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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】セルフクリンチングファスナ
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
F16B37/04 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022501159
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2019041797
(87)【国際公開番号】W WO2021010959
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】522010255
【氏名又は名称】アールビーアンドダブリュー マニュファクチャリング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】オドネル,マーク,アンドリュー
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0211932(US,A1)
【文献】特開昭64-058807(JP,A)
【文献】特開2014-088936(JP,A)
【文献】特表2009-539042(JP,A)
【文献】特開2012-192458(JP,A)
【文献】特表2013-515222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0302107(US,A1)
【文献】実開昭50-028166(JP,U)
【文献】特開平01-058807(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02141369(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能な金属基材に取り付けるためのセルクリンチングファスナであって、前記セルフクリンチングファスナは、
中心軸を有する本体部分であって、前記中心軸の方向に延在する外周面と、前記中心軸に垂直な方向に延在する環状面と、を含む本体部分と、
前記中心軸に同軸であるパンチ部分であって、前記パンチ部分は、前記環状面が前記パンチ部分を取り囲むように前記本体部分から延在し、前記パンチ部分は、前記中心軸の方向に延在する外周面を含む、パンチ部分と、
前記パンチ部分を取り囲み、かつ、前記環状面から軸方向外側に突出する複数の離間したラグであって、複数の前記ラグの1つは、前記金属基材に係合するように構成された接触面を含み、前記接触面は、前記環状面が位置する仮想水平面に対して、前記セルフクリンチングファスナの半径方向外側の方向に下に傾斜する、複数の離間したラグと、を備え、
前記パンチ部分の前記外周面は、
前記パンチ部分を取り囲む複数の離間した柱部分であって、前記柱部分の各々は、隣接して離間した切り欠きのそれぞれの対の間に配置され、かつ、前記対を離間させる、複数の離間した柱部分と、
前記パンチ部分を取り囲む複数のブリッジ部分であって、各ブリッジ部分は、隣接して離間した柱部分のそれぞれの対を接続する、複数のブリッジ部分と、を備え、
前記柱部分の各々及び前記ブリッジ部分の各々は円筒形の輪郭を有し、前記柱部分の各々及び前記ブリッジ部分の各々は共通の仮想円周面上にある、セルフクリンチングファスナ。
【請求項2】
前記接触面は第1端部及び第2端部を有し、前記第1端部は前記パンチ部分の前記外周面に隣接して位置決めされ、前記第2端部は前記パンチ部分の前記外周面から半径方向外側に位置決めされる、請求項1に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項3】
前記第1端部は前記パンチ部分の前記外周面によって形成され、前記第2端部は前記環状面の周縁部に配置され、前記接触面は前記第1端部から前記第2端部まで連続的に下に傾斜する、請求項2に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項4】
前記環状面は第1環状面及び第2環状面を備え、前記第1環状面は前記第2環状面によって取り囲まれる、請求項3に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項5】
前記第2環状面は前記仮想水平面上に位置し、前記第1環状面は前記仮想水平面に対して角度を付けられる、請求項4に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項6】
前記第1環状面は前記仮想水平面に対して凸形状である、請求項5に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項7】
前記第1環状面は、前記仮想水平面に対して2°~10°の範囲内の凸角を有する、請求項6に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項8】
前記第1環状面は、前記仮想水平面に対して5°の凸角を有する、請求項7に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項9】
前記第1端部の前記接触面の表面は、前記仮想水平面に垂直な方向に前記仮想水平面から第1距離離間され、前記第1距離は、前記接触面と、前記仮想水平面に垂直な方向に取られた前記仮想水平面との間の任意の他の距離よりも大きい、請求項3に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項10】
前記接触面は、丸みを帯びた輪郭を有する、請求項1に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項11】
前記本体部分及び前記パンチ部分のうちの少なくとも1つにネジ貫通孔が形成される、請求項1に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項12】
塑性変形可能な金属基材に取り付けるためのセルフクリンチングファスナであって、前記セルフクリンチングファスナは、
中心軸を有する本体部分であって、前記中心軸の方向に延在する外周面と、前記中心軸に垂直な方向に延在する環状面と、を含む本体部分と、
前記中心軸に同軸であるパンチ部分であって、前記パンチ部分は、前記環状面が前記パンチ部分を取り囲むように前記本体部分から延在し、前記パンチ部分は、前記中心軸の方向に延在する外周面を含み、かつ、円筒形の輪郭を有し、前記パンチ部分の前記外周面は、
前記パンチ部分を取り囲む複数の離間した切り欠きと、
前記パンチ部分を取り囲む複数の離間した柱部分であって、前記柱部分の各々は、隣接して離間した切り欠きのそれぞれの対の間に配置され、かつ、前記対を離間させる、複数の離間した柱部分と、を備える、パンチ部分と、
前記パンチ部分を取り囲み、かつ、前記環状面から軸方向外側に突出する複数の離間したラグであって、各ラグは、前記複数の切り欠きのうちのそれぞれ1つに半径方向に整列され、複数の前記ラグの1つは、前記金属基材に係合するように構成された接触面を含み、前記接触面は、前記環状面が位置する仮想水平面に対して、前記セルフクリンチングファスナの半径方向外側の方向に下に傾斜する、複数の離間したラグと、を備える、セルフクリンチングファスナ。
【請求項13】
前記接触面は第1端部及び第2端部を有し、前記第1端部は、1つの前記ラグが半径方向に整列される前記切り欠きによって形成され、前記第2端部は、前記環状面の周縁部に配置され、前記接触面は、前記第1端部から前記第2端部まで連続的に下に傾斜する、請求項12に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項14】
各柱部分は、前記本体部分の前記環状面から前記パンチ部分の前記外周面の遠位周縁部まで延在する、請求項13に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項15】
前記パンチ部分の前記外周面は、前記パンチ部分を取り囲む複数のブリッジ部分をさらに備え、各ブリッジ部分は、隣接して離間した柱部分のそれぞれの対を接続する、請求項14に記載のセルフクリンチングファスナ。
【請求項16】
前記柱部分の各々及び前記ブリッジ部分の各々は円筒形の輪郭を有し、前記柱部分の各々及び前記ブリッジ部分の各々は共通の仮想円周面上にある、請求項15に記載のセルフクリンチングファスナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] なし
【0002】
[0002] 本願は、概して、自己取り付けファスナ、より具体的には、クリンチナットに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 例えば、自動車業界や電気製品業界などの多くの業界で、金属パネルに様々な部品を固定するために自己取り付けファスナが使用されている。クリンチナットが金属パネルに取り付けられるとき、ネジ又はボルトが、クリンチナット内にねじ込まれて規定のトルク値で締め付けられる。取り付け中、クリンチナットは、ネジが挿入されて締め付けられるときに金属パネルに対してクリンチナットが回転しないように十分な回転抵抗を有している必要がある。使用中、クリンチナットは、例えば振動又は他の引張力などの外力が加えられるときに金属パネルからクリンチナットが引き抜かれないように十分な引き抜き抵抗を有している必要がある。
【0004】
[0004] クリンチナットは、通常、金属プレート又はパネルの開口部内に少なくとも部分的に延在する中心パイロット又はパンチ部分を含む。クリンチナットがセルフピアシングである場合、中心パイロット部分が工具と協働して、クリンチナットを金属パネルに取り付けるときに金属パネルに開口部を形成する。クリンチナットは、クリンチナットと金属パネルとの間に機械的インターロックを形成するダイ部材によって金属パネルに取り付けられる。ダイ部材は、通常、開口部の周りの金属パネルを、パイロット部分を取り囲むクリンチナットの環状溝に変形させる、及び/又は、金属パネル上でクリンチナットのパイロット部分を変形させて金属パネルを捕まえる(entrap)。
【0005】
[0005] 例えば、米国特許第3,053,300号は、金属パネルの予め形成された開口部を通って延在し、かつ、開口部の周縁を杭打ちする(stake)ために折り返される中心パイロット部分を有するクリンチナットを開示している。中心パイロットが変形すると、金属パネルは、環状溝の起伏のある表面に一致し、かつ、クリンチナットと金属パネルとの間のインターロックを形成する。このクリンチナットは相対的に高い引き抜き抵抗を有している可能性がある一方で、中心パイロットの変形はクリンチナットの雌ネジを簡単に歪めてしまう可能性がある。
【0006】
[0006] パイロットを変形させるときに雌ネジの歪みをなくすための1つのアプローチは、クリンチナットのパイロットではなく、金属パネルを変形させてインターロックを形成することである。例えば、米国特許第3,878,599号及び第4,690,599号は各々、溝の内壁又は外壁のいずれかにアンダーカットを有するクリンチナットを開示している。クリンチナットと金属パネルとの間に形成されるインターロックを改善するために、金属パネルの材料がアンダーカット内に押し込まれる。しかしながら、金属パネルが相対的に薄い場合、アンダーカット内に押し込まれる材料がごくわずかであるので、引き抜き抵抗は相対的に低くなる。
【0007】
[0007] このタイプのクリンチナットの引き抜き抵抗を増大させるための1つのアプローチは、ダブルアンダーカット溝を形成することである。例えば、米国特許第5,340,251号は、環状溝が断面で「アリ溝」形状であるように、内壁及び外壁の両方にアンダーカットを有するクリンチナットを開示している。金属パネルはアンダーカットの両方内に押し込まれてクリンチナットと金属パネルとの間に改善されたインターロックを形成する。しかしながら、両方のアンダーカットを埋めるために必要とされる金属パネルの変形は、従来の成形技術を用いて得ることは困難であり、一貫性のない引き抜き抵抗をもたらす。
【0008】
[0008] このタイプのクリンチナットの押し出し抵抗及びトルクアウト抵抗を向上させるためのさらに別のアプローチは、平面又は平坦面を有する、環状面上のラグ(lug)を形成することである。例えば、米国特許第6,220,804号は、長方形の断面形状を有するラグを有するクリンチナットを開示している。ラグは、クリンチナットの本体の外側環状リップの下に凹まされていることが好ましい。金属パネルは、接合部接続を改善するために、ラグの間に規定された凹んだ領域内に塑性変形させられる。さらに別のアプローチでは、ラグは、クリンチナットと金属パネルとの間のインターロックをさらに向上させるために凹んだ部分を備える。例えば、米国特許第9,322,424号は、中心に凹んだ部分を有するラグを有するクリンチナットを開示している。具体的には、各ラグは、取り付け中、塑性変形する金属パネルを中心の凹んだ部分内に導くように構成された角度の付いた側壁を含む。
【0009】
[0009] 自動車業界でなされた技術の進歩により、製造業者は、完成品の総重量を減らし、かつ、同等以上の強度特性を提供する材料を選択しているのが現在の動向である。具体的には、処理プロセス(例えば、熱処理)の結果として強度が向上した、新規で軽量の材料が、現在、完成品の重量を減らすために金属パネルを製造するために使用される。例えば、従来の金属パネルは、500Mpa以下の基材硬度を有していた。新規な金属パネルは、500~2000Mpaの範囲内の基材硬度を有するように製造される。上述したセルフクリンチングファスナは、通常、これらの新規な金属パネルではうまく機能しない。具体的には、従来の金属パネルを製造するために選択された材料は、塑性変形中に高い流動度(flow rates)を有する。すなわち、塑性変形するとき、以前の材料は、はるかに簡単に伸長して膨張するため、上述したラグによって作成されたギャップ/キャビティを満たすことができる。しかしながら、新規で軽量の材料では伸長の可能性が制限される。すなわち、新規な金属パネルは、従来の金属パネルほど容易に塑性変形(すなわち、流動)しない。したがって、上述したセルフクリンチングファスナの構成は、強度が向上した軽量材料で形成された新規な金属パネルでの良好な取り付け及び/又は長期間の使用に適していない。
【0010】
[0010] したがって、当技術分野では、軽量材料から形成され、十分な押し出し強度、十分な回転抵抗を有し、かつ、雌ネジを歪ませない、薄い金属パネルに確実かつ一貫して取り付けられることができる改良されたクリンチナットが必要である。さらに、クリンチナットは、相対的に安価に製造されることができ、かつ、相対的に使いやすいものである必要がある。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 一態様によれば、塑性変形可能な金属基材に取り付けるためのセルフクリンチングファスナが提供される。セルフクリンチングファスナは、中心軸を有する本体部分を含む。本体部分は、中心軸の方向に延在する外周面と、中心軸に垂直な方向に延在する環状面と、を有する。パンチ部分は、中心軸と同軸であり、かつ、環状面がパンチ部分を取り囲むように本体部分から延在する。パンチ部分は、中心軸の方向に延在する外周面を有する。複数の離間したラグ(lug)が、パンチ部分を取り囲み、かつ、環状面から軸方向外側に突出する。複数のラグの1つは、金属基材に係合するように構成された接触面を有する。接触面は、環状面が存在する仮想水平面に対して、セルフクリンチングファスナの半径方向外側の方向に下に傾斜する(decline)。
【0012】
[0012] 別の態様によれば、塑性変形可能な金属基材に取り付けるためのセルフクリンチングファスナが提供される。セルフクリンチングファスナは、中心軸を有する本体部分を含む。本体部分は、中心軸に垂直な方向に延在する環状面を有する。パンチ部分は、本体部分の中心軸と同軸であり、かつ、環状面がパンチ部分を取り囲むように本体部分から延在する。パンチ部分は、中心軸の方向に延在する外周面を含む。パンチ部分の外周面は、円筒形の輪郭を有し、かつ、パンチ部分を取り囲む複数の離間した切り欠きと、パンチ部分を取り囲む複数の離間した柱部分と、を含む。柱部分の各々は、隣接して離間した切り欠きのそれぞれの対の間に配置され、かつ、対から離間する。
【0013】
[0013] さらに別の態様によれば、塑性変形可能な金属基材に取り付けるためのセルフクリンチングファスナが提供される。セルフクリンチングファスナは、中心軸を有する本体部分を含む。本体部分は、中心軸の方向に延在する外周面と、中心軸に垂直な方向に延在する環状面と、を含む。パンチ部分は、中心軸と同軸であり、かつ、環状面がパンチ部分を取り囲むように本体部分から延在する。パンチ部分は、中心軸の方向に延在する外周面を有する。パンチ部分の外周面は、円筒形の輪郭を有し、かつ、パンチ部分を取り囲む複数の離間した切り欠きと、パンチ部分を取り囲む複数の離間した柱部分と、を含む。柱部分の各々は、隣接して離間した切り欠きのそれぞれの対の間に配置され、かつ、対から離間する。セルフクリンチングファスナは、パンチ部分を取り囲み、かつ、環状面から軸方向外側に突出する複数の離間したラグをさらに含む。各ラグは、複数の切り欠きのうちのそれぞれ1つと半径方向に整列される。複数のラグの1つは、金属基材に係合するように構成された接触面を含む。接触面は、環状面が存在する仮想水平面に対して、セルフクリンチングファスナの半径方向外側の方向に下に傾斜する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0014] クリンチナットの斜視図である。
図2】[0015] 図1に示すクリンチナットの上面図である。
図3】[0016] 図2の線3-3に沿った断面図である。
図4】[0017] 図3に示す詳細領域「4」の拡大図である。
図5】[0018] 図3に示す詳細領域「5」の拡大図である。
図6A】[0019] 従来技術のクリンチナットの斜視図である。
図6B】[0020] 図6Aに示す従来技術のクリンチナットの上面図である。
図6C】[0021] 図6Bの線6C-6Cに沿った断面図である。
図7A】[0022] 図1に示すクリンチナットの別の斜視図である。
図7B】[0023] 図7Aに示すクリンチナットの上面図である。
図7C】[0024] 図7Bの線7C-7Cに沿った断面図である。
図8】[0025] 図1に示すクリンチ装着部分を含むスタッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0026] ここで図面を参照すると、図1は、塑性変形可能な金属プレート又はパネルに取り付けるためのファスナ100又はナットを示している。ファスナ100は、金属パネルへの取り付け中、金属パネルに形成された予め形成された孔にクリンチ及び取り付けるセルフクリンチングファスナであってもよい。好ましくは、ファスナ100は、取り付け中、金属パネルに開口部を穿孔し、かつ、金属パネルにファスナ100自体をクリンチする、セルフピアシング及びセルフクリンチングファスナである。図示の実施形態はナットであるが、例えば、セルフピアシング及び/又はセルフクリンチングスタッド(図8に示され、かつ、以下に簡潔に記載される)などの他のセルフピアシング及びセルフクリンチングファスナが本発明の範囲内であることに留意されたい。簡潔にするために、以下の記載の大部分は、本開示が同様にセルフピアシング及び/又はセルフクリンチングスタッドに適用されることを理解した上で、セルフクリンチング及びセルフピアシングナットに関してなされる。
【0016】
[0027] ファスナ100は、本体部分102と、本体部分102の一端から延在するパイロット部分又はパンチ部分104と、を有する。ネジ孔又はボア106は、本体部分102及びパンチ部分104の両方を通って軸方向に延在する。さらに、本体部分102及びパンチ部分104は中心軸「X」と同軸である。ファスナ100を塑性変形可能な金属基材に取り付ける際、相手方のネジ付きファスナ(例えば、ボルト、ネジなど)が、金属基材への取り付けのためのネジ孔106に挿入されることができる。ファスナがセルフピアシング及びセルフクリンチングスタッドである場合、パンチ部分104は、中実であり、かつ、貫通孔を包含しなくてもよく;代わりに、ネジ付き又はネジなしスタッドが、本体部分102の反対側から外側に(すなわち、ファスナ100の底面又は第1端面102aから)延在することができる。好ましくは、そうしたスタッドは、中心軸「X」を中心に及び中心軸「X」と同軸に配置される。スタッドは、第1端面102aに垂直であり得る、又は、必要に応じて、中心軸「X」に対してある角度で位置決めされてもよい。
【0017】
[0028] 図1図3を参照すると、本体部分102は、ファスナ100の1つの軸方向端に対応する、ファスナ100の底面又は第1端面102aまで延在する。ファスナ100の第1端面102aは、中心軸「X」に実質的に垂直であるものとして示されている。しかしながら、第1端面102aは他の幾何学的構成を有してもよい;例えば、第1端面102aは面取りされてもよい。具体的には、第1端面102aは、中心軸「X」に対して上に傾斜(inclined)又は下に傾斜(declined)させられてもよい。別の言い方をすれば、第1端面102aは、ファスナ100の取り付け方向に対して半径方向内側に徐々に収束するか、又は、半径方向外側に発散する円周面を有してもよい。さらに示すように、パンチ部分104は、ファスナ100の他の軸方向端に対応する、ファスナ100の上面又は第2端面104aまで延在する。ファスナ100の第2端面104aは、同様に、中心軸「X」に実質的に垂直であるように示されているが、第2端面104aは、第1端面102aに関して上述したように、代わりに面取りされることができる。
【0018】
[0029] パンチ部分104は、本体部分102が、パンチ部分104を取り囲むほぼ環形状の表面108を含むように、本体部分102よりも半径方向に小さい。すなわち、パンチ部分104は、本体部分102から中心軸「X」の方向に延在し、かつ、環状面108がパンチ部分104を取り囲むように位置決めされる。環状面108は、中心軸に垂直な方向に延在し(すなわち、ファスナ100の半径方向「r」に延在し、図2を参照)、かつ、ファスナ100が取り付けられる金属パネルに係合するように構成される。
【0019】
[0030] さらに示すように、ファスナ100は、パンチ部分104を集合的に取り囲む複数の離間したラグ110を含む。ラグ110の各々は、ファスナ100の第1端面102aと反対の方向に、環状面108から軸方向に外側に突出する。一実施形態では、示すように、複数のラグ110が、互いに等間隔に離間され、かつ、すべて同じ構成を有する。代替として、複数のラグ110は、パンチ部分104の周りに互いに不均一に離間されることができ、及び/又は、様々な構成を有することができる。
【0020】
[0031] 図1及び図3に関して、本体部分102及びパンチ部分104は、それぞれ、中心軸「X」の方向に延在する外周面112、114を含む。一実施形態では、本体部分102の外周面112は、平面であり、かつ、中心軸「X」に対して平行であり、工作機械で容易に使用されることができる平坦な側面を有する多角形を提供する。代替として、本体部分102の外周面112は、凸形状若しくは凹形状に湾曲してもよく、及び/又は、中心軸「X」に対して非平行であってもよい。示す例では、本体部分102の外周面112は、多角形であり、かつ、複数の面によって形成される。具体的には、複数の面はすべて同じ寸法(すなわち、高さ及び幅)を有しており、その結果、本体部分102の外周面112は、図2に示すように8つの面によって形成される。代替として、合計4~12の面が、本体部分102の外周面112を形成してもよい。さらに、本体部分102の外周面112は、多角形である必要はなく、かつ、他の幾何学的構成(例えば、円筒形)を有してもよいことに留意されたい。本体部分102の高さ(すなわち、軸方向の寸法)及び幅(すなわち、半径方向の寸法)は、相手方の雄ネジ部材が、ネジ山を潰すことなくネジ孔106に一貫して係合してネジ孔106から外れ得るように、ネジ孔106と相手方の雄ネジ部材(例えば、ボルト)との間に十分なネジ係合を提供するように選択される。ファスナ100がセルフクリンチングスタッドを有する場合、本体部分102の高さ及び幅は、スタッド及び任意の意図された相手方のファスナに十分な強度を提供するように同様に選択されることができる。
【0021】
[0032] 図2及び図4を参照すると、図4は、図3に示すファスナ100の囲まれた領域の拡大詳細図であり、環状面108は仮想水平面「P」上に位置する。具体的には、仮想水平面「P」は、中心軸「X」が仮想水平面「P」に垂直であるように構成される。さらに、環状面108は、第1環状面108a及び第2環状面108bを備える。第1環状面108aは、第2環状面108bによって取り囲まれている(すなわち、第1環状面108aは、第2環状面108bよりも半径方向にパンチ部分104のより近くに位置決めされる)。
【0022】
[0033] 第2環状面108bの外径(中心軸「X」に対して)は、環状面108の周縁部116で本体部分102の外周面112に交わる(すなわち、交差する)。第2環状面108bの内径(中心軸「X」に対して)は第1環状面108aの外径(中心軸「X」に対して)に交わり、第1環状面108aの内径(中心軸「X」に対して)はパンチ部分104の外周面114に交わる(すなわち、交差する)。
【0023】
[0034] 特に、第2環状面108bは仮想水平面「P」上に位置することができ、かつ、第1環状面108aは仮想水平面「P」に対して角度を付けられることができる。具体的には、第1環状面108aは、仮想水平面「P」に対して凸形状であることができる。すなわち、第1環状面108aは、仮想水平面「P」に対して、ファスナ100の半径方向内側の方向に上に傾斜する。第1環状面108aは、仮想水平面に対して2°~10°の範囲内の凸角θ(すなわち、仮想水平面「P」に対して、180°未満の角度)を有し、図4に示すように、好ましくは5°の凸角θを有する。
【0024】
[0035] この凸角θは、取り付け中に金属パネルが係合することができる適切な表面を生成するという技術的な利点を提供する。具体的には、従来のファスナは、環状面と仮想水平面との間に設けられた凹角を有する。こうした構成は、以前に構成された金属パネルに受け入れ可能である。しかしながら、上述したように、金属パネルは現在、改善された強度品質を提供するために強化された(例えば、熱処理された)新規な軽量の材料(例えば、アルミニウム、鋼など)から製造されている。これらの新規な金属パネルはより薄く、より軽量で、より強度が高いが、そうした金属パネルの相対的により硬い基材が、取り付け中の材料の伸長を少なくすることができる。すなわち、ファスナの取り付け中に基材(すなわち、金属パネル)が容易に流動(すなわち、塑性変形)しないので、パンチ部分及び/又は環状面と、相手方の基材(すなわち、金属パネル)との間にギャップ(すなわち、空きスペース)を生じさせる。これらのギャップ又はボイドは、ファスナと金属パネルとの間の取り付け強度を低下させ、最終的にはそれらの間の不十分な接合部接続をもたらす。本明細書で議論するファスナ100の構成、特に上述した凸角の構成は、ファスナ100と金属パネルとの間に形成される潜在的なボイドを大幅に低減又は排除さえする。すなわち、基材は、環状面とパンチ部分の外周縁部との間の角度を介して形成されたアンダーカット領域内に流動する必要はない。
【0025】
[0036] 図1に戻ると、パンチ部分104の外周面114は、本体部分102の環状面108とパンチ部分104の遠位周縁部117(すなわち、第2端面104aとパンチ部分104の外周面114とが交差する縁部)との間の中心軸「X」の方向に延在する。さらに、パンチ部分104の外周面114は円筒形の輪郭を有する。すなわち、パンチ部分104の外周面114は、好ましくは、丸みを帯びた表面を集合的に生み出す、Rを有する隅部を有する。別の言い方をすれば、外周面114は、好ましくは、パンチ部分104の外周面114を境界付ける(すなわち、取り囲む)仮想円周面「C」(図5に示す)を越えて延在する鋭い縁部を有しない。
【0026】
[0037] 鋭利な縁部を有しない円筒形の輪郭を有するパンチ部分104の外周面114は、取り付け中にファスナ100及び/又は金属パネルに形成される欠陥(例えば、亀裂)の可能性を大幅に低減又は排除さえする。上述したように、金属パネルは現在、相対的により強度が高く、より硬い材料(例えば、熱間成形鋼)から製造されるので、取り付け中に基材が容易に流動(すなわち、塑性変形)しない。したがって、パンチ部分104の外周面114上の鋭利な縁部又は尖った縁部は、取り付け中にそれに加えられる力に起因した亀裂の影響を受けやすい。したがって、パンチ部分104の外周面114に鋭利な縁部又は尖った縁部を有しない、本明細書に記載のファスナ100は、上述した問題から取り除かれ、かつ、欠陥を有する完成品を生産する可能性は低い。
【0027】
[0038] 示すように、複数の離間した切り欠き118が、パンチ部分104の外周面114に形成され、かつ、パンチ部分104を集合的に取り囲むように配列される。一実施形態では、複数の切り欠き118は、互いに等間隔に離間され、かつ、すべて同じ構成を有する。具体的には、各切り欠き118は、パンチ部分104の外周面114に対して凹面を有する。代替として、複数の切り欠き118は、例えば、1つの切り欠き118のみが凹面を有する場合など、様々な間隔及び/又は構成を有することができる。
【0028】
[0039] パンチ部分104の外周面114は、図1に点線で示すように、複数の離間した柱部分120をさらに備え、各柱部分120は、隣接して間隔を空けて配置された1対の切り欠き118の間のパンチ部分104の円筒形の輪郭を有する外周面114の領域として規定される。複数の離間した柱部分120は、集合的にパンチ部分104を取り囲み、各柱部分120は、環状面108からパンチ部分104の外周面114の遠位周縁部117まで延在する。具体的には、各柱部分120は、隣接して離間した切り欠き118のそれぞれの対の間に配置され、かつ、離間している。
【0029】
[0040] 上述したように、一実施形態では、複数の切り欠き118は、互いに等間隔に離間されるように示される。具体的には、複数の切り欠き118の間に等間隔を提供するのは複数の柱部分120である。したがって、複数の柱部分120は、同様に、互いに等間隔に離間される。さらに上述したように、パンチ部分104の外周面114は、鋭利な縁部を有しない円筒形の輪郭を有する;これは、柱部分120が、隣接して離間した切り欠き118のそれぞれの対の間に配置され、かつ、離間する結果である。すなわち、1対の切り欠き118が互いに直接隣接して配置され、それらの間に何もない場合、1対の隣接する切り欠き118の間に円筒形の輪郭を有する表面はなく、したがって、鋭利な縁部が形成される。
【0030】
[0041] さらに、一実施形態では、パンチ部分104の外周面114は、互いに離間し、かつ、パンチ部分104を集合的に取り囲む複数のブリッジ部分122を備える。具体的には、各ブリッジ部分122は、隣接して離間した1対の柱部分120の間に配置されたパンチ部分104の円筒形の輪郭を有する外周面114の領域として規定される。さらに、各ブリッジ部分122は、パンチ部分104の外周面114の遠位周縁部117と、隣接して離間した柱部分120の対によって境界付けられる切り欠き118との間に軸方向に位置決めされる。このようにして、各ブリッジ部分122は、隣接して離間した柱部分120のそれぞれの対を接続する。
【0031】
[0042] 図5に進むと、ラグ110のうちの1つは、(図1に示すように)丸みを帯びた輪郭を有する接触面124を有する。すなわち、接触面124は、ファスナ100の半径方向「r」に延在する仮想軸に対して湾曲している(すなわち、横方向に、左右に丸みを帯びる)。好ましくは、接触面124の相対的により高い点(仮想水平面「P」に対して)は、その中間点であるが、他の幾何学的形状が検討される。一実施形態では、接触面124は、ファスナ100が取り付けられる金属パネルに係合するように構成され、かつ、仮想水平面「P」に対して、ファスナ100の半径方向外側の方向に下に傾斜する。図示の実施形態に示すように、接触面は、ファスナ100の半径方向外側の方向に、仮想水平面「P」に対して連続的に下に傾斜する。この特定の構成(すなわち、接触面124は、半径方向外側の方向に連続的に下に傾斜する)は、金属パネルのための十分な合わせ面を生成する。すなわち、上述したように、基材(すなわち、金属パネル)は、取り付け中に容易に流動(すなわち、塑性変形)しないので、基材がキャビティ及び/又はボイド内に流動することを必要としない合わせ面をファスナに提供することが重要である。したがって、本明細書に記載のファスナ100の接触面124は、取り付け中に基材が効率的に流動し、かつ、環状面108と結合することを可能にする。さらに、接触面124の構成(すなわち、その空間的配向及び丸みを帯びた輪郭を有する)は、取り付け中にラグ110が変形する可能性を排除する。
【0032】
[0043] 接触面124は第1端部124a及び第2端部124bを有する。第1端部124aは、パンチ部分104の外周面114に隣接して位置決めされ、第2端部124bは、パンチ部分104の外周面114から半径方向外側に位置決めされる。好ましくは、第1端部124aは、パンチ部分104の外周面114で形成され、第2端部124bは、環状面108の周縁部116に配置され、かつ、場合によっては本体部分102の外周面112と境界線を共にする。
【0033】
[0044] 上述したように、一実施形態では、接触面124は、仮想水平面「P」に対して、ファスナ100の半径方向外側の方向に連続的に下に傾斜する。これは、接触面124の表面が、第1端部124aで、仮想水平面「P」に垂直な方向に仮想水平面「P」から第1距離d1離れた結果であり、第1距離dは、接触面124と、仮想水平面「P」に垂直な方向に取られた仮想水平面「P」との間の任意の他の距離(例えば、d又はd)よりも大きい。さらに示すように、接触面124とパンチ部分104の外周面114との間の角度αは鈍角である(すなわち、角度は、90°より大きく、かつ、180°より小さい)。
【0034】
[0045] 一実施形態では、複数のラグ110の各々は、図1に示すように、同じ構成を有することができる。さらに示すように、各ラグ110は、切り欠き118の1つと半径方向に整列される。このようにして、各ラグ110の第1端部124aは、前記ラグ110が半径方向に整列される切り欠き118で形成される。さらに、半径方向に整列されたラグ110及び切り欠き118の総数は、本体部分102の外周面112の面の総数に依存することができ、かつ、各々が本体部分102の外周面112の面と半径方向に整列されることができる。すなわち、例えば、図1及び図2では、ファスナ100は、本体部分102の外周面112を集合的に構築する合計8つの面を備える。このようにして、ファスナ100は、本体部分102の外周面112を形成する8つの面のそれぞれの1つと半径方向に整列された、各々合計8つのラグ110及び切り欠き118をさらに備える。代替として、ラグ110の総数は、切り欠き118及び/又は本体部分102の外周面112の面の総数とは異なり得る。さらに、ラグ110、切り欠き118及び/又は本体部分102の外周面112の面は半径方向に整列される必要はない。例えば、1つのラグ110が、本体部分102の外周面112の1対の隣接する面の間に形成された縁部と半径方向に整列されることができる。
【0035】
[0046] 上述したファスナ100の部品のすべて、具体的には、本体部分102、パンチ部分104及びラグ110は互いに一体的に形成される。すなわち、本体部分102、パンチ部分104及びラグ110はすべて同じ材料から形成される。例えば、ファスナ100は、処理鋼から、かつ、具体的には10B21鋼から製造されることができる。しかしながら、材料の選択は10B21鋼に限定されず、他の適切な材料が使用されてもよい。さらに、ファスナ100の材料は、それが取り付けられる金属パネルの硬度よりも高い硬度を有することが好ましい。ファスナがセルフクリンチングスタッドである場合、スタッドも同様に同じ材料から一体的に形成される。
【0036】
[0047] 図6A図6C及び図7A図7Cを参照して、米国特許第6,220,804号及び第9,322,424号で議論されているものと同様の従来のファスナ100’(図6A図6Cに示す)と、図1図5に関して上で議論した新規なファスナ100(図7A図7Cに示す)とをここで比較する。
【0037】
[0048] 図6Aに示すように、従来のファスナ100’のパンチ部分104’は、鋭利な輪郭を有する外周面114’を有する。すなわち、外周面114’上に形成された切り欠き118’(又はアンダーカット部分)は、各切り欠き118’の側端が、隣接して配列された切り欠き118’のそれぞれの側端に係合(すなわち、交差)するように、互いに直接隣接して配置される。こうした構成により、鋭利な縁部が形成される。この構成は、これらの金属パネルが、より延性を有し、かつ、完成した接合部接続に破損や亀裂を生じさせることなく、鋭利な縁部の周りを流動する(すなわち、塑性変形する)ことができるので、従来のファスナ100’を従来の金属パネル(すなわち、低張力グレード材料から製造されたもの)に取り付けるのに有益である。しかしながら、上述したように、従来のファスナ100’は、強度が向上した軽量の材料から形成された新規な金属パネルでの良好な取り付け及び/又は長期間の使用に適していない。
【0038】
[0049] 図7Aを参照して、比較すると、新規なファスナ100のパンチ部分104の外周面114は、丸みを帯びた輪郭を有する。すなわち、従来のファスナ100’に関して上述した鋭利な縁部が除去されている(すなわち、柱部分120が、隣接して離間した1対の切り欠き118を離間させた結果として)。これにより、新規なファスナ100のパンチ部分104の平坦な表面が20%減少する。上で議論したように、この構成は、新規な金属パネル(すなわち、伸長の可能性が制限されている)の基材が、それらの間の良好な接合部接続を提供する方法でファスナ100に接触及び係合することを可能にする。
【0039】
[0050] 図6A及び図6Cに戻ると、従来のファスナ100’は、従来の金属パネルに最適な輪郭を有するラグ110’を含む。すなわち、ラグ110’の各々は、鋭利な縁部と、基材を、接触面124’の中央の凹んだ領域に向かって、かつ、パンチ部分104’の基部に向かって、流動させるために(すなわち、塑性変形中に)、凹んだ(例えば、トラフ形状である)接触面124’と、を有する。上述したように、この構成は、新規で軽量の金属パネルではうまく機能しない。具体的には、取り付け中にラグ110’が変形する及び/又は相手方の基材に穿孔することができない傾向がある。
【0040】
[0051] 図7A及び図7Cに関して、新規なファスナ100のラグ110は、従来のファスナ100’のものとは逆になっている。すなわち、ラグ110の各々は、接触面の他のどの部分よりも高い第1端部124a(パンチ部分104の外周面114に隣接して配置される)を有する接触面124を有する。このようにして、各ラグ110は、中心軸「X」に対して半径方向外側の方向に(すなわち、塑性変形中に)基材の流動を導く。さらに、各ラグ110は、丸みを帯びた輪郭を有する(すなわち、従来のファスナ100’の鋭利な隅部/縁部が除去されている)。さらに、各ラグ110の総容積(すなわち、高さ、幅及び長さ)は、従来のファスナ100’のラグ110’に対して80%減少している。これらの変化によって、取り付け中にラグ110が変形する可能性を大幅に低減及び/又は排除する。
【0041】
[0052] ここで図6Bに進むと、従来のファスナ100’の第2端面104a’は距離d4’を有する。すなわち、距離d4’は、遠位周縁部117’における第2端面104a’の半径と、内側周縁部での第2端面104a’の半径との間の差である。比較すると、新規なファスナ100(上で議論した)の第2端面104aは、相対的により大きな距離dを有する。従来のファスナ100’の相対的により小さい距離d4’は、従来の金属パネル(すなわち、より低い引張材料から製造されたもの)により小さな穿孔負荷を生成するのに最適である。しかしながら、そうした構成は、新規な金属パネル(すなわち、より高い強度特性を有するもの)を良好に穿孔するための柱強度を提供しない。さらなる比較において、新規なファスナ100の第2端面104a(すなわち、遠位周縁部117で取られる)の直径は、従来のファスナ100’の直径から18%増加し、かつ、第2端面104aの距離dの総面積は、従来のファスナ100’と比較して35%増加した。これらの変化によって、新規なファスナ100に、新規な金属パネルを良好に穿孔するために必要な柱強度が提供される。
【0042】
[0053] 図6Cに関して、従来のファスナ100’の環状面108’は、仮想水平面に対して凹角(例えば、5°~15°の間)を有する。この凹角は、従来の金属パネル(取り付け中)の基材に影響を与え(すなわち、導き)、それと係合するためにパンチ部分104’の基部に向かって流動する。これにより、従来のファスナ100’は、より大きな穿孔用途の厚さ範囲を有することを可能にする。しかしながら、従来のファスナ100’を新規な金属パネルに取り付けるとき、この凹角は、パンチ部分104’及び本体部分102’が相互作用する領域に変形及び亀裂を生じさせる可能性がある。比較すると、図4に関して上述したように、環状面108の第1環状面108aは、仮想水平面に対して2°~10°の範囲内の凸角θを有することができ、好ましくは5°の凸角θを有する。この凸角θは、新規な金属パネルの相手方の材料と新規なファスナ100との間の十分な係合を促進して、最適な接合部強度特性を達成する。
【0043】
[0054] 最後に、図6A及び図6Cに関して、従来のファスナ100’の各切り欠き118’は相対的に大きなアンダーカットを含む。すなわち、各切り欠き118’は、切り欠き118’の上部から下部に向かって半径方向内側に徐々に傾斜している。これにより、取り付け中に基材が流入するための相対的に大きなキャビティが作成され、その結果、従来の金属パネルにおいてより良好な押し出し及びトルクアウト性能をもたらす。比較すると、新規なファスナ100のパンチ部分104の切り欠き118の後方テーパが減少した。具体的には、従来のファスナ100’のものに対して、新規なファスナ100の切り欠き118の後方テーパが25%減少する。
【0044】
[0055] (従来のファスナ100’に対する)新規なファスナ100における上述した変更は、新規な金属パネルに取り付けられた後、はるかに優れたトルクアウト性能を可能にする。具体的には、表1(以下に示す)を参照すると、従来のファスナ100及び新規なファスナ100の両方が、新規で軽量の金属パネルに取り付けられ、かつ、各々についてトルクアウト仕様を決定するための試験が実行された。試験中に使用された金属パネルは約780Mpaの基材硬度を有していた。示すように、従来のファスナ100’は、69.8ft/lbs(94.6Nm)の平均トルクアウト仕様を有する一方で、新規なファスナ100は、89.6ft/lbs(121.5Nm)の相対的により大きな平均トルクアウト仕様を有する。このトルクアウト仕様の増加は、従来のファスナ100’に対して新規なファスナ100に上述した変化が加えられた結果である。
【表1】
【0045】
[0056] さらに、従来のファスナ100’は、新規で軽量の金属パネルに良好に取り付けること及び許容可能なトルクアウト仕様を達成することに関して、現在の工業規格を満たすことができない。それらの製品にセルフクリンチング及びセルフピアシングファスナを採用する周知の消費者は、1mm超及び1mmまで、かつ、4mmを含み、かつ、M12のネジサイズを有する材料の厚さについての平均3標準偏差(「平均3SD」)が約90Nmであることに概ね同意する。表1に示すように、従来のファスナ100’は78.6Nmの平均3SDを有し、これは、一般に承認された工業規格をはるかに下回っている。対照的に、新規なファスナ100は、99.8Nmの平均3SDを有し、これは、一般に承認された工業規格を満たし、かつ、それを超える。したがって、(従来のファスナ100’に対する)新規なファスナ100の上述した変更は、性能の改善をもたらすだけでなく、一般に承認された工業規格を満たす;従来のファスナ100’では不可能なことである。
【0046】
[0057] さらに、簡潔に上述したように、図8に関して、ファスナ100は、セルフピアシング及び/又はセルフクリンチングスタッドであってもよい。こうした構成では、ファスナ100は本体部分102及びパンチ部分104を備える。シャンク126は、中心軸「X」に沿ってファスナ100の第2端面104aから外側に延在する。他の例では、シャンク126は、中心軸「X」に沿ってファスナ100の第1端面102aから外側に延在してもよい。示すように、シャンク126の少なくとも一部はネジ切りされてもよい。代替として、シャンク126はネジ切りされなくてもよい。
【0047】
[0058] 本発明は、上述した例示的な実施形態を参照して記載された。本明細書を読んで理解する際に他のものへの修正及び変更が生じる。本発明の1以上の態様を組み込んだ例示的な実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲内に入る限り、そのようなすべての修正及び変更を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8