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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】人肌模型キット
(51)【国際特許分類】
   G09F 5/00 20060101AFI20231109BHJP
   G09B 25/00 20060101ALI20231109BHJP
   A45D 44/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G09F5/00 Z
G09B25/00 Z
A45D44/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021550990
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2019039717
(87)【国際公開番号】W WO2021070267
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】風間 泰規
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-224217(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059529(US,A1)
【文献】特開平11-076206(JP,A)
【文献】特開2016-152833(JP,A)
【文献】特開2006-290745(JP,A)
【文献】特開2004-117851(JP,A)
【文献】特開2006-154633(JP,A)
【文献】特開2001-255827(JP,A)
【文献】特開2018-083005(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113876(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 5/00 - 5/04
A45D 44/00 - 44/22
A61B 5/00 - 5/398
G09B 25/00 - 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人肌を模した人肌模型を複数備える人肌模型キットであって、
各人肌模型は、基層と、基層の表面に設けられた表面層とを備え、前記基層は同一に形成され、前記表面層は互いに対して粘弾性が異なるように形成され
前記表面層の厚さは3~200μmであり、前記表面層の弾性係数は前記基層の弾性係数よりも大きい、人肌模型キット。
【請求項2】
前記人肌模型は、ウレタン系高分子又はシリコーンで形成されている、請求項1に記載の人肌模型キット。
【請求項3】
各人肌模型の粘弾性に関連する表示が、対応する人肌模型と並んで配置される、請求項1又は2に記載の人肌模型キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人肌模型キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、店頭で化粧品が販売されるときに化粧品の使用前後における肌の状態の変化を分かり易くするために、人肌模型キットを用いることが提案されている。具体的には、スキンケア商品(化粧水、乳液、美容液、保湿クリーム、マスク、美容オイルなど)を使用する前の人肌の状態を模した人肌模型と、スキンケア商品を2週間から1ヶ月程度使用した後の肌の状態を模した人肌模型とをセットにして人肌模型キットを作成し、この人肌模型キットを用いて店頭にて販売員が商品説明を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-053609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スキンケア商品は、短期的には特に肌の表皮層に対して効果があり、スキンケア商品を使用すると表皮層の粘弾性が変化する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の人肌模型キットでは、スキンケア商品を使用する前の状態を模した人肌模型と使用後の状態を模した人肌模型とで、基本的に人肌模型の材質を全体的に変更していると考えられる。このため、斯かる人肌模型キットでは、顧客は表皮層のみの粘弾性が変化することによる人肌の触感の変化を体感することができなかった。換言すると、斯かる人肌模型キットでは、スキンケア商品の短期的な効果を必ずしも適切に体感することができなかった。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、表皮層のみの粘弾性が変化することによる人肌の触感の変化を体感することができる人肌模型キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)人肌を模した人工の人肌模型を複数備える人肌模型キットであって、各人肌模型は、基層と、基層の表面に設けられた表面層とを備え、前記基層は同一に形成され、前記表面層は互いに対して粘弾性が異なるように形成されている、人肌模型キット。
(2)各人肌模型において、前記表面層の弾性係数は前記基層の弾性係数よりも大きい、上記(1)に記載の人肌模型キット。
(3)前記人肌模型は、ウレタン系高分子又はシリコーンで形成されている、上記(1)又は(2)に記載の人肌模型キット。
(4)各人肌模型の粘弾性に関連する表示が、対応する人肌模型と並んで配置される、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の人肌模型キット。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、表皮層のみの粘弾性が変化することによる人肌の触感の変化を体感することができる人肌模型キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一実施形態に係る人肌模型キットの概略的な斜視図である。
図2図2は、第一実施形態に係る人肌模型キットの概略的な断面側面図である。
図3図3は、第二実施形態に係る人肌模型キットの、図2と同様な、概略的な断面側面図である。
図4図4は、第三実施形態に係る人肌模型キットの、図1と同様な、概略的な斜視図である。
図5図5は、第三実施形態に係る人肌模型キットの、図2と同様な、概略的な断面側面図である。
図6図6は、表面層の貯蔵弾性率の異なる三つのサンプルについての評価結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
<第一実施形態>
≪人肌模型キットの構成≫
図1は、第一実施形態に係る人肌模型キット1の概略的な斜視図である。図2は、第一実施形態に係る人肌模型キット1の概略的な断面側面図である。人肌模型キット1は、例えば、店頭において化粧品の商品説明を行う際に、スキンケア商品の使用前後による肌の触感の違いを顧客に体感してもらうために用いられる。図1及び図2に示したように、人肌模型キット1は、支持板10と、支持板10上に設けられた複数の人肌模型20、30とを備える。本実施形態では、人肌模型キット1には、第1人肌模型20と第2人肌模型30との二つの人肌模型が設けられる。なお、本実施形態では、人肌模型キット1は支持板10を備えているが、支持板10の代わりにシリコーン等の可撓性を有するシートが用いられてもよい。或いは、人肌模型キット1は支持板10を備えていなくてもよい。この場合、複数の人肌模型は、例えば、机上に配置して用いられる。
【0013】
支持板10は、厚紙又はポリエチレンやポリスチレン等の樹脂で形成される。本実施形態では、支持板10は、凹凸の無い板として形成される。しかしながら、支持板10は、その上面に、配置される人肌模型20、30の数と同数だけ凹部を有するように形成されてもよい。この場合、各凹部は、人肌模型20、30の底面形状と相補的な形状を有する。
【0014】
また、支持板10には、各人肌模型20、30に近接して、各人肌模型20、30と並んで、対応する人肌模型20、30の性質に関する表示12、13が設けられる。
【0015】
図1に示した例では、第1人肌模型20は、スキンケア商品の使用前における人肌の状態を模して形成されている。特に、本実施形態では、後述するように表面層の弾性係数が第2人肌模型30の表面層の弾性係数よりも小さい。したがって、支持板10には、第1人肌模型20に近接して第1人肌模型20の性質に関する「使用前」及び「弾性:小」との文字が記載される。一方、第2人肌模型30は、スキンケア商品の使用後における人肌の状態を模して形成されている。特に本実施形態では、表皮を硬くする成分(表皮の弾性を大きくする成分)を配合しているスキンケア商品の使用後における人肌の状態を模して形成されている。このため、後述するように、第2人肌模型30の表面層の弾性係数が、第1人肌模型20の表面層の弾性係数よりも大きい。したがって、支持板10には、第2人肌模型30に近接して第2人肌模型30の性質に関する「使用後」及び「弾性:大」との文字が記載される。
【0016】
なお、後述するように表皮を柔らかくする成分(表皮の弾性を小さくする成分)を配合しているスキンケア商品を対象とする場合には、表面層21、31は、第2表面層31の弾性係数が第1表面層21の弾性係数よりも小さくなるように形成される。したがって、このような場合には、支持板10には、第1人肌模型20に近接して「使用前」及び「弾性:大」との文字が記載される。加えて、この場合、第2人肌模型30に近接して「使用後」及び「弾性:小」との文字が記載される。
【0017】
また、支持板10に設けられる表示は、各人肌模型20、30の性質に関する表示を含んでいれば、数値や図表等、他の態様の表示であってもよい。人肌模型20、30に関する表示は、スキンケア商品の使用の有無に関する表示、使用したスキンケア商品の種類に関する表示、スキンケア商品の使用期間に関する表示、粘弾性に関する表示のうち少なくともいずれか一方を含む。或いは、支持板10には斯かる表示が設けられなくてもよい。
【0018】
人肌模型20、30は、人肌(皮膚)を模して形成され、その厚さが2~200mm、2~100mm、2~50mm、又は2~10mmになるように形成される。また、人肌模型20、30は、人肌と同様に積層構造を有する。本実施形態では、人肌模型20、30は、図2に示したように、それぞれ表面層21、31及び基層22、32を備える。表面層21、31は人肌の表皮を模して形成され、基層22、32は人肌の真皮又は皮下組織を模して形成される。
【0019】
具体的には、第1人肌模型20が第1表面層21及び第1基層22を備え、第2人肌模型30が第2表面層31及び第2基層32を備える。本実施形態では、基層22、32は、円筒状に形成され、その一方の端面(底面)が支持板10の上面に接着される。また、基層22、32の反対側の端面(上面)上には表面層21、31が設けられる。なお、支持板10に設けられた凹部に人肌模型20、30が嵌め込まれる場合には、基層22、32は支持板10に接着されなくてもよい。また、基層22、32は直方体として形成されてもよい。
【0020】
本実施形態では、表面層21、31はウレタン系高分子、例えば、乾式用ウレタン系高分子(すなわち、一液型ウレタン系高分子又は二液型ウレタン系高分子)を主成分として形成される。特に、表面層21、31は、一液型ウレタン系高分子を主成分として形成されるのが好ましい。一液型ウレタンとしては、ラッカー型、湿気硬化型、ブロックイソシアネート硬化型のいずれの型のウレタンも用いることができる。この一液型ウレタン高分子は、溶剤、具体的にはメチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン、トルエン、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等を必要に応じて適宜組み合わせた有機溶剤中に溶解して用いることができる。また、表面層21、31は、ウレタンの他に、必要に応じて、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、顔材、安定剤、離型剤、触媒等の添加剤を含んでいてもよい。
【0021】
なお、二液型ウレタンとしては、例えば、イソシアネートとポリオールを主反応させて形成されるウレタンを用いることができる。イソシアネートとしては、例えばポリメリックMDI、ピトリレンジイソシアネートTODIやジフェニルメタンジイソシアネートMDI、ジアニシジンイソシアネートDADL、パラフェニレンジイソソアネートPPDI等が挙げられる。また、ポリオールとしては、例えばポリプロピレングリコールPPG、ポリテトラメチレンエーテルグリコールPTMG、ポリマーポリオール等のポリエーテル系;ポリ炭酸エステル、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール等のエステル系;その他ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。
【0022】
表面層21、31は、その厚さが3~200μm、5~100μm又は10~50μmとなるように形成される。また、表面層21、31の上面(基層22、32側とは反対側の表面)には、人肌の表面に形成されるキメを模して、溝が形成されてもよい。具体的には、表面層21、31の上面には、キメの三角形の辺に相当する溝の長さが3~200μm、5~100μm又は10~50μmであり、且つ溝の深さが5~200μm、10~100μm又は15~50μmであるように溝が形成されてもよい。また、表面層21、31の上面に形成される凹凸は必ずしもキメの三角形を模した溝でなくてもよい。したがって、例えば、表面層21、31の上面には、ブラスト加工された金型を用いてシボ加工を行うことで、凹凸形状が形成されてもよい。
【0023】
また、第1表面層21と第2表面層31とは、互いに対して粘弾性が異なるように形成される。例えば、第1表面層21と第2表面層31とは、主剤と硬化剤の含有率が互いに異なるように構成され、その結果、互いに対して粘弾性が異なっている。或いは、第1表面層21と第2表面層31とは、ウレタン系高分子の種類が互いに異なっており、その結果、互いに対して粘弾性が異なっている。図1に示した例では、表面層21、31は、第1表面層21の弾性係数が第2表面層31の弾性係数よりも大きくなるように形成される。
【0024】
なお、各人肌模型の表面層の粘弾性は、人肌模型キットを用いて使用前後の人肌の触感の変化を顧客に体感させようとするスキンケア商品の種類によって変わる。例えば、表皮を柔らかくする成分を配合しているスキンケア商品を対象とする場合には、本実施形態のように、表面層21、31は、第2表面層31の弾性係数が第1表面層21の弾性係数よりも小さくなるように形成される。逆に、表皮を硬くする成分(表皮の弾性を大きくする成分)を配合しているスキンケア商品を対象とする場合には、表面層21、31は、第2表面層31の弾性係数が第1表面層21の弾性係数よりも大きくなるように形成される。
【0025】
基層22、32は、ウレタン系高分子、例えば、上述したような乾式用ウレタン系高分子(すなわち、一液型ウレタン系高分子又は二液型ウレタン系高分子)を主成分として形成される。また、基層22、32は、乾式発泡型のウレタン系高分子を主成分として形成されてもよい。本実施形態では、第1基層22及び第2基層32は同一に形成される。
【0026】
上述したように、表面層21、31は人肌(皮膚)の表皮を模して形成され且つ基層22、32は真皮又は皮下組織を模して形成されている。したがって、各人肌模型20、30において、表面層21、31は、その弾性係数が基層22、32の弾性係数よりも大きくなるように形成される。また、表面層21、31は、その粘性係数が基層22、32の粘性係数と等しくなるように形成されてもよいし、異なるように形成されてもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、表面層21、31及び基層22、32共にウレタン系高分子を主成分として形成されている。しかしながら、表面層21、31及び基層22、32は、人肌を模して形成することができれば、シリコーン等、他の材料で形成されてもよい。また、本実施形態では、表面層21、31の上面にキメを模した溝が形成されるが、斯かる溝は形成されていなくてもよい。
【0028】
≪製造方法≫
このように構成される人肌模型キットの製造方法について説明する。上述した人肌模型キットを製造するに当たっては、まず、対象のスキンケア商品の評価試験が行われる。評価試験では、例えば、複数のパネルにスキンケア商品を使用してもらい、スキンケア商品の使用前後における人肌の粘弾性の変化が検出される。
【0029】
具体的には、スキンケア商品の使用前に、各パネルの肌の粘弾性に関するパラメータ(例えば、弾性係数や粘性係数。以下、「粘弾性パラメータ」という)の値が測定され、測定された値の全てのパネルについての平均値が算出される。その後、一回、数回又は一定期間に亘ってスキンケア商品を使用した後に、各パネルの肌の粘弾性パラメータの値が同様に測定され、測定された値の全てのパネルについての平均値が算出される。そして、スキンケア商品の使用前における上記平均値とスキンケア商品の使用後における上記平均値との差が算出される。
【0030】
人肌模型用の表面層は、評価試験によって算出された差を考慮して作成される。具体的には、第1人肌模型用の表面層と第2人肌模型用の表面層とは、これらの粘弾性パラメータの値の差が、評価試験において算出された差に一致するように、作成される。
【0031】
一方、基層は、第1人肌模型用及び第2人肌模型用共に同一に作成される。このようにして作成された基層上に、上述したように作成された表面層が接着されて人肌模型が作成される。作成された人肌模型は支持板上に接着されて人肌模型キットが作成される。
【0032】
<第2実施形態>
次に、図3を参照して、第二実施形態に係る人肌模型キット1について説明する。第二実施形態に係る人肌模型キット1の構成は、基本的に第1実施形態に係る人肌模型キットの構成と同様である。以下では、第一実施形態に係る人肌模型キットの構成と異なる点を中心に説明する。図3は、第二実施形態に係る人肌模型キット1の、図2と同様な、概略的な断面側面図である。
【0033】
本実施形態では、基層が、上基層22a、32a及び下基層22b、32bの二つに分かれて形成される。したがって、人肌模型20、30は、図3に示したように、それぞれ表面層21、31と上基層22a、32aと下基層22b、32bとを備える。表面層21、31は人肌の表皮を模して形成され、上基層22a、32aは人肌の真皮を模して形成され、下基層22b、32bは人肌の皮下組織を模して形成される。
【0034】
上基層22a、32aは、その厚さが0.5~4mmとなるように形成される。また、下基層22b、32bは、その厚さが1~100mmとなるように形成される。本実施形態では、下基層22b、32bは円筒状に形成され、その一方の端面(底面)が支持板10の上面に接着される。また、下基層22b、32bの反対側の端面(上面)は上基層22a、32aの一方の端面(底面)に接着される。上基層22a、32aの反対側の端面(上面)上には表面層21、31が設けられる。
【0035】
上基層22a、32aと下基層22b、32bとは、互いに対して粘弾性が異なるように形成される。具体的には、本実施形態では、上基層22a、32aの弾性係数は下基層22b、32bの弾性係数よりも大きい。また、上基層22a、32aの粘性係数は下基層22b、32bの粘性係数と等しくなるように形成されてもよいし、異なるように形成されてもよい。
【0036】
本実施形態では、このように人肌模型の積層構造を人肌の積層構造に近づけることにより、顧客が人肌模型に触れたときの触感を人肌の実際の触感に近づけることができる。なお、各人肌模型は、本実施形態では3層の積層構造で形成されているが、4層以上の積層構造で形成されてもよい。
【0037】
<第3実施形態>
次に、図4及び図5を参照して、第三実施形態に係る人肌模型キット1について説明する。第三実施形態に係る人肌模型キット1の構成は、基本的に第1実施形態及び第2実施形態に係る人肌模型キットの構成と同様である。以下では、第一実施形態及び第二実施形態に係る人肌模型キットの構成と異なる点を中心に説明する。
【0038】
図4は、第三実施形態に係る人肌模型キット1の、図1と同様な、概略的な斜視図である。また、図5は、第三実施形態に係る人肌模型キット1の、図2と同様な、概略的な断面側面図である。図4に示したように、本実施形態に係る人肌模型キット1は、第1人肌模型20、第2人肌模型30及び第3人肌模型40の、三つの人肌模型を備える。本実施形態では、第1人肌模型20はスキンケア商品の使用前における人肌の状態を模して形成されている。また、第2人肌模型30及び第3人肌模型40は、それぞれスキンケア商品を短期間使用した後及び長期間使用した後の人肌の状態を模して形成されている。
【0039】
図5に示したように、本実施形態においても、第1人肌模型20は第1表面層21及び第1基層22を、第2人肌模型30は第2表面層31及び第2基層32を、第3人肌模型40は第3表面層41及び第3基層42を、それぞれ備える。
【0040】
第1表面層21、第2表面層31及び第3表面層41は、互いに対して粘弾性が異なるように形成される。図4に示した例では、表面層21、31、41は、第1表面層21、第2表面層31、第3表面層41の順番に弾性係数が大きくなるように形成される。
【0041】
また、本実施形態では、支持板10には、第1人肌模型20に近接して、第1人肌模型20の性質に関する「使用前」及び「弾性:小」との文字が記載される。また、支持板10には、第2人肌模型30に近接して、第2人肌模型30の性質に関する「短期使用後」及び「弾性:中」との文字が記載される。さらに、支持板10には、第3人肌模型40に近接して、第3人肌模型40の性質に関する「長期使用後」及び「弾性:大」との文字が記載される。
【0042】
なお、上記実施形態では、同一のスキンケア商品の使用期間の異なる人肌を模して複数の人肌模型が用いられてもよい。しかしながら、例えば、異なるスキンケア商品を使用した後の人肌を模して複数の人肌模型が用いられてもよい。また、上記実施形態では、人肌模型キットは3つの人肌模型を備えているが、人肌模型キットは4つ以上の人肌模型を備えてもよい。
【0043】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【実施例
【0044】
表面層の貯蔵弾性率のみを変更した複数の人肌模型を用いて、表面層の貯蔵弾性率と人肌模型を押したときの触感との関係を検証した。
【0045】
検証では、表面層の貯蔵弾性率の異なる三つの人肌模型のサンプルを用いた。表面層の貯蔵弾性率はアイティー計測制御株式会社製の動的粘弾性測定DVA-220により測定した。三つのサンプルA、B及びCの表面層の貯蔵弾性率は、それぞれ25.3MPa、13.1MPa及び4.4MPaであった。また、三つのサンプルの基層には、共にビューラックス社製の弾力モデルを用いた。
【0046】
斯かる三つのサンプルについて、10人の女性の評価者によるハリ感の評価を行った。ハリ感の評価では、各評価者がハリ感の高い順に順位を付ける順位法を用いた。この結果を図6に示す。図6からわかるように、評価者は貯蔵弾性率が高いほどハリ感が高く、したがって若々しい肌であると感じることがわかった。すなわち、基層が同一であっても、表面層の粘弾性のみが互いに異なることによって、評価者が感じるハリ感が変化することがわかった。
【符号の説明】
【0047】
1 人肌模型キット
10 支持板
20 第1人肌模型
21 第1表面層
22 第1基層
30 第2人肌模型
31 第2表面層
32 第2基層
図1
図2
図3
図4
図5
図6