(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231109BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2023511948
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2022028748
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】平田 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】米本 憲司
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216797(WO,A1)
【文献】特開昭57-039924(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131115(WO,A1)
【文献】特開2013-191626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するセラミックプレート貫通穴と、
前記セラミックプレートの下面側に設けられた導電性のベースプレートと、
前記ベースプレートを上下方向に貫通するベースプレート貫通穴と、
前記ベースプレート貫通穴に挿入されて外周面が前記ベースプレート貫通穴の内周面に接着層を介して接着された絶縁スリーブと、
前記絶縁スリーブを上下方向に貫通し、前記セラミックプレート貫通穴と連通するスリーブ貫通穴と、
を備えた半導体製造装置用部材であって、
前記絶縁スリーブは、外部ツールと係合可能なツール係合部を有し、
前記ツール係合部は、前記外部ツールに係合されると前記外部ツールの回転トルクを前記絶縁スリーブに伝達する、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記ベースプレートは、冷媒流路を内蔵し、
前記ツール係合部は、前記冷媒流路の底面よりも下側に設けられている、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記接着層の下端は、前記冷媒流路の底面と同じかそれよりも下側で且つ前記ツール係合部よりも上側に位置している、
請求項2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記ツール係合部は、前記スリーブ貫通穴に設けられた雌ネジ部であるか、前記絶縁スリーブの外周面に設けられた雄ネジ部であるか、又は、前記絶縁スリーブの下端から上下方向に沿って設けられた複数のスリット溝である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記ツール係合部を前記ウエハ載置面と平行な面で切断したときの前記スリーブ貫通穴の断面は、多角形であるか、円に凸部又は凹部を設けた形状であるか、又は、円を2つの平行な弦で切り取った形状である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記ツール係合部を前記ウエハ載置面と平行な面で切断したときの前記絶縁スリーブの断面の外形形状は、多角形であるか、円に凸部又は凹部を設けた形状であるか、又は、円を2つの平行な弦で切り取った形状である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極を内蔵するセラミックプレートと、セラミックプレートの下面側に設けられた導電性のベースプレートとを備えた半導体製造装置用部材が知られている。例えば、特許文献1には、こうした半導体製造装置用部材において、セラミックプレートを厚さ方向に貫通するセラミックプレート貫通穴と、ベースプレートを厚さ方向に貫通するベースプレート貫通穴と、ベースプレート貫通穴に挿入されて外周面がベースプレート貫通穴の内周面に接着層を介して接着された絶縁スリーブとを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした半導体製造装置用部材を長期間使用すると、ベースプレート貫通穴と絶縁スリーブとの間の接着剤が腐食劣化して消耗することがあった。接着剤が消耗した半導体製造装置用部材は、接着剤を交換すれば再び使用可能になることが多い。接着剤の交換には、絶縁スリーブを一度取り外して再び接着する必要がある。しかしながら、絶縁スリーブを取り外す作業は難易度が高く、作業時にセラミックプレートやベースプレートを破損するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、絶縁スリーブを容易に取り外すことができるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するセラミックプレート貫通穴と、
前記セラミックプレートの下面側に設けられた導電性のベースプレートと、
前記ベースプレートを上下方向に貫通するベースプレート貫通穴と、
前記ベースプレート貫通穴に挿入されて外周面が前記ベースプレート貫通穴の内周面に接着層を介して接着された絶縁スリーブと、
前記絶縁スリーブを上下方向に貫通し、前記セラミックプレート貫通穴と連通するスリーブ貫通穴と、
を備えた半導体製造装置用部材であって、
前記絶縁スリーブは、外部ツールと係合可能なツール係合部を有し、
前記ツール係合部は、前記外部ツールに係合されると前記外部ツールの回転トルクを前記絶縁スリーブに伝達する、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、絶縁スリーブは、外部ツールと係合可能なツール係合部を有する。ツール係合部は、外部ツールに係合されると、外部ツールの回転トルクを絶縁スリーブに伝達する。絶縁スリーブをベースプレート貫通穴から外す際、ツール係合部に外部ツールを係合する。その外部ツールを回転させると、その回転トルクによって接着層が切断される。そのため、絶縁スリーブをベースプレート貫通穴から容易に取り外すことができる。
【0008】
[2]本発明の半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ベースプレートは、冷媒流路を内蔵していてもよく、前記ツール係合部は、前記冷媒流路の底面よりも下側に設けられていてもよい。ツール係合部が冷媒流路の底面よりも上側に設けられていると、ツール係合部の形状がウエハの均熱性に影響することがあるが、ここでは、ツール係合部が冷媒流路の底面よりも下側に設けられているため、その影響は低減される。
【0009】
[3]本発明の半導体製造装置用部材(前記[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記接着層の下端は、前記冷媒流路の底面と同じかそれよりも下側で且つ前記ツール係合部よりも上側に位置していてもよい。接着層の下端が冷媒流路の底面と同じかそれよりも下側に位置していていれば、セラミックプレートからの熱が接着層を経由して冷媒流路に効率よく伝達される。また、接着層の下端がツール係合部よりも上側に位置していれば、接着層の量が少なくて済み、絶縁スリーブをベースプレート貫通穴から外しやすくなる。
【0010】
[4]本発明の半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記ツール係合部は、前記スリーブ貫通穴に設けられた雌ネジ部であってもよいし、前記絶縁スリーブの外周面に設けられた雄ネジ部であってもよいし、前記絶縁スリーブの下端から上下方向に沿って設けられた複数のスリット溝であってもよい。ツール係合部が雄ネジ部の場合、外部ツールとして雌ネジを利用すればよい。ツール係合部が雌ネジ部の場合、外部ツールとして雄ネジを利用すればよい。ツール係合部がスリット溝の場合、外部ツールとしては、例えば複数のスリット溝の少なくとも2つに挿入可能な挿入部を有するツールを利用すればよい。
【0011】
[5]本発明の半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記ツール係合部を前記ウエハ載置面と平行な面で切断したときの前記スリーブ貫通穴の断面は、多角形であってもよいし、円に凸部又は凹部を設けた形状であってもよいし、円を2つの平行な弦で切り取った形状であってもよい。ツール係合部が断面所定形状(多角形か、円に凸部又は凹部を設けた形状か、円を2つの平行な弦で切り取った形状)の穴の場合、外部ツールとしては、例えばその所定形状に嵌まり合うツールを利用すればよい。
【0012】
[6]本発明の半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記ツール係合部を前記ウエハ載置面と平行な面で切断したときの前記絶縁スリーブの断面の外形形状は、多角形であってもよいし、円に凸部又は凹部を設けた形状であってもよいし、円を2つの平行な弦で切り取った形状であってもよい。ツール係合部が断面所定形状(多角形か、円に凸部又は凹部を設けた形状か、円を2つの平行な弦で切り取った形状)の外形を有する場合、外部ツールとしては、例えばその所定形状に嵌まり合うツールを利用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6】絶縁スリーブ50をベースプレート貫通穴34から取り外す作業の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1はウエハ載置台10の平面図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図2の部分拡大図(一点鎖線の枠内の拡大図)、
図4は絶縁スリーブ50の説明図(
図4Aは平面図、
図4Bは正面図、
図4Cは底面図)である。なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、ウエハ載置台10の向きによって「上」「下」は「下」「上」になったり「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0015】
ウエハ載置台10は、本発明の半導体製造装置用部材の一例であり、
図2に示すように、セラミックプレート20と、ベースプレート30と、ボンディング層40と、絶縁スリーブ50と、接着層60と、ガス穴70とを備えている。
【0016】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハWを載置するウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、ウエハ載置面21から近い順に、静電電極22及びヒータ電極23を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、
図1に示すように、外縁に沿って環状のシールバンド21aが形成され、シールバンド21aの内側の全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0017】
静電電極22は、平面状のメッシュ電極であり、図示しない給電部材を介して外部の直流電源に接続されている。給電部材は、ボンディング層40及びベースプレート30と電気的に絶縁されている。静電電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。
【0018】
ヒータ電極23は、平面視でセラミックプレート20の全体にわたって一端から他端まで一筆書きの要領で配線された抵抗発熱体である。ヒータ電極23の一端と他端には、図示しない給電部材を介してヒータ電源が接続されている。給電部材は、ボンディング層40及びベースプレート30と電気的に絶縁されている。ヒータ電極23は、通電されると発熱してウエハ載置面21、ひいてはウエハWを加熱する。
【0019】
ベースプレート30は、導電率及び熱伝導率の良好な円板(例えば、セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板、厚さは20~40mm)である。ベースプレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32が形成されている。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。冷媒流路32は、平面視でベースプレート30の全体にわたって一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領で形成されている。冷媒流路32の一端及び他端には、図示しない外部冷媒装置の供給口及び回収口がそれぞれ接続される。外部冷媒装置の供給口から冷媒流路32の一端に供給された冷媒は、冷媒流路32を通過したあと冷媒流路32の他端から外部冷媒装置の回収口に戻り、温度調整されたあと再び供給口から冷媒流路32の一端に供給される。ベースプレート30は、高周波(RF)電源に接続され、RF電極としても用いられる。
【0020】
ベースプレート30の材料は、例えば、金属材料や金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al2O3とTiCとの複合材料などが挙げられる。ベースプレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。
【0021】
ボンディング層40は、ここでは金属製であり、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とを接合している。ボンディング層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0022】
絶縁スリーブ50は、ベースプレート貫通穴34に収納されている。ベースプレート貫通穴34は、ベースプレート30を上下方向に貫通する穴であり、冷媒流路32を貫通しないように設けられている。絶縁スリーブ50の上端面50aは、金属製のボンディング層40を上下方向に貫通するボンディング層貫通穴44に入り込んでいる。絶縁スリーブ50の下端面50bは、ベースプレート30の下面とほぼ同じ高さである。絶縁スリーブ50は、電気絶縁性材料(例えばセラミックプレート20と同じ材料)で作製された略円柱状の部材であり、絶縁スリーブ50の中心軸に沿って絶縁スリーブ50を上下方向に貫通するスリーブ貫通穴54を有する。絶縁スリーブ50の外周面50cは、ベースプレート貫通穴34の内周面に接着層60を介して接着されている。接着層60の材料として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。接着層60は、絶縁スリーブ50の外周面50cとボンディング層貫通穴44の内周面との間にも充填され、更に、絶縁スリーブ50の上端面50aとセラミックプレート20の下面との間にも入り込んでいる。接着層60の下端は、冷媒流路32の底面32aと同じかそれよりも下側に位置している。
【0023】
絶縁スリーブ50は、後述するリワークツール90と係合可能なツール係合部としての雌ネジ部52を有している。雌ネジ部52は、スリーブ貫通穴54のうち冷媒流路32の底面32aよりも下側に設けられている。雌ネジ部52は、リワークツール90に係合されるとリワークツール90の回転トルクを絶縁スリーブ50に伝達する。接着層60の下端は、雌ネジ部52よりも上側に位置している。
【0024】
ガス穴70は、セラミックプレート貫通穴24及びスリーブ貫通穴54で構成される。セラミックプレート貫通穴24は、セラミックプレート20を上下方向(厚さ方向)に貫通する。セラミックプレート貫通穴24は、ウエハ載置面21の基準面21cに開口している。セラミックプレート貫通穴24の内周面には、静電電極22やヒータ電極23が露出していない。つまり、セラミックプレート貫通穴24の内周面は、セラミックで覆われている。スリーブ貫通穴54は、セラミックプレート貫通穴24に連通している。ガス穴70は、ウエハ載置面21に熱伝導ガスを供給するのに用いられる。なお、本実施形態では、セラミックプレート20の下面と絶縁スリーブ50の上端面50aとの間にある接着層60の開口部64も、ガス穴70の一部を構成する。
【0025】
次に、ウエハ載置台10の製造方法の一例について
図5に基づいて説明する。
図5はウエハ載置台10の製造工程図である。
【0026】
まず、セラミックプレート20、ベースプレート30及び金属接合材80を用意する(
図5A)。セラミックプレート20は、静電電極22及びヒータ電極23を内蔵し、セラミックプレート貫通穴24を備えている。ベースプレート30は、冷媒流路32を内蔵し、ベースプレート貫通穴34を備えている。金属接合材80は、ベースプレート30のベースプレート貫通穴34と対向する位置に接合材貫通穴84を有している。接合材貫通穴84の直径は、ベースプレート貫通穴34の直径と同じかそれよりやや大きい。金属接合材80をベースプレート30の上面とセラミックプレート20の下面との間に挟み込み、積層体とする。このとき、ベースプレート貫通穴34と接合材貫通穴84とセラミックプレート貫通穴24とが連通するように位置合わせする。
【0027】
続いて、金属接合材80の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し(TCB)、その後室温に戻す。これにより、セラミックプレート20とベースプレート30とは金属接合材80が変化したボンディング層40によって接合される(
図5B)。金属接合材80としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。
【0028】
続いて、絶縁スリーブ50を用意する。そして、絶縁スリーブ50の上端面50a及び外周面50cに接着剤65を塗布し、絶縁スリーブ50の上端面50aからベースプレート貫通穴34に差し込む(
図5B)。なお、
図5Bではベースプレート30の下から絶縁スリーブ50を差し込む様子を示したが、
図5Bの積層体の上下をひっくり返して、ベースプレート30の上から絶縁スリーブ50を差し込んでもよい。
【0029】
その後、接着剤65が硬化すると接着層60となり、ウエハ載置台10が得られる(
図5C)。
【0030】
次に、こうして構成されたウエハ載置台10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内にウエハ載置台10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の静電電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。また、ヒータ電極23に通電してセラミックプレート20を発熱させ、ウエハWを所定温度に加熱する。更に、ガス穴70を構成するスリーブ貫通穴54には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばHeガス等)を用いる。ガス穴70に導入されたバックサイドガスは、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間(ウエハWの裏面とウエハ載置面21のシールバンド21a、円形小突起21b及び基準面21cとで囲まれた空間)に充填され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極とウエハ載置台10のベースプレート30との間にRF電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。ベースプレート30の冷媒流路32には、適時、冷媒が循環される。
【0031】
ウエハ載置台10を長期間使用すると、接着層60が腐食劣化して消耗することがある。このとき、ウエハ載置台10のその他の部品は、まだ使用可能なことが多い。その場合、接着層60のリワークを実施してウエハ載置台10を再使用可能な状態にする。
図6は、絶縁スリーブ50をベースプレート貫通穴34から取り外す作業の工程図である。まず、リワークツール(外部ツール)90を用意する。リワークツール90は、手で把持可能な柄92に細長いシャフト94を取り付けたツールであり、シャフト94の先端に雄ネジ部94aを有する。作業者は、リワークツール90の柄92を掴み、リワークツール90の雄ネジ部94aを絶縁スリーブ50のツール係合部である雌ネジ部52にねじ込む(
図6A)。続いて、作業者は、ねじ込んだ方向と同じ方向の力を柄92に加える(
図6B)。すると、雌ネジ部52は、リワークツール90の回転トルクを絶縁スリーブ50に伝達する。これにより、絶縁スリーブ50はリワークツール90と一体になって回転しようとするため、その回転力によって接着層60は切断される。その後、作業者は、リワークツール90と一体になった絶縁スリーブ50をベースプレート貫通穴34から抜き出す(
図6C)。そして、ベースプレート貫通穴34及び絶縁スリーブ50を清掃した後、絶縁スリーブ50に接着剤を塗布し、ベースプレート貫通穴34に挿入し、接着剤を固化させる。これにより、ウエハ載置台10は再使用可能な状態になる。
【0032】
以上詳述したウエハ載置台10では、絶縁スリーブ50は、リワークツール90と係合可能なツール係合部として雌ネジ部52を有する。雌ネジ部52は、リワークツール90に係合されると、リワークツール90の回転トルクを絶縁スリーブ50に伝達する。絶縁スリーブ50をベースプレート貫通穴34から外す際、雌ネジ部52にリワークツール90の雄ネジ部94aを係合する。そのリワークツール90を回転させると、その回転トルクによって接着層60が切断される。そのため、絶縁スリーブ50をベースプレート貫通穴34から容易に取り外すことができる。
【0033】
また、雌ネジ部52が冷媒流路32の底面32aよりも上側に設けられていると、雌ネジ部52の形状がウエハWの均熱性に影響することがあるが、ここでは、雌ネジ部52が冷媒流路32の底面32aよりも下側に設けられているため、その影響は低減される。
【0034】
更に、接着層60の下端は、冷媒流路32の底面32aと同じかそれよりも下側に位置していている。そのため、セラミックプレート20からの熱が接着層60を経由して冷媒流路32に効率よく伝達される。また、接着層60の下端は、雌ネジ部52よりも上側に位置している。そのため、接着層60の量が少なくて済み、絶縁スリーブ50をベースプレート貫通穴34から外しやすくなる。
【0035】
更にまた、ボンディング層40の材料は金属であるため、樹脂に比べて腐食劣化が低減される。そのため、ウエハ載置台10を構成する各種部品のうち、絶縁スリーブ50とベースプレート貫通穴34との間の接着層60の寿命が最も短くなりやすい。したがって、ボンディング層40が金属製の場合には、本発明を適用する意義が高い。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
上述した実施形態では、ツール係合部として雌ネジ部52を備えた絶縁スリーブ50を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、
図7~
図11に示す絶縁スリーブ150,250,350,450,550を、絶縁スリーブ50の代わりに採用してもよい。
図7A~
図11Aは平面図、
図7B~
図11Bは正面図、
図7C~
図11Cは底面図である。
図7~
図11では、上述した実施形態の絶縁スリーブ50と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0038】
図7に示す絶縁スリーブ150は、スリーブ貫通穴54にツール係合部152を有する。ツール係合部152は、スリーブ貫通穴54のうち絶縁スリーブ150の下端
面50bから所定高さまでの区間の水平断面を2面取り形状(円を2つの平行な弦で切り取った形状)にしたものである。水平断面とは、
図2においてウエハ載置面21と平行な面で切断したときの断面である。所定高さは、絶縁スリーブ150をベースプレート貫通穴34に接着したときにツール係合部152の上端が冷媒流路32の底面32aよりも低くなるように決められている。この場合、リワークツールとして、ツール係合部152に嵌まり合うツールを利用すればよい。また、絶縁スリーブ150をベースプレート貫通穴34から引き抜く際には、別のツールをツール係合部152の内面(あるいはスリーブ貫通穴54の内面)に押し当てて引き抜けばよい。なお、
図7において、水平断面を2面取り形状にする代わりに、多角形(例えば四角形や五角形や六角形など)にしてもよい。
【0039】
図8に示す絶縁スリーブ250は、スリーブ貫通穴54にツール係合部252を有する。ツール係合部252は、スリーブ貫通穴54のうち絶縁スリーブ250の下端
面50bから所定高さまでの区間の水平断面を、円に凸部を設けた形状にしたものである。所定高さは、絶縁スリーブ250をベースプレート貫通穴34に接着したときにツール係合部252の上端が冷媒流路32の底面32aよりも低くなるように決められている。この場合、リワークツールとして、ツール係合部252に嵌まり合うツールを利用すればよい。また、絶縁スリーブ250をベースプレート貫通穴34から引き抜く際には、別のツールをツール係合部252の内面(あるいはスリーブ貫通穴54の内面)に押し当てて引き抜けばよい。なお、
図8において、水平断面を円に凸部を設けた形状にする代わりに、円に凹部を設けた形状にしてもよい。
【0040】
図9に示す絶縁スリーブ350は、下端
面50bから所定高さまで上下方向に沿って2つのスリット溝352を有する。この2つのスリット溝352がツール係合部に相当する。所定高さは、絶縁スリーブ350をベースプレート貫通穴34に接着したときにスリット溝352の上端が冷媒流路32の底面32aよりも低くなるように決められている。この場合、リワークツールとして、2つのスリット溝352に嵌まり合うツールを利用すればよい。また、絶縁スリーブ350をベースプレート貫通穴34から引き抜く際には、別のツールをスリーブ貫通穴54の内面に押し当てて引き抜けばよい。
【0041】
図10に示す絶縁スリーブ450は、絶縁スリーブ450の外周面のうち下端
面50bから所定高さまでの区間に雄ネジ部452を有する。この雄ネジ部452がツール係合部に相当する。所定高さは、絶縁スリーブ450をベースプレート貫通穴34に接着したときに雄ネジ部452の上端が冷媒流路32の底面32aよりも低くなるように決められている。この場合、リワークツールとして、雄ネジ部452に螺合可能な雌ネジ部を有するツールを利用すればよい。絶縁スリーブ450をベースプレート貫通穴34から引き抜く際には、雄ネジ部452に螺合したツールをそのまま引き抜けばよい。
【0042】
図11に示す絶縁スリーブ550は、外周面にツール係合部552を有する。ツール係合部552は、絶縁スリーブ
550の外周面のうち下端
面50bから所定高さまでの区間を水平断面が2面取り形状になるようにした部分である。所定高さは、絶縁スリーブ550をベースプレート貫通穴34に接着したときにツール係合部552の上端が冷媒流路32の底面32aよりも低くなるように決められている。この場合、リワークツールとして、ツール係合部552を挟み込むツール(例えばラジオペンチとかピンセット)を利用すればよい。また、絶縁スリーブ550をベースプレート貫通穴34から引き抜く際には、そのツールでツール係合部552を挟み込んだまま引き抜けばよい。なお、
図11において、水平断面を2面取り形状にする代わりに、多角形(例えば四角形や五角形や六角形など)にしてもよい。
【0043】
図12は、
図11の絶縁スリーブ550の変形例であり、
図12Aは平面図、
図12Bは正面図、
図12Cは底面図である。
図12の絶縁スリーブ550では、2面取り形状のツール係合部552の平面部に、上向きの段差面552aが設けられている。こうすれば、絶縁スリーブ550をベースプレート貫通穴34から引き抜く際に、先端がフック形状のツール(例えばラジオペンチとかピンセット、
図12の一点鎖線参照)を用いて、フック形状の先端を段差面552aに引っ掛けて容易に引き抜くことができる。
【0044】
なお、ツール係合部が絶縁スリーブの外周面に設けられている場合、絶縁スリーブの外周面にリワークツールを挿入する必要があるたため、接着層の下端がツール係合部よりも上側に位置していることが好ましい。また、ツール係合部がネジ構造でない場合、ツール係合部に上向きの段差面を設けてもよい(例えば
図12参照)。こうすれば、外部ツールを上向きの段差面に引っ掛ければ、絶縁スリーブをベースプレート貫通穴から引き抜きやすくなる。
【0045】
上述した実施形態では、金属製のボンディング層40を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、ボンディング層40を樹脂製としてもよい。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。ボンディング層40を樹脂製とした場合、腐食劣化が進みやすいため、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とボンディング層40の外周面との間にリング状の空間が形成されるようにし、その空間に犠牲リングを配置するのが好ましい。こうすれば、樹脂製のボンディング層40は犠牲リングによって保護される。また、犠牲リングが腐食劣化した場合には、犠牲リングを交換すればよい。
【0046】
上述した実施形態では、セラミックプレート20に静電電極22及びヒータ電極23を内蔵したが、特にこれに限定されない。例えば、セラミックプレート20に静電電極22及びヒータ電極23のいずれか一方のみを内蔵してもよい。あるいは、ヒータ電極23を厚さ方向に二段又はそれ以上となるように内蔵してもよい。
【0047】
上述した実施形態では、セラミックプレート貫通穴24及びスリーブ貫通穴54をガス穴70として利用したが、特にこれに限定されない。例えば、セラミックプレート貫通穴24及びスリーブ貫通穴54をリフトピン穴として利用してもよい。リフトピン穴は、ウエハ載置面21に対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するための穴である。リフトピン穴は、ウエハWを例えば3本のリフトピンで支持する場合には3箇所に設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の半導体製造装置用部材は、例えばウエハをプラズマなどで処理する分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 静電電極、23 ヒータ電極、24 セラミックプレート貫通穴、30 ベースプレート、32 冷媒流路、32a 底面、34 ベースプレート貫通穴、40 ボンディング層、44 ボンディング層貫通穴、50 絶縁スリーブ、50a 上端面、50b 下端面、50c 外周面、52 雌ネジ部、54 スリーブ貫通穴、60 接着層、64 開口部、65 接着剤、70 ガス穴、80 金属接合材、84 接合材貫通穴、90 リワークツール、92 柄、94 シャフト、94a 雄ネジ部、150,250,350,450,550 絶縁スリーブ、152,252,552 ツール係合部、352 スリット溝、452 雄ネジ部、552a 段差面。
【要約】
ウエハ載置台10は、半導体製造装置用部材の一例であり、セラミックプレート20と、セラミックプレート貫通穴24と、ベースプレート30と、ベースプレート貫通穴34と、絶縁スリーブ50と、スリーブ貫通穴54とを備える。スリーブ貫通穴54は、絶縁スリーブ50を上下方向に貫通し、セラミックプレート貫通穴24と連通している。絶縁スリーブ50は、ベースプレート貫通穴34に接着層60を介して接着されている。絶縁スリーブ50は、外部ツールと係合可能なツール係合部(雌ネジ部52)を有する。ツール係合部は、外部ツールに係合されると外部ツールの回転トルクを絶縁スリーブ50に伝達する。