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特許7382491燃料電池シール用ゴム組成物、燃料電池用シール部材、並びにそれらを用いてなる燃料電池
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  • 特許-燃料電池シール用ゴム組成物、燃料電池用シール部材、並びにそれらを用いてなる燃料電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】燃料電池シール用ゴム組成物、燃料電池用シール部材、並びにそれらを用いてなる燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0284 20160101AFI20231109BHJP
   C08F 290/04 20060101ALI20231109BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231109BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231109BHJP
【FI】
H01M8/0284
C08F290/04
C09K3/10 E
H01M8/10 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022511823
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010669
(87)【国際公開番号】W WO2021200127
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020060655
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】二村 安紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017237(JP,A)
【文献】特開2015-026571(JP,A)
【文献】特開2020-019939(JP,A)
【文献】特開2016-094581(JP,A)
【文献】特開平03-066719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0284
C08F 290/04
C09K 3/10
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分を主成分とし下記(B)および(C)成分を含有する、ラジカル架橋性を示す燃料電池シール用ゴム組成物であって、(A)成分の数平均分子量が3000~100000であり、(A)成分100重量部に対する(B)および(C)成分の含有量の合計が10~100重量部であり、(C)成分に対する(B)成分の重量比[(B)/(C)]が0.1~20であり、かつ、接着成分として、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーおよびシランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする燃料電池シール用ゴム組成物。
(A)(メタ)アクリロイル基を有する、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、およびポリエステルからなる群から選ばれた少なくとも一つのポリマー。
(B)ガラス転移温度が0℃以下の単官能(メタ)アクリルモノマー。
(C)ガラス転移温度が50℃以上の単官能(メタ)アクリルモノマー。
但し、接着成分として、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーおよびシランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つ」の(D)接着成分を別途含有する場合、(D)接着成分の含有量は(A)成分100重量部に対して0.1~10重量部であり、接着成分として、(B)成分に該当する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を含有する場合、(B)成分全体に対する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」の割合は1~100重量%であり、接着成分として、(C)成分に該当する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を含有する場合、(C)成分全体に対する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」の割合は1~100重量%である。
【請求項2】
上記(A)成分のガラス転移温度が-40℃以下である、請求項1記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
【請求項3】
上記(A)成分が、(メタ)アクリロイル基を有する、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、およびポリブタジエンからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1または2記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
【請求項4】
上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリマーである、請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
【請求項5】
上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートである、請求項1または2記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
【請求項6】
さらに光ラジカル重合開始剤を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
【請求項7】
さらに多官能(メタ)アクリルモノマーを含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池シール用ゴム組成物の架橋体からなることを特徴とする燃料電池用シール部材。
【請求項9】
セパレータおよび膜電極接合体を構成部材とし、かつ上記セパレータと膜電極接合体の端部との間が封止されたセルが、複数枚積層されてなる燃料電池であって、上記セルを構成するセパレータと膜電極接合体の端部との間が、請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池シール用ゴム組成物の架橋体および請求項記載の燃料電池用シール部材の少なくとも一方によって封止されていることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の構成部材をシールするために用いられる燃料電池シール用ゴム組成物、燃料電池用シール部材、並びにそれらを用いてなる燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、ガスの電気化学反応により電気を発生させ、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ない。なかでも固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動させることができ、大きな出力密度を有する。このため、上記固体高分子型燃料電池は、発電用、自動車用電源等、種々の用途が期待される。
【0003】
固体高分子型燃料電池においては、膜電極接合体(MEA)等をセパレータで挟持したセルが発電単位となる。MEAは、電解質となる高分子膜(電解質膜)と、電解質膜の両面に配置された一対の電極触媒層(燃料極(アノード)触媒層、酸素極(カソード)触媒層)と、からなる。一対の電極触媒層の表面には、さらにガスを拡散させるための多孔質層が配置される。燃料極側には水素等の燃料ガスが、酸素極側には酸素や空気等の酸化剤ガスがそれぞれ供給される。供給されたガスと電解質と電極触媒層との三相界面における電気化学反応により、発電が行われる。固体高分子型燃料電池は、上記セルを多数積層したセル積層体を、セル積層方向の両端に配置したエンドプレート等により締め付けて構成される。
【0004】
セパレータには、各々の電極に供給されるガスの流路や、発電の際の発熱を緩和するための冷媒の流路が形成される。例えば、各々の電極に供給されるガスが混合すると、発電効率が低下する等の問題が生じる。また、電解質膜は、水を含んだ状態でプロトン導電性を有する。このため、作動時には、電解質膜を湿潤状態に保つ必要がある。したがって、ガスの混合、ガスおよび冷媒の漏れを防止するとともに、セル内を湿潤状態に保持するためには、MEAおよび多孔質層の周囲や、隣り合うセパレータ間のシール性を確保することが重要となる。これらの構成部材をシールするシール部材としては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)等からなるシール部材(ゴムガスケット)が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、MEAやセパレータ等の間のシール性をより高めるため、上記シール部材は、必要に応じて、MEAやセパレータ等の相手部材に対して接着させて利用に供される。その際の接着方法としては、例えば、シール部材の形成材料であるゴム組成物を、相手部材に接触させた状態で加熱して、架橋するのと同時に接着する方法(熱架橋接着法)や、熱架橋して製造されたシール部材と相手部材とを、接着剤を用いて後接着する方法等が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-94056号公報
【文献】特開2010-146781号公報
【文献】特開2017-65042号公報
【文献】国際公開第2013/147020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、MEAを構成する電解質膜は高分子膜であり、熱ダメージを受けやすいことから、上記熱架橋接着法を採用すると電解質膜が劣化するおそれがある。
また、MEAには、通常、接着性に劣るフッ素系ポリマーが使用されていることから、通常の接着剤では接着が難しいといった問題もある。
さらに、MEAを構成する電解質膜は非常に薄く、ガス圧の変動や外部からの振動等によりダメージを受けやすいため、柔軟なシール部材や接着剤を用いる必要がある。なお、柔軟性を確保するために上記シール部材や接着剤の硬化が充分でないと、その溶出物が発電に悪影響を及ぼすおそれがあるため、そのようなことが起こらないようにする必要もある。
また、燃料電池は、バス、トラック等の長距離を走る商用車向けに世界的に拡大すると予測され、上記シール部材や接着剤において、寒冷地や熱地でのシール漏れを防ぐため、低温~高温の広い温度領域での伸びが、より一層求められる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、柔軟性、低温~高温の広い温度領域での伸びに優れ、シール性に優れるとともに電解質膜に対するダメージを低減できる、燃料電池シール用ゴム組成物、燃料電池用シール部材、並びにそれらを用いてなる燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、主に、熱架橋ではなく、紫外線架橋や電子線架橋といったラジカル架橋によって燃料電池用シール部材を架橋することにより、架橋接着の際の電解質膜へのダメージ等を抑えることを検討し、その結果、上記シール部材のポリマーとして(メタ)アクリロイル基を有する特定のポリマー(A)を用いた、ラジカル架橋性組成物からなるシール部材とすることを想起した。また、上記シール部材の材料として、接着成分や、単官能(メタ)アクリルモノマー等を配合することを検討し、その配合割合等を調整することにより、柔軟性、低温および高温での伸び、シール性に優れたものとなるよう、各種実験を行った。その結果、上記シール部材の材料中における単官能(メタ)アクリルモノマーとして、ガラス転移温度(Tg)が異なる2種の単官能(メタ)アクリルモノマー(B),(C)を特定の配合割合で併用し、さらに、接着成分として、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーおよびシランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つを含むようにしたところ、所期の目的が達成できることを見いだした。
【0010】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[10]を、その要旨とする。
[1]下記(A)成分を主成分とし下記(B)および(C)成分を含有する、ラジカル架橋性を示す燃料電池シール用ゴム組成物であって、(A)成分100重量部に対する(B)および(C)成分の含有量の合計が10~100重量部であり、(C)成分に対する(B)成分の重量比[(B)/(C)]が0.1~20であり、かつ、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーおよびシランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする燃料電池シール用ゴム組成物。
(A)(メタ)アクリロイル基を有する、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、およびポリエステルからなる群から選ばれた少なくとも一つのポリマー。
(B)ガラス転移温度が0℃以下の単官能(メタ)アクリルモノマー。
(C)ガラス転移温度が50℃以上の単官能(メタ)アクリルモノマー。
[2]上記(A)成分の数平均分子量が3000~100000である、[1]に記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[3]上記(A)成分のガラス転移温度が-40℃以下である、[1]または[2]に記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[4]上記(A)成分が、(メタ)アクリロイル基を有する、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、およびポリブタジエンからなる群から選ばれた少なくとも一つである、[1]~[3]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[5]上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリマーである、[1]~[4]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[6]上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートである、[1]~[3]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[7]さらに光ラジカル重合開始剤を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[8]さらに多官能(メタ)アクリルモノマーを含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物の架橋体からなることを特徴とする燃料電池用シール部材。
[10]セパレータおよび膜電極接合体を構成部材とし、かつ上記セパレータと膜電極接合体の端部との間が封止されたセルが、複数枚積層されてなる燃料電池であって、上記セルを構成するセパレータと膜電極接合体の端部との間が、[1]~[8]のいずれかに記載の燃料電池シール用ゴム組成物の架橋体および[9]に記載の燃料電池用シール部材の少なくとも一方によって封止されていることを特徴とする燃料電池。
【発明の効果】
【0011】
以上のことから、本発明により、その燃料電池シール用ゴム組成物の架橋体は、柔軟性、低温~高温の広い温度領域での伸びに優れるようになる。また、本発明の燃料電池シール用ゴム組成物は、MEAやセパレータ等に対する接着性が高く、さらにラジカル架橋性を示すものであるため、本発明により、優れたシール性が得られるとともに電解質膜に対するダメージを低減することができる。また、本発明の燃料電池シール用ゴム組成物の架橋体は、発電に悪影響を及ぼす溶出物が出ないことから、燃料電池用途に優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の燃料電池用シール部材をシール体とした一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を包含する概念として用いられる語であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を包含する概念として用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の両方を包含する概念として用いられる語である。また、「ポリマー」は、コポリマーおよびオリゴマーを包含する概念として用いられる語である。
【0014】
本発明の燃料電池シール用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」という場合がある。)は、先に述べたように、下記(A)成分を主成分とし下記(B)および(C)成分を含有する、ラジカル架橋性を示す燃料電池シール用ゴム組成物であって、(A)成分100重量部に対する(B)および(C)成分の含有量の合計が10~100重量部であり、(C)成分に対する(B)成分の重量比[(B)/(C)]が0.1~20であり、かつ、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーおよびシランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つを含む。そして、本発明の燃料電池用シール部材(以下、単に「シール部材」という場合がある。)は、上記ゴム組成物の架橋体からなる。
(A)(メタ)アクリロイル基を有する、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、およびポリエステルからなる群から選ばれた少なくとも一つのポリマー。
(B)ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の単官能(メタ)アクリルモノマー。
(C)ガラス転移温度(Tg)が50℃以上の単官能(メタ)アクリルモノマー。
【0015】
ここで、上記「主成分」とは、通常、上記ゴム組成物全体の45重量%以上を占めるものを意味し、好ましくは上記ゴム組成物全体の50重量%以上を占めるものをいう。また、上記ゴム組成物に使用されるポリマーが、上記(A)成分のみからなるものであることが、本発明の作用効果の観点から好ましい。
また、上記の「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が、上記(B)成分や(C)成分に該当する場合、上記の、「(A)成分100重量部に対する(B)および(C)成分の含有量の合計」および「(C)成分に対する(B)成分の重量比」は、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を含めた割合を示す。
さらに、本発明における「アミド基を有する(メタ)アクリルモノマー」とは、アミド基(-CO-NH2)を有するモノマーのみならず、「分子鎖中にアミド結合を有する(メタ)アクリルモノマー」をも包含する趣旨である。
また、上記の「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」のなかでも、より高い接着性が得られることから、カルボン酸基を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましく用いられる。
【0016】
以下に、本発明のゴム組成物に使用される各材料について詳細に説明する。
【0017】
<(A)成分>
(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を有する特定のポリマーである。上記(メタ)アクリロイル基は、(A)成分の分子鎖(主鎖)に対し、側鎖として有するものであっても、上記分子鎖の末端に有するものであってもよいが、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
上記(A)成分としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエステルであって、上記のように(メタ)アクリロイル基を有するポリマーがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエンが好ましく、より好ましくは、ポリ(メタ)アクリレートである。
そして、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0018】
上記(A)成分の数平均分子量(Mn)は、3000~100000であることが好ましく、より好ましくは4500~95000の範囲、さらに好ましくは6000~50000の範囲である。すなわち、上記数平均分子量(Mn)が小さ過ぎると、高温伸び性、低温伸び性に劣る傾向がみられ、上記数平均分子量(Mn)が大き過ぎると、高温伸び性に劣る傾向がみられるとともに、高粘性を発現しハンドリング性が低下する傾向がみられるからである。
【0019】
上記(A)成分の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、1.1~1.6が好ましく、1.1~1.4がより好ましい。なお、上記数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。具体的には、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量などはポリスチレン換算で求めることができる。
【0020】
また、上記(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、-40℃以下であることが好ましく、-50℃以下がより好ましい。すなわち、上記(A)成分のガラス転移温度(Tg)が高過ぎると、低温における圧縮永久歪み性および低温伸びに劣る傾向がみられるからである。なお、下限値は特に限定されるものではないが、例えば-100℃である。
かかる(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される。具体的には、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC-5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め、その極大点からガラス転移温度を求める。
【0021】
上記(A)成分の23℃での粘度(B型粘度計による粘度)は、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、2~4000Pa・sが好ましく、100~2000Pa・sがより好ましい。
【0022】
また、上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートである場合、その分子鎖(主鎖)は、1種以上の(メタ)アクリルモノマーの単独重合体や共重合体、または、1種以上の(メタ)アクリルモノマーおよびこれと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体で構成される。
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデカニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等があげられる。これらは単独で用いてもよく、複数を共重合させてもよい。
【0023】
また、上記(メタ)アクリルモノマーを他のモノマーと共重合、さらにはブロック共重合させてもよい。共重合させるモノマーとしては、例えば、スチレンなどのスチレン系モノマー、パーフルオロエチレンなどのフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー等があげられる。
【0024】
上記のなかでも、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、エステル基の炭素数が2~14のアクリル酸エステルモノマー、エステル基の炭素数が8~14のメタクリル酸エステルモノマーがより好ましい。エステル基の炭素数が上記範囲外になると、低温における圧縮永久歪み性に劣る傾向がみられる。また、特に、炭素数が上記範囲より大きくなると、重合時の反応性が悪くなり、合成し難くなる傾向がみられる。
【0025】
上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートである場合、(メタ)アクリロイル基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマーをラジカル重合して得られる共重合体であることがより好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを重合して得られる共重合体が特により好ましい。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体の共重合比(重量比)としては、例えば、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを重合して得られる共重合体の場合(アクリル酸n-ブチル:アクリル酸2-エチルヘキシル)、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、40~60:60~40であるのが好ましい。
【0027】
上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートである場合、少なくとも一方の分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルポリマーであればよいが、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、分子鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルポリマーが好ましい。
【0028】
上記(A)成分は、本発明の効果をより効果的に発揮する観点から、下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
上記一般式(1)中、炭素数1~20のエステル残基としては、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよく、例えば、メチルエステル残基、エチルエステル残基、n-プロピルエステル残基、イソプロピルエステル残基、n-ブチルエステル残基、イソブチルエステル残基、t-ブチルエステル残基、ペンチルエステル残基、ヘキシルエステル残基、ヘプチルエステル残基、オクチルエステル残基、シクロペンチルエステル残基、シクロヘキシルエステル残基等があげられる。なかでも、上記エステル残基としては、炭素数2~14のエステル残基が好ましい。また、一般式(1)中、有機基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基などの炭素数1~20の非置換、または置換1価の炭化水素基等があげられる。上記有機基としては、反応性を高める観点から、水素原子またはアルキル基が好ましく、なかでも、水素原子またはメチル基がより好ましい。また、一般式(1)中、nは20~800であるが、なかでも、50~400が好ましい。
【0031】
上記(A)成分が、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートである場合、その合成する方法としては、公知の合成方法を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸モノマーをラジカル重合することよって合成することができる。なかでも、リビングラジカル重合や原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0032】
また、上記のような、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレートは、市販品としても入手可能であり、例えば、RC-100C、RC-200C(以上、カネカ社製)等があげられる。
【0033】
<(B)成分>
上記(B)成分である単官能(メタ)アクリルモノマーは、分子構造内に1つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物である。そして、(B)成分は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の単官能(メタ)アクリルモノマーである。
上記(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、-40℃以下が好ましく、-50℃以下がより好ましい。なお、上記(B)成分のガラス転移温度(Tg)の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば-100℃である。
かかる(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、その単官能(メタ)アクリルモノマーのホモポリマーに対し、先に述べたのと同様の手法で、示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
【0034】
上記(B)成分としては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、低温伸び等の観点から、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましい。
なお、本発明のゴム組成物の材料中において、接着成分として「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を使用する場合、このものが上記(B)成分に該当するものであってもよい。例えば、先に述べた、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート等が、上記接着成分に該当する。なかでも、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートが、接着性等の観点においてより好ましい。
また、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が上記(B)成分に該当する場合、上記(B)成分全体に対する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」の割合は、1~100重量%であることが好ましく、より好ましくは20~80重量%の範囲である。
【0035】
上記(B)成分の含有量は、本発明の効果をより高める観点から、(A)成分100重量部に対して、1~90重量部であることが好ましく、より好ましくは5~50重量部の範囲である。
なお、先に述べたように、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が上記(B)成分に該当する場合、上記割合は、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」である(B)成分を含めた割合とする。
【0036】
<(C)成分>
上記(C)成分である単官能(メタ)アクリルモノマーは、分子構造内に1つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物である。そして、(C)成分は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上の単官能(メタ)アクリルモノマーである。
上記(C)成分のガラス転移温度(Tg)は、70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。なお、上記(C)成分のガラス転移温度(Tg)の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば250℃である。
かかる(C)成分のガラス転移温度(Tg)は、その単官能(メタ)アクリルモノマーのホモポリマーに対し、先に述べたのと同様の手法で、示差走査熱量計(DSC)によって測定される。
【0037】
上記(C)成分としては、具体的には、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、引張強度、高温伸び等の観点から、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルがより好ましい。
なお、本発明のゴム組成物の材料中において、接着成分として「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を使用する場合、このものが上記(C)成分に該当するものであってもよい。例えば、先に述べた、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等が、上記接着成分に該当する。なかでも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが、接着性等の観点においてより好ましい。
また、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が上記(C)成分に該当する場合、上記(C)成分全体に対する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」の割合は、1~100重量%であることが好ましく、より好ましくは20~80重量%の範囲である。
【0038】
上記(C)成分の含有量は、本発明の効果をより高める観点から、(A)成分100重量部に対して、1~90重量部であることが好ましく、より好ましくは5~50重量部の範囲である。
なお、先に述べたように、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が上記(C)成分に該当する場合、上記割合は、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」である(C)成分を含めた割合とする。
【0039】
また、本発明において、上記(A)成分100重量部に対する(B)および(C)成分の含有量の合計は、10~100重量部であり、本発明の効果をより高める観点から、好ましくは15~90重量部、より好ましくは20~80重量部である。
さらに、本発明において、上記(C)成分に対する(B)成分の重量比[(B)/(C)]は、0.1~20であり、本発明の効果をより高める観点から、好ましくは0.15~15、より好ましくは0.2~10である。
なお、先に述べたように、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が上記(B)成分あるいは(C)成分に該当する場合、上記各割合は、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」である(B)成分あるいは(C)成分を含めた割合とする。
【0040】
<(D)成分(接着成分)>
先に述べた(B)および(C)成分として、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーを使用する場合、他の、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーや、シランカップリング剤を、本発明のゴム組成物中に含有させる必要はないが、それ以外の場合は、別途、(D)成分(接着成分)として、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーや、シランカップリング剤を、本発明のゴム組成物中に含有させる必要がある。上記接着成分(D)として、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーとシランカップリング剤とは、併用してもよく、そのいずれか一方を使用するようにしてもよい。
また、先に述べた(B)および(C)成分に該当せず、上記接着成分(D)に該当する、カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、こはく酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)などが挙げられる。
また、本発明のゴム組成物の材料中において、接着成分(D)としてシランカップリング剤を使用する場合、そのシランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等があげられる。これらは、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0041】
上記接着成分(D)の含有量は、本発明の効果をより高める観点から、(A)成分100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~7.5重量部の範囲である。
【0042】
<各種の添加剤>
本発明のゴム組成物の材料中には、その必須成分である上記(A)~(C)成分や、(D)成分の他、適宜、下記の(E)~(G)成分を配合してもよい。
【0043】
<(E)成分>
本発明のゴム組成物の材料中には、多官能(メタ)アクリルモノマー(E)を配合してもよい。上記多官能(メタ)アクリルモノマー(E)は、分子構造内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物である。具体的には、公知のエチレン性不飽和多官能モノマーがあげられ、分子構造内に2つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,7-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0044】
(メタ)アクリロイル基を3個以上有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、モノペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトール(メタ)アクリレートなどのペンタエリスリトール構造と(メタ)アクリレート構造を有するペンタエリスリトールアクリレート系化合物などがあげられる。
【0045】
上記(E)成分は、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、これら(E)成分のなかでも、本発明の効果をより高める観点から、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,7-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物が好ましい。なかでも、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0046】
上記(E)成分の多官能(メタ)アクリルモノマーの分子鎖(主鎖)の炭素数は、6以上であることが好ましい。炭素数が上記数値未満であると、高温伸び性、低温伸び性に劣る傾向が見られる。
【0047】
なお、本発明のゴム組成物の材料中において、接着成分として「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を使用する場合、このものが上記(E)成分に該当するものであってもよい。具体的には、上記に列記された化合物の分子鎖にカルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかが結合されたものがあげられる。また、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が上記(E)成分に該当する場合、上記(E)成分全体に対する「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」の割合は、1~100重量%であることが好ましく、より好ましくは20~80重量%の範囲である。
【0048】
上記(E)成分の含有量は、本発明の効果をより高める観点から、(A)成分100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~7.5重量部の範囲である。
なお、前記の「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」が、上記(E)成分に該当する場合、上記(E)成分の含有量は、「カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマー」を含めた割合を示す。
【0049】
<(F)成分>
本発明のゴム組成物の材料中には、光ラジカル重合開始剤(F)を配合してもよい。上記(F)成分の光ラジカル重合開始剤としては、エネルギー線を照射することによりラジカルが発生する化合物が好ましく、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン型化合物、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノンなどのアントラキノン型化合物、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オンなどのアルキルフェノン型化合物、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン型化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド型化合物、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルなどのフェニルグリオキシレート型化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、反応性に優れる観点から、アルキルフェノン型化合物が好ましく、具体的には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が好ましい。
【0050】
上記(F)成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~10重量部の範囲である。
【0051】
<(G)成分>
本発明のゴム組成物の材料中には、老化防止剤(G)を配合してもよい。上記(G)成分の老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、ジ(4-オクチルフェニル)アミン、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンなどのアミン系老化防止剤、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、スチレン化フェノール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-t-ブチルフェノール)、4,4'-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)などのフェノール系老化防止剤、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのイオウ系老化防止剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤が好ましく、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンがより好ましい。
【0052】
上記(G)成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5重量部の範囲である。
【0053】
<その他の添加剤>
本発明のゴム組成物の材料中には、上記(A)~(G)成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラー(シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、クレー、ガラスバルーン等)、相溶化剤、硬化性調整剤、滑剤、顔料、消泡剤、発泡剤、光安定剤、表面改質剤等、各種の添加剤を配合してもよい。
【0054】
<シール部材の製造方法>
本発明のシール部材の形成材料である上記ゴム組成物は、例えば、(A)成分以外の各材料を、湯せんで手撹拌した後、(A)成分を加え、ミキサーを用いて混合することにより調製される。
上記ゴム組成物の23℃での粘度(B型粘度計による粘度)は、成形性の観点から、0.1~1000Pa・sが好ましく、0.5~500Pa・sがより好ましい。
そして、上記ゴム組成物を、燃料電池のセパレータ等の各種構成部材に対して、ディスペンサー、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷等の各種方法を用いて塗布し、活性エネルギー線を照射して架橋させることにより、シール部材として作製することができる。
また、燃料電池の各種構成部材に接着剤を塗布した面に対し、上記ゴム組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより作製することもできる。
さらに、FIPG(フォームインプレイスガスケット)、CIPG(キュアーインプレイスガスケット)、MIPG(モールドインプレイスガスケット)等の方法を用いて、上記シール部材を作製することもできる。
また、金型等を用いて、上記ゴム組成物を、燃料電池の各種構成部材のシール対象部分の形状に応じて、所定形状に成形しておくこともできる。上記のように成形したものであっても、タック性を示すことから、シール性を示すことができる。また、例えば、上記のように成形したものを、必要に応じ、接着剤により貼り付けて、利用に供することもできる。
【0055】
<シール方法>
燃料電池の構成部材に対して上記ゴム組成物あるいはシール部材を用いてシールし、上記ゴム組成物あるいはシール部材に対し活性エネルギー線を照射して架橋させることにより、短時間(例えば、数十秒程度)でシールを行うことができる。また、本発明のゴム組成物は、膜状のシール部材にすることが容易であり、シール部材の薄膜化により、燃料電池の小型化を実現することができる。具体的には、例えば、膜状のシール部材の厚みを50~1000μmにすることが容易であり、燃料電池の小型化を実現できる。さらに、本発明のシール部材は、柔軟性、低温~高温の広い温度領域での伸びに優れ、シール性に優れるとともに電解質膜に対するダメージを低減することができる。
なお、本発明のゴム組成物ないしシール部材は、電子線や紫外線等の活性エネルギー線により架橋されるが、必要に応じ、補助的に加熱を行い架橋させてもよい。また、MEA等へのダメージが少ないことから、紫外線による架橋が好ましい。活性エネルギー源としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、高圧水銀灯、ブラックライト、LED、蛍光灯等を用いることができる。
【0056】
本発明のシール部材は、燃料電池の構成部材に用いられるものである。そして、本発明のシール部材は、上記のように、MEA等へのダメージが少ないことから、紫外線架橋体であることが好ましい。また、光ラジカル重合開始剤(F)を配合しなくても架橋できることから、電子線架橋体であってもよい。
【0057】
<燃料電池>
本発明のゴム組成物あるいはシール部材によりシールされる燃料電池用の構成部材は、燃料電池の種類、構造等により様々であるが、例えば、セパレータ(金属セパレータ、カーボンセパレーター等)、ガス拡散層、MEA(電解質膜、電極)等があげられる。
【0058】
本発明のシール部材の一例を図1に示す。図1は、複数枚のセルが積層されてなる燃料電池における単一のセル1を主として示したものであり、セル1は、MEA2と、ガス拡散層3と、シール部材4と、セパレータ5とを備えている。そして、上記セル1を構成するセパレータ5とMEA2の端部との間が、シール部材4(本発明のシール部材)によって封止されたものである。
【0059】
上記シール部材4は、先に述べた製造方法により製造され、先に述べたシール方法に従いシールがなされる。なお、上記シール部材4は、接着性に優れることから、接着層を介さなくても、セパレータ5やMEA2等に対して接着信頼性が高い。このように接着層を別途設ける必要がないため、上記シール部材4は、燃料電池の製造工程の簡略化に寄与することができる。
【0060】
MEA2は、図示しないが、電解質膜と、電解質膜を挟んで積層方向両側に配置された一対の電極からなる。電解質膜および一対の電極は、矩形薄板状を呈している。MEA2を挟んで積層方向両側には、ガス拡散層3が配置されている。ガス拡散層3は、多孔質層で、矩形薄板状を呈している。
【0061】
セパレータ5は、カーボンセパレーターもしくは金属製のものが好ましく、導通信頼性の観点から、DLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)やグラファイト膜等の炭素薄膜を有する金属セパレータが特に好ましい。セパレータ5は、矩形薄板状を呈しており、長手方向に延在する溝が合計六つ凹設されており、この溝により、セパレータ5の断面は、凹凸形状を呈している。セパレータ5は、ガス拡散層3の積層方向両側に対向して配置されている。ガス拡散層3とセパレータ5との間には、凹凸形状を利用して、電極にガスを供給するためのガス流路6が区画されている。
【0062】
固体高分子型燃料電池等の燃料電池の作動時には、燃料ガスおよび酸化剤ガスが、各々ガス流路6を通じて供給される。ここで、MEA2の周縁部は、シール部材4によりシールされている。このため、ガスの混合や漏れは生じない。
【実施例
【0063】
以下、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0064】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0065】
<(A)成分((メタ)アクリロイル基を有する特定のポリマー)>
[ポリマーA1(合成例)]
公知の方法(例えば、特開2012-211216号公報記載)に従い、臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル-2,5-ジブロモアジペートをラジカル重合開始剤とした。アクリルモノマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチルを50重量部/50重量部用い、アクリルモノマー/ラジカル重合開始剤比(モル比)を180にして重合し、末端臭素基アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチル共重合体を得た。この共重合体をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱撹拌した。この混合液中のN,N-ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、末端にアクリロイル基を有するアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチル共重合体[ポリマーA1]を得た。数平均分子量は23000、分子量分布は1.1、重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基の数を1H-NMR分析により求めたところ約1.9個であった。また、ガラス転移温度(Tg)は-50℃であった。
【0066】
[ポリマーA2(合成例)]
アクリルモノマー/ラジカル重合開始剤比を60とする以外は、アクリロイル基末端ポリアクリレート[ポリマーA1]と同様の方法により、末端にアクリロイル基を有するアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチル共重合体[ポリマーA2]を得た。数平均分子量は3000、分子量分布は1.2、重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基の数を1H-NMR分析により求めたところ約1.8個であった。また、ガラス転移温度(Tg)は-50℃であった。
【0067】
[ポリマーA3(合成例)]
アクリルモノマー/ラジカル重合開始剤比を120とする以外は、アクリロイル基末端ポリアクリレート[ポリマーA1]と同様の方法により、末端にアクリロイル基を有するアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチル共重合体[ポリマーA3]を得た。数平均分子量は12000、分子量分布は1.1、重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基の数を1H-NMR分析により求めたところ約1.9個であった。また、ガラス転移温度(Tg)は-50℃であった。
【0068】
[ポリマーA4(合成例)]
アクリルモノマー/ラジカル重合開始剤比を550とする以外は、アクリロイル基末端ポリアクリレート[ポリマーA1]と同様の方法により、末端にアクリロイル基を有するアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸n-ブチル共重合体[ポリマーA4]を得た。数平均分子量は95000、分子量分布は1.4、重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基の数を1H-NMR分析により求めたところ約2.0個であった。また、ガラス転移温度(Tg)は-51℃であった。
【0069】
[ポリマーA5]
BAC-45、アクリロイル基末端ポリブタジエン、大阪有機化学工業社製、ガラス転移温度(Tg):-64℃、数平均分子量:3000
【0070】
[ポリマーA6]
UC-203M、アクリロイル基変性ポリイソプレン、クラレ社製、ガラス転移温度(Tg):-60℃、数平均分子量:35000
【0071】
<(B)成分(ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の単官能(メタ)アクリルモノマー)>
HA(アクリル酸2-エチルヘキシル、Tg:-70℃、三菱ケミカル社製)
BA(アクリル酸n-ブチル、Tg:-55℃、三菱ケミカル社製)
HOA-MS(N)(ライトアクリレートHOA-MS(N)、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、Tg:-40℃、共栄社化学工業社製)
HOP-A(N)(ライトエステルHOP-A(N)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、共栄社化学工業社製、Tg:-7℃)
※なお、上記の、HOA-MS(N)およびHOP-A(N)は、接着成分にも該当する。
【0072】
<(C)成分(ガラス転移温度(Tg)が50℃以上の単官能(メタ)アクリルモノマー)>
IB-X(ライトエステルIB-X、メタクリル酸イソボルニル、Tg:180℃、共栄社化学工業社製)
FA-513M(メタクリル酸ジシクロペンタニル、Tg:175℃、日立化成社製)
IBXA(アクリル酸イソボルニル、Tg:97℃、大阪有機化学工業社製)
NIPAM(イソプロピルアクリルアミド、Tg:134℃、KJケミカルズ社製)
※なお、上記のNIPAMは、接着成分にも該当する。
【0073】
<(D)成分(接着成分)>
KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)
KBM-5103(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)
HO-MS(N)(ライトエステルHO-MS(N)、こはく酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、Tg:20℃、共栄社化学工業社製)
【0074】
<(E)成分(多官能モノマー)>
ブレンマーNDMA(1,9-ノナンジオールジメタクリレート、日本油脂社製)
【0075】
<(F)成分(光ラジカル重合開始剤)>
Omnirad1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1フェニルプロパン-1-オン、iGM RESINS社製)
【0076】
<(G)成分(老化防止剤)>
ノンフレックスDCD(4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、精工化学社製)
【0077】
[実施例1~28、比較例1~7]
(燃料電池シール用ゴム組成物の調製)
後記の表1~表3に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、ゴム組成物を調製した。その際に、(A)成分以外の各材料を、湯せんで手撹拌した後、(A)成分を加え、プラネタリーミキサー(井上製作所社製)を用いて混合することにより、上記ゴム組成物を調製した。
【0078】
そして、上記ゴム組成物を用い、下記の基準にしたがって、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1~表3に併せて示す。
なお、実施例20のゴム組成物を除く上記ゴム組成物に対しては、高圧水銀UV照射機(ヘレウス社製、F600V-10)にて紫外線(UV)を照射(照射強度:250mW/cm2、積算光量:3000mJ/cm2)して架橋を行い、下記の各特性の評価を行った。
実施例20のゴム組成物に対しては、岩崎電気社製の標準EB実験機(EC250)にて電子線(EB)を照射(加速電圧:250kV、照射線量:400kGy)して架橋を行い、下記の各特性の評価を行った。
【0079】
<電解質膜との接着性>
厚み0.1mmの電解質膜(ケマーズ社製、Nafion NR212)を長さ50mm×幅10mmにカットし、このものを、50mm×10mm×深さ1mmの穴が空いた枠冶具の所定位置に設置した後、上記枠冶具の穴に上記ゴム組成物を流し入れ、ゴム組成物を架橋させた。つぎに、上記枠冶具から、上記ゴム組成物の架橋体(ゴム層)を幅10mmの短冊状に打ち抜き、長さ50mm×幅10mmの電解質膜と、長さ50mm×幅10mmのゴム層とが、長さ方向の10mmが重なるよう接着された、接着評価サンプルを得た。そして、上記接着評価サンプルの長さ方向の両端をチャックで挟み、上記接着評価サンプルの長さ方向に対し、引張速度10mm/minで引張試験を実施した後、電解質膜とゴム層との接着面を、以下の基準により目視評価した。
○:接着面全面でゴムが材破した。
×:界面剥離した。
【0080】
<SUS304との接着性>
厚み0.1mmのSUS304からなる板(SUS304板)を長さ50mm×幅10mmにカットし、このものを、50mm×10mm×深さ1mmの穴が空いた枠冶具の所定位置に設置した後、上記枠冶具の穴に上記ゴム組成物を流し入れ、ゴム組成物を架橋させた。つぎに、上記枠冶具から、上記ゴム組成物の架橋体(ゴム層)を幅10mmの短冊状に打ち抜き、長さ50mm×幅10mmのSUS304板と、長さ50mm×幅10mmのゴム層とが、長さ方向の10mmが重なるよう接着された、接着評価サンプルを得た。そして、上記接着評価サンプルの長さ方向の両端をチャックで挟み、上記接着評価サンプルの長さ方向に対し、引張速度10mm/minで引張試験を実施した後、SUS304板とゴムとの接着面を、以下の基準により目視評価した。
○:接着面全面でゴムが材破した。
×:界面剥離した。
【0081】
<100%モジュラス、高温伸び、低温伸び>
上記ゴム組成物をバーコーターで塗工したものを架橋させて得られたシートから、JIS3号ダンベルを打ち抜き、JIS K 6250、JIS K 6251に準拠し、引張試験を実施した。
そして、23℃における100%伸び時の応力(100%モジュラス(MPa))、高温(80℃)および低温(-30℃)での破断伸び(高温伸び(%)、低温伸び(%))を測定した。
上記測定結果をもとに、100%モジュラスは、以下の基準で評価した。
◎:1.0MPa未満
○:1.0MPa以上3.0MPa未満
×:3.0MPa以上
また、上記測定結果をもとに、高温伸びおよび低温伸びは、以下の基準で評価した。
◎:150%を超える
○:100~150%
×:100%未満
【0082】
≪総合評価≫
全ての特性評価が「○」または「◎」であって、「◎」の数が2つ以上の場合を総合評価「◎」とした。また、全ての特性評価が「○」または「◎」であって、「◎」の数が2つ未満の場合を総合評価「○」とした。また、各特性の評価において一つでも「×」がある場合を、総合評価「×」とした。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
上記表1~3の結果から、本発明の各要件を充足する実施例1~28では、電解質膜やSUS304との接着性に優れることから、シール性に優れるものであることがわかる。また、実施例1~28では、100%モジュラスが小さいことから、柔軟性に優れており、低温伸びや高温伸びにも優れていることがわかる。なお、実施例1~28では、UV架橋やEB架橋により形成されることから、電解質膜に対するダメージを低減することができる。
【0087】
これに対し、比較例1では、(C)成分を含んでおらず、高温伸びの評価に劣る結果となった。比較例2では、(B)成分を含んでおらず、100%モジュラスおよび低温伸びの評価に劣る結果となった。比較例3では、[(B)/(C)]の値(重量比)が本発明の規定範囲よりも大きく、高温伸びの評価に劣る結果となった。比較例4では、[(B)/(C)]の値(重量比)が本発明の規定範囲よりも小さく、100%モジュラスおよび低温伸びの評価に劣る結果となった。比較例5では、(D)成分等の、接着成分となり得るもの(カルボン酸基、水酸基、アミド基のいずれかを有する(メタ)アクリルモノマーおよびシランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つ)を含んでおらず、電解質膜やSUS304との接着性に劣る結果となった。比較例6では、[(B)+(C)]の割合が本発明の規定範囲よりも大きく、低温伸びの評価に劣る結果となった。比較例7では、[(B)+(C)]の割合が本発明の規定範囲よりも小さく、高温伸びおよび低温伸びの評価に劣る結果となった。
【0088】
なお、上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のゴム組成物およびシール部材は、燃料電池を構成する部材に用いられるものである。そして、上記シール部材は、シール部材単独で取り扱われるものや、燃料電池に組み込まれた形で取り扱われるものの他、例えば、金属セパレータなどの燃料電池用構成部材と上記シール部材とが接着されてなる燃料電池シール体等に使用することもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 セル
2 MEA
3 ガス拡散層
4 シール部材
5 セパレータ
6 ガス流路
図1