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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】耐火物性能予測測定システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/02 20060101AFI20231109BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20231109BHJP
   B22D 41/00 20060101ALI20231109BHJP
   F27B 3/28 20060101ALI20231109BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20231109BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B22D41/02 Z
B22D46/00
B22D41/00 D
F27B3/28
F27D1/00 V
F27D21/00 Q
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022519112
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 US2020051033
(87)【国際公開番号】W WO2021061469
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】16/583,377
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522061534
【氏名又は名称】ハービソン ウォーカー インターナショナル、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッチター、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォースター、コリー
(72)【発明者】
【氏名】アブリノ、ドナルド
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519751(JP,A)
【文献】特開平05-340881(JP,A)
【文献】特開2014-142152(JP,A)
【文献】特開2008-215685(JP,A)
【文献】特開2016-185552(JP,A)
【文献】特開2013-244515(JP,A)
【文献】特開2018-179474(JP,A)
【文献】特開2010-286219(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0075242(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/00-41/02
B22D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金容器の外壁の内面に内張りされ、溶融金属にさらされている間のサイクルにさらされる耐火物ライニングの将来の状態を予測するための測定システムであって、
前記冶金容器が空のときに前記耐火物ライニングに複数のレーザースキャンを行うように構成された1つ以上のレーザースキャナであって、前記レーザースキャナの少なくとも1つは、前記サイクルの前に前記耐火物ライニングをレーザースキャンし、前記サイクルの前の前記耐火物ライニングの構造についての状態に関連するデータを収集するようにさらに構成されており、前記レーザースキャナの少なくとも1つは、前記サイクルの後に前記耐火物ライニングをレーザースキャンし、前記サイクルの後の前記耐火物ライニングの構造についての状態に関連するデータを収集するようにさらに構成されているレーザースキャナと、
プロセッサとを備え、前記プロセッサは、
前記耐火物ライニングの構造についての前記サイクルの前の状態に関連する収集されたデータと前記耐火物ライニングの構造についての前記サイクルの後の状態に関連する収集されたデータとを比較することによって、前記サイクルにさらされた前記耐火物ライニングへの影響を判定するように構成され、かつ
前記サイクルにさらされた前記耐火物ライニングへの影響の判定に基づいて、1回以上の後続のサイクルの後、前記耐火物ライニングの将来の状態を予測するように構成されている測定システム。
【請求項2】
冶金容器が溶融金属で満たされているときに、サイクル中に前記冶金容器の外壁の外面に対して1以上の赤外線スキャンを行い、前記サイクル中の前記外面の温度に関連するデータを収集するように構成された1つ以上の赤外線カメラをさらに備え、
前記プロセッサは、温度に関連する収集されたデータと、耐火物ライニングの構造についてのサイクルの前後の状態に関連する収集されたデータとを相関させることによって、前記サイクルにさらされた耐火物ライニングへの影響を判定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、耐火物ライニングの構造についてのサイクルの前後における状態に関連する収集されたデータとの相関関係において、1つまたは複数の操作パラメータがサイクル中に耐火物ライニングに及ぼす操作上の影響を検討することによって、サイクルにさらされた耐火物ライニングへの影響を決定するようにさらに構成されており、
前記操作パラメータは、
過去に溶融金属を取り扱った1つ以上の耐火物ライニングに適用された1つ以上の耐火物に関連する履歴データと、
耐火物ライニングの初期の化学組成と、
耐火物ライニングの初期の物理的設計と、
サイクル中に製造されるように求められる鋼種と、
サイクル中に冶金容器に添加されるチャージングミックスの成分の物理的および化学的属性と量と、
サイクル中に冶金容器に添加される合金の物理的および化学的属性と量と、
サイクル中に冶金容器に添加されるスラグ形成剤の物理的および化学的属性と量と、
サイクル中に冶金容器に添加されるフラックス添加剤の物理的および化学的属性と量と、
耐火物ライニングが冶金容器の外壁の内面に内張りされている期間の冶金容器の履歴と、
からなる群から選択される1つ以上の所定の操作パラメータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
空の前記冶金容器がサイクルの前に予熱されている間の予熱持続時間を測定するように構成された予熱記録装置をさらに備え、前記予熱持続時間は、前記操作パラメータの1つである、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
溶融金属、スラグ、またはそれらの組み合わせがサイクル中に前記耐火物ライニングと接触している間の累積接触持続時間を測定するように構成された滞留時間記録装置をさらに備え、前記累積接触持続時間は前記操作パラメータの1つである、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
1つ以上の攪拌パラメータを測定するように構成されたガス攪拌制御装置をさらに備え、
前記攪拌パラメータが
サイクル中に冶金容器内の溶融金属を攪拌することによって加えられる攪拌圧力の大きさと、
攪拌中に冶金容器内の溶融金属に加えられる不活性ガスの流量と、
溶融金属が攪拌されている間の攪拌持続時間とを含み、
前記操作パラメータは前記攪拌パラメータを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
サイクル中に前記冶金容器内の溶融金属の温度を測定するように構成された1つ以上のプロセス熱電対をさらに備え、測定された温度は、前記操作パラメータの1つである、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
サイクル中に前記冶金容器内で生成されたスラグの化学組成を測定するように構成されたスラグ化学組成測定装置をさらに備え、前記スラグの化学組成は前記操作パラメータの1つである、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
空の前記冶金容器がサイクルの準備のために予熱されているときに、前記冶金容器の予熱温度を測定するように構成された予熱器熱電対をさらに備え、前記冶金容器の予熱温度は前記操作パラメータの1つである、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記冶金容器をスキャンして、サイクル前の前記冶金容器の物理的な向きを特定するように構成された方位レーザーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記冶金容器が溶融金属で満たされているときに、サイクル中に前記冶金容器の外壁の外面に対して1回以上の赤外線スキャンを行い、前記サイクル中の前記外面の温度に関連するデータを収集するように構成された1つ以上の赤外線カメラをさらに備え、
前記プロセッサは、温度に関連する収集されたデータと、耐火物ライニングの構造についてのサイクルの前後の状態に関連する収集されたデータとを相関させることによって、サイクルにさらされる耐火物ライニングへの影響、および操作パラメータの操作上の影響を判定するようにさらに構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記収集された温度データをマッピングして、前記耐火物ライニングの劣化部分を特定するようにさらに構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
冶金容器の外壁の内面に内張りされ、溶融金属にさらされている間にサイクルにさらされる耐火物ライニングの将来の状態を予測するための方法であって、
前記サイクルの前に前記耐火物ライニングに対して1回以上のレーザースキャンを行う工程であって、前記サイクルの前の前記耐火物ライニングの構造についての状態に関連するデータを収集することを含む工程と、
前記サイクルの後に前記耐火物ライニングに対して1回以上のレーザースキャンを行う工程であって、前記サイクルの後の前記耐火物ライニングの構造についての状態に関連するデータを収集することを含む工程と、
プロセッサを介して、前記サイクルにさらされた前記耐火物ライニングへの影響を判定する工程において、前記判定が、前記収集された前記サイクルの前の前記耐火物ライニングの構造についての状態に関するデータと、前記収集された前記サイクルの後の前記耐火物ライニングの構造についての状態に関するデータとを比較することを含む工程と、
前記プロセッサを介して、前記耐火物ライニングへの影響の判定に基づき、1回以上の後続のサイクルの後、前記耐火物ライニングの将来の状態を予測する工程とを含む方法。
【請求項14】
前記冶金容器が溶融金属で満たされているときに、サイクル中に前記冶金容器の外壁の外面に1回以上の赤外線スキャンを行う工程であって、前記サイクル中に検出された前記外面の温度に関連するデータを収集することを含む工程をさらに含み、
前記サイクルにさらされた前記耐火物ライニングへの影響の判定は、前記収集された温度データを、前記収集された耐火物ライニングの構造についてのサイクルの前後の状態に関連するデータと相関させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サイクルにさらされた前記耐火物ライニングへの影響を判定する工程が、前記収集された耐火物ライニングの構造についてのサイクルの前後の状態に関連するデータとの相関関係において、1つ以上の操作パラメータが前記サイクル中に前記耐火物ライニングに及ぼす操作上の影響を検討することをさらに含み
前記操作パラメータは、
過去に溶融金属を取り扱った1つ以上の耐火物ライニングに適用された前記1つ以上の耐火物に関連する履歴データと、
耐火物ライニングの初期の化学組成と、
耐火物ライニングの初期の物理的設計と、
サイクル中に製造されるように求められる鋼種と、
サイクル中に冶金容器に添加されるチャージングミックスの成分の物理的および化学的属性と量と、
サイクル中に冶金容器に添加される合金の物理的および化学的属性と量と、
サイクル中に冶金容器に添加されるスラグ形成剤の物理的および化学的属性と量と、
サイクル中に冶金容器に添加されるフラックス添加剤の物理的および化学的属性と量と、
耐火物ライニングが冶金容器の外壁の内面に内張りされている期間の冶金容器の履歴と、
からなる群から選択される1つ以上の所定の操作パラメータを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
空の前記冶金容器がサイクルの前に予熱されている間の予熱持続時間を測定する工程をさらに備え、前記予熱持続時間は、前記操作パラメータの1つである、請求項15に記載の方法
【請求項17】
溶融金属、スラグ、またはそれらの組み合わせがサイクル中に前記耐火物ライニングと接触している間の累積接触持続時間を測定する工程をさらに備え、前記累積接触持続時間は前記操作パラメータの1つである、請求項15に記載の方法
【請求項18】
1つ以上の攪拌パラメータを測定する工程をさらに含み、
前記攪拌パラメータが
サイクル中に前記冶金容器内の溶融金属を攪拌することによって加えられる攪拌圧力の大きさと、
攪拌中に前記冶金容器内の溶融金属に加えられる不活性ガスの流量と、
溶融金属が攪拌されている間の攪拌持続時間とを含み、
前記操作パラメータは前記攪拌パラメータを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
サイクル中に前記冶金容器内の溶融金属の温度を測定する工程をさらに含み、前記測定された温度は、前記操作パラメータの1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
サイクル中に前記冶金容器内で生成されたスラグの化学組成を測定する工程をさらに含み、前記スラグの化学組成は前記操作パラメータの1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
空の前記冶金容器がサイクルの準備のために予熱されているときに、前記冶金容器の予熱温度を測定する工程をさらに含み、前記冶金容器の予熱温度は前記操作パラメータの1つである、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記冶金容器が溶融金属で満たされているときに、サイクル中に前記冶金容器の外壁の外面に1回以上の赤外線スキャンを行う工程であって、前記サイクル中に検出された外面の温度に関連するデータを収集することを含む工程をさらに含み、
前記サイクルにさらされた前記耐火物ライニングへの影響を判定する工程は、前記収集された温度データと、前記収集された耐火物ライニングの構造についてのサイクルの前後の状態に関連するデータ及び操作パラメータの操作上の影響についてのデータとを相関させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に耐火物の分析に関し、より詳細には、耐火物性能を予測するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の生産などの産業プロセスは、増え続けるプロセスデータおよびパラメータを収集することによって下支えされている。プロセスの最適化や効率の向上のために、統計的、分析的、およびデータ操作の解決策を多用して、プロセスデータを迅速かつ効率的に分析することができる。コンピュータシステムのハードウェアとソフトウェアで構成されるプロセス最適化システムは、生のプロセスデータを収集し、その生のプロセスデータをプロセスの変更、修正、またはアップグレードと関連付ける。このシステムは、収集したさまざまなデータにタイムスタンプを付け、関連付けることが可能である。高度なフォーマットでは、システムによって、複数の相互に依存するパラメータの分析的、統計的な相関をとることも可能である。これらの相関関係を用いたシステムにより、プロセス効率に及ぼす影響を説明することができる。収集されたプロセスパラメータの多くは、個別または相関関係において、耐火物のライニングの性能に直接影響を及ぼす。
【0003】
上述のようなシステムは、塩基性酸素転炉や電気炉などの一次溶解装置で溶鋼を作るプロセスにおいて使用される。また、このシステムは、鋼取鍋、脱ガス装置、アルゴン酸素脱炭法、真空酸素脱炭炉などの二次精錬および輸送容器におけるプロセスで使用することも可能である。溶鋼を収容する容器は、溶鋼や溶融スラグに耐性のある高温耐火材で内張りする必要がある。しかし、溶鋼や溶融スラグは耐火物であるライニングを腐食させる。
【0004】
耐火物ライニングの腐食のレベルおよび進行を測定するために、広く受け入れられ、現在も行われている3つの従来からの方法がある。その方法とは、目視観察、赤外線マッピング、およびレーザースキャンである。耐火物ライニングの腐食を目視観察することは、耐火物ライニングの整備時に行うことができる。また、耐火物ライニングの寿命が尽きた後に、耐火物ライニングの残物の物理的測定を行うことによっても、耐火物ライニングの腐食を目視観察することが可能である。
【0005】
耐火物ライニングの腐食に対する赤外線マッピングは、溶鋼が入ったライニング付き容器の外面に対して、溶鋼接触段階における特定の工程または時間において実施される。耐火物ライニングの腐食に対する赤外線マッピングの目的は、中身が入っている容器の外面の温度と容器に取り付けられた耐火物ライニングの状態とを相関させることである。赤外線マッピングは、赤外線マッピング画像を目視確認するという簡単なものでよい。赤外線マッピング画像の目視確認は、さらにソフトウェア操作、高度な温度画像、データレポートによって補完することができる。
【0006】
耐火物ライニングの腐食に対するレーザースキャンは、特定の工程の位置にある、内張りされた空の容器の内面に対して行われる。レーザースキャンシステムにおいては、例えば、レーザートフカメラを含む複数のタイプのハードウェア及びデバイスを利用することができる。ソフトウェアパッケージを使用して、点群データを完全に幾何学的に記述された画像に処理し、様々なデータレポートを生成することができる。そして、そのソフトウェアパッケージを使用して、レーザースキャンから収集したデータを分析することができる。本方法の目的は、2mmの精度内で、耐火物ライニングの実際の形状、残存している厚さ、または他の詳細なパラメータを測定することである。そのようなパラメータとしては、ウェルブロックや出銑口などの取鍋の機能的な部品の状態、またはウェルブロックや出銑口の研磨効率、取鍋の底の窪みにはまり込んだ鋼の測定、又は、例えばスライドゲートを含み得る流量制御部品の通路の状態などが挙げられるが、これらのパラメータに限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した3の方法は、従来からそれぞれ独立して利用されている。耐火物ライニングの腐食は、工業プロセスにおいて、主に目視観察により確認される。しかし、赤外線マッピング及びレーザースキャンは、耐火物ライニング腐食評価のための代替的かつ独立した解決策と考えられている。実際、この3つの方法は、市場において競合しているが、コストは大きく異なる。目視観察のコストは、主に一般諸経費に関連する。赤外線マッピングシステムは、レーザースキャンシステムよりも低コストである。
【0008】
しかしながら、これらの方法を個別に使用することには欠点がある。例えば、非常にまれに耐火物ライニングの腐食の目視観察を行っても、この目視観察は、各加熱またはプロセスサイクルの後に、レーザースキャン、または、より程度は少ないが赤外線マッピングを用いて物理的に記述された、耐火物ライニングの実際の状態と連携しない。さらに、目視観察では、耐火物ライニングの予測性能を計算するために使用できる貴重なプロセス最適化データを収集することができない。
【0009】
耐火物ライニングの腐食に対する赤外線マッピングは間接的であり、外面の観察により耐火物ライニングの状態を判断するものである。赤外線マッピング法で収集された温度測定値は、実際のライニングの厚みを貫通する熱の流れによる影響を受ける。しかし、その一方で、溶鋼の温度や、溶鋼や溶融スラグがライニングの空隙に含浸することによっても、温度測定値は影響を受ける。このように溶鋼が含浸されることは、一般的であり、赤外線マッピングによる測定値に誤差を生じさせ、耐火物ライニングの早期交換につながり、コストを増大させてしまう。
【0010】
耐火物ライニングの腐食に対するレーザースキャンは直接的であり、耐火物ライニングの実際の状態や厚さを高精度に測定する。しかし、レーザースキャンは、測定時に耐火物ライニングがスラグで覆われていると、耐火物ライニングの厚さや状態を測定することができない。つまり、レーザースキャンにより正確な測定結果を得たいのであれば、取鍋内に溶鋼や溶融スラグを残しておくことはできない。もし、ライニングに大きな亀裂や厚さ不足などの重大な欠陥があった場合でも、スラグコーティングによりそれらが一時的に覆われていると、レーザースキャンしても誤った測定結果が生成されてしまう。すると、操作中にコーティングが溶け出し、隠れていた耐火物ライニングの欠陥が溶鋼にさらされるおそれがある。その結果、耐火物ライニングの大きな破損につながる可能性がある。
【0011】
本発明は、耐火物ライニングの腐食をレーザースキャンと赤外線マッピングの両方によって識別するシステムを提供することにより、これらの問題および他の問題に対処するために開発されたものである。また、本発明は、問題の耐火物ライニングの将来の性能を予測するために、レーザースキャンおよび赤外線マッピングによって取り出されたデータに加えて、プロセス特性および変数が使用され得るシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、冶金容器の外壁の内面に内張りされ、溶融金属にさらされている間に熱にさらされる耐火物ライニングの将来の状態を予測するための測定システムを提供する。このシステムは、1つ以上のレーザースキャナと、プロセッサとを備える。レーザースキャナは、冶金容器が空のときに耐火物ライニングに複数のレーザースキャンを行う。レーザースキャナの少なくとも1つは、加熱の前に耐火物ライニングをレーザースキャンし、耐火物ライニングの加熱前の構造状態に関連するデータを収集する。レーザースキャナの少なくとも1つは、加熱の後に耐火物ライニングをレーザースキャンし、耐火物ライニングの加熱後の構造状態に関連するデータを収集する。プロセッサは、収集された加熱前の構造状態データと収集された加熱後の構造状態データとを比較することによって、耐火物ライニングの熱暴露衝撃(以下、「熱衝撃」と称することもある)を判定する。プロセッサはさらに、熱暴露衝撃の判定基づいて、1回以上の後続の加熱の後、耐火物ライニングの将来の状態を予測する。
【0013】
本発明の他の側面によれば、冶金容器の外壁の内面に内張りされ、溶融金属にさらされている間に熱にさらされる耐火物ライニングの将来の状態を予測するための方法を提供する。この方法は、加熱前に耐火物ライニングに対して1回以上のレーザースキャンを行う工程を含む。この加熱前にレーザースキャンを行う工程は、耐火物ライニングの加熱前の構造条件に関連するデータを収集することを含む。この方法はまた、加熱後に耐火物ライニングに対して1回以上のレーザースキャンを行う工程を含む。この加熱後にレーザースキャンを行う工程は、耐火物ライニングの加熱後の構造条件に関連するデータを収集することを含む。この方法はさらに、プロセッサを介して、耐火物ライニングに対する熱暴露衝撃を判定する工程を含む。熱衝撃を判定する工程は、収集された加熱前構造状態データと、収集された加熱後構造状態データとを比較することを含む。この方法はさらにまた、プロセッサを介して、熱暴露衝撃の判定に基づき、1回以上の後続の加熱の後、耐火物ライニングの将来の状態を予測する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、赤外線マッピングにおいて、鋼の含浸に起因する誤った温度測定値に関して、欠陥の解決策を提供する。
【0015】
本発明は、また、スラグコーティングの影響を受けたレーザースキャンの数値の誤りに関して、欠陥の解決策を提供する。
【0016】
本発明はさらに、空の冶金容器の耐火物ライニングを非常に精密に測定すること、および容器が溶融金属または溶鋼で満たされている間の耐火物ライニングを監視することができるような解決策を提供する。
【0017】
本発明は、さらにまた、耐火物を内張りされた冶金容器の操作の安全性を著しく向上させる解決策を提供する。
【0018】
本発明は、さらにまた、冶金容器の性能を予測的に計算するための統計的アルゴリズムを開発することができる。
【0019】
本発明は、さらにまた、耐火物ライニングの状態を示す実際の数値を使用して、操作パラメータおよび所定のパラメータの影響を確認することができるような解決策を提供する。ここで、そのような数値は、各サイクル後に収集され得る。
【0020】
このような利点及びその他の利点は、添付の図面及び添付の特許請求の範囲と共に、以下の好ましい実施形態の記載から明らかになるであろう。
【0021】
本発明は、特定の部品及び部品の配置に関して、物理的な形態をとることができる。そして本発明の好ましい実施形態が、以下のように明細書に詳細に記載され、本明細書の一部である添付の図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の耐火物性能予測測定システムの一例を示す模式図である。
図2】本発明の耐火物性能予測測定システムにより将来の状態を予測しようとする耐火物ライニングを、空の冶金容器およびフルの冶金容器の外壁内面にそれぞれ内張りした例を示す模式図である。
図3】取鍋容器の外壁の内面に内張りされ、溶融金属にさらされている間は熱にさらされる耐火物ライニングの将来の状態を予測する本発明の方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明は、読者が本明細書に記載された方法、装置、および/またはシステムを包括的に理解するのを支援するために提供される。しかしながら、本明細書に記載されるシステム、装置、及び/又は方法の様々な変更、修正、及び均等物は、当業者には明らかであろう。また、当業者によく知られている機能および構造の説明は、明瞭性および簡潔性を高めるために省略されることがある。
【0024】
図面および詳細な説明を通じて、同じ参照数字は同じ要素を指す。図面は縮尺通りでない場合があり、図面における要素の相対的なサイズ、比率、および描写は、明確さ、図示、および利便性のために誇張されている場合がある。
【0025】
本明細書に記載された特徴は、異なる形態で具現化される可能性があり、本明細書に記載された例に限定して解釈されるものではない。むしろ、本明細書に記載された例は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本開示の全範囲を伝えるように提供されたものである。
【0026】
はじめに、本明細書の記載の目的上、「冶金容器」とは、溶鋼の製造又は精錬のためのプロセス内で使用することができる任意の容器をいう。これには、一次溶解装置または二次冶金容器が含まれるが、これらに限定されるものではない。一次溶解装置としては、塩基性酸素転炉や電気炉などが挙げられるが、これらに限定されない。二次冶金容器としては、取鍋冶金炉、脱ガス装置、アルゴン酸素脱炭容器、または真空酸素脱炭容器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶鋼を運ぶことを任務とする二次製鋼または冶金容器の例として、空取鍋容器16およびフル取鍋容器18があり、これらは後述の記載においてより詳細に説明される。しかしながら、本明細書で説明する実施形態はこれに限定されるものではない。なぜなら、冶金容器の使用は溶鋼での使用に限定されず、他の溶融金属全般を保持することができるためである。
【0027】
さらに、冶金容器の耐火物ライニングの性能に影響を与える製鉄所の操作パラメータについて、該当する場合には、その変動性および測定方法とともに説明する。例えば、本明細書における記載の目的上、「加熱」は、製鋼プロセスの最初から最後までの1つの動作を指す場合がある。
【0028】
例えば、本明細書の記載の目的上、「スクラップ又はチャージングミックス」は、製造される鋼種に対する個々のスクラップ品質及び鉄単位の特定の比率を有するバッチを含むことができ、スクラップリサイクル産業協会からのガイドラインによって特定される鉄スクラップを含むがこれに限定されない。また、「スクラップ又はチャージングミックス」は、ヘビー・メルティング・スチール、ブッシュリング、クリッピング、バンドル、シュレッディング、ターニング、プレート、構造物、鋳鉄、ミクスト・ヘビー・メルト、レール、レールロード、缶ベールを含んでもよいが、これらに限定されない。さらに、銑鉄やホットブリケッティング鉄などの他の鉄源で補完することができるが、これらに限定されない。
【0029】
スクラップまたはチャージングミックスに関して、鉄鋼メーカーが一次溶融プロセスで利用できる鉄スクラップの品質および鉄単位には、大きなばらつきがある。これらの材料の物理的属性(例えばサイズ、形状、汚染体)、これらの材料の化学的属性(例えば組成、錆、不純物)、及び各加熱のためのチャージングミックスの組成は、溶融プロセスの効率、精錬冶金の期間、並びに耐火物の腐食及び侵食に直接影響を与える。チャージングミックスは通常、個々のスクラップ品質と鉄単位の特定の比率を持つ単純なバッチである。これらは、チャージング部材の入手可能性と生産される鋼種に基づく。
【0030】
さらに、本明細書の記載の目的上、「鋼」及びその鋼種は、炭素鋼、ニッケル鋼、ニッケル-クロム鋼、モリブデン鋼、クロム鋼、クロム-バナジウム鋼、タングステン鋼、ニッケル-クロム-モリブデン鋼、及びシリコン-マンガン鋼を含み得るが、これらに限定されるものではない。 さらに、鋼種ごとに、塩基性酸素転炉、電気炉などの一次溶解装置と、取鍋冶金炉、脱ガス装置、アルゴン酸素脱炭容器、真空酸素脱炭容器などの二次冶金容器での鋼の処理をある程度交互に行うことが必要である。これらの特定のプロセスが要求されるのは、要求される鋼種を得るためであり、これらの特定のプロセスが耐火物ライニングの性能に影響を与えることが実証されている。脱炭・脱酸処理により、残留炭素量、不純物量、合金元素の添加量を調整し、耐火物に特有の腐食・侵食作用を及ぼす。
【0031】
さらに、本明細書の記載の目的上、「合金添加物」は、アルミニウム、シリコン、フェロシリコン、カルシウム、マグネシウム、炭化カルシウム、および種々の脱酸ブレンドなどの、炉または他の冶金容器への「脱酸剤」を含み得るが、これらに限定されるものではない。または二次鉄鋼製造および精錬のための取鍋製造容器への添加物、例えば、炭素、マンガン、バナジウム、モリブデン、クロム、ニッケル、チタン、ホウ素、ニオブ、および当業者に知られている他の同様の材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
鋼を合金化する工程は、鋼の化学組成を変化させ、仕様や用途に合わせてその特性を変更、調整、改善するために使用される。脱酸剤は、溶鋼中の酸素濃度を下げるためのものである。添加物は、溶解工程や精錬工程において重量単位で添加され、個々の加熱の開始パラメータと目標パラメータによって異なる。これらの合金添加物の量と質は、鋼の品質だけでなく、耐火物ライニングの腐食にも大きな影響を与える。
【0033】
さらに、本明細書の記載の目的のために、「スラグ」は、溶鋼の上部に浮かぶ溶融金属酸化物およびフッ化物の溶液を含み得る。このスラグは、製鋼プロセス及び精錬プロセスの前またはこれらのプロセス中に添加され、スラグの生成の基礎となる、石灰、ドロマイト石灰およびマグネシアなどの材料によって形成され得るが、これらに限定されない。さらに、本明細書の記載の目的上、「フラックス添加物」は、流動するスラグの流動性を最適化するために添加され、アルミン酸カルシウム、蛍石、ケイ砂、または合成スラグの種々のブレンドを含んでもよい。
【0034】
スラグは、製鋼や製錬が行われる温度では主に液体である。製鋼工程では、脱炭、脱酸、脱硫、脱リンなどの工程で発生する非金属化合物を吸着する役割を担っている。スラグ形成剤やフラックスの添加量は、加熱によって異なり、鋼1トン当たり数ポンドから数百ポンドとなることもある。これらの添加物の量と質は、液体スラグの化学組成と耐火物ライニングの腐食に直接的な影響を与える。
【0035】
精錬工程におけるスラグの典型的な化学組成は、表1に特定されている。バランスを欠いたスラグ化学組成は、耐火物ライニングの寿命に大きな悪影響を及ぼす。処理されたコールドサンプルの化学組成は、例えば蛍光X線分析装置によって測定することができ、蛍光X線分析技術を用いて化学組成の判定をする。以下、詳細な説明は省略するが、処理済コールドサンプルの化学組成を測定できる装置を、スラグ化学組成測定装置3と呼ぶことにする。
【0036】
【表1】
【0037】
鋼の温度は、一次溶融炉、すなわち炉容器からの鋼の出鋼(または除去)前に、2800°Fから3200°Fの間の範囲で、または取鍋容器での二次製鋼中若しくはその終了付近で、2700°Fから3000°Fの間の範囲で規定される。温度は通常、溶融金属または溶鋼に浸漬され、好ましくは消耗品である取鍋熱電対25のような華氏数度以内の有効性を有する熱電性の熱電対によって測定される。耐火物性能予測測定システム4における取鍋熱電対25の使用、およびシステム4自体については、以下の記載においてさらに詳細に説明する。
【0038】
さらに、この記載の目的上、冶金容器の「履歴」は、冶金容器の外壁の内面に同じ耐火物ライニングが内張りされている期間を意味する。履歴は、典型的には、様々な「取鍋追跡パラメータ」の収集を通じて記録され、これには、加熱、プレート変更、ノズル変更、及び製鋼プロセス中に冶金容器に影響を与えることにより、そこに設置された耐火物ライニングの寿命に影響を与えかねない他の事象が含まれるが、これらに限られない。より具体的には、取鍋追跡パラメータは、冶金容器の耐火物ライニングが修理、変更、または取り壊しの対象となる時期を特定するものである。
【0039】
例えば、冶金容器に新しく設置された作業用耐火物ライニング、作業用耐火物ライニング34、に対する加熱の回数はゼロである。使用後、冶金容器のいくつかの部品は、交換または修復を必要とする場合がある。そのような交換の例として、流量制御スライドゲートの交換(熱付加の回数が1回から15回までの後)、流量制御上部または下部ノズルの交換(加熱の回数が少数回から30回またはそれ以上の後)、ガスパージコーンの交換、ウェルブロックおよびポケットブロックの交換(加熱の回数が15回から取鍋の寿命まで)、スラグラインの交換(加熱の回数が15回から装置の寿命まで)、が考えられるが、これらに制限されない。
【0040】
取鍋容器の底部のモノリシックパッチや取鍋容器リップリングの修理など、追加の修理も可能であるが、これらに限定されるものではない。取鍋容器は、その最終解体時に、作業用耐火物ライニング34が、数回から200回を超えるまで加熱される可能性がある。取鍋追跡パラメータは可変であって、耐火物ライニングの全体的な性能に大きな影響を及ぼす。冶金容器の修理または交換は、典型的には、その容器を使用停止にすることを必要とし、それによって、そこに配置された耐火物ライニングに熱衝撃または熱勾配の損傷をもたらす。
【0041】
さらに、この記載の目的上、「予熱」は、溶融金属または溶鋼にさらす前に、冶金容器をガス動力式予熱器にさらすことを意味する。具体的には、空の冶金容器はそれぞれ、運転中であれば、高温に保つ必要がある。予熱は、作業用耐火物ライニング34などの作業用耐火物ライニングの性能に影響を及ぼす。予熱温度は、以下にさらに詳細に説明する予熱器熱電対2などの熱電対、または光高温計によって測定することができる。予熱温度は、典型的には、1500°Fから2200°Fの範囲である。
【0042】
しかしながら、作業用耐火物ライニング34などの作業用耐火物ライニングは、通常、黒鉛および炭素を含むので、一般的でない予熱にさらすことは、炭素枯渇、ひいては作業用耐火物ライニング34の性能に直接影響を与える。必要ではあるが、作業用耐火物ライニング34などの作業用耐火物ライニングの予熱は、作業用耐火物ライニングの耐火物寿命を短くすることが予測され、作業用耐火物ライニングの将来の状態に影響を及ぼす。
【0043】
さらに、予熱の持続時間は予め決められていない。その代わりに、持続時間は、プロセスが行われる領域、すなわち作業場で定義される変数及び状況に依存する。このような変数及び状況には、操作上の不整合、プロセスのバックログ、溶融金属の利用可能性、予期せぬ修理、又はプロセス機器の緊急メンテナンスによるシャットダウンが含まれるが、これらに限定されるものではない。このように、予熱の持続時間は、以下でより詳細に説明する予熱記録装置24のような記録機構によって監視される必要がある。
【0044】
さらに、この記載の目的上、「滞留時間」は、作業用耐火物ライニング34の溶鋼およびスラグとの累積接触持続時間として定義される。滞留時間は予め決められたものではなく、プロセスが行われる領域、すなわち作業場で定義される変数および状況に大きく依存する。例えば、製鉄所のプロセスの流れにおいては、各加熱の回数ごとに、30分から10時間以上という時間が、作業用耐火物ライニング34の溶鋼およびスラグとの累積接触持続時間に影響を与え得る。そのため、以下に詳述する滞留時間記録装置23のような記録機構によって累積接触持続時間を監視する必要がある。
【0045】
さらに、冶金容器は、通常、その底部に攪拌要素を備えている。これらは、アルゴンまたは窒素のような不活性ガスを溶鋼にパージする。この主な目的は、溶鋼の脱硫を改善、促進することであるが、合金化効率や溶鋼の温度均一化を改善することでもある。
【0046】
攪拌圧力は通常120psiから180psiの範囲に収まり、ガス量は通常5から50scfmの間に収まる。流量は通常、穏やかな攪拌及びすすぎでは一般に5から10scfm、アーク放電、合金添加及び均質化中の中程度の攪拌では15から25scfm、重脱硫では25から45scfmに収まる。流量は、容器のサイズ、プラグの位置、およびプラグの条件によって異なる。加熱中のパージの持続時間は、数分から30分以上の範囲になる可能性がある。パージプラグの寿命は通常、500分から2000分の間に収まる。
【0047】
攪拌圧力、流量、時間はプラグの寿命だけでなく、作業用耐火物ライニング34の局所的な侵食に影響を与える。したがって、予熱や滞留時間の場合と同様に、溶鋼の攪拌に関するパラメータは予め決められているのではなく、鋼の脱硫の効率に依存するものである。例えば、溶鋼の出鋼前に硫黄のレベルを測定する。脱硫の目標値に達しない場合は、攪拌時間の追加、攪拌圧力の増加、流量の増加などを行う。これらのパラメータを増加および上昇させると、作業用耐火物ライニング34の寿命の低下をもたらすことが知られている。これらのパラメータは、以下にさらに説明するガス攪拌制御装置26において監視および記録することができる。
【0048】
さらに、この記載の目的上、冶金車両の物理的な向きは、製鉄所または鋼鉄生成専用の他の任意の施設など、冶金車両が使用されている領域の全体空間との関係における冶金車両の位置と対応する。
【0049】
ここで図面を参照する。但し、図示は本発明の好ましい実施形態を説明するためのものであって、これを限定するためのものではない。本発明は図1図3を参照して説明される。
【0050】
図1は、耐火物性能予測測定システム4の一例を示す模式図である。 システム4を使用して、溶融金属又は溶鋼を取り扱う冶金容器の外壁の内面に内張りされる耐火物ライニングの将来の状態、すなわち性能を予測する。耐火物性能予測測定システム4は、製鉄所、鋳造所、または鋼や金属の溶融、成形、精錬に適していることが当業者によって知られている他の環境において実施され得る。しかしながら、システム4の実質的な部分は、任意の環境で実施され得ることを想定しており、そのような環境では耐火物の表面分析、温度分析、プロセスデータ分析、および平均寿命の計算が求められる。
【0051】
図1に示された例示的な装置、ユニット、モジュール、デバイス、および他の構成要素は、システム4に含まれるハードウェア構成要素である。これら構成要素により、図2および図3に関して本明細書に記載された方法および動作を実行する。ハードウェア構成要素の例としては、上述の例示的な装置、ユニット、モジュール、及びデバイスに限定されず、コントローラ、センサ、ジェネレータ、ドライバ、及び当業者に知られている他の任意の電子部品が挙げられる。このような構成要素は、設計上の必要性に応じて可変的に配置されてもよく、有線または無線の手段を通じて互いに通信してもよい。
【0052】
本明細書で説明する非限定的な例では、システム4は、コンピューティング複合体10を含む。コンピューティング複合体10は、1つ以上のプロセッサ12と、1つ以上の記憶装置14とを含むことができるが、これに限定されない。コンピューティング複合体10のプロセッサ12及び記憶装置14は、コンピューティング複合体10の適切な動作を促進するために、任意の方法で方向付けられ、位置付けられ、又は接続されてもよい。これには、有線構成、無線構成、ローカル構成、広域構成、および互換性のあるネットワークプロトコルを通じてそれらの間に通信が確立され得る任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
プロセッサ12は、1つ以上の処理要素によって実行される。そのような処理要素には、論理ゲートのアレイ、コントローラ及び算術論理ユニット、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブル論理アレイ、マイクロプロセッサ、又は、所望の結果を達成するために、定められた方法で命令に応答し実行できる、当業者に知られている任意の他のデバイス若しくはデバイスの組み合わせを挙げることができる。
【0054】
簡略化のため、本明細書で説明する例示的なプロセッサ12の説明では単数形の「プロセッサ」を使用することができるが、他の例では複数のプロセッサ12が使用されるか、プロセッサ12が複数の処理要素、並び複数の種類の処理要素、またはその両方を含む。一例では、ハードウェア構成要素のシステム4は、コンピューティング複合体10の複数のプロセッサ12を有し、別の例では、システム4のハードウェア構成要素は、独立したプロセッサまたはプロセッサを含む別のコントローラを有し、その後、コンピューティング複合体10のプロセッサ12からデータを受信するためにデータ通信を行う。コンピューティング複合体10のプロセッサ12は、後述するシステム4の他の構成要素とともに、ハードウェア構成要素として定義され得る。プロセッサ12と同様に、処理機能を含む他のハードウェア構成要素は、異なる処理構成のうちの任意の1つ以上に従って定義されてもよい。その例として、単一プロセッサ、独立プロセッサ、並列プロセッサ、単一命令単一データ(SISD)多重処理、単一命令多重データ(SIMD)多重処理、多重命令単一データ(MISD)多重処理、および多重命令多重データ(MIMD)多重処理が挙げられる。プロセッサ12は、ケーブルまたは無線ネットワークを介してハードウェア構成要素に接続されて、それに命令を提供してもよい。あるいは他のプロセッサに接続されて、マルチプロセッシング機能を有効にしてもよい。
【0055】
命令またはソフトウェアは、プロセッサ12またはハードウェア構成要素を実装したシステム4内のプロセッサを含むハードウェアを制御して、以下に説明する方法を実行する。これら命令またはソフトウェアは、個別にまたは集合的に、プロセッサ12またはシステム4内のプロセッサを含むハードウェアを指示または構成して機械または特殊目的コンピュータとして動作し、ハードウェア構成要素と以下に説明する方法によって実行する動作を行うためのコンピュータプログラム、コードセグメント、命令またはそれらの任意の組み合わせとして書かれる。一例では、命令またはソフトウェアは、コンパイラによって生成される機械コードのような、プロセッサ12またはシステム4内のプロセッサを含むハードウェアによって直接実行される機械コードを含む。別の例では、命令またはソフトウェアは、プロセッサ12またはシステム4内のプロセッサを含むハードウェアによってインタプリタを使用して実行される高位レベルのコードを含む。
【0056】
当業者であるプログラマは、図3に示されたフローチャートおよび本明細書の対応する記述に基づいて、上述したようなハードウェア構成要素および方法によって実行される動作を実行するためのアルゴリズムを開示する命令またはソフトウェアを、容易に書くことができる。
【0057】
プロセッサ12またはプロセッサ12にリンクされた構成要素などのシステム4に実装されたハードウェア構成要素は、オペレーティングシステム(OS)およびOS上で動作する1つ以上のソフトウェアアプリケーションなどの命令またはソフトウェアを実行し、図2および図3に関して以下に説明する動作を実行する。
【0058】
プロセッサ12またはハードウェア構成要素を実装したシステム4内のプロセッサを含むハードウェアを制御して、以下に説明する方法を実行するための命令またはソフトウェア、および任意の関連データ、データファイル、データ構造は、記憶装置14に記録、保存、または固定されている。コンピューティング複合体10の記憶装置14は、一般に、プロセッサ12によって実行される命令またはソフトウェアを格納する1つ以上のメモリを指す。しかしながら、プロセッサ12またはプロセッサ12にリンクされた構成要素などのシステム4に実装されたハードウェア構成要素は、ローカルストレージを含むか、または命令若しくはソフトウェアの実行に応答して記憶装置14内のデータにアクセス、操作、処理、作成、および格納することができる。
【0059】
記憶装置14は、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に表されてもよい。記憶装置14は、コンピューティング複合体10のネットワークを介して連結された複数の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を表すものであってもよい。例えば、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティング複合体10内のシステム4から遠隔に配置された1つ以上の格納施設または1つ以上のデータセンターに配置されてもよい。そのような媒体は、コンピューティング複合体10のネットワークを介してシステム4に接続されてもよい。コンピューティング複合体10のネットワークによって、データセンターまたは格納施設に遠隔配置された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が、ネットワークを介してコンピューティング複合体10の記憶装置14内の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体にデータを転送することを可能にする。さらに、記憶装置14は、遠隔に配置された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体とローカルに配置された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の双方を表すものであってもよい。
【0060】
非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の例としては、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、固体メモリ、CD-ROM、CD-R、CD+R、CD-RW、CD+RW、DVD-ROM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW、DVD-RAM、BD-ROM、BD-R、BD-R LTH、BD-RE、磁気テープ、フロッピーディスク、光磁気データ記憶装置、光データ記憶装置、ハードディスク、固体ディスク、および、当業者に既知の任意のデバイスが挙げられる。この当業者に既知の任意のデバイスは、命令またはソフトウェア、並びに任意の関連するデータ、データファイル、およびデータ構造を非一時的な方法で格納し、プロセッサ12またはプロセッサが命令を実行できるように、命令またはソフトウェア、並びに任意の関連するデータ、データファイル、およびデータ構造をコンピューティング複合体10のプロセッサ12またはシステム4内のプロセッサを含むハードウェアに提供できる。一例では、命令またはソフトウェア、並びに任意の関連するデータ、データファイル、およびデータ構造は、命令およびソフトウェア、並びに任意の関連するデータ、データファイル、およびデータ構造がプロセッサ12によって分散方式で格納、アクセス、および実行されるように、ネットワーク結合コンピュータシステム上に分散配置される。
【0061】
コンピューティング複合体10のプロセッサ12および記憶装置14以外のシステム4におけるハードウェア構成要素は、例えば、端末6を含んでもよい。端末6としては、例えば、ユーザ入力、ディスプレイ、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。図1において、端末6は、コンピューティング複合体10に接続されているように図示されている。しかしながら、本明細書に開示される実施形態は、これに限定されない。例えば、端末6は、プロセッサ12に直接、記憶装置14に直接、記憶装置14及びプロセッサ12の両方に、又はシステム4の他の任意のハードウェア構成要素に接続されてもよい。
【0062】
端末6は、プロセッサ12によって処理された、またはユーザによって入力された、記憶装置14に含まれる情報を表示し得る。プロセッサ12は、端末6に表示されるべきものを決定することを担っている。記憶装置14は、プロセッサ12によって生成され、端末6を介して入力されたデータを格納してもよい。アプリケーション、ユーザ入力、及びプロセッサの計算は、耐火物性能を予測するために、記憶装置14に格納され、プロセッサ12がアクセスしてもよい。
【0063】
記憶装置14に接続されたシステム4における上記ハードウェアのさらなる例として、スラグ化学組成測定装置3、レーザースキャナ20、予熱器熱電対2、赤外線カメラ22、滞留時間記録装置23、予熱記録装置24、ガス攪拌制御装置26、取鍋熱電対25および方位レーザー19が挙げられる。記憶装置14は、これらのハードウェア構成要素から、当業者に公知の任意の有線または無線方式でデータを受信し、受信および格納されたデータを、さらなる処理のために当業者に公知の任意の有線または無線方式でプロセッサ12に伝達することができる。これらの構成要素の動作は、以下の記載においてより具体的に説明される。
【0064】
図2は、耐火物性能予測測定システム4によって耐火物ライニングの将来の状態を予測することになる取鍋容器16、18の外壁の内面に耐火物ライニングが内張されている例を示す模式図である。取鍋容器16は、溶融金属や溶鋼を含んでいないため、「空取鍋容器16」と称する。取鍋容器18は、溶融金属または溶鋼を含んでおり、したがって、「フル取鍋容器18」と称する。図2の取鍋容器16および18は、鋼取鍋のような二次精錬および輸送容器の代表的なものである。
【0065】
取鍋容器16、18の各々は、同じ耐火物で内張りされている。図2に示す例では、取鍋容器16、18の外壁の内面には、予備の耐火物ライニング32が内張りされている。予備の耐火物ライニング32の上には、作業用耐火物ライニング34が内張りされている。
【0066】
作業用耐火物ライニング34は予備の耐火物ライニング32の上に内張りされているので、予備の耐火物ライニング32は通常、比較的寿命が長い。例えば、予備の耐火物ライニング32の寿命は、1年とし得る。一方、製鋼加熱時には、作業用耐火物ライニング34は、取鍋容器16、18内に入れられた溶融金属または溶鋼に直接さらされる。したがって、作業用耐火物ライニング34の寿命は、通常、かなり短い。加熱中に実施される製鋼プロセスの過酷さよっては、作業用耐火物ライニング34は2週間しかもたないかもしれない。このように、空取鍋容器16の作業用耐火物ライニング34は、フル取鍋容器18の作業用耐火物ライニング34と同じであるが、加熱中、フル取鍋容器18の作業用耐火物ライニング34は、そこに含まれる溶融金属または溶鋼によって影響を受けると仮定される。したがって、加熱が実施される前の空取鍋容器16の作業用耐火物ライニング34の構造上の状態と、加熱がそれぞれ実施された後の空取鍋容器16の作業用耐火物ライニング34の構造上の状態とが大きく異なる場合がある。
【0067】
先に述べたように、システム4は、少なくとも1つのレーザースキャナ20を有する。レーザースキャナ20は、固定式であっても移動式であってもよい。レーザースキャナ20は、溶融金属または溶鋼を取り扱う加熱の前後に、空取鍋容器16の作業用耐火物ライニング34をスキャンする。レーザースキャナ20は、1秒間に1,000,000点の周波数でスキャンする能力を有するクラス1のアイセーフレーザーを有していてもよい。また、レーザースキャナ20は、20秒の走査速度と、1~2mmの精度とを有していてもよい。
【0068】
レーザースキャナ20は、レーザー支持装置21によって支持される。レーザー支持装置21は、レーザースキャナ20が静止している場合は静止状態で支持してもよいし、レーザースキャナ20が移動している場合は移動状態で支持してもよい。レーザースキャナ20が移動式である場合、レーザー支持装置21は、移動式レーザースキャナ30を動かすのに適していることが当業者によって知られている任意の支持手段であってよい。レーザースキャナ20が静止している場合、レーザー支持装置21は、静止しているレーザースキャナ20を固定するのに適している、当業者によって知られている固定可能に支持する任意の手段であってもよい。
【0069】
レーザースキャナ20によって実行されるスキャンの機能には、空取鍋容器16が溶融金属又は溶鋼で満たされ、それによってフル取鍋容器18となる加熱の前と後に、空取鍋容器16内の作業用耐火物ライニング34の加熱前後のそれぞれの構造状態を観察した構造データの収集を含むが、これらに限定はされない。このデータは、作業用耐火物ライニング34の構造的条件に関して、記憶装置14で保管するため、及び/又は、プロセッサ12が参照するために、コンピューティング複合体10に提供される。
【0070】
システム4はまた、1つ以上の赤外線カメラ22を有してもよく、加熱中のフル取鍋容器18の外壁の外面において、1回以上の赤外線スキャンを実施し得る。これにより加熱中のフル取鍋容器18の外壁の外面の温度に関連するデータを収集する。一例では、赤外線カメラ22は、加工工場内のいくつかの場所に配置されてもよい。これら赤外線カメラ22により、フル取鍋容器18が溶鋼で満たされる場所から、精錬が行われる場所を含む加工工場全体の二次製鋼場所まで移動する際に、フル取鍋容器18の外壁の外面の温度を戦略的に測定することができる。特に、赤外線カメラ22から収集した温度データをマッピングして、プロセッサ12により作業用耐火物ライニング34の劣化箇所を特定することができる。赤外線カメラ22は、溶鋼で満たされたときの冶金容器の外壁の外面を画像化するのに適切であることが当業者に知られていれば、任意の赤外線カメラであってよい。温度データは、記憶装置14での保管および/または作業用耐火物ライニング34の構造条件に関してプロセッサ12が参照するために、コンピューティング複合体10に提供され得る。
【0071】
さらに、プロセッサ12が参照するためにコンピューティング複合体10に通信されたレーザー走査データ、温度データ、またはそれらの組み合わせは、プロセッサ12への通信およびプロセッサ12が参照するのを待っている記憶装置14に格納された他の測定された所定の操作パラメータと共に追加的に参照することが可能である。測定された操作パラメータは、例えば、スラグ化学組成測定装置3、予熱器熱電対2、滞留時間記録装置23、予熱記録装置24、ガス攪拌制御装置26、および取鍋熱電対25等を含む先に説明したハードウェア手段を通じて、プロセッサ12が参照するためにコンピュータ複合体10に供給されても良い。所定の操作パラメータは、ユーザ入力またはプロセッサ12によって以前に処理された履歴データを介して端末6からコンピュータ複合体10に供給され、作業用耐火物ライニング34の将来の状態予測に関する将来の参照のために記憶装置14に格納されてもよい。
【0072】
所定の操作パラメータには、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。過去に溶融金属または溶鋼を取り扱った冶金容器の、外壁の内面に内張りされた1つ以上の過去の耐火物ライニングに適用された1つ以上の耐火物に関連する履歴データ;作業用耐火物ライニング34の初期の化学組成;作業用耐火物ライニング34の初期の物理設計;冶金容器内の溶鋼から加熱中に製造されるように求められる鋼種;溶鋼から所望の鋼種を製造するために加熱中に冶金容器に添加されるチャージングミックスの成分の物理的および化学的属性と量;二次製鋼および精錬のために加熱中に冶金容器に加えられる合金の物理的および化学的属性と量;溶鋼から所望の鋼種を製造するために、加熱中に冶金容器内の溶鋼に添加され、溶鋼から非金属成分を吸収するスラグを形成するスラグ形成剤の物理的および化学的属性と量;溶鋼から所望の鋼種を製造するために、冶金容器内の溶鋼に添加され、形成されたスラグの流動性を最適化するフラックス添加剤の物理的および化学的属性と量;作業用耐火物ライニング34が冶金容器の外壁のライナー表面に内張りされている期間中の冶金容器の履歴;又は特定の金属生産作業において特定される他の関連する所定の操作パラメータ。
【0073】
測定された操作パラメータには、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。冶金容器が空であり、加熱の前に予熱されている間の予熱持続時間;溶鋼を生成するプロセスの間に溶鋼、スラグ、またはそれらの組み合わせが作業用耐火物ライニング34と接している間の累積接触持続時間によって規定される滞留時間;冶金容器内の溶鋼の攪拌によって加えられる攪拌圧力の大きさ;冶金容器内の溶鋼の攪拌中に冶金容器内の溶鋼に加えられる不活性ガスの流量;溶融金属が攪拌される攪拌持続時間;又は特定の金属生産作業において特定される他の関連する測定された操作パラメータ。
【0074】
上記データを使用して、プロセッサ12は、冶金容器の作業用耐火物ライニング34の熱暴露衝撃を判定し、その後に1回以上加熱された後の作業用耐火物ライニング34の将来の状態を予測することができる。作業用耐火物ライニング34の熱暴露衝撃は、加熱前の作業用耐火物ライニング34の構造状態と、加熱後の作業用耐火物ライニング34の構造状態とを比較することによって判定されてもよい。判定された熱衝撃に基づいて、その後に1回以上加熱された後の作業用耐火物ライニング34の将来の状態が予測される。言い換えれば、最初の熱暴露衝撃に基づいて、2回目の加熱、3回目の加熱などの後の作業用耐火物ライニング34の将来の状態を予測することができる。プロセッサ12は、上記で言及された全てのデータ源からのデータを参照してもよいが、これらに限定されるものではなく、本明細書で言及されていない他のデータ源を含むことも考えられる。
【0075】
一例として、作業用耐火物ライニング34の将来の状態の予測を補うために、赤外線カメラ22から収集した温度データを、溶鋼の取り扱い前の作業用耐火物ライニング34の構造状態と、溶鋼の取り扱い後の作業用耐火物ライニング34の構造状態とに関連付けて、作業用耐火物ライニング34の熱衝撃の判定を補ってもよい。これにより、将来の状態をより正確に予測することができる。
【0076】
別の例として、作業用耐火物ライニング34の将来の状態の予測を補うために、収集された構造状態データとの相関において、前述の所定の又は測定された操作パラメータのうちの1つ以上が、作業用耐火物ライニング34の熱暴露衝撃に及ぼす操作上の影響を検討することによって作業用耐火物ライニング34の熱衝撃の判定を補ってもよい。
【0077】
一例として、過去に溶融金属又は溶鋼を取り扱った冶金容器の外壁の内面に内張りされた1つ以上の過去の耐火物ライニングに適用された1つ以上の耐火物に関連する履歴データは、熱衝撃の履歴パターンを確立するために使用されてもよい。そのような履歴パターンは、溶融金属または溶鋼の取り扱い前の作業用耐火物ライニング34の構造的条件と、溶融金属または溶鋼の取り扱い後の作業用耐火物ライニング34の構造的条件との比較、および赤外線カメラ22から収集した温度データのそれとの相関を補うことができる。このような履歴データは、プロセッサ12が連続するそれぞれの加熱後、後続の作業用耐火物ライニングの将来の状態をより正確に予測できるように、熱衝撃の判定後にコンピュータ複合体10の記憶装置14に蓄積され得る。
【0078】
熱衝撃の判定を支援するために測定された操作パラメータを使用すること関して、取鍋熱電対25を使用し、フル取鍋容器18内の溶融金属又は溶鋼の温度を測定してもよい。一例として、取鍋熱電対25をフル取鍋容器18の開口40を通して溶鋼に挿入し、二次製鋼工程の間又は終了時(例えば、精錬工程の終了時)に溶鋼の温度を測定してもよい。取鍋熱電対25が測定した温度データは、コンピューティング複合体10に提供しされ、作業用耐火物ライニング34の将来の状態の予測に従って熱衝撃を判定する間、プロセッサ12によって参照されてもよい。
【0079】
また、スラグ化学組成測定装置3を設けて、二次製鋼工程で冶金容器内に発生するスラグの化学成分を測定してもよい。前述のように、化学組成を測定するためには、スラグの試料を冷却する必要がある。スラグ化学組成測定装置3は、例えば、蛍光X線分析装置であってよく、これにより、化学組成を測定するための蛍光X線分析技術を取り入れる。スラグ化学組成測定装置3が測定したスラグの化学組成は、コンピューティング複合体10に提供され、作業用耐火物ライニング34の将来の状態の予測に従って熱衝撃を判定する間、プロセッサ12によって参照されてもよい。
【0080】
さらに、予熱器熱電対2を使用して、冶金容器が空であり、冶金容器に溶融金属または溶鋼が充填される前に予熱されているときに、冶金容器の温度を測定してもよい。予熱器熱電対2が測定した予熱器温度は、コンピューティング複合体10に提供され、作業用耐火物ライニング34の将来の状態の予測に従って熱衝撃を判定する間、プロセッサ12によって参照されてもよい。
【0081】
滞留時間の継続期間を監視するために、本明細書で取り上げた滞留時間記録装置23などの記録機構を使用して、溶融金属、スラグ、またはそれらの組み合わせが加熱中に耐火物ライニングと接触している間の累積接触持続時間を測定してもよい。
【0082】
さらに、予熱の持続時間を監視するために、本明細書で取り上げた予熱記録装置24などの記録機構を使用して、加熱前に空の冶金容器に対して行われた予熱の持続時間を記録することができる。具体的には、予熱の持続時間は、予熱記録装置24によって、わずか数分から数日にも及ぶものまで測定することができる。予熱記録装置24は、ガスの自動遮断装置とともに、ガス式予熱装置に組み込むことができる。
【0083】
さらに、ガス攪拌制御装置26などの制御機構を使用して、種々の攪拌パラメータを測定してもよい。攪拌パラメータは、フル冶金容器内の溶鋼の攪拌によって加えられる攪拌圧の大きさ、フル冶金容器内の溶鋼の攪拌中にそのフル冶金容器内の溶鋼に加えられる不活性ガスの流量、および溶鋼が攪拌される間の攪拌持続時間を含むが、これらに限定されない。
【0084】
レーザースキャナ20による作業用耐火物ライニング34のレーザースキャンに先立って、方位レーザー19を使用して、空取鍋容器16をスキャンし、空取鍋容器16の物理的な向きを特定することができる。空取鍋容器16の物理的な向きは、空取鍋容器16が使用されているプロセス又は施設に対する空取鍋容器16の位置に関係する。方位レーザー19が冶金容器の識別された物理的な向きをコンピューティング複合体10に提供し、プロセッサ12が参照し、作業用耐火物ライニング34の将来の状態の予測に従って熱衝撃を正確に判断するために空取鍋容器16の正しい位置を決定する。
【0085】
図2に示すように、方位レーザー19は、空取鍋容器16の真下に配置されているが、本明細書に開示される実施形態はそれに限定されるものではない。例えば、方位レーザー19は、空取鍋容器16の外壁を直接視認できる任意の安全かつ妨げられない場所に配置することができる。このため、方位レーザー19は、空取鍋容器16の底部と下部をスキャンするように配置されるかもしれない。また、方位レーザー19による物理的な向きの特定については、レーザースキャナ20によって提供される空取鍋容器16に関するデータを通じて補い得ることに留意されたい。
【0086】
ここで図2及び図3を参照すると、冶金容器の外壁の内面に内張りされ、溶融金属又は溶鋼にさらされている間に熱にさらされる作業用耐火物ライニング34の将来の状態を予測する方法100が記載されている。
【0087】
方法100の記載の目的のために、「冶金容器」は、溶融金属または溶鋼にさらされる取鍋容器を指すことがある。方法100における取鍋容器は、取鍋容器が空であるか、または満杯であるかが問題とならない状況において、通常、空取鍋容器16およびフル取鍋容器18を指す。加えて、一実施例では、空取鍋容器16は、溶鋼が炉から出鋼されるとき、その炉から溶鋼を受け取る。このように、空取鍋容器16は、溶鋼が炉から空取鍋容器16に出鋼されると、フル取鍋容器18となる。
【0088】
さらに、方法100は、冶金容器が輸送されるプロセスに限定されない。一方で、方法100における加熱中に、取鍋容器16および18は、クレーン、コンベヤ、レール、およびベアリングなどの、当業者に知られている輸送手段を通じて加工場所または工場全体に輸送されると仮定されるが、これらに限定されることはない。さらに、プロセッサ12および他の任意の制御ユニットを含むコンピューティング複合体10は、例えば、スキャン、測定、運搬、金属の移送、観察、収集、判定、予測、および参照のような全てのプロセスを制御することが可能である。
【0089】
図2は、取鍋容器16、18の搬送を示す概略図である。空取鍋容器16とフル取鍋容器18は、別々に図示されている。例えば、空取鍋容器16は、作業用耐火物ライニング34の任意のスキャンの前に、空取鍋容器16の物理的な向きを特定するために初期の段階でスキャンされてもよい。このような初期のスキャンは、上述した方位レーザー19によって実行されてもよい。空取鍋容器16の物理的な向きは、取鍋容器16または18に関してプロセッサ12がさらに参照、判定、および予測する間、プロセッサ12によって参照されてもよい。
【0090】
さらに、物理的な向きをスキャンした後、作業用耐火物ライニング34のスキャンの前であって、空取鍋容器16が加熱の準備のために予熱されている間に、空取鍋容器16が加熱前の予熱に供している間の予熱温度および予熱持続時間が記録されてもよい。予熱温度は予熱器熱電対2によって測定され、予熱持続時間は予熱記録装置24によって記録されてもよい。予熱温度及び予熱持続時間は、溶融金属又は溶鋼の取り扱い後に、製鋼に関する操作パラメータが作業用耐火物ライニング34の構造状態に及ぼす操作上の影響を検討する際に、測定パラメータとしてプロセッサ12で使用されてもよい。
【0091】
操作パラメータのさらなる測定を、加熱中に行ってもよい。このような測定の例として、以下に限定されるものではないが、取鍋熱電対25によるフル取鍋容器18内の溶融金属又は溶鋼の温度の測定、スラグ化学組成測定装置3によるフル取鍋容器18内のスラグの化学組成の測定、滞留時間記録装置23による、加熱中に溶鋼、スラグ、またはそれらの組み合わせが作業用耐火物ライニング34と接している間の累積接触持続時間の測定、およびガス攪拌制御装置26による種々の攪拌パラメータの測定が挙げられ、以下に詳細に説明する。上述したような所定の操作パラメータは、都合のよいときにコンピューティング複合体10に提供されてもよい。しかしながら先に述べたように、また以下でさらに説明するように、コンピューティング複合体10に提供された任意の所定の操作パラメータは、作業用耐火物ライニング34の熱衝撃を判定する際、プロセッサ12で参照される。
【0092】
任意の追加準備工程が完了した後、加熱前に、空取鍋容器16の作業用耐火物ライニング34のレーザースキャンが実施される(S101)。加熱前のレーザースキャンは、レーザースキャナ20によって実施してもよい。また、加熱前のレーザースキャンの実施において、作業用耐火物ライニング34の加熱前の構造状態に関するデータを収集してもよい。
【0093】
次に、加熱が行われ、その間に空取鍋容器16が溶融金属または溶鋼で満たされ、それによりフル取鍋容器18となる。このことは、図2のフローによると、プロセスのある部分での空取鍋容器16、その後のプロセスにおける部分でのフル取鍋容器18により図示されている。加熱中、フル取鍋容器18は、図2のフローに示されるように、空にされ、空取鍋容器16となる。
【0094】
加熱終了後、空取鍋容器16の作業用耐火物ライニング34にレーザースキャンを再度実施する(S102)。加熱前のレーザースキャンの実施と同様に、加熱後のレーザースキャンも、レーザースキャナ20によって実施してもよい。さらに、加熱後のレーザースキャンの実施において、作業用耐火物ライニング34の加熱後の構造状態に関するデータを収集してもよい。
【0095】
加熱前のレーザースキャンおよび加熱後のレーザースキャンの後、プロセッサ12は、作業用耐火物ライニング34の熱暴露衝撃を判定する(S103)。プロセッサ12は、収集された加熱前の構造状態データと収集された加熱後の構造状態データとを比較することによって、熱衝撃を判定してもよい。熱暴露衝撃を判定した後、プロセッサ12は、熱暴露衝撃の判定に基づいて、後続の1回以上の加熱後の作業用耐火物ライニング34の将来の状態を予測する(S104)。
【0096】
この予測により、取鍋容器が作業用耐火物ライニング34を用いて再び使用できるか、あるいは作業用耐火物ライニング34を交換する必要があるかを決定するために極めて重要な情報がもたらされる。これにより、取鍋容器に過大な構造的損傷をもたらす事故を回避することができる。その結果、ダウンタイムの減少、効率の向上、およびコスト削減を実現することができる。
【0097】
一例として、加熱中に、フル取鍋容器18の外壁の外面に1回以上、赤外線カメラ22で赤外線スキャンしてもよい。このスキャンにより、赤外線カメラ22は、加熱中に検出された外面の温度に関連するデータを収集することができる。この温度データは、収集された構造状態データと相関して、より正確に熱衝撃を判定し、将来の状態を予測することができる。
【0098】
別の例では、熱衝撃を判定する際、収集された構造状態データと相関し、及び、任意に、この特定の例では、赤外線スキャンからの収集された温度データと相関して、測定された又は所定の操作パラメータの1つ以上が加熱中に作業用耐火物ライニング34に及ぼす操作上の影響を、検討してもよい。
【0099】
所定の操作パラメータは、本明細書で先に説明した所定の操作パラメータを含み、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。過去に溶融金属を取り扱った1つ以上の耐火物ライニングに適用された1つ以上の耐火物に関する履歴データ;作業用耐火物ライニング34の初期の化学組成;作業用耐火物ライニング34の初期設計;加熱中に製造されるように求められる鋼種;加熱中にフル取鍋容器18に添加されるチャージングミックスの成分の物理的および化学的属性と量;加熱中にフル取鍋容器18に添加される合金の物理的および化学的属性と量;加熱中にフル取鍋容器18に添加されるスラグ形成剤の物理的および化学的属性と量;加熱中にフル取鍋容器18に添加されるフラックス添加剤の物理的および化学的属性と量;並びに内部に作業用耐火物ライニング34が内張りされていた期間の取鍋容器16及び18の履歴。
【0100】
測定された操作パラメータは、本明細書で先に説明した測定操作パラメータを含み、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。予熱器熱電対2によって測定された空取鍋容器16が加熱前に予熱されている間の予熱温度;予熱記録装置24によって測定された空取鍋容器16が加熱前に予熱されている間の予熱持続時間;取鍋熱電対25によるフル取鍋容器18内の溶融金属または溶鋼の温度測定値;滞留時間記録装置23による、加熱中に溶鋼、スラグ、またはそれらの組み合わせが作業用耐火物ライニング34と接している間の累積接触持続時間の測定値;並びにガス攪拌制御装置26による、加熱中にフル取鍋容器18内の溶融金属の攪拌によって加えられる攪拌圧の大きさ、攪拌中にフル取鍋容器18内の溶融金属に加えられる不活性ガスの流量、および溶融金属を攪拌する攪拌持続時間など(ただしこれらに限らない)の種々の攪拌パラメータの測定値。
【0101】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明した。この実施形態は、例示のみを目的として記載されており、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の変更及び修正が当業者によって実施され得ることを理解されたい。そのようなすべての修正および改変は、それらが請求された本発明またはその均等物の範囲内に入る限りにおいて本発明に含まれることが意図される。

図1
図2
図3