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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】溶接ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/06 20060101AFI20231109BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61F9/06 370Z
H04N5/64 511A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022546062
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021052063
(87)【国際公開番号】W WO2021152063
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】20154862.5
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ベツルカ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フリードル,ヘルムート
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03326592(EP,A1)
【文献】特表2003-531655(JP,A)
【文献】特開2006-239392(JP,A)
【文献】国際公開第2003/059837(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03192481(EP,A1)
【文献】国際公開第2007/140642(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/081819(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0017152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/06
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヘルメットシェル(2)、固定要素(3)、グレアシールド装置(4)、およびそこから間隔を置いた少なくとも1つの保護スクリーン(5)、ならびに溶接作業者の視野にデータを提示するための少なくとも1つの表示装置(6)を有する溶接ヘルメット(1)であって、少なくとも1つの表示装置(6)は、グレアシールド装置(4)と保護スクリーン(5)との間の中間スペース(8)において、視野の縁領域に配置されており、グレアシールド装置(4)は、少なくとも1つの表示装置(6)に対応する領域において、少なくとも1つの孔部(12)を有し、表示装置(6)への視野が、グレアシールド装置(4)によって制限されないことを特徴とする溶接ヘルメット(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの表示装置(6)は、中間スペース(8)に位置調整が可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの表示装置(6)は、少なくとも1つの駆動手段(9)により位置調整が可能であることを特徴とする請求項2に記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項4】
グレアシールド装置(4)と少なくとも1つの表示装置(6)との間にシール(10)が配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項5】
シール(10)は、弾性材料で作られていることを特徴とする請求項4に記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの表示装置(6)は、利用可能な制御ユニット(13)に接続されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの表示装置(6)は、保護スクリーン(5)に接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの表示装置(6)は、ディスプレイ(14)と少なくとも1つの光学装置(15)を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの補正光学系(16)は、少なくとも1つの表示装置(6)とグレアシールド装置(4)との間に配置されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの表示装置(6)は、少なくとも1つのセンサ(17)に接続されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項11】
少なくとも1つのセンサ(17)は、保護スクリーン(5)に面する、表示装置(6)の側に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項12】
少なくとも1つのセンサ(17)は、カメラ(18)、マイクロフォン(19)、光センサ(20)、タッチセンサ(21)、および/または温度センサ(7)により形成されていることを特徴とする請求項11に記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項13】
ノーズ開口部(22)が設けられており、少なくとも1つの表示装置(6)はノーズ開口部(22)の隣に配置されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項14】
グレアシールド装置(4)は、自動暗色化フィルタカートリッジ(23)により形成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【請求項15】
少なくとも1つの表示装置(6)がトランシーバ(24)に接続されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか1つに記載の溶接ヘルメット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのヘルメットシェルと、固定要素と、グレアシールド装置と、そこから間隔を置いた少なくとも1つの保護スクリーンと、溶接作業者の視界にデータを提示するための少なくとも1つの表示装置とを有する溶接ヘルメットに関し、少なくとも1つの表示装置はグレアシールド装置と保護スクリーンとの間の中間スペースの視野の縁領域に配置される。
【背景技術】
【0002】
長い間、溶接中に発生するアークの明るい光から溶接作業者の目を保護することが慣習となっている。従来のバイザーは、グレアシールド装置を備えた溶接ヘルメットに置き換えられつつあり、目の保護機能に加えて、溶接作業者の頭部の機械的保護機能、および溶接中に発生し得る有毒ガスの吸引に対する保護機能も提供する。グレアシールド装置は、例えば、溶接作業者の両目を保護する装置の形や、溶接作業者の両目それぞれに1つずつ、2つの別々の装置の形のような、様々なデザインを持つことができる。従来は単純な暗色化フィルムが使用されていたが、今日では、いわゆる自動暗色化フィルタカートリッジの形態の自動暗色化装置が使用されている。
【0003】
グレアシールド装置を暗くすることに加えて、例えばアークの点火後または適切な遠隔操作によって、溶接ヘルメットを装着している溶接作業者の視界に様々なデータなどを表示することがますます一般的になっている。これは、溶接プロセスを実施するとき、溶接作業者は、溶接ユニットのディスプレイからデータ(例えば、溶接パラメータ)などを読み取るために、溶接現場から目をそらす必要がないことを意味する。保護スクリーンという用語は、通常、グレアシールド装置の前面に配置される取り付けパネルを指す。しかし、溶接ヘルメットのいくつかの設計では、グレアシールド装置は、バイザーの要領で取り外すか、または跳ね上げることもでき、溶接ヘルメット内のその背後に配置された保護スクリーンが溶接作業者の目を保護する。保護スクリーンは、光学ガラスとして設計することも可能である。
【0004】
少なくとも1つの表示装置が、溶接ヘルメットのグレアシールド装置と保護スクリーンの間の利用可能な中間スペースに特に簡単な方法で配置されているため、表示装置を埃、汗、煙、その他の汚染物質、および機械的ストレスやその他の環境影響から最適に保護することができる。中間スペースにおける少なくとも1つの表示装置の保護された配置により、溶接ヘルメットは、表示装置のメンテナンスを必要とせずに、特に長期間にわたって使用することができる。
【0005】
例えば、EP 3 326 592 A1、EP 3 192 481 A1、およびWO 2007/140642 A1には、グレアシールド装置、ならびに溶接パラメータを表示するための「ヘッドアップディスプレイ」または本発明に関連するタイプの類似物を備えた溶接ヘルメットまたは溶接マスクが記載されている。
【0006】
EP 2 488 135 B1には、統合されたユーザインターフェースを有する溶接ヘルメットが記載されており、データ等の提示は、溶接プロセス自体と同じ焦点面内に表示される。これは、溶接作業者が、所望のデータ等を読み取ることができるようにするために、溶接プロセスから目をそらす必要がないことを意味する。
【0007】
最後に、US 2016/0163221 A1は、データ眼鏡が下方に配置された溶接ヘルメットを記載しており、その上に溶接パラメータを溶接作業者の視野内に表示することができるので、溶接作業者は溶接現場から視線をそらさずにデータを読み取ることができる。
【0008】
多くの場合、表示されたデータが溶接作業者の視野を大きく制限し、溶接シームの遮られない視界を妨げるという事実とは別に、既知の溶接ヘルメットの表示装置は、しばしば保護されていないか、保護が不十分であるため、埃、溶接ガス、その他の汚染物質、および機械応力に曝されることになる。さらなる欠点は、溶接ヘルメットまたはデータメガネにおける従来のディスプレイは、溶接作業者の視覚的欠陥を一切考慮していないことである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、データを提示するための少なくとも1つの表示装置を備えた上述の溶接ヘルメットの作製にあり、この表示装置は、溶接中に発生する通常の環境影響から保護されているので、可能な限り長い耐用年数が保証される。溶接作業者の視野は、溶接シームの最も鮮明な視界を確保するために、提示されるデータによってできるだけ制限されないことが望ましい。また、溶接ヘルメットは、幅広い用途を確保するために、できるだけシンプルで費用対効果の高い設計にする必要がある。公知の溶接ヘルメットの欠点は、回避されるか、または少なくとも低減されるであろう。
【0010】
本発明による目的は、少なくとも1つの表示装置の領域におけるグレアシールド装置が、少なくとも1つの開口部を有するという事実によって達成される。本発明によれば、表示装置の領域にはグレアシールド装置が配置されないので、表示装置への視界がグレアシールド装置によって制限されることはない。表示装置が配置される位置では、複雑で高価になり得るグレアシールド装置を省くことができる。あるいはまた、グレアシールド装置は、表示装置のうち溶接作業者程中に暗色化が行われない箇所に配置されてもよく、表示装置の視界が損なわれないようにすることができる。溶接作業者の側にめまい感(「乗り物酔い」)が生じないように、例えば、データは必要なときまたは要求されたときのみ表示され、常時表示されないようにする。溶接ヘルメット内に、溶接作業者の視野の右側と左側に2つの表示装置を配置すれば、溶接作業者の左目と右目に対して異なるデータを表示したり、同じ情報を表示することによって立体感を出したりすることができる。少なくとも1つの表示装置が溶接ヘルメット内で溶接作業者の視野の縁領域に配置されていることは、作業領域の視界がごくわずかな範囲に制限されることを意味し、溶接作業者は溶接から視線をそらすことなく、適切な目の動きにより表示装置に表示されたデータを素早く読み取ることができる。現代の技術は、少なくとも1つの表示装置の小型化された実装を可能にし、これにより、グレアシールド装置と保護スクリーンの間に小さな中間ギャップがあっても配置が可能になる。さらに、そのような表示装置は非常に低コストで入手可能であり、そのため、溶接ヘルメットに少なくとも1つのそのような装置を後付けすることも可能である。また、溶接ヘルメットを異なる表示装置に迅速かつ容易に変換することが可能である。溶接作業中に溶接作業に関するデータを表示することにより、溶接作業者は作業領域から目をそらす必要がなく、最適な溶接品質を達成することができる。
【0011】
少なくとも1つの表示装置が中間スペースに調節可能に配置される場合、溶接作業者の目または目に対する表示装置の位置を迅速かつ容易に調節することができる。表示装置の調整可能性は、調整ネジなどの様々な機械的構造によって実現できるが、ステッピングモータなどの電気的構造によっても実現できる。溶接ヘルメット内に2つの表示装置が配置されている場合、調整可能性により、溶接作業者の目の相対的な位置に装置を調整することも可能である。
【0012】
少なくとも1つの表示装置が、少なくとも1つの駆動装置を介して調節可能であると特に有利である。少なくとも1つのそのような好ましくは電気駆動装置により、少なくとも1つの表示装置の調節は、溶接ヘルメットを着用しながら、溶接作業者が最適な結果を得るまで行うこともできる。少なくとも1つの駆動装置の調整は、適切なアプリまたはソフトウェアプログラムを介して、スマートフォン、ノートブックなどのツールを用いて、特に便利な方法で実行することもできる。必要なときに検索され、溶接ヘルメットを着用する特定の溶接作業者に適合させることができるように、好ましくは、設定は記憶される。
【0013】
好ましくは弾性材料で作られたシールが、グレアシールド装置と少なくとも1つの表示装置との間に配置されてもよい。好ましくは弾性体であるそのようなシールは、少なくとも1つの表示装置を振動からよりよく保護し、また、表示装置の内部に汚れが入るのを防ぐ。好ましくはグレアシールド装置に恒久的に接続されていないこのようなシールは、保護スクリーンを取り外した後に、表示装置を単に交換し、シールを表示装置とグレアシールド装置との間に配置するだけなので、表示装置の交換も容易にすることができる。シールは、表示装置のハウジングに堅く接続することもでき、これは、グレアシールド装置と保護スクリーンとの間の中間スペースに配置されたとき、表示装置がグレアシールド装置に対して自動的に密閉されることを意味する。
【0014】
有利には、少なくとも1つの表示装置は、既存の制御装置に接続されている。溶接ヘルメットの表示装置と制御装置との間の接続は、ケーブルによって、好ましくは適切なプラグ接続を介して、またはワイヤレスでも行うことが可能である。データおよび各コンポーネントへの供給電圧の両方が、接続を介して伝送される。これにより、溶接ヘルメットに少なくとも1つの表示装置を後付けすること、または簡単な方法で表示装置を交換することが可能になる。制御装置は、溶接ヘルメット自体に内蔵または配置されるか、あるいはそれとは別に配置されるユニットに内蔵されるかのいずれでも可能です。表示装置は、溶接ヘルメットの制御装置を介して最適に制御することができ、したがって、どのデータが表示装置上に表示され、必要に応じて溶接作業者が利用できるようにするかを規定するために使用することができる。制御装置は、通常、マイクロプロセッサによって形成され、このマイクロプロセッサは、グレアシールド装置および溶接ヘルメットの少なくとも1つの表示装置の対応する制御を実行するように適宜プログラムされる。
【0015】
少なくとも1つの表示装置が保護スクリーンに接続されている場合、表示装置は、保護スクリーンを取り外し、その後再装着することによって、容易かつ迅速に交換することができる。表示装置と保護スクリーンとの間の接続は、例えば、接着、ねじ等によって行うことができる。
【0016】
少なくとも1つの表示装置は、好ましくは、ディスプレイ、特にカラーディスプレイと、少なくとも1つの光学装置とを含む。このような表示装置は、小型で、特に低価格で入手可能である。表示装置は、通常、対応するケーブル接続を介して、対応する制御装置および必要な電源に接続される。理想的には、電源は、小型バッテリーまたはアキュムレータの形態で表示装置に含まれることもでき、制御装置への接続は、ワイヤレスで実施することも可能である。光学装置は、レンズ、ミラー、または光ファイバー、あるいはそれらの組み合わせによって形成することができ、表示すべき画像を所望の場所に向ける。
【0017】
溶接作業者の目の視覚的欠陥および位置決め誤差を補正するために、少なくとも1つの補正光学系を少なくとも1つの表示装置とグレアシールド装置との間に配置することができる。それぞれの溶接作業者に個別に適合させるために、少なくとも1つの追加補正光学部品は容易に交換可能であることが有利である。
【0018】
少なくとも1つの表示装置が少なくとも1つのセンサに接続されている場合、追加機能を実現することができる。それぞれのセンサを溶接ヘルメット内の制御装置に接続することにより、様々な補助機能を実現することができる。
【0019】
少なくとも1つのセンサは、表示装置の、保護スクリーンに面する側に配置することができる。このようなセンサは、表示装置または溶接ヘルメット、溶接システムまたは溶接装置の他の機能を制御するために使用することができる。例えば、機械的センサは、保護スクリーンの領域で手動作動によって溶接ヘルメットまたは溶接システムの機能を切り替えるために使用することができる。適切な光学式(赤外線センサなど)、静電容量式、誘導式などのセンサを使用すれば、溶接作業者がセンサの前に手を置いて切り替えを起こすことにより、非接触で制御を行うことも可能である。しかしながら、光センサなどの他のセンサを使用して、表示装置の表示輝度を制御することもできる。
【0020】
少なくとも1つのセンサは、カメラ、マイク、光センサ、タッチセンサ、および/または温度センサによって形成することができる。カメラをセンサとして使用する場合、溶接作業者の手によるジェスチャー制御は、表示装置または溶接ヘルメットもしくは溶接システムの他の機能に変更を加えるために使用することができる。例えば、少なくとも1つのマイクを使用して、周囲の騒音や溶接中にアークから発生する音を記録したり、特定の機能を制御したりすることができる。また、例えば、音声によって溶接ヘルメットや溶接システムの表示装置や他の機能を制御することも考えられる。また、モーションセンサや位置センサ、ジャイロセンサなどを用いて、溶接ヘルメットの位置や向きに応じた制御を行うことも可能である。
【0021】
溶接ヘルメットにノーズ開口部を設け、少なくとも1つの表示装置をノーズ開口部の隣に配置すると、作業領域の視界を制限することなく、少なくとも1つの表示装置を最適かつ省スペースで配置することが可能になる。溶接ヘルメットの設計によっては、ノーズ開口部の上方に少なくとも1つの表示装置を配置することも適切である。
【0022】
本発明の他の特徴によれば、グレアシールド装置は、自動暗色化フィルタカートリッジによって形成されている。このような自動暗色化するフィルタカートリッジは、通常、液晶ディスプレイによって形成され、異なった暗色化の度合いの間で、特に迅速に切り替えることができる。これは、例えば、短絡を利用した溶接プロセスにおいて、アークが燃焼していない短絡時にディスプレイを明るくすることができ、それによって、溶接シームの視界が改善されることを意味する。自動暗色化フィルタカートリッジの位置で、より保護が必要な場合、自動暗色化フィルタカートリッジは、局所的により高いレベルまたは特定のポイントに設定することもできる。
【0023】
少なくとも1つの表示装置がトランシーバに接続されている場合、データは制御パネルまたは適切な制御装置に送信することができる。制御装置は、溶接ヘルメットの上または内部に配置してもよいし、そこから遠隔に配置してもよい。トランシーバは、有線および無線の両方によって動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、以下に示す添付図面を参照することにより、さらに詳細に説明される。
【0025】
図1】少なくとも1つのヘルメットシェル、固定要素、グレアシールド装置、少なくとも1つの保護スクリーン、および溶接作業者の視野内にデータを表示するための少なくとも1つの表示装置を備えた標準溶接ヘルメットの側面部分切断図である。
図2】グレアシールド装置と保護スクリーンとの間の中間スペースに配置された表示装置を備えた溶接ヘルメットの側面部分切断図である。
図3】グレアシールド装置と保護スクリーンとの間の中間スペースの視野の下縁に配置された表示装置を備えた本発明にかかる溶接ヘルメットの実施形態の側面部分切断図である。
図4】グレアシールド装置と保護スクリーンとの間の中間スペースの視界の上縁に配置された表示装置を備えた溶接ヘルメットの代替実施形態である。
図5】グレアシールド装置と保護スクリーンとの間の中間スペースに配置された表示装置を備えた溶接ヘルメットの更なる代替実施形態である。
図6】調整可能に取り付けられた表示装置の様々な実施形態の詳細図である。
図7】補正光学系を備えた表示装置の他の実施形態の詳細図である。
図8】溶接ヘルメットのノーズ開口部の隣に配置された2つの表示装置の模式図である。
図9】溶接作業者のジェスチャーを検出するためのカメラを備えた表示装置の詳細な断面図である。
図10】制御装置および各種センサに接続された溶接ヘルメットの表示装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、少なくとも1つのヘルメットシェル2、ベルトまたはストラップなどの適切な固定要素3、グレアシールド装置4、少なくとも1つの保護スクリーン5、および溶接作業者の視野内にデータを提示するための少なくとも1つの表示装置6を備えた標準溶接ヘルメット1の、側面部分切断図を示す。図では、アタッチメントパネルの形態の保護スクリーン5がグレアシールド装置4の前面に配置されている。グレアシールド装置4がアタッチメントパネルの形態の保護スクリーン5と共にバイザーの要領で跳ね上げることができ、バイザーが跳ね上げられたときに溶接作業者の目を保護するためのさらなる保護スクリーン5がその背後に配置されている溶接ヘルメット1も知られている(図示せず)。表示装置6に表示されるデータは、通常、電流強度、ワイヤフィード、電圧、溶接ジョブなどの溶接パラメータであるが、エラーメッセージ、ポジティブフィードバックメッセージ(例えば、溶接シームOK)、および溶接作業者が関心を持つ警告も含まれる。標準的な溶接ヘルメット1の場合、少なくとも1つの表示装置6は、溶接ヘルメット1を装着した溶接作業者の視野内に位置し、例えば、対応する「ヘッドアップディスプレイ」によって形成される。溶接作業者の目Aの視野角もαで示される。関連データが溶接作業者の視野内に表示されるので、溶接作業者は溶接作業者程中に溶接シームまたは作業領域から視線をそらす必要がない。一方、このような表示装置6は比較的高価で複雑であり、状況によっては、関連データの表示が溶接点または溶接シームの視界を制限することがある。グレアシールド装置4は、好ましくは、自動暗色化フィルタカートリッジ23によって形成される。溶接作業者がめまいに悩まされるのを防ぐために、少なくとも1つの表示装置6は、必要なときまたは要求されたときにのみ作動し、恒久的には作動しないことが有利である。このことはまた、作業領域の視界が不必要に損なわれないことを意味する。
【0027】
図2は、溶接作業者の視野の下縁で、グレアシールド装置4と保護スクリーン5との間の中間スペース8に配置された表示装置6を備えた溶接ヘルメット1の側面部分切断図である。少なくとも1つの表示装置6がグレアシールド装置4と保護スクリーン5との間の中間スペース8に配置されているため、表示装置6は汚れや埃などから保護され、メンテナンスなしに長期にわたって使用できる。さらに、少なくとも1つの表示装置6は、機械的ストレスに対して最適に保護される。溶接作業者の視野の縁に少なくとも1つの表示装置6を配置することで、溶接作業者の視野角αはできるだけ乱されず、それにもかかわらず、表示装置6から関連データを容易に読み取ることができる。表示装置6とグレアシールド装置4との間には、好ましくは、シール10が配置される。このシール10は、好ましくは、弾性材料、特にプラスチック材料で作られている。このシール10は、機械的衝撃に対する表示装置6の保護をより良くし、さらに表示装置6のあらゆる汚染を防止する。表示装置6は、適切なケーブルおよびプラグ接続を介して溶接ヘルメット1の制御装置に接続される(図10参照)。表示装置6は、保護スクリーン5をできるだけ簡単かつ迅速に交換できるようにするために、保護スクリーン5に接続することができる。表示装置6は、少なくともディスプレイ14と対応する光学装置15とからなり、ディスプレイ14は、好ましくはカラーディスプレイによって形成される。光学装置15は、レンズ、ミラー、または光ファイバーまたはそれらの組み合わせによって形成することができる。
【0028】
図3は、視野の下縁でグレアシールド装置4と保護スクリーン5との間の中間スペース8に配置された表示装置6を備えた溶接ヘルメット1の、本発明にかかる実施形態の側面部分切断図を示し、この場合、表示装置6の領域におけるグレアシールド装置4は除去されており、または対応する開口部12もしくは孔部を有している。これにより、そうでなければ暗くなるグレアシールド装置4であっても、溶接作業者にとって表示装置6の遮られない視界が確保され、あるいは代替的に、高価になり得るグレア保護装置4を表示装置6の領域で省略し、コストを節約することも可能である。
【0029】
図4は、視野の上縁でグレアシールド装置4と保護スクリーン5との間の中間スペース8に配置された表示装置6を備えた溶接ヘルメット1の、代替の実施形態を示す。用途によっては、少なくとも1つの表示装置6が溶接作業者の視野角αの上縁に配置されていると有利な場合がある。しかしながら、ノーズ開口部22を有する溶接ヘルメット1の場合、ノーズ開口部22の隣の領域は、1つまたは2つの表示装置6を配置するのに特に適している(図8参照)。2つの表示装置6を配置することにより、溶接作業者の左右の目Aに対して異なるデータを表示したり、両目に対して同じグラフィック情報を配置することにより立体的な効果を得たりすることができる。
【0030】
図5は、グレアシールド装置4と保護スクリーン5との間の中間スペース8に表示装置6を配置した溶接ヘルメット1の、更なる代替の実施形態を示す。表示装置6は、ディスプレイ14と、中間スペース内で上方に向けられた光ファイバーの形態の光学装置15とを有する。光ファイバー15は、ヘッドアップディスプレイの要領でディスプレイ14の画像を転送する。
【0031】
図6は、調整可能に取り付けられた表示装置6の様々な実施形態の詳細図である。少なくとも1つの表示装置6を溶接作業者の眼型の位置に適合させるために、少なくとも1つの表示装置6の調節可能な配置のための適切な手段が提供されるのが好ましい。これらの調整手段は、単純な機械的構造またはより複雑な電気機械的構造によって形成することができる。例えば、少なくとも1つの表示装置6の横方向または縦方向の変位は、対応する調整ネジ(図示せず)により実現することができる。しかし、適切な駆動装置9も、少なくとも1つの表示装置6の傾きまたは変位を達成するために使用することができる。少なくとも1つの表示装置6を横方向に変位させることによって、溶接作業者の目の間の距離に最適に調整することができ、表示装置6の最適な視界を確保することができる。図示のように、各目に対して別々の表示装置6を設けてもよい。
【0032】
図7は、表示装置6の別の実施形態の詳細図である。この場合、溶接作業者の眼Aの視覚的欠陥または視覚障害を補正できるように、ディスプレイ14および光学装置15からなる表示装置6の前面に、少なくとも1つの追加補正光学系16が配置される。補正光学系16は、表示装置6に内蔵したり、直接前面に配置することもできるが、溶接作業者への個別適合を確保するために、できるだけ簡単かつ迅速に交換可能であることが望ましい。
【0033】
図8は、溶接ヘルメット1のノーズ開口部22の隣に配置された2つの表示装置6の概略図である。このような配置により、表示装置6からのデータの最適な読み取りが依然として確保される一方で、溶接作業者の視野は表示装置6によって最小限に妨げられるだけになる。さらに、このようなノーズ開口部22を有する溶接ヘルメット1は、表示装置6を特に簡単かつコスト効率よく後付けすることができる。
【0034】
図9は、グレアシールド装置4と保護スクリーン5との間の中間スペース8に配置され、溶接作業者が行うジェスチャーを検出するためのセンサ17としてカメラ18を有する表示装置6の詳細な断面を示す。表示装置6の保護スクリーン5に面する側のセンサ17を用いると、センサ17を介して表示装置6や溶接装置または溶接システムの他の機能を制御することができる。カメラ18を使用する場合、例えば、溶接作業者の手で行われるジェスチャーを使用して、特定の機能をトリガーしたり、表示装置6を作動させたり、切り替えたりすることが可能である。このようなセンサ17またはカメラ18は、特に小型に設計することができ、また、費用対効果も高い。カメラ18はまた、溶接シームを画像化し、後の文書化目的または品質保証目的に使用することを可能にする。
【0035】
最後に、図10は、制御装置13および各種センサ17に接続された溶接ヘルメット1のための表示装置6を概略的に示す図である。少なくとも1つの表示装置6は、適切なケーブルを介して、またはまたワイヤレスで、制御装置13に接続され、この制御装置は、いずれの場合でも溶接ヘルメット1内に配置されることが好ましい。通常マイクロコントローラなどによって形成される制御装置13の適切なプログラミングによって、少なくとも1つの表示装置6における、対応するデータの表示を制御することができる。表示装置6または制御装置13を対応するセンサ17に接続することにより、様々な追加機能を実現できる。センサ17は、カメラ18、マイクロフォン19、光センサ20、あるいはまた、温度センサ7によって形成することができる。少なくとも1つの表示装置6、並びに制御装置13および存在する任意のセンサ17のための電力供給は、好ましくは溶接ヘルメット1内に配置されたエネルギー供給装置11によって行われる。溶接ヘルメット1に一般的に配置されているファンのアキュムレータも、エネルギー供給のために使用することができる(図示せず)。表示装置6または制御装置13がトランシーバ24に接続されている場合、データまたは情報を、溶接ユニットなどの上位のユニットに送信し、そこから受信することが可能である。トランシーバ24は、有線または無線で動作するように設計することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10