(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】眼疾患を治療するための脱メチル化
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20231109BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20231109BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231109BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231109BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20231109BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20231109BHJP
C12N 15/863 20060101ALN20231109BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20231109BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20231109BHJP
C12N 15/87 20060101ALN20231109BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K38/45
A61K35/76
A61P27/02
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/87 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022049779
(22)【出願日】2022-03-25
(62)【分割の表示】P 2020568461の分割
【原出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508228061
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スコブロニスカ-クラヴジック,ドロタ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ダニエル リー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ダニエル
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0342496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 38/00
A61K 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超長鎖脂肪酸様2遺伝子(ELOVL2)
タンパク質又はポリペプチドをコードする
ウイルスベクターを含む、加齢性
黄斑変性症(AMD)を治療
又は予防するための医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が
、硝子体内、網膜下、結膜下、テノン嚢下、又は後強膜近傍経路による眼への投与のために処方されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターから選択される、請求項
1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ヒトへの投与に好適な1又は複数の賦形剤を更に含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記加齢性
黄斑変性症(AMD)が、乾式AMDである、請求項
1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ウイルスベクターが、ELOVL2タンパク質又はポリペプチドをコードする配列の転写および翻訳に必要な要素を含み、前記必要な要素が、網膜細胞において発現する
構成的若しくは誘導的プロモーター
、及び/又はエンハンサー、を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記網膜細胞が、網膜色素上皮(RPE)および/または光受容体を含む、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
RPEにおいて発現するプロモーターがVMD2プロモーターである、請求項
7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月11日および2018年8月9日にそれぞれ出願された米国仮出願第62/683,292号および同第62/716,554号の優先利益権を主張し、これらの出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願には、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表が含まれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年5月20日に作成された該ASCIIコピーの名称は、24978-0488_SL.txtであり、サイズは、17,271バイトである。
【0003】
本発明は、眼科および細胞生物学の分野を対象とする。具体的には、本発明は、加齢性黄斑変性症(AMD)、および他の眼疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0004】
人口の観点から、加齢性疾患のリスク、精神的および肉体的パフォーマンス、ならびに死亡率を予測する上で、生活年齢は間違いなく最も重要な生物学的特性である[1]。しかしながら、生活年齢の使用は、同じような年齢の個人間の大きな生物学的変動を説明する上で制限される。生物学的年齢は、ライフスタイル、遺伝学、疾患、および環境により影響を及ぼされる異なる加齢状態を定量化しようとする概念である。環境、ならびに喫煙および食生活などのライフスタイルの選択も、加齢性疾患に関して明確な関わり合いを有する[2]。疫学研究は人間の寿命への影響の定量的評価を提供することに成功したが、分子生物学の進歩は現在、死亡率の人口問題以上を注視し、単一の生物内の加齢に対する疾患および他の要因の特定の影響に焦点を当てる能力を提供する。
【0005】
幅広い年齢範囲にわたるヒト個人の大規模コホートの全血試料からの470,000CpGマーカーでの測定値を使用することにより、ゲノム全体のDNAメチル化パターンに基づく加齢の定量的モデルが開発された[3]。この方法は、年齢を予測するのに非常に正確であり、また、性別、遺伝的バリアント、および疾患を含む加齢に関連する要因を識別し得る¥[3,4]]。モデルは複数の組織で機能し、これは、メチロームの変化により部分的に調節される共通の分子時計の可能性を示唆している。さらに、これらのメチル化パターンは、細胞の老化および加齢と強く相関している。いくつかの遺伝子は、生活年齢の増加につれて次第によりメチル化されるようになることが観察された。特に、ELOVL2(超長鎖脂肪酸様2の伸長)は、加齢モデルにより明らかにされているように、ヒトは加齢するにつれてメチル化が増加することを非常に確実に示す[3]。
【0006】
ELOVL2は、長い(C22およびC24)ω3およびω6多価不飽和脂肪酸(VLC-PUFA)の合成に関与する膜貫通タンパク質をコードする[5]。具体的には、ELOVL2はドコサペンタエン酸(DPA)(22:5n-3)を22:6n-3の前駆体である24:5n-3、ドコサヘキサエン酸(DHA)に変換することができる[6]。DHAは、網膜および脳の主要な多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。光受容体におけるその存在は、健康な網膜機能を促進し、明るい光および酸化ストレスによる損傷から保護する。低ELOVL2発現は低レベルのDHAに関連しており[7]、これは同様に多くの他の網膜変性疾患の中でも加齢性黄斑変性症(AMD)に関連している[8]。一般に、PUFAは、エネルギー生成、炎症の調節、および細胞膜の完全性の維持を含む重要な生物学的機能に関与している。したがって、ELOVL2のメチル化は、異なる生物学的経路の調節を通じて加齢プロセスの役割を担っている可能性がある。
【0007】
AMDは、黄斑の変性疾患であり、先進国の高齢者における失明の主な原因である。これは、遺伝的、環境的、および代謝的要因が関与する多因子性疾患であり、現在、それに対する治療法または効果的な予防法はない。多くの遺伝子が危険因子として特定されているが、多くはまだ不明である。AMDが進行すると、視力の中心がぼやけ、最終的に盲点が発生する可能性がある。AMDは、湿式AMDおよび乾式AMDの2つの形態で発生する。AMD患者の約90%に影響を与える乾式AMDでは、ドルーゼンと呼ばれる無細胞の多形性破片の限局性沈着が、通常、この疾患の最初に観察される臨床的特徴である。VLC-PUFAの合成に関与する別の脂肪酸エロンガーゼであるELOVL4は、視力喪失を引き起こす若年形態の黄斑変性症であるスターガルト黄斑ジストロフィーに関わっている¥[9,10]。
【0008】
AMDは、網膜における酸化ストレスに関連している[11]。酸化ストレスは、炎症をもたらし、マクロファージの活性化の発達に寄与し得る[12]。酸化リン脂質は、酸化ストレスの信頼できるマーカーであることが示されており、それが網膜色素上皮(RPE)およびマクロファージに結合することにより炎症が開始され、下流の炎症カスケードを活性化する[13]。酸化修飾されたタンパク質および脂質は、ドルーゼンおよびブルッフ膜にも見られる[14]。網膜において高度に濃縮されたリン脂質であるホスファチジルコリンは、ヘッドグループのホスホコリンを含有する。ホスホコリンの酸化エピトープは、ホスホコリンに対する天然抗体であるTEPC-15により認識され得[15]、ヒトAMD眼のドルーゼンと共局在することが示されている[16]。AMDに関連する主要なタンパク質のうちの1つであるHTRA1は、AMD眼のドルーゼンと共局在することもわかっている[17]。さらに、C3補体フラグメント、C5、および膜侵襲複合体C5b-9を含む、補体カスケードのいくつかの構成成分がドルーゼン内で見られる[18]。
【0009】
加齢性黄斑変性症の新しい治療法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、加齢性眼疾患および状態を治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、有効量の1つ以上の核酸脱メチル化化合物を必要な患者に投与することを含む。本発明は、加齢性眼疾患を治療するための方法を提供する。
【0011】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患または状態が加齢性黄斑変性症であることを提供する。
【0012】
実施形態では、本発明は、脱メチル化化合物が、5-アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、プロカインアミド、プロカイン、ヒドララジン、バルプロ酸、およびEGCGからなる群から選択されることを提供する。
【0013】
実施形態では、本発明は、本組成物が眼科投与用に処方されることを提供する。
【0014】
実施形態では、本発明は、投与が眼への非経口的投与であることを提供する。
【0015】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患または状態の治療を必要とする患者におけるELOVL2発現を増加させることを含む、それを治療する方法を提供する。
【0016】
実施形態では、本発明は、発現がELOVL2プロモーターの脱メチル化により増加されることを提供する。
【0017】
実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス送達を使用して、有効量のELOVL2 mRNAを必要な患者に投与することにより発現が増加することを提供する。
【0018】
実施形態では、本発明は、眼科的に許容される製剤中に核酸脱メチル化化合物を含む眼科用医薬組成物を提供する。
【0019】
実施形態では、本発明は、脱メチル化化合物が5-アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、プロカインアミド、プロカイン、およびEGCGからなる群から選択されることを提供する。
【0020】
他の実施形態では、本方法は、アデノ随伴ウイルス送達を使用して、必要な対象に有効量のELOVL2 mRNAを投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】WI-38細胞におけるELOVL2発現およびメチル化を示す。
図1Aは、PD35、45、55のWI-38細胞におけるqPCRによるELOVL2発現を示す。入力の%が高いほど、DNAメチル化が高いことを示す。(
**p<0.005ANOVA、
*p<0.05、t検定)。
【
図1B】
図1Bは、メチル化DNA免疫沈降およびそれに続くqPCRによるWI-38細胞におけるELOVL2プロモーター領域のメチル化レベルを示す。プライマーは、CpGマーカーcg16867657、cg24724428、およびcg21572722を含む領域を増幅する。
【
図1C】
図1Cは、経時的にカバーされた表面積により測定された場合のWI-38ノックダウン細胞およびルシフェラーゼノックダウン対照の増殖を示す。
【
図1D】
図1Dは、WI-38ノックダウン細胞におけるベータガラクトシダーゼ染色による老化率を示す。(n=3、
*p<0.05、
**p<0.005、t検定)。
【
図2A】PD52 WI-38細胞におけるDNAメチル化の操作を示す。
図2Aは、未処理の対照および5-Aza-dcで処理したWI-38細胞におけるMeDIPおよびそれに続くqPCRにより測定された場合のELOVL2プロモーターのメチル化を示す。
【
図2B】
図2Bは、未処理の対照および5-Aza-dcで処理したWI-38細胞におけるqPCRによるELOVL2発現を示す。
【
図2C】
図2Cは、2μMの5-Aza-dcで処理されたWI-38細胞におけるベータガラクトシダーゼ染色による老化率を示す。(n=3、
*p<0.05、t検定)。
【
図3A】ELOVL2および網膜を示す。
図3Aは、様々な年齢のマウスにおけるqPCRによるマウス網膜におけるELOVL2発現を示す。
【
図3B】
図3Bは、様々な年齢のマウス網膜におけるELOVL2のウエスタンブロットを示す(アスタリスク-非特定のバンド)。
【
図3C】
図3Cは、様々な年齢のマウス網膜におけるELOVL2プロモーターのメチル化を示す。
【
図3D】
図3Dは、2、6、12、および24ヶ月齢の野生型マウスの自家蛍光撮像を示す。暗所視応答の代表的なERGトレースが画像の下に示される。
【
図3E】
図3Eは、ERGb波の振幅により示される、様々な年齢のマウスの暗所視応答を示す。(n=4、
**p<0.005、ANOVA)。
【
図4A】ELOVL2運命切り替えマウスにおける網膜表現型を示す。
図4Aは、ELOVL2の基質特異性を変化させるCRISPR-Cas9を介した戦略を示す。
図4Aは、出現順に、それぞれ、配列番号17~20を開示する。
【
図4B】
図4Bは、野生型およびホモ接合型の運命切り替えマウス眼底の自家蛍光撮像を示す。暗所視ERG応答は、画像の下のトレースに示される。
【
図4C】
図4Cは、6ヶ月の野生型およびフレームシフト変異マウスにおけるERGからの暗所視b波の振幅を示す。
【
図4D】
図4Dは、WTおよびC217Wマウス網膜におけるHtra1およびT-15の免疫染色を示す。矢印は、ドルーゼン様凝集体を示す。
【
図4E】
図4Eは、HTRA1およびT-15に陽性のドルーゼン様凝集体の定量化を示す。(n=4、
*p<0.05、
**p<0.005、t検定)。
【
図5A】マウスの眼における5-Aza-dc注射を示す。
図5Aは、PBSまたは5-Aza-dcの眼内注射後のマウス網膜におけるMeDIPによるELOVL2メチル化を示す。
【
図5B】
図5Bは、PBSまたは5-Aza-dcの眼内注射後のマウス網膜におけるqPCRによるELOVL2発現を示す。
【
図5C】
図5Cは、PBSまたは5-Aza-dcの眼内注射後のマウスの眼における暗所視ERG応答を示す。
【
図5D】
図5Dは、ERGからの暗所視b波の振幅を示す。(n=4、
*p<0.05、t検定)。
【
図6A】WI-38細胞の加齢特性を示す。
図6Aは、集団倍増(PD)35、45、55でカバーされる表面積により測定された場合のWI-38細胞の増殖を示す。
【
図6B】
図6Bは、WI-38細胞におけるベータガラクトシダーゼ染色による老化率を示す。
【
図6C】
図6Cは、WI-38細胞の細胞形態およびベータガラクトシダーゼ染色の代表的な画像を示す。
【
図6D】
図6Dは、ルシフェラーゼノックダウン対照と比較した、ELOVL2ノックダウンWI38細胞の細胞形態およびベータガラクトシダーゼ染色の代表的な画像を示す。
【
図6E】
図6Eは、qPCRによるWI-38細胞におけるELOVL2ノックダウン効率を示す。(n=3、
**p<0.005、t検定)。
【
図7A】IMR-90細胞の加齢特性を示す。
図7Aは、集団倍増(PD)35、45、55でカバーされる表面積により測定された場合のIMR-90細胞の増殖を示す。
【
図7B】
図7Bは、IMR-90細胞におけるベータガラクトシダーゼ染色による老化率を示す。
【
図7C】
図7Cは、IMR-90細胞におけるqPCRによるELOVL2発現を示す。
【
図7D】
図7Dは、qPCRによるIMR-90細胞におけるELOVL2ノックダウン効率を示す。
【
図7E】
図7Eは、IMR90細胞におけるルシフェラーゼノックダウン対照を使用したELOVL2ノックダウン形態の代表的な画像を示す。(n=3、
*p<0.05、
**p<0.005、t検定)。
【
図8A】WTマウス網膜の加齢特性を示す。
図8Aは、2ヶ月齢、6ヶ月齢、1歳、および2歳でのWTマウス網膜の自家蛍光画像を示す。
【
図8B】
図8Bは、2ヶ月齢、6ヶ月齢、1歳、および2歳のWTマウスにおけるERGの暗所視応答を示す。
【
図8C】
図8Cは、3ヶ月齢および2歳の野生型マウスにおけるERGからの振動電位を示す。
【
図8D】
図8Dは、3ヶ月齢および2歳の野生型マウスにおけるERGからの10Hzフリッカー応答を示す。
【
図9A】
図9Aは、エイムスマウスのマウス網膜MeDIPを示す。入力の%が高いほど、DNAメチル化が高いことを示す。Y=3ヶ月齢のWT、O=2歳のWT、AY=3ヶ月齢のエイムス、AO=2歳のエイムス。
【
図9B】
図9Bは、qPCRによるエイムスマウスのELOVL2発現を示す。(n=3、
*p<0.05、
**p<0.005、t検定)。
【
図10A】ELOVL2-ELOVL5運命切り替えマウスを示す。
図10Aは、ヒトとマウスとの間のELOVL2およびELOVL5アミノ酸配列の類似性を示す。赤い矢印は、標的となるC217W変異を示す。
図10Aは、出現順に、それぞれ、配列番号21~24を開示する。
【
図10D】
図10Dは、WTおよびC217Wのタンパク質配列アラインメントを示す。変異は、青色で強調表示される。
図10Dは、出現順に、それぞれ、配列番号26~29を開示する。
【
図10E】
図10Eは、ELOVL2変異型マウスのオフターゲット分析を示す。
図10Eは、出現順に、それぞれ、配列番号30、31、30、および32を開示する。
【
図11A-1】C217Wマウス網膜の加齢特性を示す。
図11Aは、4ヶ月齢、6ヶ月齢、8ヶ月齢、および1歳でのWT対C217Wマウス網膜の自家蛍光画像を示す。
【
図11A-2】C217Wマウス網膜の加齢特性を示す。
図11Aは、4ヶ月齢、6ヶ月齢、8ヶ月齢、および1歳でのWT対C217Wマウス網膜の自家蛍光画像を示す
【
図11B】
図11Bは、4ヶ月齢、6ヶ月齢、および8ヶ月齢のWT対C217WマウスにおけるERGの暗所視応答を示す。
【
図11C】
図11Cは、野生型およびフレームシフト変異マウスにおけるERGからの振動電位を示す。
【
図11D】
図11Dは、野生型およびフレームシフト変異マウスにおけるERGからの10Hzフリッカー応答を示す。
【
図12A】ドルーゼン様凝集体の特性を示す。
図12Aは、WTおよびC217Wマウス網膜におけるHtra1、C3、およびC5b-9の免疫染色を示す。矢印は、ドルーゼン様凝集体を示す。
【
図12B】
図12Bは、C3およびC5b-9に陽性のドルーゼン様凝集体の定量化を示す。
【
図12C】
図12Cは、C3、ならびにWTおよびC217Wマウス網膜の免疫染色を示す。矢印は、ドルーゼン様凝集体を示す。
【
図12D】
図12Dは、C3に陽性のドルーゼン様凝集体の定量化を示す。(n=4、
**p<0.005、t検定)。
【
図13】は、PBSおよび5-Aza-dcを注射したマウスの眼におけるERGの暗所視応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が各々参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかの如く同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本発明の実施は、特に明記しない限り、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技法を使用し、これらは当業者の技量の範囲内である。そのような技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.(Sambrook et al.,1989)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987,and periodic updates)、PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994)、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,(Lippincott,Williams&Wilkins 2003)、およびRemington,The Science and Practice of Pharmacy,22th ed.,(Pharmaceutical Press and Philadelphia College of Pharmacy at University of the Sciences 2012)などの文献で完全に説明されている。
【0024】
本発明またはその好ましい実施形態(複数可)の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する」という用語は、包括的であることを意図し、列挙される要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
【0025】
2つ以上の項目の列挙において「および/または」という用語が使用される場合、列挙された項目のいずれか1つを単独で使用しても、または列挙された項目のいずれか1つ以上と組み合わせて使用してもよいことを意味する。例えば、「Aおよび/またはB」という表現は、AおよびBの一方または両方、すなわち、Aのみ、Bのみ、またはAとBとの組み合わせを意味することが意図される。「A、Bおよび/またはC」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、またはAとBとCとの組み合わせを意味することが意図される。
【0026】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「~からなる」および/または「本質的に~からなる」を含むことが理解される。
【0027】
範囲形式での説明は、便宜上かつ簡潔さのためにすぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、考えられるすべての部分範囲とその範囲内の個々の数値が具体的に開示されているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6が具体的に開示されているとみなされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。また、本明細書では、値または範囲は、「約」、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、として表され得る。そのような値または範囲が表される場合、開示される他の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値まで、列挙された特定の値を含む。同様に、先行詞「約」を使用することにより値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。本明細書で開示される値がいくつかあり、各値が、本明細書では、値自体に加えて、「約」その特定の値としても開示されることがさらに理解されよう。実施形態では、「約」は、例えば、列挙された値の10%以内、列挙された値の5%以内、または列挙された値の2%以内を意味するために使用されうる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」は、治療されるヒトまたは動物の対象を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される組成物を指し、ここで、本組成物は、脱メチレン化化合物(複数可)を含み、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、組み合わせであってよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトおよび/または非ヒト哺乳動物での使用に安全な他の製剤に加えて、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認されていること、または米国薬局方、一般に認められている他の薬局方に列挙されていることを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、脱メチレン化化合物(複数可)とともに投与される、賦形剤、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/またはビヒクルを指す。そのような担体は、水および油などの無菌液体であり得、それには、石油、動物、植物、または合成に由来する油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒が含まれる。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調整するための薬剤もまた、担体であり得る。担体と組み合わせて組成物を作成する方法は、当業者に既知である。いくつかの実施形態では、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張剤、および吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,(Lippincott,Williams & Wilkins 2003)を参照されたい。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除き、本組成物におけるそのような使用が企図される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「療法上有効な」とは、例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)に限定されない加齢性眼疾患に関連する症状を治療もしくは寛解させるか、または何らかの方法で低減するのに十分である量の脱メチル化化合物(複数可)を指す。方法に関して使用される場合、その方法は、加齢性眼疾患に関連する症状を治療もしくは寛解させるか、または何らかの方法で低減するのに十分有効である。例えば、加齢性眼疾患に関して有効量とは、その発病を阻止もしくは予防するか、あるいは疾患病状が始まっている場合は、その疾患の進行を緩和、寛解、安定化、回復、もしくは遅延させるか、またはその疾患の病理学的結果を低減させるのに十分である量である。いずれの場合も、有効量は単回投与で与えても分割投与で与えてもよい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、患者における加齢性眼疾患に関連する症状を少なくとも寛解させることを包含し、その場合、寛解は、広い意味で使用され、治療されている疾患または状態に関連する症状などのパラメータの低度が少なくとも低減することを指す。したがって、「治療」には、疾患、障害、または病的状態、または少なくともそれらに関連する症状が、完全に阻害される(例えば、発生が予防される)かまたは停止され(stopped)(例えば、停止(terminated))、患者がそれ以上その状態、または少なくともその状態を特徴付ける症状に苦しむことがないようにする状況が含まれる。
【0034】
「組み合わせ」という用語は、1つの投薬単位形態における固定された組み合わせ、または組み合わせ投与のための部分のキットのいずれかを指し、キットの場合、1つ以上の脱メチル化化合物および組み合わせパートナー(例えば、「療法剤」または「補助薬剤」とも呼ばれる、以下で説明される別の薬物)が独立して、同時または時間間隔内で別々に投与され得る。いくつかの状況では、組み合わせパートナーは協同的効果、例えば、相乗効果を示す。本明細書で使用される「併用投与(co-administration)」または「併用投与(combined administration)」などの用語は、選択された組み合わせパートナーを、それを必要とする単一の対象(例えば、患者)に投与することが包含されることを意味し、薬剤が必ずしも同じ投与経路または同じ時間で投与されるわけではない治療レジメンが含まれることを意図する。本明細書で使用される「医薬の組み合わせ」という用語は、2つ以上の活性成分の混合または組み合わせにより得られ、活性成分の組み合わせが固定されているものも固定されていないものも含まれる生成物を意味する。「固定された組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、化合物および組み合わせパートナーの両方が単一の実体または用量の形態で同時に患者に投与されることを意味する。「固定されていない組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、化合物および組み合わせパートナーの両方が、特定の時間的制約を設けることなく別々の実体として同時に(simultaneously)、同時に(concurrently)、または連続して患者に投与されることを意味し、ここで、そのような投与により、2つの化合物が療法上有効な濃度で患者の体内で提供される。後者は、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0035】
黄斑変性症は、ブルッフ膜、脈絡膜、神経網膜、および/または網膜色素上皮の異常に関連する中心視力の進行性喪失を特徴とする疾患のファミリーを説明するために使用される臨床用語である。網膜の中心には黄斑があり、これは、直径約1/3~1/2cmである。錐体は密度が高いため、黄斑は、特に中心(中心窩)で詳細な視力を提供する。血管、神経節細胞、内顆粒層および細胞、ならびに網状層はすべて(それらの上にあるのではなく)片側に移動し、それにより光の錐体へのより直接的な経路を可能にする。網膜の下には、脈絡膜、線維組織内に埋め込まれた血管の集まり、および脈絡膜層を覆う色素上皮(PE)がある。脈絡膜血管は、網膜(特に、その視覚細胞)に栄養を提供する。脈絡膜およびPEは、後眼部に見られる。
【0036】
最も一般的な黄斑変性症である加齢性黄斑変性症(AMD)は、視野中心部の視力の進行性喪失、色覚の変化、ならびに異常な暗順応および感受性に関連している。AMDの2つの主な臨床兆候は、乾式または萎縮型形態、および湿式または滲出型形態として記載されている。乾式形態は、網膜中心部または黄斑の萎縮性細胞死に関連しており、読書、運転、または顔の認識などの活動に使用される細かい視力に必要である。これらの乾式AMD患者の約10~20%は、湿式AMDとして既知のAMDの第2の形態に進行する。
【0037】
湿式(新生血管/滲出型)AMDは、黄斑下の網膜の後ろの血管の異常な成長および血管漏出により引き起こされ、これは、網膜の変位、出血、および瘢痕形成をもたらす。その結果、数ヶ月から数年にわたって視覚が低下する。しかしながら、患者は、急速に視力を喪失する可能性がある。すべての湿式AMD症例は、進行性乾式AMDに由来する。湿式形態は、AMDによる失明の85%を占める。湿式AMDでは、血管が体液および血液を漏出すると、瘢痕組織が形成され、網膜中心部が破壊される。
【0038】
緑内障は、失明の主な原因である。「緑内障」という用語は、眼の多くの異なる障害に適用されるが、すべてのタイプの緑内障に共通するのは、眼内の圧力が上昇して、視神経が破滅する現象である。緑内障のほとんどの形態では、視力の著しい喪失が発生するまで、痛みまたは視力の低減などによる圧力の上昇は個人により感知されない。健康な眼では、体液(房水)が前房からフィルター状の組織塊(小柱網)を通過し、強膜における接続された一連の静脈に流れる。緑内障(開放隅角緑内障)が最も一般的に遭遇する形態では、圧力上昇は、小柱網を通る流出経路の閉塞に起因する。緑内障を治療する方法は、医薬剤および手術という2つの一般的な形態をとっている。
【0039】
糖尿病は、ほぼ1,600万人のアメリカ人に影響を与える、4番目に多い死因であり、その3分の1は診断されておらず、年間1,000億ドル以上のコストがかかり、これは、米国の医療費の15%を占めている。毎年約80万の糖尿病の新しい症例が発症している。2030年までに、その数は米国では5,000万人に達し、世界では少なくとも3億人に達する可能性がある。糖尿病は、米国の20~74歳の人々における新たな失明の主な原因である。網膜症は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)の診断後すぐに発症し始め、15年後の有病率はほぼ100%である。米国では100万人の人々が、IDDMまたはI型糖尿病を有する。インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)またはII型糖尿病(現在1500万人)では、患者の約21%が診断時に網膜症を有しており、60%が20年後に発症している。II型糖尿病患者は過去30年間で3倍になり、65歳以上のアメリカ人の半数が関与している。増殖性網膜症は、NIDDMの10~20%で発生する。Brechner R J,et al,JAMA 1993;270:1714-1718。
【0040】
黄斑変性症、または加齢性黄斑変性症(AMD)は、網膜の中心部に影響を与え、米国の65歳以上の人々の失明の主な原因である。AMDは、1,300万人の人々に影響を与え、約120万人において障害を引き起こす。75歳以上の患者の約30%がAMDを有し、残りの23%が5年以内にAMDを発症する。AMDの有病率は年齢とともに、55~64歳の患者の16.8%から65~74歳の患者の25.6%まで増加し、75歳以上の患者では最大42%となる。現在、硬いもしくは柔らかいドルーゼン(細胞破片の沈着)、網膜色素上皮(RPE)の変化、または光受容体およびRPEの萎縮を特徴とする形態である乾式または萎縮型AMDのための既知の治療法はない。この形態は、すべての症例の約90%を占めている。AMDの残りの症例は、血管新生および滲出を特徴とする「湿式」形態を有する。Pratt S G,Review of Ophthalmology August 1998:42-50。
【0041】
本発明は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、眼の血管新生(脈絡膜、角膜、または網膜組織に影響を与える眼の血管新生など)、およびELOVL2などの遺伝子のメチル化が関与する他の眼の状態などの眼に関連する状態または疾患の治療のための脱メチル化剤に関する。AMDの治療には、AMDの乾式および湿式の両方が含まれる。
【0042】
本開示は、治療を必要とする対象に有効量の少なくとも1つの脱メチル化剤を投与することを含む、加齢性眼疾患または状態を治療、寛解、または予防するための方法を提供する。
【0043】
実施形態では、本発明は、脱メチル化剤が超長鎖脂肪酸様2遺伝子(ELOVL2)の伸長の発現を増加させ、かつ/またはELOVL2酵素のレベルを増加させ、かつ/またはレチナール22:6(n-3)ドコサヘキサエン酸(DHA)および22:5(n-6)、ドコサペンタエン酸(DPA)のレベルを増加させることを提供する。
【0044】
実施形態では、本発明は、脱メチル化剤が5-アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、プロカインアミド、プロカイン、ヒドララジン、バルプロ酸、および没食子酸エピガロカテキン(EGCG)から選択されることを提供する。
【0045】
実施形態では、本発明は、脱メチル化剤が硝子体内、網膜下、結膜下、テノン嚢下、または後強膜近傍経路により眼に投与されることを提供する。
【0046】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患が加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性眼疾患、緑内障、低視力、またはドライアイであることを提供する。
【0047】
実施形態では、本発明は、脱メチル化剤が徐放性製剤として投与されることを提供する。
【0048】
実施形態では、本発明は、ELOVL2をコードする有効量のmRNAを眼に投与することにより、眼におけるELOVL2酵素、ならびに/または22:6(n-3)ドコサヘキサエン酸(DHA)および22:5(n-6)ドコサペンタエン酸(DPA)のレベルを増加させることを含む、加齢性眼疾患または状態を治療、寛解、または予防するための方法を提供し、ここで、mRNAは、ウイルスベクターを使用して送達される。
【0049】
実施形態では、本発明は、ウイルスベクターがアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターから選択されることを提供する。
【0050】
実施形態では、本発明は、mRNAがリポソーム、またはマイクロ/ナノ粒子などの非ウイルスベクターを使用して送達されることを提供する。
【0051】
実施形態では、本発明は、薬剤が硝子体内、網膜下、結膜下、テノン嚢下、または後強膜近傍経路により眼に投与されることを提供する。
【0052】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患が加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性眼疾患、緑内障、低視力、またはドライアイであることを提供する。
【0053】
実施形態では、本発明は、ELOVL2発現ベクターを使用した遺伝子療法による、眼におけるELOVL2酵素、ならびに/または眼における22:6(n-3)ドコサヘキサエン酸(DHA)および22:5(n-6)ドコサペンタエン酸(DPA)のレベルを増加させることを含む、加齢性眼疾患および状態を治療、寛解、または予防するための方法を提供する。
【0054】
実施形態では、本発明は、ベクターがアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターから選択されることを提供する。
【0055】
実施形態では、本発明は、ELOVL2発現ベクターが硝子体内、網膜下、結膜下、テノン嚢下、または後強膜近傍経路により投与されることを提供する。
【0056】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患が加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性眼疾患、緑内障、低視力、またはドライアイであることを提供し、ここで、加齢性眼疾患は乾式AMDである。
【0057】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患の治療を必要とする患者を選択することと、有効量の1つ以上の脱メチル化剤、および/またはELOVL2をコードするmRNA、および/またはELOVL2発現ベクターを患者の眼に投与することとを含み、それにより、加齢性疾患が治療される方法を提供する。
【0058】
実施形態では、本発明は、患者が患者の眼におけるELOVL2のメチル化および/またはELOVL2発現を決定することにより選択されることを提供する。
【0059】
実施形態では、本発明は、脱メチル化剤がデシタビンであることを提供する。
【0060】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患が加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性眼疾患、緑内障、低視力、またはドライアイであることを提供し、ここで、加齢性眼疾患は乾式AMDである。
【0061】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患、任意選択で乾式AMDの治療においてELOVL2をコードするmRNAを使用することを含む方法を提供する。
【0062】
実施形態では、本発明は、加齢性眼疾患、任意選択で乾式AMDの治療においてELOVL2発現ベクターを使用することを含む方法を提供する。
【0063】
実施形態では、本発明は、列挙された濃度の脱メチル化剤を含有する製剤を提供し、それにより、硝子体内投与1uL~100uLが、5ng~500ngの有効量を構成する。
【0064】
実施形態では、本発明は、列挙された濃度の脱メチル化剤を含有する製剤を提供し、それにより、硝子体内投与1ul~100ulが、500ng~1,500ngの有効量を構成する。
【0065】
実施形態では、本発明は、列挙された濃度の脱メチル化剤を含有する製剤を提供し、それにより、硝子体内投与1ul~100ulが、1,500ng~4,500ngの有効量を構成する。
【0066】
実施形態では、本発明は、製剤が実質的に水性であることを提供する。実施形態では、本発明は、製剤が実質的に無水であることを提供する。実施形態では、本発明は、製剤が即時放出および/または延長放出であることを提供する。
【0067】
実施形態では、本発明は、脱メチル化剤がデシタビンであることを提供する。
【0068】
実施形態では、本発明は、投与用の医薬品の作製方法を提供する。
【0069】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語、ならびに任意の頭字語は、本発明の分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料が本発明の実施に使用され得るが、例示的な方法、装置、および材料が本明細書に記載される。
【0070】
本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、疾患もしくは障害、またはそれらの1つ以上の症状の発病、再発、または蔓延の予防を指す。ある特定の実施形態では、これらの用語は、症状の発病前に、特に本明細書に提供される疾患または障害のリスクのある対象への、1つ以上の他の追加の活性剤(複数可)を伴うかまたは伴わない、本明細書に提供される化合物または剤形による治療またはそれらの投与を指す。これらの用語は、特定の疾患の症状の阻害または低減を包含する。ある特定の実施形態では、疾患の家族歴を有する対象は、予防レジメンの潜在的な候補である。ある特定の実施形態では、再発する症状の病歴を有する対象もまた、予防の潜在的な候補である。この点に関して、「予防」という用語は、「予防的治療」という用語と互換的に使用され得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、化合物の「予防的有効量」は、疾患もしくは障害を予防するか、またはその再発を予防するのに十分な量である。予防的有効量の化合物は、単独で、または1つ以上の他の薬剤(複数可)と組み合わせて、疾患の予防において予防的利益を提供する療法剤の量を意味する。「予防的有効量」という用語は、全体的な予防を改善するか、または別の予防剤の予防有効性を向上させる量を包含し得る。本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むがこれらに限定されない哺乳動物などの動物を含むように本明細書で定義される。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。「対象」および「患者」という用語は、本明細書では、例えば、ヒトなどの哺乳動物対象に関して互換的に使用される。特定の実施形態では、AMDを有する対象は、加齢性黄斑変性症を有すると以前に診断された対象である。
【0072】
本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、本明細書に記載の化合物は、特定の立体化学が指定されない限り、すべての可能性のある立体異性体を包含することを意図する。化合物の構造異性体が低エネルギー障壁を介して相互変換可能である場合、化合物は、単一の互変異性体または互変異性体の混合物として存在し得る。これは、プロトン互変異性、または、例えば、芳香族部分を含有する化合物におけるいわゆる原子価互変異性の形態をとることができる。
【0073】
本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、本明細書で言及されるシチジンなどの類似体は、シチジン類似体の遊離塩基、またはそれらの塩、溶媒和物、水和物、共結晶、複合体、プロドラッグ、前駆体、代謝産物、および/もしくは誘導体を包含することを意図する。ある特定の実施形態では、本明細書で言及されるシチジン類似体は、シチジン類似体の遊離塩基、またはそれらの塩、溶媒和物、水和物、共結晶、もしくは複合体を包含する。ある特定の実施形態では、本明細書で言及されるシチジン類似体は、シチジン類似体の遊離塩基、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは水和物を包含する。
【0074】
本発明は、5-アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、プロカインアミド、プロカイン、プロカイン、没食子酸エピガロカテキン、バルプロ酸,ヒドララジン、ならびに類似の化合物および誘導体などのある特定の化合物を使用して、ELOVL2のプロモーターを脱メチル化して、遺伝子の発現を誘導し、哺乳動物の視覚機能を改善する薬剤の使用を特徴とする。総称して、これらは、本明細書では「脱メチル化剤」として記載される。
【0075】
一実施形態では、脱メチル化剤は、例えば、結膜下、硝子体内、網膜下、または球後注射により眼内に注射される。結膜下注射の場合、約1ng/ml~約500μg/mlの範囲の濃度が使用され得る。硝子体内注射の場合、約1μg/0.1ml~約1000μg/0.1mlの範囲の濃度が使用され得、使用され得る1つの濃度は、約50μg/0.1mlである。網膜下注射の場合、約1μg/0.1ml~約100μg/0.1mlの範囲の濃度が使用され得る。球後注射の場合、約20μg/ml~約1000μg/mlの範囲の濃度が使用され得る。脱メチル化剤は、例えば、リポソームに結合した水性ベースの溶液で投与され得るか、またはそれを有機溶媒に溶解することができる。別の代替の実施形態では、脱メチル化剤はまた、注射により、または眼もしくは眼への外科的移植により、ミクロスフェア、リポソーム、カプセル、またはポリマーマトリックスなどの不活性な生理学的に許容される担体でも提供され得る。使用され得る水性溶媒には、0.9%生理食塩水および5%デキストロースが含まれるが、これらに限定されない。使用され得る有機溶媒には、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはアルコールが含まれるが、これらに限定されない。移植は、一定用量の薬物を達成するための脱メチル化剤の徐放性形態を提供し得る。薬学的に許容される製剤中の活性剤として、かつ実質的な毒性を引き起こさない有効量での脱メチル化剤を単独で、または脱メチル化剤に関連する他の化合物とともに含有する組成物を眼内投与することにより、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、および/または網膜色素変性症の発病または進行を低減する方法も開示される。本組成物は、唯一の活性剤として脱メチル化剤を含有し得、他の薬剤は、脱メチル化剤の基本的特性に実質的に影響を与えないものである。あるいは、本組成物は、脱メチル化剤に加えて、他の活性剤を含有し得る。本組成物は、眼に注射または移植され得る。本発明は、薬学的に許容される製剤中の活性剤として、かつ実質的な眼毒性なしに黄斑変性症、網膜症、または網膜色素変性症を治療するのに有効な量の脱メチル化剤を含有する組成物を眼内投与することにより患者を治療する方法を包含する。本組成物は、眼に注射または移植され、徐放性製剤で投与され得る。マトリックスなどの持続放出製剤は、制御されていない速度で放出された場合に毒性を示す可能性がある量または療法量を超える量の脱メチル化剤を充填することができるが、それは、一定期間にわたって、非毒性の療法量の脱メチル化剤を放出するように処方される。例えば、マトリックスは、約1マイクログラム~10マイクログラム以上を含有し得る。脱メチル化剤、かつ非毒性の維持用量の脱メチル化剤を持続的に放出し得る。そのようなマトリックスは、拡散性の壁付きリザーバーであり得、脂質、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール)酸、および/またはポリ(乳酸)酸であり得る。
【0076】
脱メチル化剤は、硝子体内(硝子体へ)、結膜下(結膜下へ)、網膜下(網膜の下)、または球後(眼球の後ろ)注射を使用して眼内に注射され得る。結膜下注射の場合、約1ng/ml~約500μg/mlの範囲の脱メチル化剤濃度が使用され得る。硝子体内注射の場合、約10.0ng/0.1ml~約1000μg/0.1mlの範囲の脱メチル化剤の用量が使用され得る。球後注射の場合、約20μg/ml~約1000μg/mlの範囲の脱メチル化剤の用量が使用され得る。網膜下注射の場合、約1μg/0.1ml~約100μg/0.1mlの範囲の脱メチル化剤の用量が使用され得る。しかしながら、これらの投薬量は即時放出製剤に関係し、より延長放出の製剤にはより高濃度の脱メチル化剤が必要となるであろう。脱メチル化剤は、それが唯一の活性剤である組成物で眼内投与され得る。あるいは、脱メチル化剤は、関連化合物を有する組成物で眼内投与され得る。関連化合物には、タクロリムス、シクロホスファミド、シロリムス、アトポシド、チオエパ、メトトレキサート、アザチオプリン(イムラン)、インターフェロン、インフリキシマブ、エタネルセプト、ミコフェノール酸モフェチル、15-デオキシスペルグアリン、サリドマイド、グラチラマー、レフルノミド、ビンクリスチン、シタラビンなどを含むがこれらに限定されない免疫抑制剤が含まれ得る。一実施形態では、脱メチル化剤を含有する組成物は、眼に実質的な毒性をもたらさない量または用量で投与される。本明細書で使用される場合、実質的な毒性の欠如は、毒性の一切の兆候がないこと、ならびに当業者が治療を減少または中止するほど十分には有害でないと考える毒性の兆候の両方を包含する。脱メチル化剤の静脈内溶液形態は、0.9%NaClもしくは5%デキストロース、またはジメチルスルホキシド(DMSO)もしくはアルコールなどの有機溶媒を使用して、示された濃度を達成するように希釈され得る。眼内投与は、前述の経路および製剤のいずれかによるものであり得る。注射の場合、溶液、乳濁液、懸濁液、ミクロスフェアまたはリポソームのカプセル製剤などのいずれかが使用され得る。脱メチル化剤は、眼の移植として外科的に投与され得る。一例として、ポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニルの拡散性壁を有し、ミリグラム量の脱メチル化剤を含有するリザーバー容器が、強膜の中または上に移植され得る。別の例として、ミリグラム量の脱メチル化剤は、約2mm×4mmの寸法を有し、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール)酸、ポリ(乳)酸、もしくはポリ無水物などのポリマー、またはセバシン酸などの脂質で作製されたポリマーマトリックスに組み込まれ得、強膜または眼に移植され得る。これは通常、患者が局所麻酔薬または部分麻酔薬のいずれかを受容し、および角膜の後ろに作製された小さな(3~4mmの切開部)を使用することで達成される。次に、脱メチル化剤を含有するマトリックスは、切開部から挿入され、9-0ナイロンを使用して強膜に縫合される。脱メチル化剤は、眼に注射するための不活性マトリックス内に含まれ得る。不活性マトリックスの一例として、リポソームは、低熱転移を有する脂質である卵ホスファチジルコリン(PC)などのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から調製され得る。リポソームは、当業者に既知の標準的な手順を使用して作製される。ナノグラム~マイクログラム~ミリグラム量の範囲の量の脱メチル化剤が卵PCの溶液に添加され、親油性薬物がリポソームに結合する。徐放性薬物送達システムが眼内に移植されると、ある期間にわたって活性剤の持続放出がもたらされ得る。移植可能な構造は、以前に開示されたポリマー(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール)酸、ポリ(乳)酸、ポリ無水物)またはミクロスフェアとして製剤化され得る脂質のいずれかのカプセルの形態であり得る。例示的な例として、脱メチル化剤はポリビニルアルコール(PVA)と混合され、次にこの混合物は乾燥され、エチレン酢酸ビニルでコーティングされて、次にPVAで再び冷却され得る。眼内注射用の製剤では、リポソームカプセルは、細胞消化のために分解し、経時的に患者に対して薬物への一定の曝露がなされ得る遅延放出薬物送達システムであり得る。徐放性製剤では、ミクロスフェア、カプセル、リポソームなどは、ボーラス用量として投与された場合に毒性となる可能性がある濃度の脱メチル化剤を含有し得る。しかしながら、徐放性投与は、任意の期間にわたって放出される濃度が毒性量を超えないように処方される。これは、例えば、ビヒクルの様々な製剤(コーティングされたまたはコーティングされていないミクロスフェア、コーティングされたまたはコーティングされていないカプセル、脂質またはポリマー構成成分、単層または多層構造、および上記の組み合わせなど)により達成される。他の変数には、患者の薬物動態-薬力学的パラメータ(例えば、体重、性別、血漿クリアランス率、肝機能など)が含まれ得る。製剤に提供される脱メチル化剤の量に応じて、患者は、1回の移植または注射から何年にもわたって投薬される可能性がある。例示的であるが非限定的な例として、カプセルには1~2mgの脱メチル化剤が充填され得、カプセルが1日あたり数マイクログラムの薬剤を放出するように処方されている場合、患者は、約1000日間、またはほぼ3年間投薬される可能性がある。別の例として、カプセルに5mgの薬物が充填されている場合、患者は、約15年間投薬される可能性がある。そのような製剤は、患者の利便性を高めた正確な投薬を含む利益を提供するが、それは、場合によって10年に1回もしくは2回、またはそれよりも少ない頻度の介入が必要であるためである。ミクロスフェア、マイクロカプセル、リポソームなどの形成および充填、ならびにそれらの眼の移植は、当業者に既知の標準的な技法、例えば、関連するセクションが、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるVitreoretinal Surgical Techniques,Peyman et al.,Eds.(Martin Dunitz.London 2001,chapter 45)、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology,Wise,Ed.(Marcel Dekker,New York 2000)に開示されているサイトメガロウイルス網膜炎を治療するためのガンシクロビル持続放出移植の使用である。脱メチル化剤は、単独で、または他の薬剤と組み合わせて、糖尿病患者、黄斑変性症、および網膜色素変性症で発生するような網膜症を治療するために、前述の方法および製剤を使用して、眼内に実質的な毒性なしに投与され得る。
【0077】
本明細書で提供されるのは、塩、溶媒和物、水和物、前駆体、および/またはそれらの誘導体のシチジン類似体を使用して、AMDを含む眼疾患を治療するための方法である。本明細書で提供されるある特定の方法は、5-アザシチジンを含む2つ以上の活性剤の組み合わせを使用して眼疾患を治療することを含む。
【0078】
ヌクレオシド類似体は、ある特定の癌の治療に関して臨床的に試験されているが、眼疾患については試験されていない。ヌクレオシド類似体5-アザシチジン(4-アミノ-1-β-D-リボフラノシル-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン、国立サービスセンター指定NSC-102816、CAS登録番号320-67-2、アザシチジン、AzaおよびAZAとしても既知であり、かつ現在VIDAZA(登録商標)として販売されている)および2’-デオキシ-5-アザシチジン(5-アザ-2’-デオキシシチジン、デシタビン、Dae、およびDACとしても既知であり、かつ現在DACOGEN(登録商標)として販売されている)は、骨髄異形成症候群(MDS)の治療のために米国食品医薬品局により承認されているDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤である。アザシチジンおよびデシタビンは、シチジン類似体であり、これらのシチジン類似体とそれらに関連する天然ヌクレオシドとの間の構造上の違いは、炭素の代わりにシトシン環の5位に窒素が存在することである。アザシチジンは、C8Hi2N4O5の分子式、1モルあたり244.21グラムの分子量、および以下に示す構造を有すると定義され得る。デシタビンは、C8Hi2N4O4の分子式、および1モルあたり228.21グラムの分子量を有すると定義され得る。
【0079】
一実施形態では、本明細書で提供される方法は、1つ以上のシチジン類似体の投与または併用投与を含む。ある特定の実施形態では、シチジン類似体は、5-アザシチジン(アザシチジン(azacitidine))である。ある特定の実施形態では、シチジン類似体は、5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)である。ある特定の実施形態では、シチジン類似体は、5-アザシチジン(アザシチジン(azacitidine))または5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)である。ある特定の実施形態では、シチジン類似体は、例えば、1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(シタラビンまたはara-C)、シュードイソ-シチジン(psi ICR)、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン(FCdR)、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン(ゲムシタビン)、5-アザ-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン、5-アザ-2’-デオキシ-2’-フルオロシチジン、1-β-D-リボフラノシル-2(1H)-ピリミジノン(ゼブラリン)、2’,3’-ジデオキシ-5-フルオロ-3’-チアシチジン(エムトリバ)、2’-シクロシチジン(アンシタビン)、1-β-D-アラビノフラノシル-5-アザシトシン(ファザラビンまたはara-AC)、6-アザシチジン(6-アザ-CR)、5,6-ジヒドロ-5-アザシチジン(dΗ-アザ-CR)、N4-ペンチルオキシ-カルボニル-5’-デオキシ-5-フルオロシチジン(カペシタビン)、N4-オクタデシル-シタラビン;またはエライジン酸シタラビンである。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるシチジン類似体には、シチジンまたはデオキシシチジンに構造的に関連し、シチジンまたはデオキシシチジンの作用を機能的に模倣し、かつ/または拮抗する任意の化合物が含まれる。
【0080】
本明細書のある特定の実施形態は、本明細書で提供されるシチジン類似体の塩、共結晶、溶媒和物(例えば、水和物)、複合体、プロドラッグ、前駆体、代謝産物、および/または他の誘導体を提供する。例えば、特定の実施形態は、5-アザシチジンの塩、共結晶、溶媒和物(例えば、水和物)、複合体、前駆体、代謝産物、および/または他の誘導体を提供する。本明細書のある特定の実施形態は、本明細書で提供されるシチジン類似体の塩、共結晶、および/または溶媒和物(例えば、水和物)を提供する。本明細書のある特定の実施形態は、本明細書で提供されるシチジン類似体の塩および/または溶媒和物(例えば、水和物)を提供する。ある特定の実施形態は、本明細書で提供されるシチジン類似体の塩、共結晶、溶媒和物(例えば、水和物)、または複合体ではないシチジン類似体を提供する。例えば、特定の実施形態は、非イオン化、非溶媒和(例えば、無水)、非複合形態の5-アザシチジンを提供する。本明細書のある特定の実施形態は、本明細書で提供される2つ以上のシチジン類似体の混合物を提供する。本明細書で提供されるシチジン類似体は、本明細書で参照されるか、または文献で利用可能な合成方法および手順を使用して調製され得る。例えば、5-アザシチジンを合成するための特定の方法は、例えば、米国特許第7,038,038号およびそこに論じられている参考文献に開示されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される他のシチジン類似体は、例えば、当技術分野で既知の手順を使用して調製され得るか、または商業的供給源から購入され得る。一実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される化合物は、遊離塩基、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、遊離塩基、または薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、固体である。別の実施形態では、遊離塩基、または薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、アモルファス形態の固体である。さらに別の実施形態では、遊離塩基、または薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、結晶形態の固体である。例えば、特定の実施形態は、固体形態の5-アザシチジンを提供し、これは、例えば、米国特許第6,943,249号、同第6,887,855号、および同第7,078,518号、ならびに米国特許出願公開第2005/027675号、同第2006/247189号、およびWO2010/093435に記載されている方法に従って調製され得、これらの各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、固体形態の5-アザシチジンは、当技術分野で既知の他の方法を使用して調製され得る。
【0081】
一実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される化合物は、シチジン類似体の薬学的に許容される塩であり、これには、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩(エジシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシル酸塩)、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩(ナプシル酸塩(napsylate))、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、またはウンデカン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
医薬組成物:一実施形態では、本明細書で提供されるのは、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて、活性成分として1つ以上のシチジン類似体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物である。一実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの非放出制御賦形剤または担体を含む。一実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの放出制御または少なくとも1つの非放出制御賦形剤または担体を含む。
【0083】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物で使用されるシチジン類似体は、固体形態である。好適な固体形態には、シチジン類似体の遊離塩基を含む固体形態、およびシチジン類似体の塩を含む固体形態が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される固体形態には、多形体、溶媒和物(水和物を含む)、ならびにシチジン類似体および/またはその塩を含む共結晶が含まれる。ある特定の実施形態では、固体形態は、シチジン類似体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の結晶形態である。
【0084】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、光学的、硝子体内、非経口的、および局所的投与のための様々な剤形で処方され得る。医薬組成物はまた、遅延、延長、遷延、持続、パルス、制御、加速および高速、標的、プログラム放出、ならびに胃内滞留剤形を含む調整放出剤形としても処方され得る。これらの剤形は、当業者に既知の従来の方法および技法に従って調製され得る{例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition;Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005、Modified-Release Drug Delivery Technology,Rathbone et al,eds.,Drugs and the Pharmaceutical Science,Marcel Dekker,Inc.:New York,NY 2003;Vol.126を参照されたい)。一実施形態では、医薬組成物は、硝子体内投与のための剤形で提供される。別の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のための剤形で提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、局所投与のための剤形で提供される。
【0085】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、眼に局所的に、または挿入物、注射、移植、ペースト、粉末、包帯、クリーム、プラスター、軟膏、溶液、乳濁液、懸濁液、ゲル、フォーム、もしくはスプレーの形態で硝子体内に投与され得る。これらの剤形は、例えば、上記のRemington,The Science and Practice of Pharmacyに記載されているような従来のプロセスを使用して製造され得る。局所投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、即時放出、または遅延、持続、パルス、制御、標的、およびプログラム放出を含む調整放出になるように処方され得る。
【0086】
デシタビンは現在、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺(NSCL)癌、鎌状赤血球貧血、および急性骨髄性白血病(AML)の治療薬として開発されている。
【0087】
デシタビンは、(b)約45%~約85%のプロピレングリコールと、約5%~約45%のグリセリンと、0%~約30%のエタノールとを含む実質的に無水溶媒に溶解した(a)WO2013/033176の図imgf000003_0001に示される式の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む製剤を含み得る。いくつかの実施形態では、該溶媒は、約65%~約70%のプロピレングリコールと、約25%~約30%のグリセリンと、0%~約10%のエタノールとを含む。
【0088】
本発明は、脱メチル化剤、および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む組成物を提供する。「薬学的に許容される賦形剤または担体」という用語は、化合物の所望の剤形を調製するために使用される媒体を指す。薬学的に許容される賦形剤または担体には、1つ以上の溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル;分散または懸濁助剤;界面活性剤;等張剤;増粘剤または乳化剤;防腐剤;固体バインダー;潤滑剤などが含まれ得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1975)and Handbook of Pharmaceutical Excipients,Third Edition,A.H.Kibbe ed.(American Pharmaceutical Assoc.2000)は、医薬組成物の処方に使用される様々な担体およびその調製のための既知の技法を開示している。一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、眼に投与された場合(例えば、眼内注射により)、哺乳動物(例えば、ヒト患者)に有害ではない。眼内投与の場合、例えば、限定されることなく、療法剤は、平衡塩類溶液(BSS)または平衡塩類溶液プラス(BSSプラス)(Alcon Laboratories,Fort Worth,Tex.,USA)で投与され得る。関連する態様では、本発明は、療法的に許容される脱メチル化剤、任意選択で凍結乾燥された調製物を含有する無菌容器、例えば、バイアルを提供する。
【0089】
本発明の別の実施形態は、遺伝子療法によるメチル化阻害をもたらすことができる核酸構築物の投与に関する。
【0090】
WO2001/58494は、血管新生の阻害剤および神経栄養剤をコードする核酸配列を含む発現ベクターと眼細胞を接触させることにより、加齢性黄斑変性症などの眼疾患を治療または予防することを対象としている。特定の実施形態では、色素上皮由来因子(PEDF)などの血管新生の阻害剤および神経栄養剤は、同一のものである。WO2002/13812は、眼科疾患などの炎症性疾患の治療のための、インスリン感作剤、好ましくはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γ(PPARγ)アゴニストの使用に関している。WO200/52479は、AMDを含むドルーゼン関連障害(ドルーゼン形成に関与する任意の障害)の診断、治療、および予防に取り組んでいる。特定の実施形態では、TNF-アルファのアンタゴニストなどの、免疫細胞の増殖または分化を阻害する薬剤の有効量を提供することに関連する方法が存在する。
【0091】
一態様では、本発明は、AMD(例えば、症候性AMDを発症するリスクの上昇を示す多型またはハプロタイプが検出される個人)またはバリアントELOVL2メチル化遺伝子が関与する他の疾患を有する個人を治療する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、患者における疾患の症状を低減するのに有効な量で、バリアントELOVL2メチル化またはELOVL2メチル化をコードする遺伝子の発現の量を減少させる薬剤を患者に投与することを含む。関連する実施形態では、個人におけるバリアントELOVL2メチル化ポリペプチドの療法量の阻害剤(例えば、不活性化因子)が投与される。
【0092】
一実施形態では、個人における阻害性核酸(例えば、バリアントELOVL2メチル化ポリペプチドのヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なRNA)が投与される。一実施形態では、バリアントELOVL2メチル化ポリペプチドをコードするRNAに相補的な精製されたアンチセンスRNAが投与される。
【0093】
別の実施形態では、個人におけるバリアントELOVL2メチル化ポリペプチドを部分的に不活性化するのに十分な療法量の抗ELOVL-2メチル化抗体が投与される。
【0094】
一態様では、本発明は、ELOVL2メチル化ポリペプチドをコードする核酸を含む遺伝子療法ベクターを提供する。ベクターは、複数の細胞型でELOVL2メチル化遺伝子の発現を駆動するプロモーターを含み得る。あるいは、ベクターは、特定の細胞型、例えば、網膜の細胞においてのみELOVL2メチル化遺伝子の発現を駆動するプロモーターを含み得る。一態様では、ELOVL2メチル化タンパク質をコードする遺伝子療法ベクターおよび薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物が提供され、ここで、本組成物は病原体を含まず、ヒト患者への投与に好適である。一実施形態では、コードされたELOVL2メチル化ポリペプチドは、保護バリアントである。
【0095】
一態様では、本発明は、組換えまたは精製されたELOVL2メチル化ポリペプチドを含有する組成物を提供し、ここで、ポリペプチドは、保護バリアントである。
【0096】
関連する態様では、本発明は、組換えまたは精製されたELOVL2メチル化ポリペプチドおよび薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物を提供し、ここで、本組成物は病原体を含まず、ヒト患者への投与に好適である。一実施形態では、コードされたELOVL2メチル化ポリペプチドは、野生型配列を有する。一実施形態では、コードされたELOVL2メチル化ポリペプチドは、保護バリアントである。
【0097】
一態様では、本発明は、バリアントELOVL2メチル化ポリペプチドと特異的に相互作用するが、野生型ELOVL2メチル化ポリペプチドとは相互作用しない抗体を提供する。これらの抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、サブトラクティブ技法により得ることができる。これらの抗体は、バリアントELOVL2メチル化ポリペプチドを不活性化するのに十分であり得る。関連する態様では、本発明は、抗ELOVL2メチル化抗体および薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物を提供し、ここで、本組成物は病原体を含まず、ヒト患者への投与に好適である。
【0098】
一態様では、本発明は、AMDを発症するリスクの増加または低減に関連するバリアントELOVL2メチル化タンパク質を特定するための方法を提供する。一実施形態では、本発明は、(a)保護ハプロタイプを有するものとして個人を特定し、(b)個人のゲノムにコードされるELOVL2メチル化のアミノ酸配列(複数可)を決定することにより、保護ELOVL2メチル化タンパク質を特定する方法を提供し、ここで、保護ELOVL2メチル化タンパク質は、保護ハプロタイプを有する対立遺伝子によりコードされている。一実施形態では、本発明は、(a)中性ハプロタイプを有するものとして個人を特定し、(b)個人のゲノムにコードされるELOVL2メチル化のアミノ酸配列(複数可)を決定することにより、中性ELOVL2メチル化タンパク質を特定する方法を提供し、ここで、中性ELOVL2メチル化タンパク質は、中性ハプロタイプを有する対立遺伝子によりコードされている。関連する実施形態では、本発明は、AMDを発症するリスクの減少に関連するELOVL2メチル化のバリアント形態を特定する方法を提供し、これは、(a)AMDを発症するリスクの減少に関連するハプロタイプまたはジプロタイプを有する者として個人を特定することと、(b)個人からゲノムDNAまたはRNAを取得することと、(c)個人のゲノムにコードされるELOVL2メチル化のアミノ酸配列(複数可)を決定することとを含み、ここで、保護ELOVL2メチル化タンパク質は、AMDを発症するリスクの減少に関連するハプロタイプを有する対立遺伝子によりコードされている。一実施形態では、保護または中性ELOVL2メチル化タンパク質は、野生型ELOVL2メチル化ポリペプチドのアミノ酸配列を有さない。
【0099】
当業者により理解されるように、遺伝子療法ベクターは、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有する(かつ、例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節要素を含み得る)。プロモーターは、構成的または誘導的であり得る。プロモーターは、RPEなどの標的組織における優先的な遺伝子発現を標的とするように選択され得る(最近の概説については、Sutanto et al.,2005,“Development and evaluation of the specificity of a cathepsin D proximal promoter in the eye”Curr Eye Res.30:53-61、Zhang et al.,2004,“Concurrent enhancement of transcriptional activity and specificity of a retinal pigment epithelial cell-preferential promoter”Mol Vis.10:208-14、Esumi et al.,2004,“Analysis of the VMD2 promoter and implication of E-box binding factors in its regulation”J Biol Chem 279:19064-73、Camacho-Hubner et al.,2000,“The Fugu rubripes tyrosinase gene promoter targets transgene expression to pigment cells in the mouse”Genesis.28:99-105、およびそれらにおける参考文献を参照されたい)。
【0100】
好適なウイルスベクターには、DNAウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびワクシニアウイルスベクターなど)、およびRNAウイルスベクター(レトロウイルスベクターなど)が含まれる。一実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが使用される。最近の概説については、Auricchio et al.,2005,“Adeno-associated viral vectors for retinal gene transfer and treatment of retinal diseases”Curr Gene Ther.5:339-48、Martin et al.,2004,Gene therapy for optic nerve disease,Eye 18:1049-55、Ali,2004,“Prospects for gene therapy”Novartis Found Symp.255:165-72、Hennig et al.,2004,“AAV-mediated intravitreal gene therapy reduces lysosomal storage in the retinal pigmented epithelium and improves retinal function in adult MPS VII mice”Mol Ther.10:106-16、Smith et al.,2003,“AAV-Mediated gene transfer slows photoreceptor loss in the RCS rat model of retinitis pigmentosa”Mol Ther.8:188-95、Broderick et al.,2005,“Local administration of an adeno-associated viral vector expressing IL-10 reduces monocyte infiltration and subsequent photoreceptor damage during experimental autoimmune uveitis”Mol Ther.12:369-73、Cheng et al.,2005,“Efficient gene transfer to retinal pigment epithelium cells with long-term expression.Retina 25:193-201、Rex et al.,“Adenovirus-mediated delivery of catalase to retinal pigment epithelial cells protects neighboring photoreceptors from photo-oxidative stress.Hum Gene Ther.15:960-7、およびそれらにおける参考文献を参照されたい)。
【0101】
遺伝子療法ベクターは、生成物を患者への投与に好適なものにする適正製造基準(GMP)要件に準拠して製造される必要がある。本発明は、GMP要件に準拠して製造および試験される遺伝子療法ベクターを含む、患者への投与に好適な遺伝子療法ベクターを提供する。FDA承認が必要な遺伝子療法ベクターは、効力および同一性に関して試験され、無菌で、異物を含まないことが必要であり、かつ生成物のすべての成分(すなわち、防腐剤、希釈剤、アジュバントなど)が純度、品質の基準を満たしており、患者に有害ではないことが必要とされる。例えば、核酸調製物は、マイコプラズマを含まないことが実証される。例えば、Islam et al.,1997,An academic centre for gene therapy research and clinical grade manufacturing capability,Ann Med 29,579-583を参照されたい。
【0102】
遺伝子療法ベクターを投与するための方法は、既知である。一実施形態では、ELOVL2発現ベクターは、全身導入される(例えば、静脈内または注入により)。一実施形態では、ELOVL2発現ベクターは、局所導入される(すなわち、特定の組織または器官、例えば、眼に直接。1つの好ましい実施形態では、ELOVL2発現ベクターは、眼に直接導入される(例えば、眼注射により)。最近の概説については、例えば、Dinculescu et al.,2005,“Adeno-associated virus-vectored gene therapy for retinal disease”Hum Gene Ther.16:649-63、Rex et al.,2004,“Adenovirus-mediated delivery of catalase to retinal pigment epithelial cells protects neighboring photoreceptors from photo-oxidative stress”Hum Gene Ther.15:960-7、Bennett,2004,“Gene therapy for Leber congenital amaurosis”Novartis Found Symp.255:195-202、Hauswirth et al.,“Range of retinal diseases potentially treatable by AAV-vectored gene therapy”Novartis Found Symp.255:179-188、およびそれらにおいて引用されている参考文献を参照されたい)。
【0103】
したがって、一態様では、本発明は、ELOVL2タンパク質またはELOVL2ポリペプチドをコードする遺伝子療法ベクター、任意選択でウイルスベクターを含む調製物を提供し、ここで、遺伝子療法ベクターは、ヒト対象への投与に好適であり、ヒト対象への投与に好適な賦形剤中にある(例えば、GLP技法を使用して生成される)。任意選択で、網膜色素上皮細胞において優先的または特異的に発現されるプロモーターを含む遺伝子療法ベクター。
【0104】
哺乳動物の老眼に関連する眼窩障害の予防および治療のための方法は、透過向上量の1つ以上の浸透エンハンサー、および眼窩の下にある組織にかつ眼窩の血管網に浸透する1つ以上の生体影響剤を含む局所組成物の適用を含み得る。この方法の目的は、黄斑変性症などの眼疾患だけでなく、白内障の形成、緑内障、および糖尿病性網膜症を予防および治療することである。
【0105】
医薬品の眼への送達は、浸透エンハンサーまたは透過エンハンサーにより促進されて、薬理学的に活性な薬剤に対する皮膚の透過性を増加し、薬物が皮膚を通って拡散し、組織および血流に進入する速度を増加することができる。化学的皮膚浸透エンハンサーは、角質層の物理化学的性質を可逆的に変化させて、その拡散抵抗を低減することにより、皮膚透過性を高める。
【0106】
多くの化学化合物は、皮膚浸透エンハンサーであることが既知である。ほとんどの化合物は、一般に、処方者により不活性であると見なされることが多い安全な(GRAS)成分として認識されている。Osborne D W,Henke J J,Pharmaceutical Technology,Nov.1997,pp58-86。この記事で引用されている化合物は、参照により組み込まれる。浸透エンハンサーの例には、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール;n-アルカノール、リモネン、テルペン、ジオキソラン、プロピレングリコール、エチレングリコール、他のグリコール、およびグリセロールなどのポリオール;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、メチルドデシルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどのスルホキシド;ミリスチン酸/パルミチン酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、およびカプリン酸/カプリル酸トリグリセリドなどのエステル;ケトン;アセトアミドなどのアミド;トリオレインなどのオレエート;ラウリル硫酸ナトリウムなどの様々な界面活性剤;カプリル酸などの様々なアルカン酸;アゾンなどのラクタム化合物;オレイルアルコールなどのアルカノール;酢酸ジアルキルアミノ;ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0107】
多くの特許は、医薬剤を経皮的に送達するための浸透エンハンサーの使用を開示している。米国特許第5,837,289号は、広範なリストの医薬剤を送達するためにクリームに少なくとも2つの別々の浸透エンハンサーを使用することを開示している。米国特許第5,238,933号は、活性剤を投与するための低級アルカノールと組み合わせた低級脂肪族カルボン酸の低級脂肪族エステルを含む皮膚透過エンハンサー組成物を開示している。米国特許第5,229,130号は、皮膚を通して活性剤を送達するための植物油ベースの皮膚透過エンハンサーを開示している。米国特許第4,933,184号は、メタノールを順次または同時に使用して、薬物を送達する経皮膚組成物を開示している。米国特許第4,342,784号は、DMSOを含むゲルおよび中和剤を含むカルボキシポリメチレン樹脂を局所投与し、皮膚塩がゲルを分解して、DMSOを放出することを可能にする方法を開示している。米国特許第5,482,965号は、ジオキサンを含有する経皮組成物を開示している。米国特許第5,620,980号、同第5,807,957号は、脱毛を治療するためのジオキソランおよびウレタンの使用を開示している。
【0108】
一態様では、脱メチル化剤、ならびに療法的、医薬的、生化学的、および生物学的薬剤または化合物の結膜を介した浸透は、これらの薬剤の前房、線維柱帯網、毛様体、脈絡膜、および網膜への進入をさらに早めるために使用され得るエンハンサーにより促進され得る。浸透エンハンサーは、膜を効率的に浸透させるだけでなく、これらのエンハンサーはまた、他の生物活性剤が特定の膜をより効率的に通過させることを可能にする。浸透エンハンサーは、細胞内タンパク質および脂質と相互作用する結膜嚢表面の細胞層を崩壊させるか、または粘膜と接触する際の生物活性剤の分配を改善するなどの様々なモダリティによりそれらの効果を生み出す。
【0109】
これらのエンハンサーを使用すると、最大10kDaの高分子が眼の結膜嚢層を通過して、血管および網膜が病理学的変化を起こしている緑内障の部位に到達し得る。これらのエンハンサーは、非毒性、薬理学的に不活性、非アレルギー性の物質でなければならない。一般に、これらのエンハンサーには、陰イオン性界面活性剤、尿素、脂肪酸、脂肪アルコール、テルペン、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ポリオール、アミド、ラクタム、アセトン、アルコール、および糖が含まれ得る。一態様では、10浸透エンハンサーには、ジアルキルスルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド、ドデシルジメチルホスフィンオキシド、オクチルメチルスルホキシド、ノニルメチルスルホキシド、ウンデシルメチルスルホキシド、ドデシル硫酸ナトリウム、およびフェニルピペラジン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。別の態様では、浸透エンハンサーには、ラウリルアルコール、セバシン酸ジイソプロピル、オレイルアルコール、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、アゼリン酸ジオクチル、ラウリン酸ヘキシル、カプリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、グリコールジペラルゴン酸プロピレン、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ペラルゴン酸2-エチルヘキシル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、フタル酸ジブチル、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。一態様では、皮膚透過性エンハンサーは、少なくとも1%超の体積あたりの重量、重量あたりの重量、またはモルパーセントである。
【0110】
別の態様では、粘膜透過性エンハンサーは、少なくとも1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、最大50%超の体積あたりの重量、重量あたりの重量、またはモルパーセントであり得る。一態様では、粘膜透過性エンハンサーは、ジメチルスルホキシドである。この態様では、ジメチルスルホキシドの量は、2%~10%2%~9.5%、3%~8%、3%~7%、または4%~6%の体積あたりの重量、重量あたりの重量、モルパーセント、または任意の有効な療法量の範囲であり得る。
【0111】
療法用調製物はまた、非毒性の乳化剤、保存剤、湿潤剤、粘度付与剤、例えば、ポリエチレングリコール200、300、400、および600、カーボワックス1,000、1,500、4,000、6,000、および10,000、抗菌構成成分、例えば、第四級アンモニウム化合物、低温殺菌特性があり、使用しても無害であることで既知のフェニル水銀塩、メチルおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、緩衝成分、例えば、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸緩衝液、ならびに他の従来の成分、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、オレエート、ポリオキシエチレンモノパルミチレン酸ソルビタン(polyoxyethylene sorbitan monopalmitylate)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオソルビトール、エチレンジアミンテトラセティックを含有し得る。さらに、適切な眼科用ビヒクルは、従来のリン酸緩衝ビヒクルシステム、等張ホウ酸ビヒクル、等張塩化ナトリウムビヒクル、等張ホウ酸ナトリウムビヒクルなどを含む、現在の目的のための担体媒体として使用され得る。
【0112】
脱メチル化剤療法剤調製物はまた、ポリソルベート界面活性剤、ポリオキシエチレン界面活性剤(BASFクレマフォア)、ホスホネート、サポニンおよびポリエトキシル化ヒマシ油、ならびに市販されているポリエトキシル化ヒマシ油などの界面活性剤も含有し得る。
【0113】
医薬調製物は、アルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、マンニトール、ポリビニルアルコール、またはヒドロキシエチルセルロースなどの眼科用溶液で既に使用されている湿潤剤も含有し得、希釈剤は、水、蒸留水、無菌水、または人工涙液であり得る。湿潤剤は、約0.001%~約10%の量で存在する。
【0114】
本発明の眼科用製剤は、pHを調整するための酸および塩基;ソルビトール、グリセリン、およびデキストロースなどの張性付与剤;ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピルジドン、ポリビニルアルコール、および他のガムなどの他の粘度付与剤;界面活性剤、胆汁酸などの好適な吸収エンハンサー;亜硫酸水素塩およびアスコルビン酸塩のような抗酸化剤などの安定剤;EDTAナトリウムなどの金属キレート剤;ならびにポリエチレングリコールなどの薬物溶解性エンハンサーを含み得る。これらの追加成分は、安定性のある市販の溶液を作製するのに役立つため、必要に応じて配合する必要はない。
【0115】
眼科用医薬剤の組成物は、眼および/またはコンタクトレンズと適合性があるように処方される。点眼調製物は、血液と等張でなければならない。眼への直接適用を意図した眼科用組成物がそうであるように、眼と適合性のあるpHおよび張性を有するように処方されるであろう。これは通常、本組成物のpHを生理学的pH(すなわち、7.4)またはそれに近似して維持するための緩衝液を必要とし、本組成物の浸透圧をキログラムあたり210~320ミリモル(mOsm/kg)またはその近似のレベルにするために張性剤を必要とし得る。
【実施例】
【0116】
WI-38およびIMR-90細胞株は、細胞の加齢を研究するために広く使用されているモデルとして前述されてきた。両方の細胞株が、経時的な表現型および集団倍増(PD)数において著しい変化を示すことが示されている¥[19,20]。撮像ソフトウェアによりコンフルエンシーとして測定された場合のそれらの成長率は、より低いPDからより高いPDまで著しく減少する(
図6Aおよび7A)。老化関連ベータガラクトシダーゼ染色(SA-β-Gal)により測定された場合の老化陽性細胞の割合は、PDが増加するにつれて増加し(
図6Bおよび
図7B)、それらの形態は、より伸長された形状からより広く、より平らな形状まで変化する(
図6C)。
【0117】
人間の加齢のメチル化プロファイルに対する研究は、ELOVL2のプロモーター領域のメチル化が年齢とはるかに著しく相関していることを示した[3]。加齢したWI38およびIMR90細胞におけるELOVL2プロモーターのメチル化のレベルにおける変化を調査するために、メチル化DNA免疫沈降法(MeDIP)を使用した。表1に記載の特定のCpGを包含するプライマーを設計した。このアプローチを使用すると、プロモーターのメチル化は、細胞集団倍増の増加とともに上昇することがわかった(
図1A)。プロモーター領域のメチル化は転写を阻害することが以前に示されているように[21]、ELOVL2発現レベルがELOVL2プロモーターのメチル化と逆相関するかどうかを調査した。qRT-PCRを使用すると、PD数の増加に伴って遺伝子の発現レベルが減少することがわかり(
図1Bおよび
図7C)、これにより、ELOVL2プロモーターのメチル化および培養中の老化細胞の割合の増加に伴い、加齢細胞ではELOVL2発現が下方調節されるという結論に至った。
【0118】
ELOVL2発現を調節することが、細胞の加齢に影響を及ぼす可能性があるかどうかを調査した。まず、レンチウイルスshRNAを使用して、WI-38およびIMR-90細胞におけるELOVL2発現をノックダウンすると(
図6Eおよび
図8D)、増殖速度の著しい減少(
図1C)、ならびにSA-β-Gal染色により検出された培養中の老化細胞の数の増加(
図1D)、および高PD細胞と一致する形態学的変化(
図6D)が観察された。すべての観察結果は、見かけの線維芽細胞年齢の増加を示した。
【0119】
ELOVL2発現に対するELOVL2プロモーターのメチル化レベルの影響を試験した。WI-38線維芽細胞を、DNAメチルトランスフェラーゼを阻害するシチジン類似体である5-アザ-2’-デオキシシチジン(5-アザ-dc)で処理した[22]。細胞を2μMの5-Aza-dcで2日間処理した後、化合物なしで5日間培養した。実験の最後に、ELOVL2発現をqRT-PCRにより測定した。5-Aza-dcで処理すると、ELOVL2プロモーターのメチル化が低減し(
図2A)、ELOVL2発現が上方調節されることがわかった(
図2B)。さらに、5-Aza-dc処理において、培養地で老化細胞のより低い割合が観察された(
図2C)。これらのデータは、ELOVL2プロモーターのメチル化の減少がELOVL2発現および線維芽細胞の見かけの年齢にプラスの影響を及ぼすことを示唆している。
【0120】
視力は中でも、加齢の最大の予測因子である。視覚的コントラスト感受性スコアは中でも、評価された377個の変数と比較して年齢の上位5つの個々の予測因子であった[23]。ELOVLタンパク質は眼で高度に発現しており、それらのいくつかは眼疾患に関わっている¥[9、24]。しかしながら、メチル化モデルでは、ELOVL2のみに年齢との相関が高いメチル化マークが含まれる[3]。したがって、野生型(C57BL/6)マウス網膜におけるELOVL2の発現レベルが年齢とともに変化するかどうかを調査した。qRT-PCRおよびウエスタンブロットにより、加齢したヒト線維芽細胞からのデータと同様に、ELOVL2の発現レベルは、動物の年齢と逆相関することがわかった(
図3Aおよび3B)。最も重要なことに、MeDIP分析は、網膜におけるELOVL2プロモーターのメチル化が動物の年齢とともに増加することを示した(
図3C)。
【0121】
並行して、野生型マウスと比較して寿命は著しくより長く、加齢の遅延の症状を多く示すエイムス矮性マウス(Prop1
df)から解剖された網膜におけるELOVL2プロモーターのメチル化およびmRNA発現レベルを調査した¥[25,26]。加齢エイムス矮性網膜は、加齢した野生型マウスと比較した場合、ELOVL2プロモーターのメチル化がより低く、発現が増加していることがわかった(
図9)。これは、ELOVL2発現およびメチル化が動物の健康を示している可能性があることを示唆している。
【0122】
動物の研究された年齢スパンの間に視覚性能および眼の構造が変化するかどうかを評価した。最初に、2ヶ月齢、6ヶ月齢、1歳、および2歳の野生型C57BL/6マウスの眼底自家蛍光撮像を使用して、構造変化を評価した。自家蛍光点状凝集体が1歳で眼底に現れ始め、2歳で非常に顕著であることが観察された(
図3Dおよび
図8A)。次に、加齢マウスの視覚機能を評価するために、網膜電図(ERG)分析を実行した。マウスが加齢するにつれて、桿体の数および感受性は減少する[27]。実際、高齢のマウスは、ERGによる暗所視応答の振幅の減少を示した(
図3Dおよび3E)。
【0123】
ELOVL2が眼の加齢および視覚性能に役割を担うかどうかを調査するために、相同組換えと対にしたCRISPR-Cas9を使用して、ELOVL2変異型C57BL/6マウスを生成した。ELOVL2ノックアウトマウスは生殖能力の低減を示すため[28]、代わりにシステインからトリプトファンへの置換(C217W)をコードするELOVL2変異型マウスを生成すると、ELOVL2の基質特異性をELOVL5の基質特異性に変化させ、C22オメガ-3PUFAドコサペンタエン酸(DPA)(22:5n-3)を24:5n-3に変換するELOVL2の独自の能力を効果的に崩壊させることが示された。[6]。コドン217の近くのELOVL2を標的とする2つのgRNAおよび修復ドナーオリゴヌクレオチドを、ガイドを崩壊させるサイレント変異および編集後の再切断を防ぐプロトスペーサーに隣接するモチーフ配列とともに、変異型C217Wを生成する塩基対変異で設計した。gRNA、修復オリゴヌクレオチド、およびCas9 mRNAをC57BL/6Nマウス接合子に注射した(
図4Aおよび
図10A~10D)。gRNAのうちの1つから1つの正しく標的化されたホモ接合型ファウンダーが特定された。オフターゲット変異は見られなかった(
図10E)。C217Wホモ接合型マウスは正常に発達し、一切の明白な表現型を示さなかった。
【0124】
次に、C217W変異型において眼の構造および視覚性能が変化するかどうかを調査した。興味深いことに、ELOVL2変異型マウスでは、自家蛍光凝集体が野生型マウスよりもはるかに早いわずか6ヶ月齢で眼底に現れ(
図4Bおよび
図3D)、正常なELOVL2活性が健康な網膜を維持するために重要であることを示す。この表現型は、4、6、8、および12ヶ月齢の変異型動物で一貫して観察された(
図11A)。
【0125】
次に、ERGを使用してこれらの変異型マウスの光受容体機能を試験した。野生型同腹仔と比較して、C217W変異型マウスでは暗所視応答振幅の減少が観察された(
図4Bおよび4C)。この低減した応答は、他の年齢でも一貫して再現された(
図11B)。最も影響を受けたシグナルは暗所視応答であったが、振動電位およびフリッカー応答を含む他のタイプのERG測定もELOVL2変異型で影響を受けた(
図11Cおよび11D)。
【0126】
C217WおよびWTマウスの網膜を免疫染色して、自家蛍光眼底撮像で点状に観察された凝集体が、ヒトにおいてAMDを発症する危険因子であるドルーゼンと類似しているかどうかを調査した[14]。実際、免疫染色では、C217W網膜でのみHTRA1、T-15、C3、およびC5b-9陽性凝集体が検出された(
図4D、4E、および
図12)。変異型マウスにおけるドルーゼン様凝集体の卓越性および初期の発達を考えると、それらは潜在的にAMDのモデルである可能性がある。
【0127】
最後に、マウスの眼の加齢特性が、ELOVL2プロモーターを含むDNA脱メチル化により元に戻る可能性があるかどうかを調査した。それを行うために、各マウスに、1μLの2μM 5-Aza-dcを片方の眼に、1μLのPBSをもう一方の眼に、10ヶ月齢から開始して2ヶ月にわたって隔週で注射した。MeDIP法を使用すると、ELOVL2プロモーターのメチル化が処理後に減少することがわかった(
図5A)。ELOVL2発現が処理された眼で上方調節されることもわかった(
図5B)。最後に、光受容体機能をERGによりチェックすると、暗所視応答が注射された眼において改善されることがわかった(
図5Cおよび
図13)。これらのデータは、加齢の標的としてのELOVL2メチル化状態および加齢した眼の特性に影響を及ぼすDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の使用をさらに裏付けている。
【0128】
ヒトの臨床使用実施例:乾式AMDを有する患者への3ヶ月にわたる隔週投与(20uM)
両側性の乾式加齢性黄斑変性症(AMD)を有する75歳の女性が眼科クリニックを受診する。患者は、それ以外は健康である。患者は、脱メチル化療法と対照とを比較する実験的研究に同意する。ベースラインでは、両眼は、視力、自家蛍光により測定された地図状萎縮のサイズ、光干渉断層撮影、および網膜電図での暗所視応答の臨床評価により証明されるように、類似のレベルのAMDを示す。患者を、左眼に硝子体内注射により投与される、無菌の等張性のpH緩衝溶液として処方された100uLのデシタビン(20μM)で治療する(能動的治療)。患者は、100ulの同じ無菌の等張性のpH緩衝溶液を受けるが、右眼には硝子体内注射によるデシタビンを投与しない(対照治療)。能動的治療および対照治療の施術の直後に、ELOVL2発現およびメチル化レベルのベースライン測定のために硝子体内液の試料を各眼から取り出す。ELOVL2は、両眼で同程度に高メチル化されていることが観察される。ELOVL2発現のレベルも類似しており、両眼で低レベルの発現が観察される。能動的治療および対照治療の両方が、それぞれ左眼および右眼で継続され、3ヶ月間隔週で投与される。能動的治療および対照治療の両方は、投与期間にわたって等しく十分に許容される。最後の投与の直後に、ELOVL2遺伝子発現およびメチル化の測定のために硝子体内液の試料を両眼から採取する。ベースラインで実行した地図状萎縮の同じ臨床評価を各眼に対して繰り返す。デシタビンで治療された眼と対照との間を比較すると、著しい差が観察される。デシタビンで治療された眼では、ELOVL2メチル化はベースラインと比較してほぼ30%低減し、ELOVL2遺伝子発現もほぼ30%増加する。また、暗所視応答は、ベースラインよりも約30%増加する。さらに、ベースラインと比較して、眼底自家蛍光により測定される場合の地図状萎縮の成長の進行はない。非常に対照的に、他のパラメータのいずれにおいても、対照の眼に観察可能な変化はない。遺伝子のメチル化および遺伝子の発現および暗所視応答の値は、ベースライン値で観察された値と同じようなままである。患者は6ヶ月でフォローアップ訪問のためにクリニックに戻る。臨床評価は、デシタビンで治療された眼の暗所視応答の改善が持続していることを明らかにし、ベースラインよりも約20%~30%の改善を示す。対照の眼における暗所視応答は、ベースライン値と同じようなままである。
【0129】
ヒトの臨床使用実施例:地図状萎縮を有する患者への12ヶ月間の毎月投与(15uM)
地図状萎縮を伴う乾式加齢性黄斑変性症(AMD)を有する65歳の男性が眼科クリニックを受診する。暗所視応答により評価される患者の視力は低下している。過去2年間の患者の地図状萎縮の領域は、眼底自家蛍光により測定されるように着実な進行を示している。患者は、それ以外は健康である。患者を、硝子体内注射により投与される、無菌の等張性のpH緩衝溶液として処方された100uLのデシタビン(15μM)で治療する。デシタビン投与直後に取り出された硝子体内試料は、ELOVL2プロモーターの高メチル化および低レベルのELOVL2発現を明らかにする。デシタビン治療は、12ヶ月間にわたって5週間ごとに同じ用量を投与して継続する。投与は十分に許容され、副作用は観察されない。最後のデシタビン投与後、硝子体液の試料を採取し、ELOVL2遺伝子のメチル化およびELOVL2遺伝子の発現について試験する。研究は、ELOVL2メチル化が(ベースラインから)ほぼ60%減少し、ELOVL2遺伝子発現が(ベースライン値よりも)約50%増加することを明らかにする。患者の暗所視応答は著しく改善され、ベースラインよりも約30%増加する。眼底自家蛍光により測定される場合、地図状萎縮の成長はない。
【0130】
ヒトの臨床使用実施例:ELOVL2遺伝子療法
地図状萎縮を伴う乾式加齢性黄斑変性症(AMD)を有する70歳の男性が眼科クリニックを受診する。暗所視応答により評価される患者の視力は着実に低下している。患者の地図状萎縮の領域は、眼底自家蛍光により測定されるように着実な進行を示している。患者は、それ以外は健康で、ELOVL2遺伝子療法を使用した治療に同意する。遺伝子療法手順の1週間前に、患者は経口プレドニゾン(0.5mg/kg)を開始した。ELOVL2コード配列を有する組換えアデノ随伴ウイルスベクターが作成され、良好な医療行為ガイドラインの下でパッケージ化される。これを、0.3mlのアリコートに1.5×1011ゲノムの力価で緩衝生理食塩水に懸濁する。経口プレドニゾンで1週間後、全身麻酔下で標準的な硝子体網膜技法を使用して皮質硝子体を除去するために標準的な硝子体切除術が実行される。次に、ちょうど黄斑の外に特殊用途の網膜下カニューレを使用して網膜下腔に注射合計で1.5×1011ゲノムの力価を含有する0.3mlの緩衝生理食塩水を患者に投与する。空気流体交換を実行し、傷を標準的な方法で縫合する。患者に経口プレドニゾン(0.5mg/kg)を継続し、ゆっくりと漸減して術後4週間で終了する。硝子体試料から採取された細胞の分析は、低レベルのELOVL2発現を明らかにする。遺伝子療法手順後の6ヶ月および1年のフォローアップでは、眼底自家蛍光により測定される場合の地図状萎縮の領域に著しい進行はなく、暗所視応答により評価した視力は約20%~約30%改善されている。
【0131】
討論
以前の研究では、ELOVL2プロモーターのメチル化とヒトの年齢との間に非常に著しい相関関係があることが明らかになっている¥[3、29、30]。現在の研究では、ELOVL2のメチル化および発現がヒト線維芽細胞およびマウスの網膜モデルの加齢表現型に役割を担うかどうかを調査した。
【0132】
WI-38線維芽細胞は、1960年代にHayflickおよびMoorheadにより単離され、分裂するにつれて徐々に老化の兆候を経験することが観察され、最初はゆっくりであり、次に50+/-10集団倍増で分裂が停止し、これは、後にHayflick限界として既知となる表現型であった[31]。さらに、細胞は年齢の増加とともにインビボで老化することがわかっており[32]、異なる種からの一次細胞は、種の最大寿命と相関する最大のインビトロ寿命を有することがわかった[33]。これらの変化に加えて、ELOVL2発現はヒト線維芽細胞の継代数の増加とともに減少することがわかった。プロモーターのメチル化は一般に発現と逆相関しているため、プロモーターのメチル化は細胞の加齢とともに増加すると予想され、これが真実であることがわかった。細胞およびヒトの両方において年齢を重ねると、細胞における発現が減少し、プロモーターのメチル化が増加するため、ELOVL2をノックダウンすると加齢の表現型の進行がもたらされるであろうという仮説が立てられた。実際、ELOVL2に対して向けられたshRNAで処理された細胞は、対照細胞と比較して、ELOVL2発現の減少、増殖能力の減少、老化の増加、および年齢に関連する形態の変化を示した。
【0133】
加齢の表現型をさらに調査するために、ELOVL2変異型マウスを作成した。CRISPR-Cas9を使用して、C217W変異が生成され、これは、ELOVL2触媒部位の基質特異性をELOVL5の同等物に切り替え、ELOVL2がC22オメガ-3PUFAドコサペンタエン酸(DPA)(22:5n-3)を24:5n-36に変換する独自の能力を効果的に崩壊させることを示す。ELOVL2およびELOVL5の両方は、エイコサペンタエン酸(EPA;20:5n-3)をドコサペンタエン酸(DPA;22:5n-3)に伸長することがわかっているが、DPAをDHAの最後から2番目の前駆体である24:5n-3にさらに伸長することで既知なのはELOVL2だけである[6]。したがって、ELOVL2変異型マウスの目の健康状態を調査した。
【0134】
自家蛍光撮像による野生型マウスの1歳と比較して、6ヶ月齢の網膜上にタンパク質凝集体の存在が観察された。網膜切片を酸化型ホスホコリン(T-15抗体を使用)、HTRA1、C3、およびC5b-9で染色し、すべては、ドルーゼンに見られるタンパク質であり、これは、加齢性黄斑変性症(AMD)を有する患者で一般的に見られる。
【0135】
光受容体機能をERGにより評価した。ERGは、光刺激に応答して網膜により生成される電気シグナルを測定するため、光受容体の機能異常を検出し得る。マウスの網膜には主に桿体光受容体が含まれているため、電気シグナルの機能の違い(暗所視応答)が視覚性能の評価に最も関係がある。暗所視応答に加えて、錐体応答および10Hzフリッカーも調査した。これらのシグナルのすべて、特に暗所視応答は、年齢を一致させた同腹仔と比較して、野生型マウスおよび変異型マウスの両方で年齢とともに振幅が減少した。ドルーゼン様凝集体の存在とともに、光受容体機能の減少のこれらの指標は、AMDの兆候である。したがって、ELOVL2機能は、マウスにおけるドルーゼン様凝集体の早期発病を予防し、健康な光受容体機能を維持するために重要であると結論付けられた。ドルーゼン様凝集体の出現の加速と相まって、ELOVL2変異型マウスにおける光受容体機能の喪失は、ELOVL2がマウスの老年期を通じて健康な網膜を維持するための重要な部分であることを示す。さらに、ELOVL2は、ヒト細胞の加齢表現型に影響を及ぼす重要な役割を担っており、より広いレベルで加齢のプロセスに影響を及ぼす可能性があることがわかった。
【0136】
ELOVL2 C217Wマウスは、ドルーゼン様凝集体を示し、対照同腹仔のいずれよりも著しく早い段階で光受容体感受性が減少することがわかった。ELOVL2 C217W変異は、眼の加齢の表現型の加速の原因であると結論付けられた。まとめると、本研究は、ELOVL2が加齢特性、特に眼の機能に役割を担うという証拠を示す。さらに、ELOVL2のプロモーター領域でのメチル化のレベルは、その発現と相関しており、加齢特性に影響を及ぼす可能性があるように変更され得る。
【0137】
方法
細胞培養および処理。
WI-38およびIMR-90ヒト線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清(Omega)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を補充したEMEM(ATCC)で培養し、5%CO2および37°Cの加湿インキュベーターで保存した。コンフルエンスを試料ごとに3つの視野(10倍)を含むImageJ撮像ソフトウェアを介して計算した。コンフルエンス状態になると、細胞を分割し、1:3の比率で播種した。集団倍増(PD)を細胞数により計算した。製造元の指示に従ってMISSION shRNA(Sigma)を使用して、ノックダウンレンチウイルスを生成した。5-アザ-2’-デオキシシチジンをTSZ Chem(CAS#2353-33-5)から購入し、2μMの濃度で細胞培養培地に溶解した。細胞を48時間処理した。次に、培地を通常の細胞培養培地と交換し、細胞をさらに5日間培養した。
【0138】
老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)活性。
製造元の指示に従って老化β-ガラクトシダーゼ染色キット(Cell Signaling Technology)を使用して、培養細胞におけるSA-β-gal活性を決定した。その後、細胞をDAPIで染色し、陽性に染色された細胞の割合を、3つの視野(10倍)を含む撮像ソフトウェア(Keyence)で計算した。
【0139】
核酸分析。
製造元の指示に従ってTRIzol(Ambion)を使用して、DNAおよびRNAをヒト線維芽細胞およびマウス組織から単離した。RNAをiScript cDNA合成キット(Bio-Rad)でcDNAに変換した。qPCRを、SsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を使用して実行した。
【0140】
メチル化DNA免疫沈降(MeDIP)を、高設定で8サイクル、各サイクルが30秒オンおよび30秒オフからなるBioruptor(Diagenode)により1μgのDNA をせん断することにより実行した。剪断されたDNAを変性させ、1μgの5mC抗体MABE146(Millipore)と2時間、次にSureBeadsタンパク質Gビーズ(Bio-Rad)と1時間インキュベートした。洗浄後、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen)でDNAを精製した。次に、qPCRを上のように実行した。
【0141】
ウエスタンブロッティング。
様々な発達段階のWTマウスの網膜からTRIzol(Ambion)で単離された10μgの総タンパク質をSDS-PAGEにかけた。ウエスタンブロッティングを、広く受け入れられているプロトコルを使用して実行した(研究で使用した抗体については表2を参照されたい)。ELOVL2タンパク質の発現レベルをH3に正規化した。
【0142】
CRISPR-Cas9設計。
CRISPR-Cas9試薬を本質的には前述のように生成した[34]。T7プロモーターをPCR増幅によりクローン化されたCas9コード配列に添加した。次に、T7-Cas9生成物をゲル精製し、mMESSAGE mMACHINE T7 ULTRAキット(Life Technologies)を使用してインビトロ転写(IVT)のテンプレートとして使用した。T7プロモーターおよびsgRNA配列を長いオリゴヌクレオチド(Ultramer,IDT)として合成し、PCRにより増幅した。T7-sgRNA PCR生成物をゲル精製し、MEGAshortscript T7キット(Life Technologies)を使用してIVTのテンプレートとして使用した。C217Wバリアントをコードする修復テンプレートを一本鎖オリゴヌクレオチド(Ultramer,IDT)として合成し、精製せずに使用した。潜在的なオフターゲットを、Cas-OFFinder35を使用して特定し、不一致が最も少ない標的を選択した(http://www.rgenome.net/cas-offinder/)。ファウンダーマウスおよびすべてのF1マウスをオフターゲットのために配列決定した。
【0143】
動物注射および分析。
すべての動物の手順をUniversity of California,San Diegoの施設内動物管理委員会の承認を得て実施した。C57BL/6Nマウス接合子にCRISPR-Cas9構築物を注射した。オリゴを前核段階で接合子の細胞質に注射した。マウスを従来の動物施設の静的ラックに収容し、Teklad Global2020X食餌を自由に与えた。5-Aza-dc注射研究では、マウスをケタミン/キシラジン(それぞれ、100mg/kgおよび10mg/kg)の腹腔内注射により麻酔し、プロパラカイン(0.5%、Bausch&Lomb)の鎮痛点眼薬を与えた。動物に2ヶ月間にわたって隔週で、片方の眼には1μLのPBSを、反対側の眼にはPBSに溶解した1μLの2μM 5-Aza-dcを眼内注射した。
【0144】
網膜電図(ERG)を以前に報告されたプロトコルに従って実行した[36]。簡単に説明すると、マウスを12時間暗順応させ、ケタミン/キシラジンの体重に基づいた腹腔内注射で麻酔をかけ、トロピカミド(1.5%、Alcon)の拡張滴、ならびに鎮痛剤としてのプロパラカイン(0.5%、Bausch & Lomb)を与えた。マウスの各角膜に電極を配置し、尾に皮下接地針電極を配置し、口に参照電極(Grass Telefactor、F-E2)を有する、フルフィールドGanzfeldボウルセットアップ(Diagnosys LLC)で検査した。潤滑剤(Goniovisc2.5%、HUB Pharmaceuticals)を使用して、電極と眼との接触を提供した。増幅(1~1,000Hzバンドパス、ノッチフィルタリングなし)、刺激提示、およびデータ収集を、UTAS-E3000システム(LKC Technologies)を使用してプログラムし、実行する。暗所視ERGに関して、網膜をキセノンランプで-2および-0.5log cd・s/m2で刺激した。明所視ERGに関して、マウスを1log cd・s/m2の背景光に適合させ、光刺激を1.5log cd・s/m2に設定した。記録を製造元のソフトウェア(Veris,EDI)で収集および平均化し、Excelで処理した。
【0145】
マウス網膜分析。
マウスを犠牲にした直後に網膜を収集し、4%パラホルムアルデヒドで1時間固定し、4℃でPBSに保存した。免疫染色に関して、網膜を切片化し、スライドに乗せ、5%BSA、0.1%トリトン-XPBSブロッキング溶液で1時間インキュベートした。一次抗体(研究で使用した抗体については表2を参照されたい)を5%BSA PBSに1:50で添加し、4℃で16時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、二次抗体を5%BSA PBSで1:1000、室温で30分間添加した。次に、試料をPBSで3回洗浄し、DAPIを用いて室温で5分間染色し、乗せて、画像化した(Keyence BZ-X700)。
【表1】
【表2】
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【配列表】