(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】マルチモーダル網膜画像の処理
(51)【国際特許分類】
A61B 3/12 20060101AFI20231109BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20231109BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61B3/12
A61B3/10 100
A61B3/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022052606
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2022-06-09
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン ダンカン フレミング
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515297(JP,A)
【文献】特開2020-031873(JP,A)
【文献】特開2012-075938(JP,A)
【文献】特開2008-154704(JP,A)
【文献】特開2016-041222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底画像(10)内の指定された特徴(12)に関する補足情報を含むように、眼の網膜の一部分の前記眼底画像(10)を定義する画像データ(D
F)を処理するコンピュータ実装方法であって、
前記眼底画像(10)内の特徴(12)
の位置の指定
(S10)
を受信し、
前記網膜の前記一部分のCスキャン(20)の光干渉断層撮影(OCT)データ(D
OCT)を受信し(S20)、
前記眼底画像(10)内の前記指定された特徴(12)の位置に対応する前記網膜上の位置の前記網膜の一部の立体画像を表す前記OCTデータ(D
OCT)のサブセット(d
OCT)
の選択
(S30)
を受信し、
前記OCTデータ(D
OCT)の前記選択されたサブセット(d
OCT)内
に示される前記眼の測定反射率
が、前記網膜の深さ方向に沿っ
てどのように変化
するかを示す補足画像データ(D
SI)を補足情報として生成するために、前記OCTデータ(D
OCT)の前記選択されたサブセット(d
OCT)を処理し(S40)、
前記画像データ(D
F
)の画素のサブセットの画素値を、前記補足画像データ(D
SI
)の画素値で置き換えることにより、前記画像データ(D
F)を前記補足画像データ(D
SI)と合成することによって合成画像データ(D
CI)を生成し(S50)、前記合成画像データ(D
CI)によって定義された合成画像(40)が指定された前記特徴における前記変化の指標を提供すること
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記眼底画像(10)およびカーソル(16)をディスプレイ(14)上に表示させて、前記カーソル(16)がユーザ入力デバイス(18)からの信号によって、表示された前記眼底画像(10)の上を移動するように制御され得るようにすること
をさらに含み、
前記眼底画像(10)内の前記特徴(12)は、特徴指定コマンドに応答して、表示された前記眼底画像(10)上の前記カーソル(16)の表示位置を示す第1の位置インジケータの値を記録することによって指定される、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記網膜の前記一部分のOCT正面投影画像(
30)を生成するために前記OCTデータ(D
OCT)を処理し、
前記OCT正面投影画像(30)を前記眼底画像(10)とともに前記ディスプレイ(14)上に表示させて、前記カーソル(16)が前記ユーザ入力デバイス(18)からの前記信号によって、表示された前記OCT正面投影画像(30)の上を移動するように制御され得るようにすること
をさらに含み、
前記OCTデータ(D
OCT)の
前記サブセット(d
OCT)は、前記カーソル(16)が前記ユーザ入力デバイス(18)からの前記信号によって
、表示された前記OCT正面投影画像(30)の一部分に重ねるように案内されたときの前記カーソル(16)の表示位置を示す、第2の位置インジケータの値に基づいて選択され
、前記OCT正面投影画像(30)の一部分の位置は、表示された前記眼底画像(10)内の前記指定された特徴(12)の位置に対応する、
請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記眼底画像(10)内の前記特徴(12)は、特徴抽出アルゴリズムによって自動的に指定される、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記眼底画像(10)と、前記眼底画像(10)内の前記指定された特徴(12)の前記位置を示す特徴位置インジケータ(19)とを、ディスプレイ(14)上に表示し、
前記網膜の前記一部分のOCT正面投影画像(30)を生成するために前記OCTデータ(D
OCT)を処理し、
前記OCT正面投影画像(30)およびカーソル(16)を前記眼底画像(10)とともに前記ディスプレイ(14)上に表示させて、前記カーソル(16)がユーザ入力デバイス(18)からの信号によって、表示された前記OCT正面投影画像(30)の上を移動するように制御され得るようにすること
をさらに含み、
前記OCTデータ(D
OCT)の前記サブセット(d
OCT)は、前記カーソル(16)が前記ユーザ入力デバイス(18)からの前記信号によって
、表示された前記OCT正面投影画像
(30)の一部分に重ねるように案内されたときの前記カーソル(16)の表示位置を示す、第2の位置インジケータの値に基づいて選択され
、前記OCT正面投影画像(30)の一部分の位置は、前記特徴位置インジケータ(19)によって示される前記眼底画像(10)内の前記指定された特徴(12)の位置に対応する、
請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記OCTデータ(D
OCT)の前記サブセット(d
OCT)は、前記特徴抽出アルゴリズムによって指定された前記眼底画像(10)内の前記特徴(12)の前記位置に、前記眼底画像(10)内の位置を前記OCTデータ(D
OCT)内の対応するAスキャン位置にマッピングする幾何学的変換を適用することによって選択される、請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記特徴(12)は、前記眼底画像(10)内のドットおよび超反射性ドットのうちの1つであり、前記特徴(12)は、病理学的原因を有するか、または前記網膜の内境界膜からの反射によって引き起こされる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記特徴(12)は、前記網膜内の漏血、滲出、ドルーゼン、萎縮、および母斑の少なくとも一つ、ならびに前記網膜内の網膜色素上皮の萎縮のうちの1つを含む病理学的原因を有する、請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)は、
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)内の前記眼の複数の解剖学的層を検出し(S42)、前記解剖学的層は前記網膜の1以上の網膜層を含み、
検出された前記解剖学的層のうちの少なくとも2つの各々について、前記解剖学的層内の前記OCTデータ(D
OCT)の前記サブセット(d
OCT)のデータ要素の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算し(S44)、
検出された前記解剖学的層のうちの前記少なくとも2つの各々について、前記解剖学的層に対して計算された前記合計値と、検出された前記解剖学的層のうちの前記少なくとも2つおよび前記OCTデータ(D
OCT)の前記サブセット(d
OCT)内の全てのデータ要素の合計と、のそれぞれの比を計算し(S46)、
前記補足画像データ(D
SI)として、前記計算された比の規則的順序に基づいて、前記合成画像内に表示されると共に前記計算された比の規則的順序を識別する色を定義する色情報を生成し(S48)、前記規則的順序は、前記計算された比を眼の対応する解剖学的層の順序で配置し、色は、前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)内の前記眼の前記測定反射率の、前記網膜の前記深さ方向に沿った変化を示すこと
によって前記補足画像データ(D
SI)を生成するために処理される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)内の3つの解剖学的層が検出され、
前記色情報は、前記合成画像に表示される前記色の赤色成分、緑色成分、および青色成分の各々に、前記計算された比の前記規則的順序で、前記計算された比のそれぞれ1つにしたがって前記色成分の重み付けをそれぞれ割り当てることによって生成される(S48)、
請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)は、
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)内の前記眼の複数の解剖学的層を検出し、前記解剖学的層は前記網膜の1以上の網膜層を含み、
検出された前記解剖学的層の各解剖学的層について、前記解剖学的層内の前記OCTデータ(D
OCT)の前記サブセット(d
OCT)のデータ要素の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算し、
前記計算された合計値に基づいて、前記検出された解剖学的層のうちの、前記眼の前記測定反射率に対して支配的な寄与を提供する解剖学的層を選択し、
前記補足画像データ(D
SI)として、選択された前記解剖学的層を識別するグラフィックを定義するグラフィック画像データを生成すること
によって前記補足画像データ(D
SI)を生成するために処理される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)は、所定のタイプの特徴を有する前記網膜の一部分の立体画像を表し、
少なくとも他の1つの網膜の病変領域のOCTデータの例を用いた教師あり学習によって、前記網膜の前記深さ方向の前記所定のタイプの前記特徴の深さを判定するためのモデルを訓練し、前記OCTデータの例の各々は、単一のOCT Aスキャンまたは2つ以上の隣接するOCT Aスキャンを含み、前記病変領域の各々は、前記所定のタイプのそれぞれの特徴を有し、前記OCTデータの例の各々における、前記網膜の前記深さ方向における前記それぞれの特徴のそれぞれの深さの指標は、前記訓練中にユーザによって規定され、
前記特徴の前記網膜の前記深さ方向における深さを判定するために、前記訓練されたモデルを使用して前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)を処理し、
前記補足画像データとして、
前記特徴の前記判定された深さを示すと共に、前記合成画像(40)内の前記特徴の位置を示すように前記眼底画像(10)に重ねられるグラフィックを定義するグラフィック画像データ、および
前記合成画像内の前記特徴の位置に表示され、前記特徴の前記判定された深さを示す色を定義する色情報、
のうちの1つを生成すること
によって前記補足画像データ(D
SI)を生成するために処理される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
コンピュータプロセッサによって実行されると、請求項1から請求項12のうちの少なくとも一項による方法をコンピュータプロセッサ(220)に実行させるコンピュータプログラム命令を含む、コンピュータプログラム(245)。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラム(245)を記憶した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(250)。
【請求項15】
眼底画像(10)内の指定された特徴(12)に関する補足情報を含むように、眼の網膜の一部分の前記眼底画像(10)を定義する画像データ
(D
F
)を処理するための装置(100)であって、
前記眼底画像(10)内の特徴
の位置を指定するように構成された特徴指定モジュール(110)と、
前記網膜の前記一部分のCスキャン(20)の光干渉断層撮影(OCT)データ(D
OCT)を受信するように構成された受信モジュール(120)と、
前記眼底画像(10)内の指定された前記特徴(12)の位置に対応する前記網膜上の位置の前記網膜の一部の立体画像を表す前記OCTデータ(D
OCT)のサブセット(d
OCT)を選択するように構成された選択モジュール(130)と、
前記OCTデータ(D
OCT)の選択された前記サブセット(d
OCT)内
に示される前記眼の測定反射率
が、前記網膜の深さ方向に沿っ
てどのように変化
するかを示す補足画像データ(D
SI)を、前記補足情報として生成するために、前記OCTデータの前記選択されたサブセットを処理するように構成された補足画像データ生成モジュール(140-1)と、
前記画像データ(D
F
)の画素のサブセットの画素値を、前記補足画像データ(D
SI
)の画素値で置き換えることにより、前記画像データ(D
F)を前記補足画像データ(D
SI)と合成することによって合成画像データ(D
CI)を生成するように構成され、前記合成画像データ(D
CI)によって定義された合成画像が指定された前記特徴(12)における前記変化の指標を提供する、合成画像データ生成モジュール(150)と、
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の例示的な態様は、概して網膜画像処理の分野に関し、より具体的には、網膜から取得された光干渉断層撮影(optical coherence tomography:OCT)データに由来する補足情報を含めるための網膜の反射画像の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、眼底カメラまたは走査型レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscope:SLO)によって取得された眼底の二次元画像は、被験者の様々な眼疾患、ならびに全身疾患を検出するために、広く使用されている。これらの撮影方法は、網膜内の深さに応じて様々な感度を有する傾向があるが、これらの深さによる特異性は低い傾向があるため、網膜眼底画像において観察される特徴の深さは通常、はっきりしない。加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、および網膜静脈閉塞などのいくつかの一般的な眼疾患は、網膜眼底画像においてさらに同様の外観を有する超反射性ドットなどの特徴に関連付けられるため、臨床医がこれらの疾患を網膜眼底画像の観察のみにより区別することは、困難である場合が多い。高反射の内境界膜(inner limiting membrane:ILM)に起因するものなどの網膜眼底画像のアーチファクトと、網膜色素上皮(retinal pigment epithelium:RPE)の萎縮もまた、滲出性、RPE関連、およびドルーゼン様超反射性ドットなどの疾患関連の特徴の識別を混乱させる可能性がある。網膜眼底画像上で識別された関心対象の特徴に関するさらなる情報は、関心対象の特徴をカバーするOCT厚さマップを調べることによって得ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の第1の例示的な態様によれば、眼底画像内の指定された特徴に関する補足情報を含むように、眼の網膜の一部分の眼底画像を定義する画像データを処理する、コンピュータ実装方法が提供される。本方法は、眼底画像内の特徴を指定し、網膜の一部分のCスキャンの光干渉断層撮影(OCT)データを受信し、眼底画像内の指定された特徴の位置に対応する網膜上の位置における、網膜の一部の立体画像を表すOCTデータのサブセットを選択することを含む。本方法は、OCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化を示す補足画像データを補足情報として生成するために、OCTデータの選択されたサブセットを処理することを、さらに含む。本方法は、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、画像データを補足画像データと合成することによって合成画像データを生成することを、さらに含む。
【0004】
第1の例示的な態様によるコンピュータ実装方法では、合成画像データは、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、眼底画像データの画素のサブセットの画素値を、補足画像データの画素値で置き換えることによって生成され得る。いくつかの例示的な実施形態では、合成画像データは、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、眼底画像データの画素のサブセットであって、眼底画像内の指定された特徴の位置にある眼底画像の小領域を定義する画素のサブセットの画素値を、補足画像データの画素値で置き換えることによって、生成され得る。いくつかの別の例示的な実施形態では、補足画像データは、OCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化、またはより具体的には、OCTデータの選択されたサブセット内で示されるような、眼の測定反射率が網膜の深さ方向に沿ってどのように変化するかを示す、グラフィックを定義し得る。これらの別の例示的な実施形態では、合成画像データは、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように眼底画像に重ねられるグラフィックを含むように、眼底画像データの画素のサブセットの画素値を補足画像データの画素値で置き換えることによって生成され得る。
【0005】
付加的または代替的に、第1の例示的な態様によるコンピュータ実装方法は、例示的な実施形態によれば、ユーザ入力デバイスからの信号によってカーソルが表示された眼底画像の上を移動するように制御され得るように、眼底画像およびカーソルをディスプレイ上に表示させることをさらに含んでもよく、眼底画像内の特徴は、特徴指定コマンドに応答して、表示された眼底画像上のカーソルの表示位置を示す第1の位置インジケータの値を記録することによって指定される。
【0006】
例示的な実施形態の方法は、網膜の一部分のOCT正面投影(en-face)画像を生成するためにOCTデータを処理し、ユーザ入力デバイスからの信号によってカーソルが表示されたOCT正面投影画像の上を移動するように制御され得るように、眼底画像とともにOCT正面投影画像をディスプレイ上に表示させること、をさらに含んでもよく、OCTデータのサブセットは、表示された眼底画像内の指定された特徴に対応する表示されたOCT正面投影画像の部分に重ねるように、ユーザ入力デバイスからの信号によってカーソルが案内されたときのカーソルの表示位置を示す、第2の位置インジケータの値に基づいて選択される。
【0007】
眼底画像内の特徴は、代替的に、特徴抽出アルゴリズムによって自動的に指定されてもよい。この場合、コンピュータ実装方法は、眼底画像と、眼底画像内の指定された特徴の位置を示す特徴位置インジケータとを、ディスプレイ上に表示させ、網膜の一部分のOCT正面投影画像を生成するためにOCTデータを処理し、ユーザ入力デバイスからの信号によってカーソルが表示されたOCT正面投影画像の上を移動するように制御され得るように、眼底画像とともにOCT正面投影画像およびカーソルをディスプレイ上に表示させること、をさらに含んでもよく、OCTデータのサブセットは、特徴位置インジケータによって示される眼底画像内の指定された特徴の位置にその位置が対応する、表示されたOCT正面投影画像の部分に重ねるように、ユーザ入力デバイスからの信号によってカーソルが案内されたときのカーソルの表示位置を示す、第2の位置インジケータの値に基づいて選択される。
【0008】
あるいは、眼底画像内の特徴が特徴抽出アルゴリズムによって自動的に指定される場合、OCTデータのサブセットは、眼底画像内の位置をOCTデータ内の対応するAスキャン位置にマッピングする幾何学的変換を、特徴抽出アルゴリズムによって指定された眼底画像内の特徴の位置に適用することによって、選択され得る。
【0009】
上述したコンピュータ実装方法のいずれにおいても、特徴は、眼底画像内のドットおよび超反射性ドットのうちの1つであってもよく、特徴は、病理学的原因を有するか、または網膜の内境界膜からの反射によって引き起こされる。たとえば、特徴は、網膜内の漏血、滲出、ドルーゼン、萎縮、および母斑の少なくとも1つ、ならびに網膜内の網膜色素上皮の萎縮のうちの1つを含む病理学的原因を有する場合がある。
【0010】
上記方法では、OCTデータの選択されたサブセットは、以下の方式1、方式2、または方式3によって補足画像データを生成するために処理され得る。
【0011】
方式1:
OCTデータの選択されたサブセットは、補足画像データを生成するために次のように処理される。OCTデータの選択されたサブセット内の眼の複数の解剖学的層を検出し、解剖学的層は網膜の1または複数の網膜層を備え、検出された解剖学的層のうちの少なくとも2つの各々について、解剖学的層内のOCTデータのサブセットのデータ要素の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算し、検出された解剖学的層のうちの少なくとも2つの各々について、解剖学的層に対して計算された合計値と、検出された解剖学的層のうちの少なくとも2つおよびOCTデータのサブセット内の全てのデータ要素の合計と、のそれぞれの比を計算し、合成画像内に表示され、計算された比の規則的順序を識別する色を定義する色情報を、補足画像データとして、計算された比の規則的順序に基づいて生成し、規則的順序は、計算された比を眼の対応する解剖学的層の順序で配置し、色は、OCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化を示。たとえば、OCTデータの選択されたサブセット内の3つの解剖学的層が検出されてもよく、色情報は、合成画像に表示される色の赤色成分、緑色成分、および青色成分の各々に、計算された比の規則的順序で、計算された比のそれぞれ1つにしたがって色成分の重み付けをそれぞれ割り当てることによって、生成され得る。
【0012】
方式2:
OCTデータの選択されたサブセットは、補足画像データを生成するために次のように処理される。OCTデータの選択されたサブセット内の眼の複数の解剖学的層を検出し、解剖学的層は網膜の1または複数の網膜層を含み、検出された解剖学的層の各解剖学的層について、解剖学的層内のOCTデータのサブセットのデータ要素の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算し、計算された合計値に基づいて、検出された解剖学的層のうちの、眼の測定反射率に対して支配的な寄与を提供する解剖学的層を選択し、補足画像データとして、選択された解剖学的層を識別するグラフィックを定義するグラフィック画像データを生成する。
【0013】
方式3:
OCTデータの選択されたサブセットは、所定のタイプの特徴を有する網膜の一部分の立体画像を表し、補足画像データを生成するために次のように処理される。少なくとも他の1つの網膜の病変領域のOCTデータの例を用いた教師あり学習によって、網膜の深さ方向における所定のタイプの特徴の深さを判定するためのモデルを訓練し、OCTデータの例の各々は、単一のOCT Aスキャンまたは2つ以上の隣接するOCT Aスキャンを含み、病変領域の各々は、所定のタイプのそれぞれの特徴を有し、OCTデータの例の各々における網膜の深さ方向におけるそれぞれの特徴のそれぞれの深さの指標は、訓練中にユーザによって規定され、網膜の深さ方向における特徴の深さを判定するために、訓練されたモデルを使用してOCTデータの選択されたサブセットを処理し、補足画像データとして、(i)特徴の判定された深さを示し、合成画像(40)における特徴の位置を示すように眼底画像(10)に重ねられるグラフィックを定義するグラフィック画像データ、および(ii)合成画像における特徴の位置に表示され、特徴の判定された深さを示す色を定義する色情報、のうちの1つを生成する。
【0014】
本明細書の第2の例示的な態様によれば、コンピュータによって実行されると、上述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム命令を含むコンピュータプログラムも提供される。コンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、または信号によって搬送されてもよい。
【0015】
本明細書の第3の例示的な態様によれば、眼底画像内の指定された特徴に関する補足情報を含むように、眼の網膜の一部分の眼底画像を定義する画像データを処理するための装置も提供される。装置は、眼底画像内の特徴を指定するよう構成された特徴指定モジュールと、網膜の部分のCスキャンのOCTデータを受信するよう構成された受信モジュールとを備える。装置は、眼底画像内の指定された特徴の位置に対応する、網膜上の位置の網膜の一部の立体画像を表すOCTデータのサブセットを選択するよう構成された選択モジュールと、OCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化を示す補足画像データを、補足情報として生成するために、OCTデータの選択されたサブセットを処理するよう構成された補足画像データ生成モジュールと、をさらに備える。装置は、画像データを補足画像データと合成することによって合成画像データを生成するよう構成され、合成画像データによって定義された合成画像が指定された特徴における変化の指標を提供する、合成画像データ生成モジュールを、さらに備える。
【0016】
第3の例示的な態様による装置では、合成画像データ生成モジュールは、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、眼底画像データの画素のサブセットの画素値を補足画像データの画素値で置き換えることによって、合成画像データを生成するように構成され得る。いくつかの例示的な実施形態では、合成画像データ生成モジュールは、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、眼底画像データの画素のサブセットであって、眼底画像内の指定された特徴の位置にある眼底画像の小領域を定義する画素のサブセットの画素値を、補足画像データの画素値で置き換えることによって、合成画像データを生成するように構成され得る。いくつかの別の例示的な実施形態では、補足画像データ生成モジュールは、OCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化、またはより具体的には、OCTデータの選択されたサブセット内で示されるような、眼の測定反射率が網膜の深さ方向に沿ってどのように変化するかを示す、グラフィックを定義する補足画像データを生成するように構成され得る。これらの別の例示的な実施形態では、合成画像データ生成モジュールは、合成画像データによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように眼底画像に重ねられるグラフィックを含むように、眼底画像データの画素のサブセットの画素値を補足画像データの画素値で置き換えることによって合成画像データを生成するように配置され得る。
【0017】
以下で説明される添付図面を参照して、非限定的な例のみによって、例示的な実施形態を詳細に説明する。図面の異なるものに見られる同様の参照番号は、別途記載されない限り、同一または機能的に同様の要素を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の例示的な実施形態による、画像データを処理するための装置の概略図である。
【
図2】第1の例示的な実施形態の眼底画像および正面投影OCT画像を表示するディスプレイの概略図である。
【
図3】第1の例示的な実施形態の選択モジュールによって選択される、OCTデータおよびそのサブセットの概略図である。
【
図4】本明細書の例示的な実施形態の1つ目のプログラマブル信号処理ハードウェアにおける例示的な実装形態を示す。
【
図5】第1の例示的な実施形態の装置が、眼底画像内の指定された特徴に関する補足情報を含むように眼の網膜の一部分の眼底画像を定義する画像データを処理するプロセスを示す、フロー図である。
【
図6】第1の例示的な実施形態の補足画像データ生成モジュールが補足画像データを生成するプロセスを示す、フロー図である。
【
図7】眼底画像(画像A)、指定された特徴が強調された眼底画像の処理済みバージョン(画像B)、および第1の例示的な実施形態の装置によって生成された合成画像(画像C)を示す。
【
図8】
図7の画像Cに示される水平線に沿って切り取られたBスキャンの画像を示す。
【
図9】第2の例示的な実施形態による、画像データを処理するための装置の概略図である。
【
図10】第2の例示的な実施形態の補足画像データ生成モジュールが補足画像データを生成するプロセスを示す、フロー図である。
【
図11】第2の例示的な実施形態の装置によって生成された合成画像の第1の例を示す。
【
図12】第2の例示的な実施形態の装置によって生成された合成画像の第2の例を示す。
【
図13】第3の例示的な実施形態による、画像データを処理するための装置の概略図である。
【
図14】第3の例示的な実施形態の補足画像データ生成モジュールが補足画像データを生成するプロセスを示す、フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、臨床医が、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、および網膜静脈閉塞などの、網膜眼底画像において同様の外観を有するいくつかの一般的な眼疾患の特徴の分布を評価して区別するのを支援することができ、鏡面反射撮影アーチファクトによって引き起こされる網膜眼底画像の誤読を回避するのに役立てることができる、網膜眼底画像データを処理するための方法、装置、およびコンピュータプログラムを説明する。本明細書に記載される技術は、網膜眼底画像内の特徴(たとえば、輝点)のより明確なレンダリングのために、OCTデータ内の追加情報を活用できるようにすることができる。いくつかの例示的な実施形態では、この情報は、OCTデータを確認することなく、ユーザによって理解されることが可能である。さらに、いくつかの例示的な実施形態では、網膜眼底画像内の特徴がOCT内の特徴と一致するか否かがユーザに通知されてもよく、これにより、網膜眼底画像内のアーチファクトスポットなどの誤読を回避することを支援する。
【0020】
以下、添付図面を参照して、本明細書における例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【0021】
[第1の例示的な実施形態]
【0022】
図1は、第1の例示的な実施形態による、画像データを処理するための装置100の概略図である。以下でより詳細に説明されるように、装置100は、
図2に示すように、眼底画像10内の指定された特徴12に関する補足情報を含むように、眼の網膜の一部分の眼底画像10を定義する受信画像データD
Fを処理するように構成され、
図2は、眼底画像10および指定された特徴12が、ユーザに制御されるカーソル16とともに、ディスプレイ14(たとえば、コンピュータモニタなどの視覚的表示ユニット)上に表示されること示す。
【0023】
網膜の眼底画像(本明細書では、網膜眼底画像とも呼ばれる)10は、網膜から収集された光を使用して、眼底撮影装置(図示せず)の撮像面に投影された三次元(半透明)網膜組織の二次元表示が得られる、任意の眼底撮影プロセスによって取得され得る。眼底画像は、大域照明による網膜の照明によって、または眼底撮影装置によって提供される走査光ビームによって、取得され得る。網膜から反射された光は、眼底撮影装置の受光部によって収集され、その位置依存強度が検出され、次いで二次元眼底画像10を表す画像データDFに変換される。したがって、本明細書で使用される用語「眼底撮影」は、網膜の一部分の二次元画像をもたらす任意のプロセスを指し、画像画素値は網膜から収集された光のそれぞれの強度を表し、OCT撮影(後述)と対比されるべきである。
【0024】
眼底画像10は、眼底カメラおよび走査型レーザー検眼鏡(SLO)を含むがこれらに限定されない、当業者に知られている多くのタイプの眼底撮影装置のうちの1つによって取得され得る。これらのタイプの眼底撮影装置は、光フィルタと組み合わせて、眼底の単色または自己蛍光画像を取得するために使用されてもよく、静脈内造影剤の注入により、蛍光眼底血管造影図、インドシアニングリーン蛍光血管造影図などを取得するためにも使用され得る。したがって、眼底撮影は、単色眼底撮影、カラー眼底撮影、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、補償光学SLO、蛍光血管造影、およびインドシアニン蛍光血管造影を含む、様々なモダリティ/技術をカバーする。
【0025】
眼底撮影装置は、従来の眼底撮影では典型的な、30°~55°程度の比較的狭い視野を有してもよく、または、約100°の視野を有する広角眼底撮影装置であってもよい。さらなる代替例として、眼底撮影装置は、Optos plc製のOptos California(登録商標)など、約200°の視野を有する超広角(ultra-widefield:UWF(登録商標))眼底撮影装置であってもよい。
【0026】
図1に示されるように、装置100は、眼底撮影装置から受信した眼底画像10内の特徴12を指定するように構成された、特徴指定モジュール110を備える。特徴12は、比較的高い反射率を有する構造(網膜内であっても撮像されている眼の別の部分であっても)の画像であってもよく、したがって、その部分を取り囲む眼底画像10の領域よりも高い反射率を示す眼底画像10の部分であってもよい。あるいは、特徴12は、比較的低い反射率を有する構造(網膜内であっても撮像されている眼の別の部分であっても)の画像であってもよく、したがって、その部分を取り囲む眼底画像10の領域よりも低い反射率を示す眼底画像10の部分であってもよい。便宜上、本明細書では単一の指定された特徴12を参照して装置100の説明を記載したが、眼底画像10内の複数の特徴が指定されてもよく、以下で説明される動作がこれらの指定された特徴の各々に基づいて実行されてもよいことは、理解されるだろう。
【0027】
特徴12は、たとえば、眼底画像内のその範囲が眼底画像のサイズと比較して小さい、ドット特徴であってもよい。この種のドット特徴は、網膜内の漏血、滲出、ドルーゼン、萎縮、および/または母斑などの病理学的原因を有する可能性がある。これらの病状に関するドット特徴は、非常に類似した特徴的な外観(そのサイズ、および眼底画像10内のドット特徴とその周囲との輝度の差に関して)を有し、臨床医が眼底画像10の観察のみによって曖昧さをなくすことは困難である。これらはまた、眼底画像において前述の病理学的ドット特徴と類似の外観を有する、硝子体中の浮遊物、内境界膜などの網膜表面からの反射、または撮像システム内の埃などの欠陥からの反射などの非病理学的原因を有するドット特徴との間の曖昧さをなくすことも困難である。
【0028】
ドット特徴は、たとえば、網膜眼底画像においてしばしば観察される、超反射性ドット/焦点であり得る。超反射焦点は、網膜内の漏血、滲出、ドルーゼン、萎縮、および/または母斑、もしくは網膜内の網膜色素上皮の萎縮などの病理学的原因、あるいは網膜の内境界膜からの反射などの非病理学的原因を有する可能性がある。これら全ての場合の超反射性ドットは、非常に類似した特徴的な外観を有し、眼底画像10の観察のみによって区別することは困難である。
【0029】
特徴指定モジュール110は、いくつかの異なる方法のうちの1つにより眼底画像10内の特徴12を指定することができる。たとえば、本例示的な実施形態では、特徴指定モジュール110は、眼底画像10およびカーソル16をディスプレイ14上に表示させる。表示された眼底画像10上のカーソル16の表示位置は、コンピュータマウス、トラックパッドなどのユーザ入力デバイス18からの信号によって制御可能である。本例示的な実施形態では、眼底画像10の特徴12は、特徴指定コマンドに応答して、カーソルが表示された眼底画像10に重なるように信号によって案内されたときのカーソル16の表示位置を示す第1の位置インジケータの値を記録することによって、指定される。特徴指定モジュール110は、第1の位置インジケータによって示される眼底画像10内の位置において、グラフィック19をリラクタンス画像10に重畳させてもよい。
【0030】
特徴指定コマンドは、本例示的な実施形態のように、ユーザによって、たとえば、ユーザがユーザ入力デバイス18を操作することによって(たとえば、ユーザ入力デバイスがコンピュータマウスの形態で提供される場合にはマウスクリックを、ユーザ入力デバイスがトラックパッドの形態で提供される場合には指タップを提供することによって)、提供されてもよい。あるいは、特徴指定コマンドは、ユーザが別のユーザ入力デバイスを操作すること、たとえばコンピュータキーボード上のキーを押すことによって提供されてもよい。さらなる代替例として、特徴指定コマンドは、所定の条件が満たされること、たとえばユーザに対する、表示された眼底画像10内の関心対象の特徴を指定する指示がディスプレイ14上に表示されることよって開始された所定の期間の満了に応答して、特徴指定モジュール110によって生成されてもよい。
【0031】
特徴指定モジュール110は、特徴12を指定するためにこのような人間の対話に依存する必要はなく、代替の例示的な実施形態では、たとえば、“Automated detection of age-related macular degeneration in color fundus photography: a systematic review” Pead, E., Megaw, R., Cameron, J., Fleming, A., Dhillon, B., Trucco, E. MacGillivray, T., 2019, 10, Survey of Ophthalmology, 64(4), 2019, 498~511ページ、又は“A review on exudates detection methods for diabetic retinopathy” Joshi, S., Karule, P. T., Biomedicine & Pharmacotherapy, 97, 2018, 1454~1460ページ、又は“A review on recent developments for detection of diabetic retinopathy” Amin, J., Sharif, M., Yasmin, M., Scientifica, 2016 に記載されたような、当業者に知られているいくつかの特徴抽出アルゴリズムのうちの1つを使用して、指定を自動的に実行することができる。
【0032】
装置100はまた、OCT撮像システム(図示せず)によって取得された網膜の部分のCスキャン(
図3の符号20に示される)の光OCTデータD
OCTを受信するように構成された、受信モジュール120も有する。装置100はまた、眼底画像10内の指定された特徴12の位置に対応する網膜上の位置における網膜の一部の立体画像(
図3のAスキャンのセット22のボクセルによって定義される)を表す、OCTデータD
OCTのサブセットd
OCTを選択するように構成された、選択モジュール130も有する。
図3に概略的に示されるように、Cスキャン20は一連のBスキャン24で構成され、各Bスキャン24は、一連のAスキャン26で構成される。Aスキャン26内の各データ要素の値は、Aスキャン26に沿った(すなわち、
図3のz軸方向に沿った)データ要素の位置に対応する網膜の深さ方向のそれぞれの位置における、眼の測定反射率の指標を提供する。Cスキャン20を形成するデータ要素アレイのy軸およびx軸方向に沿ったAスキャン26の位置は、Aスキャン26を取得するためにOCT撮像システムによって行われた測定の網膜上の位置に対応する。
【0033】
OCTデータDOCTを取得するために使用されるOCT撮像システムは、眼の領域で横方向にわたってレーザービームを走査することによってOCT画像を取得することができる、当業者に知られている任意のタイプのもの、たとえばポイントスキャンOCTであってもよい。あるいは、OCT撮像システムは、眼の上の単一スポットを走査するのではなく、サンプル上の領域または線を照明することによって優れたAスキャン取得率(最大数十MHz)を提供し得る、全視野OCT(Full-Field OCT:FF-OCT)または線視野OCT(Line-Field OCT:LF-OCT)などの並列取得OCT撮像システムであってもよい。FF-OCTでは、眼の二次元領域が同時に照明され、領域を横切る横方向の位置が、高速電荷結合素子(CCD)カメラなどの光検出器アレイを使用して同時に撮影される。OCT撮像システムが全視野OCTである場合、これはたとえば、全視野時間領域OCT(full-field time-domain OCT:FF-TD-OCT)または全視野掃引光源OCT(full-field swept-source OCT:FF-SS-OCT)の形態を取り得る。FF-TD-OCTでは、眼の異なる深さの領域を撮像するために、走査中に基準アームの光学的距離を変化させることができる。したがって、FF-TD-OCTにおいて高速カメラによって取り込まれた各フレームは、眼の中のそれぞれの深さにおける眼のスライスに対応する。FF-SS-OCTでは、サンプル領域は、経時的に波長が変化する光を放出する掃引光源を使用して、全視野照明される。掃引光源の波長が光波長の範囲にわたって掃引されると、光波長に対して反射率情報を相関させた分光写真を、カメラ画素ごとに高速カメラによって生成することができる。したがって、カメラによって撮影された各フレームは、掃引光源の単一の波長に関する反射率情報に対応する。掃引光源の波長ごとにフレームを取得すると、カメラによって生成された分光写真のサンプルに対してフーリエ変換を実行することによって、その領域のCスキャンを取得することができる。線視野OCT(LF-OCT)では、線状の照明がサンプルに対して提供されてもよく、撮像プロセスにおいてBスキャンが取得され得る。線視野OCTは、たとえば、線視野時間領域OCT(line-field time-domain OCT:LF-TD-OCT)、線視野掃引光源OCT(linefield swept-source OCT:LF-SS-OCT)、または線視野スペクトル領域OCT(line-field spectral-domain OCT:LF-SD-OCT)に分類され得る。
【0034】
OCTデータを取得するために使用されるOCT撮像システムおよび眼底画像を取得するために使用される眼底撮影装置は、別個のデバイスであってもよい。しかしながら、眼底画像およびOCTデータは、Optos plc製のSilverstone統合UWF(登録商標)網膜撮像デバイスおよびUWF(登録商標)誘導掃引光源OCTスキャナなどの単一のマルチモーダル網膜撮像システムによって取得されることができることに、留意すべきである。
【0035】
受信したOCTデータDOCTのサブセットdOCTは、本例示的な実施形態のように、ディスプレイ14に示されたOCTデータDOCTの二次元表示を画像観察し、やはりディスプレイ14に示された基準画像10内の指定された特徴12の位置に対応するOCTデータDOCTの表示内の位置を決定し、OCTデータDOCTの表示内の決定された位置に重ねるようカーソル16を案内したユーザからの入力に基づいて、選択モジュール130によって選択され得る。
【0036】
より具体的には、本例示的な実施形態では、選択モジュール130は、網膜の一部分のOCT正面投影画像を生成するために、受信したOCTデータDOCTを処理する。OCT正面投影画像30は、網膜の同じ部分の眼底画像10において見られる同じ二次元平面への(三次元)Cスキャン20画像の投影である。OCT正面投影画像30の生成は、OCT Cスキャン20の深さ軸(z)に沿ったCスキャンのデータ要素(ボクセル)の加算、重み付け加算、または最大化を伴っていてもよい。
【0037】
選択モジュール130は、OCT正面投影画像30を眼底画像10とともに、たとえば
図2に示されるような眼底画像10と並べて、ユーザ入力デバイス18からの信号によってカーソル16が表示されたOCT正面投影画像30の上を移動するように制御可能な状態で、ディスプレイ14上に表示させる。本例示的な実施形態では、ディスプレイ14は単一の視覚表示ユニットの形態で提供されるが、ディスプレイ14は、代替的に、ユーザに対して眼底画像10およびOCT正面投影画像30をそれぞれ同時に表示するように配置された、第1のモニタ(または他の視覚表示ユニット)、および第2のモニタ(または必ずしも第1の視覚表示ユニットと同じ種類ではない他の視覚表示ユニット)の形態で提供されてもよい。
【0038】
本例示的な実施形態では、OCTデータDOCTのサブセットdOCTは、表示された眼底画像10内の指定された特徴12に対応すると(表示画像10および30の網膜特徴の比較に基づいて)ユーザによって判断された表示されたOCT正面投影画像30の一部32に重ねるように、カーソル16がユーザ入力デバイス18からの信号によって案内されたときのカーソル16の表示位置を示す第2の位置インジケータの値に基づいて、ならびに上述した種類の特徴指定コマンドに応答して、選択モジュール130によって選択される。OCTデータDOCTのサブセットdOCTは、第2の位置インジケータの値を、対応する(x,y)座標を有するOCT Cスキャン20のAスキャンにマッピングし、OCTデータDOCTのサブセットdOCTとして、Aスキャン、または隣接する(隣接)Aスキャン(たとえば、Cスキャン20のx-y平面内のマッピングおよび選択されたAスキャンに最も近いm個の隣接Aスキャン、mは好ましくは4より大きく、より好ましくは8より大きい整数である)の所定の配置とともにAスキャンを選択することによって、第2の位置インジケータの値に基づいて選択され得る。
【0039】
しかしながら、OCTデータDOCTのサブセットdOCTは、隣接するAスキャンの所定の配置とともにマッピングおよび選択されたAスキャンによって定義される必要はなく、ユーザが眼底画像10内の対象の特徴の境界の周りでカーソル16を移動させる際に彼/彼女が複数の特徴指定コマンドを発行するのに応答して、第2の位置インジケータのそれぞれの値に基づいて選択されたCスキャン20のAスキャンを連結する直線セグメントによって定義されるCスキャン20のx-y平面内の輪郭によって囲まれたAスキャンのセットによって定義されてもよいことに、留意すべきである。したがって、OCTデータDOCTのサブセットdOCTは、(本例示的な実施形態のように)所定の形状またはユーザによって定義された形状を有する、OCT正面投影画像30の領域に対応し得る。
【0040】
選択モジュール130は、第2の位置インジケータによって示される正面投影画像30内の位置において、OCT正面投影画像30にグラフィック34を重畳させてもよい。グラフィック34はグラフィック19と同じであってもよく、または、たとえばグラフィック34の異なる色および/または形状がOCT正面投影画像30上でより良い視認性を提供する場合には、グラフィック19と異なっていてもよい。同様に、表示された眼底画像10に重なっている間のカーソル16の外観は、表示されたOCT正面投影画像30に重なっている間のその外観と(形状および/または色に関して)異なっていてもよい。
【0041】
特徴指定モジュール110が特徴抽出アルゴリズムの仕様によって自動的に眼底画像10内の特徴12を指定する、上述した代替の例示的な実施形態では、選択モジュール130は、眼底画像10内の指定された特徴12の位置を示すように、(たとえばグラフィック19の形態の)特徴位置インジケータを表示された眼底画像10に重畳させてもよい。この場合、OCTデータDOCTのサブセットdOCTは、その位置が特徴位置インジケータによって示される眼底画像10内の位置に対応すると(表示画像10および30の網膜特徴の比較に基づいて)ユーザによって判断された、表示されたOCT正面投影画像30の一部に重ねるように、カーソル16がユーザ入力デバイス18からの信号によって案内されたときのカーソル16の表示位置を示す、上述のような第2の位置インジケータの値に基づいて選択され得る。
【0042】
しかしながら、眼底画像10内の指定された特徴12の位置とOCTデータDOCT内のサブセットdOCTの位置との対応は、表示された眼底画像10および網膜のその共通部分の表示されたOCT正面投影画像の観察によりユーザによって決定される必要がないことに留意すべきである。いくつかの例示的な実施形態では、OCTデータDOCT内のサブセットdOCTの位置は、所定の幾何学的変換を使用することによって、眼底画像10内の指定された特徴12の位置に基づいて、自動的に決定されてもよい。所定の幾何学的変換は、眼底画像10内の位置をOCTデータ内の対応するAスキャン位置にマッピングし、選択モジュール130によって、特徴抽出アルゴリズムによって指定されている眼底画像10内の特徴12の位置に適用されることで、OCTデータのサブセットdOCTに含まれるべきAスキャン26のCスキャン20内の対応するAスキャン位置(任意選択的に、Cスキャン20内の1以上の隣接Aスキャンとともに)を識別してもよい。
【0043】
幾何学的変換は、いくつかの異なる方法のうちの1つにより決定され得る。たとえば、幾何学的変換は、OCT正面投影画像30をユーザに表示することなく、眼底画像10を定義する画像データD
Fを、上述のように生成されたOCT正面投影画像30を定義する画像データと位置合わせすることによって、決定されてもよい。当業者に知られている任意の強度および/または特徴ベースの位置合わせアルゴリズムは、幾何学的変換を決定し、それにより眼底画像10内の位置とOCT Cスキャン20内の横方向位置(
図3のx軸およびy軸に沿った座標によって定義される)との間の点と点の対応を確立するために、使用されることができる。このような位置合わせアルゴリズムは、眼底画像10を定義する二次元データセットおよびOCT Cスキャン20の三次元データセットに由来するOCT正面投影画像30の二次元データセットではなく、眼底画像10を定義する二次元データセットおよびOCT Cスキャン20を定義する三次元データセット上で直接動作することができることに留意すべきである。
【0044】
いくつかの例示的な実施形態では、特徴指定モジュール110による眼底画像10内の特徴の指定、および選択モジュール130によるOCTデータDOCTのサブセットdOCTの選択の両方が、自動的に(すなわちユーザ入力なしで)実行され得る。したがって、このような例示的な実施形態では、特徴指定モジュール110は、特徴抽出アルゴリズムを使用して眼底画像10内の特徴12を定義する画像データDFの一部を指定することができ、選択モジュール130は、眼底画像10の画像データDF内の指定された部分の位置に上述の幾何学的変換を適用することによって、OCTデータDOCTのサブセットdOCTを選択することができる。これらの例示的な実施形態では、特徴12の指定およびOCTデータのサブセットdOCTの選択は、眼底画像10の画像データDFまたはOCTデータDOCTの表示をユーザに表示することなく、いかなるユーザ入力も必要とせずに、実行される。
【0045】
再び
図1を参照すると、装置100はまた、補足情報として、OCTデータの選択されたサブセットd
OCT内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向(すなわち、光線が網膜に入る方向)に沿った変化を示す補足画像データD
SIを生成するために、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTを処理するように構成された、補足画像データ生成モジュール140-1も有する。装置100はまた、画像データD
Fを補足画像データD
SIと合成することによって合成画像データD
CIを生成し、合成画像データD
CIによって定義された合成画像が、指定された特徴におけるOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように構成された、合成画像データ生成モジュール150も有する。補足画像データ生成モジュール140-1および合成画像データ生成モジュール150の機能は、以下で詳細に説明する。
【0046】
図4は、第1の例示的な実施形態の装置100の動作を実行するように構成され得る、プログラマブル信号処理ハードウェア200の概略図である。
【0047】
プログラマブル信号処理装置200は、眼底画像10の画像データDFおよびOCTデータDOCTをそこから受信するために眼底撮影装置、およびOCT撮像システムと(または眼底画像10を定義する画像データDFおよび被験者の網膜のOCTデータDOCTの両方を生成することが可能な上述の統合撮像システムと)通信するための、通信インターフェース(I/F)210を含む。信号処理装置200は、プロセッサ(たとえば、中央処理ユニット、CPU)220と、ワーキングメモリ230(たとえば、ランダムアクセスメモリ)と、プロセッサ220によって実行されると、本明細書に記載される装置100の様々な機能をプロセッサ220に実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム245を記憶する命令ストア240と、をさらに含む。ワーキングメモリ230は、コンピュータプログラム245の実行中にプロセッサ220によって使用される情報を記憶する。命令ストア240は、コンピュータ可読命令が予めロードされたROM(たとえば、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)またはフラッシュメモリの形態)を含み得る。あるいは、命令ストア240は、RAMまたは同様のタイプのメモリを含んでもよく、コンピュータプログラム245のコンピュータ可読命令は、CD-ROM、DVD-ROMなどの形態の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体250またはコンピュータ可読命令を搬送するコンピュータ可読信号260などのコンピュータプログラム製品から入力されることも可能である。いずれの場合も、コンピュータプログラム245は、プロセッサ220によって実行されると、本明細書に記載される、補足情報を含めるように画像データを処理する方法をプロセッサ220に実行させる。しかしながら、代替的に、装置100は特定用途向け集積回路(ASIC)などの非プログラマブルハードウェアに実装されてもよいことに留意すべきである。
【0048】
図5は、
図1の装置100が、眼底画像10内の指定された特徴12に関する補足情報を含むように、眼底画像10を定義する画像データD
Fを処理する方法を示すフロー図である。
【0049】
図5のプロセスS10において、特徴指定モジュール110は、上述したように、眼底撮影装置から受信した画像データD
Fによって定義される、網膜の一部分の眼底画像10内の特徴12を指定する。
【0050】
図5のプロセスS20において、受信モジュール120は、上述したように、網膜の一部分のOCT CスキャンのOCTデータD
OCTを受信する。
図5では、プロセスS10に続いてプロセスS20が行われるように示されているが、これらのプロセスが実行される順序は逆であってもよく、これらのプロセスの少なくとも一部は同時に実行されてもよいことが理解されるだろう。
【0051】
図5のプロセスS30において、セクションモジュール130は、眼底画像10内の指定された特徴12の位置に対応する網膜上の位置における網膜の一部の立体画像を表す、受信したOCTデータD
OCTのサブセットd
OCTを選択する。
【0052】
図5のプロセスS40において、補足画像データ生成モジュール140-1は、補足情報として、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化を示す補足画像データD
SIを生成するために、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTを処理する。言い換えると、補足画像データD
SIは、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内のボクセルによって示されるような眼の測定反射率が、網膜の深さ方向に沿ってどのように変化するかを示す。補足画像データD
SIは、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内のボクセルによって示されるような眼の測定反射率の変化を、網膜の深さ方向に沿った位置によりチャート化することができる。従って、補足画像データD
SIは、網膜の深さ方向に沿った測定反射率のプロファイルを提供し得る。
【0053】
本例示的な実施形態では、補足画像データ生成モジュール140-1は、
図6を参照して以下で説明される方法によって、補足画像データD
SIを生成するために、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTを処理する。
【0054】
図6のプロセスS42において、補足画像データ生成モジュール140-1は、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の複数の解剖学的層を検出する。解剖学的層は、互いに重なり合う解剖学的に異なる眼の構造であり、その光拡散特性の違いによりOCT画像の深さ軸において区別され得る。解剖学的層は、眼の網膜の1以上の層を含む、眼の後区に存在する解剖学的層を含む。各層は、(眼の硝子体に対して)内面および外面を有する。網膜は、10層、すなわち、(1)内境界膜(ILM);(2)神経繊維層(NFL);(3)神経節細胞層(GCL);(4)内網状層(IPL);(5)内顆粒層(INL);(6)外網状層(OPL);(7)外顆粒層(ONL);(8)外境界膜(OLM);(9)感光層(PL);および(10)網膜色素上皮(RPE)単層に分割することができる。補足画像データ生成モジュール140-1は、当業者に知られているいくつかのタイプの眼層セグメント化のためのアルゴリズムのうちの1つを使用してOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の解剖学的層を検出することができ、これは“A Review of Algorithms for Segmentation of Optical Coherence Tomography from Retina”R. Kafieh et al, J Med Signals Sens. 2013 Jan-Mar; 3(1): 45-60において検討されている。したがって、解剖学的層セグメント化アルゴリズムは、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTの、検出された解剖学的層の境界(すなわち、内面および外面)を識別する層識別情報を生成するために、プロセスS42において使用され、これは、検出された解剖学的層の各々に属するOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内のデータ要素(ボクセル)のそれぞれのセットを識別するために使用することができる。
【0055】
図6のプロセスS44において、補足画像データ生成モジュール140-1は、検出された解剖学的層の各々について、それぞれの解剖学的層内のOCTデータのサブセットd
OCT内のデータ要素(ボクセル)の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算する。言い換えると、補足画像データ生成モジュール140-1は、解剖学的層L
iの内面と外面との間にOCTデータD
OCTのサブセットd
OCT内のAスキャンに沿って配置されたボクセルの値を合計することによって、解剖学的層識別情報を使用して識別された、検出された解剖学的層L
1,...L
nの各解剖学的層L
iの合計値S
iを生成し、nは2以上の整数である。
【0056】
図6のプロセスS46において、補足画像データ生成モジュール140-1は、検出された解剖学的層L
1,...L
nの各解剖学的層L
iについて、解剖学的層L
iについて計算された合計値s
iと、検出された解剖学的層内およびOCTデータD
OCTのサブセットd
OCT内の全てのデータ要素の合計s
totalとのそれぞれの比r
i、すなわち
【数1】
を計算する。
【0057】
図6のプロセスS48において、補足画像データ生成モジュール140-1は、計算された比r
1~r
nの規則的順序に基づいて(補足画像データD
SIとして)色情報を生成し、計算された比r
1~r
nは、対応する解剖学的層が眼の後区内に配置される順序と同じ順序で配置される。色情報は、計算された比r
1~r
nの規則的順序を一意に識別する合成画像内に表示される色を定義するように生成される。したがって、指定された特徴12の位置で合成画像内に表示される色は、網膜の深さ方向に沿ったOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の眼の測定反射率の変化を示す。
【0058】
図6のプロセスS44からS48は、
図6のプロセスS42で検出されているOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の解剖学的層の全てに対して動作する必要はなく、代わりにこれらの解剖学的層のうちの少なくとも2つに対して動作すればよいことに、留意すべきである。
図6のプロセスS44からS48は、網膜の一部を形成する1以上の検出された解剖学的層に対して動作し、さらに、たとえば脈絡膜および病理学的網膜下液など、網膜の一部を形成しない1以上の解剖学的層に対して動作することができる。
【0059】
一例として、本例示的な実施形態では、第1の解剖学的層L
1、第2の解剖学的層L
2、および第3の解剖学的層L
3が、
図6のプロセスS42において補足画像データ生成モジュール140-1によって検出される。
図6のプロセスS44において、補足画像データ生成モジュール140-1は、解剖学的層L
1、L
2、およびL
3のそれぞれの合計値S
1、S
2、およびS
3を生成し、解剖学的層L
1、L
2、およびL
3のそれぞれの比r
1、r
2、およびr
3を(
図6のプロセスS46において)計算する。たとえば、r
1はS
1/(S
1+S
2+S
3)として計算される。この例の
図6のプロセスS48において、補足画像データ生成モジュール140-1は、合成画像に表示される色の赤色成分R、緑色成分G、および青色成分Bの各々に、計算された比の規則的順序r
1;r
2;r
3で、計算された比r
1、r
2、またはr
3のそれぞれ1つにしたがって、色成分のそれぞれの重み付けw
R、w
G、またはw
Bを割り当てることによって、色情報を生成する。たとえば、
図6のプロセスS46において計算された比がr
1=0.1、r
2=0.85、およびr
3=0.05であり、解剖学的層L
2がOCTデータD
OCTのサブセットd
OCT内のデータ要素値によって表される測定反射率に支配的な寄与を提供する例では、RGB色成分に対する対応する重み付け0.1:0.85:0.05の割り当ての結果、合成画像内に表示される色が主に緑色となり、これは、解剖学的層L
2が指定された特徴12の測定反射率に対する支配的な寄与を提供することを、合成画像の観察者に示す。別の例では、合成画像内の黄色の表示であれば、解剖学的層L
1およびL
2が測定反射率に対して主な寄与を提供することを示す。さらなる例では、合成画像内のシアン色の表示であれば、層L
2およびL
3が測定反射率に対して主な寄与を提供することを示す。
【0060】
再び
図5を参照すると、プロセスS50において、合成画像データ生成モジュール150は、合成画像データD
CIによって定義された合成画像が指定された特徴12における変化の指標を提供するように、画像データD
Fを補足画像データD
SIと結合することによって、合成画像データD
CIを生成する。合成画像データ生成モジュール150は、合成画像データD
CIによって定義された合成画像が、指定された特徴12におけるOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、眼底画像データD
Fの画素のサブセットの画素値を補足画像データD
SIの画素値で置き換えることによって、合成画像データD
CIを生成するように構成され得る。本例示的な実施形態のような例示的な実施形態では、合成画像データ生成モジュール150は、合成画像データD
CIによって定義された合成画像が、指定された特徴12におけるOCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCT内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、画素のサブセットが眼底画像10内の指定された特徴12の位置にある眼底画像の小領域を定義する、眼底画像データD
Fの画素のサブセットの画素値を、補足画像データD
SIの画素値で置き換えることによって、合成画像データD
CIを生成するように構成され得る。より具体的には、合成画像データ生成モジュール150は、本例示的な実施形態のように、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTからのデータを示すOCT正面投影画像30内の画素位置に対応する画素位置にある、眼底画像10内の画素値が、OCTデータD
OCTのそのサブセットd
OCTに対して補足画像データ生成モジュール140-1によって決定された色を表す画素値で置き換えられるように、画像データD
Fを修正することによって合成画像データD
CIを生成し得る。眼底画像10およびOCT正面投影画像30内の画素位置間の前述の対応は、上述の幾何学的変換によって決定され得る。
【0061】
図7の画像Aは、眼底画像10の一例であり、
図7の画像Bにおいて強調されているいくつかの関心対象の特徴を示す。画像Bに示される関心対象の特徴を区切る曲線は、特徴抽出アルゴリズムからの出力に基づく。
図7の画像Cは合成画像40の一例であり、画像Bにおいて強調された眼底画像10の領域は、補足画像データ生成モジュール140-1によって生成された色情報にしたがって着色されている。画像Cにおいて、領域41、42、および43は主に青色であり、領域44および45は主に赤色であり、領域46は主に白色であり、残りの領域は主に緑色である。
【0062】
この着色は、領域41~43が、(内側)網膜表面、具体的には、この例で検出された第1の解剖学的層である内側および外側の神経網膜内の、(内側)網膜表面に最も近い網膜の特徴に関連することを示している。
図8は、
図7の画像C内の水平線に沿って切り取られたBスキャンの画像を示す。水平線が領域41および42と交差する
図7の領域に対応する、
図8の網膜の領域は、
図8の網膜の周囲領域よりも(
図8の上部に向かって)網膜の内面付近でより高い反射率を有する。
【0063】
図7では、主に緑色の領域は、この例で検出されたより深い網膜層の特徴に関連しており、これはこの例では網膜色素上皮(RPE)である。領域44および45は、網膜表面から最も離れており、脈絡膜または病理学的網膜下液内にある、さらに深い特徴に関連しており、これはこの例で検出された第3の解剖学的層内にある。
【0064】
[第2の例示的な実施形態]
【0065】
図9は、第2の例示的な実施形態による、画像データを処理するための装置300の概略図である。第2の例示的な実施形態の装置300は、異なる種類の補足画像データD’
SIを生成するように構成された、補足画像データ生成モジュール140-2の配置によって、第1の例示的な実施形態の装置100とは異なっている。他の全ての点では、第2の例示的な実施形態の装置300は、上述した第1の例示的な実施形態の装置100と同じである。
【0066】
本例示的な実施形態では、補足画像データ生成モジュール140-2は、
図6を参照して上述された方法の変形例であって、
図10を参照して以下で説明される方法によって、補足画像データD’
SIを生成するために、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTを処理する。
【0067】
図10のプロセスS42およびS44は、
図6のプロセスS42およびS44と同じであり、したがってここでは再び説明しない。
【0068】
図10のプロセスS47において、補足画像データ生成モジュール140-2は、プロセスS44で計算された合計値に基づいて、合計値が計算された検出層のうち、測定反射率に対する支配的な寄与を提供する検出層L
1からL
nの解剖学的(たとえば、網膜)層を選択する。補足画像データ生成モジュール140-2は、本例示的な実施形態のように、合計値が計算された検出層のうちで、その計算された合計値が最大となる層を選択することによって、支配的な寄与を提供する解剖学的層を選択することができる。
【0069】
図10のプロセスS48において、補足画像データ生成モジュール140-2は、補足画像データD’
SIとして、たとえば(たとえば、完全形または省略形で)層を命名するテキストラベルによって、選択された解剖学的層を識別するグラフィックを定義するグラフィック画像データを生成する。しかしながら、グラフィックは選択された解剖学的層の自己完結型識別を必要とせず、たとえば、やはり画面上に表示される凡例(異なる形態(たとえば、パターン)のグラフィックと、対応する命名された解剖学的層との間の関連付けを示す)を参照して、選択された解剖学的層を観察者が識別できるようにするパターンを備えることができる。
【0070】
合成画像データ生成モジュール150は、合成画像が注釈付きバージョンの眼底画像10となるように画像データD
Fをグラフィック画像データと合成することによって合成画像データD’
CIを生成するように構成され、グラフィックは、指定された特徴12の位置を示すように、眼底画像10に重畳される(好ましくは、たとえば矢印などのような尖った特徴を有するように形成される)。このような注釈付きバージョンの眼底画像10の例は、
図11および
図12に示されている。
【0071】
したがって、本例示的な実施形態のようないくつかの例示的な実施形態では、合成画像データ生成モジュール150は、合成画像データD’CIによって定義された合成画像が指定された特徴12においてOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように、眼底画像データの画素のサブセットの画素値を補足画像データD’SIの画素値で置き換えることによって、合成画像データD’CIを生成するように構成され得る。補足画像データ生成モジュール140-2は、OCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化、またはより具体的には、OCTデータの選択されたサブセット内で示されるような、眼の測定反射率が網膜の深さ方向に沿ってどのように変化するかを示す、グラフィックを定義する補足画像データを生成するように構成され得る。本例示的な実施形態のような例示的な実施形態では、合成画像データ生成モジュール150は、合成画像データD’CIによって定義された合成画像が、指定された特徴12においてOCTデータの選択されたサブセット内の眼の測定反射率の変化の指標を提供するように眼底画像10に重畳されるグラフィックを備えるように、眼底画像データの画素のサブセットの画素値を補足画像データD’SIの画素値で置き換えることによって、合成画像データD’CIを生成するように構成され得る。
【0072】
図11では、ラベル「INL」は、網膜の内顆粒層(INL)内に位置する特徴の眼底画像内の位置を示すように眼底画像に重ねられ、その一方でラベル「GCL」は、網膜の神経節細胞層(GCL)内に位置する特徴の眼底画像内の位置を示すように眼底画像に重ねられる。ラベル「None」は眼底画像に重ねられ、眼底画像内の関連する特徴が網膜のいずれの層内にも位置していないことを示す。
【0073】
図12では、ラベル「RPE」は、網膜の網膜色素上皮(RPE)内に位置する特徴の眼底画像内の位置を示すように眼底画像に重ねられ、その一方でラベル「ILM」は、網膜と硝子体との間にある内境界膜(ILM)内に位置する特徴の眼底画像内の位置を示すように眼底画像に重ねられる。
【0074】
[第3の例示的な実施形態]
【0075】
図13は、第3の例示的な実施形態による、画像データを処理するための装置400の概略図である。第3の例示的な実施形態の装置400は、これらの例示的な実施形態で説明された補足情報を異なる方法で生成するように配置された補足画像データ生成モジュール140-3の配置によって、第1および第2の例示的な実施形態の装置とは異なっている。他の全ての点では、第3の例示的な実施形態の装置400は、上述した第1の例示的な実施形態の装置100および第2の例示的な実施形態の装置300と同じである。
【0076】
本例示的な実施形態では、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTは、所定のタイプの特徴を有する網膜の一部(場合により、たとえば網膜の外面の下の別の部分に加えて)の立体画像を表し、
図14を参照して以下で説明される方法によって補足画像データD
SIを生成するために、補足画像データ生成モジュール140-3によって処理される。
【0077】
図14のプロセスS41において、所定のタイプの特徴の網膜の深さ方向における深さを判定するためのモデルが、少なくとももう1つの別の網膜の病変領域のOCTデータの例による教師あり学習によって訓練される。OCTデータのこれらの例の各々は、単一のOCT Aスキャンまたは2つ以上の隣接するOCT Aスキャンを含み、病変領域の各々は、所定のタイプの特徴をそれぞれ有する。モデルが訓練されている間、OCTデータの例の各々における網膜の深さ方向のそれぞれの特徴のそれぞれの深さの指標がユーザによって規定される。モデルにはまた、訓練するプロセスにおいて、Aスキャン(1以上)における網膜層の位置が提供されてもよく、モデルは、入力としてAスキャン(または隣接Aスキャンのグループ)および層が与えられたときに、その特徴の深さを出力することを学習し得る。
【0078】
特徴の深さは、いくつかの方法で規定され得る。深さは通常、1以上の網膜層に対して定義される。たとえば、深さは、画素数に関して、または(画素寸法が予め推定されていると仮定して)網膜層のうちの1つに対する線形測定として、定義され得る。最も内側または最も外側の網膜表面は、この測定に適切な基準点を提供し得る。あるいは、深さは、自動化手段によって識別された複数の網膜層に対して定義されてもよい。この場合、深さは、特徴が含まれる層の名前、および任意選択的に、層の内面または外面に対する特徴の変位によって示されてもよい。また、深さは、特徴が含まれる層の名前、ならびに、たとえば0が層の内面にあることを示し、1が層の外面にあることを示すように、層の内面および外面の両方に対する特徴の無名数正規化変位(unitless normalised displacement)によって示されてもよい。
【0079】
図14のプロセスS43において、補足画像データ生成モジュール140-3は、網膜の深さ方向における特徴の深さを判定するためにプロセスS41で学習したモデルを使用して、OCTデータD
OCTの選択されたサブセットd
OCTを処理する。
【0080】
図14のプロセスS45において、補足画像データ生成モジュール140-3は、補足画像データとして、(i)特徴の判定された深さを示し、合成画像40における特徴の位置を示すように眼底画像10に重畳されるグラフィックを定義するグラフィック画像データ、または(ii)合成画像の特徴の位置に表示され、特徴の判定された深さを示す色を定義する色情報、のいずれかを生成する。グラフィック画像データおよび色情報は、上述したように生成され得る。
【0081】
本明細書の例示的な実施形態にしたがって、以下のE1からE12に示されるような装置が説明されてきた。
【0082】
E1.眼底画像10内の指定された特徴12に関する補足情報を含むように、眼の網膜の一部分の眼底画像10を定義する画像データを処理するための装置100であって、装置は、
眼底画像10内の特徴を指定するように構成された特徴指定モジュール110と、
網膜の部分のCスキャン20の光干渉断層撮影、すなわちOCTデータDOCTを受信するように構成された受信モジュール120と、
眼底画像10内の指定された特徴12の位置に対応する網膜上の位置の網膜の一部の立体画像を表すOCTデータDOCTのサブセットdOCTを選択するように構成された選択モジュール130と、
OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCT内の眼の測定反射率の、網膜の深さ方向に沿った変化を示す補足画像データDSIを補足情報として生成するために、OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCTを処理するように構成された補足画像データ生成モジュール140-1と、
合成画像データDCIによって定義された合成画像が指定された特徴12における変化の指標を提供するように、画像データDFを補足画像データDSIと合成することによって合成画像データDCIを生成するように構成された合成画像データ生成モジュール150-1と
を備える装置。
【0083】
E2.特徴指定モジュール110は、カーソル16が、ユーザ入力デバイス18からの信号によって、表示された眼底画像10の上を移動するように制御され得るように、眼底画像10およびカーソル16をディスプレイ14上に表示させ、特徴指定コマンドに応答して、表示された眼底画像10上のカーソル16の表示位置を示す第1の位置インジケータの値を記録することによって眼底画像10内の特徴12を指定するように構成されている、E1に記載の装置。
【0084】
E3.選択モジュール130は、網膜の部分のOCT正面投影画像30を生成するためにOCTデータDOCTを処理し、カーソル16が、ユーザ入力デバイス18からの信号によって、表示されたOCT正面投影画像30上を移動するように制御され得るように、眼底画像10とともにOCT正面投影画像30をディスプレイ14上に表示させ、カーソル16が、表示された眼底画像10内の指定された特徴12に対応する表示されたOCT正面投影画像30の一部分に重ねるように、ユーザ入力デバイス18からの信号によって案内されたときのカーソル16の表示位置を示す第2の位置インジケータの値に基づいて、OCTデータDOCTのサブセットdOCTを選択するように構成される、E2に記載の装置。
【0085】
E4.特徴指定モジュール110は、特徴抽出アルゴリズムを使用して眼底画像10内の特徴12を自動的に指定するように構成される、E1に記載の装置。
【0086】
E5.選択モジュール130は、
眼底画像10、および眼底画像10内の指定された特徴12の位置を示す特徴位置インジケータ19を、ディスプレイ14上に表示させ、
網膜の部分のOCT正面投影画像30を生成するためにOCTデータDOCTを処理し、
カーソル16が、ユーザ入力デバイス18からの信号によって、表示されたOCT正面投影画像30の上を移動するように制御され得るように、OCT正面投影画像30およびカーソル16を、眼底画像10とともにディスプレイ14上に表示させ、
カーソル16が、特徴位置インジケータ19によって示される眼底画像10内の指定された特徴12の位置にその位置が対応する表示されたOCT正面投影画像30の部分に重ねるように、ユーザ入力デバイス18からの信号によって案内されたときのカーソル16の表示位置を示す第2の位置インジケータの値に基づいて、OCTデータDOCTのサブセットdOCTを選択する
ように構成される、E4に記載の装置。
【0087】
E6.選択モジュール130は、特徴抽出アルゴリズムによって指定された眼底画像10内の特徴12の位置に、眼底画像10内の位置をOCTデータDOCT内の対応するAスキャン位置にマッピングする幾何学的変換を適用することによって、OCTデータDOCTのサブセットdOCTを選択するように構成される、E4に記載の装置。
【0088】
E7.特徴12は、眼底画像10内のドットおよび超反射性ドットのうちの1つであり、特徴12は、病理学的原因を有するか、または網膜の内境界膜からの反射によって引き起こされる、E1からE6のいずれか一つに記載の装置。
【0089】
E8.特徴12は、網膜内の漏血、滲出、ドルーゼン、萎縮および/または母斑、ならびに網膜内の網膜色素上皮の萎縮のうちの1つを含む病理学的原因を有する、E7に記載の装置。
【0090】
E9.補足画像データ生成モジュール140-1は、
OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCT内の眼の複数の解剖学的層を検出し(S42)、
検出された解剖学的層のうちの少なくとも2つの各々について、解剖学的層内のOCTデータDOCTのサブセットdOCTのデータ要素の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算し(S44)、
検出された解剖学的層のうちの少なくとも2つの各々について、解剖学的層に対して計算された合計値と、検出された解剖学的層のうちの少なくとも2つおよびOCTデータDOCTのサブセットdOCT内の全てのデータ要素の合計との比をそれぞれ計算し(S46)、
合成画像内に表示され、計算された比の規則的順序を識別する色を定義する色情報を、補足画像データとして、計算された比が眼の対応する解剖学的層の順序で配置される、計算された比の規則的順序に基づいて生成し、色が、OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCT内の眼の測定反射率の網膜の深さ方向に沿った変化を示す(S48)こと
によって補足画像データDSIを生成するために、OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCTを処理するように構成される、E1からE8のいずれか一つに記載の装置。
【0091】
E10.補足画像データ生成モジュール140-1は、
OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCT内の3つの解剖学的層を検出し、
合成画像に表示される色の赤色成分、緑色成分、および青色成分の各々に、計算された比の規則的順序で、計算された比のそれぞれ1つにしたがって色成分の重み付けをそれぞれ割り当てることによって色情報を生成する
ように構成される、E9に記載の装置。
【0092】
E11.補足画像データ生成モジュール140-2は、
OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCT内の眼の複数の解剖学的層を検出し、
検出された解剖学的層の各解剖学的層について、解剖学的層内のOCTデータDOCTのサブセットdOCTのデータ要素の値を合計することによって、それぞれの合計値を計算し、
計算された合計値に基づいて、検出された解剖学的層のうちの、眼の測定反射率に対して支配的な寄与を提供する一つの解剖学的層を選択し、
補足画像データDSIとして、選択された解剖学的層を識別するグラフィックを定義するグラフィック画像データを生成すること
によって補足画像データDSIを生成するために、OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCTを処理するように構成され、
合成画像データDCIは、合成画像において、グラフィックが指定された特徴12において眼底画像10に重畳されるように、画像データDFをグラフィック画像データと合成することによって生成される、E1からE8のいずれか一つに記載の装置。
【0093】
E12.OCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCTは、所定のタイプの特徴を有する網膜の一部分の立体画像を表し、補足画像データ生成モジュール140-3は、
少なくとも他の1つの網膜の病変領域のOCTデータの例による教師あり学習によって、網膜の所定のタイプの特徴の深さを判定するためのモデルを訓練し、OCTデータの例の各々は、単一のOCT Aスキャンまたは2つ以上の隣接するOCT Aスキャンを含み、病変領域の各々は、所定のタイプのそれぞれの特徴を有し、OCTデータの例の各々における網膜のそれぞれの特徴のそれぞれの深さの指標は、訓練中にユーザによって規定され、
網膜の特徴の深さを判定するために、訓練されたモデルを使用してOCTデータDOCTの選択されたサブセットdOCTを処理し、
補足画像データとして、
合成画像40内の特徴の位置を示すように、網膜の特徴の判定された深さを示すとともに眼底画像10に重畳されるグラフィックを定義するグラフィック画像データ、および
合成画像内の特徴の位置に表示され、網膜の特徴の判定された深さを示す色を定義する色情報、
のうちの1つを生成すること
によって補足画像データDSIを生成するように構成される、E1からE8のいずれか一つに記載の装置。
【0094】
ここで説明された例示的な態様は、網膜眼底画像の処理に関する、特にコンピュータ技術に起因する限定を回避する。特に、いくつかの一般的な眼疾患の特徴は、眼底画像において同様の外観を有し、これは、鏡面反射撮影アーチファクトなどから曖昧さをなくすことが困難であり得る。本明細書に記載される例示的な態様により、OCTデータ内の追加情報は、網膜眼底画像内の特徴のより明確なレンダリングのために活用することができ、これは、OCTデータを確認することなく、ユーザによって理解されることが可能であり、網膜眼底画像内のアーチファクトスポットなどの誤読を回避するのに役立てることができる。また、コンピュータ技術に基づく本明細書に記載される例示的な態様の前述の能力により、本明細書に記載される例示的な態様は、コンピュータおよびコンピュータ処理/機能を改善し、少なくとも網膜画像分析の1以上の分野も改善する。
【0095】
上述の説明では、いくつかの例示的な実施形態を参照して例示的な態様が説明されている。したがって、本明細書は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。同様に、例示的な実施形態の機能および利点を強調した図面に示される図は、例示目的のみのために提示されている。例示的な実施形態のアーキテクチャは、添付図面に示されている以外の方法でも利用(およびナビゲート)され得るように、十分に柔軟かつ構成可能である。
【0096】
本明細書で提示された例のソフトウェア実施形態は、例示的な一実施形態において、各々が非一時的であってもよい、機械アクセス可能または機械可読媒体、命令ストア、もしくはコンピュータ可読記憶デバイスなどの製品に含まれるかまたは記憶された、命令または命令のシーケンスを有する1以上のプログラムなどのコンピュータプログラムまたはソフトウェアとして提供され得る。非一時的な機械アクセス可能媒体、機械可読媒体、命令ストア、またはコンピュータ可読記憶デバイス上のプログラムまたは命令は、コンピュータシステムまたは他の電子デバイスをプログラムするために使用され得る。機械またはコンピュータ可読媒体、命令ストア、および記憶デバイスは、フロッピー(登録商標)ディスケット、光ディスク、および光磁気ディスク、または電子命令を記憶または送信するのに適した他のタイプの媒体/機械可読媒体/命令ストア/記憶デバイスを含み得るが、これらに限定されない。本明細書に記載される技術は、いかなる特定のソフトウェア構成にも限定されない。これらは、いかなる計算または処理環境においても適用性を見出すことができる。本明細書で使用される用語「コンピュータ可読」、「機械アクセス可能媒体」、「機械可読媒体」、「命令ストア」、および「コンピュータ可読記憶デバイス」は、機械、コンピュータ、またはコンピュータプロセッサによる実行のための命令または命令のシーケンスを記憶、符号化、または送信することができ、本明細書に記載された方法のいずれか1つを機械/コンピュータ/コンピュータプロセッサに実行させる、任意の媒体を含むものとする。さらに、当該技術分野では、様々な形態(たとえば、プログラム、手順、プロセス、アプリケーション、モジュール、ユニット、論理など)のソフトウェアについて、アクションを取るまたは結果を引き起こすものと言うことが一般的である。このような表現は、処理システムによるソフトウェアの実行により、プロセッサがある結果をもたらすための動作を実行するということを述べる簡略化した方法に過ぎない。
【0097】
いくつかの実施形態はまた、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイの準備によって、または従来の構成要素回路の適切なネットワークを相互接続することによって実施されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態は、コンピュータプログラム製品を含む。コンピュータプログラム製品は、本明細書に記載される例示的な実施形態の手順のいずれかを実行するようにコンピュータまたはコンピュータプロセッサを制御するため、またはこれらに実行させるために使用可能な命令を記憶している、1以上の記憶媒体、1以上の命令ストア、もしくは1以上の記憶装置であってもよい。記憶媒体/命令ストア/記憶装置は、限定ではなく例として、光ディスク、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、DRAM、VRAM、フラッシュメモリ、フラッシュカード、磁気カード、光カード、ナノシステム、分子メモリ集積回路、RAID、リモートデータストレージ/アーカイブ/ウェアハウス、命令および/またはデータを記憶するのに適した任意の他のタイプのデバイスの少なくとも一つを含み得る。
【0099】
いくつかの実装形態は、1以上のコンピュータ可読媒体、1以上の命令ストア、もしくは1以上の記憶装置のうちのいずれか1つに記憶されて、ソフトウェアを含み、これはシステムのハードウェアとソフトウェアの両方を制御し、本明細書に記載される例示的な実施形態の結果を利用してシステムまたはマイクロプロセッサが人間のユーザまたは他の機構と対話することを可能にする。このようなソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、およびユーザアプリケーションを含み得るが、これらに限定されない。最終的に、このようなコンピュータ可読媒体または1以上の記憶装置は、上述のような本明細書の例示的な態様を実行するためのソフトウェアをさらに含む。
【0100】
システムのプログラミングおよび/またはソフトウェアには、本明細書に記載される手順を実施するためのソフトウェアモジュールが含まれる。本明細書のいくつかの例示的な実施形態では、モジュールはソフトウェアを含むが、本明細書の別の例示的な実施形態では、モジュールは、ハードウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組合せを含む。
【0101】
様々な例示的な実施形態が上で説明されてきたが、これらが限定ではなく例として提示されてきたことは、理解されるべきである。形態および詳細の様々な変更が行われ得ることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示は、上で説明された例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の請求項およびその均等物にしたがってのみ定義されるべきである。
【0102】
さらに、要約書の目的は、特許庁および一般の人々、ならびに特に特許または法律用語または表現に精通していない当該技術分野の科学者、技術者、および実務家が、本出願の技術的開示の性質および本質を迅速に判断できるようにすることである。要約書は、本明細書に提示される例示的な実施形態の範囲を限定することを決して意図していない。請求項に列挙される手順は、提示された順序で実行される必要がないこともまた、理解されたい。
【0103】
本明細書は多くの特定の実施形態の詳細を含むが、これらは限定ではなく、本明細書に記載される具体的な実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本明細書に記載された特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施されることも可能である。逆に、単一の実施形態の文脈で記載された様々な特徴が、複数の実施形態で別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施されることも可能である。また、特徴は、特定の組合せで動作するように上で説明され、当初そのように特許請求されることもあるが、特許請求された組合せからの1以上の特徴は、場合により組合せから削除することができ、特許請求された組合せは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を対象としてもよい。
【0104】
特定の状況では、マルチタスク処理および並列処理が有利であり得る。また、上で説明された実施形態における様々な構成要素の分離は、全ての実施形態においてこのような分離を必要とするように理解されるべきではなく、説明されたプログラム構成要素およびシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に統合されてもよく、または複数のソフトウェア製品にパッケージされてもよいことが、理解されるべきである。
【0105】
本明細書でいくつかの例示的な実施形態および実施形態を説明してきたが、上記は例示的であって限定的ではなく、例として提示されてきたことは明らかである。特に、本明細書で提示された例の多くは、装置またはソフトウェア要素の特定の組合せを伴うが、これらの要素は、同じ目的を達成するために、別の方法で組み合わせられてもよい。1つの実施形態に関連してのみ論じられた動作、要素、および特徴は、別の実施形態または実施形態における同様の役割から除外されるように意図されるものではない。
【0106】
本明細書に記載される装置およびコンピュータプログラムは、その特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。上述の実施形態は、説明されたシステムおよび方法を限定するものではなく、むしろ例示的なものである。したがって、本明細書に記載される装置およびコンピュータプログラムの範囲は、上述の説明ではなく、添付の請求項によって示され、請求項と均等の意味および範囲内にある変更は、請求の範囲に含まれる。