(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】粒子状吸水剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20231109BHJP
C08F 8/14 20060101ALI20231109BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B01J20/26 D
C08F8/14
A61F13/53 300
(21)【出願番号】P 2022512669
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021014046
(87)【国際公開番号】W WO2021201177
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020064626
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】玉置 まり子
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓太
(72)【発明者】
【氏名】田村 ゆいか
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170605(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/204302(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057709(WO,A1)
【文献】特開平07-088171(JP,A)
【文献】特表2017-509757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
C08F 8/14
A61F 13/53
A61L 15/60
A61F 5/44
C08L 101/14
C08K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋されてなるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、
下記式(1)を満たす、粒子状吸水剤。
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)≧0.58×CRC+55.6 (1)
(式(1)において、AAP(2.06kPa)は、2.06kPa加圧下での吸水倍率(g/g)を、RCAP(2.06kPa)は、膨潤後加圧下吸水倍率(g/g)を、CRCは、無加圧下吸水倍率(g/g)を示す)
【請求項2】
下記式(A)を満たす、請求項1に記載の粒子状吸水剤。
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)>76.0 (A)
【請求項3】
下記式(2)を満たす、請求項1または2に記載の粒子状吸水剤。
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)≧0.58×CRC+56.0 (2)
【請求項4】
下記式(3)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)≧0.58×CRC+56.5 (3)
【請求項5】
前記CRCが30g/g以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
AAP(4.83kPa)(4.83kPa加圧下での膨潤倍率(g/g))が10g/g以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
AAP(2.06kPa)(2.06kPa加圧下での膨潤倍率(g/g))が20g/g以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
ゲル透過速度(Gel Permeation Rate:GPR)が20g/min以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
吸湿ブロッキング率が40重量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項10】
流下速度(Flow Rate)が8.5g/s以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項11】
粉塵量が400mg/kg以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項12】
表面張力が65mN/m以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項13】
前記吸水性樹脂が不定形破砕状である、請求項1~12のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項14】
水不溶性無機粒子および水溶性多価金属カチオン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤を含む吸収体。
【請求項16】
請求項15に記載の吸収体を含む衛生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液吸収後であっても加圧下での液戻りが少ない粒子状吸水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤である。吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤は、紙オムツ、生理用ナプキンや成人向け失禁用製品等の衛生物品、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な用途の吸収物品に利用されている。このような吸水性樹脂は、原料として多くの単量体や親水性高分子が提案されているが、性能およびコストの観点から、アクリル酸および/またはその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、最も多く用いられている。
【0003】
粒子状吸水剤の主用途である紙オムツの高性能化に伴い、粒子状吸水剤に対して多くの機能(物性)が要求されている。粒子状吸水剤の物性の具体的な例としては、単なる吸水倍率の高さに限らず、ゲル強度、水可溶分、吸水速度、加圧下吸水倍率、通液性、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐衝撃性(耐ダメージ性)、粉体流動性、消臭性、耐着色性(白色度)、低粉塵等が挙げられる。これらの中に、吸収される液の導入方向に液が粒子状吸水剤から再放出される、いわゆる「逆戻り」の物性がある。逆戻りは、肌に触れた液によって使用者が不快に感ずるため、逆戻りの低減は吸水性樹脂の分野において非常に重要な課題である(例えば、特許文献1)。
【0004】
なお、関連する他の先行技術としては、特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-213911号公報
【文献】国際公開第97/003114号
【発明の概要】
【0006】
ところで、紙オムツなどの吸収物品に尿などの液が排出される度に、吸収物品は交換されるものではなく、通常は吸収物品に複数回の液排出が行われる。液を吸収した粒子状吸水剤は、膨潤状態となる。よって、使用者は、膨潤状態の粒子状吸水剤を有する吸収物品を使用する場合がある。このように粒子状吸水剤が膨潤状態の際に、日常動作、特に体重がかかった状態(例えば、あおむけ寝の状態や座るなどの動作)など外部から圧力が付加された場面においても、吸収体の液保持力が向上して液戻りが低減されることが必要であり、これにより、肌かぶれなどのトラブルも低減され、使用者が快適に長時間吸収物品を使用することができる。従来は、一般的に加圧下吸収倍率(AAP)で表現される、「荷重がかけられた条件下でいかに液を吸収するか」にのみ注目されてきたが、吸液後の膨潤状態において、荷重がかかってもどれだけ液を保持できるかについては着目されておらず、改良の余地があると考えられる。
【0007】
よって、本発明は、粒子状吸水剤が膨潤状態のときに粒子状吸水剤に外部から圧力が負荷されても、液戻りを有意に低減することができる粒子状吸水剤を提供することを目的とする。
【0008】
表面架橋されてなるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記式(1)を満たす、粒子状吸水剤によって、上記課題を解決する。
【0009】
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)≧0.58×CRC+55.6 (1)
(式(1)において、AAP(2.06kPa)は、2.06kPa加圧下での吸水倍率(g/g)を、RCAP(2.06kPa)は、膨潤後加圧下吸水倍率(g/g)を、CRCは、無加圧下吸水倍率(g/g)を示す)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ゲル透過速度(GPR)を測定するための装置を示す模式図である。
【
図2】各実施例および比較例において、CRC[g/g](横軸)に対して、AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)[g/g](縦軸)をプロットした図である。直線は、AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)=0.58×CRC+55.6を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0012】
〔1〕用語の定義
(1-1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子架橋体を指し、以下の物性を満たすものをいう。即ち、「水膨潤性」として、ERT441.2-02で規定されるCRCが5g/g以上、かつ、「水不溶性」として、ERT470.2-02で規定されるExtが50重量%以下の物性を満たす高分子架橋体を指す。
【0013】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC、Ext)を満足する範囲内で、添加剤等を含んだ吸水性樹脂組成物であってもよい。
【0014】
更に、本発明における吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体や乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。なお、吸水性樹脂の形状として、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状等が挙げられるが、本発明の吸水性樹脂は、粒子状(粉末)を主とする。
【0015】
(1-2)「粒子状吸水剤」
本明細書において、吸水剤は、吸水性樹脂を主成分として含む。本明細書において粒子状吸水剤とは、粒子状(別称;粉末状)の吸水剤(吸水性樹脂粒子を主成分として含む)を意味し、一粒の粒子状吸水剤であっても、複数個の粒子状吸水剤であっても粒子状吸水剤と称する。「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味し、粒子とは、測定可能な大きさを持つ、固体または液体の粒状小物体(JIS工業用語大辞典第4版、2002頁)をいう。なお、本明細書において、粒子状吸水剤を単に吸水剤と称する場合もある。
【0016】
なお、水性液とは水に限らず、尿、血液、汗、糞、廃液、湿気、蒸気、氷、水と有機溶媒および/または無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含めば特に制限されるものではない。好ましくは、尿、経血、汗、その他の体液を挙げることができる。
【0017】
本発明にかかる粒子状吸水剤は、水性液を吸収するための衛生材料として好適に使用されるものである。本発明の粒子状吸水剤は、表面架橋されてなるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂(粒子)(以下、単にポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とも称する)を主成分とする。つまり、粒子状吸水剤中に表面架橋されてなるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、好ましくは60~100重量%、70~100重量%、80~100重量%、90~100重量%含まれる。その他、粒子状吸水剤は、他の吸水性樹脂粒子、水、および/または、水不溶性無機粒子、水溶性多価金属カチオン含有化合物等の添加剤を任意に含む。粒子状吸水剤の好適な含水率は0.2~30重量%である。すなわち、これらの成分が一体化された吸水性樹脂組成物も粒子状吸水剤の範疇である。
【0018】
なお、吸水剤中のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の上限は99重量%、さらには97重量%、特に95重量%程度であり、好ましくは水や後述の添加剤(水不溶性無機粒子、水溶性多価金属カチオン含有化合物)をさらに含む。
【0019】
また、本発明の粒子状吸水剤においては、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とするが、粒子状吸水剤は、その他の吸水性樹脂を含有していてもよい。その他の吸水性樹脂としては、ポリスルホン酸(塩)系吸水性樹脂、無水マレイン酸(塩)系吸水性樹脂、ポリアクリルアミド系吸水性樹脂、ポリビニルアルコール系吸水性樹脂、ポリエチレンオキシド系吸水性樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系吸水性樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系吸水性樹脂、ポリアルギン酸(塩)系吸水性樹脂、デンプン系吸水性樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0020】
(1-3)「ポリアクリル酸(塩)」および「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸および/またはその塩を指す。また、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とは、主成分として、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、好ましくは、グラフト成分によって内部架橋されたポリアクリル酸(塩)が表面架橋されてなる。
【0021】
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、粒子状吸水剤中、粒子状(別称;粉末状)であることが好ましい。
【0022】
なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。
【0023】
(1-4)「EDANA」および「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0024】
(1-5)「PSD」(ERT420.2-02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の粒度分布を意味する。
【0025】
なお、重量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定する。
【0026】
(1-6)その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、重量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「重量ppm」または「質量ppm」を意味する。更に、「重量」と「質量」、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」をそれぞれ意味する。
【0027】
また、「リットル」を「l」または「L」、「重量%」を「wt%」と便宜上記すことがある。更に、微量成分の測定を行う場合において、検出限界以下をN.D(Non Detected)と表記する。
【0028】
〔2〕粒子状吸水剤
本発明の粒子状吸水剤は、表面架橋されてなるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、式(1)を満たす、粒子状吸水剤である。
【0029】
本発明の粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤が膨潤状態のときに粒子状吸水剤に外部から圧力が付加されても、液戻りを有意に低減することができる。
【0030】
以下、AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)で求められる値を値(A)とも称し、0.58×CRC+55.6で求められる値を値(B)とも称す。
【0031】
粒子状吸水剤が式(1)を満たさない、すなわち、値(A)<値(B)の場合、粒子状吸水剤が吸水し、膨潤した後に、液戻り量が顕著に大きくなる。
【0032】
値(A)は、AAP(2.06kPa)とRCAP(2.06kPa)との和である。「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率を意味する。「RCAP」は、Retention Capacity Against Pressureの略称であり、粒子状吸水剤の膨潤時の加圧下吸水倍率を意味する。また、「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。通常、吸水倍率は、加圧下で低下するため、同一の粒子状吸水剤においては、AAP(2.06kPa)[g/g]<CRC(2.06kPa)[g/g]となる。
【0033】
吸水性物品の実使用を想定した場合、様々な使用状況、例えば、体重がかかった状態で排尿される場合や、排尿時は無加圧で膨潤するが動作に伴い加圧される場面など種々のケースが想定される。本発明者らは、「粒子状吸水剤が吸水し、膨潤した後の戻り量低減」という課題を解決しようとする過程で、種々のケースでの「液保持力」(吸水性樹脂粒子自体の吸水倍率(すなわちCRC)に、吸水性樹脂粒子同士(一次粒子、及び/又は、一次粒子同士が凝集した二次粒子を含む)の隙間に保持される液量を加えた吸収量)が重要であることを見出し、数多くの粒子状吸水剤の物性の中から、AAP(2.06kPa)およびRCAP(2.06kPa)に着目したものである。
【0034】
ここで、「粒子状吸水剤が膨潤状態のときに粒子状吸水剤に外部から圧力が付加されても、液戻りを有意に低減する」という本願課題においては、RCAPが高ければ、課題が解決されるようにも考えられる。しかしながら、膨潤状態の液戻りは、膨潤時の加圧下吸水倍率であるRCAPを考慮するだけでは不十分であることが本発明者らの検討過程で判明した。例えば、後述の比較例1-5のRCAPは実施例1-8よりも高いが、膨潤時の粒子状吸水剤の液戻りは有意に低下していることから、この事実は理解される。そして、本発明者らは、AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)の総和と、CRCとが膨潤時の粒子状吸水剤の液戻りに関して重要な因子であることを見出し、さらに、式(1)を満たす新規の粒子状吸水剤が、膨潤時の粒子状吸水剤の液戻りを有意に抑制することを見出したのである。
【0035】
なお、通常吸水性樹脂の物性評価として用いられている「逆戻り」(戻り量、Re-Wetと称されることもある)は、吸水性樹脂(吸水剤)、パルプ等を含む吸収層を不織布等で積層した吸収シート(吸収体)での評価であって、吸水性樹脂(吸水剤)そのものの評価ではない。また、前記のRe-Wet評価は、吸収体中に含まれる吸水性樹脂が飽和状態であるとは言えず(吸収体表面上に、30分間隔の複数回で、液を吸収した後の荷重下戻りを評価している)、本願課題である「膨潤状態」の粒子状吸水剤をさらに加圧した状態での液保持力を評価するものではない。
【0036】
また、粒子状吸水剤は以下の式(2)を満たすことがより好ましい。
【0037】
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)≧0.58×CRC+56.0 (2)
上記式(2)を満たす粒子状吸水剤であることで、膨潤した吸収体を加圧した際の液保持力に優れる。
【0038】
特に、粒子状吸水剤のCRCが37.0g/g未満の場合は、上記式(2)を満たすことがより好ましい。
【0039】
さらに、粒子状吸水剤は以下の式(3)を満たすことがより好ましい。
【0040】
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)≧0.58×CRC+56.5 (3)
上記式(3)を満たす粒子状吸水剤であることで、膨潤した吸収体を加圧した際の液保持力に優れる。
【0041】
特に、粒子状吸水剤のCRCが37.0g/g未満の場合は、上記式(3)を満たすことがより好ましい。
【0042】
値(A)としては、特に限定されるものではないが、76.0g/gよりも大きいことが好ましい。すなわち、粒子状吸水剤は、下記式(A)を満たすことが好ましい。
【0043】
AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)>76.0 (A)
値(A)が76.0g/gよりも大きいことで、粒子状吸水剤の膨潤後の液戻りの低減がより一層発揮されやすい。値(A)の上限値は、特に限定されるものではないが、通常、90.0g/g以下であり、85.0g/g以下であってもよい。
【0044】
なお、式(1)~(3)および式(A)の算出にあたっては、AAP(2.06kPa)、RCAP(2.06kPa)およびCRCを小数点第1位までの測定値を用い、値(A)、値(B)、ならびに式(2)および式(3)の右辺の算出においては、上記測定値を用いて算出された値の小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までの値を用いる。
【0045】
(2-1)CRC(遠心分離機保持容量)(ERT441.2-02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。
【0046】
具体的には、粒子状吸水剤または吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0047】
本発明の粒子状吸水剤のCRC(遠心分離機保持容量)は、30g/g以上であることが好ましく、31g/g以上であることがより好ましく、32g/g以上であることがさらに好ましく、33g/g以上であることがさらにより好ましい。CRCが30g/g以上であることで、吸収量が適切となり、紙おむつ等の衛生物品の吸収体としての性能が確保される。また、粒子状吸水剤のCRC(遠心分離機保持容量)は、70g/g以下であることが好ましく、60g/g以下であることがより好ましく、50g/g以下であることがさらにより好ましく、40g/g以下であることが特に好ましい。CRCが70g/g以下であることで、尿や血液等の体液等を吸収する速度が保持されるため、高吸水速度タイプの紙おむつ等への使用にも適する。なお、CRCは、内部架橋剤の種類や量等で制御することができる。
【0048】
(2-2)加圧下吸水倍率(AAP)(ERT442.2-02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の加圧下吸水倍率を意味する。
【0049】
具体的には、AAP(2.06kPa)は、粒子状吸水剤または吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm2、0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、荷重条件を4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)に変更して測定する場合もある。この場合、AAP(4.83kPa)と記載する。
【0050】
また、ERT442.2-02には、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。
【0051】
本発明の粒子状吸水剤のAAP(2.06kPa)は、好ましくは、20g/g以上、より好ましくは24g/g以上、さらに好ましくは26g/g以上、さらにより好ましくは28g/g以上、特に好ましくは29g/g以上、最も好ましくは30g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは40g/g以下である。上記の条件を満たすことにより、AAP(2.06kPa)がある程度高いことで、式(1)の条件を満たしやすくなる。また、当該粒子状吸水剤を用いて製造した紙おむつは、パルプからの尿の吸い取り能力に優れ、戻り量を低減でき、肌かぶれや尿漏れを抑制できるようになる。なお、後述の実施例、比較例を参酌すれば理解されるように、AAP(2.06kPa)が高いことと、式(1)を満たすこととは、相関性はない。
【0052】
また、本発明の粒子状吸水剤のAAP(4.83kPa)は、好ましくは、10g/g以上、より好ましくは13g/g以上、さらに好ましくは、17g/g以上、特に好ましくは20g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは30g/g以下である。上記の条件を満たすことにより、上記の粒子状吸水剤を用いて製造した紙おむつは、パルプからの尿の吸い取り能力に優れ、戻り量を低減でき、肌かぶれや尿漏れを抑制できるようになる。なお、AAPは、表面架橋剤の種類や量等で制御することができる。
【0053】
(2-3)加圧下保持容量(Retention Capacity Against Pressure:RCAP)
「RCAP」は、Retention Capacity Against Pressureの略称であり、粒子状吸水剤の膨潤時の加圧下吸水倍率を意味する。
【0054】
RCAPの試験は、米国特許第8269060号明細書に記載のGel Bed Permeability(ゲル床透過性)試験に用いられるシリンダー、ピストンおよびおもりを用いて測定することができる。具体的には、米国特許第8269060号明細書の
図1で図示される装置を用いる。
【0055】
試験実施前に、シリンダー、ピストンおよびおもりの合計重量を測定し、その値をWa[g]とする。試験するサンプルを約0.9g量り取り、シリンダー底面に均一に散布し、試験溶液(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に60分間浸漬し、制限荷重をかけることなくサンプルを膨潤させる。60分後、シリンダー中のサンプルにピストンおよびおもり(合計重量約596g)を乗せ、シリンダーを試験溶液から引き上げ、目開き2000μmのJIS標準篩上に乗せて約1分間液切りを行う。液切り後、シリンダー下部に付着した水滴をキムワイプ(日本製紙クレシア製S-200)等により除去し、重量測定を行い、得られた値をWb[g]とする。なお、キムワイプによるシリンダー下部に付着した水滴の除去は、シリンダー中の膨潤ゲル層に含まれる水分を除去しないよう、あくまでシリンダー外に付着した水分の除去を目的として、キムワイプによる圧力がかからないように、0.5秒以内に拭き取ることで行われる。以下の式(4)により、RCAPが計算される。
【0056】
【0057】
本発明の粒子状吸水剤のRCAP(2.06kPa)は、好ましくは、18g/g以上、より好ましくは24g/g以上、さらにより好ましくは30g/g以上、特に好ましくは40g/g以上、最も好ましくは43g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは60g/g以下である。上記の条件を満たすことにより、RCAP(2.06kPa)がある程度高いことで、式(1)の条件を満たしやすくなる。また、当該粒子状吸水剤を用いて製造した紙おむつは、パルプからの尿の吸い取り能力に優れ、戻り量を低減でき、肌かぶれや尿漏れを抑制できるようになる。なお、後述の実施例、比較例を参酌すれば理解されるように、RCAP(2.06kPa)が高いことと、式(1)を満たすこととは、相関性はない。
【0058】
RCAP(2.06kPa)は、吸水性樹脂の製造方法、例えば、添加剤(例えば、水不溶性無機粒子)の混合時間や可溶成分の含有量を制御することによって、値を制御することができる。
【0059】
(2-3)ゲル透過速度(Gel Permeation Rate:GPR)
本明細書において、粒子状吸水剤の「通液性」とは、荷重下において膨潤ゲル粒子間を通過する液体の流れ性のことを言う。この指標として、ゲル透過速度(GPR)が用いられる。粒子状吸水剤のGPRの測定は、米国特許第5849405号明細書記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験を参考に、測定条件を変更し、以下の手順で行う。
【0060】
測定のための装置として、
図1に示す装置400を用いる。装置400は、大きく分けて、容器410とタンク420とから構成されている。容器410にはセル411(内径6cm)が設けられており、セル411の内部に膨潤ゲル414(粒子状吸水剤を吸水させたもの)を収納、および液体423を導入できる。また、セル411にピストン412を嵌合させることにより、膨潤ゲル414に対して圧力を負荷することができる。セル411の底面およびピストン412の底面には、金網413a、413b(No.400ステンレス製金網、目開き38μm)が張られており、膨潤ゲル414(および粒子状吸水剤)が通過できないようになっている。ここで、液体423は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を用いる。タンク420は、内部に液体423を蓄えている。液体423は、コック付きL字管422を通じてセル411に導入される。また、タンク420にはガラス管421が挿入されており、ガラス管421の内部は空気で満たされている。これによって、ガラス管421の下端とセル411内の液面を同じとすることができる。すなわち、タンク420内の液体423の液面がガラス管421の下端よりも上部にある間は、セル411内の液面を一定に保持することが可能となる。今回の測定では、タンク420内の液体423の下部液面(すなわち、ガラス管421の下端)と、膨潤ゲル414の底面との高低差を、4cmとした。つまり、装置400によれば、セル411に一定の静水圧の液体423を導入することができる。ピストン412には孔415が空けられているので、液体423は孔415を流通し、さらに膨潤ゲル414層も流通して、セル411の外部へと流出する。容器410は、液体423の通過を妨げないステンレス製の金網431の上に載せられている。そのため、セル411から流出した液体423は、最終的に捕集容器432に集められる。そして、捕集容器432に集められた液体423の量は、上皿天秤433によって秤量できる。
【0061】
具体的なゲル透過速度(GPR)の測定方法は以下の通りである。なお、以下の操作は室温(20~25℃)にて行う。
【0062】
(1)セル411に、粒子状吸水剤(0.900g)を均一に入れる。
【0063】
(2)上記粒子状吸水剤を、無加圧下にて、液体(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液)を60分間吸水させ、膨潤ゲル414とする。
【0064】
(3)膨潤ゲル414の上にピストンを載置して、0.3psi(2.06kPa)の加圧状態にする。
【0065】
(4)静水圧を3923dyne/cm2の一定値に保ちながら、液体423をセル411に導入し、膨潤ゲル414層を通液させる。
【0066】
(5)膨潤ゲル414層を通液する液体423の量を、5秒間隔で3分間記録する。すなわち、膨潤ゲル414層を通過する液体423の流速を測定する。測定には、上皿天秤433およびコンピュータ(図示せず)を使用する。
【0067】
(6)液体423の流通を開始してから1分後~3分後の流速を平均し、ゲル透過速度(GPR)[g/min]を算出する。
【0068】
本発明の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、好ましくは、20g/min以上である。ゲル透過速度(GPR)が20g/min以上であることで、粒子状吸水剤を吸収体に使用した場合の液拡散性に優れる。粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、より好ましくは22g/min以上、さらに好ましくは24g/min以上、特に好ましくは26g/min以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは300g/min以下、より好ましくは150g/min以下である。
【0069】
ゲル透過速度(GPR)は、例えば、吸水性樹脂の内部架橋剤量、表面架橋剤量、表面架橋反応の時間等を制御することによって、値を制御することができる。
【0070】
(2-4)吸湿ブロッキング率
本発明における「吸湿流動性」とは、粒子状吸水剤を気温25℃および相対湿度90%RHの条件下に1時間放置した際のブロッキング、ケーキング、または粉体としての流動性について評価したものであり、吸湿ブロッキング率で判断する。吸湿ブロッキング率の算出法は、実施例に詳述される。簡略に述べると、粒子状吸水剤を篩の上に乗せ、分級を行い、篩上に残存した粒子状吸水剤の重量(W1[g])および篩を通過した粒子状吸水剤の重量(W2[g])を測定し、次式にしたがって、吸湿流動性を算出する。
【0071】
吸湿ブロッキング率[重量%]={W1/(W1+W2)}×100。
【0072】
測定方法の詳細は、実施例に記載のとおりである。
【0073】
本発明の粒子状吸水剤の吸湿ブロッキング率は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、よりさらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは0重量%である。本発明の粒子状吸水剤の吸湿ブロッキング率は、0~50重量%、0~40重量%、0~30重量%、0~20重量%、または0~10重量%であり得る。吸湿ブロッキング率が40重量%以下であることで、多湿の環境下においても、粒子状吸水剤の取り扱い性がよく、衛生材料向けの薄型吸収体の製造時等、製造プラントの移送配管内での凝集および詰まりの発生や、親水性繊維と均一に混合できないという問題が生じるおそれが少なくなる。ゆえに、上記の条件を満たすことにより粒子状吸水剤および繊維基材を用いて吸収体を作製する際に、装置設備への付着を少なくすることができる。
【0074】
吸湿ブロッキング率は、吸湿時の流動性を向上するために添加する剤の種類やその添加量によって制御することができる。
【0075】
(2-5)流下速度(Flow Rate、(ERT450.2-02))
流下速度(Flow Rate)は、粒子状吸水剤の粉体流動性を意味する。
【0076】
具体的には、粒子状吸水剤100gを下部にダンパーを備えた漏斗に投入し、ダンパーを開け、流下開始から流下終了までの時間を計測することにより、単位時間当たりの粒子状吸水剤の流下量を算出し、これを流下速度とする。
【0077】
本発明の粒子状吸水剤の流下速度(Flow Rate)は、8.5g/s以上であることが好ましい。流下速度が8.5g/s未満である場合、粒子状吸水剤の流動性が低いため、ホッパーへの粒子状吸水剤の供給やフィーダーによる粒子状吸水剤の輸送が困難になる問題や、衛生材料向けの吸収体の製造時に親水性繊維と均一に混合できない問題が生じる場合がある。
【0078】
(2-6)粉塵量
本発明の粒子状吸水剤の粉塵量は、吸水剤あたり400mg/kg以下であることが好ましい。吸水剤の粉塵量が上記上限以下であることで、粉塵が十分に低減され、吸水剤の取り扱い性に優れる。吸水剤の粉塵量は、吸水剤あたり300mg/kg以下であることがより好ましく、250mg/kg以下が更に好ましく、200mg/kg以下が特に好ましい。該値は0mg/kg吸水剤が理想ではあるが、実使用上および工業規模での生産性を考慮し、下限値は吸水剤あたり通常、10mg/kg以上であり、15mg/kg以上であってもよく、20mg/kg以上であってもよい。
【0079】
粒子状吸水剤の粉塵量は、実施例記載の方法により算出される。
【0080】
(2-7)表面張力
表面張力とは、固体や液体の表面積を増加させるのに必要な仕事(自由エネルギー)を単位面積当たりで表したものである。本願でいう表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力をいう。なお、吸水剤の表面張力は、以下の手順により測定する。即ち、十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、及び粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。
【0081】
本発明の粒子状吸水剤の表面張力は、65[mN/m]以上であることが好ましく、より好ましい順に66[mN/m]以上、68[mN/m]以上、70[mN/m]以上、71[mN/m]以上、72[mN/m]以上である。表面張力が上記の条件を満たすことにより、紙おむつでの戻り量をより低減させることができる。上限は通常75[mN/m]で十分である。
【0082】
(2-8)粒子形状
吸水性樹脂(粉末)は、粒子形状として不定形破砕状であることが好ましい。ここで、不定形破砕状とは、形状が一定でない破砕状の粒子である。逆相懸濁重合や気相重合で得られた球状粒子に比べて不定形破砕状では形状が一定でないため、パルプなどの親水性繊維との混合性に優れ、粒子間の隙間による液拡散性が高いため好ましい。本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤は、好ましくは水溶液重合における粉砕物である。不定形破砕状は、水溶液重合を経て得られる架橋重合体のゲルまたは乾燥物(好ましくは乾燥物)を粉砕することによって得られる。一方、粉砕工程を経ない場合、代表的には逆相懸濁重合や重合モノマーを噴霧し重合するような液滴重合等によって得られる球状の粒子または球状粒子の造粒物は、不定形破砕状ではない。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の形状が不定形破砕状であると、平均真円度の高いもの(例えば、球形のもの)と比べて吸水速度やRCAPに優れる。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の平均真円度は、0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.55以下であることがさらに好ましい。
【0083】
平均真円度の算出方法は以下のとおりである。ランダムに100個以上の粒子状吸水剤を選択し、各粒子状吸水剤を電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VE-9800)(倍率50倍)で撮影して粒子状吸水剤の画像を取得し、付属の画像解析ソフトを用いて粒子ごとに周囲長および面積を算出した。以下の式:
【0084】
【0085】
で各粒子の真円度を求め、得られた値の平均値を平均真円度として算出する。
【0086】
(2-9)水不溶性無機粒子/水溶性多価金属カチオン含有化合物
本発明の粒子状吸水剤は、水不溶性無機粒子および水溶性多価金属カチオン含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0087】
粒子状吸水剤が、水不溶性無機粒子を含むことで、粒子状吸水剤の吸湿流動性を、向上させることができる。また、水不溶性無機粒子を添加することで、吸収性物品の吸収量の向上を図ることができる。さらに、吸水性樹脂粒子(組成物)は、製造後の保管によって吸収性物品を製造する際に流動性を失っている場合がある。かような流動性を失った吸水性樹脂粒子(組成物)に対して、水不溶性無機粒子を混合して好適には吸収体を成形することで、性能を維持したまま、吸水性樹脂粒子(組成物)の流動性が回復するので、生産性が向上する。ここで、吸湿流動性とは、高湿条件下に保管された場合の粒子状吸水剤の流動性を指し、吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤は一般的に吸湿によりその流動性が低下する。なお、粒子状吸水剤の吸湿流動性を向上させる目的で、水不溶性無機粒子を添加することがこれまでにも行われてきたが、水不溶性無機粒子を単に添加、混合するだけでは式(1)の関係を満たすことができず、粒子状吸水剤が膨潤状態での加圧下戻り量が増加する(後述の比較例参照)。一方、水不溶性無機粒子の添加・混合条件(例えば、混合時間)等を工夫することで、粒子状吸水剤が式(1)の関係を満たすことができ、粒子状吸水剤が膨潤した状態での加圧下の液戻りを有意に抑制することができる。
【0088】
水不溶性無機粒子としては、ハイドロタルサイト等の多元金属化合物、二酸化ケイ素(シリカ)、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、金属リン酸塩(例えば、リン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム)、金属硼酸塩(例えば、ホウ酸チタン、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸鉄、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン、ホウ酸カルシウム)、珪酸またはその塩、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、活性白土等が挙げられる。中でも、本発明の効果が顕著に得られることから、水不溶性無機粒子が多元金属化合物、二酸化ケイ素、タルク、およびリン酸三カルシウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウムおよびリン酸三カルシウムから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0089】
水不溶性無機粒子の体積平均粒子径としては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。また、体積平均粒子径は0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。上記下限以上であることで、添加工程時の作業性の低下を抑制し、十分な性能を得ることができる。なお、水不溶性無機粒子の体積平均粒子径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラックMT3000II粒度分析計を使用して測定)で測定することができる。
【0090】
水不溶性無機粒子は表面処理が行われていてもよい。表面処理に用いられる表面処理剤としては、下記多元金属化合物の表面処理剤の具体例が挙げられる。
【0091】
上記多元金属化合物とは、2価および3価の2種類の金属カチオンと水酸基とを含有する多元金属化合物である。
【0092】
上記2価の金属カチオンとしては、Mg2+、Fe2+、Zn2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、Cu2+が挙げられ、耐熱性等の観点から、Mg2+が好ましい。上記3価の金属カチオンとしては、Al3+、Fe3+、Mn3+が挙げられ、耐熱性等の観点から、Al3+が好ましい。したがって、多元金属化合物の好適な一実施形態は、2価の金属カチオンがマグネシウムカチオンであり、3価の金属カチオンがアルミニウムカチオンである。
【0093】
多元金属化合物は、一般式(1)[M1
2+
1-xM2
3+
x(OH-)2]x+・[(An-)x/n・mH2O]x-(M1
2+は2価の金属カチオン、M2
3+は3価の金属カチオン、An-はn価の陰イオン、H2Oは水を表す)で表される層状化合物の構造として知られているハイドロタルサイト様構造を有していることが好ましい。
【0094】
また、一般式(1)における2価の金属カチオンと3価の金属カチオンとの比率は、xが0.2~0.75の範囲が好ましく、0.25~0.7の範囲がより好ましく、0.25~0.5の範囲が更に好ましい。また、陰イオンとしては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3
-、CO3
2-、SO4
2-、Fe(CN)6
3-、CH3COO-、シュウ酸イオンまたはサリチン酸イオン等が挙げられるが、炭酸アニオンが好ましい。また、mは、0より大きい実数で、0<m≦10であることが好ましい。
【0095】
多元金属化合物の形状は、特に制限されないが、球状(粉末状を含む)であることが好ましい。また、多元金属化合物は、一定の粒度であることが好ましく、体積平均粒子径は2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。粒子径が上記上限以下であることで、十分な効果を得るための添加量が多くなり過ぎることがなく、得られた吸水剤の吸水性能を損なうおそれが少ない。また、体積平均粒子径は0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。上記下限以上であることで、添加工程時の作業性の低下を抑制し、十分な性能を得ることができる。また、吸水性樹脂粒子の表面に付着した多元金属化合物の平均粒子径の測定は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた測定法により測定することができる。
【0096】
更に、層間に有機化合物をインターカレーションしていてもよく、吸水性樹脂粒子等との混合性を高めるための表面処理が施されていてもよい。
【0097】
多元金属化合物の好ましい構造式としては、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oや、Mg4Al2(OH)12CO3・3H2O等が挙げられる。具体的には、協和化学工業株式会社製のDHT-4H、DHT-6、堺化学工業株式会社製のSTABIACE HT-1-NC、STABIACE HT-P等が挙げられる。
【0098】
水不溶性無機粒子の含有量は、吸収性物品の吸収量を向上させ、吸収量および戻り量のバランスに優れたものとするという観点から、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂100重量%に対して、0.01重量%以上10重量%未満であり、好ましくは0.1~5重量%である。
【0099】
粒子状吸水剤が、水溶性多価金属カチオン含有化合物を含むことで、吸水剤の性能が向上する。なお、粒子状吸水剤の吸湿流動性を向上させる目的で、水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加することがこれまでにも行われてきたが、水溶性多価金属カチオン含有化合物を単に添加、混合するのではなく、例えば、水溶性多価金属カチオン含有化合物の添加・混合条件(例えば、混合時間)等を工夫することで、式(1)の関係を満たすことができ、十分な加圧下吸水性能を示す粒子状吸水剤を得ることができる。
【0100】
水溶性多価金属カチオン含有化合物とは、2価以上好ましく3価以上の、金属カチオンを含有する多元金属化合物以外の化合物を指す。該3価以上の金属カチオンとしては、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウムが例示され、アルミニウムが好ましい。該水溶性多価金属カチオン含有化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの多価金属の無機塩、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートなどの多価金属の有機塩等の多価金属化合物等が挙げられる。中でも、多価金属カチオンとしてアルミニウムを含有する化合物であることが好ましく、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウムであることがより好ましい。
【0101】
水溶性多価金属カチオン含有化合物の含有量は、吸水剤の性能向上の観点から、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂100重量部に対して、多価金属カチオン量に換算で0.001~5重量部であることが好ましく、0.01~2重量部であることがより好ましく、0.01~1重量部であることがさらに好ましい。
【0102】
上記形態の粒子状吸水剤は、例えば、下記製造方法(a)~(c)において、式(1)を満たすように制御することで得ることができる。
【0103】
(製造方法a)
吸水性樹脂に水不溶性無機粒子を添加し、混合時間を制御して、式(1)を満たす粒子状吸水剤を得る。
【0104】
水不溶性無機粒子が添加される吸水性樹脂は、表面架橋されたものであってもよく、表面架橋されていないものであってもよい。また、水不溶性無機粒子は、吸水性樹脂または他の添加剤を含有する吸水性樹脂組成物と混合されてもよい。更に、吸収性物品を製造する際に、吸水性樹脂(組成物)、水不溶性無機粒子、および親水性繊維を混合してもよい。
【0105】
また、吸水性樹脂と、水不溶性無機粒子とは、乾式混合するのが好ましい。乾式混合により、得られる吸水剤の粉塵量が低減するため好ましい。該乾式混合とは、水不溶性無機粒子および吸水性樹脂が吸収または保持している液状物質以外の液状物質が実質存在しない(好ましくは存在しない)状態での混合を意味する。具体的には、吸湿水分や層間に保持されている有機化合物を含む水不溶性無機粒子と、乾燥残分や吸湿水分、前記表面架橋剤添加工程で添加された表面架橋剤や溶媒等を有する吸水性樹脂とを、更に液状物質を添加することなしに混合する形態が含まれる。
【0106】
吸水性樹脂と、水不溶性無機粒子との混合時間は特に制限されるものではなく、混合装置により適宜設定されるが、上記式(1)を満たすように比較的長時間の混合を行うことが好ましい。すなわち、本発明においては、添加剤を単に混合する目的での混合時間よりも長い時間を設定して吸水性樹脂と、水不溶性無機粒子とを混合することが好ましい。通常、生産性向上を目的として、目視または従来の評価方法により添加物が均一に混合されていることを確認できた時点で、混合装置の作動を止める。また、このような従来の混合によっても、AAPやCRCといった粒子状吸水剤に求められる基本性能は担保されていた。しかしながら、これらの粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤が膨潤している状態での加圧下戻り量が十分に低減されたものではなかった。このような課題を本発明者らは知得し、検討した結果、水不溶性無機粒子は凝集しやすいため、吸水性樹脂中で微視的には十分に分散されておらず、水不溶性無機粒子を添加した際に粒子状吸水剤の物性の低下、特に膨潤状態での加圧下戻り量の増加に繋がるのではないかと仮定した。そして、水不溶性無機粒子を混合する際の混合時間を通常の均一な混合に必要な時間よりも長くすることで、式(1)を満たすための粒子状吸水剤が得られることを見出した。一般的に、均一な混合に必要な時間は従来の評価方法などによって設定されていたが、本発明者らはRCAPという膨潤している状態での加圧下戻り量を改善するための一つの指標となる新規なパラメータを見出し、それによって初めて、従来は十分とされていた混合時間をさらに長くすることによる付加的な効果を発見した。従来は、長い混合時間は生産性の低下等を招き、むしろ好ましくないと考えられていたため積極的な実施はされてこなかったが、本発明では上記の発見により、生産性低下等のデメリットを上回って余りあるメリットを見出すことができた。吸水性樹脂と、水不溶性無機粒子と、の混合時間は、例えば、5分以上であり、15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。
【0107】
吸水性樹脂と、水不溶性無機粒子との混合に用いられる手段は特に限定されるものではないが、パドル式撹拌装置のような緩やかな攪拌ではなく、比較的強攪拌条件となるような混合手段を用いることが好ましい。
【0108】
混合時間の上限は特に制限されるものではないが、生産性や効果の飽和を考慮すると、5時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましい。また、混合方法としては、特に限定されるものではないが、振動を付与しながら混合する方法、回転運動しながら混合する方法(例えば、ターブラ・シェーカー・ミキサーを用いる方法)、攪拌機による混合、空気輸送など気流と共に粒子を輸送するような方法が好ましい。攪拌条件は混合装置により適宜設定されるが、例えばターブラ・シェーカー・ミキサーを用いる場合は、その回転速度は45rpmより高いことが好ましく、70rpm以上であることがより好ましく、100rpm以上であることがさらに好ましい。また、各混合方法によって、理想的な混合に必要な混合時間は異なるが、適宜混合時間を調整することで本願の目的は達成可能である。本願の目的が達成できたかどうかの判断は、本願の物性パラメータを満たすかどうかが一つの指標となりうる。
【0109】
(製造方法b)
吸水性樹脂に水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加し、混合時間を制御して、式(1)を満たす粒子状吸水剤を得る。
【0110】
水溶性多価金属カチオン含有化合物は吸水性樹脂に粉体として直接混合してもよいし、溶液、特に水溶液にして混合してもよく、表面架橋剤やその水溶液に溶解させて混合してもよい。
【0111】
また、複数回添加してもよく、その場合、例えば2回添加する場合、その(重量)比率としては1/99~99/1、好ましくは10/90~90/10の範囲に規定される。これらの範囲を超えると、極めて1回での添加と同じ状況に近くなり複数回添加の効果が乏しくなるため好ましくない。
【0112】
水溶性多価金属カチオン含有化合物の添加方法としては特に制限されるものではないが、(1)表面架橋剤の添加と同時に添加する(表面架橋工程で添加する)、(2)表面架橋工程の後に添加する、ことが好ましい。このようなタイミングで水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加することで、粒子表面近傍に存在させることが可能となり吸水剤の性能を向上させることが可能である。表面架橋工程の後に添加する場合、他の添加剤とともに添加してもよい。
【0113】
水溶性多価金属カチオン含有化合物は、溶媒(例えば、水)に溶解させた溶液の状態で吸水性樹脂(粉末)に添加してもよい。水溶性多価金属カチオン含有化合物を水溶液として添加する場合には、水以外に親水性有機溶媒(アルコールないしポリグリコール)や界面活性剤を併用して分散性や溶解性や混合性を向上させてもよい。使用する水の量は水溶性多価金属カチオン含有化合物の種類や添加方法で適宜決定されるが、例えば、吸水性樹脂100重量部に対して0重量部(乾式混合)~50重量部、さらには0.1~10重量部、0.5~5重量部である。
【0114】
また、水溶性多価金属カチオン含有化合物は、そのままの形態で吸水性樹脂(粉末)に添加してもよい。その場合、水溶性多価金属カチオン含有化合物は、粒子であることが好ましい形態である。水溶性多価金属カチオン含有化合物粒子の体積平均粒子径としては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。また、体積平均粒子径は0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。上記下限以上であることで、添加工程時の作業性の低下を抑制し、十分な性能を得ることができる。なお、水溶性多価金属カチオン含有化合物粒子の体積平均粒子径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラックMT3000II粒度分析計を使用して測定)で測定することができる。
【0115】
本明細書において、水溶性とは、室温(23℃)、常圧下(1気圧下)での、水に可溶(もしくは易溶)の物質を示す。例えば、室温、常圧下での水100mlに対する溶解量が1g以上の物質を示す。また、水不溶性とは、室温(23℃)、常圧下(1気圧下)での、水に不溶(もしくは難溶)の物質を示す。例えば、室温、常圧下での水100mlに対する溶解量が1g未満の物質を示し、さらに室温、常圧下での水100mlに対する溶解量が0.1g未満であることが好ましい。
【0116】
吸水性樹脂と、水溶性多価金属カチオン含有化合物との混合時間は特に制限されるものではなく、混合装置により適宜設定されるが、上記式(1)を満たすように比較的長時間の混合を行うことが好ましい。すなわち、本発明においては、添加剤を単に混合する目的での混合時間よりも長い時間を設定して吸水性樹脂と、水溶性多価金属カチオン含有化合物とを混合することが好ましい。通常、生産性向上を目的として、目視または従来の評価方法により添加物が均一に混合されていることを確認できた時点で、混合装置の作動を止める。また、このような従来の混合によっても、AAPやCRCといった粒子状吸水剤に求められる基本性能は担保されていた。しかしながら、これらの粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤が膨潤している状態での加圧下戻り量が十分に低減されたものではなかった。このような課題を本発明者らは知得し、検討した結果、水溶性多価金属カチオン含有化合物は従来の混合方法及び時間では不十分であるため、吸水性樹脂中で微視的には十分に分散されておらず、水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加した際に粒子状吸水剤の物性の低下、特に膨潤状態での加圧下戻り量の増加に繋がるのではないかと仮定した。そして、水溶性多価金属カチオン含有化合物を混合する際の混合時間を通常の均一な混合に必要な時間よりも長くすることで、式(1)を満たすための粒子状吸水剤が得られることを見出した。一般的に、均一な混合に必要な時間は従来の評価方法などによって設定されていたが、本発明者らはRCAPという膨潤している状態での加圧下戻り量を改善するための一つの指標となる新規なパラメータを見出し、それによって初めて、従来は十分とされていた混合時間をさらに長くすることによる付加的な効果を発見した。従来は、長い混合時間は生産性の低下等を招き、むしろ好ましくないと考えられていたため積極的な実施はされてこなかったが、本発明では上記の発見により、生産性低下等のデメリットを上回って余りあるメリットを見出すことができた。吸水性樹脂と、水溶性多価金属カチオン含有化合物と、の混合時間は、例えば、5分以上であり、15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。混合時間の上限は特に制限されるものではないが、生産性や効果の飽和を考慮すると、5時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましい。また、混合方法としては、特に限定されるものではないが、振動を付与しながら混合する方法、回転運動しながら混合する方法(例えば、ターブラ・シェーカー・ミキサーを用いる方法)、攪拌機による混合、空気輸送など気流と共に粒子を輸送するような方法が好ましい。この場合の回転数は、製造方法aと同様でもよい。また、各混合方法によって、理想的な混合に必要な混合時間は異なるが、適宜混合時間を調整することで本願の目的は達成可能である。本願の目的が達成できたかどうかの判断は、本願の物性パラメータを満たすかどうかが一つの指標となりうる。
【0117】
(製造方法c)
粒子状吸水剤を製造する製造方法において、水を主成分として含む洗浄液で吸水性樹脂を洗浄する工程を有する。水を主成分とする洗浄液で吸水性樹脂を洗浄することで、式(1)を満たす粒子状吸水剤が得られやすくなる。詳細なメカニズムは不明であるが、水を主成分として含む洗浄液で吸水性樹脂を洗浄することで、吸水性樹脂が水を含水して膨潤状態となり、この状態で洗浄することで、吸水性能に影響しうる不要な成分を効率的に洗い流すことができ、高いRCAPの吸水剤が得られやすくなるためであると考えられる。
【0118】
なお、上記特許文献2(国際公開第97/003114号)では、残存架橋剤を低減することを目的として洗浄を行っており、「水と親水性有機溶媒との混合比の範囲を、混合液が吸水性樹脂粉末を膨潤しないように選択することにある」とあることから、水を主成分として含む洗浄液で洗浄することで吸水性樹脂粉末を膨潤させる上記工程とは明確に区別される。
【0119】
洗浄の方法としては、例えば、吸水性樹脂を膨潤状態にしたのちに、洗浄液を用いて洗浄することが好ましい。吸水性樹脂を膨潤状態にする方法としては、水を主成分とする液を用いて、当該液に吸水性樹脂を浸漬する方法が挙げられる。浸漬時間としては、吸水性樹脂が十分に膨潤すれば特に限定されないが、例えば、1分以上であってもよく、5分以上であってもよい。
【0120】
水が主成分とは、洗浄液中、水を80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらにより好ましくは99重量%以上含み、好ましくは実質的に水からなる。
【0121】
水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などが好ましく、脱イオン水や蒸留水がより好ましい。
【0122】
水以外の成分として、親水性有機溶媒を含んでいてもよい。用いられる親水性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t一ブチルアルコ一ル等の低級アルコ一ル類が好適に例示される。
【0123】
ここで、吸水性樹脂は、表面架橋処理前の吸水性樹脂粉末、表面架橋後の吸水性樹脂粒子のいずれであってもよいが、式(1)を満たす粒子状吸水剤がより得られやすくなることから、表面架橋処理前の吸水性樹脂粉末(いわゆるベースポリマー)を洗浄することが好ましい。
【0124】
洗浄方法としては特に限定されず、洗浄液と吸水性樹脂を連続あるいは非連続の回分式方法で洗浄を行うことができる。例えば、吸水性樹脂を、洗浄液中で、必要により撹拌しながら接触させ、その後、吸水性樹脂を例えば、デカンテ一ションや吸引濾過により洗浄液より分離する方法;膨潤状態の含水ゲルに対して洗浄液を通水する通水洗浄などが挙げられる。
【0125】
また、洗浄は複数回行われてもよい。
【0126】
これらの方法において、洗浄時間(通水時間)は、15分~10時間であることが好ましく、30分~8時間であることがより好ましく、1~5時間であることがさらにより好ましい。洗浄液の温度は洗浄効果の面から、好ましくは、20~50℃である。また、洗浄時の圧力は加圧、減圧、常圧と特に問わないが、常圧で通常行われる。
【0127】
洗浄後の吸水性樹脂(含水ゲル)は、下記〔3〕粒子状吸水剤の製造方法における含水ゲルの後工程と同様に、必要に応じて更に乾燥、粉砕、分級等の工程を追加的に行えばよい。
【0128】
〔3〕粒子状吸水剤の製造方法
以下に、本発明にかかわる粒子状吸水剤の製造工程(3-1)~(3-8)について示す。
【0129】
(3-1)単量体水溶液の調製工程
本工程は、単量体(たとえばアクリル酸(塩))を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明を行う。
【0130】
また、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0131】
(アクリル酸)
本発明では、得られる粒子状吸水剤の物性および生産性の観点から、単量体としてアクリル酸および/またはその塩(以下「アクリル酸(塩)」と称する)を用いる。
【0132】
上記「アクリル酸」は、公知のアクリル酸でよく、重合禁止剤として好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp-メトキシフェノールを、アクリル酸の重合性や粒子状吸水剤の色調の観点から、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10~160ppm、更に好ましくは20~100ppmを含んでいればよい。また、アクリル酸中の不純物については、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物が本発明にも適用される。
【0133】
また、上記「アクリル酸塩」は、上記アクリル酸を下記塩基性組成物で中和したものであるが、該アクリル酸塩として、市販のアクリル酸塩(例えば、アクリル酸ナトリウム)でもよいし、粒子状吸水剤の製造プラント内で中和して得られたものでもよい。
【0134】
(塩基性組成物)
本発明において、「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を指し、例えば、市販の水酸化ナトリウム水溶液等が該当する。
【0135】
上記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、強塩基性であることが望まれる。即ち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0136】
(中和)
本発明における中和として、アクリル酸に対する中和(重合前)またはアクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後)(以下、「後中和」と称する)の何れかを選択または併用することができる。また、これらの中和は、連続式でもバッチ式でもよく特に限定されないが、生産効率等の観点から連続式が好ましい。
【0137】
なお、中和を行う装置、中和温度、滞留時間等の条件については、国際公開第2009/123197号や米国特許出願公開第2008/0194863号に記載された条件が本発明にも適用される。
【0138】
本発明における中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10~90モル%、より好ましくは40~85モル%、更に好ましくは50~80モル%、特に好ましくは60~75モル%である。該中和率が10モル%未満の場合、吸水倍率が著しく低下することがある。一方、該中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率の高い吸水性樹脂が得られないことがある。
【0139】
上記中和率は、後中和の場合でも同様である。また、最終製品としての粒子状吸水剤の中和率についても、上記中和率が適用される。なお、中和率75モル%とは、アクリル酸25モル%およびアクリル酸塩75モル%の混合物を意味する。また、該混合物をアクリル酸部分中和物と称する場合もある。
【0140】
(他の単量体)
本発明において、「他の単量体」とは、上記アクリル酸(塩)以外の単量体を指し、他の単量体をアクリル酸(塩)と併用して粒子状吸水剤を製造することができる。
【0141】
上記他の単量体として、水溶性または疎水性の不飽和単量体が挙げられる。具体的には、米国特許出願公開第2005/0215734に記載された化合物(但し、アクリル酸は除く)が本発明にも適用される。
【0142】
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された化合物が本発明にも適用される。これらの中から反応性を考慮して1種または2種以上の化合物が選択される。本発明においては、吸水性能を考慮して、内部架橋剤を用いた架橋体を表面処理することが好ましい。
【0143】
また、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2個以上有する化合物、より好ましくは下記乾燥温度で熱分解性を有する化合物、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する重合性不飽和基を2個以上する化合物が、内部架橋剤として用いられる。
【0144】
上記重合性不飽和基として、好ましくはアリル基、(メタ)アクリレート基、より好ましくは(メタ)アクリレート基が挙げられる。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としてポリエチレングリコールが好ましく、n数として好ましくは1~100、より好ましくは6~50である。
【0145】
したがって、本発明では、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたは(ポリ)アルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、より好ましくは(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが用いられる。
【0146】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.0001~10モル%、より好ましくは0.001~1モル%である。該使用量を上記範囲内とすることで所望する吸水性樹脂が得られる。なお、該使用量が少なすぎる場合、ゲル強度が低下し水可溶分が増加する傾向にあり、該使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にある。
【0147】
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、該手法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの方法を併用することもできる。
【0148】
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本発明において、得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の調製時に添加することもできる。
【0149】
具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、単量体水溶液中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)で添加したり、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤、界面活性剤、ジエチレントリアミン5酢酸(塩)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(塩)等のキレート剤、連鎖移動剤等を、単量体水溶液中、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)で添加したりすることができる。
【0150】
また、上記物質は、単量体水溶液に添加される形態のみならず、重合途中で添加される形態でもよいし、これらの形態を併用することもできる。
【0151】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂または吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体または吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉-アクリル酸重合体、PVA-アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明の範疇である。
【0152】
(単量体成分の濃度)
本工程において、単量体水溶液を調製する際に、上記の各物質が添加される。該単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10~80重量%、より好ましくは20~75重量%、更に好ましくは30~70重量%である。
【0153】
また、水溶液重合または逆相懸濁重合を採用する場合、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもできる。この場合、溶媒の種類は特に限定されない。
【0154】
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記式(5)で求められる値であり、単量体水溶液の重量には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性溶媒の重量は含めない。
(単量体成分の濃度(重量%))=(単量体成分の重量)/(単量体水溶液の重量)×100 式(5)
(3-2)重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0155】
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、またはこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に開示された重合開始剤のうち、1種または2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や粒子状吸水剤または吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物またはアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
【0156】
該重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.001~0.5モル%である。また、該還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001~0.02モル%である。
【0157】
なお、上記重合開始剤に代えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
【0158】
(重合形態)
本発明に適用される重合形態としては、特に限定されないが、吸水特性や重合制御の容易性等の観点から、好ましくは噴霧液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、逆相懸濁重合、更に好ましくは水溶液重合が挙げられる。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合、連続ニーダー重合の何れでも適用される。
【0159】
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0160】
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」や「高濃度重合」が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいい、「高濃度重合」とは、単量体濃度を好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
【0161】
また、本発明においては、空気雰囲気下で重合を行うこともできるが、得られる吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合を行ってもよい。この場合、例えば、酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。なお、単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素;1mg/l未満)しておくことが好ましい。
【0162】
また、本発明では、単量体水溶液に気泡(特に上記不活性ガス等)を分散させて重合を行う発泡重合とすることもできる。
【0163】
また、本発明においては、重合中に固形分濃度を上昇させてもよい。このような固形分濃度の上昇の指標として固形分上昇度は下記式(6)により定義される。なお、該固形分濃度の上昇度としては、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。 (固形分上昇度(重量%))=(重合後の含水ゲルの固形分濃度(重量%))-(単量体水溶液の固形分濃度(重量%)) 式(6)
ただし、単量体水溶液の固形分濃度とは下記式(7)で求められる値であり、重合系内の成分とは、単量体水溶液とグラフト成分、吸水性樹脂、その他固形物(例えば水不溶性微粒子等)であり、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含めない。
(単量体水溶液の固形分(重量%))=((単量体成分+グラフト成分+吸水性樹脂+その他固形物)の重量)/(重合系内の成分の重量)×100 式(7)
また、水溶液重合の形態としては、単量体水溶液を静置状態で重合する静置重合法、攪拌装置内で重合する攪拌重合法、などで本発明を実施することができる。静置重合法では、エンドレスベルトを用いるのが好ましい。ベルトは重合熱を接材面から逃しにくい樹脂ないしゴム製のベルトが好ましい。
【0164】
(3-3)ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルを、例えば、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押出し機、カッターミル等のゲル粉砕機でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。なお、上記重合工程がニーダー重合の場合、重合工程とゲル粉砕工程が同時に実施されている。また、気相重合や逆相懸濁重合等、粒子状含水ゲルが重合過程で直接得られる場合には、該ゲル粉砕工程が実施されないこともある。
【0165】
上記以外のゲル粉砕条件や形態については、国際公開第2011/126079号に開示される内容が、本発明に好ましく適用される。
【0166】
(3-4)乾燥工程
本工程は、上記重合工程および/またはゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められ、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85~99重量%、更に好ましくは90~98重量%、特に好ましくは92~97重量%である。
【0167】
上記粒子状含水ゲルの乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
【0168】
上記熱風乾燥における乾燥温度(熱風の温度)としては、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは150~200℃である。なお、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総重量および目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0169】
(3-5)粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
【0170】
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、必要により併用される。
【0171】
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)、その他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)で適宜実施できる。
【0172】
上記工程で得られる吸水性樹脂粉末(表面架橋工程前の吸水性樹脂粉末、いわゆるベースポリマー)は、重量平均粒子径(D50)として、好ましくは200~600μm、より好ましくは200~550μm、更に好ましくは250~500μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0重量%が望まれるが、0.1重量%程度でもよい。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.40、更に好ましくは0.27~0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2-02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
【0173】
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての粒子状吸水剤についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。
【0174】
(3-6)表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、加熱処理工程および冷却工程(任意)から構成される。
【0175】
該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0176】
(表面架橋剤)
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機または無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許7183456号に開示される1種または2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、環状尿素化合物等が挙げられる。
【0177】
有機表面架橋剤の具体例として、(ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコール、(ジ、ポリ)プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチルー1,3-ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、2-ブテンー1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジまたはトリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリアルコール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ、ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;2-オキサゾリドン、N-ヒドロキシエチル-2-オキサゾリドン、1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン;登録商標);γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル3-オキセタンエタノール、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン、3-クロロメチル-3-エチルオキセタン、多価オキセタン化合物などのオキセタン化合物、2-イミダゾリジノン等の環状尿素化合物等が挙げられる。
【0178】
前記多価アルコールとしては、炭素数が2~8の多価アルコールが好ましく、炭素数3~6の多価アルコールがより好ましく、炭素数3ないし4の多価アルコールが更に好ましい。更に、ジオールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが例示され、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールから選ばれる多価アルコールが好ましい。
【0179】
また、エポキシ化合物としてはポリグリシジル化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好適に使用される。
【0180】
上記有機表面架橋剤に加えて、表面架橋をより効果的に行う観点から、イオン結合性表面架橋剤としてポリアミンポリマーなどの多価カチオン性ポリマーや水溶性多価金属カチオン含有化合物を併用してもよい。水溶性多価金属カチオン含有化合物としては、上記したとおりである。
【0181】
該表面架橋剤の使用量(複数使用の場合は合計使用量)は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.01~5重量部である。また、該表面架橋剤は水溶液として添加することが好ましく、この場合、水の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.5~10重量部である。更に必要に応じて、親水性有機溶媒を使用する場合、その使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0182】
また、上述したように当該表面架橋工程において、水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加してもよい。
【0183】
(混合工程)
本工程は、吸水性樹脂粉末と上記表面架橋剤を混合する工程である。該表面架橋剤の混合方法については、特に限定されないが、予め表面架橋剤溶液を作製しておき、該液を吸水性樹脂粉末に対して、好ましくは噴霧または滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が挙げられる。
【0184】
該混合を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。
【0185】
(加熱処理工程)
本工程は、上記混合工程から排出された混合物に熱を加えて、吸水性樹脂粉末の表面上で架橋反応を起させる工程である。
【0186】
該架橋反応を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくはパドルドライヤーが挙げられる。該架橋反応での反応温度は、使用される表面架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、好ましくは50~300℃、より好ましくは100~200℃である。
【0187】
(冷却工程)
本工程は、上記加熱処理工程後に必要に応じて設置される任意の工程である。
【0188】
該冷却を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは加熱処理工程で使用される装置と同一仕様の装置であり、より好ましくはパドルドライヤーである。熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるためである。なお、上記加熱処理工程で得られた吸水性樹脂粒子は、該冷却工程において、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃に、必要に応じて強制冷却される。
【0189】
(3-7)添加剤添加工程
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、水溶性多価金属カチオン含有化合物、多価金属塩、カチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、水不溶性無機粒子、界面活性剤、非高分子水溶性化合物等の添加剤を添加する工程である。上述したように、該添加剤は上記表面架橋剤(水溶液)と同時に、吸水性樹脂粉末と混合することもできる。
【0190】
(多価金属塩および/またはカチオン性ポリマー)
得られる吸水性樹脂の吸水速度、通液性、吸湿流動性等の向上の観点から、多価金属塩および/またはカチオン性ポリマーを添加してもよい。
【0191】
上記多価金属塩および/またはカチオン性ポリマーとして、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔7〕多価金属塩および/またはカチオン性ポリマー」に開示された化合物およびその使用量が、本発明に適用される。
【0192】
特に上述したように、式(1)で満たされる粒子状吸水剤を得やすいことから、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加する形態は好ましい形態である。
【0193】
(キレート剤)
得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)、劣化防止等の観点から、キレート剤を添加してもよい。
【0194】
上記キレート剤として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔2〕キレート剤」に開示された化合物およびその使用量が、本発明に適用される。
【0195】
(無機還元剤)
得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)、劣化防止、残存モノマー低減等の観点から、無機還元剤を添加してもよい。
【0196】
上記無機還元剤として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔3〕無機還元剤」に開示された化合物およびその使用量が、本発明に適用される。
【0197】
(α-ヒドロキシカルボン酸化合物)
得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)等の観点から、α-ヒドロキシカルボン酸を添加してもよい。なお、「α-ヒドロキシカルボン酸化合物」とは、分子内にヒドロキシル基を有するカルボン酸またはその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸である。
【0198】
上記α-ヒドロキシカルボン酸化合物として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔6〕α-ヒドロキシカルボン酸化合物」に開示された化合物およびその使用量が、本発明に適用される。
【0199】
(水不溶性無機粒子)
吸水性樹脂の流動性改善等の観点から、水不溶性無機粒子を添加してもよい。具体的には、上記(2-9)の欄で記載した水不溶性無機粒子が挙げられる。上述したように、式(1)で満たされる粒子状吸水剤を得やすいことから、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、水不溶性無機粒子を添加する形態は好ましい形態である。
【0200】
(界面活性剤)
得られる吸水性樹脂の物性(例えば、吸水速度)向上等の観点から、界面活性剤を添加してもよい。
【0201】
上記界面活性剤として、具体的には、国際公開第97/017397号や米国特許第6107358号に開示された界面活性剤、即ち、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0202】
(非高分子水溶性化合物)
吸水性樹脂の粉塵低減等の観点から、非高分子水溶性化合物を添加してもよい。国際公開第2014/034667号の「非高分子水溶性化合物」に開示された化合物およびその使用量が、本発明に適用される。
【0203】
本発明においては、上述した添加剤以外の添加剤を、吸水性樹脂に種々の機能を付加させるため、添加することもできる。該添加剤として、具体的には、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。
【0204】
該添加剤の使用量(添加量)は、その用途に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。また、該添加剤は、上記工程とは別の工程で添加することもできる。
【0205】
(3-8)その他の工程
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉の再利用工程等を必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等の1種または2種以上の工程を更に含んでもよい。なお、「整粒工程」は、表面架橋工程以降の微粉除去工程や吸水性樹脂が凝集し、所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程を含む。また、「微粉の再利用工程」は、本発明のように微粉をそのまま添加する形態の他、大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程に添加する工程を含む。
【0206】
〔4〕粒子状吸水剤の用途
本発明の粒子状吸水剤は、吸水を目的とした用途に用いられ、吸収体として広く使用される。また、当該吸収体を含む吸収物品として用いられる。特に、本発明の粒状吸水剤は、加圧下での逆戻りが低減されることから、吸収物品の中でも、人が使用する、尿や血液等の体液を吸収するための衛生物品として、好適に用いられる。
【0207】
すなわち、本発明の好適な一実施形態は、上記形態の粒子状吸水剤を含む吸収体である。
【0208】
また、本発明の他の好適な一実施形態は、上記形態の吸収体を含む衛生物品である。
【0209】
吸収体としては、粒子状吸水剤と繊維基材(例えば、親水性繊維)とを主成分して成型された吸収材が挙げられる。上記吸収体中の粒子状吸水剤と親水性繊維との合計重量に対する粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)は、20~100重量%、より好ましくは25~90重量%、特に好ましくは30~80重量%、最も好ましくは40~80重量%がさらに好ましい。上記吸収体中のコア濃度が高いほど、吸収体や吸収物品等の製造時における粒子状吸水剤の吸水性能の影響をより受けるものとなる。このような吸収体は、例えば、親水性繊維等の繊維基材と粒子状吸水剤とをブレンド又はサンドイッチして成形される。用いられる繊維基材としては、例えば、粉砕された木材パルプ等の親水性繊維、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等が挙げられる。これらの繊維基材は、好ましくはエアレイドしてなるものがよい。
【0210】
また、吸収体としては、2枚のシート(例えば、不織布)間に吸水性樹脂を固定化した(パルプレスの)吸水性シートであってもよい。
【0211】
また、上記吸収物品とは、上記吸収体、液透過性を有する表面シート及び液不透過性を有する背面シートを備えてなるものである。上記吸収性物品は、吸収体(吸収コア)を製造し、該吸収コアを、液透過性を有する表面シートと液不透過性を有する背面シートでサンドイッチする。その後、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することにより、大人用紙オムツや生理用ナプキン等の吸収物品が得られる。なお、このとき、上記吸収コアは、例えば、密度0.06~0.50[g/cm3]、坪量0.01~0.20[g/cm2]の範囲に圧縮成形される。
【実施例】
【0212】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件下で行われた。
【0213】
なお、実施例、比較例および参照例で使用する電気機器(粒子状吸水剤の物性測定も含む)は、特に注釈のない限り、200Vまたは100Vの電源を使用した。
【0214】
(a)吸湿ブロッキング率(B.R.;Blocking Ratio)の測定方法
粒子状吸水剤または吸水性樹脂2gを、直径52mmのアルミカップに均一に散布した後、温度25℃、相対湿度90±5%RH下の恒温恒湿機(PLATINOUSLUCIFERPL-2G;タバイエスペック社製)中で1時間静置した。1時間経過後、上記アルミカップに入った粒子状吸水剤または吸水性樹脂を、目開き2000μm(JIS8.6メッシュ)のJIS標準篩(TheIIDATESTINGSIEVE:内径80mm)の上に静かに移し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES-65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20~25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5秒間分級した。上記JIS標準篩上に残存した粒子状吸水剤または吸水性樹脂の重量(W1[g])および該JIS標準篩を通過した粒子状吸水剤または吸水性樹脂の重量(W2[g])を測定し、次式にしたがって、吸湿流動性(吸湿ブロッキング率)を算出した。なお、ブロッキング率の値が低いほど、吸湿流動性に優れている。
【0215】
吸湿流動性(B.R.)[重量%]={W1/(W1+W2)}×100。
【0216】
(b)粉塵量の測定方法
国際公開第2006/098271号の[281]~[282]の記載に従い実施した。すなわち、下記の条件で所定時間にガラス繊維濾紙に吸引され捕捉されたダストの重量増をもって、粒子状吸水剤の粉塵量を測定した。測定装置としては独国Heubach Engineering GmbH製ホイバッハ・ダストメータ(Heubach DUSTMETER)、測定モードTypeIIで実施した。測定時の雰囲気の温度は23℃(±2℃)、相対湿度20~40%RH、常圧で行った。測定方法は以下のように行った。
【0217】
(1)回転ドラムに、測定サンプルの粒子状吸水剤100.00gを入れる。
【0218】
(2)保留粒子径0.5μm(JIS P3801)で、直径50mmのガラス繊維濾紙(例えばADVANTEC製、GLASS FIBER,GC-90ないしその相当品を直径50mmに加工)の重量を0.00001g単位まで測定する([Da]g)。
【0219】
(3)回転ドラムに大型粒子分離機を取付け、ガラス繊維濾紙を装着したフィルターケースを取り付ける。
【0220】
(4)ダストメータにおける制御部の測定条件を、下記のように設定し測定する。ドラム回転数:30rpm、吸引風量:4L/min、Time(測定時間):30分。
【0221】
(5)所定時間後、ガラス繊維濾紙の重量を、0.00001g単位まで測定する([Db])。
【0222】
前記Daと前記Dbを用いて、粉塵量は、下記式(8)に従い算出する。
【0223】
粉塵量[mg/kg]=([Db]-[Da])/100×1000000 式(8)。
【0224】
(c)表面張力の測定方法
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定した。この測定において表面張力の値が71~75[mN/m]の範囲でなくてはならない。
【0225】
次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤または吸水性樹脂0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌した。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤または吸水性樹脂が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定した。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつガスバーナーで加熱洗浄して使用した。
【0226】
(d)着色評価(黄色度/YI値)
粒子状吸水剤または吸水性樹脂の着色評価は、日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ-Σ80COLOR MEASURING SYSTEMを用いた。設定条件(反射測定/付属の粉末・ペースト試料台(内径30mm、高さ12mm/標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2/30Φ投光パイプ))で、粒子状吸水剤または吸水性樹脂を備え付けの試料台に5g充填し(備え付け試料台の6割程度の充填)、室温(20~25℃)、湿度50RH%の条件下で上記分光式色差計にて表面色(YI値(Yellow Index))を測定した。また、同じ装置の同じ測定法によって、同時に他の尺度の物体色(L,a,b)ないしWB(ハンターカラー)も測定できる。L/WBは大きいほど、a/bは小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。
【0227】
続いて、上記ペースト試料台に5gの粒子状吸水剤または吸水性樹脂を充填し、温度70±1℃、相対湿度65±1%RHの雰囲気に調整した恒温恒湿機(エスペック株式会社製、品名:小型環境試験器、形式SH-641)中に粒子状吸水剤または吸水性樹脂を充填したペースト試料台を14日間曝露した。曝露後、上記分光式色差計にて表面色(YI値(Yellow Index))を測定した。YI値は、好ましくは35以下、より好ましくは32以下、さらに好ましくは29以下、特に好ましくは26以下である。
【0228】
(e)ペイントシェーカーテスト
直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、吸水性樹脂30gを入れ、ペイントシェーカー(No.488試験用分散機、株式会社東洋精機製作所製)に設置した。次いで、800(cycle/min)でペイントシェーカーを所定の時間振とうさせた後、停止させた。
【0229】
[製造例1]
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351.7g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.860g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.034モル%)、1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.15g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液149.0g、および脱イオン水(イオン交換水)336.2gを投入し混合させて、単量体水溶液(a’)を作製した。
【0230】
次に、上記単量体水溶液(a’)を攪拌しながら冷却した。液温が40.0℃となった時点で、40℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液144.8gを加え、混合することで単量体水溶液(a)を作製した。このとき、該単量体水溶液(a)の温度は、作製直後の2段目の中和熱によって78.2℃まで上昇した。48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0231】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(a)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.49gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に単量体水溶液(a)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、該バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0232】
上記単量体水溶液(a)がバット型容器に注がれてから60秒経過後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
【0233】
上記重合反応で得られた含水ゲル(1)を短冊状に切断し、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(1)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径11.0mm、孔数40個、開孔率 62.5%、厚み10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
【0234】
上記ゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(1)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(1)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
【0235】
この粒子状含水ゲル(1)を50メッシュの金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕し、さらに目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS標準篩で篩い分けた後調合することにより、重量平均粒子径(D50)305μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の前駆体吸水性樹脂(A)を得た。前駆体吸水性樹脂(A)の遠心分離機保持容量(CRC)は48.4(g/g)であった。
【0236】
[製造例2]
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸335.3g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.720g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.030モル%)、1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.05g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液142.1g、および脱イオン水(イオン交換水)367.2gを投入し混合させて、単量体水溶液(b’)を作製した。
【0237】
次に、上記単量体水溶液(b’)を攪拌しながら冷却した。液温が42.0℃となった時点で、40℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液138.1gを加え、混合することで単量体水溶液(b)を作製した。このとき、該単量体水溶液(b)の温度は、作製直後の2段目の中和熱によって77.8℃まで上昇した。48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0238】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(b)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.77gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に単量体水溶液(b)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、該バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0239】
上記単量体水溶液(b)がバット型容器に注がれてから60秒経過後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(2)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
【0240】
上記重合反応で得られた含水ゲル(2)を短冊状に切断し、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率62.5%、厚み10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
【0241】
上記ゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(2)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(2)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
【0242】
この細分化された含水ゲル(2)を50メッシュの金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕し、さらに目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS標準篩で篩い分けた後調合することにより、重量平均粒子径(D50)298μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の前駆体吸水性樹脂(B)を得た。前駆体吸水性樹脂(B)の遠心分離機保持容量(CRC)は50.1(g/g)であった。
【0243】
(実施例1-1)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(1)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで30分間混合し、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の吸収性能を表1に示す。また、粒子状吸水剤(1)のAAP4.83kPaは19.4[g/g]、GPRは81[g/min]、流下速度は10.1[g/s]であった。
【0244】
(実施例1-2)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,3-プロパンジオール0.26重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(2)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の吸収性能を表1に示す。
【0245】
(実施例1-3)
製造例1において、目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS標準篩で篩い分けた後、重量平均粒子径(D50)を343μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.36に調合した前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4-ブタンジオール0.31重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(3)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(3)を得た。粒子状吸水剤(3)の吸収性能を表1に示す。
【0246】
(実施例1-4)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.5重量部および脱イオン水3.5重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(4)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(4)を得た。粒子状吸水剤(4)の吸収性能を表1に示す。
【0247】
(実施例1-5)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(5)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:Sipernat 22S、EVONIK製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで45分間混合し、粒子状吸水剤(5)を得た。粒子状吸水剤(5)の吸収性能を表1に示す。
【0248】
(実施例1-6)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール2.8重量部および脱イオン水4.2重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(6)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテスト(振とう時間:15分)を実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:Sipernat 22S、EVONIK製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(6)を得た。粒子状吸水剤(6)の吸収性能を表1に示す。
【0249】
(実施例1-7)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレングリコール0.21重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(7)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水0.5重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.05重量部およびポリプロピレングリコール700(キシダ化学株式会社製)0.25重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(7)を得た。粒子状吸水剤(7)のGPRは46[g/min]、粉塵量は70[mg/kg]であった。また、粒子状吸水剤(7)の吸収性能を表1に示す。
【0250】
(実施例1-8)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(8)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.01重量部およびポリエチレングリコール400(商品名:XG-40A、株式会社日本触媒製)0.2重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(8)を得た。粒子状吸水剤(8)の吸収性能を表1に示す。
【0251】
(実施例1-9)
製造例1において、目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS標準篩で篩い分けた後、重量平均粒子径(D50)を379μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.38に調合した前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.2重量部および脱イオン水2.8重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、90℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(9)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、水酸化アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.4重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に水酸化アルミニウムと共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(9)を得た。粒子状吸水剤(9)のAAP4.83kPaは22.1[g/g]、表面張力は72.4mN/mであった。また、粒子状吸水剤(9)の吸収性能を表1に示す。
【0252】
(実施例1-10)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール2.45重量部、脱イオン水3.55重量部および硫酸アルミニウム14~18水和物0.75重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(10)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部およびポリエチレングリコール600(商品名:PEG-600、三洋化成工業株式会社製)0.1重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させた。さらに、吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(10)を得た。粒子状吸水剤(10)のAAP4.83kPaは18.5[g/g]、吸湿ブロッキング率は0[%]、粉塵量は260[mg/kg]であった。また、粒子状吸水剤(10)の吸収性能を表1に示す。
【0253】
(実施例1-11)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,3-プロパンジオール0.26重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(11)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで30分間混合し、粒子状吸水剤(11)を得た。粒子状吸水剤(11)の吸収性能を表1に示す。
【0254】
(実施例1-12)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(12)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.1重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.01重量部およびポリエチレングリコール1000(商品名:PEG-1000、三洋化成工業株式会社製)0.2重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(12)を得た。粒子状吸水剤(12)のGPRは71[g/min]、粉塵量は150[mg/kg]であった。また、粒子状吸水剤(12)の吸収性能を表1に示す。
【0255】
(実施例1-13)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4-ブタンジオール0.31重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(13)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部およびポリエチレングリコール400(商品名:XG-40A、株式会社日本触媒製)0.1重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル株式会社)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(13)を得た。粒子状吸水剤(13)の吸収性能を表1に示す。
【0256】
(実施例1-14)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.5重量部および脱イオン水3.5重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(14)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.05重量部およびポリエチレングリコール1000(商品名:PEG-1000、三洋化成工業株式会社製)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで30分間混合し、粒子状吸水剤(14)を得た。粒子状吸水剤(14)の吸収性能を表1に示す。
【0257】
(実施例1-15)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(15)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:Sipernat 22S、EVONIK製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて60分間混合し、粒子状吸水剤(15)を得た。粒子状吸水剤(15)の吸収性能を表1に示す。
【0258】
(実施例1-16)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール2.8重量部および脱イオン水4.2重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(16)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:Sipernat 22S、EVONIK製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(16)を得た。粒子状吸水剤(16)の吸収性能を表1に示す。
【0259】
(実施例1-17)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレングリコール0.21重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(17)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて60分間混合し、粒子状吸水剤(17)を得た。粒子状吸水剤(17)の吸収性能を表1に示す。
【0260】
(実施例1-18)
前駆体吸水性樹脂(B)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(18)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.001重量部およびポリエチレングリコール600(商品名:PEG-600、三洋化成工業株式会社製)0.2重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(18)を得た。粒子状吸水剤(18)の吸収性能を表1に示す。
【0261】
(実施例1-19)
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール4.0重量部、脱イオン水5.8重量部および硫酸アルミニウム14~18水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.75重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(19)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.05重量部およびポリプロピレングリコール700(キシダ化学株式会社製)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させた。さらに、吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(19)を得た。粒子状吸水剤(19)のAAP4.83kPaは19.5[g/g]、GPRは114[g/min]、吸湿ブロッキング率は0[%]であった。また、粒子状吸水剤(19)の吸収性能を表1に示す。
【0262】
(実施例1-20)
製造例1において、目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS標準篩で篩い分けた後、重量平均粒子径(D50)を379μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.38に調合した前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.2重量部および脱イオン水2.8重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、90℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(20)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1.5重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部、硫酸アルミニウム14~18水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.75重量部およびプロピレングリコール0.75重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させた。さらに、吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて60分間混合し、粒子状吸水剤(20)を得た。粒子状吸水剤(20)のAAP4.83kPaは22.9[g/g]であった。また、粒子状吸水剤(20)の吸収性能を表1に示す。
【0263】
(実施例1-21)
前駆体吸水性樹脂(A)50重量部を、脱イオン水で満たした99Lポリバケツに加え、10分間静置し、ゲルの沈降を確認した後、ポリバケツに目開き150μmのメッシュシートを被せ、ポリバケツに固定した。メッシュシート上にホースを固定し、脱イオン水を、ホースを通じてポリバケツ内に3時間通水させた。通水後、ポリバケツ内の液を目開き150μmのJIS標準篩を用いて液切りし、得られたゲルを50メッシュの金網上に広げ、60℃で24時間風乾後、含水率が7%となるまで、60℃で減圧乾燥を行った。
【0264】
乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕し、さらに目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS標準篩で篩い分けた後調合することにより、重量平均粒子径(D50)314μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の前駆体吸水性樹脂(C)を得た。前駆体吸水性樹脂(C)の遠心分離機保持容量(CRC)は49.8(g/g)であった。
【0265】
前駆体吸水性樹脂(C)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(21)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理して、粒子状吸水剤(21)を得た。粒子状吸水剤(21)の吸収性能を表1に示す。
【0266】
(比較例1-1)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-1と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(1)を得た。比較粒子状吸水剤(1)のAAP4.83kPaは18.0[g/g]、GPRは112[g/min]、流下速度は10.1[g/s]であった。また、比較粒子状吸水剤(1)の吸収性能を表1に示す。
【0267】
(比較例1-2)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-2と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(2)を得た。比較粒子状吸水剤(2)の吸収性能を表1に示す。
【0268】
(比較例1-3)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-4と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(3)を得た。比較粒子状吸水剤(3)の吸収性能を表1に示す。
【0269】
(比較例1-4)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-5と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(4)を得た。比較粒子状吸水剤(4)の吸収性能を表1に示す。
【0270】
(比較例1-5)
水酸化アルミニウム0.4重量部を二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部とし、ターブラ・シェーカー・ミキサーによる混合時間を2分間とした以外、実施例1-9と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(5)を得た。比較粒子状吸水剤(5)の吸収性能を表1に示す。また、比較粒子状吸水剤(5)の表面張力は72.3mN/mであった。
【0271】
(比較例1-6)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-11と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(6)を得た。比較粒子状吸水剤(6)の吸収性能を表1に示す。
【0272】
(比較例1-7)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-12と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(7)を得た。比較粒子状吸水剤(7)の吸収性能を表1に示す。また、比較粒子状吸水剤(7)のGPRは78[g/min]、粉塵量は160[mg/kg]であった。
【0273】
(比較例1-8)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-13と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(8)を得た。比較粒子状吸水剤(8)の吸収性能を表1に示す。
【0274】
(比較例1-9)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-15と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(9)を得た。比較粒子状吸水剤(9)の吸収性能を表1に示す。
【0275】
(比較例1-10)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-16と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(10)を得た。比較粒子状吸水剤(10)の吸収性能を表1に示す。
【0276】
(比較例1-11)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-17と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(11)を得た。比較粒子状吸水剤(11)の吸収性能を表1に示す。
【0277】
(比較例1-12)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例1-18と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(12)を得た。比較粒子状吸水剤(12)の吸収性能を表1に示す。
【0278】
(比較例1-13)
製造例1において、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレートをカルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.019モル%となるよう単量体水溶液を調整し、製造例1と同様の方法により前駆体吸水性樹脂(D)を得た。前駆体吸水性樹脂(D)の遠心分離機保持容量(CRC)は52.7(g/g)であった。
【0279】
実施例1-4において、前駆体吸水性樹脂(D)を用い、表面架橋剤溶液のエチレングリコールを0.25重量部に変更、吸水性樹脂に添加する脱イオン水の量を10重量部に変更、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)を0.01重量に変更、二酸化ケイ素をハイドロタルサイト(商品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製)に変更及び、ハイドロタルサイトの混合量を0.4重量部にし、ターブラ・シェーカー・ミキサーによる混合時間を2分間とした以外は、実施例1-4と同様の方法により比較粒子状吸水剤(13)を得た。比較粒子状吸水剤(13)の吸収性能を表1に示す。
【0280】
(比較例1-14)
比較例1-13において、吸水性樹脂に添加する脱イオン水の量を15重量部に変更、ハイドロタルサイトの種類を変更(商品名:HT-1-NC、堺化学工業株式会社製)、及び、ハイドロタルサイトの混合量を0.2重量部にした以外は、比較例1-13の方法により比較粒子状吸水剤(14)を得た。比較粒子状吸水剤(14)の吸収性能を表1に示す。
【0281】
[吸収体の吸収量の評価]
以下記載の方法により、吸収体AおよびBを作製し、吸収体の吸収量を評価した。
【0282】
モデル吸収体A作製方法
80mm×160mmの脱脂綿(例えば川本産業株式会社製カット綿8cm×16cmなどが使用できる)を面方向に均一に裂き、1.6gの脱脂綿シートを2枚作製した。次いで、吸水紙を200mm×200mmとなるよう切り出し、吸水紙の中央付近に8cm×16cmの枠を配置した。枠内に1.6gに調整した脱脂綿シートを敷き、アクリル板等で脱脂綿上面を均し、上面から粒子状吸水剤3.2gを均一に散布し、さらに1.6gの脱脂綿シートを載せ、サンド構造とした。こうして作製した吸収体全体に10kgの荷重をかけた状態で1分間保持し、吸収体を成型した。この後、荷重および枠を取り外し、吸収体の長手方向に沿って吸水紙の両端を吸収体を包むように折り返した。これをヒートロンペーパーを用いて作成した不織布バッグ(10cm×22cm)に入れ、周囲をヒートシールし、モデル吸収体Aとした。
【0283】
モデル吸収体B作製方法
100mm×180mmのビニールテープ(例えば日東電工株式会社製ビニールテープ21-100TMなどが使用できる)を粘着面を上にして切り出し、その中央に80mm×160mmの枠を設置し、枠内に粒子状吸水剤3.2gを均一に散布した。枠を取り外し、別途100mm×180mmサイズに切り出したスパンボンド不織布を載せ、ビニールテープと貼り合わせた。これをヒートロンペーパーを用いて作製した不織布バッグ(10cm×22cm)に入れ、周囲をヒートシールし、モデル吸収体Bとした。
【0284】
吸収量測定方法
深型バットに0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を液深が5cm以上となるように入れ、バット中の液温度が37℃となるように調温する。このバット中にモデル吸収体を浸漬し、荷重をかけない状態で60分間膨潤させた。浸漬の際、モデル吸収体Bはビニールテープ面が上面となるように浸漬させ、以降の操作は全てビニールテープ面を上面にして行った。膨潤後、バットからモデル吸収体を取り出し、直径45cm、目開き2000μmのJIS標準篩に載せ、モデル吸収体の粒子状吸水剤が存在する8cm×16cmの面積に対して2690gの錘を載せ(21g/cm2)、1分間液切りを行った。液切り後のモデル吸収体の重量を計測し、予め計測した浸漬前のモデル吸収体重量との差を吸収量とした。結果を表1に示す。
【0285】
【0286】
【0287】
上記実施例、比較例について、CRC[g/g](横軸)に対して、AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)(縦軸)をプロットした図が
図2である。直線は、AAP(2.06kPa)+RCAP(2.06kPa)=0.58×CRC+55.6を表す。
【0288】
表1の吸収体の評価結果からわかるように、式(1)を満たす粒子状吸水剤である実施例の粒子状吸水剤は、比較例と比較して、吸収体に使用した場合に、粒子状吸水剤が液を吸収して膨潤した状態であっても加圧下の液保持量(吸収量)が1g以上多かった。この液保持量の差は当該分野においては、顕著な差である。この結果から、実施例の粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤が膨潤状態のときに粒子状吸水剤に外部から圧力が負荷されても、液戻りを有意に低減することができることがわかる。
【0289】
[製造例3]
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351.7g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.910g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.036モル%)、1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.15g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液149.0g、50.0重量%のリンゴ酸水溶液(DL-リンゴ酸、50.0%水溶液、扶桑化学工業株式会社製、食品添加物グレード)1.41g(リンゴ酸はカルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.108モル%)、および脱イオン水(イオン交換水)336.2gを投入し混合させて、単量体水溶液(e’)を作製した。
【0290】
次に、上記単量体水溶液(e’)を攪拌しながら冷却した。液温が40.0℃となった時点で、40℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液144.8gを加え、混合することで単量体水溶液(e)を作製した。このとき、該単量体水溶液(e)の温度は、作製直後の2段目の中和熱によって77.9℃まで上昇した。48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0291】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(e)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.49gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に単量体水溶液(e)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、該バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0292】
上記単量体水溶液(e)がバット型容器に注がれてから60秒経過後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(3)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
【0293】
上記重合反応で得られた含水ゲル(3)を短冊状に切断し、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(3)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径11.0mm、孔数40個、開孔率 62.5%、厚み10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
【0294】
上記ゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(3)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(3)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
【0295】
この粒子状含水ゲル(3)を50メッシュの金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕し、さらに目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS篩で篩い分けた後調合することにより、重量平均粒子径(D50)303μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の前駆体吸水性樹脂(E)を得た。前駆体吸水性樹脂(E)の遠心分離機保持容量(CRC)は50.2(g/g)であった。
【0296】
[製造例4]
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸335.3g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.344g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.056モル%)、1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.05g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液142.1g、50.0重量%のリンゴ酸水溶液(DL-リンゴ酸、50.0%水溶液、扶桑化学工業株式会社製、食品添加物グレード)6.706g(リンゴ酸はカルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.537モル%)、および脱イオン水(イオン交換水)367.2gを投入し混合させて、単量体水溶液(f’)を作製した。
【0297】
次に、上記単量体水溶液(f’)を攪拌しながら冷却した。液温が42.0℃となった時点で、40℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液138.1gを加え、混合することで単量体水溶液(f)を作製した。このとき、該単量体水溶液(f)の温度は、作製直後の2段目の中和熱によって78.1℃まで上昇した。48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0298】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(f)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.77gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に単量体水溶液(f)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、該バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0299】
上記単量体水溶液(f)がバット型容器に注がれてから60秒経過後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(4)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
【0300】
上記重合反応で得られた含水ゲル(4)を短冊状に切断し、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(4)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率62.5%、厚み10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
【0301】
上記ゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(4)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(4)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
【0302】
この細分化された含水ゲル(4)を50メッシュの金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕し、さらに目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS篩で篩い分けた後調合することにより、重量平均粒子径(D50)303μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の前駆体吸水性樹脂(F)を得た。前駆体吸水性樹脂(F)の遠心分離機保持容量(CRC)は49.6(g/g)であった。
【0303】
(実施例2-1)
前駆体吸水性樹脂(E)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(22)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.05重量部および亜硫酸ナトリウム0.15重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで30分間混合し、粒子状吸水剤(22)を得た。粒子状吸水剤(22)のGPRは84[g/min]、表面張力は72.3mN/m、着色評価後のYI値は24であった。粒子状吸水剤(22)の吸収性能を表2に示す。
【0304】
(実施例2-2)
前駆体吸水性樹脂(E)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレングリコール0.21重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(23)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(23)を得た。粒子状吸水剤(23)の吸収性能を表2に示す。
【0305】
(実施例2-3)
前駆体吸水性樹脂(E)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、プロピレングリコール1.2重量部および脱イオン水2.8重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(24)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテスト(振とう時間:10分)を実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部およびポリエチレングリコール600(商品名:PEG-600、三洋化成工業株式会社製)0.2重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:Sipernat 22S、EVONIK製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(24)を得た。粒子状吸水剤(24)の吸収性能を表2に示す。
【0306】
(実施例2-4)
前駆体吸水性樹脂(E)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール3.5重量部、脱イオン水5.0重量部および硫酸アルミニウム14~18水和物0.75重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(25)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.01重量部およびポリプロピレングリコール700(キシダ化学株式会社製)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させた。さらに、吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(25)を得た。粒子状吸水剤(25)のAAP4.83kPaは19.1[g/g]、GPRは79[g/min]、吸湿ブロッキング率は0[%]であった。粒子状吸水剤(25)の吸収性能を表2に示す。
【0307】
(実施例2-5)
前駆体吸水性樹脂(F)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部および脱イオン水2.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(26)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.1重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.01重量部およびポリエチレングリコール1000(商品名:PEG-1000、三洋化成工業株式会社製)0.2重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:OSC C132、Oriental Silica Corporation)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(26)を得た。粒子状吸水剤(26)の吸収性能を表2に示す。
【0308】
(実施例2-6)
前駆体吸水性樹脂(F)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール2.8重量部および脱イオン水4.2重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(27)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.03重量部およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120V、花王株式会社製)0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:Sipernat 22S、EVONIK製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで45分間混合し、粒子状吸水剤(27)を得た。粒子状吸水剤(27)の流下速度は9.4[g/s]、着色評価後のYI値は23であった。粒子状吸水剤(27)の吸収性能を表2に示す。
【0309】
(実施例2-7)
前駆体吸水性樹脂(F)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.5重量部および脱イオン水3.5重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(28)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・5ナトリウム(EDTMP・5Na)0.01重量部および亜硫酸水素ナトリウム0.1重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、水酸化アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.4重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に水酸化アルミニウムと共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(28)を得た。粒子状吸水剤(28)の吸収性能を表2に示す。
【0310】
(実施例2-8)
前駆体吸水性樹脂(F)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04重量部、プロピレングリコール2.8重量部、脱イオン水4.2重量部および硫酸アルミニウム14~18水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.75重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(29)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.05重量部、ポリエチレングリコール400(商品名:XG-40A、株式会社日本触媒製)0.3重量部および亜硫酸ナトリウム0.03重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させた。さらに、吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて101rpmで60分間混合し、粒子状吸水剤(29)を得た。粒子状吸水剤(29)の粉塵量は50[mg/kg]、着色評価後のYI値は25であった。粒子状吸水剤(29)の吸収性能を表2に示す。
【0311】
(実施例2-9)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を15分間とした以外、実施例2-1と同様の方法により、粒子状吸水剤(30)を得た。粒子状吸水剤(30)の吸水性能を表2に示す。
【0312】
(比較例2-1)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例2-1と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(15)を得た。比較粒子状吸水剤(15)のGPRは100[g/min]、表面張力は72.2mN/m、着色評価後のYI値は24であった。比較粒子状吸水剤(15)の吸収性能を表2に示す。
【0313】
(比較例2-2)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例2-3と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(16)を得た。比較粒子状吸水剤(16)の吸収性能を表2に示す。
【0314】
(比較例2-3)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例2-5と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(17)を得た。比較粒子状吸水剤(17)の吸収性能を表2に示す。
【0315】
(比較例2-4)
ターブラ・シェーカー・ミキサーによる二酸化ケイ素の混合時間を2分間とした以外、実施例2-6と同様の方法により、比較粒子状吸水剤(18)を得た。比較粒子状吸水剤(18)の流下速度は9.2[g/s]、着色評価後のYI値は23であった。また、比較粒子状吸水剤(18)の吸収性能を表2に示す。
【0316】
(比較例2-5)
大王製紙株式会社製のおむつ「GOO.Nパンツまっさらさら通気男の子用Lサイズ」(2020年購入)の吸収体からパルプをできるだけ取り除いて採取した粒子状吸水剤(不定形破砕状)25.5gを、チャック付のポリエチレン袋(チャック内側のサイズ:70mm×50mm、厚さ0.04mm、容量35mL)に充填した。このポリエチレン袋を目開き850mm、内径200mmのJIS標準篩の上に載せた。その標準篩をふるい振とう機AS200(株式会社Retsch製)に固定し、振とう幅0.3mmで30分間振とうした。この時、粒子状吸水剤が受ける加速度の計算値は最大で2.2Gである。振とう後の粒子状吸水剤を比較粒子状吸水剤(19)とした。比較粒子状吸水剤(19)の吸水性能を表3に示す。
【0317】
(比較例2-6)
振とう時間を300分に変更したこと以外は比較例2-5と同一の操作を行うことにより、比較粒子状吸水剤(20)を得た。比較粒子状吸水剤(20)の吸水性能を表3に示す。
【0318】
【0319】
【0320】
表2の吸収体の評価結果からわかるように、式(1)を満たす粒子状吸水剤である実施例の粒子状吸水剤は、比較例と比較して、吸収体に使用した場合に、粒子状吸水剤が液を吸収して膨潤した状態であっても加圧下の液保持量(吸収量)が2g以上多かった。この液保持量の差は当該分野においては、顕著な差である。この結果から、実施例の粒子状吸水剤は、粒子状吸水剤が膨潤状態のときに粒子状吸水剤に外部から圧力が負荷されても、液戻りを有意に低減することができることがわかる。
【0321】
なお、いずれの実施例においても、ゲル透過速度(Gel Permeation Rate:GPR)は20g/min以上であり、吸湿ブロッキング率は40重量%以下であり、流下速度(Flow Rate)が8.5g/s以上であり、粉塵量が400mg/kg以下であり、表面張力が65mN/m以上であり、吸水性樹脂粉末が不定形破砕状であった。
【0322】
本出願は、2020年3月31日に出願された、日本特許出願 特願2020-064626号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。
【符号の説明】
【0323】
400 装置、
410 容器、
411 セル、
412 ピストン、
413a、
413b 金網、
414 膨潤ゲル(粒子状吸水剤を吸水させたもの)、
415 孔、
420 タンク、
421 ガラス管、
422 コックガラス管付きL字管、
423 液体、
431 ステンレス製の金網、
432 捕集容器、
433 上皿天秤。