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7382395少なくとも1つの指向性アンテナを備えた車体部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】少なくとも1つの指向性アンテナを備えた車体部品
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20231109BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20231109BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G01S7/03 200
G01S7/03 210
G01S13/931
H01Q15/14 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021512240
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019072639
(87)【国際公開番号】W WO2020043633
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】18/57669
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】19/03027
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517213049
【氏名又は名称】コンパニ プラスティック オムニウム
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】521082204
【氏名又は名称】グリーナーウェイヴ エスアーエス
(73)【特許権者】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ロナン
(72)【発明者】
【氏名】バンセリン マチュー
(72)【発明者】
【氏名】フィンク マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ルロゼ ジョフロワ
(72)【発明者】
【氏名】エテックス ニコラ
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-317611(JP,A)
【文献】特開2016-020899(JP,A)
【文献】特表2016-536931(JP,A)
【文献】特開2017-147487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0263408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 15/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料からなる少なくとも1つの壁(20)を含む、電動陸上車両(200)の車体部品(10)において、電磁波用の空洞(80)を形成する少なくとも1つのハウジング(90)を含み、前記ハウジング(90)は、
・前記ハウジング(90)内で電磁波を送信および/または受信するための少なくとも1つの送受信機(50)と、
・前記送受信機(50)から送信された電磁波を(制御式に)所定の方向に反射し、また、その逆に前記ハウジング(90)の外側からの電磁波を前記送受信機(50)に向けて反射可能な、少なくとも1つの適応表面(60)と、
を含むことを特徴とする車体部品。
【請求項2】
前記空洞(80)が少なくとも1つの開口部(100)を含み、電磁波が、前記開口部(100)を介して前記電磁空洞(80)の外側に向けて送信されるか、または前記電磁空洞(80)の外側から受信される、請求項1に記載の車体部品(10)。
【請求項3】
前記空洞(80)が、空気または、前記壁(20)の残りの部分を形成するプラスチック材料とは異なるプラスチック材料または、前記壁(20)の残りの部分を形成するプラスチック材料と同じプラスチック材料で充填される、請求項2に記載の車体部品(10)。
【請求項4】
前記適応表面(60)が、前記適応表面(60)のインピーダンスを変更するとともに前記適応表面(60)により電磁波が反射および/または伝搬される方法を変更するための複数の調整素子(62)を含む、請求項3に記載の車体部品(10)。
【請求項5】
前記適応表面(60)の調整素子(62)が、トランジスタ、ダイオード、バリキャップダイオード、および/または圧電素子等の電子部品を含む、請求項4に記載の車体部品(10)。
【請求項6】
前記適応表面(60)が、前記適応表面(60)の前記調整素子(62)を制御可能なコントローラ(110)に接続される、請求項4から5のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項7】
前記車体部品(10)の変形後、前記コントローラ(110)が前記調整素子(62)を再構成可能である、請求項6に記載の車体部品(10)。
【請求項8】
前記コントローラ(110)は、前記送受信機(50)から送信される電磁波が外面(30)の前に位置する三次元空間を走査するように前記調整素子(62)を制御可能である、請求項6および7のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項9】
前記送受信機(50)が、様々な周波数、特に77GHzで電磁波を送信および/または受信可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項10】
前記ハウジング(90)が、前記空洞(80)の内部で電磁波を反射可能な少なくとも1つの反射素子(70)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項11】
前記反射素子(70)と前記適応表面(60)が前記電磁空洞(80)を画定する、請求項10に記載の車体部品(10)。
【請求項12】
前記反射素子(70)が、前記送受信機から送信された電磁波を前記適応表面(60)のほぼ全面に反射可能である、請求項10および11のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項13】
前記反射素子(70)が、前記車体部品(10)の外面(30)の少なくとも一部に固定された第1のフィルムである、請求項10から12のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項14】
前記第1のフィルムが金属フィルムである、請求項13に記載の車体部品(10)。
【請求項15】
前記適応表面(60)が、前記車体部品(10)の内面(40)の少なくとも一部に固定された第2のフィルムを構成する、請求項1から14のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項16】
前記壁(20)は、前記送受信機(50)と前記適応表面(60)とが内部に組み込まれる電磁波用の電磁空洞(80)を形成し、前記フィルムが少なくとも1つの開口部(100)を含み、電磁波が前記開口部(100)を介して前記空洞の外側に向けて送信されるかまたは前記空洞の外側から受信される、請求項15に記載の車体部品(10)。
【請求項17】
前記開口部(100)の大きさを調整できる、請求項16に記載の車体部品(10)。
【請求項18】
前記壁(20)は、最小長さ80cm、最小幅30cmであり、厚さが5mm未満、好ましくは2mm~4mmである、請求項1から17のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項19】
バンパを構成する、請求項1から18のいずれか一項に記載の車体部品(10)。
【請求項20】
請求項6から8のいずれか一項に記載の車体部品(10)を含む電動陸上車両(200)。
【請求項21】
前記コントローラ(110)は、前記送受信機(50)から送信される電磁波が前記電動陸上車両(200)の周辺で三次元空間を走査するように前記調整素子(62)を制御可能である、請求項20に記載の電動陸上車両(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の方向に電磁波を送信および/または受信するための指向性アンテナを備えた電動陸上車両、たとえば自動車の分野に関する。アンテナは、全方向に同じように電磁波を送信および/または受信する場合、等方性である。アンテナは、正確な一つの方向に電磁波を送信および/または受信する場合、指向性である。
【背景技術】
【0002】
遠隔システムと通信して様々な情報を送信または受信するために、このようなアンテナを備えた車両が知られている。これらのアンテナは一般に車両のルーフに配置されるが、しかし、一部はリヤハッチやボンネット等の他の車体部品にも配置される。
【0003】
車両の前方および後方のバンパに一般に配置されるレーダータイプの装置を備えた車両も同様に知られている。実際、特に安全上の様々な理由から、たとえばACC(「Adaptative Cruise Control(追従型クルーズコントロール)」)タイプのレーダーを自動車に装備することが知られている。このようなレーダーは特に、道路の交通量および/または障害物に応じて車両の速度を調整する役割を果たす。レーダーは、レーダー搭載車両の前にある物体の速度と距離を検知し、特に車間安全距離を維持する。
【0004】
一般に、自動車産業におけるレーダー用途の中で重要な分野は、たとえば駐車操作補助システム、後退補助システムもしくは歩行者保護装置、あるいはこの種の他のシステム等の様々な設備に対して車両の周りの周辺全体をみることができるように、レーダーモジュールが組み込まれることがますます増えている車両の車体の分野である。
【0005】
自動車の製造業者は、車両の周辺環境をよりよく特徴づけるために、一方では、電磁波によりスキャンされる車両の周りの調査容積の大きさを改善できる装置を、他方では、これらの装置から送られる情報の処理解像度を改善可能な装置を研究している。これは、車両がその環境とできるだけ適切に相互作用することによって、特に事故を回避し、運転を容易にし、自動で走行するようにするためのものである。
【0006】
そのため、LIDARやカメラ等の装置を備える車両が次第に多くなっている。
【0007】
障害物の位置と距離に関する情報に追加される情報を得るには、空間分解能が高い装置が求められる。空間分解能は、分解能(pouvoir de resolutionまたはpouvoir de separation)とも呼ばれ、細かいものを区別するための測定または観察装置の能力を表す。これは、2つの隣接地点を適切に識別するために分離すべき最小距離を特徴としうる。
【0008】
この解像距離は、観察のために用いられる電波の波長と観察装置の開口部の大きさとの比に応じて決まる。そのため、空間分解能を高めるには、すなわち解像距離を縮めるには、波長を短くすること(電波の周波数を高くすること)、および/または観察装置の開口部を大きくすることが必要である。
【0009】
そのため、今日では、レーダー周波数を高くするともに、また、所定の面積に配分されるレーダー数を増やそうとしている。車両で利用できるスペースは限られているので、そのため、レーダーを小型化することも同様に求められている。
【0010】
しかし、所定の面積に配分されるレーダー数を増やすとコストが高くなる。
【0011】
さらに、レーダー数を増すと多数の無線周波数トラックの供給が必要になり、これは複雑かつ高価でエネルギー消費が大きい。
【0012】
また、レーダーがだんだん小型化されていっても、所定の面積に配分されるレーダー数が増えれば、各レーダー間では最小距離を保つことが必要であるだけに、一般には面積が大型化する。
【0013】
加えて、車体部品により支持されるレーダーが直面する問題はレーダーの配置に関与する。なぜなら、レーダーを支持する車体部品が変形した場合でも(衝突、熱膨張など)、レーダー機能が適正に実行されるべくレーダーの完全さを確保することが重要であるからである。したがって、レーダー機能の使用期間全体にわたってレーダーの適切な配置(送信/受信方向の維持)を保証しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、(車体部品自体の大きさとの関連で)大型面積から所定の方向に電磁波を送信および/または受信可能な少なくとも1つの指向性アンテナを備えた、電動陸上車両の車体部品を提供することによって、上記の不都合を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明は、プラスチック材料からなる少なくとも1つの壁を含む、電動陸上車両の車体部品に関し、この車体部品は、電磁波用の空洞を形成する少なくとも1つのハウジングを含み、このハウジングは、
・ハウジング内で電磁波を送信および/または受信するための少なくとも1つの送受信機と、
・送受信機から送信された電磁波を所定の方向に(制御式に)反射し、また、その逆にハウジングの外側からの電磁波を送受信機に向けて反射可能な、少なくとも1つの適応表面と、
を含む。
【0016】
このようなシステムでは、高解像度の4D画像を実現可能な高解像度のレーダーが得られる。したがって、距離(たとえばx座標による)と速度だけを測定する現在の単一レーダーとは違って、座標(x、y、z)によって環境を一続きで単独で再現して速度を測定可能なイメージレーダーが得られる。
【0017】
さらに、このようにして、通常の電子工学(電気信号)により適応表面(いわゆるメタサーフェス)を制御し、送受信機から送信された電磁波を「波形整形」してイメージレーダーに変換することができる。
【0018】
このシステムは、また、外形寸法が非常に小さく、車体部品の壁間の厚さが薄く、エネルギー消費が少ない。なぜなら、システムは送受信機から大型面積に向けて送信することによりもっぱら反射に働きかけるので無線周波数トラックを供給する必要がないからである。適応表面を変更するには単に電磁制御からシフトさせるだけである。
【0019】
電磁波はある特定の容積内で送信されるので、したがって大型アンテナを供給するよりもずっと簡単である。エネルギー損失がなく減衰も少ないので、レーダーの大型面積に向かって進んでいって大型面積をカバーすることができ、そのコストも安い。しかも、この面積は車両の外側に最も近いところにある。なぜなら、電磁波透過材料をできるだけ少なくした車体部品自体をめざしているからである。
【0020】
車体部品は、さらに、単独または組み合わせで以下の1つまたは複数の特徴を含むことができる:
・空洞が少なくとも1つの開口部を含み、電磁波が、この開口部を介して電磁空洞の外側に向けて送信されるか、または電磁空洞の外側から受信される。
・空洞が、空気または、壁の残りの部分を形成するプラスチック材料とは異なるプラスチック材料または、壁の残りの部分を形成するプラスチック材料と同じプラスチック材料で充填される。
・適応表面が、この適応表面のインピーダンスを変更するとともに適応表面により電磁波が反射および/または伝搬される方法を変更するための複数の調整素子を含む。
・適応表面の調整素子が、トランジスタ、ダイオード、バリキャップダイオード、および/または圧電素子等の電子部品を含む。
・適応表面が、この適応表面の調整素子を制御可能なコントローラに接続される。
・車体部品の変形後、コントローラが調整素子を再構成可能である。
・コントローラは、送受信機から送信される電磁波が、外面の前に位置する三次元空間を走査するように調整素子を制御可能である。
・送受信機が、様々な周波数、特に77GHzで電磁波を送信および/または受信可能である。
・ハウジングが、空洞の内部で電磁波を反射可能な少なくとも1つの反射素子を含む。
・反射素子と適応表面が電磁空洞を画定する。
・反射素子が、送受信機から送信された電磁波を適応表面のほぼ全面に反射可能である。
・反射素子が、車体部品の外面の少なくとも一部に固定された第1のフィルムである。
・第1のフィルムが金属フィルムである。
・適応表面が、車体部品の内面の少なくとも一部に固定された第2のフィルムを構成する。
・壁は、送受信機と適応表面とが内部に組み込まれる電磁波用の電磁空洞を形成し、フィルムが少なくとも1つの開口部を含み、電磁波が開口部を介して空洞の外側に向けて送信されるかまたは空洞の外側から受信される。
・開口部の大きさを調整できる。
・壁は、最小長さ80cm、最小幅30cmであり、厚さが5mm未満、好ましくは2mm~4mmである。
・車体部品がバンパを構成する。
【0021】
本発明は、また、本発明による車体部品を含む電動陸上車両を目的とする。
【0022】
コントローラは、有利には、送受信機から送信される電磁波が電動陸上車両の周辺で三次元空間を走査するように調整素子を制御可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、もっぱら例として挙げられ添付図面を参照しながらなされた以下の説明を読めば、いっそう理解されるであろう。
図1】本発明による車体部品の一例であるフロントバンパを示す図である。
図2図1のバンパのA-A’線による横断面図である。
図3図2の適応表面を示す図である。
図4】車体部品の別の例を示す図であり、車体部品が2個の電磁空洞を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に、電動陸上車両200の車体部品10の一例を示す図1を参照する。この例によれば、車体部品10はフロントバンパである。しかし、本発明は、車両のリヤバンパ、ハッチ、開閉部(portiere)、ルーフ、ボンネット、ドア、または車体下部等のあらゆる車体部品に関する。有利には、本発明は大型の車体部品に関する。大型とは、約300cmを超える面積を有する部品である。
【0025】
車体部品10は、車両200の外側に向けられるように構成された外面30と、この外面の反対側にある内面40とを備えた少なくとも1つの壁20を含む。
【0026】
図1の車体部品のA-A’線による横断面を示し、したがってバンパの横断面を示している図2に詳しく示したように、壁20は、電磁波用の空洞80を形成する少なくとも1つのハウジング90を含み、ハウジング90は:
・ハウジング90内で電磁波を送信および/または受信するための少なくとも1つの送受信機50と、
・送受信機50から送信された電磁波を制御された方法で、すなわち所定の方向に反射し、また、その逆にハウジング90の外側からの電磁波を送受信機50に向けて反射可能な、少なくとも1つの適応表面60と、
を含む。
【0027】
電磁空洞80は少なくとも1つの開口部100を含み、電磁波は、開口部100を介して電磁空洞80の外側に向けて送信され、または外側から受信される。したがって、開口部100は、壁20の外側に向けて電磁波を少なくとも部分的に漏洩したままにする電磁的な意味での開口部である。1つの実施形態によれば、開口部100の大きさは、たとえば開口部100の一部分の透過率を電子工学的に変えることによって調整可能である。
【0028】
これらの措置により、送受信機50が発生した電磁波が電磁空洞80の内部で適応表面60によって複数回反射されてから、開口部100(直接または半反射開口部)を介して壁20の外側に送信される。その場合、この電磁波は、その送信前に容易に制御可能である。特に、振幅の大きいメインローブを持つ指向性アンテナと、あらゆる方向に配向可能なローブ(仰角と方位角)を持つアンテナとを、あらゆるタイプの送受信機と共に同時に形成可能である。さらに、適応表面60の外への電磁放射損失が回避される。送受信機50により送信された電磁波はほぼ全部が適応表面60により反射されるので、そのため、ほとんどすべてのエネルギーが単一ビームすなわちメインローブに集中するようにエネルギー制御可能である。したがって、アンテナの有効性が高まる。さらに、送受信機50と適応表面60との間の全ての経路が電磁空洞80の容積すなわち壁20の内部に含まれるので、アンテナの効率はいっそう高くなり、アンテナの性能が上がる。
【0029】
1つの実施例によれば、車体部品10は、電磁空洞80内で送受信機50と開口部100との間に配置された遮蔽板55をさらに有し、壁20の外側への送受信機50の電磁波の直接放射を制限し、および/または電磁波を適応表面60に向かって反射させる。
【0030】
このようなハウジング90は、車両200の周辺にある空間内の物体を画像化するのに適したレーダー検知システムを形成する。そのため、車体部品10は複数のアンテナを含むことができる。
【0031】
このようなハウジング90は、また、音響データおよび/または視覚データまたはメッセージ等のあらゆるタイプのデータ通信を行うのに適した無線通信システムを形成可能である。
【0032】
電磁空洞内に送受信機50と適応表面60をこのように組み込むことによって、アンテナは、送受信機の任意の電磁放射を、空間のあらゆる方向に立体角で配向制御可能な放射に同時に変換できる。しかも、このアンテナは肉薄で非常に性能が良い。
【0033】
図4に示した別の実施形態によれば、壁20は2つの空洞80aと80bとを含む。空洞80aは電磁波の伝搬専用であり、もう一つの空洞80bは電磁波の受信専用である。このため、電磁空洞80は、電磁波を反射可能な反射壁85によって隔てられている。このような反射壁85は、たとえば壁20に一体成形可能である。その場合、各空洞80a、80bは少なくとも1つの開口部100a、100bを含む。
壁20
【0034】
壁20は、バンパ10の主要本体を構成する。壁20は、電磁波のための空洞80を形成する少なくとも1つのハウジング90を含む。
【0035】
ハウジング90は、壁20の全部または一部とすることができる。
【0036】
空洞80は、空気または、壁20の残りの部分を形成するプラスチック材料とは異なるプラスチック材料または、壁20の残りの部分を形成するプラスチック材料と同じプラスチック材料で充填可能である(この場合、ハウジング90は壁20内に含まれる容積を構成する)。
【0037】
空洞80が材料で充填されるとき、この材料は電磁波を透過するか、あるいは半透過性である。そのため、空洞80は、たとえば以下のプラスチック:PP、PP-EDM、ASA、ABS-PC、PC-PET、PMMA-ASA、およびPCの中から選択可能なプラスチック材料から形成可能である。好ましくは、この材料は、エネルギー散逸を最小化するために長鎖ポリマーの中から選択される。
【0038】
有利には、ハウジング90の厚さが、電磁波の波長の半分を上回る。
【0039】
1つの実施例によれば、ハウジング90は、最小長さ80cm、最小幅30cmであり、厚さが5mm未満、好ましくは2mm~4mmである。
【0040】
ハウジング90は、送受信機50に対して適応表面60を最適に使用することを可能にし、すなわち、ハウジングは、空洞80内に送信または入力される電磁波のエネルギー全体が適応表面60で反射されるようにすることをめざしている。このようなレーダーの動作原理ならびに変形実施形態については仏国特許第1857669号明細書に記載されている。
【0041】
1つの特定の実施形態によれば、ハウジング90は、空洞80の内部で電磁波を反射可能な反射素子70を含む。
【0042】
そのため、送受信機50が発生した電磁波またはハウジング90内に入る電磁波が、空洞の内部で反射素子と適応表面によって複数回反射されてから、開口部(直接開口部または半反射開口部)を介してハウジング90の外側に送信され、あるいは送受信機50により受信される。そのため、送信または伝搬される電磁波のエネルギーは最大化される。
【0043】
したがって、反射素子70と適応表面60は、送受信機50から送信/受信される電磁波のための電磁空洞80を画定する。
【0044】
有利な1つの実施形態によれば、反射素子70は、送受信機50から送信された電磁波を適応表面60のほぼ全面に反射可能である。
【0045】
この実施形態によれば、反射素子70は電磁波の導波管である。
【0046】
図2に示した別の実施形態によれば、反射素子70は、車体部品10の外面30の少なくとも一部に固定される第1のフィルムである。有利には、この第1のフィルムを金属フィルムとすることができる。このフィルムは、壁20内に一体成形されるか、壁20に接着可能である。
【0047】
上記フィルムは、たとえばPP、PP-EPDM、ASA、ABS-PC、PC-PET、PMMA-ASA、PCまたはPUで形成される保護コーティングで同様に被覆可能である。
【0048】
反射素子70は、電磁空洞80の少なくとも1つの開口部100を含む。
【0049】
この開口部は、複数の基本開口部から構成可能であり、これらの基本開口部は車体部品の外面30にある。
【0050】
開口部は、また、以下のような1つまたは複数の半反射素子から少なくとも部分的に構成可能である:
・金属薄膜(反射素子70を構成するフィルムよりも薄い膜)
・金属素子内の穴のネットワーク
・金属製の形状のネットワークで、一つの穴又は形状は、、電磁波の波長の半分未満の距離で隣接する他の穴または形状から隔てられる。
【0051】
1つの実施形態によれば、半反射素子が1つまたは複数の開口調整素子を含み、電磁波が上記開口部によって反射および/または伝搬される方法を変更する。開口調整素子にはコントローラが接続されており、開口パラメータに基づいてこれらの開口調整素子を制御する。
送受信機50
【0052】
送受信機50は、壁20における送受信機50の配向によって、壁20の厚み内で適応表面60に向かって主に直接的に電磁波300を送信および/または受信することができる。送受信機50は、モノポール、ダイポール、導波管、放射導波管および平面アンテナを含むリストから選択可能である。
【0053】
送受信機50は、様々な周波数で電磁波を送信および/または受信可能である。空間内の物体を特定するのに適したレーダー検知システムのような用途では、送受信機50は、77GHzの電磁波を特に送信および/または受信可能である。
【0054】
送受信機50は、特に、プロセッサ110と、これを供給する電源素子とに接続されている。そのため、送受信機50は、臨界接続要件を満たすために空洞80のインピーダンスと、インピーダンス整合可能である。
適応表面60
【0055】
適応表面60は、壁20の外に所定の方向に電磁波を配向可能である。適応表面60は、空洞80の全部または一部を被覆可能である。
【0056】
公知の適応表面の変形実施形態は、たとえば米国特許第2004/263408号明細書または米国特許第2016/0233971号明細書に記載されている。このような適応表面を形成するために多数の技術が知られており、これらは時には、適応インピーダンス表面、メタサーフェス、波形整形装置、反射アレイと呼ばれている。
【0057】
1つの特定の実施形態によれば、適応表面60は、周期的または非周期的に配分されて適応表面60のインピーダンスを変更するとともに、この適応表面60により電磁波が反射および/または伝搬される方法を変更する複数の調整素子62を含む。これらの調整素子62は、たとえば、トランジスタ、ダイオード、バリキャップダイオード(「variable capacity」)および/または圧電素子等の電子部品を含むことができる。
【0058】
適応表面の調整素子62は、空洞内に任意に配分可能である。なぜなら多数の反射が空洞80の内面を確実に走査し、したがって、すべての調整素子62に影響を与えるからである。これらの調整素子62は、複数の集合にまとめることができる。各集合内では調整素子62を同一周波数に合わせることができるが、その一方で、グループ間では、調整素子62は、あらかじめ決められた通過帯域に含まれる異なる複数の周波数に合わせられる。
【0059】
適応表面60は、パラメータに基づいて調整素子62を制御可能なコントローラ110に接続され、これらのパラメータは、電磁波の所望の方向に基づいて、また場合によっては所望の分極に応じて決定される。これらのパラメータは特に、周波数、電力、適応表面の調整素子の端子における制御電圧、調整素子の空間的な配置、調整素子の持続時間である。
【0060】
有利には、コントローラ110が送受信機と接続されて同期され、使用される撮像方式に応じてパラメータを調整する。
【0061】
これらのパラメータは、モデルの計算または反復方法によってメモリ内に予め記録しておくことができる。
【0062】
特に、複数の方向に対してパラメータセットたとえば、水平面の角度(方位角)と垂直面の角度(仰角)とに応じた角方向のペアの集合の値を、コントローラのメモリに記録可能である。
【0063】
そのため、コントローラ110は、送受信機50から送信される電磁波が外面30の前に位置する三次元空間を走査するように、あるいは、もっと一般的には送受信機50が車両200の周辺に位置する三次元空間を走査するように、調整素子62を制御可能である。
【0064】
コントローラ110は、同様に、温度変化または車体部品が受けた衝撃による変形といった車体部品10の変形後、調整素子62を再構成可能である。
【0065】
好ましい1つの実施形態によれば、適応表面60は、車体部品10の内面40の少なくとも一部に固定された、電極および共振器を支持する第2のフィルムを構成する。この第2のフィルムは、壁20に一体成形されるか、壁20に接着可能である。
【0066】
別の実施形態によれば、適応表面60は、車体部品10の内面40の少なくとも一部に直接プリントされた電極および共振器を含む。
【0067】
別の実施形態によれば、適応表面60の電極と共振器は、車体部品10のプラスチックの活性化により車体部品10の内面40の少なくとも一部に直接形成される。
【0068】
本発明は、また、本発明による車体部品10を含む電動陸上車両200に関する。
【0069】
有利には、コントローラ110は、送受信機50から送信される電磁波が電動陸上車両200の周辺の三次元空間を走査するように、調整素子62を制御可能である。
【0070】
本発明は、提示された実施形態に制限されるものではなく、当該技術の専門家にとっては他の実施形態も明らかになるだろう。特に、円筒部分の形状を呈する反射素子70と組み合わせた線形の送受信機50を検討することもできるだろう。
【符号の説明】
【0071】
10 車体部品
20 車体部品10の壁
30 車両200の外側に向くように構成された壁20の外面
40 外面30の反対側にある、壁20の内面
50 送受信機
55 電磁空洞80内に配置される遮蔽板
60 適応表面
62 適応表面60の調整素子
70 反射素子
80 電磁空洞
80a、80b 2個の電磁空洞
85 電磁空洞80aと80bを分離する反射壁
90 少なくとも1つの送受信機50と、少なくとも1つの適応表面60と、少なくとも1つの反射素子70を含むアンテナアセンブリ
100 電磁空洞80の開口部
100a 電磁空洞80aの開口部
100b 電磁空洞80bの開口部
110 適応表面60のコントローラ
200 電動陸上車両
図1
図2
図3
図4