(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】亜鉛二次電池及びモジュール電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20231109BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20231109BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20231109BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20231109BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20231109BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M10/28 Z
H01M50/176
H01M50/55 101
H01M4/74 A
H01M4/24 H
(21)【出願番号】P 2022510425
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011397
(87)【国際公開番号】W WO2021193436
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020050832
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】松矢 淳宣
(72)【発明者】
【氏名】八木 毅
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0055037(US,A1)
【文献】特開2001-210303(JP,A)
【文献】特開2018-026205(JP,A)
【文献】特表2010-518585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/531 - 541
H01M 10/28
H01M 50/176
H01M 50/55
H01M 4/74
H01M 4/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体の周囲に配置された正極活物質層と、電解液を保持し前記正極活物質層を被覆するか包み込む正極側保液部材と、を備える正極板と、
エキスパンドメタルからなる負極集電体と、前記負極集電体の周囲に配置された負極活物質層と、前記電解液を保持し前記負極活物質層を被覆するか包み込む負極側保液部材と、前記負極側保
液部材を挟んで前記負極活物質層を被覆するか包み込むセパレータと、を備え、前記正極板に重ねられる負極板と、
を備える積層体と、
前記正極集電体に接続され前記積層体から突出する正極集電タブと、
前記負極集電体に接続され前記積層体から突出する負極集電タブと、
を備え、
前記正極集電タブと前記負極集電タブとが前記積層体から突出する方向が同じである
亜鉛二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の亜鉛二次電池であって
前記積層体は、長方形状の平面形状を有し、かつ、前記平面形状の一辺を構成する端部を備え、
前記正極集電タブ及び前記負極集電タブは、前記端部から突出する
亜鉛二次電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の亜鉛二次電池であって、
前記積層体は、
前記正極集電体をそれぞれに備える複数の前記正極板と、
前記負極集電体をそれぞれに備える複数の前記負極板と、
を備え、
前記複数の正極板と前記複数の負極板とが交互に重ねられてなり、
それぞれが前記正極集電体に接続され前記積層体から突出する複数の前記正極集電タブと、
それぞれが前記負極集電体に接続され前記積層体から突出する複数の前記負極集電タブと、
を備え、
前記複数の正極集電タブと前記複数の負極集電タブとが前記積層体から突出する方向が同じであり、
前記複数の前記正極集電タブの先端が集約されており、
前記複数の前記負極集電タブの先端が集約されている
亜鉛二次電池。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の亜鉛二次電池であって、
前記正極集電タブは、
前記正極集電体に重ねられ前記正極集電体に接続される正極集電タブ根元部と、
前記正極集電体に重ねられず前記正極集電タブが前記積層体から突出する方向と垂直をなす方向について前記正極集電タブ根元部の幅と同じ幅を有する正極集電タブ先端部と、
を備え、
前記負極集電タブは、
前記負極集電体に重ねられ前記負極集電体に接続される負極集電タブ根元部と、
前記負極集電体に重ねられず前記負極集電タブが前記積層体から突出する方向と垂直をなす方向について前記負極集電タブ根元部の幅と同じ幅を有する負極集電タブ先端部と、
を備える亜鉛二次電池。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の亜鉛二次電池であって、
前記正極集電タブは、
前記正極集電体に重ねられ前記正極集電体に接続される正極集電タブ根元部と、
前記正極集電体に重ねられず前記正極集電タブが前記積層体から突出する方向と垂直をなす方向について前記正極集電タブ根元部の幅より狭い幅を有する正極集電タブ先端部と、
を備え、
前記負極集電タブは、
前記負極集電体に重ねられ前記負極集電体に接続される負極集電タブ根元部と、
前記負極集電体に重ねられず前記負極集電タブが前記積層体から突出する方向と垂直をなす方向について前記負極集電タブ根元部の幅より狭い幅を有する負極集電タブ先端部と、
を備える亜鉛二次電池。
【請求項6】
請求項1ないし請求項
5のいずれかに記載の亜鉛二次電池であって、
開口を有し、前記積層体、前記正極集電タブ及び前記負極集電タブを収容するケースと、
前記開口を塞ぐフタと、
を備え、
前記フタは、
フタ本体と、
前記フタ本体を貫通し、前記正極集電タブの先端に接続される正極端子と、
前記フタ本体を貫通し、前記負極集電タブの先端に接続される負極端子と、
を備える亜鉛二次電池。
【請求項7】
複数の単電池を備え、
前記複数の単電池の各々は、請求項
6に記載の亜鉛二次電池であり、
前記フタ本体は、外面を有し、
前記複数の単電池のそれぞれに備わる複数の前記フタ本体の外面は、同じ第1の方向を向き、
前記複数の単電池は、前記第1の方向と垂直をなす第2の方向に配列される
モジュール電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛二次電池及びモジュール電池に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の亜鉛二次電池は、複数の正極板と複数の負極板とが重ねられた積層体を備える(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された亜鉛二次電池においては、正極板と負極板とが交互に積層されている(段落0012)。また、正極集電タブと負極集電タブとが互いに反対方向に突出している(段落0011)。
【0003】
このように正極集電タブと負極集電タブとが積層体から互いに反対の方向に突出する場合、正極集電体と負極集電体とが電気的に短絡することへの防止対策が必要な箇所が、積層体の2方向に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされた。本発明は、亜鉛二次電池において、正極集電体と負極集電体との電気的短絡への防止対策が必要な箇所を減らすことを、目的とする。
【0006】
本発明は、亜鉛二次電池、及び亜鉛二次電池を備えるモジュール電池に関する。
【0007】
亜鉛二次電池は、積層体、正極集電タブ及び負極集電タブを備える。積層体は、正極板及び負極板を備える。正極板は、正極集電体と、前記正極集電体の周囲に配置された正極活物質層と、電解液を保持し前記正極活物質層を被覆するか包み込む正極側保液部材と、を備える。負極板は、エキスパンドメタルからなる負極集電体と、前記負極集電体の周囲に配置された負極活物質層と、前記電解液を保持し前記負極活物質層を被覆するか包み込む負極側保液部材と、前記負極側保液部材を挟んで前記負極活物質層を被覆するか包み込むセパレータと、を備える。負極板は、正極板に重ねられる。正極集電タブは、正極集電体に接続される。負極集電タブは、負極集電体に接続される。正極集電タブ及び負極集電タブは、積層体から同じ方向に突出する。
【0008】
本発明によれば、正極集電タブ及び負極集電タブが積層体から同じ方向に突出する。これにより、正極集電体と負極集電体との電気的な短絡への防止対策が必要な箇所を、減らすことができる。
【0009】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す斜視図である。
【
図5】亜鉛二次電池に備わる被覆付き正極を模式的に示す斜視図である。
【
図6】亜鉛二次電池に備わる被覆付き負極を模式的に示す斜視図である。
【
図7】亜鉛二次電池に備わる正極の第1の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図8】亜鉛二次電池に備わる負極の第1の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】亜鉛二次電池に備わる正極の第2の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図10】亜鉛二次電池に備わる負極の第2の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】亜鉛二次電池に備わる正極の第3の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図12】亜鉛二次電池に備わる負極の第3の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図13】亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図14】参考例の亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図15】参考例の亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図16】参考例の亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図17】亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図18】亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図19】亜鉛二次電池に備わる積層電池の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図20】モジュール電池を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1 亜鉛二次電池
図1は、本発明の実施の形態に係る亜鉛二次電池1を模式的に示す斜視図である。
図2及び
図3は、亜鉛二次電池1を模式的に示す断面図である。
図2は、
図3に描かれる切断線B-Bの位置における断面図である。
図3は、
図2に描かれる切断線A-Aの位置における断面図である。
【0012】
図1、
図2及び
図3に示す亜鉛二次電池1は、ニッケル亜鉛電池である。亜鉛二次電池1が、ニッケル亜鉛電池以外の亜鉛二次電池であってもよい。
【0013】
亜鉛二次電池1は、
図1、
図2及び
図3に示すように、ケース11及びフタ12を備える。また、亜鉛二次電池1は、
図2及び
図3に示すように、積層電池13を備える。
【0014】
積層電池13は、複数の被覆付き正極131及び複数の被覆付き負極132(いずれも
図4参照)が積層された積層体101と、複数の正極集電タブ102と、複数の負極集電タブ103とを備える。すなわち、亜鉛二次電池1は、積層体101と、複数の正極集電タブ102と、複数の負極集電タブ103とを備える。
【0015】
複数の正極集電タブ102及び複数の負極集電タブ103は、積層体101から突出する。
図2には、一の正極集電タブ102と一の負極集電タブ103が突出する様子が示されている。後述するように、複数の正極集電タブ102の先端は集約されている。また、複数の負極集電タブ103の先端は集約されている。
【0016】
ケース11は、開口11aを有する。ケース11は、積層電池13(積層体101、複数の正極集電タブ102及び複数の負極集電タブ103)を収容する。フタ12は、開口11aを塞ぐ。これにより、ケース11及びフタ12が、密閉空間を有する密閉容器を構成する。また、積層電池13が、密閉空間に配置される。
【0017】
フタ12は、
図1、
図2及び
図3に示すように、フタ本体111、正極端子112及び負極端子113を備える。
【0018】
ケース11及びフタ本体111は、電解液に対する耐性を有する絶縁体からなる。絶縁体は、望ましくは樹脂であり、さらに望ましくはポリオレフィン樹脂、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂又は変性ポリフェニレンエーテル樹脂であり、特に望ましくはABS樹脂又は変性ポリフェニレンエーテル樹脂である。
【0019】
ケース11は、直方体箱状の形状を有しており、係るケース11に、平面形状が板状かつ長方形状である積層体101が収容されてなる。より詳細には、ケース11は、
図1、
図2、及び
図3に示すように、側壁121、側壁122、側壁123、側壁124及び底壁125を備える。側壁121及び側壁122は、積層体101と平行をなす。側壁123、側壁124及び底壁125は、積層体101と垂直をなす。側壁121と側壁122とは、積層電池13を挟んで互いに対向する。側壁123と側壁124とは、積層電池13を挟んで互いに対向する。開口11aと底壁125とは、積層電池13を挟んで互いに対向する。側壁123、側壁124及び底壁125は、側壁121の端部と側壁122の端部とを結ぶ。開口11aは、側壁121の端部と側壁122の端部との間に形成される。
【0020】
正極端子112及び負極端子113は、導電体からなる。導電体は、望ましくは金属又は合金である。正極端子112及び負極端子113は、絶縁体からなるフタ本体111を貫通させて配置されてなる。
【0021】
正極端子112は、複数の正極集電タブ102の先端に接続されてなる。また、負極端子113は、複数の負極集電タブ103の先端に接続されてなる。これにより、正極端子112は、複数の正極集電タブ102に電気的に接続されてなる。また、負極端子113は、複数の負極集電タブ103に電気的に接続されてなる。これらの電気的接続が確立されていることにより、亜鉛二次電池1においては、正極端子112から複数の正極集電タブ102、積層体101及び複数の負極集電タブ103を経由して負極端子113に向かう充電電流が流れる。また、負極端子113から複数の負極集電タブ103、積層体101及び複数の正極集電タブ102を経由して正極端子112に向かう放電電流も流れる。
【0022】
2 積層電池
図4は、亜鉛二次電池1に備わる積層電池13の主要部を模式的に示す斜視図である。
図5は、亜鉛二次電池1に備わる被覆付き正極131を模式的に示す斜視図である。
図6は、亜鉛二次電池1に備わる被覆付き負極132を模式的に示す斜視図である。
【0023】
積層電池13は、
図4に示すように、積層体101を構成する複数の被覆付き正極131及び複数の被覆付き負極132を備える。
【0024】
複数の被覆付き正極131及び複数の被覆付き負極132は、それぞれの1つずつが交互に配置されることによって互いに重ねられている。ある被覆付き正極131とこれに隣接する被覆付き負極132は、積層電池13を構成するひとつの電池を構成する。被覆付き正極131の数及び被覆付き負極132の数は、亜鉛二次電池1の仕様に応じて増減されてよい。ただし、発電効率を高める観点からは、被覆付き正極131の数と被覆付き負極132の個数を同じするよりも、
図4に示すように被覆付き負極132の数を被覆付き正極131よりも1つ多くし、被覆付き正極131の両側に被覆付き負極132が位置するように積層体101を構成することが好ましい。
【0025】
それぞれの被覆付き正極131は、正極141と、該正極141を被覆する正極被覆142とを備える。それぞれの正極141は、正極板151及び正極集電タブ102を備える。また、それぞれの被覆付き負極132は、負極143と、該負極143を被覆する負極被覆144とを備える。それぞれの負極143は、負極板153及び負極集電タブ103を備える。すなわち、積層体101は、それぞれが正極141を構成する複数の正極板151と、それぞれが負極143を構成する複数の負極板153とを備える。
【0026】
図4に示す場合においては、積層体101の端部101Y1の相異なる位置において複数の正極集電タブ102と複数の負極集電タブ103とがそれぞれに突出している。端部101Y1は、積層体101のなす長方形状の平面形状において一辺を構成する。
【0027】
それぞれの正極集電タブ102は、積層体101を厚さ方向から平面視した場合の同じ位置に配置されている。それゆえ、積層体101においては、複数の正極集電タブ102が、厚さ方向から平面視した場合の同じ位置から同じ方向に向けて突出している。係る態様にて突出してなる複数の正極集電タブ102の先端は集約されて互いに電気的に接続されている。
【0028】
また、それぞれの負極集電タブ103も、積層体101を厚さ方向から平面視した場合の同じ位置に配置されている。それゆえ、積層体101においては、複数の負極集電タブ103も、厚さ方向からの平面視した場合の同じ位置から同じ方向に向けて突出している。係る態様にて突出してなる複数の負極集電タブ103の先端は集約されて互いに電気的に接続されており、さらには負極集電板15と電気的に接続されている。
【0029】
複数の正極集電タブ102の突出位置と複数の負極集電タブ103の突出位置は、それぞれの集電タブが積層体101から突出する方向DY1と垂直をなす方向DXにおいて離隔している。これにより、複数の負極集電タブ103が複数の正極集電タブ102と電気的に短絡することは抑制されてなる。
【0030】
このように、本実施の形態に係る亜鉛二次電池1においては、複数の正極集電タブ102と複数の負極集電タブ103とが積層体101から同じ方向DY1に突出している。これにより、下述するように、正極集電体と負極集電体との電気的な短絡への防止対策が必要な箇所が、削減されてなる。例えば、
図2及び
図3に示す場合であれば、端部101Y1の付近においては当該対策が必要であるものの、端部101Y1と対向する端部101Y2の付近においては当該対策が不要となっている。
【0031】
3 正極及び負極の構造例
図7は、亜鉛二次電池1に備わる正極141の第1の構造例を模式的に示す斜視図である。
図8は、亜鉛二次電池1に備わる負極143の第1の構造例を模式的に示す斜視図である。
【0032】
図7に示すように、第1の構造例において、正極板151は正極集電体171及び正極活物質層172を備える。また、
図8に示すように、負極板153は負極集電体174及び負極活物質層175を備える。
【0033】
正極集電体171には正極集電タブ102が接続されてなる。また、負極集電体174には負極集電タブ103が接続されてなる。
【0034】
正極活物質層172は、正極集電体171の周囲に配置されている。また、負極活物質層175は、負極集電体174の周囲に配置されている。ただし、正極集電タブ102の接続部分を含む正極集電体171の一方辺側の帯状領域には、正極活物質層172は配置されない。また、負極集電タブ103の接続部分を含む負極集電体174の一方辺側の帯状領域には、負極活物質層175は配置されない。
【0035】
正極集電タブ102及び負極集電タブ103は、タブリードにより構成される。正極集電タブ102は、
図7に示すように、正極集電タブ根元部181及び正極集電タブ先端部182を備える。また、負極集電タブ103は、
図8に示すように、負極集電タブ根元部183及び負極集電タブ先端部184を備える。
【0036】
係る場合、タブリードは、導電体からなり、望ましくは金属又は合金からなる。例えば、正極集電タブ102を構成するタブリードは、ニッケルにて設けることができる。また、負極集電タブ103を構成するタブリードは、銅にて設けることができる。タブリードは、望ましくは0.05mm以上0.20mm以下の厚さを有し、さらに望ましくは0.10mm以上0.15mm以下の厚さを有する。
【0037】
正極集電タブ根元部181は、正極集電体171に重ねられ、正極集電体171に接続される部位である。正極集電タブ先端部182は、正極集電体171とは重なりを有さず、積層体101から実際に突出する部位である。また、負極集電タブ根元部183は、負極集電体174に重ねられ、負極集電体174に接続される部位である。負極集電タブ先端部184は、負極集電体174とは重なりを有さず、積層体101から実際に突出する部位である。
【0038】
正極集電タブ102は、長方形状の平面形状を有する。正極集電タブ先端部182は、方向DXについて、正極集電タブ根元部181と同じ幅を有する。また、負極集電タブ103も、長方形状の平面形状を有する。負極集電タブ先端部184は、当該方向DXについて、負極集電タブ根元部183と同じ幅を有する。
【0039】
図9は、亜鉛二次電池1に備わる正極141の第2の構造例を模式的に示す斜視図である。
図10は、亜鉛二次電池1に備わる負極143の第2の構造例を模式的に示す斜視図である。
【0040】
正極141及び負極143の第2の構造例は、主に下述する点で正極141及び負極143の第1の構造例と相違する。下述されない点については、正極141及び負極143の第1の構造例において採用される構成と同様の構成が正極141及び負極143の第2の構造例においても採用される。
【0041】
正極141の第2の構造例においては、方向DXにおける正極集電タブ先端部182の幅が、正極集電タブ根元部181の幅よりも狭くなっている。また、正極集電タブ先端部182は、当該方向DXについて、正極集電タブ根元部181の一端の付近に接続されてなる。このため、正極集電タブ102は、L字状またはT字状の平面形状を有する。同様に、方向DXにおける負極集電タブ先端部184の幅も、負極集電タブ根元部183の幅よりも狭くなっている。また、負極集電タブ先端部184は、当該方向DXについて、負極集電タブ根元部183の一端の付近に接続されてなる。このため、負極集電タブ103は、L字状またはT字状の平面形状を有する。
【0042】
図11は、亜鉛二次電池1に備わる正極141の第3の構造例を模式的に示す斜視図である。
図12は、亜鉛二次電池1に備わる負極143の第3の構造例を模式的に示す斜視図である。
【0043】
正極141及び負極143の第3の構造例は、主に下述する点で正極141及び負極143の第1の構造例と相違する。下述されない点については、正極141及び負極143の第1の構造例において採用される構成と同様の構成が正極141及び負極143の第3の構造例においても採用される。
【0044】
正極141及び負極143の第3の構造例においては、正極集電タブ102は、正極集電体171を構成する材質と同じ材質により構成され、正極集電体171から連続する。また、負極集電タブ103は、負極集電体174を構成する材質と同じ材質により構成され、負極集電体174から連続する。
【0045】
正極141の第1及び第2の構造例は、正極141の第3の構造例と比較して、正極集電タブ102と正極集電体171とを一体化した複雑な形状を有する部材を作製する必要がなく、正極141の製造の効率を高くすることができるという利点を有する。また、負極143の第1及び第2の構造例は、負極143の第3の構造例と比較して、負極集電タブ103と負極集電体174とを一体化した複雑な形状を有する部材を作製する必要がなく、負極143の製造の効率を高くすることができるという利点を有する。
【0046】
4 各要素の詳細
図13は、亜鉛二次電池1に備わる積層電池13の主要部を模式的に示す断面図である。
【0047】
積層電池13は、
図13に示すように、正極集電体171、正極活物質層172、正極側保液部材191、負極集電体174、負極活物質層175、負極側保液部材192及びセパレータ193を備える。また、積層電池13は、正極側保液部材191及び負極側保液部材192に保持させる態様にて電解液を備える。正極側保液部材191は、上述した正極被覆142を構成する。負極側保液部材192及びセパレータ193は、上述した負極被覆144を構成する。
【0048】
正極集電体171は、板状又は箔状の形状を有する。正極集電体171は、導電体からなる。導電体は、望ましくはニッケル又はニッケル合金からなる。正極集電体171は、望ましくは多孔質体からなり、さらに望ましくは発泡体からなる。係る場合、正極集電体171と正極活物質層172とが互いに接触する界面の面積を広くすることができ、集電の効率を高くすることができる。
【0049】
図13においては正極集電体171を破線にて描いているが、これは、正極集電体171が多孔質体からなる場合には正極集電体171の空孔に正極活物質層172に含まれる正極活物質等が侵入することになり、そのような場合には正極集電体171と正極活物質層172とを分離した構成要素として捉えることが困難になることを、踏まえたものである。
【0050】
正極活物質層172は、正極活物質を含む。正極活物質は、望ましくは水酸化ニッケル及びオキシ水酸化ニッケルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。正極活物質層172は、例えば、正極活物質及び分散媒を含むペーストを正極集電体171の上に均一に塗布して塗布膜を形成し、形成した塗布膜から分散媒を蒸発させることにより、形成される。正極活物質層172あるいは上記ペーストがバインダを含んでもよい。正極集電体171及び正極活物質層172を備える複合体に対してプレス処理が行われてもよい。係る場合、正極活物質層172が脱落することが抑制され、正極141の電極密度が向上する。
【0051】
亜鉛二次電池1は、正極側保液部材191を備える。正極側保液部材191は、シート状の形状を有する。正極側保液部材191は、正極活物質層172の全体を被覆する。正極側保液部材191が、正極活物質層172の全体を包み込んでもよい。正極側保液部材191は、電解液を保持する。これにより、正極活物質層172の全体に電解液が行き渡るようになっている。正極側保液部材191は、望ましくは不織布、吸水性樹脂、保液樹脂、多孔シート又はスペーサからなり、さらに望ましくは不織布からなる。正極側保液部材191を不織布にて設ける場合、正極141における電極反応を促進することができ、被覆付き正極131を低コストで製造することができる。正極側保液部材191は、望ましくは0.01mm以上0.20mm以下の厚さを有する。係る場合、被覆付き正極131のサイズが大きくなることを抑制しながら正極側保液部材191に十分な量を有する電解液を保持させることができる。
【0052】
負極集電体174は、板状、箔状又は網状の形状を有する。負極集電体174は、導電体からなる。導電体は、望ましくは銅からなる。負極集電体174は、望ましくは箔、エキスパンドメタル又はパンチングメタルからなり、さらに望ましくはエキスパンドメタルからなる。負極集電体174がエキスパンドメタルにて設ける場合、負極集電体174に十分な量を有する負極活物質層175を保持させることができる。
【0053】
負極活物質層175は、負極活物質を含む。負極活物質は、望ましくは亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに望ましくは亜鉛、酸化亜鉛及び亜鉛酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含み、特に望ましくは亜鉛及び酸化亜鉛を含む。負極活物質は、望ましくは粉末状の性状を有する。係る場合、負極活物質が露出する表面の面積を広くすることができ、これにより、負極143に流すことができる電流を大きくすることができる。負極活物質層175は、例えば、負極活物質の粉末を含む被塗布物を負極集電体174の上に塗布することにより、形成される。負極活物質層175あるいは被塗布物がバインダを含んでもよい。バインダは、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子を含む。負極集電体174及び負極活物質層175を備える複合体に対してプレス処理が行われてもよい。係る場合、負極活物質層175が脱落することが抑制され、負極143の電極密度が向上する。負極活物質層175がゲル状の性状を有してもよい。負極活物質層175がゲル状の性状を有する場合は、負極活物質層175に、負極活物質に加えて電解液及び増粘剤が含められる。増粘剤は、望ましくはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はアルギン酸を含み、さらに望ましくはポリアクリル酸塩を含む。増粘剤がポリアクリル酸塩を含む場合は、強アルカリ性を有する電解液に対する増粘剤の耐薬品性が高められる。
【0054】
負極活物質が亜鉛合金を含む場合は、強アルカリ性を有する電解液への亜鉛の自己溶解速度を遅らせることができる。係る場合、負極143における水素ガスの発生が抑制される。これにより、亜鉛二次電池1の安全性が高められる。亜鉛合金は、望ましくは水銀及び鉛を含まない無汞化亜鉛合金である。亜鉛合金は、望ましくは、0.01質量%以上0.1質量%以下のインジウム、0.005質量%以上0.02質量%以下のビスマス及び0.0035質量%以上0.015質量%以下のアルミニウムを含む。亜鉛合金がインジウム及びビスマスを含む場合、負極143の放電性能が高められる。
【0055】
負極活物質が亜鉛合金を含み粉末状の性状を有する場合は、負極活物質は、望ましくは短径で3μm以上100μm以下の平均粒径を有する。係る場合、負極活物質が露出する表面の面積を広くすることができるとともに、負極活物質、電解液及びゲル化剤を均一に混合することが容易になり、亜鉛二次電池1を製造する際の負極活物質の取り扱いが容易になる。
【0056】
亜鉛二次電池1は、負極側保液部材192を備える。負極側保液部材192は、シート状の形状を有する。負極側保液部材192は、負極活物質層175の全体を被覆する。負極側保液部材192が、負極活物質層175の全体を包み込んでもよい。負極側保液部材192は、電解液を保持する。これにより、負極活物質層175の全体に電解液が行き渡るようになっている。
【0057】
負極側保液部材192は、望ましくは不織布、吸水性樹脂、保液樹脂、多孔シート又はスペーサからなり、さらに望ましくは不織布からなる。負極側保液部材192を不織布にて設ける場合、負極143における電極反応を促進することができ、被覆付き負極132を低コストで製造することができる。
【0058】
負極側保液部材192は、望ましくは0.01mm以上0.20mm以下の厚さを有し、さらに望ましくは0.02mm以上0.20mm以下の厚さを有し、特に望ましくは0.02mm以上0.15mm以下の厚さを有し、より望ましくは0.02mm以上0.10mm以下の厚さを有し、最も望ましくは0.02mm以上0.06mm以下の厚さを有する。負極側保液部材192がこれらの範囲の厚さを有する場合、被覆付き負極132の全体のサイズを無駄なくコンパクトに抑制しながら負極側保液部材192に十分な量の電解液を保持させることができる。
【0059】
正極側保液部材191及び負極側保液部材192に保持される電解液は、望ましくは水酸化物の水溶液からなる。水酸化物は、望ましくはアルカリ金属の水酸化物又は水酸化アンモニウムであり、さらに望ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、特に望ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムであり、最も望ましくは水酸化カリウムである。
【0060】
電解液に亜鉛化合物が溶解させられてもよい。亜鉛化合物は、望ましくは酸化亜鉛又は水酸化亜鉛である。電解液に亜鉛化合物が溶解させられた場合は、負極活物質層175を構成する亜鉛及び/又は酸化亜鉛が電解液に自己溶解することが抑制される。
【0061】
電解液にゲル化剤が添加されてもよい。ゲル化剤は、望ましくは電解液に含まれる溶媒を吸収して膨潤するポリマーからなり、さらに望ましくはポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はでんぷんからなる。電解液にゲル化剤が添加された場合は、電解液がゲル化して電解液がケース11から漏洩することが抑制される。
【0062】
電解液及び正極活物質が混合されて正極合材が形成されていてもよい。電解液及び負極活物質が混合されて負極合材が形成されていてもよい。
【0063】
セパレータ193は、シート状の形状を有する。セパレータ193は、望ましくは、負極側保液部材192を挟んで負極活物質層175を覆うか、又は包み込む。セパレータ193の外縁の1辺又は2辺は、負極集電タブ103を突出させるために開放されている。
【0064】
セパレータ193は、多孔質基材と、多孔質基材の孔を塞ぐ水酸化物イオン伝導層状化合物とを含む。水酸化物イオン伝導層状化合物は、層状複水酸化物(LDH)及び/又は層状複水酸化物(LDH)様化合物である。本明細書においてセパレータ193は、LDH及び/又はLDH様化合物を含むセパレータであって、専らLDH及び/又はLDH様化合物の水酸化物イオン伝導性を利用して水酸化物イオンを選択的に通すものとして定義される。本明細書において「LDH様化合物」は、LDHとは呼べないかもしれないがLDHに類する層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物であり、LDHの均等物といえるものである。もっとも、広義の定義として、「LDH」はLDHのみならずLDH様化合物を包含するものとして解釈することも可能である。
【0065】
セパレータ193においては、水酸化物イオン伝導層状化合物が多孔質基材の孔を塞ぐとともに、多孔質基材を挟んだセパレータ193の上面と下面の間で水酸化物イオン伝導層状化合物が繋がっている。これにより、セパレータ193は、ガス不透過性を呈しつつ、水酸化物イオン伝導性を呈するようになっている。換言すれば、水酸化物イオン伝導性を呈するセパレータとして機能するようになっている。ただし、多孔質基材の孔は完全に塞がれている必要はなく、残留気孔が僅かに存在していてもよい。
【0066】
水酸化物イオン伝導層状化合物は多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれているのが特に好ましい。セパレータ193の厚さは、好ましくは3μm~80μmであり、より好ましくは3μm~60μm、さらに好ましくは3μm~40μmである。
【0067】
一般に、セパレータは、亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、正極板と負極板とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するものである。好ましいセパレータはガス不透過性及び/又は水不透過性を有する。換言すれば、セパレータはガス不透過性及び/又は水不透過性を有するほどに緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「ガス不透過性を有する」とは、国際公開第2016/076047号及び国際公開第2016/067884号に記載されるように、水中で測定対象物の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。また、本明細書において「水不透過性を有する」とは、国際公開第2016/076047号及び国際公開第2016/067884号に記載されるように、測定対象物の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。すなわち、本明細書においてセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有するということは、セパレータが気体又は水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性又はガス透過性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。このような場合、セパレータは、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。係るセパレータを亜鉛二次電池に組み込むことにより、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成が、実現される。また、セパレータが水酸化物イオン伝導性を有することにより、正極板と負極板との間において必要な水酸化物イオンの効率的な移動が可能となるので、正極板及び負極板における充放電反応が実現される。
【0068】
多孔質基材は高分子材料で構成されるのが好ましい。高分子多孔質基材には、1)可撓性を有する(それ故に薄くしても割れにくい)、2)気孔率を高くしやすい、3)伝導率を高くしやすい(気孔率を高めながら厚みを小さくできることによる)、4)製造及びハンドリングがしやすいといった利点がある。また、上記1)の可撓性に由来する利点を活かして、5)高分子材料製の多孔質基材を含む水酸化物イオン伝導セパレータを簡単に折り曲げる又は封止接合することができる、との利点もある。
【0069】
高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。より好ましくは、加熱プレスに適した熱可塑性樹脂という観点から、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せ等が挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。特に好ましい高分子材料は、耐熱水性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、しかも低コストである点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンであり、最も好ましくはポリプロピレン又はポリエチレンである。
【0070】
水酸化物イオン伝導層状化合物は高分子多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている(例えば高分子多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔が水酸化物イオン伝導層状化合物で埋まっている)のが特に好ましい。このような高分子多孔質基材として、市販の高分子微多孔膜を好ましく用いることができる。
【0071】
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びH2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH-及び/又はCO3
2-を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。
【0072】
一般的に、LDHは、M2+
1-xM3+
x(OH)2An-
x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An-はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1~0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An-は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH-及びCO3
2-が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An-がOH-及び/又はCO3
2-を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1~0.4であるが、好ましくは0.2~0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。
【0073】
もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオン(例えばTi4+)で置き換えてもよく、その場合は、上記基本組成式における陰イオンAn-の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0074】
例えば、優れた耐アルカリ性を呈する点では、LDHの水酸化物基本層がMg、Al、Ti及びOH基を含むのが特に好ましい。この場合、水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。例えば、LDHないし水酸化物基本層には、Y及び/又はZnが含まれていてもよい。また、LDHないし水酸化物基本層にY及び/又はZnが含まれている場合、LDHないし水酸化物基本層にはAl又はTiが含まれていなくてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてMg、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。
【0075】
エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDHにおけるTi/Alの原子比は、0.5~12であるのが好ましく、より好ましくは1.0~12である。LDHが当該範囲を充足するものである場合、イオン伝導性を損なわせることなく、セパレータ193における亜鉛デンドライトに起因した短絡の抑制効果(すなわちデンドライト耐性)を、より良好に得ることができる。
【0076】
同様の理由から、エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDHにおけるTi/(Mg+Ti+Al)の原子比は、0.1~0.7であるのが好ましく、より好ましくは0.2~0.7である。また、LDHにおけるAl/(Mg+Ti+Al)の原子比は、0.05~0.4であるのが好ましく、より好ましくは0.05~0.25である。さらに、LDHにおけるMg/(Mg+Ti+Al)の原子比は0.2~0.7であるのが好ましく、より好ましくは0.2~0.6である。
【0077】
なお、EDS分析は、EDS分析装置(例えばX-act、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いて、1)加速電圧20kV、倍率5,000倍で像を取り込み、2)点分析モードで5μm程度間隔を空け、3点分析を行い、3)上記1)及び2)をさらに1回繰り返し行い、4)合計6点の平均値を算出することにより行うのが好ましい。
【0078】
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。この場合、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。
【0079】
エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDHにおけるTi/(Ni+Ti+Al)の原子比は、0.10~0.90であるのが好ましく、より好ましくは0.20~0.80、さらに好ましくは0.25~0.70、特に好ましくは0.30~0.61である。LDHが当該範囲を充足するものである場合、セパレータ193における耐アルカリ性とイオン伝導性の両方が向上する。したがって、水酸化物イオン伝導層状化合物は、LDHのみならずチタニアを副生させるほど多くのTiを含んでいてもよい。すなわち、水酸化物イオン伝導層状化合物はチタニアをさらに含むものであってもよい。チタニアの含有により、親水性が上がり、電解液との濡れ性が向上する(すなわち伝導度が向上する)ことが期待できる。
【0080】
LDH様化合物は、好ましくは、Mgと、Ti、Y及びAlからなる群から選択される少なくともTiを含む1以上の元素とを含む。このように、従来のLDHの代わりに、水酸化物イオン伝導物質として、少なくともMg及びTiを含む層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物であるLDH様化合物を用いることにより、耐アルカリ性に優れ、かつ、亜鉛デンドライトに起因する短絡をよりいっそう効果的に抑制可能な水酸化物イオン伝導セパレータを提供することができる。したがって、好ましいLDH様化合物は、Mgと、Ti、Y及びAlからなる群から選択される少なくともTiを含む1以上の元素とを含む層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物である。典型的なLDH様化合物は、Mg、Ti、所望によりY及び所望によりAlの複合水酸化物及び/又は複合酸化物であり、特に好ましくはMg、Ti、Y及びAlの複合水酸化物及び/又は複合酸化物である。LDH様化合物の基本的特性を損なわない程度に上記元素は他の元素又はイオンで置き換えられてもよいが、LDH様化合物はNiを含まないのが好ましい。
【0081】
LDH様化合物はX線回折により同定することができる。具体的には、LDH様化合物を含むセパレータの表面に対してX線回折を行った場合、典型的には5°≦2θ≦10°の範囲に、より典型的には7°≦2θ≦10°の範囲に、LDH様化合物に由来するピークが検出される。
【0082】
一方、LDHは、前述のとおり、積み重なった水酸化物基本層の間に中間層として交換可能な陰イオン及びH2Oが存在する、交互積層構造を有する物質である。係るLDHをX線回折法により測定した場合、本来的には2θ=11°~12°の位置にLDHの結晶構造に起因したピーク(すなわちLDHの(003)ピーク)が検出される。
【0083】
すなわち、LDH様化合物をX線回折法により測定した場合、典型的にはLDHの上記ピーク位置よりも低角側にシフトした上述の範囲でピークが検出される。また、X線回折にて検出されたLDH様化合物に由来するピークに対応する2θの値をBraggの式に当てはめることにより決定される、LDH様化合物を構成する層状結晶構造の層間距離は、0.883nm~1.8nmであるのが典型的であり、より典型的には0.883nm~1.3nmである。
【0084】
エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDH様化合物におけるMg/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は、0.03~0.25であるのが好ましく、より好ましくは0.05~0.2である。また、LDH様化合物におけるTi/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は0.40~0.97であるのが好ましく、より好ましくは0.47~0.94である。さらに、LDH様化合物におけるY/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は0~0.45であるのが好ましく、より好ましくは0~0.37である。そして、LDH様化合物におけるAl/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は0~0.05であるのが好ましく、より好ましくは0~0.03である。LDH様化合物が当該範囲を充足するものである場合、セパレータ193の耐アルカリ性をよりいっそう優れたものすることができ、かつ、セパレータ193における亜鉛デンドライトに起因した短絡の抑制効果(すなわちデンドライト耐性)を、より良好に得ることができる。
【0085】
ところで、LDHは上述のように、M2+
1-xM3+
x(OH)2An-
x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An-はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1~0.4であり、mは0以上である)なる基本組成式で表しうる。これに対して、LDH様化合物における上記原子比は、LDHの上記基本組成式から概して逸脱している。このため、LDH様化合物は、概して、従来のLDHとは異なる組成比(原子比)を有するといえる。
【0086】
なお、EDS分析は、EDS分析装置(例えばX-act、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いて、1)加速電圧20kV、倍率5,000倍で像を取り込み、2)点分析モードで5μm程度間隔を空け、3点分析を行い、3)上記1)及び2)をさらに1回繰り返し行い、4)合計6点の平均値を算出することにより行うのが好ましい。
【0087】
セパレータ193の製造方法は特に限定されず、既に知られるLDHセパレータ(あるいはLDH含有機能層及び複合材料)の製造方法(例えば国際公開第2013/118561号、国際公開第2016/076047号、国際公開第2016/067884号、国際公開第2019/124270号及び国際公開第2019/124212号を参照)の諸条件(特にLDH原料組成)をそのまま又は適宜変更することにより作製することができる。
【0088】
例えば、(1)多孔質基材を用意し、(2)多孔質基材に、i)アルミナ及びチタニアの混合ゾル(LDHを形成する場合)、又はii)チタニアゾル(あるいはさらにイットリウムゾル及び/又はアルミナゾル)を含む溶液(LDH様化合物を形成する場合)を塗布して乾燥することでチタニア含有層を形成させ、(3)マグネシウムイオン(Mg2+)及び尿素(あるいはさらにイットリウムイオン(Y3+))を含む原料水溶液に多孔質基材を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、水酸化物イオン伝導層状化合物を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させることにより、セパレータ193を製造することができる。
【0089】
また、上記工程(3)において尿素が存在することで、尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物及び/又は酸化物を形成することにより水酸化物イオン伝導層状化合物(すなわちLDH及び/又はLDH様化合物)を得ることができるものと考えられる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、LDHを形成する場合には、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。
【0090】
特に、水酸化物イオン伝導層状化合物が高分子多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれているセパレータを作製する場合、上記工程(2)における混合ゾル溶液の基材への塗布を、混合ゾル溶液を基材内部の全体又は大部分に浸透させるような手法で行うのが好ましい。こうすることで最終的に多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔を水酸化物イオン伝導層状化合物で埋めることができる。好ましい塗布手法の例としては、ディップコート、ろ過コート等が挙げられ、特に好ましくはディップコートである。ディップコート等の塗布回数を調整することで、混合ゾル溶液の付着量を調整することができる。ディップコート等により混合ゾル溶液が塗布された基材は、乾燥させた後、上記工程(3)及び(4)を実施すればよい。
【0091】
上記方法等によって得られたセパレータ193に対してプレス処理を施すのが好ましい。こうすることで、緻密性によりいっそう優れたセパレータ193を得ることができる。プレス手法は、例えばロールプレス、一軸加圧プレス、CIP(冷間等方圧加圧)等であってよく、特に限定されないが、好ましくはロールプレスである。高分子多孔質基材を軟化させることによって高分子多孔質基材の孔を水酸化物イオン伝導層状化合物で十分に塞ぐことができるという点から、このプレスは加熱しながら行うのが好ましい。十分な軟化のためには、例えば、高分子多孔質基材がポリプロピレンやポリエチレンである場合は60℃~200℃で加熱するのが好ましい。このような温度域でロールプレス等のプレスを行うことで、セパレータ193の残留気孔を大幅に低減することができる。その結果、セパレータ193を極めて高度に緻密化することができ、それ故、亜鉛デンドライトに起因する短絡をよりいっそう効果的に抑制することができる。ロールプレスを行う際、ロールギャップ及びロール温度を適宜調整することで残留気孔の形態を制御することができ、それにより所望の緻密性のセパレータ193を得ることができる。
【0092】
上述のセパレータの緻密性は、He透過度により評価することができる。セパレータは、単位面積あたりのHe透過度が10cm/min・atm以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。このような範囲内のHe透過度を有するセパレータは、緻密性が極めて高いといえる。すなわち、He透過度が10cm/min・atm以下であるセパレータは、水酸化物イオン以外の物質の通過を高いレベルで阻止することができる。例えば、これを組み込んだ亜鉛二次電池の場合、電解液中においてZnの透過(典型的には亜鉛イオン又は亜鉛酸イオンの透過)を極めて効果的に抑制することができる。
【0093】
He透過度は、セパレータの一方の面にHeガスを供給してセパレータにHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出して水酸化物イオン伝導セパレータの緻密性を評価する工程とを経て測定される。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時にセパレータに加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛デンドライト成長を引き起こすZn)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。この点、水素ガスはH2分子により構成されるため、ガス構成単位としてはHe原子単体の方がより小さい。そもそもH2ガスは可燃性ガスのため危険である。
【0094】
上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。これにより、セパレータが亜鉛二次電池用セパレータに適した十分に高い緻密性を有するのか否かを、簡便、安全かつ効果的に評価することができる。
【0095】
5 参考例と実施形態との対比
5.1 シェイプチェンジ
亜鉛二次電池1において充放電サイクルが繰り返される前においては、負極活物質層175は、負極集電体174の主面の略全体の上に略均一に存在する。しかし、充放電サイクルが繰り返された後においては、負極活物質層175は、負極集電体174の主面の中央部の上に偏って存在する。この現象は、シェイプチェンジと呼ばれる。シェイプチェンジは、負極活物質層175を構成する亜鉛が電解液に自己溶解することに起因して起こると考えられている。係るシェイプチェンジに伴い、充放電サイクルが繰り返された後の負極板153の周辺部には、負極活物質層175に覆われず負極集電体174が露出する領域が生じる。このため、充放電サイクルが繰り返された後においては、負極集電体174の周辺部が正極集電体171と電気的に短絡しやすくなる。特に、負極集電体174がエキスパンドメタルからなる場合は、該エキスパンドメタルの端部に発生しやすいバリ、ササクレ等が負極側保液部材192及びセパレータ193を突き破り、エキスパンドメタルと正極集電体171とが電気的に短絡することが生じやすい。
【0096】
5.2 参考例の亜鉛二次電池において短絡を防止する対策が必要な箇所
図14ないし
図16は、参考例の亜鉛二次電池に備わる積層電池93の主要部を模式的に示す断面図である。
図14は、理想的な状態を示している。
図15及び
図16は、実際の状態を示している。
図15は、シェイプチェンジが起こる前の状態を示している。
図16は、シェイプチェンジが起こった後の状態を示している。
【0097】
図14ないし
図16に示す積層電池93においては、複数の正極集電タブ102が積層体101から方向DX1に突出する。また、複数の負極集電タブ103が積層体101から方向DX2に突出する。複数の正極集電タブ102の先端は集約され、正極端子112に接続される正極集電板995に接続されている。また、複数の負極集電タブ103の先端は集約され、負極端子113に接続される負極集電板996に接続されている。
【0098】
図15及び
図16に示す実際の状態においては、複数の正極集電タブ102の先端が集約されることにより、積層体101の厚さ方向の中心に向かう成分を有する応力Sが複数の正極集電タブ102に加わっている。また、複数の負極集電タブ103の先端が集約されることにより、積層体101の厚さ方向の中心に向かう成分を有する応力Sが複数の負極集電タブ103に加わっている。
【0099】
また、上述したように、シェイプチェンジが起こる前においては、
図15に示すように、負極活物質層175は、負極集電体174の主面の略全体の上に略均一に存在する。しかしながら、シェイプチェンジが起こった後においては、
図16に示すように、負極活物質層175は、負極集電体174の主面の中央部の上に偏って存在する。このため、充放電サイクルを繰り返した後においては、負極集電体174の周辺部が正極集電体171と電気的に短絡しやすい状態にある。
【0100】
それゆえ、参考例の亜鉛二次電池においては、積層体101の方向DX1寄りに配置される端部101X1の付近と、積層体101の方向DX2寄りに配置される端部101X2の付近との双方において、負極集電体174が正極集電体171に電気的に短絡することを防止するための対策が必要である。
【0101】
5.3 実施形態の亜鉛二次電池において短絡を防止する対策が必要な箇所
図17ないし
図19は、亜鉛二次電池1に備わる積層電池13の主要部を模式的に示す断面図である。
図17は、理想的な状態を示している。
図18及び
図19は、実際の状態を示している。
図18は、シェイプチェンジが起こる前の状態を示している。
図19は、シェイプチェンジが起こった後の状態を示している。
【0102】
図17ないし
図19に示す積層電池13においては、複数の正極集電タブ102が積層体101から方向DY1に突出している。また、複数の負極集電タブ103も積層体101から方向DY1に突出している。複数の正極集電タブ102の先端は、集約され、正極端子112に接続されている。また、複数の負極集電タブ103の先端は、集約され、負極端子113に接続されている。
【0103】
図18及び
図19に示す実際の状態においては、複数の正極集電タブ102の先端が集約されることにより、積層体101の厚さ方向の中心に向かう成分を有する応力Sが複数の正極集電タブ102に加わっている。また、複数の負極集電タブ103の先端が集約されることにより、積層体101の厚さ方向の中心に向かう成分を有する応力Sが複数の負極集電タブ103に加わっている。
【0104】
また、上述したように、シェイプチェンジが起こる前においては、
図18に示すように、負極活物質層175は、負極集電体174の主面の略全体の上に略均一に存在する。しかしながら、シェイプチェンジが起こった後においては、
図19に示すように、負極活物質層175は、負極集電体174の主面の中央部の上に偏って存在する。このため、充放電サイクルを繰り返した後においては、負極集電体174の周辺部が正極集電体171と電気的に短絡しやすい状態にある。
【0105】
係る亜鉛二次電池1の場合、集電タブが突出する端部101Y1の付近においては負極集電体174と正極集電体171との電気的な短絡を防止するための対策が必要であるが、端部101Y1と対向する端部101Y2の付近においては当該対策が不要である。当該対策は、どのようなものであってもよいが、例えば、負極集電体174と正極集電体171との間に絶縁テープを配置するという対策が挙げられる。
【0106】
また、参考例の亜鉛二次電池においては、複数の正極集電タブ102が、正極集電板995を介して正極端子112に接続されている。また、複数の負極集電タブ103が、負極集電板996を介して負極端子113に接続されている。これに対して、本実施の形態に係る亜鉛二次電池1においては、複数の正極集電タブ102が、正極端子112に直接的に接続されている。また、複数の負極集電タブ103が、負極端子113に直接的に接続されている。これらにより、亜鉛二次電池1においては、複数の正極集電タブ102と正極端子112との間の電気抵抗が低減されてなる。また、複数の負極集電タブ103と負極端子113との間の電気抵抗も提言されてなる。これにより、本実施の形態に係る亜鉛二次電池1は、参考例の亜鉛二次電池と比較して、例えば過充電試験のような安全性試験に対する優位性を有する。
【0107】
また、本実施の形態に係る亜鉛二次電池1は、参考例の亜鉛二次電池と比較して、高い体積エネルギー密度を有する。なぜならば、参考例の亜鉛二次電池においては、正極集電板995及び負極集電板996が配置されているために、体積エネルギー密度が低くなる原因となる空間が積層体101の両側に存在するが、亜鉛二次電池1においてそのような空間が積層体101の片側にしか存在しないためである。
【0108】
6 モジュール電池
図20は、モジュール電池を模式的に示す上面図である。
【0109】
図20に示すモジュール電池2は、複数の単電池21を備える。
【0110】
複数の単電池21の各々は、上述した亜鉛二次電池1である。
【0111】
単電池21のフタ本体111は、外面111aを有する。複数の単電池21のそれぞれに備わる全てのフタ本体111の外面111aは、同じ方向DY1を向いている。
【0112】
複数の単電池21は、それぞれのフタ本体111の外面111aが向く方向DY1と垂直をなす方向DZに配列される。
【0113】
モジュール電池2は、複数の配線22を備える。
【0114】
複数の配線22の各々は、隣接するふたつの単電池21の一方の単電池21に備わる正極端子112と、他方の単電池21に備わる負極端子113とを、電気的に接続する。
【0115】
係るモジュール電池2においては、複数の配線22を複数の単電池21の一方の側に集中する。これにより、複数の配線22が占めるスペースが削減されるので、モジュール電池2の小型化が実現される。
【0116】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。