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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/142 20060101AFI20231109BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20231109BHJP
   H01C 17/242 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01C1/142
H01C7/00 110
H01C17/242
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022093247
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2019550985の分割
【原出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2022120073
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2017212427
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】篠浦 高徳
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-158721(JP,A)
【文献】特開2000-138102(JP,A)
【文献】特開平11-026205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/142
H01C 7/00
H01C 17/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面と、前記主面および前記裏面の間に位置する側面と、を有する基板と、
前記主面に配置された抵抗体層と、
前記主面に配置され、前記抵抗体層に導通する第1導電層と、
前記抵抗体層と前記第1導電層とに接し、前記第1導電層上に位置する第1端縁を有する絶縁層と、
前記第1端縁を跨いで、前記第1導電層および前記絶縁層に接し、前記絶縁層上に位置する第2端縁を有する、第2導電層と、
前記第2端縁を跨いで、前記第2導電層および前記絶縁層に接し前記第2導電層上に位置する第3端縁および前記絶縁層上に位置する第4端縁を有する、第3導電層と、
前記第3端縁および前記第4端縁を跨いで、前記第2導電層、前記第3導電層および前記絶縁層に接する第4導電層と、を備え
前記第2導電層は、カーボン粒子を含み、
前記第3導電層は、金属粒子を含み、
前記第4導電層は、金属層からなる、チップ抵抗器。
【請求項2】
前記第1導電層は、Agを含む、請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記第3導電層は、合成樹脂およびAgを含む、請求項1または2に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記第3導電層に含まれるAgは、薄片状である、請求項3に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記カーボン粒子は、薄片状である、請求項1ないし4のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
前記第3導電層は、前記第2導電層上に位置する第3端縁を有し、
前記第3端縁は、前記第1端縁と前記第2端縁との間に位置する、請求項1ないしのいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記第3導電層は、前記基板の前記基板から離間するように膨出した第3膨出部を有する、請求項1ないしのいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記第4導電層は、Niを含む、請求項1ないしのいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項9】
前記第4導電層に接する第5導電層を備える、請求項1ないしのいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項10】
前記第5導電層は、Snを含む、請求項に記載のチップ抵抗器。
【請求項11】
前記抵抗体層は、複数の溝を有する、請求項1ないし10のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
前記複数の溝は、
前記基板の前記主面を露出させる第1溝と、
前記基板に形成された前記主面から凹む溝部と前記厚さ方向視において一致する第2溝と、を含む、請求項11に記載のチップ抵抗器。
【請求項13】
第1方向に離間する一対の前記第1導電層を備えており、
前記複数の溝は、前記第1方向と直角である第2方向に沿っている、請求項11または12に記載のチップ抵抗器。
【請求項14】
第1方向に離間する一対の前記第1導電層を備えており、
前記複数の溝は、前記第1方向に沿うものと、前記第1方向と直角である第2方向に沿ったものと、を含んでいる、請求項11または12に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチップ抵抗器の一例は、基板、抵抗体層、導電層、めっき層および絶縁層を備えている。抵抗体層は、基板の主面に形成されている。導電層は、抵抗体層と接触することにより、抵抗体層と導通している。絶縁層は、抵抗体層のすべてと導電層の一部とを覆っている。また、めっき層は、導電層のうち絶縁層から露出する部分を覆っている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一側面によるとチップ抵抗器が提供される。前記チップ抵抗器は、基板と、抵抗体層と、第1導電層と、絶縁層と、第2導電層と、第3導電層と、第4導電層と、を備える。前記基板は、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面と、前記主面および前記裏面の間に位置する側面と、を有する。前記抵抗体層は、前記主面に配置されている。前記第1導電層は、前記主面に配置され、前記抵抗体層に導通する。前記絶縁層は、前記抵抗体層と前記第1導電層とを覆い、前記第1導電層上に位置する第1端縁を有する。前記第2導電層は、前記第1端縁を跨いで、前記第1導電層および前記絶縁層を覆い、前記絶縁層上に位置する第2端縁を有する。前記第3導電層は、前記第2端縁を跨いで、前記第2導電層および前記絶縁層を覆い、前記第2導電層上に位置する第3端縁を有する。前記第4導電層は、前記第3端縁を跨いで、前記第2導電層および前記第3導電層を覆う。前記第3導電層と前記第4導電層との接合強度は、前記第2導電層と前記第4導電層との接合強度よりも強い。
【0004】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の第1実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部平面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部底面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部拡大断面図である。
図5】本開示の第1実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部拡大断面図である。
図6】本開示の第1実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部拡大断面図である。
図7図1のVII-VII線に沿う断面図である。
図8】本開示の第2実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部拡大断面図である。
図9】本開示の第3実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部平面図である。
図10図9のX-X線に沿う断面図である。
図11図9のXI-XI線に沿う断面図である。
図12図9のXII-XII線に沿う断面図である。
図13】本開示の第3実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部拡大断面図である。
図14】本開示の第3実施形態に係るチップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図15図14のXV-XV線に沿う断面図である。
図16図14のXVI-XVI線に沿う断面図である。
図17】本開示の第3実施形態に係るチップ抵抗器の製造工程を示す要部拡大断面図である。
図18】本開示の第4実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部平面図である。
図19図18のXIX-XIX線に沿う断面図である。
図20図18のXX-XX線に沿う断面図である。
図21図18のXXI-XXI線に沿う断面図である。
図22図18のXXII-XXII線に沿う断面図である。
図23図18のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
図24】本開示の第5実施形態に係るチップ抵抗器を示す断面図である。
図25】本開示の第5実施形態に係るチップ抵抗器を示す要部拡大断面図である。
図26】本開示の第5実施形態に係るチップ抵抗器の製造工程を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0007】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルを付して用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0008】
図1図7は、本開示の第1実施形態に係るチップ抵抗器を示している。本実施形態のチップ抵抗器A1は、基板1、抵抗体層2、一対の第1導電層3、一対の第2導電層4、一対の第3導電層5、一対の第4導電層6、一対の第5導電層7および絶縁層9を備えている。
【0009】
図1は、チップ抵抗器A1を示す平面図である。図2は、チップ抵抗器A1を示す底面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、チップ抵抗器A1を示す要部拡大断面図である。図5は、チップ抵抗器A1を示す要部拡大断面図である。図6は、チップ抵抗器A1を示す要部拡大断面図である。図7は、図1のVII-VII線に沿う断面図である。なお、図1においては、理解の便宜上、基板1、抵抗体層2および第1導電層3以外の構成要素を省略しており、図2においては、基板1および第6導電層8以外の構成要素を省略している。これらの図において、チップ抵抗器A1の基板1の厚さ方向が、z方向である。x方向およびy方向は、z方向に対してそれぞれ直角である方向である。また、z方向視を、便宜上平面視と称する場合がある。
【0010】
基板1は、抵抗体層2、一対の第1導電層3、一対の第2導電層4、一対の第3導電層5、一対の第4導電層6、一対の第5導電層7および絶縁層9を支持している。基板1は、主面11、裏面12および一対の側面13を有する。図示された例においては、基板1は、略直方体形状である。また、図示された例においては、基板1は、x方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする長矩形状である。基板1は、少なくとも表面が絶縁性を有しており、一般的には絶縁材料からなる。基板1の材料としては、たとえばAl23やAlN等のセラミックスが挙げられる。基板1の大きさは特に限定されず、その一例を挙げると、x方向寸法およびy方向寸法が、0.2mm~4mm程度、z方向寸法が、0.1~0.8mm程度である。
【0011】
主面11および裏面12は、z方向において互いに反対側を向く面である。一対の側面13は、x方向において互いに反対側を向いており、各々が主面11および裏面12の間に位置する。図示された例においては、基板1は、複数の傾斜面15を有している。傾斜面15は、側面13と主面11および裏面12のいずれかとの間に介在している。傾斜面15は、z方向に対して傾いている。傾斜面15は、たとえば基板1を形成するための基板材料を分割するために設けられた溝の一部が残存したものである。
【0012】
抵抗体層2は、基板1の主面11に配置されており、チップ抵抗器A1の抵抗値を規定する部位である。抵抗体層2の形状は特に限定されず、図示された例においては、図1に示すようにx方向およびy方向に沿う2対の辺を有する略矩形状である。図示された例においては、抵抗体層2は、z方向視において基板1の外縁から内方に離間している。
【0013】
抵抗体層2の材質は特に限定されず、チップ抵抗器A1として求められる抵抗値を実現可能な材料を適宜採用すればよい。抵抗体層2の材質としては、たとえばRuO2やAg-Pd合金等を含む材質が挙げられ、さらにガラスを含んでもよい。抵抗体層2の厚さは、特に限定されず、たとえば5μm~10μmであり、好ましくは、7μm~8μmである。このような抵抗体層2は、たとえばRuO2やAg-Pd合金等の金属粒子とガラスフリットとを含有したペーストを基板1の材料となる基板材料にシルクスクリーン等を用いて印刷し、このペーストを焼成することにより形成される。
【0014】
一対の第1導電層3は、主面11に配置されており、抵抗体層2を挟んでx方向両側に設けられている。第1導電層3は、抵抗体層2に導通している。図4に示すように、図示された例においては、抵抗体層2が被覆部21を有している。被覆部21は、第1導電層3を覆う部分である。これにより、第1導電層3は、抵抗体層2に導通している。図1に示すように、図示された例においては、第1導電層3は、z方向視において略矩形状である。また、第1導電層3は、z方向視において側面13に到達している。第1導電層3は、y方向において基板1の端縁から離れている。図示された例においては、第1導電層3は、傾斜被覆部31および曲面部32を有する。傾斜被覆部31は、基板1の傾斜面15を覆う部分である。曲面部32は、傾斜被覆部31のz方向上方に位置する凸曲面からなる部分である。
【0015】
第1導電層3の材質は特に限定されず、抵抗体層2と適切に導通し、且つ抵抗体層2の材質よりも電気抵抗率が低い材質が選定される。第1導電層3の材質としては、たとえばAgおよびガラスを含む混合材料が挙げられる。第1導電層3の厚さは特に限定されず、たとえば、5~12μmであり、好ましくは、7~10μmである。このような第1導電層3は、たとえばAg粒子およびガラスフリットを含有したペーストを基板1の材料となる基板材料にシルクスクリーン等を用いて印刷し、このペーストを焼成することにより形成される。
【0016】
絶縁層9は、抵抗体層2および一対の第1導電層3を覆っており、これらを保護するためのものである。図示された例においては、絶縁層9は、抵抗体層2のすべてと、一対の第1導電層3の一部ずつと、を覆っている。絶縁層9は、第1端縁93を有している。第1端縁93は、第1導電層3上に位置し、y方向に延びる端縁である。図7に示すように、図示された例においては、絶縁層9は、基板1のy方向端縁に到達していないが、絶縁層9が基板1のy方向端縁に到達した構成であってもよい。
【0017】
絶縁層9は、単層または複数層の絶縁材料からなる。絶縁層9の材質としては、たとえばガラス層やエポキシ樹脂が挙げられる。絶縁層9の厚さは特に限定されず、たとえば15~40μmである。また、図4に示すように、図示された例においては、絶縁層9は、x方向中央側から第1端縁93に向かうにしたがい、z方向の厚さが徐々に薄くなる部分を有する形状である。このような絶縁層9は、たとえばガラスペーストを抵抗体層2および第1導電層3上にシルクスクリーン等を用いて印刷し、このペーストを焼成することにより形成される。
【0018】
一対の第2導電層4は、x方向に互いに離間して設けられている。第2導電層4は、絶縁層9の第1端縁93を跨いで、第1導電層3および絶縁層9を覆っている。図示された例においては、第2導電層4は、第1導電層3のうち第1導電層3から露出した部分と、絶縁層9の一部と、を覆っている。また、図示された例においては、第2導電層4は、第1導電層3の曲面部32を露出させている。第2導電層4は、第2端縁41を有する。第2端縁41は、絶縁層9上に位置しており、y方向に延びる端縁である。第2端縁41は、第1端縁93に対してx方向中央寄りに位置している。
【0019】
また、第2導電層4は、第2膨出部42および曲面部44を有している。第2膨出部42は、z方向において基板1から離間するように膨出した形状の部分であり、x方向において第1端縁93よりも概ね基板1の側面13側に位置している。頂点43は、第2膨出部42のうちz方向において基板1から最も離間した部分である。凹部45は、第2膨出部42のx方向端部であり、概ね第1端縁93上に位置する凹んだ部分である。曲面部44は、第1導電層3の曲面部32に対してz方向上方に隣接する部分であり、凸曲面からなる部分である。
【0020】
第2導電層4の材質は特に限定されず、第1導電層3と適切に導通し、且つ抵抗体層2の材質よりも電気抵抗率が低い材質が選定される。第2導電層4の材質としては、たとえば導電粒子および合成樹脂を含む混合材料が挙げられる。導電粒子は、たとえばカーボン粒子である。また、カーボン粒子の形状は特に限定されず、球形や薄片状等が挙げられる。図5および図6に示すように、図示された例においては、第2導電層4は、薄片状のカーボン粒子を含む。このカーボン粒子は、たとえば厚さ方向と直角である長手方向寸法が5~15μm程度、短手方向寸法が2~5μm程度である。また、第2導電層4が、薄片状のカーボン粒子を含むことにより、第2導電層4の表面は、凹凸形状となっている。第2導電層4の厚さは特に限定されず、たとえば、10~25μmであり、好ましくは、12~15μmである。このような第2導電層4は、たとえば薄片状のカーボン粒子を含む、可撓性エポキシ樹脂を主材としたペーストを第1導電層3および絶縁層9上にシルクスクリーン等を用いて印刷し、このペーストを焼成することにより形成される。
【0021】
一対の第3導電層5は、x方向に互いに離間して設けられている。第3導電層5は、第2導電層4の第2端縁41を跨いで、第2導電層4および絶縁層9を覆っている。図示された例においては、第3導電層5は、第2導電層4の一部と、絶縁層9の一部と、を覆っている。第3導電層5は、第3端縁51および第4端縁54を有する。第3端縁51は、第2導電層4上に位置しており、y方向に延びる端縁である。第4端縁54は、絶縁層9上に位置しており、y方向に延びる端縁である。図示された例においては、第3端縁51は、x方向において絶縁層9の第1端縁93と第2導電層4の第2端縁41との間に位置している。
【0022】
また、第3導電層5は、第3膨出部52を有しており、図示された例においては、第3導電層5が第3膨出部52からなる。第3膨出部52は、z方向において基板1から離間するように膨出した形状の部分である。頂点53は、第3膨出部52のうちz方向において基板1から最も離間した部分である。図示された例においては、頂点53は、z方向において頂点43よりも基板1から離間している。また、第3膨出部52のうち頂点53を含む部分の厚さは、第2導電層4のうち第3膨出部52が覆う部分の厚さよりも厚い。
【0023】
第3導電層5の材質は特に限定されず、第2導電層4と適切に導通し、且つ抵抗体層2の材質よりも電気抵抗率が低い材質が選定される。第3導電層5の材質としては、たとえば導電粒子および合成樹脂を含む混合材料が挙げられる。導電粒子は、たとえばAg粒子である。また、Ag粒子の形状は特に限定されず、球形や薄片状等が挙げられる。図6に示すように、図示された例においては、第3導電層5は、合成樹脂501および薄片状の金属粒子502を含む。この金属粒子502は、たとえば厚さ方向と直角である長手方向寸法が5~15μm程度、短手方向寸法が2~5μm程度であり、図示された例においては、これらの寸法が第2導電層4のカーボン粒子402よりも小さい。また、第3導電層5が、薄片状の金属粒子502を含むことにより、第3導電層5の表面は、凹凸形状となっている。このような第3導電層5は、たとえば薄片状のAg粒子を含む、可撓性エポキシ樹脂を主材としたペーストを第2導電層4および絶縁層9上にシルクスクリーン等を用いて印刷し、このペーストを焼成することにより形成される。
【0024】
一対の第6導電層8は、裏面12に配置されており、x方向両側に設けられている。図2に示すように、図示された例においては、第6導電層8は、z方向視において略矩形状である。また、第6導電層8は、z方向視において側面13に到達している。第6導電層8は、y方向において基板1の端縁から離れている。図示された例においては、第6導電層8は、傾斜被覆部81を有する。傾斜被覆部81は、基板1の傾斜面15を覆う部分である。
【0025】
第6導電層8の材質は特に限定されず、抵抗体層2の材質よりも電気抵抗率が低い材質が選定される。第6導電層8の材質としては、たとえばAgおよびガラスを含む混合材料が挙げられる。第6導電層8の厚さは特に限定されず、たとえば、5~12μmであり、好ましくは、7~10μmである。このような第6導電層8は、たとえばAg粒子およびガラスフリットを含有したペーストを基板1の材料となる基板材料にシルクスクリーン等を用いて印刷し、このペーストを焼成することにより形成される。
【0026】
一対の第4導電層6は、x方向に両側に設けられている。図3に示すように、第4導電層6は、主面部61、裏面部62および側面部63を有する。主面部61は、第1導電層3、第2導電層4、第3導電層5および絶縁層9等を介して主面11によって支持された部位である。裏面部62は、第6導電層8を介して裏面12に支持された部位であり、第6導電層8を覆っている。側面部63は、側面13に形成された部位である。
【0027】
図4に示すように、第4導電層6の主面部61は、第2導電層4および第3導電層5を覆っており、図示された例においては、第2導電層4のすべておよび第3導電層5のすべてを覆っている。これにより、第3導電層5の第4端縁54は、第4導電層6によって覆われている。また、第4導電層6の主面部61の一部は、絶縁層9上に位置している。
【0028】
第4導電層6は、単層または複数層の金属層からなる。金属層は、たとえばスパッタリング等の薄膜形成手法によって形成されたものや、めっきによって形成されたものが挙げられる。図示された例においては、スパッタリングによって形成された下地層(図示略)と下地層上に形成されためっき層(図示略)とからなる。第4導電層6の材質は特に限定されず、Ni、Cr等の金属またはこれらを含む合金が挙げられる。第4導電層6の厚さは、たとえば3μm~7μmである。第4導電層6は、基板1、第2導電層4、第3導電層5および第6導電層8の表面形状に沿った形状となっている。
【0029】
第2導電層4、第3導電層5および第4導電層6の材質は、第3導電層5と第4導電層6との接合強度が、第2導電層4と第4導電層6との接合強度よりも強い関係となるように選定される。上述した例においては、第2導電層4および第3導電層5に含有される合成樹脂が同等の組成である場合、第2導電層4に含まれるカーボン粒子402が、第3導電層5に含まれる金属粒子502よりも、第4導電層6との接合強度を高める機能を発揮すると考えられる。
【0030】
一対の第5導電層7は、x方向に両側に設けられている。図3に示すように、第5導電層7は、主面部71、裏面部72および側面部73を有する。主面部71は、第1導電層3、第2導電層4、第3導電層5、第4導電層6および絶縁層9等を介して主面11によって支持された部位である。裏面部72は、第4導電層6および第6導電層8を介して裏面12に支持された部位であり、第4導電層6の裏面部62を覆っている。側面部73は、第4導電層6を介して側面13に支持された部位であり、第4導電層6の側面部63を覆っている。
【0031】
図4に示すように、第5導電層7の主面部71は、第4導電層6の主面部61を覆っており、図示された例においては、主面部61のすべてを覆っている。また、第5導電層7の主面部71の一部は、絶縁層9上に位置している。
【0032】
第5導電層7は、単層または複数層の金属層からなる。金属層は、たとえばSn等の金属またはこれを含む合金が挙げられる。第4導電層6の厚さは、たとえば3μm~7μmである。第5導電層7は、たとえば電解バレルめっきによってSnを析出させることによって形成される。
【0033】
第5導電層7は、第4導電層6の表面形状に沿った形状となっている。図4に示すように、第5導電層7の主面部71は、頂点75、頂点76および凹部77を有する。頂点75は、第2導電層4の第2膨出部42の頂点43上に概ね位置する部分である。頂点76は、第3導電層5の第3膨出部52の頂点53上に概ね位置する部分である。凹部77は、絶縁層9の第1端縁93および第2導電層4の凹部45上に概ね位置する部分である。すなわち、凹部77は、x方向において頂点75と頂点76との間に位置している。凹部77は、頂点75と頂点76との間においてz方向に凹んだ部分である。頂点75は、凹部77と側面13との間において基板1からz方向に最も離間した部位である。頂点76は、凹部77よりもx方向中央側において、基板1からz方向に最も離間した部位である。図示された例においては、頂点76は、頂点75よりもz方向において基板1から離間している。また、頂点75は、頂点75および頂点76よりもz方向において基板1に近い。また、頂点76は、z方向視において絶縁層9と重なる位置にある。
【0034】
次に、チップ抵抗器A1の作用について説明する。
【0035】
本実施形態によれば、図4に示すように、第2導電層4の第2端縁41は、第3導電層5によって覆われている。これにより、第2導電層4と絶縁層9との境界である第2端縁41から、使用環境によって存在しうる外部の気体や液体等が、第1導電層3へと進入することを抑制することが可能である。これにより、第1導電層3の変質等を抑制することが可能であり、第1導電層3の導通不良等を回避することができる。また、第3導電層5は、第4導電層6との接合強度が、第2導電層4と第4導電層6との接合強度よりも強い。このため、第4導電層6のうち第2端縁41と重なる部分が剥離したり、当該箇所に亀裂が生じることを抑制することが可能である。これにより、外部の気体や液体等の進入を抑制することが可能である。したがって、チップ抵抗器A1の機能低下を抑制することができる。特に、本実施形態においては、第1導電層3が、Agを含んでいる。外部の気体や液体等の進入により、このAgが硫化すると、第1導電層3が絶縁化されることが懸念される。本実施形態によれば、第1導電層3の硫化を抑制することが可能であり、第1導電層3の絶縁化を回避することができる。
【0036】
図5および図6に示すように、第2導電層4は、薄片状のカーボン粒子402を含んでいる。これにより、第2導電層4の表面を凹凸形状とすることが可能であり、第3導電層5および第4導電層6との接合強度を高めることができる。また、カーボン粒子402は、第2導電層4の表面に露出する面積を増大するのに適しており、第2導電層4と第3導電層5および第4導電層6とをより確実に導通させることができる。また、カーボン粒子402が露出することは、第4導電層6との接合強度を高めるのに好ましい。
【0037】
図6に示すように、第3導電層5は、薄片状のAgからなる金属粒子502を含んでいる。これにより、第3導電層5と第4導電層6との接合強度を高めることができる。また、金属粒子502は、合成樹脂501から露出しやすいため、金属粒子502と第2導電層4のカーボン粒子402とが接しやすい。これは、第2導電層4と第3導電層5とをより確実に導通させるのに適している。
【0038】
図4に示すように、第3導電層5の第3端縁51は、絶縁層9の第1端縁93と第2導電層4の第2端縁41との間に位置している。このため、仮に第3端縁51において外部の気体や液体等が進入したとしても、第3端縁51と第1導電層3との間には、絶縁層9が介在している。このため、液体等がz方向下方に浸透したとしても、この液体等が第1導電層3に到達することを絶縁層9によって回避することが可能である。したがって、第1導電層3の変質等を防止することができる。また、第1導電層3の硫化を抑制することが可能であり、第1導電層3の絶縁化を回避することができる。
【0039】
チップ抵抗器A1を電子機器等の回路基板等に実装する場合、基板1の裏面12が回路基板に正対する姿勢で実装される。この際、第5導電層7には、導電性接合材としてのはんだが付着する。はんだは、第5導電層7の裏面部72に付着することに加えて、側面部73および主面部71に付着することが好ましい場合がある。ただし、はんだが主面部71の全てを覆い、絶縁層9に到達することは好ましくない。本実施形態においては、第5導電層7の頂点76が、基板1から最も離間した部位となっている。これにより、はんだを頂点76において留まらせることが可能であり、はんだが第3導電層5を超えて絶縁層9に至ることを防止することができる。また、頂点76を設ける観点から、第3導電層5が第3膨出部52を有し、頂点53が頂点43よりもz方向において高い位置にあることが好ましい。第3膨出部52のうち頂点53を含む部分は、第2導電層4のうち第3導電層5によって覆われた部分よりも厚い。これにより、頂点53および頂点76をより高い部位とすることができる。また、第5導電層7が頂点75を有することにより、頂点75においてもはんだを留まらせる効果が期待できる。頂点75を設ける観点から、第2導電層4が第2膨出部42を有し、頂点43が形成されていることが好ましい。また、第5導電層7が凹部77を有することにより、凹部77においてもはんだを留まらせることが可能である。凹部77を設ける観点から、第2導電層4が凹部45を有することが好ましい。
【0040】
基板1の傾斜面15を覆う第3導電層5の傾斜被覆部31は、その表面がz方向に対して若干傾いた面となりやすい。次に、曲面部32は、傾斜被覆部31に繋がる凸曲面からなる。そして、第2導電層4の曲面部44は、第1導電層3の曲面部32に続く凸曲面であり、曲面部32よりも緩やかな凸曲面である。このような構成により、第1導電層3および第2導電層4のうち基板1の傾斜面15および主面11の境界付近を覆う部分が、過大な段差等を有しないなだらかな形状となる。これにより、当該部分を覆う第4導電層6および第5導電層7がなだらかな形状となり、その厚さがより均一となりやすい。したがって、第1導電層3および第2導電層4のうち傾斜面15および主面11の境界付近を覆う部分が、第4導電層6や第5導電層7から露出してしまうことを抑制することができる。
【0041】
図8図26は、本開示の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0042】
図8は、本開示の第2実施形態に係るチップ抵抗器を示している。本実施形態のチップ抵抗器A2は、第3導電層5の構成が上述した実施形態と異なっている。
【0043】
本実施形態においては、第3導電層5は、第3膨出部52および第4膨出部55を有している。第4膨出部55は、第3膨出部52と同様に、z方向において基板1から離間するように膨出した部分である。第4膨出部55は、第3膨出部52と離間しており、x方向において第4膨出部55と側面13との間に位置している。図示された例においては、第4膨出部55は、第1端縁93のz方向上方に配置されており、第2導電層4の凹部45を覆っている。また、第4膨出部55は、第2導電層4の曲面部44を露出させている。
【0044】
このような実施形態によっても、チップ抵抗器A2の機能低下を抑制することができる。また、第3導電層5が、第3膨出部52に加えて第4膨出部55を有することにより、第4導電層6が剥離したり、第4導電層6と第2導電層4および第3導電層5との間に亀裂が生じることを抑制するのに好ましい。
【0045】
図9図17は、本開示の第3実施形態に係るチップ抵抗器を示している。本実施形態のチップ抵抗器A3は、抵抗体層2の導通経路を延長することにより、サージ電流が流れた場合の損傷等を抑制することが意図された構成である。
【0046】
図9は、チップ抵抗器A3を示す要部平面図である。図10は、図9のX-X線に沿う断面図である。図11は、図9のXI-XI線に沿う断面図である。図12は、図9のXII-XII線に沿う断面図である。図13は、チップ抵抗器A3を示す要部拡大断面図である。図14は、チップ抵抗器A3の製造工程を示す平面図である。図15は、図14のXV-XV線に沿う断面図である。図16は、図14のXVI-XVI線に沿う断面図である。図17は、チップ抵抗器A3の製造工程を示す要部拡大断面図である。
【0047】
本実施形態においては、第1導電層3は、延出部33を有している。延出部33は、x方向中央に向けて延出する部分である。また、抵抗体層2は、延出部23を有している。延出部23は、x方向外方に向けて延出する部分である。延出部23のうち延出部33に重なる部分が、被覆部21となっている。
【0048】
抵抗体層2は、複数の溝22を有している。溝22は、抵抗体層2の内方に向かって入り込む形状とされた細長い切り欠き部分である。なお、理解の便宜上、同図においては、溝22を一点鎖線によって囲んでおり、以降の図においても同様である。本実施形態においては、服薄の溝22は、いずれもy方向を長手方向とする細長い形状である。複数の溝22は、y方向図中上側に設けられたものと、y方向図中下側に設けられたものとが、交互に配置されている。このような複数の溝22が設けられることにより、抵抗体層2は、蛇行形状とされており、チップ抵抗器A1の抵抗体層2と比べて導通経路が延長されている。複数の溝22は、いずれもがy方向に沿っている。
【0049】
本実施形態においては、複数の溝22は、第1溝221および第2溝222を含んでいる。図9および図13に示すように、第1溝221は、主面11を露出させている。第2溝222は、基板1に形成された溝部17とz方向視において一致している。図10図12に示すように、溝部17は、主面11から凹んでおり、図示された例においては、y方向を長手方向とする細長形状である。図示された例においては、x方向中央寄りに2つの第1溝221が配置され、x方向外方に2つの第2溝222が配置されている。2つの第1溝221は、y方向において互いに反対側に設けられており、2つの第2溝222は、y方向において互いに反対側に設けられている。
【0050】
本実施形態においては、絶縁層9は、第1絶縁層91および第2絶縁層92を有している。第1絶縁層91は、基板1および抵抗体層2を直接覆っている。第2絶縁層92は、第1絶縁層91と第1絶縁層91の周辺に位置する抵抗体層2および第1導電層3とを覆っている。図10および図11に示すように、第1絶縁層91は、抵抗体層2の延出部23の一部を除き、抵抗体層2の大部分を覆っており、第1導電層3を覆っていない。第1絶縁層91および第2絶縁層92の材質は特に限定されない。図示された例においては、第1絶縁層91は、たとえばガラスからなり、第2絶縁層92は、エポキシ樹脂からなる。絶縁層9の形成においては、たとえばガラスペーストを印刷した後に焼成することにより第1絶縁層91を形成し、第1絶縁層91を覆うようにエポキシ樹脂を主剤としたペーストを印刷した後に焼成することにより、第2絶縁層92を形成する。
【0051】
図13に示すように、主面11のうち第1溝221から露出する部分は、第1絶縁層91によって覆われている。一方、図10図12に示すように、第1絶縁層91は、溝911を有する。溝911は、z方向視において基板1の溝部17とその全体が一致する開口部分である。すなわち、溝部17と第2溝222と溝911とは、z方向視において互いに一致している。このため、溝部17は、第1絶縁層91によっては覆われておらず、第2絶縁層92によって覆われている。言い換えると、第2絶縁層92は、第1絶縁層91の溝911を通じて抵抗体層2の第2溝222および基板1の溝部17に充填されている。溝部17、第2溝222および溝911の内面は、互いの間に段差等を有さず、滑らかに繋がっている。
【0052】
図14図17は、チップ抵抗器A3の製造工程の一例を示している。本例においては、基板1を複数個形成可能な基板材料10を用いている。図14図16に示すように、基板材料10の主面11に、抵抗体層2、第1導電層3および第1絶縁層91を印刷および焼成により形成する。なお、図14においては、理解の便宜上第1絶縁層91を省略している。抵抗体層2は、2つの溝22および2つの凹部24を有している。2つの溝22は、いずれも第1溝221である。基板1には、上述した溝部17は、いまだ形成されていない。基板1のうち溝部17が設けられる箇所は、抵抗体層2および第1絶縁層91によって覆われている。すなわち、抵抗体層2は、第2溝222を有しておらず、第1絶縁層91は、溝911を有していない。図示された例においては、2つの凹部24が、後述の工程において第2溝222を形成すべき場所を示すものとして利用される。
【0053】
次いで、図14および図17に示すように、レーザー光Lを用いて抵抗体層2のトリミングを行う。このトリミングの目的としては、たとえば抵抗体層2の導通経路の延長や抵抗体層2の抵抗値の調整が挙げられる。図14に示すように、凹部24から矢印で示された経路にレーザー光Lを走査させる。これにより、図17に示すように、第1絶縁層91および抵抗体層2のうちレーザー光Lが照射された部分が、全厚にわたって除去される。また、基板1のうちレーザー光Lが照射された部分が除去される。これにより、基板1に溝部17が形成され、抵抗体層2および第1絶縁層91に第2溝222および溝911が形成される。このような手法を採用することにより、溝部17、第2溝222および溝911は、z方向視において互いに一致する。また、溝部17、第2溝222および溝911の内面は、互いの間に段差等を有さず、滑らかに繋がる。
【0054】
このような実施形態によっても、チップ抵抗器A3の機能低下を抑制することができる。また、抵抗体層2の導通経路が延長されていることにより、サージ電流が流れた場合の損傷等を抑制することが可能である。
【0055】
図18図23は、本開示の第4実施形態に係るチップ抵抗器を示している。
【0056】
図18は、チップ抵抗器A4を示す要部平面図である。図19は、図18のXIX-XIX線に沿う断面図である。図20は、図18のXX-XX線に沿う断面図である。図21は、図18のXXI-XXI線に沿う断面図である。図22は、図18のXXII-XXII線に沿う断面図である。図23は、図18のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。なお、図18においては、理解の便宜上、基板1、抵抗体層2および第1導電層3以外の構成要素を省略している。
【0057】
本実施形態のチップ抵抗器A4は、z方向視におけるx方向寸法とy方向寸法との比率が、チップ抵抗器A1~チップ抵抗器A3とは異なっている。本実施形態においては、チップ抵抗器A4のy方向寸法は、x方向寸法よりも長い。
【0058】
一対の第1導電層3は、基板1の主面11においてx方向両側に設けられている。図18における図中右方の第1導電層3は、図中左方の第1導電層3よりもy方向寸法が短く、y方向において図中上側に偏って配置されている。
【0059】
上述したチップ抵抗器A3と同様に、本実施形態においても抵抗体層2の導通経路が延長されている。抵抗体層2は、複数の溝22を有している。本実施形態においては、複数の溝22は、第2溝222のみを含むが、上述した第1溝221を含んでいてもよい。2つの第2溝222は、x方向を長手方向とするものと、y方向を長手方向とするものとを含む。図18図20図21および図23に示すように、第2溝222は、基板1の溝部17とz方向視において一致している。また、第2溝222は、第1絶縁層91の溝911とz方向視において一致している。このような第2溝222は、たとえば図17に示した手法と同様の手法によって形成することができる。
【0060】
このような実施形態によっても、チップ抵抗器A4の機能低下を抑制することができる。また、抵抗体層2の導通経路が延長されていることにより、サージ電流が流れた場合の損傷等を抑制することが可能である。
【0061】
図24図26は、本開示の第5実施形態に係るチップ抵抗器を示している。
【0062】
図24は、チップ抵抗器A5を示す断面図である。図25は、チップ抵抗器A5を示す要部拡大断面図である。図26は、チップ抵抗器A5の製造工程を示す要部拡大断面図である。
【0063】
図24および図25に示すように、チップ抵抗器A5は、基板1、抵抗体層2、第1導電層3、下地導電層60、第4導電層6および第5導電層7を備えている。基板1、抵抗体層2および第1導電層3の構成は、たとえば上述したチップ抵抗器A1と同様である。絶縁層9は、上述したチップ抵抗器A3およびチップ抵抗器A4と同様に、第1絶縁層91および第2絶縁層92を有している。
【0064】
下地導電層60は、金属層からなり、たとえばスパッタリングによって形成されたNi層である。下地導電層60の厚さは特に限定されず、たとえば300nm~700nmである。下地導電層60は、主面部601、裏面部602および側面部603を有する。
【0065】
主面部601は、抵抗体層2、第1導電層3および第1絶縁層91を介して基板1の主面11に支持されている。主面部601は、第1絶縁層91の第1端縁93を跨いで、第1絶縁層91および第1導電層3を覆っている。裏面部602は、第6導電層8を介して基板1の裏面12に支持されている。裏面部602は、第6導電層8の一部を覆っている。側面部603は、側面13に支持されており、側面13および第1導電層3の傾斜被覆部31を覆っている。
【0066】
図25に示すように、第2絶縁層92は、下地導電層60の主面部601の一部を覆っている。第2絶縁層92の第5端縁94は、主面部601上に位置しており、第1端縁93に対してx方向中央寄りに位置している。
【0067】
第4導電層6の主面部61は、下地導電層60の主面部601のうち第2絶縁層92から露出した部分を覆っている。すなわち、主面部61は、第2絶縁層92の第5端縁94に対して概ねx方向外側に設けられている。
【0068】
第5導電層7の主面部71は、第4導電層6の主面部61を覆っている。主面部71は、第2絶縁層92の第5端縁94近傍の一部を覆い得るが、第2絶縁層92のほとんどを露出させている。
【0069】
図26は、チップ抵抗器A5の製造工程例を示している。基板材料10に、抵抗体層2、第1導電層3および第1絶縁層91を、たとえば印刷および焼成を用いて形成する。次いで、マスクMを用いて第1絶縁層91の一部を露出させた状態で、スパッタリングにより下地導電層60を形成する。これにより、下地導電層60の主面部601は、第1絶縁層91の一部を覆う構成となる。この後は、第1絶縁層91と下地導電層60の主面部601の一部とを覆うように、第2絶縁層92を形成する。そして、第4導電層6および第5導電層7を順次形成することにより、チップ抵抗器A5が得られる。
【0070】
このような実施形態によれば、第5端縁94を挟んで、絶縁層9の第2絶縁層92と第4導電層6の主面部61とが、下地導電層60の主面部601に接合される。下地導電層60は、スパッタリングを用いて形成されるため、下地導電層60が形成された領域は、微小な凹凸を有する微細な粗面となり易い。このため、第2絶縁層92および主面部61と、第1絶縁層91との接合強度を高めることが可能であり、第5端縁94から外部の気体や液体等が内部に進入することを抑制することが可能である。したがって、チップ抵抗器A5の機能低下を抑制することができる。また、第1導電層3の硫化を抑制することが可能であり、第1導電層3の絶縁化を回避することができる。
【0071】
本開示に係るチップ抵抗器は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るチップ抵抗器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0072】
〔付記1〕
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面と、前記主面および前記裏面の間に位置する側面と、を有する基板と、
前記主面に配置された抵抗体層と、
前記主面に配置され、前記抵抗体層に導通する第1導電層と、
前記抵抗体層と前記第1導電層とを覆い、前記第1導電層上に位置する第1端縁を有する絶縁層と、
前記第1端縁を跨いで、前記第1導電層および前記絶縁層を覆い、前記絶縁層上に位置する第2端縁を有する、第2導電層と、
前記第2端縁を跨いで、前記第2導電層および前記絶縁層を覆い、前記第2導電層上に位置する第3端縁を有する、第3導電層と、
前記第3端縁を跨いで、前記第2導電層および前記第3導電層を覆う第4導電層と、を備え、
前記第3導電層と前記第4導電層との接合強度は、前記第2導電層と前記第4導電層との接合強度よりも強い、チップ抵抗器。
〔付記2〕
前記第1導電層は、Agを含む、付記1に記載のチップ抵抗器。
〔付記3〕
前記第2導電層は、合成樹脂およびカーボンを含む、付記1または2に記載のチップ抵抗器。
〔付記4〕
前記第2導電層に含まれるカーボンは、薄片状である、付記3に記載のチップ抵抗器。
〔付記5〕
前記第3導電層は、合成樹脂およびAgを含む、付記1ないし4のいずれかに記載のチップ抵抗器。
〔付記6〕
前記第3導電層に含まれるAgは、薄片状である、付記5に記載のチップ抵抗器。
〔付記7〕
前記第3端縁は、前記第1端縁と前記第2端縁との間に位置する、付記1ないし6のいずれかに記載のチップ抵抗器。
〔付記8〕
前記第3導電層は、前記絶縁層上に位置する第4端縁を有する、付記7に記載のチップ抵抗器。
〔付記9〕
前記第4導電層は、前記第4端縁を覆う、付記8に記載のチップ抵抗器。
〔付記10〕
前記第2導電層は、前記基板の前記側面と前記絶縁層の前記第1端縁との間において前記基板の前記主面から離間するように膨出した第2膨出部を有する、付記1ないし9のいずれかに記載のチップ抵抗器。
〔付記11〕
前記第3導電層は、前記基板の前記基板から離間するように膨出した第3膨出部を有する、付記10に記載のチップ抵抗器。
〔付記12〕
前記第3膨出部の頂点は、前記第2膨出部の頂点よりも前記基板の前記主面から離間している、付記11に記載のチップ抵抗器。
〔付記13〕
前記第4導電層は、Niを含む、付記1ないし12のいずれかに記載のチップ抵抗器。
〔付記14〕
前記第4導電層を覆う第5導電層を備える、付記1ないし13のいずれかに記載のチップ抵抗器。
〔付記15〕
前記第5導電層は、Snを含む、付記14に記載のチップ抵抗器。
〔付記16〕
前記抵抗体層は、複数の溝を有する、付記1ないし15のいずれかに記載のチップ抵抗器。
〔付記17〕
前記複数の溝は、
前記基板の前記主面を露出させる第1溝と、
前記基板に形成された前記主面から凹む溝部と前記厚さ方向視において一致する第2溝と、を含む、付記16に記載のチップ抵抗器。
〔付記18〕
第1方向に離間する一対の前記第1導電層を備えており、
前記複数の溝は、前記第1方向と直角である第2方向に沿っている、付記16または17に記載のチップ抵抗器。
〔付記19〕
第1方向に離間する一対の前記第1導電層を備えており、
前記複数の溝は、前記第1方向に沿うものと、前記第1方向と直角である第2方向に沿ったものと、を含んでいる、付記16または17に記載のチップ抵抗器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26