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特許7382527シール材用の樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたシール材、並びに、前記シール材を用いた固体高分子型燃料電池及び水電解装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】シール材用の樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたシール材、並びに、前記シール材を用いた固体高分子型燃料電池及び水電解装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0284 20160101AFI20231109BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20231109BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20231109BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231109BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231109BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20231109BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20231109BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231109BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01M8/0284
H01M8/0271
H01M8/10 101
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/60
C08L33/14
C08L63/00 A
C09K3/10 E
C09K3/10 L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023096213
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2023-06-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591145335
【氏名又は名称】パナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 翔太
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002029(JP,A)
【文献】特開2023-017551(JP,A)
【文献】特開平08-245858(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109212(WO,A1)
【文献】特開2019-091535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
C25B 1/04
C25B 9/00
F16J 15/00
C08L 33/00
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材用の樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、(A)アクリル系樹脂、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含み、
前記(A)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が5℃以上35℃以下であり、
前記(A)アクリル系樹脂は、(a1)メチルメタクリレート、(a2)スチレン、及び(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーの共重合体であり、
前記原料モノマーの全量に対する前記(a3)グリシジル(メタ)アクリレートの割合が3.0質量%未満であり、
前記(B)エポキシ樹脂と前記(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量が、前記(A)アクリル系樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる何れか1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量が150g/eq以上1500g/eq以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)エポキシ樹脂硬化剤がポリアミン系硬化剤である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂組成物から形成されてなる、シール材。
【請求項6】
第1の基材と、シール材層と、第2の基材とをこの順に有するシール材であって、前記シール材層が、請求項1に記載の樹脂組成物から形成されてなるシール材層であり、前記第1の基材及び前記第2の基材の少なくとも一方が剥離可能である、シール材。
【請求項7】
固体高分子型燃料電池用のシール材である、請求項5又は6に記載のシール材。
【請求項8】
水電解装置用のシール材である、請求項5又は6に記載のシール材。
【請求項9】
請求項7に記載のシール材によるシール部位を備える、固体高分子型燃料電池。
【請求項10】
前記固体高分子型燃料電池内において、前記シール材が、請求項1に記載の樹脂組成物から形成されてなるシール材層を有し、前記シール材層同士が対向して接着した領域を有する、請求項9に記載の固体高分子型燃料電池。
【請求項11】
請求項8に記載のシール材によるシール部位を備える、水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型燃料電池シール材用の樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたシール材、並びに、前記シール材を用いた固体高分子型燃料電池及び水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(以下、「燃料電池」と称する場合もある)は、水素を含有する燃料ガスと、酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させるものである。
図1に、一般的な燃料電池の構成単位であるセル10の断面図を示す。一般的な燃料電池は、セル10を数十~数百セル積層することなどにより構成される。セル10は、電解質膜11を固定することなどを目的として、シール材16を有している。
【0003】
燃料電池シール材として、例えば、特許文献1~2の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-94581号公報
【文献】特開2015-2029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境に対する負荷を軽減するため、各製品の歩留まりを高くすることが求められている。このため、燃料電池シール材は、貼り付けた後に位置を修正できる性能が求められる。本明細書において、前述した性能のことを「リワーク性」と称する場合がある。特許文献1及び2では、リワーク性について何ら検討していない。
【0006】
燃料電池シール材のリワーク性は、シール材層のタックを低くすることにより向上できると考えられる。しかし、近年、図2のように、シール材層同士が対向して接着する領域を備えたセルが用いられている。このようなセルにおいて、シール材層のタックを低くした場合、シール材層同士の接着性が不十分となる問題があった。
【0007】
本発明は、リワーク性を良好にできるとともに、シール材層同士の接着性を良好にできる、シール材用の樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたシール材、並びに、前記シール材を用いた固体高分子型燃料電池及び水電解装置を提供することを課題とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1] シール材用の樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、(A)アクリル系樹脂、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含み、
前記(A)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が5℃以上35℃以下であり、
前記(A)アクリル系樹脂は、(a1)メチルメタクリレート、(a2)スチレン、及び(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーの共重合体であり、
前記原料モノマーの全量に対する前記(a3)グリシジル(メタ)アクリレートの割合が3.0質量%未満であり、
前記(B)エポキシ樹脂と前記(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量が、前記(A)アクリル系樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である、樹脂組成物。
[2] 前記(B)エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる何れか1種以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量が150g/eq以上1500g/eq以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記(C)エポキシ樹脂硬化剤がポリアミン系硬化剤である、[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5] [1]に記載の樹脂組成物から形成されてなる、シール材。
[6] 第1の基材と、シール材層と、第2の基材とをこの順に有するシール材であって、前記シール材層が、[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物から形成されてなるシール材層であり、前記第1の基材及び前記第2の基材の少なくとも一方が剥離可能である、シール材。
[7] 固体高分子型燃料電池用のシール材である、[5]又は[6]に記載のシール材。
[8] 水電解装置用のシール材である、[5]又は[6]に記載のシール材。
[9] [7]に記載のシール材によるシール部位を備える、固体高分子型燃料電池。
[10] 前記固体高分子型燃料電池内において、前記シール材層同士が対向して接着した領域を有する、[9]に記載の固体高分子型燃料電池。
[11] [8]に記載のシール材によるシール部位を備える、水電解装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシール材用の樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いたシール材、並びに、前記シール材を用いた固体高分子型燃料電池及び水電解装置は、リワーク性を良好にできるとともに、シール材層同士の接着性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料電池を構成するセルの一例を示す断面図である。
図2】燃料電池を構成するセルの他の例であって、前記セルの一部分を示す断面図である。
図3】シール材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[シール材用の樹脂組成物]
本発明のシール材用の樹脂組成物は、
(A)アクリル系樹脂、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含み、
前記(A)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が5℃以上35℃以下であり、
前記(A)アクリル系樹脂は、(a1)メチルメタクリレート、(a2)スチレン、及び(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーの共重合体であり、
前記原料モノマーの全量に対する前記(a3)グリシジル(メタ)アクリレートの割合が3.0モル%未満であり、
前記(B)エポキシ樹脂と前記(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量が、前記(A)アクリル系樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である。
【0012】
<(A)アクリル系樹脂>
(A)アクリル系樹脂は、(a1)メチルメタクリレート、(a2)スチレン、及び(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーの共重合体である。
【0013】
(A)アクリル系樹脂は、樹脂組成物の主となる成分である。樹脂組成物の全量に対する(A)アクリル系樹脂の含有量は、77質量%以上99質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上99質量%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
(A)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が5℃以上35℃以下であることを要する。ガラス転移温度が5℃未満の場合、リワーク性を良好にすることができない。ガラス転移温度が35℃を超える場合、シール材層同士の接着性を良好にすることができない。
(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、5℃以上27℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下であることがより好ましい。
【0015】
(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、例えば、(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量により調整できる。重量平均分子量を大きくするとガラス転移温度が高くなり、重量平均分子量を小さくするとガラス転移温度が低くなる傾向がある。
また、(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、後述する(a4)エチル(メタ)クリレートにより調整することもできる。原料モノマーの全量に対する(a4)エチル(メタ)クリレートの割合を高くするとガラス転移温度が低くなり、原料モノマーの全量に対する(a4)エチル(メタ)クリレートの割合を低くするとガラス転移温度が高くなる傾向がある。
本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラム法(GPC法)により測定し、ポリスチレン換算した値である。
【0016】
《(a1)メチルメタクリレート》
(A)アクリル系樹脂の原料モノマーとして(a1)メチルメタクリレートを含むことにより、例えば、下記i)~iii)の効果が期待できる。一方、(a1)メチルメタクリレートの含有割合を高くし過ぎると、シール材層の硬度が高くなり、被着体の形状に追従しにくくなる場合がある。このため、下記i)~iii)の効果と、シール材層の硬度とのバランスを考慮して、(a1)メチルメタクリレートの含有割合を調整することが好ましい。
i)(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度を微調整することができるため、極性の異なる材料間の接着性及び接合条件を制御しやすくできる。(a1)メチルメタクリレートの含有割合が増えると、(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度が上昇する傾向がある。極性材料としては、燃料電池の電解質膜が挙げられ、非極性材料としては、燃料電池の電解質以外の部品が挙げられる。
ii)(A)アクリル系樹脂が水分及び酸により分解して重量が減少することを抑制できるため、高温高湿下でのシール材の凝集力及び接着力の低下を抑制しやすくできる。
iii)(A)アクリル系樹脂の軟化点を高くすることができるため、シール材として用いる際の取り扱い性を良好にすることができる。
【0017】
原料モノマーの全量に対する(a1)メチルメタクリレートの含有量は、10質量%以上45質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。
【0018】
《(a2)スチレン》
スチレンは、構成元素がCHからなる非極性の成分であるため、極性の異なる材料間の接着性を良好にしやすくできる。また、スチレンは、ガラス転移温度が比較的高いため、樹脂組成物の凝集力を向上することができ、このため、樹脂組成物の耐熱接着性を良好にしやすくできる。さらに、スチレンを含むことにより、シール材層のタックを低くしやすくできる。一方、(a2)スチレンの含有割合を高くし過ぎると、シール材層の硬度が高くなり、被着体の形状に追従しにくくなる場合がある。このため、前述した効果と、シール材層の硬度とのバランスを考慮して、(a2)スチレンの含有割合を調整することが好ましい。
【0019】
樹脂組成物に耐熱接着性の機能を与える一般的な手法として、樹脂にシランカップリング剤、粘着付与剤等の添加剤を配合する手法が挙げられる。しかし、添加剤を配合する手段は、シール材層から添加剤がブリードアウトする場合がある。一方、(A)アクリル系樹脂の原料モノマーとして(a2)スチレンを用いる手法では、ブリードアウトの問題が生じない点で好ましい。
【0020】
原料モノマーの全量に対する(a2)スチレンの含有量は、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、10質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
《(a3)グリシジル(メタ)アクリレート》
(A)アクリル系樹脂は、原料モノマーの全量に対して、(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを3.0モル%未満含むことを要する。(a3)グリシジル(メタ)アクリレートの含有割合が3.0モル%以上の場合、シール材層同士の接着性を良好にすることができない。一方、(A)アクリル系樹脂の原料モノマーとして、(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを含まない場合、リワーク性を良好にすることができない。
【0022】
原料モノマーの全量に対する(a3)グリシジル(メタ)アクリレートの含有量は、0.1質量%以上3.0質量%未満が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0023】
グリシジル(メタ)アクリレートは、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートの何れも好適に用いることができるが、重合汎用性の観点から、グリシジルメタクリレートを用いることがより好ましい。
【0024】
《(a4)エチル(メタ)アクリレート》
(A)アクリル系樹脂は、原料モノマーとして、さらに、(a4)エチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。(a4)エチル(メタ)アクリレートを含むことにより、(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度を35℃以下にしやすくできる。
【0025】
原料モノマーの全量に対する(a4)エチル(メタ)アクリレートの含有量は、(A)アクリル系樹脂のガラス転移温度を5℃以上35℃以下にしやすくするため、30質量%以上95質量%以下が好ましく、40質量%以上85質量%以下がより好ましく、50質量%以上75質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
エチル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート及びエチルメタクリレートの何れも好適に用いることができるが、共重合しやすく、工業的に汎用性もあり、軟化点が調製しやすいという観点から、エチルアクリレートを用いることがより好ましい。
【0027】
《その他のモノマー》
(A)アクリル系樹脂の原料モノマーは、さらに、その他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
(A)アクリル系樹脂は、原料モノマーを共重合した共重合体である。
共重合の方法としては、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これら共重合の方法の中では、分子量分布が狭く残留モノマーの少ないポリマーが得られる点、高分子量ポリマーが得られる点、乳化剤が不要であるため不純物が少ない点、耐水性及び耐熱性に優れる共重合樹脂が得やすい点から、懸濁重合が好適である。
重合条件は、例えば懸濁重合の場合、50~80℃で、2~24時間行うことが好ましい。
共重合体の形態は、交互、ランダム、ブロック、グラフト等の何れの形態であっても良い。
【0029】
水系懸濁重合においては、一種以上の懸濁安定剤を使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸塩、ポリアクリルアミド、部分ケン化ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等の水溶性高分子、リン酸カルシウム類、炭酸カルシウム等の無機塩粉体等が挙げられる。
【0030】
重合開始剤としては、分解後の重合開始ラジカル種が油溶性であることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤や過酸化物系ラジカル重合開始剤が典型的なものとして挙げられる。
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスプロパン、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスプロパン、1,1’-アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミノプロパン)硝酸塩、2,2’-アゾビスイソブタン、2,2’-アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオン酸メチル、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスブタン、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、2-(4-メチルフェニルアゾ)-2-メチルマロノジニトリル4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸、3,5-ジヒドロキシメチルフェニルアゾ-2-アリルマロノジニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸ジメチル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’-アゾビス-2-プロピルブチロニトリル、1,1’-アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’-アゾビス-2-プロピルブチロニトリル、1,1’-アゾビス-1-クロロフェニルエタン、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’-アゾビス-1-シクロヘプタンニトリル、1,1’-アゾビス-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビスクメン、4-ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4-ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’-アゾビス-1,2-ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA-4,4’-アゾビス-4-シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2’-アゾビスイソブチレート)等が挙げられる。
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2-クロロベンゾイル、過酸化3-クロロベンゾイル、過酸化4-クロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酸化4-ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ブチル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸tert-ブチル、過酢酸tert-ブチル、安息香酸tert-ブチル、過フェニル酢酸tert-ブチル、過4-メトキシ酢酸tert-ブチル、過N-(3-トルイル)カルバミン酸tert-ブチル等が挙げられる。重合開始剤を例示すると、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、キュメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド等の過酸化物がある。
【0031】
また、連鎖移動剤として、メルカプト化合物を加えることができる。例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1-ブタンチオール、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1-オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4-チオビスベンゼンチオール等が挙げられる。
【0032】
(A)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、10万以上100万以下であることが好ましく、15万以上80万以下であることがより好ましく、20万以上60万以下であることがさらに好ましい。
重量平均分子量を10万以上とすることにより高温環境下での接着力を良好にしやすくできる。重量平均分子量を100万以下とすることにより、重合時のゲル化を抑制しやすくできる。
【0033】
(A)アクリル系樹脂は、エポキシ当量が2000g/eq以上30000g/eq以下であることが好ましく、4000g/eq以上20000g/eq以下であることがより好ましい。(A)アクリル系樹脂のエポキシ当量を2000g/eq以上とすることにより、シール材層同士の接着性を良好にしやすくできる。(A)アクリル系樹脂のエポキシ当量を30000g/eq以下とすることにより、シール材層の凝集力を高くしやすくできる。シール材層の凝集力を高くすることにより、電解質膜に含まれる水分が熱プレス時にガス化して放出される際に、シール材層が発泡することを抑制しやすくできる。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、上述した(A)アクリル系樹脂の他に、(B)エポキシ樹脂及び(C)エポキシ樹脂硬化剤を含むことを要する。
さらに、本発明の樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂と(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量が、(A)アクリル系樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることを要する。(B)エポキシ樹脂と(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量を1質量部以上とすることにより、リワーク性を良好にしやすくできる。(B)エポキシ樹脂と(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量を30質量部以下とすることにより、シール材層同士の接着性を良好にしやすくできる。
(B)エポキシ樹脂と(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量は、(A)アクリル系樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)に対する(C)エポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量(g/eq)は、0.8以上1.2以下であることが好ましい。
【0036】
<(B)エポキシ樹脂>
(B)エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる何れか1種以上が挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、吸水性が低いため、シール材層の接着性の経時的安定性に優れる点で好ましい。
【0037】
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150g/eq以上1500g/eq以下であることが好ましく、150g/eq以上1000g/eq以下であることがより好ましい。(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量を1500g/eq以下とすることにより、(A)アクリル系樹脂に均一分散させやすくなる。
【0038】
(B)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、250以上5000以下であることが好ましく、300以上3000以下であることがより好ましい。重量平均分子量を5000以下とすることにより、(A)アクリル系樹脂に(B)エポキシ樹脂を均一分散させやすくなる。
【0039】
<(C)エポキシ樹脂硬化剤>
(C)エポキシ樹脂硬化剤としては、ポリアミン系硬化剤;酸無水物系硬化剤;チオール系硬化剤;イミダゾール化合物、ケチミン化合物及びジシアンジアミド等の潜在性硬化剤;等が挙げられる。これらの中でも、反応温度を低くしやすいポリアミン系硬化剤が好ましい。
【0040】
ポリアミン系硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。これらの中でも、反応温度を低くしやすい脂肪族ポリアミンが好ましい。
【0041】
ポリアミン系硬化剤は、活性水素当量が50g/eq以上700g/eq以下であることが好ましく、75g/eq以上500g/eq以下であることがより好ましい。ポリアミン系硬化剤の活性水素当量を50g/eq以上とすることにより、樹脂組成物のポットライフを長くしやすくできる。ポリアミン系硬化剤の活性水素当量を700g/eq以下とすることにより、(B)エポキシ樹脂との反応が進行しやすく、より耐久性の良い樹脂組成物を得ることが出来る。
【0042】
(その他の添加剤)
樹脂組成物は、本発明の効果を害しない範囲で、顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0043】
[シール材]
本発明のシール材は、上述した本発明の樹脂組成物から形成されてなるものである。シール材の形態は、粒子状、シート状等の固形であることが好ましく、取り扱いの観点からシート状であることがより好ましい。
本発明のシール材をシート状に形成する場合、取り扱い性の観点から、上述した本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解させたシール材層形成組成物を、基材上に塗工し、乾燥させることで、シール材層を形成することが好ましい。
【0044】
本発明のシール材の実施形態として、下記の実施形態が挙げられる。図3は、下記の実施形態を示す断面図である。下記の実施形態のシール材は、シート状の形態であることが好ましい。
<シール材の実施形態>
第1の基材と、シール材層と、第2の基材とをこの順に有するシール材であって、前記シール材層が、上述した本発明の樹脂組成物から形成されてなるシール材層であり、前記第1の基材及び前記第2の基材の少なくとも一方が剥離可能である、シール材。
【0045】
第1の基材及び第2の基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド等のプラスチックフィルム;紙;等が挙げられる。これらの中でも、プラスチックフィルムが好ましく、ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
第1の基材及び第2の基材の厚みは、10μm以上100μm以下が好ましく、25μm以上75μm以下がより好ましい。
【0046】
第1の基材及び第2の基材の少なくとも一方は、シール材層から剥離しやすくするため、表面が離型処理されていることが好ましい。離型処理の離型剤は、電解質膜及びシール材層に離型成分が移行することによる悪影響を抑制するため、ポリオレフィン等の非シリコーン系の離型剤が好ましい。
【0047】
シール材層の厚みは、10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。
【0048】
本発明のシール材は、燃料電池のシール部位、より具体的には、燃料電池を構成するセルのシール部位に用いることができる。使用時には、例えば、シール材を加熱し、セルのシール部位をシールする。
また、本発明のシール材は、水電解装置のシール部位、より具体的には、水電解装置を構成するセルのシール部位に用いることもできる。
【0049】
[固体高分子型燃料電池]
本発明の固体高分子型燃料電池は、本発明のシール材によるシール部位を備えてなるものである。
図1は、一般的な燃料電池を構成するセルの一例を示す断面図である。
セル10は、固体高分子電解質膜11と、その両面に配置された一対の電極(アノード、カソード)12,13とからなる複合体(MEA:Membrane and Electrode Assembly)、該複合体の両面に配置され、燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するためのガス流路(14a,15a)が形成されたセパレータ(14,15)、及び前記複合体とセパレータ(14,15)との間を密封すべくシールするシール材16から構成されている。
一般的な燃料電池は、セル10を数十~数百セル積層し、その積層体を、集電板及び絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ボルトで両端から締め付けることによって構成される。
図1のセル10は、シール材層同士が対向して接着する領域を有していない。しかし、近年、図2に示すように、シール材層同士が対向して接着する領域を備えたセル10も用いられている。
【0050】
本発明のシール材は、上述した汎用の燃料電池におけるシール材として好適に用いることができる。本発明のシール材は、特に、シール材層同士が対向して接着する領域を備える燃料電池のシール材として好適に用いることができる。
【0051】
[水電解装置]
本発明の水電解装置は、本発明のシール材によるシール部位を備えてなるものである。前記シール部位は、水電解装置を構成するセルのシール部位であることが好ましい。
【実施例
【0052】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
1.測定及び評価
実施例及び比較例のシール材について、以下の測定及び評価を実施した。結果を表2に示す。
【0054】
1-1.リワーク性
実施例及び比較例のシール材を、幅2.5cm、長さ12.5cmにカットしたサンプルを作製した。カットサンプルのシール材層上に、PETフィルム(厚さ25μm、幅2.5cm、長さ12.5cm)を重ね合わせ、室温雰囲気下でラミネート接合し、評価用サンプル1を作製した。
評価用サンプル1を、室温雰囲気下で1分間放置後、PETフィルムを角度90°、速度100mm/min、室温雰囲気下の条件でテンシロン型引張試験機により引っ張り、シール材層とPETフィルムとの間の剥離強度を測定した。剥離強度が小さいほどリワーク性が良好であるといえる。剥離強度が0.050N/mm以下のものがリワーク性が良好であるといえる。
【0055】
1-2.接着力1(シール材層同士の接着力)
実施例及び比較例のシール材を、幅5cm、長さ10cmにカットしたサンプルを、それぞれ2枚作製した。2枚のカットサンプルを、シール材同士が対向するように重ね合わせ、100℃の加熱ローラーでラミネート仮接合し、その後熱プレス140℃、0.2MPa、30秒で本接合した。本接合後、幅1cm、長さ10cmの短冊状にカットして、評価用サンプル2を作製した。
評価用サンプル2の一方のカットサンプルを角度180°、速度10mm/min、室温雰囲気下の条件でテンシロン型引張試験機により引っ張り、シール材層間の剥離強度を測定した。剥離強度が0.20N/mm以上のものは、シール材層同士の接着力が良好であるといえる。
【0056】
1-3.接着力2(シール材層と電解質膜との接着力)
実施例及び比較例のシール材を、幅5cm、長さ10cmにカットしたサンプルを、それぞれ2枚作製した。
2枚のカットサンプルと、電解質膜とを、下記の順で重ね合わせ、100℃の加熱ローラーでラミネート仮接合し、その後熱プレス140℃、0.2MPa、30秒で本接合した。本接合後、幅1cm、長さ10cmの短冊状にカットして、評価用サンプル3を作製した。電解質膜は、デュポン社製の「Nafion NRE-212(商品名)、厚さ50μm」を用いた。
評価用サンプル3の一方のカットサンプルを角度180°、速度10mm/min、室温雰囲気下の条件でテンシロン型引張試験機により引っ張り、一方のカットサンプルのシール材層と電解質膜との間の剥離強度を測定した。剥離強度0.20N/mm以上のものは、シール材層と電解質膜との接着力が良好であるといえる。比較例7は、評価用サンプルを作製する際に、サンプルのシール材層が発泡してしまったため、剥離強度を測定できなかった。
<積層順>
1枚目のカットサンプルの第1の基材、1枚目のカットサンプルのシール材層、電解質膜、2枚目のカットサンプルのシール材層、2枚目のカットサンプルの第1の基材
【0057】
1-4.接着力3(シール材層と電解質膜との熱水耐久接着力)
評価用サンプル3を、イオン交換水が入った耐熱瓶に浸漬させ、その後サンプル入りの耐熱瓶を95℃のオーブンに500時間投入した。500時間後、評価用サンプル3を95℃の熱水から取り出し、室温雰囲気下で24時間放置した。その後、一方のカットサンプルを角度180°、速度10mm/min、室温雰囲気下の条件でテンシロン型引張試験機により引っ張り、一方のカットサンプルのシール材層と電解質膜との間の剥離強度を測定した。但し、熱水から評価用サンプルを取り出し後、電解質膜が剥がれてしまった比較例2及び3は剥離強度を測定できなかった。剥離強度が0.50N/mm以上のものは、シール材層と電解質膜との接着力が良好であるといえる。比較例7は、評価用サンプルを作製する際に、サンプルのシール材層が発泡してしまったため、剥離強度を測定できなかった。
【0058】
1-5.理論Tg
実施例及び比較例で得られた(A)アクリル系樹脂の理論Tgを、下記のFOX式により算出した。下記のFOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTg(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wとする(W+W+…+W+…W=1である。)。
(FOX式)
1/Tg=W/Tg+W/Tg+…+W/Tg+…+W/Tg
【0059】
2.シール材の作製
<実施例1>
[(A)アクリル系樹脂の作製]
容量1リットルのセパラブルフラスコに、0.2質量%のポリビニルアルコールを含有する水200質量部と、スチレンモノマー(ST)10質量部と、メチルメタクリレートモノマー(MMA)25質量部と、グリシジルメタクリレートモノマー(GMA)1質量部と、エチルアクリレートモノマー(EA)64質量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.1質量部と、分子量調整用に連鎖移動剤とを含む均一混合液を投入した。
該混合液を窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温し、4時間懸濁重合させた。次いで、デカンテーションによって懸濁液から水分を除いた。固形物を吸引ろ過しながら水で洗浄し、水分を飛ばした後に、60℃で真空乾燥を行い、実施例1で用いる(A)アクリル系樹脂として、アクリル系樹脂Cを得た。
アクリル系樹脂Cの重量平均分子量は、31×10であった。モノマー組成及び分子量を表1に示す。
【0060】
[樹脂組成物の調製]
(A)アクリル系樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを、表2の割合で混合し、実施例1の樹脂組成物を得た。
表2において、(B)エポキシ樹脂の「種類」の「1」は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(重量平均分子量370、三菱ケミカル社製、商品名jER828、エポキシ当量185)であり、エポキシ樹脂の「種類」の「2」は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名NC-3000、エポキシ当量270)である。表1において、(C)エポキシ樹脂硬化剤は、ポリアミン系硬化剤(ハンツマン社製、商品名JEFFAMINE D-400、活性水素当量100)である。
【0061】
[シート状のシール材の作製]
調製した樹脂組成物と、メチルエチルケトンとを混合し、シール材層形成用塗布液を調製した。厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルムに上に、シール材層形成用塗布液を塗布後、100℃、2分の条件で乾燥させ、厚さ20μmのシール材層を形成し、実施例1のシール材を得た。
【0062】
<実施例2~13、比較例1~8>
(A)アクリル系樹脂の原料のモノマーの配合比及び重量平均分子量を表1の値にするとともに、樹脂組成物中の(A)アクリル系樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)エポキシ樹脂硬化剤の配合比を表2の値にした以外は、以外は、実施例1と同様にして、実施例2~13及び比較例1~8の樹脂組成物及びシール材を得た。各実施例及び比較例の重量平均分子量は連鎖移動剤の量で調整した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び2の結果から、実施例のシール材用の樹脂組成物は、リワーク性を良好にできるとともに、シール材層同士の接着性(接着力1)を良好にできることを確認できる。さらに、実施例のシール材用の樹脂組成物は、シール材層と電解質膜との接着性(接着力2及び3)を良好にできることを確認できる。
【符号の説明】
【0066】
10 :セル
11 :電解質膜
12,13 :電極
14,15 :セパレータ
14a,15a:ガス流路
16 :シール材
16a :第1の基材
16b :シール材層
16c :第2の基材
【要約】
【課題】リワーク性を良好にできるとともに、シール材層同士の接着性を良好にできる、シール材用の樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)アクリル系樹脂、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含み、前記(A)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が5℃以上35℃以下であり、前記(A)アクリル系樹脂は、(a1)メチルメタクリレート、(a2)スチレン、及び(a3)グリシジル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーの共重合体であり、前記原料モノマーの全量に対する前記(a3)グリシジル(メタ)アクリレートの割合が3.0質量%未満であり、前記(B)エポキシ樹脂と前記(C)エポキシ樹脂硬化剤とを合計した含有量が、前記(A)アクリル系樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である、樹脂組成物。
【選択図】なし
図1
図2
図3