型11の第3突起11dと対向しており、上型12の第4突起12eは下型11の第4突起11eと対向している。これにより、上型12の第2突起12c及び第5突起12fと下型11の第2突起11cとの間、及び上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間のそれぞれには、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される。また、上型12のキャビティ24と、下型11のキャビティ16との間には、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される。
【0041】
図3に戻って、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0042】
加熱機構(電力供給部)50は、電力供給源55、及び、電力供給源55と電極17,18とを電気的に接続する電力供給ライン52を備える。電力供給源55は、直流電源及びスイッチを含み、電力供給ライン52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能になっている。本実施形態では、電力供給ライン52は、下側電極17,18に接続されているが、これに限られない。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(例えば、AC3変態点温度以上)まで加熱することができる。
【0043】
一対の気体供給部40の各々は、ブロック41を介して基台15上に載置固定されるシリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43の先端に連結された気体供給ノズル44とを有する。シリンダユニット42は、シリンダロッド43を介して気体供給ノズル44を金属パイプ材料14に対して進退駆動させる部分である。気体供給ノズル44は、パイプ保持機構30にて保持された金属パイプ材料14の内部に連通可能に構成されている部分であり、上記内部に膨張成形のための気体供給を実施する。気体供給ノズル44は、その先端が先細になるように設けられるテーパー面45と、その内部に設けられるガス通路46と、ガス通路46の出口に位置する開閉弁47とを備える。テーパー面45は、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(図4(b)を参照)。テーパー面45は、絶縁材によって構成されてもよい。なお図示はしないが、気体供給ノズル44の少なくともいずれかには、ガス通路46内のガスを排出するための排出機構が取り付けられてもよい。ガス通路46は、開閉弁47を介して気体供給ユニット60の第2チューブ67に接続される。このため、ガス通路46には、気体供給ユニット60から供給されたガスが供給される。開閉弁47は、気体供給ノズル44の外側に直接取り付けられており、気体供給ユニット60からガス通路46への気体供給を制御する。開閉弁47を閉塞すると共に圧力制御弁68を制御することによって、ガス源61から第2チューブ67にガスを供給してその内部圧力を予め昇圧してもよい。この場合、開閉弁47が開放された後、ガス通路46内の圧力を急速に昇圧できる。よって、ガス通路46に連通する金属パイプ材料14の内部の圧力も、急速に昇圧できる。なお、開閉弁47の開閉は、図3に示される(B)を介して制御部70によって制御される。
【0044】
気体供給ユニット60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを貯留するアキュムレータ(ガス貯留部)62と、このアキュムレータ62から気体供給部40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62から気体供給部40の気体供給ノズル44まで延びている第2チューブ(配管)67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69と、を有する。圧力制御弁64は、気体供給ノズル44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内でガスが逆流することを防止する役割を果たす。
【0045】
圧力制御弁68は、制御部70の制御により、第2チューブ67内の圧力を調節するバルブである。例えば、金属パイプ材料14を仮膨張させるための作動圧力(以下、第1到達圧力とする)を有するガス(以下、低圧ガスとする)と、金属パイプを成形するための作動圧力(以下、第2到達圧力とする)を有するガス(以下、高圧ガスとする)とを、第2チューブ67内に供給する役割を果たす。これにより、第2チューブ67に接続される気体供給ノズル44に低圧ガス及び高圧ガスを供給できる。なお、高圧ガスの圧力は、例えば低圧ガスの約2倍~5倍である。
【0046】
また、制御部70は、図3に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、加熱機構50及び駆動機構80を制御する。水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とを備える。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0047】
<成形装置を用いた金属パイプの成形方法>
次に、成形装置10を用いた金属パイプ1の成形方法の一例について、図6(a)~(c)を参照しながら説明する。まず、図6(a)に示されるように、加熱されると共に中空形状を呈する金属パイプ材料14を、上型12及び下型11の間に配置する。具体的には、上型12のキャビティ24と下型11のキャビティ16との間に、金属パイプ材料14を配置する。この金属パイプ材料14は、パイプ保持機構30の上側電極17,18及び下側電極17,18によって挟持されている。また、金属パイプ材料14は、制御部70による加熱機構50の制御によって、通電加熱されている。具体的には、制御部70による加熱機構50の制御によって金属パイプ材料14に電力を供給する。すると、電力供給ライン52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給される。そして、金属パイプ材料14自身の電気抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。
【0048】
次に、図6(b)に示されるように、制御部70による駆動機構80の制御によって、上型12を下型11に向かって移動させる。これにより、上型12と下型11とを接近させ、金属パイプ1を成形するための空間を上型12と下型11との間に形成する。このとき、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14は、キャビティ16内に位置する。本実施形態では、金属パイプ材料14の一部が上型12及び下型11に接触することによって変形しているが、これに限られない。なお、金属パイプ材料14を通電加熱する前等に、上型12を下型11側に近づけてもよい。
【0049】
次に、図6(c)に示されるように、気体供給により金属パイプ材料14を膨張させ、金属パイプ材料14を上型12及び下型11に接触させることによって、パイプ部100及びフランジ部101,102を有する金属パイプ1を成形する。具体的には、まず、気体供給部40のシリンダユニット42を作動させることによって、気体供給ノズル44を前進させ、金属パイプ材料14の両端に気体供給ノズル44を挿入する。このとき、各気体供給ノズル44の先端を金属パイプ材料14の両端に挿入してシールする。これにより、金属パイプ材料14の内部と、ガス通路46とが、気密性よく連通する。続いて、制御部70による気体供給ユニット60、駆動機構80、及び開閉弁47の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14内に気体(ガス)を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料14が膨張して成形金型13と接触する。そして、膨張した金属パイプ材料14が、キャビティ16,24、第2突起11c,12c、第3突起11d,12dの形状に沿うように成形される。以上により、パイプ部100が成形される。また、制御部70による駆動機構80の制御によって、上型12を下型11に向かってさらに移動させる。これにより、膨張した金属パイプ材料14において、第2突起11c,12cの間に設けられる空間と、第3突起11d,12dの間に設けられる空間とに進入した部分は、上型12及び下型11によって押し潰される。
【0050】
フランジ部102が形成されるとき、膨張した金属パイプ材料14において第2突起11cと第5突起12fとの間に進入した部分は、図7に示されるように、単に第1突起12b、第2突起11c、及び第5突起12fの形状に沿って成形される。すなわち、上記進入した部分は、第2突起11cと第5突起12fによって押し潰されない。このため、フランジ部102において第2突起11cと第5突起12fとの間に形成した部分には、第2突起11c,12cの間に形成した部分と異なり、一対の内面102a,102bの間に位置すると共にパイプ部100の内部空間S1に連通する隙間S2が設けられている。なお、上述したように第2突起12cと第5突起12fとは、長手方向Xにおいて交互に設けられることから、長手方向Xに沿って複数の隙間S2が間欠的に設けられる。また、長手方向Xに沿って隣り合う隙間S2の間では、一対の内面102a,102bは密着する。
【0051】
ブロー成形されて膨張した金属パイプ材料14の外周面は、下型11及び上型12に接触して急冷される。これにより、金属パイプ材料14の焼き入れが実施される。上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されている。このため、金属パイプ材料14の上型12及び下型11への接触によって、パイプ表面の熱が急激に金型側へと奪われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ16,24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却し、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0052】
金属パイプ1が成形された後、成形装置10から金属パイプ1を搬出する。例えば、ロボットアーム等を用いて、成形装置10から金属パイプ1を搬出する。そして、フランジ部102に対して、隙間S2につながる貫通孔110を設ける(図2(c)を参照)。例えば、レーザ加工、機械加工等の穿孔加工をフランジ部102に対して実施することによって、貫通孔110を形成する。本実施形態では、複数の隙間S2のそれぞれに対して貫通孔110が設けられるが、これに限られない。
【0053】
具体的に、図10に示すように、成形システム200は、上述の成形装置10と、金属パイプ1に貫通孔を設ける加工装置210(加工部)と、を備える。従って、加工装置210は、フランジ部102に、隙間S2につながる貫通孔110を設ける。
【0054】
以上に説明した工程を経ることによって、パイプ部100及びフランジ部101,102を有する金属パイプ1を成形できる。これら金属パイプ材料14のブロー成形から金属パイプ1の成形完了までに至るまでの時間は、金属パイプ材料14の種類にもよるが、概ね数秒から数十秒程度である。なお、キャビティ16,24の形状を変更することによって、断面円形、断面楕円形、断面多角形等あらゆる形状を呈するパイプ部を成形することができる。
【0055】
<作用効果>
以上に説明した本実施形態に係る成形方法によって成形される金属パイプ1によれば、フランジ部102が有する一対の内面102a,102bの間には、パイプ部100の内部空間S1に連通する隙間S2が位置している。また、フランジ部102に設けられる貫通孔110は、隙間S2につながっている。これにより、例えば金属パイプ1を塗装する場合にパイプ部100の内部空間S1に水等の液体が浸入した場合であっても、隙間S2及び貫通孔110を介して当該液体を容易に排出できる。これにより、金属パイプ1の内部に液体が溜まりにくくなるので、金属パイプ1の錆の発生を抑制できる。加えて、例えば金属パイプ1を塗液内に浸漬させるとき、貫通孔110が空気の逃げ穴となる。これにより、良好にパイプ部100の内周面100a等を塗装できる。さらには、内周面100a等における上記塗液の溜まりの発生も抑制できる。
【0056】
本実施形態において、金属パイプ1を成形する工程では、一対の内面102a,102bの間に位置すると共に、パイプ部100の長手方向Xに沿って間欠的に配置される複数の隙間S2を形成し、長手方向Xに沿って隣り合う隙間S2の間では、一対の内面102a,102bが密着している。このため、一対の内面102a,102bにおいて互いに密着した部分と、他の部材とをスポット溶接できる。加えて、フランジ部102の内部に複数の隙間S2が形成されることによって、パイプ部100の内部空間S1に液体がより溜まりにくくなる。このため、金属パイプ1の本体部であるパイプ部100の強度劣化の発生を抑制できる。
【0057】
本実施形態において、フランジ部102には、複数の隙間S2のそれぞれに対して貫通孔110が設けられてもよい。この場合、金属パイプ1の内部に液体が溜まることを良好に抑制できる。
【0058】
実施形態に係る成形システム200は、中空形状を呈する金属パイプ材料14を、上型12及び下型11の間に配置し、流体の供給により金属パイプ材料14を膨張させ、金属パイプ材料14を上型12及び下型11に接触させることによって、パイプ部100及びフランジ部101を有する金属パイプ1を成形する成形装置10と、金属パイプ1に貫通孔110を設ける加工装置210と、を備え、成形装置10は、フランジ部101に含まれる一対の内面の間に位置すると共に、パイプ部100の内部空間に連通する隙間を形成し、加工装置210は、フランジ部101に、隙間につながる貫通孔110を設ける。
【0059】
この成形システム200によれば、上述の成形方法と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0060】
<変形例>
以下では、上記実施形態の変形例に係る金属パイプについて説明する。当該変形例の説明において上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。
【0061】
図8は、変形例に係る金属パイプを示す概略斜視図である。図9(a)は、図8の要部拡大斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のδ-δ線に沿った断面図であり、図9(c)は、フランジ部における液体の流れを示す模式図である。図8及び図9(a)~(c)に示される金属パイプ1Aは、断面略ハット形状を示す中空部材であり、一本の金属パイプ材料の成形物である。金属パイプ1Aのパイプ部100Aは、断面略台形状を呈している。金属パイプ1Aでは、パイプ部100Aの断面における底面につながるように、フランジ部101A,102Aが形成されている。本変形例では、上記底面は、フランジ部101Aの内面101b及びフランジ部102Aの内面102bに連続している。
【0062】
本変形例においては、フランジ部102Aの全体に隙間S2が設けられている。加えて、フランジ部101Aにおいても、その全体に隙間S3が設けられている。すなわち、フランジ部101Aが有する内面101a,101bの間には、隙間S3が設けられている。このため、隙間S2,S3のそれぞれは、長手方向Xに沿って連続的に設けられている。
【0063】
フランジ部101Aの内面101bの一部には、内面101aに向かって突出した突出部120が設けられる。これにより、内面101bの当該一部は、内面101aと密着している。同様に、フランジ部102Aの内面102bの一部には、内面102aに向かって突出した突出部120が設けられており、当該一部は内面102aと密着している。これにより、金属パイプ1Aの強度が向上し得る。また、本変形例においては、内面101a,101b同士が密着した箇所と、内面102a,102b同士が密着した箇所とのそれぞれは、他の部材とのスポット溶接部として機能し得る。突出部120の長手方向Xに沿った寸法は、例えば、金属パイプ1Aの長手方向Xに沿った寸法の10%以上50%以下である。突出部120の短手方向Yに沿った寸法は、特に限定されないが、突出部120の長手方向Xに沿った寸法等に応じて適宜調整される。
【0064】
フランジ部101A,102Aのそれぞれには、複数の突出部120が設けられている。本変形例では、フランジ部101Aに設けられる複数の突出部120は、長手方向Xに沿って一定間隔にて設けられるが、これに限られない。同様に、フランジ部102Aに設けられる複数の突出部120は、長手方向Xに沿って一定間隔にて設けられるが、これに限られない。長手方向Xにおいて互いに隣り合う突出部120同士は、離間している。
【0065】
各突出部120は、例えば、金属パイプ1Aの成形後にフランジ部101A,102Aをプレス加工することによって形成される。もしくは、各突出部120は、例えば金属パイプ1Aの成形時に設けられてもよい。この場合、例えば下型11の第2突起11cの表面の一部に凸部が設けられる。これにより、フランジ部101A,102Aの成形時に突出部120を成形できる。
【0066】
フランジ部101A,102Aのそれぞれには、貫通孔110Aが設けられる。貫通孔110Aは、隙間S2もしくは隙間S3につながる開口であり、内面101b,102bを貫通するように設けられる。フランジ部101A,102Aに設けられる貫通孔110Aは、短手方向Yにおいて、突出部120を挟んでパイプ部100Aの反対側に位置する。この場合、フランジ部101A,102Aの先端側(特に、表面張力の観点から突出部120の近傍)に液体が溜まりにくくなる。加えて、図9(c)に示されるように、例えば金属パイプ1Aの内部を塗液Lにて塗装するとき、塗液Lは、突出部120同士の隙間GPを介してフランジ部102Aの裏側に回り込みやすくなる。
【0067】
本変形例では、貫通孔110Aは、各突出部120に対応して設けられているが、これに限られない。貫通孔110Aは、フランジ部101A,102Aの何れかに設けられてもよい。
【0068】
以上に説明した上記変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、隙間S2,S3は長手方向Xにおいて連続しているので、フランジ部101A,102Aに形成される貫通孔110Aの数を低減した場合であっても、隙間S2,S3と貫通孔110Aとを介して液体を良好に排出できる。
【0069】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態及び上記変形例に何ら限定されるものではない。上記実施形態及び上記変形例は、互いに組み合わせてもよい。例えば、金属パイプは、フランジ部101A,102を備えてもよいし、フランジ部101,102Aを備えてもよい。また、金属パイプには、1つのフランジ部が設けられてもよいし、3つ以上のフランジ部が設けられてもよい。
【0070】
上記実施形態及び上記変形例では、貫通孔は金属パイプの成形後に設けられるが、これに限られない。貫通孔は、金属パイプの成形時に設けられてもよい。
【0071】
上記実施形態では、一方のフランジ部のみに隙間が設けられているが、これに限られない。例えば、両方のフランジ部に隙間が設けられてもよい。この場合、両方のフランジ部に貫通孔が設けられてもよい。
【0072】
上記変形例では、フランジ部には一方の内面から他方の内面に向かって突出した突出部が設けられているが、これに限られない。例えば、他方の内面から一方の内面に向かって突出した突出部が、フランジ部に設けられてもよい。もしくは、フランジ部には、一方の内面から他方の内面に向かって突出した突出部と、他方の内面から一方の内面に向かって突出した突出部との両方が設けられてもよい。また、一方の内面と他方の内面との密着は、一方の内面から他方の内面に向かって突出した突出部と、他方の内面から一方の内面に向かって突出した突出部とによってなされてもよい。なお、貫通孔は突出部を介してパイプ部の反対側に設けられているが、これに限られない。
【0073】
上述の形態では、金属パイプ材料に供給する流体として気体を例示したが、流体として液体を採用してもよい。また、成形時に金属パイプ材料が加熱されている必要はない。すなわち、ハイドロフォームで金属パイプを成形してもよい。
【0074】
図10に示す成形システム200の例では、成形装置10と別の箇所に加工装置210を設け、当該加工装置210が貫通孔を形成していた。これに代えて、成形装置10の中に、貫通孔を設けることができる加工部を組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…金属パイプ、10…成形装置(成形部)、11…下型(型)、12…上型(型)、13…成形金型、14…金属パイプ材料、30…パイプ保持機構、40…気体供給部、42…シリンダユニット、44…気体供給ノズル、46…ガス通路、47…開閉弁、50…加熱機構、60…気体供給ユニット、61…ガス源、62…アキュムレータ、63…第1チューブ、67…第2チューブ、68…圧力制御弁、70…制御部、80…駆動機構、100…パイプ部、100a…内周面、101,101A,102,102A…フランジ部、101a,101b,102a,102b…内面、110,110A…貫通孔、120…突出部、200…成形システム、210…加工装置(加工部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10