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特許7382445含フッ素スルホニルイミド、反応性含フッ素スルホニルイミドの製造方法、及び共重合体の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】含フッ素スルホニルイミド、反応性含フッ素スルホニルイミドの製造方法、及び共重合体の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   C07C 311/48 20060101AFI20231109BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C07C311/48 CSP
C08F290/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022078803
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2018048401の分割
【原出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2022105588
(43)【公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】松村 典明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 武志
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-149409(JP,A)
【文献】特開2017-052886(JP,A)
【文献】特表2002-505356(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102936310(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(2i)で表される化合物、下記の式(3i)で表される化合物、下記の式(4i)で表される化合物、下記の式(6i)で表される化合物、下記の式(7i)で表される化合物、及び下記の式(8i)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、含フッ素スルホニルイミド。
【化1】
【請求項2】
請求項に記載の含フッ素スルホニルイミドを用いた反応性含フッ素スルホニルイミドの製造方法。
【請求項3】
請求項に記載の含フッ素スルホニルイミドに、(メタ)アクリロイル基を導入することを含む、請求項に記載の反応性含フッ素スルホニルイミドの製造方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリロイル基を導入することが、2-イソシアナトエチルアクリレート、グリシジル基を有する(メタ)アクリレート、塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルと反応させることにより行われる、請求項に記載の反応性含フッ素スルホニルイミドの製造方法。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の製造方法で得られた反応性含フッ素スルホニルイミドを、前記反応性含フッ素スルホニルイミド以外の他のモノマーと重合させることを含む、共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素スルホニルイミドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂は、絶縁抵抗性が高いため、摩擦などの物理的な作用によって静電気を帯電しやすいという性質を有している。例えば、フラットディスプレイパネルの製造工程において、パネル面の傷や汚れを防止するために、パネル面に保護膜として樹脂フィルムを貼付することが行なわれているが、この樹脂フィルムをパネル面から剥がす際に、剥離帯電により静電気障害を起こすおそれがある。また、帯電した樹脂はごみや埃を吸着してしまうおそれがある。
【0003】
剥離帯電を防止するために、樹脂フィルムは、その粘着剤層に帯電防止剤を添加して樹脂フィルム表面の電気抵抗を低減させることが行なわれている。帯電防止剤としては、ビスパーフルオロアルカンスルホニルイミドリチウムなどが利用されている。
【0004】
特許文献1には、アクリル系共重合体、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウムなどの帯電防止剤、腐食防止剤、及び多官能性架橋剤を含む粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5704531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂フィルムの剥離帯電を防止するために、樹脂フィルムの粘着剤層に用いられる粘着剤組成物に帯電防止剤を添加することは有効な方法である。しかしながら、樹脂フィルムを高温高湿環境下で保存すると、粘着剤組成物に添加した帯電防止剤がブリードアウトして、粘着剤層の帯電防止効果が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高温高湿環境下で保存してもブリードアウトが起こりにくい帯電防止剤として利用可能な化合物の中間体として用いることができる新規な含フッ素スルホニルイミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、帯電防止効果を有するパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩に反応性官能基として(メタ)アクリロイル基を導入した反応性含フッ素スルホニルイミドを、他のモノマーと共重合させた共重合体は、優れた帯電防止性を有し、かつ高温高湿環境下で保存してもブリードアウトが発生しにくいことを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1]下記の一般式(I)で表される含フッ素スルホニルイミド。
【0010】
【化1】
【0011】
ただし、上記の一般式(I)において、Rは水素原子、炭素数1~10の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、アルカリ金属イオンまたはオニウムカチオンを表し、Rfはフッ素原子または炭素数1~4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、Rfは炭素数1~4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基を表し、Aはアルカリ金属イオンまたはオニウムカチオンを表し、Yはアルカリ金属イオン、オニウムカチオン、-炭素数1~10のアルキレン基-OH基または-(CH-NH基を表し、Yがアルカリ金属イオンまたはオニウムカチオンである場合、Rは水素原子、炭素数1~10の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基である。
【0012】
[2]前記Rfが、炭素数3の直鎖状パーフルオロアルキレン基であることを特徴とする[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
[3]前記Rおよび前記Yのどちらか一方と、前記Aとが、アルカリ金属イオンであることを特徴とする[1]または[2]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
[4]前記Rが、炭素数1~4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0013】
[5]下記の式(2i)で表される[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0014】
【化2】
【0015】
[6]下記の式(3i)で表される[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0016】
【化3】
【0017】
[7]下記の式(4i)で表される[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0018】
【化4】
【0019】
[8]下記の式(6i)で表される[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0020】
【化5】
【0021】
[9]下記の式(7i)で表される[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0022】
【化6】
【0023】
[10]下記の一般式(8i)で表される[1]に記載の含フッ素スルホニルイミド。
【0024】
【化7】
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高温高湿環境下で保存してもブリードアウトが起こりにくい帯電防止剤として利用可能な化合物(反応性含フッ素スルホニルイミド)の中間体として用いることができる新規な含フッ素スルホニルイミドを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用した一実施形態である含フッ素スルホニルイミド、その含フッ素スルホニルイミドを用いて合成される反応性含フッ素スルホニルイミド(本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミドということもある)及びその溶液(本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド溶液ということもある)、並びに反応性含フッ素スルホニルイミドに基づく繰り返し単位を含む反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体(本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体ということもある)及びその溶液(本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体溶液ということもある)を詳細に説明する。
【0027】
<反応性含フッ素スルホニルイミド>
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミドは、下記の一般式(1)で表される。
【0028】
【化8】
【0029】
上記の一般式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
は、水素原子、炭素数1~10の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、アルカリ金属イオンまたはオニウムカチオンを表す。アルカリ金属イオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムを挙げることができる。オニウムカチオンは、例えば、窒素、硫黄、酸素、リン、セレン、錫、ヨウ素、アンチモン等の孤立電子対を有する元素を含んだ化合物に陽イオン型の原子団が配位して生ずる少なくとも一つの有機基を有するカチオンであれば、特に制限されるものではない。オニウムカチオンとしては、アンモニウムカチオン類、ピロリジニウムカチオン類、イミダゾリウムカチオン類、ピリジニウムカチオン類、スルホニウムカチオン類、ホスホニウムカチオン類を用いることができる。アンモニウムカチオン類の例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルイソプロピルアンモニウムカチオン、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、オクチルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ビニルトリメチルアンモニウムカチオン、アリルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルメトキシメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジプロピルアンモニウムカチオン、ヘキサメトニウムカチオン等を挙げることができる。ピロリジニウムカチオン類の例としては、N,N-ジメチルピロリジニウムカチオン、N,N-ジエチルピロリジニウムカチオン、N,N-ジプロピルピロリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチルピロリジニウムカチオン、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムカチオン、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムカチオン、N-ヘキシル-N-メチルピロリジニウムカチオン等を挙げることができる。イミダゾリウムカチオン類の例としては、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジプロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-イソプロピル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-tert-ブチル-3-イソプロピルイミダゾリウムカチオン等を挙げることができる。ピリジニウムカチオン類の例としては、N-エチルピリジニウムカチオン、N-ブチルピリジニウムカチオン等を挙げることができる。スルホニウムカチオン類の例としては、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジメチルプロピルスルホニウムカチオン、ヘキシルジメチルスルホニウムカチオン等を挙げることができる。ホスホニウムカチオン類の例としては、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、エチルトリメチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、ヘキシルトリメチルホスホニウムカチオン、トリメチルオクチルホスホニウムカチオン等を挙げることができる。
は、水素原子または炭素数1~10の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基であることが特に好ましい。
【0030】
Rfは、フッ素原子または炭素数1~4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキル基を表す。
Rfは、炭素数1~4の直鎖状あるいは分岐状のパーフルオロアルキレン基を表す。Rfは、直鎖状パーフルオロアルキレン基であることが好ましく、炭素数3の直鎖状パーフルオロアルキレン基であることが特に好ましい。
【0031】
Xは、2価の有機基である連結基を表す。2価の有機基としては、2価の炭化水素基、酸素原子(エーテル結合)、硫黄原子(スルフィド結合)、カルボニル基、イミノ基、スルホン基及びこれらを組合せた基を挙げることができる。2価の炭化水素基は、炭素数が1~10の範囲内にあることが好ましい。2価の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、2価の炭化水素基は、直鎖状あるいは分岐状の鎖状炭化水素基であってもよいし、環状炭化水素基であってもよいし、さらにこれらを組合せた基であってもよい。鎖状炭化水素基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基を挙げることができる。環状炭化水素基の例としては、シクロアルキレン基、フェニレン基を挙げることができる。イミノ基は、水素原子が、炭素数1~10の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基で置換されていてもよい。2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ヒドロキシ基、炭素数が1~6のアルコキシ基を挙げることができる。
【0032】
2価の有機基を組合せた基としては、オキシアルキレン基(-O-アルキレン基-)、イミノアルキレン基(-NH-アルキレン基-)、エステル結合(-O-C(=O)-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、スルホンアミド結合(-S(=O)-NH-)、ウレタン結合(-O-C(=O)-NH-)、ウレア結合(-NH-C(=O)-NH-)及びこれらを組合せた基を挙げることができる。
【0033】
Xは、下記の一般式(2)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【0034】
【化9】
【0035】
ただし、上記の一般式(2)において、*は、Cとの接合手を表す。
【0036】
は、アルカリ金属イオンまたはオニウムカチオンを表す。アルカリ金属イオン及びオニウムカチオンの例は上記と同じである。Aは、アルカリ金属イオンであることが好ましく、リチウムイオンであることが特に好ましい。
【0037】
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミドの製造方法について、Rが水素原子であり、Rがメチル基であって、Xが上記一般式(2)で表される2価の有機基であって、Aがカリウムイオンである反応性含フッ素スルホニルイミドを例にとって説明する。この反応性含フッ素スルホニルイミドカリウムは、下記の反応式1~4の反応により製造することができる。なお、下記の反応式1ie~4ie、1e~2eにおいて、Rf、Rf、は、上記の一般式(1)と同じである。
【0038】
先ず、下記の反応式1ieに示すように、パーフルオロアルカンジスルホニルジフロライド(F-S(=O)-Rf-S(=O)-F)と、パーフルオロアルカンスルホンアミド塩(Rf-S(=O)-NHA)とを反応させて、中間体1ieを合成する。この反応は、例えば、脱水アセトニトリル(dry-CHCN)中、フッ化カリウムの存在下で行うことができる。
【0039】
【化10】
【0040】
次に、下記の反応式2ieに示すように、中間体1ieとメチルアミンとをフッ化カリウムの存在下で反応させて、中間体1ieの末端のフッ素原子を、メチルアミノカリウム塩基(-NCH+)で置換して、中間体2ieを合成する。この反応は、例えば、脱水テトラヒドロフラン(dry-THF)中で行うことができる。
【0041】
【化11】
【0042】
次に、下記の反応式3ieに示すように、中間体2ieと2-クロロエタノールとを反応させて、中間体2ieのメチルアミノカリウム塩基のカリウムをヒドロキシエチル基(-CHCHOH)で置換して、中間体3ieを生成させる。この反応は、例えば、脱水アセトニトリル(dry-CHCN)中、炭酸カリウムの存在下で行うことができる。
【0043】
【化12】
【0044】
そして最後に、下記の反応式1eに示すように、中間体3ieのヒドロキシエチル基のヒドロキシ基と、2-イソシアナトエチルアクリレートのイソシアネート基とを反応させて、ウレタン結合を形成させる。これによって、Aがカリウムイオンである反応性含フッ素スルホニルイミド1eが生成する。この反応は、例えば、脱水アセトニトリル(dry-CHCN)とジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む混合溶媒中、ジラウリン酸ジブチルすず(DBTL)存在下で行うことができる。
【0045】
【化13】
【0046】
が、リチウムイオンである反応性含フッ素スルホニルイミドは、例えば、次のようにして合成することができる。
下記の反応式4ieに示すように、上記中間体3ieと硫酸とを反応させイミドカリウムをイミド酸にした後、水酸化リチウムと反応させて、中間体4ieを得る。この反応は、例えば、中間体3ieの酢酸エチル溶液を硫酸水溶液で洗浄後、水酸化リチウムを加えることによって行うことができる。
【0047】
【化14】
【0048】
次いで、下記の反応式2eに示すように、上記中間体4ieのヒドロキシエチル基のヒドロキシ基と、2-イソシアナトエチルアクリレートのイソシアネート基とを反応させて、ウレタン結合を形成させて、Aがリチウムイオンである反応性含フッ素スルホニルイミド2eを生成させる。この反応は、脱水アセトニトリルとジブチルヒドロキシトルエンを含む混合溶媒中、ジラウリン酸ジブチルすず存在下で行うことができる。
【0049】
【化15】
【0050】
が、オニウムカチオンである反応性含フッ素スルホニルイミドは、例えば、Aがカリウムイオンである反応性含フッ素スルホニルイミドとオニウムカチオン溶液とを混合して、カリウムイオンとオニウムカチオンとを置換させることによって合成することができる。
【0051】
また、Xが、オキシアルキレン基を含む反応性含フッ素スルホニルイミドは、例えば、中間体3ieとグリシジル基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることによって合成することができる。グリシジル基を有する(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルを挙げることができる。
【0052】
さらに、Xが、イミノアルキレン基を含む反応性含フッ素スルホニルイミドは、例えば、中間体1ieとアルキレンジアミンとを反応させ、末端にアミノ基を有する中間体を生成させ、次いで、その中間体のアミノ基と塩化アクリロイルもしくは塩化メタクリロイルとを反応させることによって合成することができる。アルキレンジアミンの例としては、エチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタンを挙げることができる。
【0053】
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミドは、イミド塩を含有するので、帯電防止剤として利用されているパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩と同様に優れた帯電防止効果を有する。また、本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミドは、反応性官能基を有するので、単独重合あるいは他のモノマーと共重合させることができる。単独重合あるいは共重合させることによって、高温環境下で保存してもブリードアウトしにくくなり、長期間にわたって安定して優れた帯電防止効果を発揮することができる。
【0054】
<反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体>
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミドに基づく繰り返し単位と、この反応性含フッ素スルホニルイミド以外の他のモノマーに基づく繰り返し単位とを含む。
【0055】
他のモノマーは、反応性含フッ素スルホニルイミドが有する反応性官能基((メタ)アクリロイル基)と重合可能な反応性官能基を有するものであることが好ましい。(メタ)アクリロイル基と重合可能な反応性官能基の例としては、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基などを挙げることができる。これらの反応性官能基の中で好ましいのは、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基であり、特に好ましいのは(メタ)アクリル基である。
【0056】
他のモノマーは、樹脂シートや樹脂フィルムなどの樹脂成形品あるいは粘着剤の原料として利用できるものであることが好ましい。反応性含フッ素スルホニルイミドは、帯電防止剤として作用して、他のモノマーを原料とする樹脂成形品あるいは粘着剤の電気抵抗を低減して、帯電防止能力を向上させる。他のモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0057】
反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーの配合割合は、他のモノマー100質量部に対する反応性含フッ素スルホニルイミドの量が、一般に0.01質量部以上50質量部以下の範囲内、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下の範囲内となる割合である。反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーの配合割合がこの範囲にあると、他のモノマーの特性を維持しつつ、帯電防止効果を向上させることができる。
【0058】
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体は、反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーとを共重合させることによって製造することができる。重合方法には、特に制限なく、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などの公知の重合法を用いることができる。
【0059】
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミドに基づく繰り返し単位が、他のモノマーに基づく単位と共重合しているので、ブリードアウトしにくくなり、長期間にわたって安定して優れた帯電防止効果を発揮することができる。このため、本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体は、他のモノマーの種類によって異なるが、樹脂シートや樹脂フィルムなどの樹脂成形品あるいは粘着剤の材料として利用することができる。また、本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体は、帯電防止剤として、他の樹脂材料に添加したり、他の重合体に架橋させてもよい。
【0060】
<反応性含フッ素スルホニルイミド溶液>
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド溶液は、溶媒と、上述の反応性含フッ素スルホニルイミドとを含む。反応性含フッ素スルホニルイミド溶液は、さらに反応性含フッ素スルホニルイミド以外の他のモノマーを含んでいてもよい。またさらに、重合開始剤を含んでいてもよい。
【0061】
溶媒は、反応性含フッ素スルホニルイミドを溶解するものであれば、特に制限なく使用することができる。溶媒としては、例えば、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒を用いることができる。エステル系溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。エーテル系溶媒は、鎖状であってもよいし、環状であってもよい。鎖状エーテル系溶媒の例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタンを挙げることができる。環状エーテル系溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキソランを挙げることができる。ニトリル系溶媒の例としては、アセトニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリルを挙げることができる。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンを挙げることができる。
【0062】
他のモノマーは、反応性含フッ素スルホニルイミドの反応性官能基と重合可能な反応性官能基を有するものであることが好ましい。反応性官能基と重合可能な反応性官能基の例は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体で用いる他のモノマーの場合と同じである。
また、反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーの配合割合は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体の場合と同じである。
【0063】
重合開始剤は、反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーとの重合反応を促進させるために添加する。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤を用いることができる。熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用してもよい。
重合開始剤の配合割合は、他のモノマー100質量部に対する重合開始剤の量が、一般に1質量部以上10質量部以下の範囲内となる割合である。
【0064】
反応性含フッ素スルホニルイミド溶液は、さらに、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤の例としては、架橋剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、キレート化剤、着色剤を挙げることができる。
【0065】
反応性含フッ素スルホニルイミド溶液は、溶剤と、反応性含フッ素スルホニルイミドと、さらに必要に応じて他のモノマーと重合開始剤とを混合することによって製造することができる。これら材料の混合順序に特には制限ない。例えば、溶剤に、反応性含フッ素スルホニルイミドと、他のモノマーと、重合開始剤とを投入してもよいし、反応性含フッ素スルホニルイミドと、他のモノマーと、重合開始剤とを含む混合物に、溶剤を加えてもよい。
【0066】
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド溶液は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミドを含むので、これを基材の上に塗布し、乾燥した後、反応性含フッ素スルホニルイミドを重合させることによって、反応性含フッ素スルホニルイミドに基づく繰り返し単位を有する重合体を含む樹脂層を形成することができる。この樹脂層は、反応性含フッ素スルホニルイミドが基材上に固定化されるので、長期間にわたって安定して優れた帯電防止効果を基材に付与できる。
【0067】
<反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体溶液>
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体溶液は、溶媒と、上述の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体とを含む。
【0068】
溶媒は、反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体を溶解するものであれば、特に制限なく使用することができる。溶媒としては、例えば、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒を用いることができる。エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒およびケトン系溶媒の例は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミド溶液の場合と同じである。
【0069】
反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体溶液は、さらに、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤の例は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミド溶液の場合と同じである。
【0070】
反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体溶液は、溶剤と、反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体とを混合することによって製造することができる。また、反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーとを含む溶液を作成し、反応性含フッ素スルホニルイミドと他のモノマーとを共重合させることによっても製造することができる。
【0071】
本実施形態の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体溶液は、上述の反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体を含むので、例えば、これを基材の上に塗布し、乾燥することによって、反応性含フッ素スルホニルイミド含有共重合体を含む樹脂層を形成することができる。この樹脂層は、反応性含フッ素スルホニルイミドがブリードアウトしにくいので、長期間にわたって安定して優れた帯電防止効果を基材に付与できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例
【0073】
次に、本発明の作用効果を実施例により説明する。なお、本実施例で化合物の構造は、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)とフッ素の核磁気共鳴スペクトル(19F-NMR)により確認した。
【0074】
[合成例1]反応性含フッ素スルホニルイミドカリウム(反応性含フッ素スルホニルイミド1)の合成
(中間体1iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルジフロライドを152g(0.48mol)、フッ化カリウムを36g(0.63mol)、脱水アセトニトリルを480gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。次いで、トリフルオロメタンスルホンアミドカリウム84gを数回に分けて添加した後、さらに60℃で2時間加熱して、下記の反応式1iの反応により中間体1iを生成させた。反応終了後、不溶物を吸引濾過により濾別し、濾液を濃縮乾固して、粗生成物213gを得た。得られた粗生成物にエタノール109gを加えて60℃に加熱溶解した後、不溶物を3μmのメンブレンフィルターで濾別し、濾液をクロロホルム2004gに加え、生成物を晶析させた。晶析した生成物を吸引濾過により回収し、乾燥して、白色固体の中間体1iを得た。得られた中間体1iの量は、192g(収率:89%)であった。
【0075】
【化16】
【0076】
(中間体1iの19F-NMR測定結果)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ45.0(m,1F),-80.2(s,3F),-107.4(m,2F),-113.6(t,2F),-119.0(t,2F)
【0077】
(中間体2iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、中間体1iを180g(0.37mol)、フッ化カリウムを69g(3.2mol)、脱水テトラヒドロフランを360gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。そこに、濃度2mol/Lのメチルアミン・テトラヒドロフラン溶液201g(CHNH14g、0.45mol)を滴下した後、60℃で2.5時間加熱して、下記の反応式2iの反応により中間体2iを生成させた。反応終了後、濃縮乾固し、残渣に酢酸エチル1498gとイオン交換水220gとを加えて混合した後、分液して酢酸エチル相を回収した。回収した酢酸エチル相を、さらに濃度20質量%の水酸化カリウム水溶液100gで3回、濃度20質量%の塩化カリウム水溶液100gで3回洗浄した後、再度濃縮乾固した。得られた残渣に同質量のアセトニトリルを加えて溶解させ、淡黄色透明で、濃度50質量%の中間体2iのアセトニトリル溶液199g(固形分99g、収率:100%)を得た。
【0078】
【化17】
【0079】
(中間体2iのH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,DO):δ2.8(s,3H)
19F-NMR(376MHz,DO):δ-79.1(s,3F),-112.1(t,2F),-112.4(t,2F),-119.1(t,2F)
【0080】
(中間体3iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、濃度50質量%の中間体2iのアセトニトリル溶液を180g(固形分90g、0.17mol)、2-クロロエタノールを34g(0.42mol)、炭酸カリウムを21g(0.15mol)、脱水アセトニトリルを180gの割合で仕込み、窒素雰囲気下、80℃で43時間加熱して、下記の反応式3iの反応により中間体3iを生成させた。反応終了後、不溶物を吸引濾過により濾別し、濾液を濃縮乾固して、残渣に酢酸エチル705gと濃度10質量%のKCl水溶液125gとを加えて混合した後、分液して酢酸エチル相を回収した。回収した酢酸エチル相を、さらにイオン交換水100gで2回洗浄した後、濃縮乾固し、粗生成物を得た。得られた粗生成物にエタノール97gを加えて溶解させ、得られた溶液をクロロホルム1013gに加え、生成物を晶析させた。晶析した生成物を吸引濾過により回収し、乾燥して、白色固体の中間体3iを得た。得られた中間体3iの量は、75g(収率:79%)であった。
【0081】
【化18】
【0082】
(中間体3iのH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,DO):δ3.8-3.3(m,4H),3.1(s,3H)
19F-NMR(376MHz,DO):δ-79.2(s,3F),-111.3(m,2F),-112.5(t,2F),-119.1(t,2F)
【0083】
(反応性含フッ素スルホニルイミド1の合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、中間体3iを110g(0.20mol)、ジブチルヒドロキシトルエンを1g、ジラウリン酸ジブチルすずを2g、脱水アセトニトリルを331gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。そこに、2-イソシアナトエチルアクリレート49g(0.35mol)を滴下した後、60℃で30分加熱して、下記の反応式1の反応により反応性含フッ素スルホニルイミド1を生成させた。反応終了後、濃縮乾固し、残渣にエタノール119gとクロロホルム681gとを加えて混合した後、分液して下相を回収した。回収した下相に、さらにエタノール40gとクロロホルム768gを加えて混合した後、分液して再度下相を回収した。そして、同様に回収した下相に、さらにジブチルヒドロキシトルエン0.01gを加えた後、濃縮乾固して、反応性含フッ素スルホニルイミド1を得た。得られた反応性含フッ素スルホニルイミド1の量は、101g(収率:73%)であった。
【0084】
【化19】
【0085】
(反応性含フッ素スルホニルイミド1のH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ6.4(w-w,1H),6.2(q,1H),5.9(w-w,1H),4.2-3.8(m,4H),4.2(t,2H),3.4(q,2H),3.1(s,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-80.2(s,3F),-111.8(m,2F),-113.4(t,2F),-119.4(q,2F)
【0086】
[合成例2]反応性含フッ素スルホニルイミドリチウム(反応性含フッ素スルホニルイミド2)の合成
(中間体4iの合成)
分液ロートに、本発明例1で合成した中間体3iを20g(38mmol)量り取り、これに濃度40質量%の硫酸水溶液60gと酢酸エチル206gとを加えて混合した後、分液して上相を回収した。回収した上相を、濃度40質量%の硫酸水溶液60gで2回洗浄した。洗浄後、濃度10質量%の水酸化リチウム水溶液30gを加えて混合して、下記の反応式4iの反応により中間体4iを生成させた後、分液して上相を回収した。回収した上相をイオン交換水20gで2回洗浄した後、濃縮し、アセトニトリルを加えて、濃度50質量%の中間体4iのアセトニトリル溶液36g(収率:96%)を得た。
【0087】
【化20】
【0088】
(中間体4iのH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,DO):δ4.0-3.3(m,4H),3.2(s,3H)
19F-NMR(376MHz,DO):δ-79.3(s,3F),-111.4(m,2F),-112.6(t,2F),-119.1(t,2F)
【0089】
(反応性含フッ素スルホニルイミド2の合成)
温度計、還流管を備えたフラスコに、濃度50質量%の中間体4iのアセトニトリル溶液を10.0g(固形分5.0g,9.9mmol)、ジブチルヒドロキシトルエンを0.05g、ジラウリン酸ジブチルすずを0.11g、脱水アセトニトリルを9.4gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。そこに、2-イソシアナトエチルアクリレート2.4g(17.1mmol)を滴下した後、60℃で30分加熱して、下記の反応式2の反応により反応性含フッ素スルホニルイミド2を生成させた。反応終了後、濃縮乾固し、乾固物にイオン交換水10.3gを加え溶解させた。得られた溶液をクロロホルム37gで2回洗浄した後、分液して上相を回収した。回収した上相にジブチルヒドロキシトルエン0.0005gを加えた後、濃縮した。濃縮後、酢酸エチルを加え、反応性含フッ素スルホニルイミド2の濃度が50質量%の酢酸エチル溶液を10.9g(収率:85%)を得た。
【0090】
【化21】
【0091】
(反応性含フッ素スルホニルイミド2のH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ6.4(w-w,1H),6.2(q,1H),5.9(w-w,1H),4.4-3.3(m,4H),4.2(t,2H),3.4(q,2H),3.1(s,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-80.2(s,3F),-111.8(m,2F),-113.4(t,2F),-119.4(q,2F)
【0092】
[合成例3]反応性含フッ素スルホニルイミド・N-エチル-N-メチルピロリジニウム(反応性含フッ素スルホニルイミド3)の合成
分液ロートに、合成例1で合成した反応性含フッ素スルホニルイミド1を5.4g(7.9mmol)量り取り、これに濃度50質量%のN-エチル-N-メチルピロリジニウムブロミド水溶液4.7g(固形分2.4g,12.1mmol)と、イオン交換水20gと、クロロホルム13gとを加えて混合して、下記の反応式3の反応により反応性含フッ素スルホニルイミド3を生成させた後、分液して下相を回収した。回収した下相を、イオン交換水10gで3回洗浄した後、ジブチルヒドロキシトルエン0.003gを加え、濃縮、乾燥して、反応性含フッ素スルホニルイミド3を得た。得られた反応性含フッ素スルホニルイミド3の量は、35.4g(収率:90%)であった。
【0093】
【化22】
【0094】
(反応性含フッ素スルホニルイミド3のH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ6.4(w-w,1H),6.2(q,1H),5.9(w-w,1H),4.4-3.3(m,14H),3.1(s,3H),2.9(s,3H),2.1(m,4H),1.3(t-t,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-80.2(s,3F),-111.8(m,2F),-113.4(t,2F),-119.5(q,2F)
【0095】
[合成例4]反応性含フッ素スルホニルイミドカリウム(反応性含フッ素スルホニルイミド4)の合成
(中間体5iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、1,1-ジフルオロメタン-1,1-ジスルホニルジフロライドを343g(1.59mol)、フッ化カリウムを115g(1.97mol)、脱水アセトニトリルを1627gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。次いで、ノナフルオロブタンスルホンアミドカリウム509g(1.51mol)を数回に分けて添加した後、さらに60℃で2時間加熱して、下記の反応式5iの反応により中間体5iを生成させた。反応終了後、不溶物を吸引濾過により濾別し、濾液を濃縮乾固して、粗生成物789gを得た。得られた粗生成物にエタノール397gを加えて60℃で加熱溶解した後、不溶物を3μmのメンブレンフィルターで濾別し、濾液をクロロホルム4032gに加え、生成物を晶析させた。晶析した生成物を吸引濾過により回収し、乾燥して、白色固体の中間体5iを得た。得られた中間体5iの量は、700g(収率:87%)であった。
【0096】
【化23】
【0097】
(中間体5iの19F-NMR測定結果)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ45.0(m.1F),-80.9(t,3F),-101.8(s,2F),-112.6(t,2F),-120.5(m,2F),-125.4(m,2F)
【0098】
(中間体6iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、中間体5iを443g(0.83mol)、フッ化カリウムを147g(2.53mol)、脱水テトラヒドロフランを802gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。そこに、プロピルアミン59.1g(1.00mol)を滴下した後、60℃で2.5時間加熱して、下記の反応式6iの反応により中間体6iを生成させた。反応終了後、濃縮乾固し、残渣に酢酸エチル2417g、イオン交換水360gを加えて混合した後、分液して酢酸エチル相を回収した。回収した酢酸エチル相を、さらに濃度20質量%の水酸化カリウム水溶液200gで2回、濃度20質量%の塩化カリウム水溶液220gで2回洗浄した後、再度、濃縮乾固した。得られた残渣に同質量のアセトニトリルを加え溶解させ、淡黄色透明で、濃度50質量%の中間体6iのアセトニトリル溶液982g(固形分491g、収率:97%)を得た。
【0099】
【化24】
【0100】
(中間体6iのH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,DO):δ3.3(t,2H),1.5(m,2H),0.9(t,3H)
19F-NMR(376MHz,DO):δ-80.7(t,3F),-106.5(s,2F),-111.4(t,2F),-120.3(m,2F),-125.0(m,2F)
【0101】
(中間体7iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、濃度50質量%の中間体6iのアセトニトリル溶液を684g(固形分342g、0.56mol)、6-クロロ-1-ヘキサノールを212g(1.55mol)、炭酸カリウムを80g(0.58mol)、脱水アセトニトリルを433gの割合で仕込み、窒素雰囲気下、80℃で48時間加熱して、下記の反応式7iの反応により中間体7iを生成させた。反応終了後、不溶物を吸引濾過により濾別し、濾液を濃縮乾固した。得られた残渣に酢酸エチル1840gを加えて溶解させ、得られた溶液を濃度10質量%のKCl水溶液300gで2回洗浄した後、分液して酢酸エチル相を回収した。回収した酢酸エチル相を、さらにイオン交換水300gで2回洗浄した後、濃縮乾固し、粗生成物を得た。得られた粗生成物にエタノール203gを加えて溶解させ、得られた溶液をクロロホルム2032gに加え、生成物を晶析させた。晶析した生成物を吸引濾過により回収し、乾燥して、白色固体の中間体7iを得た。得られた中間体7iの量は、327g(収率:87%)であった。
【0102】
【化25】
【0103】
(中間体7iのH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ3.8-3.3(m,6H),1.8-1.3(m,10H),1.0(t,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-80.7(t,3F),-107.3(s,2F),-111.5(t,2F),-120.4(m,2F),-125.0(m,2F)
【0104】
(反応性含フッ素スルホニルイミド4の合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、中間体7iを13g(0.019mol)、ジブチルヒドロキシトルエンを0.02g、濃度12質量%のカリウムtert-ブトキシド(t-BuOK)・テトラヒドロフラン溶液を18g(カリウムtert-ブトキシド2.16g,0.019mol)、メタクリル酸グリシジル3g(0.020mol)、脱水テトラヒドロフランを30gの割合で仕込み、窒素雰囲気下、66℃で15時間加熱して、下記の反応式4の反応により反応性含フッ素スルホニルイミド4を生成させた。反応終了後、イオン交換水20gを加え、次いで塩酸を中性になるまで加えた後、濃縮乾固した。得られた残渣にエタノール20gに溶解させた後、不溶物を吸引濾過により濾別した。濾液にクロロホルム203gを加えて混合した後、分液して下相を回収した。回収した下相を濃縮乾固し、晶析した生成物を濾過により回収し、乾燥して、白色固体の反応性含フッ素スルホニルイミド4を得た。得られた反応性含フッ素スルホニルイミド4の量は、11g(収率:72%)であった。
【0105】
【化26】
【0106】
(反応性含フッ素スルホニルイミド4のH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ6.1(t,1H),5.7(t,1H)4.3-4.2(m,5H),4.1-3.7(m,6H),2.0(t,3H)1.8-1.3(m,10H),1.0(t,3H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-79.8(t,3F),-106.9(s,2F),-111.0(t,2F),-119.8(m,2F),-124.4(m,2F)
【0107】
[合成例5]反応性含フッ素スルホニルイミドカリウム(反応性含フッ素スルホニルイミド5)の合成
(中間体8iの合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、エチレンジアミンを37g(0.62mol)、脱水アセトニトリルを203gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。そこに、合成例1で合成した中間体1iを同量の脱水アセトニトリルに溶解して調製した溶液200g(中間体1iの量:100g、0.21mol)を滴下した後、60℃で2.5時間加熱して、下記の反応式8iの反応により中間体8iを生成させた。反応終了後、濃縮乾固し、残渣に酢酸エチル854gとイオン交換水87gとを加えて混合した後、分液して酢酸エチル相を回収した。回収した酢酸エチル相を、さらに濃度20質量%の水酸化カリウム水溶液100gで3回、濃度20質量%の塩化カリウム水溶液100gで2回、濃度40質量%の硫酸水溶液30gで1回洗浄した後、濃縮乾固した。得られた残渣にテトラヒドロフラン300gと炭酸カリウム88gとを加え60℃で2時間撹拌した後、不溶物を吸引濾過により濾別した。濾液を濃度50質量%の中間体8iのテトラヒドロフラン溶液になるまで濃縮し、淡黄色透明の溶液224g(固形分112g、収率:96%)を得た。
【0108】
【化27】
【0109】
(中間体8iのH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ3.0(t,2H),2.6(t,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-80.2(t,3F),-111.3(t,2F),-113.4(t,2F),-119.1(t,2F)
【0110】
(反応性含フッ素スルホニルイミド5の合成)
温度計と還流管を備えたフラスコに、濃度50質量%の中間体8iのテトラヒドロフラン溶液を100g(固形分50g,0.081mol)、炭酸カリウムを34g(0.245mol)、ジブチルヒドロキシトルエンを0.05g、脱水テトラヒドロフランを102gの割合で仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。そこに、塩化アクリロイル8g(0.089mol)を滴下した後、60℃で2時間加熱して、下記の反応式5の反応により反応性含フッ素スルホニルイミド5を生成させた。反応終了後、反応液を濃縮乾固し、残渣をエタノール62gに溶解し、クロロホルム622gに加え生成物を晶析させた。晶析した生成物を吸引濾過により回収し、乾燥して、白色固体の反応性含フッ素スルホニルイミド5を得た。得られた反応性含フッ素スルホニルイミド5の量は、38g(収率:75%)であった。
【0111】
【化28】
【0112】
(反応性含フッ素スルホニルイミド5のH-NMR測定結果と19F-NMR測定結果)
H-NMR(400MHz,CDCN):δ6.4(w-w,1H),6.2(q,1H),5.9(w-w,1H),3.6(t,2H),3.1(t,2H)
19F-NMR(376MHz,CDCN):δ-80.7(t,3F),-111.8(t,2F),-114.0(t,2F),-119.3(t,2F)
【0113】
[本発明例1]
始めに、撹拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応装置を用意し、反応装置に窒素ガスを封入した。次に、この反応装置に、2-エチルヘキシルアクリレートを10g、2-ヒドロキシエチルアクリレートを0.2g、帯電防止剤として合成例1で合成した反応性含フッ素スルホニルイミド1を0.01g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.02g、酢酸エチルを15gの割合で仕込み、撹拌しながら、65℃で7時間反応させることで、固形分濃度40%のアクリル系共重合体を得た。
【0114】
次いで、上記アクリル系共重合体25gに、架橋剤であるコロネートL(日本ポリウレタン工業製、固形分濃度75%)0.5gを添加して、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0115】
[粘着剤組成物の評価]
調製した粘着剤組成物を、ポリエステルフィルムに塗工し、90℃で3分間乾燥させて、厚さ25μmの粘着剤層が形成された積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの粘着剤層の表面抵抗を表面抵抗測定機(株式会社三菱ケミカルアナリテック社製、MCP-HT450)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0116】
次に、積層フィルムを温度60℃、相対湿度90%RHに調整した恒温恒湿槽に、100時間保存した。保存後、積層フィルムを恒温恒湿槽から取り出し、60℃で30分乾燥した後、25℃まで放冷した。放冷後、ブリードアウトの状態を目視で観察し、皮膜の表面抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。
【0117】
[本発明例2]
反応性含フッ素スルホニルイミド1の添加量を0.10gとしたこと以外は、本発明例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、その粘着剤組成物を評価した。その結果を、表1に示す。
【0118】
[本発明例3]
反応性含フッ素スルホニルイミド1の添加量を1.00gとしたこと以外は、本発明例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、その粘着剤組成物を評価した。その結果を、表1に示す。
【0119】
[実施例4~15]
反応性含フッ素スルホニルイミド1の代わりに、上記合成例2~5で合成した反応性含フッ素スルホニルイミド2~5を、下記の表1に示す添加量で添加したこと以外は、本発明例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、その粘着剤組成物を評価した。その結果を、表1に示す。
【0120】
[比較例1~3]
反応性含フッ素スルホニルイミド1の代わりに、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを下記の表1に示す添加量で添加したこと以外は、本発明例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、その粘着剤組成物を評価した。その結果を、表1に示す。
【0121】
[比較例4]
反応性含フッ素スルホニルイミド1を添加しなかったこと以外は、本発明例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、その粘着剤組成物を評価した。その結果を、表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを用いた比較例1~3では、高温高湿環境下での保存前は、帯電防止剤が添加されていない比較例4と比較して表面抵抗率が低い値を示したが、高温高湿環境下(60℃、90%RH、100時間)での保存後は、表面抵抗率が大きく上昇した。これは、保存中に皮膜中のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムがブリードアウトしたためであると考えられる。
【0124】
これに対して、反応性含フッ素スルホニルイミドを用いた本発明例1~15においては、高温高湿環境下での保存後でも、ブリードアウトが発生せず、表面抵抗率の上昇が抑えられていた。
以上の結果から、本発明によれば、高温高湿環境下で保存してもブリードアウトが起こりにくい帯電防止剤として利用可能な化合物を提供することが可能となることが確認された。