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特許7382553レーザ加工装置及びそれを用いたレーザ加工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びそれを用いたレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20231110BHJP
   B23K 26/062 20140101ALI20231110BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20231110BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231110BHJP
【FI】
B23K26/064 K
B23K26/062
B23K26/067
B23K26/21 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021522717
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017620
(87)【国際公開番号】W WO2020241137
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019100183
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】王 静波
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正敏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲三
(72)【発明者】
【氏名】西原 学
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭61-016938(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0159299(US,A1)
【文献】特開昭59-042502(JP,A)
【文献】特開2002-273586(JP,A)
【文献】特開2003-001464(JP,A)
【文献】特開平8-150485(JP,A)
【文献】特許第2777138(JP,B2)
【文献】特開昭63-84786(JP,A)
【文献】特開昭58-159514(JP,A)
【文献】国際公開第2018/12379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/064
B23K 26/062
B23K 26/067
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ発振器と、
複数の光ファイバが所定の配置関係となるように束ねられてなるファイババンドルと、
前記レーザ発振器に設けられたビーム制御機構と、
前記複数の光ファイバのそれぞれの出射端に取付けられ、前記レーザ光をワークに向けて照射する複数のレーザ光出射ヘッドと、を少なくとも備え、
前記ビーム制御機構は、
前記レーザ光を受け取って所定の倍率で集光する集光レンズと、
前記集光レンズと前記ファイババンドルの入射端面との間を進行する前記レーザ光の光路上に設けられ、前記レーザ光の光路を変更する複数の光路変更機構と、
前記複数の光路変更機構の動作を制御するコントローラと、を少なくとも有し、
前記ビーム制御機構は、前記複数の光ファイバのうち選択された一の光ファイバに前記レーザ光を入射させ、前記一の光ファイバに取付けられた前記レーザ光出射ヘッドから前記レーザ光を出射させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記複数の光路変更機構のそれぞれは、前記複数の光ファイバのそれぞれに対応しており、
前記複数の前記光路変更機構のそれぞれは、
前記レーザ光を透過させるとともに、前記レーザ光の光軸と交差する傾動軸回りに傾動可能に設けられた平行平板状の光学部材と、
前記光学部材に連結されたアクチュエータと、を有し、
前記コントローラが前記複数の光路変更機構のうちの一の光路変更機構に含まれる一の光学部材を所定の位置に移動させるとともに、前記一の前記光路変更機構に含まれる一のアクチュエータを駆動して、前記一のアクチュエータに連結された前記一の光学部材を前記傾動軸回りに傾動させることで、前記一の光路変更機構に対応する一の光ファイバに前記レーザ光を入射させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
複数の前記光学部材は、前記集光レンズと前記ファイババンドルの入射端面との間を進行する前記レーザ光の光路上の前記所定の位置と光路外との間を移動可能に設けられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項2に記載のレーザ加工装置において、
複数の前記光学部材は、前記集光レンズと前記ファイババンドルの入射端面との間を進行する前記レーザ光の光路上の互いに異なる複数の位置にそれぞれ配置され、前記所定の位置は、前記複数の位置の一つであることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、
前記ビーム制御機構は、前記一の光ファイバの入射端面における前記レーザ光の入射位置を変化させることで、前記一の光ファイバに取付けられた前記レーザ光出射ヘッドから出射される前記レーザ光のパワー分布を制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記一の光ファイバは、コアと、前記コアの外周側に前記コアと同軸に設けられた第1クラッドと、前記第1クラッドの外周側に前記コアと同軸に設けられた第2クラッドと、を少なくとも有し、
前記ビーム制御機構は、前記コア及び前記第1クラッドの少なくとも一方に前記レーザ光を入射させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のレーザ加工装置において、
前記ビーム制御機構は、前記ワークの材質及び前記ワークにおけるレーザ加工対象部位の形状のうち少なくとも一方に応じて、前記一の光ファイバに取付けられた前記レーザ光出射ヘッドから出射される前記レーザ光のパワー分布を制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ加工装置において、
前記ビーム制御機構は、前記一の光ファイバに取付けられた前記レーザ光出射ヘッドから出射される前記レーザ光のパワー分布を前記ワークのレーザ加工中に切り替えるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ加工装置において、
前記ビーム制御機構は、前記一の光ファイバに取付けられた前記レーザ光出射ヘッドから出射される前記レーザ光のパワー分布を前記ワークのレーザ加工中に周期的に切り替えるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載のレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、
前記ワークに向けて第1のパワー分布を有する前記レーザ光を照射する第1照射ステップと、
引き続き、前記ワークに向けて前記第1のパワー分布とは異なる第2のパワー分布を有する前記レーザ光を照射する第2照射ステップと、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザ加工方法において、
前記第1照射ステップでは、前記ワークの表面に溶融池及びキーホールを形成し、
前記第2照射ステップでは、前記キーホールの開口を拡げるとともに、所望の溶け込み深さとなるように前記溶融池を成長させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項12】
請求項10に記載のレーザ加工方法において、
前記第1照射ステップでは、第1の厚さを有する前記ワークの第1の部分に向けて前記レーザ光を照射し、前記第2照射ステップでは、前記第1の厚さとは異なる第2の厚さを有する前記ワークの第2の部分に向けて前記レーザ光を照射することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載のレーザ加工方法において、
前記第2照射ステップでは、前記レーザ光のパワー分布を所定の周波数で周期的に切り替えることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザ加工方法において、
前記所定の周波数は、前記ワークに形成されたキーホールの固有振動周波数に略等しいことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置及びそれを用いたレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のレーザ光出射ヘッドを有するレーザ加工装置が提案されている。このようなレーザ加工装置は、1つのレーザ発振器に接続された複数の光ファイバと、複数の光ファイバのそれぞれに取り付けられたレーザ光出射ヘッドとを備える。また、このレーザ加工装置は、レーザ光が伝送される光ファイバを適宜切り替えて、レーザ光を、選択されたレーザ光出射ヘッドに伝送する。
【0003】
例えば、特許文献1は、レーザ光と光学的に結合可能な束状の複数の光ファイバにレーザ光を入射するレーザシステムを開示している。このレーザシステムは、レーザ光の光路上に配置されたリフレクタ又は集光レンズと、それらを動かすピエゾアクチュエータとを含む。ピエゾアクチュエータは、束状の複数の光ファイバにおけるレーザ光の入射位置を変化させることで、複数の光ファイバのうち、選択された光ファイバにレーザ光を入射させる。
【0004】
一方、ワークの材質や形状に応じて、レーザ光のビーム品質を変化させてレーザ加工を行う技術が提案されてきている。
【0005】
特許文献1では、光ファイバはマルチクラッドファイバからなる。レーザシステムは、レーザ光の入射位置を調整することでレーザ光のビームプロファイルを変化させている。
【0006】
また、特許文献2には、集光レンズの位置を移動させたり、レーザ光の光路上にくさび状の光学素子を挿入したりすることで、マルチクラッドファイバの入射端におけるレーザ光の入射位置を変化させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2018/159299号明細書
【文献】米国特許第8781269号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された構成では、比較的大型の光学部品であるリフレクタや集光レンズをアクチュエータで動かすため、その応答性に問題があり、レーザ光の光路を高速に変更し、複数の光ファイバのうち選択された光ファイバに速やかにレーザ光を入射させることが難しかった。
【0009】
また、特許文献2に開示されるように、集光レンズの位置を移動させてレーザ光の入射位置を変化させるのには、集光レンズを直線上にアクチュエータで動かす必要があるため、位置精度と応答性を両立させる上で問題があった。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のレーザ光出射ヘッドが設けられたレーザ加工装置において、レーザ光が入射されるレーザ光出射ヘッドの切替えを簡便かつ高速で行うことのできるレーザ加工装置及びそれを用いたレーザ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光を発生させるレーザ発振器と、複数の光ファイバが所定の配置関係となるように束ねられてなるファイババンドルと、前記レーザ発振器に設けられたビーム制御機構と、前記複数の光ファイバのそれぞれの出射端に取付けられ、前記レーザ光をワークに向けて照射する複数のレーザ光出射ヘッドと、を少なくとも備え、前記ビーム制御機構は、前記レーザ光を受け取って所定の倍率で集光する集光レンズと、前記集光レンズと前記ファイババンドルの入射端面との間を進行する前記レーザ光の光路上に設けられ、前記レーザ光の光路を変更する複数の光路変更機構と、前記複数の光路変更機構の動作を制御するコントローラと、を少なくとも有し、前記ビーム制御機構は、前記複数の光ファイバのうち選択された一の光ファイバに前記レーザ光を入射させ、前記一の光ファイバに取付けられた前記レーザ光出射ヘッドから前記レーザ光を出射させることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、レーザ光が出射されるレーザ光出射ヘッドの切り替えを簡便かつ高速に行うことができる。また、レーザ光出射ヘッドを切り替えるために要する工数や時間を低減でき、レーザ加工のコストを低減できる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工方法は、前記レーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、前記ワークに向けて第1のパワー分布を有する前記レーザ光を照射する第1照射ステップと、引き続き、前記ワークに向けて前記第1のパワー分布とは異なる第2のパワー分布を有する前記レーザ光を照射する第2照射ステップと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、溶接開始初期にワークに溶融池及びキーホールを確実に形成できるとともに、ワークの溶接品質を高められる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレーザ加工装置によれば、レーザ光が出射されるレーザ光出射ヘッドの切り替えを簡便かつ高速に行うことができる。本発明のレーザ加工方法によれば、ワークの溶接品質を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
図2】ビーム制御機構をX方向から見た模式図である。
図3A】ビーム制御機構の要部をY方向から見た模式図である。
図3B】ビーム制御機構の要部をZ方向から見た模式図である。
図4A】ファイババンドルの断面模式図である。
図4B】ファイババンドルの断面模式図である。
図5】第1光ファイバの断面構造及び屈折率分布を示す模式図である。
図6】別のファイババンドルの断面模式図である。
図7】さらなる別のファイババンドルの断面模式図である。
図8】ビーム制御機構をZ方向から見た模式図である。
図9】変形例1に係るビーム制御機構をZ方向から見た模式図である。
図10】変形例2に係るビーム制御機構をX方向から見た模式図である。
図11】第1光ファイバの断面構造及び屈折率分布を示す模式図である。
図12】第1光ファイバの入射端面におけるレーザ光の入射位置とコアの内部に伝送されるレーザ光のパワー比率との関係を示す図である。
図13】第1光ファイバの入射端面におけるレーザ光の入射位置と第1レーザ光出射ヘッドから出射されるレーザ光のビームプロファイルとの関係を示す図である。
図14】比較のためのワークの溶接箇所の断面模式図である。
図15】実施形態2に係るワークの溶接箇所の断面模式図である。
図16】実施形態2に係るワークの溶接シーケンスである。
図17】レーザ光のビームプロファイルの周期的変化を示す図である。
図18】変形例3に係るワークの溶接シーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0018】
(実施形態1)
[レーザ加工装置の構成]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置の構成の模式図を示し、レーザ加工装置1000は、レーザ発振器10とビーム制御機構20とコントローラ80とファイババンドル90と第1~第3レーザ光出射ヘッド121~123と第1~第3マニピュレータ131~133とを備えている。
【0019】
レーザ発振器10は、図示しない電源から電力の供給を受けてレーザ光LBを発生させるレーザ光源である。なお、レーザ発振器10は、単一のレーザ光源で構成されていてもよいし、複数のレーザモジュールで構成されていてもよい。後者の場合は、複数のレーザモジュールからそれぞれ出射されたレーザ光を結合してレーザ光LBとして出射する。
【0020】
ビーム制御機構20は、レーザ発振器10に設けられており、レーザ光LBをファイババンドル90のうちの選択された光ファイバに伝送する。ビーム制御機構20の構成及び動作については後で述べる。なお、ビーム制御機構20は、光ファイバの出射端から出射されるレーザ光LBのパワー分布を制御することも可能であるが、これについても後で述べる。
【0021】
ファイババンドル90は、第1~第3光ファイバ91~93が束ねられてなる光学部品である。第1光ファイバ91は、コア91aと、コア91aの外周側にコア91aと同軸に設けられた第1クラッド91bとを有している(図5参照)。第2及び第3光ファイバ92,93も同様に、コアと第1クラッド(いずれも図示せず)を有している。なお、図示しないが、第1クラッド91bの外周面には光ファイバを機械的に保護する皮膜または樹脂系の保護層が設けられている。また、第1~第3光ファイバ91~93は、束ねられた状態で樹脂等からなる保護部材110によって覆われ、互いの配置関係が固定されている(図4A,4B参照)。
【0022】
第1~第3レーザ光出射ヘッド121~123のそれぞれは、対応する光ファイバの出射端に取付けられており、光ファイバで伝送されたレーザ光LBをワーク201~203に向けて照射する。ワーク201~203がレーザ光LBによりレーザ加工される。なお、第1~第3レーザ光出射ヘッド121~123の内部には、それぞれ図示しない光学部品、例えば、コリメータレンズや集光レンズや保護ガラス等が配設されている。
【0023】
コントローラ80は、レーザ発振器10のレーザ発振を制御する。具体的には、レーザ発振器10に接続された図示しない電源に対して出力電流やオン・オフ時間等の制御信号を供給することにより、レーザ発振制御を行う。
【0024】
また、コントローラ80は、選択されたレーザ加工プログラムの内容に応じて、ビーム制御機構20に設けられた第1モータ71(図3A,3B参照)あるいは第2モータ72及び第3モータ73(図8参照)の駆動制御を行う。さらに、コントローラ80は、第1~第3マニピュレータ131~133の動作を制御する。なお、レーザ加工プログラムは、図示しない記憶部に保存されている。記憶部はコントローラ80の内部に設けられていてもよいし、コントローラ80の外部に設けられ、コントローラ80とデータのやり取りを可能に構成されていてもよい。なお、コントローラ80はビーム制御機構20の一部を構成している。
【0025】
第1~第3マニピュレータ131~133のそれぞれはコントローラ80に接続され、前述のレーザ加工プログラムに応じて所定の軌跡を描くように第1~第3レーザ光出射ヘッド121~123をそれぞれ移動させる。なお、第1~第3マニピュレータ131~133の動作を制御するコントローラを別に設けるようにしてもよい。
【0026】
[ビーム制御機構の構成]
図2は、ビーム制御機構をX方向から見た模式図を、図3Aは、ビーム制御機構の要部をY方向から見た模式図を、図3Bは、ビーム制御機構の要部をZ方向から見た模式図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、図2において、第1~第3光ファイバ91~93のうち第1光ファイバ91のみを示している。
【0027】
また、本願明細書において、ビーム制御機構20の内部において、集光レンズ30に入射するまでのレーザ光LBの進行方向をZ方向と、第1モータ71の出力軸71aの延びる方向をX方向と、X方向及びZ方向をそれぞれ略直交する方向をY方向とそれぞれ呼ぶことがある。Z方向は、レーザ光LBの光軸の延びる方向と同方向である。X方向はZ方向と略直交している。また、第1モータ71の出力軸71aの軸線をX軸(第1軸)と呼ぶことがある。
【0028】
なお、本願明細書において、「略直交」とは、各部品の組立公差を含んで直交しているという意味であり、厳密に直交していることまでを要求するものではない。同様に、「略同じ」または「略等しい」とは、各部品の製造公差や組立公差を含んで同じまたは等しいという意味であり、厳密に比較対象となる両者が同じか、または等しいことまでを要求するものではない。また、「略等しい」とは、推定値との比較において等しいことも意味するが、厳密に推定値と比較対象とが等しいことまでを要求するものではない。
【0029】
図2,3A,3Bに示すように、ビーム制御機構20は、集光レンズ30と第1光学部材51と第1モータ71とを有している。また、前述したように、ビーム制御機構20は、コントローラ80を有している。後で述べるように、第1モータ71と第1光学部材51とは、集光レンズ30で集光された後のレーザ光LBの光路を変更する第1光路変更機構41として機能する。
【0030】
レーザ光LBは、図示しない光学部品、例えば、コリメートレンズ等により平行光に変換された状態で集光レンズ30に入射される。集光レンズ30は所定の倍率でレーザ光LBを集光し、ファイババンドル90に向かわせる。
【0031】
第1光学部材51は、レーザ光LBに対して透明な材質からなる平行平板状の部材である。第1光学部材51は、例えば、石英からなり、レーザ光LBの波長に対して1よりも大きい屈折率を有する。第1光学部材51は、入射したレーザ光に対する反射率をできるだけ下げるために、両面反射防止コーティイングを施されたものを使用してよい。反射防止コーティングを施した場合の反射率は、1%よりはるかに小さいことが望ましい。第1光学部材51は、集光レンズ30とファイババンドル90との間を進行するレーザ光LBの光路上に設けられている。第1光学部材51は、集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間を進行するレーザ光LBの光路上の所定の位置(第1位置)と光路外との間を移動可能である。具体的には、集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間を進行するレーザ光LBの光路上に第1光学部材51が配置される場合、レーザ光LBの光軸と直交する方向、例えば、X方向やY方向から見て、第1光学部材51が第1位置に配置される。第1位置に配置された第1光学部材51に、集光レンズ30で集光された後のレーザ光LBが入射される。一方、第1光学部材51が光路外に移動された場合、レーザ光LBが第1光学部材51のいかなる部分にも入射されないよう配置される。
【0032】
第1モータ71は出力軸71aを有しており、ホルダ60aを介して第1光学部材51に連結されている。例えば、第1モータ71を駆動させて、その出力軸71aがX軸回りに回転することで、第1光学部材51はホルダ60aを中心としてYZ平面内に回転する。また、第1モータ71は一方向のみに回転するのではなく、逆方向にも回転可能に構成されている。例えば、第1モータ71は、一方向、つまり、図2に示す方向Aのみに回転することもできるし、正逆両方向、つまり、図2に示す方向A及び方向Bのどちらにも回転することもできる。また、回転周波数は可変であり、溶接加工を行う際には、数Hz~数kHz程度の範囲で変化させることができる。また、後述するように、ビーム制御機構20を動作させる場合、第1モータ71は一方向に連続して回転動作を行うのではなく、所定の角度範囲を回転する。言い換えると、第1光学部材51はホルダ60aを中心として所定の角度で傾動する。また、第1モータ71は、第1光学部材51を設定された角度範囲で高速に往復回転させることができる。
【0033】
なお、第1モータ71の出力軸71aの軸線は第1光学部材51が傾動される傾動軸に相当する。
【0034】
また、第1モータ71はコントローラ80に接続され、コントローラ80からの制御信号によって駆動される。なお、第1モータ71は、図示しない移動機構によって、前述の第1位置と光路外との間を移動するように構成されている。第1モータ71に連結された第1光学部材51も同様に、第1位置と光路外との間を移動する。
【0035】
なお、第1光学部材51のZ方向の厚さはそれぞれ1mmから数mm程度であるが、特にこれに限定されず、ファイババンドル90の端面におけるレーザ光LBの移動距離と第1モータ71の回転角度との関係で適宜別の値に変更しうる。当該厚さが数mm程度であると、また、集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間の、集光されたレーザ光LBが通過する狭い位置に設置するため、その必要サイズが小さく、第1モータ71によって高速、例えば、数kHzの回転周波数で往復回転させることが容易となる。
【0036】
[選択された光ファイバへのレーザ光入射制御について]
次に、第1~第3光ファイバ91~93のうち選択された光ファイバにレーザ光LBを入射させる手順について説明する。
【0037】
図4A,4Bは、ファイババンドルの断面模式図を、図5は、第1光ファイバの断面構造及び屈折率分布をそれぞれ示す。なお、図4Aは、ファイババンドルの断面の外形が円形である場合を、図4Bは、ファイババンドルの断面の外形が楕円形である場合をそれぞれ示している。図示しないが、第2光ファイバ及び第3光ファイバ92,93も図5に示すのと同様の構造を有している。なお、第1~3ファイバ91~93は、そのいずれの光軸もY軸に一致するように配置される。
【0038】
溶接加工を行う際に、例えば、第1光ファイバ91にレーザ光LBを入射させる場合、レーザ発振が行われていない状態で、まず、第1光学部材51を前述の第1位置に配置する。レーザ発振が行われ、レーザ光LBがレーザ共振器から出射されると、第1モータ71は、コントローラ80からの制御信号によって、図2に示す方向Aに所定の角度で回転され、第1モータ71の回転に応じて第1光学部材51はホルダ60aを中心としてYZ平面内を所定の角度で傾動する。この角度に応じて、第1光学部材51の光入射面とレーザ光LBの光軸との角度が変化し、第1光学部材51の内部でレーザ光LBの光路が変更される。光軸が変更されたレーザ光LBが第1光ファイバ91の入射端面に入射される。また、この場合、レーザ光LBが第1光ファイバ91のコア91aに入射されるように第1光学部材51の傾動角度が調整される。コア91aの屈折率は第1クラッド91bの屈折率よりも高く、入射されたレーザ光LBはコア91a内に閉じ込められて第1光ファイバ91内を伝搬する。
【0039】
同様に、第2光ファイバ92にレーザ光LBを入射させる場合は、第1モータ71によって第1光学部材51を別の角度で回転させる。そうすることによってレーザ光LBがバンドルファイバ90の入射端面においてY方向に所定の距離移動し、第2光ファイバ92のコアに入射される。また、第3光ファイバ93にレーザ光LBを入射させる場合は、第1モータ71によって第1光学部材51を更に別の角度で回転させる。そうすることによってレーザ光LBがバンドルファイバ90の入射端面においてY方向に所定の距離移動し、第3光ファイバ93のコアに入射される。
【0040】
このように、第1モータ71を駆動してレーザ光LBの光路上に配置された第1光学部材51を異なる角度で傾動させることで、ファイババンドル90に含まれる第1~第3光ファイバ91~93のうち、レーザ光LBを入射させる光ファイバを選択することができる。また、このことにより、レーザ光LBが出射されるレーザ光出射ヘッドを選択することができる。
【0041】
なお、レーザ光LBが入射される光ファイバの選択や、レーザ光LB入射の切り替えタイミング等は、レーザ加工プログラムに基づいてコントローラ80からの制御信号に従って行われる。溶接を終了すると、第1光学部材51を光路外に移動してよい。言うまでもなく、そのままでもよい。
【0042】
以上の説明では、レーザ光LBを第1~3光ファイバ91~93へ順番に入れる場合を説明したが、これは便宜上に行ったものであり、この順番でなくてもよい。また、第1光学部材51を光路外に移動した状態で、ファイババンドル90の中心位置にある第2ファイバ92のコアにレーザ光LBが入るようにファイババンドル90の位置を予め決めると、第2ファイバ92にのみレーザ光LBを入れる場合、第1光学部材51を光路外に移動した状態のままでも可能である。
【0043】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工装置1000は、レーザ光LBを発生させるレーザ発振器10と、第1~第3光ファイバ91~93が所定の配置関係となるように束ねられてなるファイババンドル90と、レーザ発振器10に設けられたビーム制御機構20と、第1~第3光ファイバのそれぞれの出射端に取付けられ、レーザ光LBをワーク201~203に向けてそれぞれ照射する第1~第3レーザ光出射ヘッド121~123と、を少なくとも備えている。
【0044】
ビーム制御機構20は、レーザ光LBを受け取って所定の倍率で集光する集光レンズ30と、集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間を進行するレーザ光LBの光路上に設けられ、レーザ光LBの光路を変更する第1光路変更機構41と、第1光路変更機構41の動作を制御するコントローラ80と、を少なくとも有している。
【0045】
ビーム制御機構20は、第1~第3光ファイバ91~93のうち選択された光ファイバ、例えば、第1光ファイバにレーザ光LBを入射させ、第1光ファイバ91に取付けられた第1レーザ光出射ヘッド121からレーザ光LBを出射させる。
【0046】
図1に示したようなレーザ加工装置1000を用いて、レーザ光LBが出射されるレーザ光出射ヘッドを適宜切り替えることで、工場等で大量のワークをレーザ加工することが多く行われる。この場合、複数のレーザ光出射ヘッドに接続されるレーザ発振器10を共用することで、レーザ加工装置1000の小型化及び小面積化が図れる。
【0047】
このようなレーザ加工装置1000において、前述したビーム制御機構20をレーザ発振器10に設けることで、レーザ光LBが出射されるレーザ光出射ヘッドの切り替えを簡便かつ高速に行うことができる。また、このことにより、レーザ光出射ヘッドを切り替えるために要する工数や時間を低減でき、レーザ加工のコストを低減できる。
【0048】
第1光学部材51は、集光レンズ30と第1~第3光ファイバ91~93の入射端面との間を進行するレーザ光LBの光路上の所定の位置(第1位置)と光路外との間を移動可能に設けられている。
【0049】
このように、集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間のレーザ光LBの光路上に第1光路変更機構41を配置することで、レーザ光LBの光路を容易に変更することができる。例えば、特許文献2に示されるように、光学部材を集光レンズ30の手前に配置しても、集光レンズ30を通過した後のレーザ光LBは焦点位置に結像されてしまうため、その光路を変更することはできない。
【0050】
一方、本実施形態によれば、前述の第1位置に平行平板状の第1光学部材51を配置させ、第1モータ71により第1光学部材51を傾動させることで、レーザ光LBが出射される光ファイバ、ひいてはレーザ光出射ヘッドの切り替えを簡便かつ高速に行うことができる。特に第1光学部材51の厚さが1mmから数mm程度であると、また、集光レンズ30とファイババンドル90との間の、集光されたレーザ光LBが通過する狭い位置に設置するため、その必要サイズが小さく、第1モータ71によって高速に傾動させることが容易となる。また所定の角度範囲で往復回転させることが容易となる。このことにより、レーザ光LBが出射されるレーザ光出射ヘッドの切り替えを高速に行うことができる。
【0051】
なお、集光レンズ30に入射される前に、レーザ光LBは平行光に変換されているのが好ましい。
【0052】
このようにすることで、集光レンズ30から出射されるレーザ光LBの光路及び光軸が一定となるため、第1光路変更機構41によってレーザ光LBの光路を容易に変更することができる。
【0053】
本実施形態では、ファイババンドル90に3本の光ファイバ91~93が束ねられている構成を示しているが、特にこれに限定されない。光ファイバの数を増やす場合、光ファイバ93または光ファイバ91に隣接してY軸方向に設けてよい。
【0054】
図6は、別のファイババンドルの断面模式図を、図7は、さらなる別のファイババンドルの断面模式図をそれぞれ示す。
【0055】
本実施形態のレーザ加工装置1000によれば、光学部材及びこれに連結されたモータの個数をファイババンドル90に含まれる光ファイバの本数に応じて増やすことで、図6図7に示す構成のファイババンドル90において、それぞれに含まれる光ファイバ91~103のいずれかに対してレーザ発振器10で生成されたレーザ光LBを入射させることができる。このことにより、1台のレーザ発振器10に接続されるレーザ光出射ヘッドの個数を増加させることができ、レーザ加工装置1000のさらなる小型化及び小面積化が図れる。また、レーザ光出射ヘッドを切り替えるために要する工数や時間、ひいてはレーザ加工のコストをさらに低減できる。
【0056】
なお、光路変更機構によって、レーザ光LBが入射される光ファイバの切替えを簡便に行うためには、図6,7に示すように、第1光ファイバ91を中心に配置し、それ以外の光ファイバを中心から同心円周上に配置するのが好ましい。また、この場合、同心円周上で互いに隣り合う光ファイバの中心と第1光ファイバ91の中心とがなす角度がそれぞれ略同じであることが好ましい。図7に示すように、光ファイバが配置される同心円は複数あってもよい。また、この場合、第1光ファイバ91を挟んで対向する位置に光ファイバをそれぞれ配置するのが好ましい。図6,7に示す通り、光ファイバの数を増やす場合、Y軸方向以外に、Y軸方向の時計回り方向または反時計回り方向において60度をなすX1またはX2方向に設けてよい。この時のレーザ光LBの制御については後述する。
【0057】
このようにすることで、第1光ファイバ91を中心として各光ファイバを対称な位置にそれぞれ配置できるため、光路変更機構の動作を単純化でき、レーザ光LBが入射される光ファイバの切替えを簡便に行うことができる。
【0058】
<変形例1>
図8~9は、本変形例に係るビーム制御機構をZ方向から見た模式図を示す。なお、図8~9において、実施形態1と同様の箇所は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
本変形例に係る構成では、図2図3に示した構成例に対して、第1光路変更機構41以外に第2~第3光路変更機構42~43が追加される。
【0060】
第1光路変更機構41の第1モータ71の出力軸71aの延びる方向をX方向と一致させるが、第2~3光路変更機構42~43の第2~第3モータ72~73の出力軸72a~73aの延びる方向は、XY平面においてX方向の時計回り方向または反時計回り方向と60度をなすX1軸とX2軸に一致させる。なお、第1光学部材51と同様に、第2~第3光学部材は、集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間を進行するレーザ光LBの光路上の同じ位置(第1位置)と光路外との間を移動可能に設けられている。図8は、第1光学部材51がレーザ光LBの光路上にあり、第2~第3光学部材52~53が光路外にあった時の模式図である。一方、図9は、第1~第3光学部材51~53がすべてレーザ光LBの光路上にあった時の模式図であるが、実際には、第1~第3光学部材51~53がすべてレーザ光LBの光路上にあることがない。コントローラ80は、第1~第3光学部材51~53のいずれか一つを選択し、選択された一つをレーザ光LBの光路上に配置する。コントローラ80は、選択されない二つを光路外に配置する。
【0061】
本変形例の動作について説明する。第1光路変更機構41の基本動作は、実施形態1に示すのと同様なので、その詳細説明を省略する。また、第2~第3光路変更機構42~43の動作も第1光路変更機構41と同様である。つまり、第2モータ72が駆動されると、第2光学部材52は出力軸72aの回りに回転し、第2光学部材52を通過する光の光路を変更させる。第3モータ73が駆動されると、第3光学部材53は出力軸73aの回りに回転し、第3光学部材53を通過する光の光路を変更させる。
【0062】
溶接加工を行う際に、Y軸上にある光ファイバにレーザ光LBを入射する場合、レーザ発振が行われていない状態で、まず、第1光学部材51を前述の第1位置に配置し、Y軸上にある光ファイバにレーザ光LBが入射させるよう第1モータ71を制御すると共に、レーザ共振器を発振させて溶接加工を行う。溶接を終了すると、レーザ発振を止め、第1光学部材51を光路外に移動させる。また、X1軸にある光ファイバにレーザ光LBを入射して溶接を行う場合、第3光学部材53を前述の第1位置に配置し、X1軸上にある光ファイバにレーザ光LBが入射させるよう第3モータ73を制御してよい。なお、X2軸にある光ファイバにレーザ光LBを入射して溶接を行う場合、第2光学部材52を前述の第1位置に配置し、X2軸上にある光ファイバにレーザ光LBが入射させるよう第2モータ72を制御してよい。
【0063】
<変形例2>
変形例1では、第1~第3光学部材51~53を集光レンズ30とファイババンドル90の入射端面との間を進行するレーザ光LBの光路上の同じ位置(第1位置)と設けていたが、異なる位置に設けてもよい。その例について、図10をもって説明する。
【0064】
図10は、変形例2に係るビーム制御機構をX方向から見た模式図を示す。実施形態1または変形例1と同様の箇所は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
本変形例に係る構成は、第1~第3光学部材51~53がそれぞれレーザ光LBの光路上の互いに異なる位置に配置されている点で変形例1に示す構成と異なる。具体的には、第1光学部材51がレーザ光LBの光路上に配置される場合は、実施形態1と同様の位置に配置され、第2光学部材52は第1位置よりも集光レンズ30に近い位置に配置され、第3光学部材53は第2光学部材52よりも集光レンズ30に近い位置に配置される。また、これに応じて、第1~第3モータ71~73もレーザ光LBの光軸に沿って所定の間隔をあけた位置にそれぞれ配置される。
【0066】
ビーム制御機構20をこのように構成してもよい。変形例1に示す構成では、例えば、第1光学部材51を完全にレーザ光LBの光路外へ移動させてから、第2光学材52または第3光学材53をレーザ光LBの第1位置に移動させることができる。一方、変形例2では、例えば、第1光学部材51をレーザ光LBの光路外へ移動させながら、第2光学材52または第3光学材53をレーザ光LBの所定位置に移動させることができる。そのため、別の光ファイバへレーザ光LBを照射する前の切り替え時間を短くすることができる。
【0067】
(実施形態2)
図11は、本実施形態に係る第1光ファイバの断面構造及び屈折率分布を示す。
【0068】
本実施形態では、ファイババンドル90に含まれる光ファイバのそれぞれが、いわゆるマルチクラッドファイバである点で実施形態1と異なる。
【0069】
例えば、図11に示すように、第1光ファイバ91は、コア91aと、コア91aの外周側にコア91aと同軸に設けられた第1クラッド91bと、第1クラッド91bの外周側にコア91aと同軸に設けられた第2クラッド91cとを有する。コア91aと第1クラッド91bと第2クラッド91cとはその主成分が石英からなり、図11に示すように、コア91aの屈折率が最も高く、第1クラッド91b、第2クラッド91cの順に屈折率が低くなる。第1クラッド91bと第2クラッド91cとの屈折率は、共に屈折率を下げることのできる、異なった種類または濃度の物質をドーピングすることによって調整されてもよい。また、コア91aの屈折率は、屈折率を上げることのできる、異なった種類または濃度の物質をドーピングすることによって調整されてもよい。このような屈折率分布を持った第1光ファイバ91では、所定の角度でコア91aに入射されたレーザ光LBは第1クラッド91bに入ることなく、コア91aの中を伝搬することができるが、所定の角度で第1クラッド91bに入射されたレーザ光LBは第2クラッド91cに入ることなく、第1クラッド91bの中を伝搬することができる。このようなレーザ光LBの伝搬方法を実現するための光ファイバの構造として、図10に示す構造はあくまでも一例であり、必ずしもコア91aと第1クラッド91bと第2クラッド91cとで異なった屈折率を持たせる必要はない。例えば、コア91aと第1クラッド91bと第2クラッド91cとを同じ屈折率N1にすると共に、コア91aと第1クラッド91bとの間に、また第1クラッド91bと第2クラッド91cとの間に、屈折率N2(N2<N1)を有する薄い層を設けてもよい。そうすることによって、所定の角度でコア91aに入射されたレーザ光LBは第1クラッド91bに入ることなく、コア91aの中を伝搬することができるが、所定の角度で第1クラッド91bに入射されたレーザ光LBは第2クラッド91cに入ることなく、第1クラッド91bの中を伝搬することができる。屈折率N2を有する層は、その主成分が石英であるが、屈折率を下げることのできる物質をドーピングすればよい。第1光ファイバ91に入射されたレーザ光LBは、コア91a及び/または第1クラッド91bを伝搬し、第1光ファイバ91の出射端に到達する。また、図示しないが、第2クラッド91cの外周面には第1光ファイバ91を機械的に保護する皮膜または樹脂系の保護層が設けられている。
【0070】
このような第1光ファイバ91を用いるとともにレーザ光LBの光路上に配置される第1光学部材51の傾動角度を精密に調整することで、第1光ファイバ91の入射端面におけるレーザ光LBの入射位置を変化させることができる。このことについてさらに説明する。
【0071】
図12は、第1光ファイバの入射端面におけるレーザ光の入射位置とコアの内部に伝送されるレーザ光のパワー比率との関係を、図13は、第1光ファイバの入射端面におけるレーザ光の入射位置と第1レーザ光出射ヘッドから出射されるレーザ光のビームプロファイルとの関係をそれぞれ示す。なお、図13に示すビームプロファイルは、第1レーザ光出射ヘッド121から出射され、焦点位置に結像されたレーザ光LBのパワー分布に相当する。また、図13に示すビームプロファイルは、第1光ファイバ91の出射端から出射されたレーザ光LBのパワー分布にも相当する。
【0072】
レーザ光LBの入射位置が図12に示すIの場合、レーザ光LBはコア91a内に100%入射され、レーザ光LBのビームプロファイルは、図13に示すように半値幅の狭い単峰状となる(レーザ光LBの入射位置:I)。
【0073】
レーザ光LBの入射位置がコア91aから第1クラッド91bに近づいて、図12に示すIIの位置に来るまでは同様に、レーザ光LBの100%がコア91aに入射され、ビームプロファイルは単峰状に維持される。
【0074】
一方、レーザ光LBの入射位置が図12に示すIIとIIIとの間の場合、つまり、コア91aと第1クラッド91bとの境界部分付近までにレーザ光LBが入射される場合、レーザ光LBのうち数%から50%以下までが第1クラッド91bに入射される。このため、図13に示すように、ビームプロファイルは単峰状の部分とその両側に形成された半値幅の広いテラス状の部分とを含むように変化する(レーザ光LBの入射位置:~III)。前者がコア91a内に入射されるレーザ光LBに対応し、後者が第1クラッド91b内に伝送されるレーザ光LBに対応する。また、コア91a内に伝送されるレーザ光LBのパワー比率が低下するのに伴い、単峰状の部分のピーク値は低下する。
【0075】
レーザ光LBの入射位置を図12に示すIIIの位置になると、コア91a内に入射されるレーザ光LBのパワー比率が第1クラッド91b内に入射されるレーザ光LBのパワー比率と等しくなる。コア91aの断面積が第1クラッド91bの断面積と等しい場合には、ビームプロファイルのうち単峰状の部分のピーク値とテラス状の部分のピーク値が一致するようになり、図13に示すように、レーザ光LB全体のビームプロファイルは単峰状となるものの、コア91a内にのみレーザ光LBが入射される場合に比べて、そのピーク値は低く、かつ半値幅は大きくなる(レーザ光LBの入射位置:III)。一方、コア91aの断面積が第1クラッド91bの断面積より小さい場合には、ビームプロファイルは、図13に示すように、単峰状の部分とその両側に形成される半値幅の広いテラス状の部分とを含むような形となる(レーザ光LBの入射位置:~III)。また、コア91aの断面積が第1クラッド91bの断面積より大きい場合には、ビームプロファイルは、図13に示すように、双峰状となる(レーザ光LBの入射位置:~IV)。
【0076】
レーザ光LBの入射位置がコア91aから離れていくと(図12に示すIIIとIVとの間)、コア91a内に入射されるレーザ光LBのパワーが減少し、第1クラッド91b内に入射されるレーザ光LBのパワー比率は高くなる。その結果、図13に示すように、ビームプロファイルのうち、コア91a内に伝送される成分に対応する部分のピーク値が低下し、第1クラッド91b内に伝送される成分に対応する部分のピーク値が高くなり、ビームプロファイルは双峰状となる(レーザ光LBの入射位置:~IV)。なお、双峰状のビームプロファイルにおけるピーク値は、レーザ光LBの入射位置が図12に示すIの場合に得られる単峰状のビームプロファイルのピーク値よりも低い。図示していないが、レーザの入射位置をコア91aから更に離れていくと(図12に示すIVとVとの間)、コア91a内に入射されるレーザ光LBのパワーが0%となり、レーザ光LBが100%第1クラッド91b内に入射される。
【0077】
レーザ光LBの入射位置を完全に第2クラッド91c内にすると(図12に示すV~VIの位置)、図13に示すように、ビームプロファイルのうち、コア91a内に伝送される成分に対応する部分のピーク値が0%まで低下し、第1クラッド91b内に伝送される成分に対応する部分のピーク値が最大となり、ビームプロファイルはピーク値の最も高い双峰状となる(レーザ光LBの入射位置:V~VIの場合)。なお、双峰状のビームプロファイルにおけるピーク値は、レーザ光LBの入射位置が図13に示すIの場合に得られる単峰状のビームプロファイルのピーク値よりも低い。
【0078】
このように、レーザ光LBの入射位置を変化させることで、第1レーザ光出射ヘッド121から出射されるレーザ光LBのビームプロファイル、つまり、パワー分布を変化させることができる。つまり、ビーム制御機構20は、第1レーザ光出射ヘッド121から出射されるレーザ光LBのパワー分布をワーク201のレーザ加工中に切り替えるように構成されている。
【0079】
また、第1レーザ光出射ヘッド121から出射されるレーザ光LBのビームプロファイルを変化させることで、ワーク201の加工形状、例えば、溶接形状を良好なものとすることができる。このことについてさらに説明する。
【0080】
図14は、比較のためのワークの溶接箇所の断面模式図を、図15は、本実施形態に係るワークの溶接箇所の断面模式図をそれぞれ示す。
【0081】
一般に、金属からなるワークをレーザ溶接する際、レーザ光が照射された部分が加熱されて溶け込みを生じ、溶融池が形成される。また、レーザ光が照射された部分では表面でワークを構成する材料の蒸発が起こり、その反力でワークの内部にキーホールが形成される。
【0082】
図14に示す例では、レーザ光LBは第1光ファイバ91のコア91a内にのみ伝送されて第1レーザ光出射ヘッド121からワーク201に向けて照射されており、溶接箇所におけるレーザ光LBのパワー密度は高く、かつ照射されるレーザ光LBのスポット径は小さくなっている。
【0083】
このような場合、ワーク201の溶け込みが形成しやすくなりキーホール220が深くなる一方、キーホール220の開口221があまり拡がらず、図14に示すように、キーホール220の内部でくびれ部222を生じてしまうことがある。また、くびれ部222が閉じてしまうことによりワーク201の内部に気泡223が残存してしまう。さらに、閉じたくびれ部222が再度キーホール220になる際に、キーホール220の内部から表面に向かって溶融金属が急激に噴出すると、ワーク201の表面にスパッタ212が付着したり、溶融池210の表面が波立ったりする。溶融池210はレーザ光LBの通過後に急速に冷却されて固化するため、このような波が生じると、レーザ溶接の進行方向に沿って、溶融池210の後方でワーク201の表面に凹凸211(後方振動部211ともいう)が生じてしまう。
【0084】
また、この波は溶融池210と凝固部分の境界で反射して跳ね返ってくる。この反射波がキーホール220まで到達すると、キーホール220を埋めるように流れ込んでしまう。流れ込んだ溶融金属はレーザ光LBに急速加熱されて、金属蒸気を急に発生させるために、キーホール220の円柱状形状が乱れる。以上説明した、キーホール220の形状乱れや気泡223の発生やワーク201の表面に生じるスパッタ212や凹凸211は,溶接品質を低下させる要因となっていた。
【0085】
一方、本実施形態によれば、ビーム制御機構20を用いて第1レーザ光出射ヘッド121からワーク201に向けて照射されるレーザ光LBのパワー分布を変化させることができる。このため、例えば、第1光学部材51の傾動角度を調整して、第1光ファイバ91のコア91a内に伝送されるレーザ光LBと第1クラッド91b内に伝送されるレーザ光LBとのパワー比率を変更することで、図15に示すようなビームプロファイルのレーザ光LBをワーク201に向けて照射することができる。
【0086】
このような場合、図14に示す場合よりも溶け込み深さDは若干浅くなるものの、コア91aから出射されたレーザ光LBにより所望の溶け込み深さDが得られる。一方、第1クラッド91bから出射されたレーザ光LBによりキーホール220の開口221を図14に示す場合に比べて拡げることができる。さらに、キーホール220の内壁面にもレーザ光LBが照射され、かつ多重反射によりレーザ光LBがキーホール220の内部に到達する過程でレーザ光LBがワーク201に吸収される。このことにより、くびれ部222が形成されるのを抑制でき、ひいてはキーホール220の内壁面同士がくっついてワーク201の内部に気泡223が発生するのを抑制できる。また、キーホール220の内部から表面に向かって急激に溶融金属が噴出するのを抑えられ、溶融池210の後方でワーク201の表面に形成される凹凸211を小さくできる。また、キーホール220の形状乱れを抑制できる。以上のことから、レーザ溶接における溶接品質を高めることができる。
【0087】
また、第1レーザ光出射ヘッド121から出射されるレーザ光LBのパワー分布をレーザ溶接中に切り替えることによって、溶接品質を高めることができる。
【0088】
図16は、ワークの溶接シーケンスを示し、溶接開始直後では、ワーク201に溶融池210は形成されていない。溶接開始直後では、所望の溶け込み深さDを得ることが望まれる。そのために、コントローラ80は、第1モータ71を駆動して、コア91aのみにレーザ光LBを入射させる。これにより、ワーク201に照射されるレーザ光LBのスポット径を小さくし、溶接箇所におけるレーザ光LBのパワー密度を高めている(第1照射ステップ)。一方、溶融池210及びキーホール220が形成された後には、前述したようなくびれ部222等の形成を抑制することが望まれる。そのために、コントローラ80は、第1モータ71を駆動して、コア91a及び第1クラッド91bにレーザ光LBを入射させる。これにより、キーホール220の開口221が拡がるようにし、かつ所望の溶け込み深さDが得られるようにする(第2照射ステップ)。また、第2レーザ光照射ヘッド122及び第3レーザ光照射ヘッド123を用いる場合にも、同様のシーケンスでワーク202,203がそれぞれレーザ溶接される。なお、図16において、第2~第3レーザ光照射ヘッド122~123へのレーザ光LBの切り替えの表記を省略している。
【0089】
このようにすることで、レーザ溶接において、ワーク201~203に確実に溶融池210及びキーホール220を形成できるとともに、ワーク201~203の内部の気泡223や表面の凹凸211等の発生を抑制して、溶接品質を高めることができる。
【0090】
また、これらに限られず、ワーク201~203の材質及び/またはワーク201~203におけるレーザ加工対象部位の形状に応じて、ビーム制御機構20を動作させて、複数のレーザ光出射ヘッドのいずれかから出射されるレーザ光LBのパワー分布を制御することで、種々の材質や形状を有するワーク201~203をレーザ加工することができ、かつその加工品質を高められる。
【0091】
(実施形態3)
図17は、レーザ光のビームプロファイルの周期的変化を示す。なお、本実施形態における第1光ファイバ91は、実施形態2に示したのと同様にマルチクラッドファイバである。
【0092】
本実施形態では、第1モータ71を所定の角度範囲内で往復回転させることで、これに応じて第1光学部材51も所定の角度範囲内で往復回転する。つまり、ビーム制御機構20は、第1レーザ光出射ヘッド121から出射されるレーザ光LBのパワー分布をワーク201のレーザ加工中に周期的に切り替えるように構成されている。なお、本実施形態において、第1光学部材51の回転周波数は数Hz~数kHz程度に設定されている。また、図示しないが、第2モータ72及び第3モータ73も同様に、角度範囲内で往復回転可能であり、これに応じて、第2光学部材52及び第3光学部材53もそれぞれ、所定の角度範囲内で往復回転する。
【0093】
この場合、図17に示すように、第1レーザ光出射ヘッド121の出射端から出射されるレーザ光LBのパワー分布は周期的に変化する。具体的には、単峰状のピークを有するビームプロファイルから、双峰状のピークを有するビームプロファイルに連続的に変化し、かつその変化は周期的に繰り返される。また、第1光学部材51の回転周波数が、レーザ光LBのパワー分布が変化する周波数に相当する。
【0094】
このようにすることで、例えば、ワーク201に溶融池210とキーホール220とを確実に形成しつつ、キーホール220が狭まりすぎるのを防止して、気泡223やスパッタ212の発生が抑制されたレーザ溶接を行うことができる。
【0095】
また、レーザ光LBのパワー分布を所定の周波数、この場合は、ワーク201に形成されたキーホール220の固有振動周波数に略等しい周波数で周期的に切り替えることにより、前述した溶融池210の後方に形成される凹凸211を小さくし、キーホール220の形状乱れを効果的に抑制することができる。このことについてさらに説明する。
【0096】
レーザ溶接の進行方向に沿って溶融池210が順次形成されていく過程で、キーホール220もまた、レーザ溶接の進行方向に沿って移動していく。このとき、キーホール220は、固有の振動周波数(以下、単に固有振動周波数という)で直径方向及び/または深さ方向に直径方向及び/または深さ方向に伸長及び収縮を繰り返して振動している。固有振動周波数は、溶融池210のサイズや溶融したワークの構成金属の溶融時の粘性等によって定まる値であり、多くの場合、数Hzから数kHz程度と推定されている。
【0097】
この固有振動周波数に略等しい周波数でワーク201に照射されるレーザ光LBのパワー分布を周期的に変化させることで、キーホール220の形状が安定し、ワーク201の内部でのくびれ部222の発生、ひいては気泡223の発生を抑制することができる。また、溶融池210の後方に形成される凹凸211を小さくすることができる。
【0098】
以上に示した、レーザ光LBのパワー分布を周期的、かつ連続的に変化させる方法は、特に厚板溶接に有効である。これは、板厚が厚くなると必要な溶け込みが深くなり、それを実現するためにキーホール220も深くなるので、キーホール220の不安定性(例えば、くびれ)に起因する溶接欠陥が発生する確率が高くなるためである。
【0099】
<変形例3>
ワークにおけるレーザ溶接対象部位の形状がレーザ溶接の進行方向に沿って変化している場合、溶接対象部位の形状に応じて、ワークに照射されるレーザ光LBのパワー分布を適切に切り替えることで、良好なレーザ溶接を行うことができる。図18を用いてさらに説明する。なお、本変形例における第1光ファイバ91は、実施形態2に示したのと同様にマルチクラッドファイバである。
【0100】
図18は、本変形例に係るワークの溶接シーケンスを示し、ワーク201は、薄板部とそれに連続した厚板部とを有する形状となっている。厚板部の厚さは薄板部よりも厚くなっている。
【0101】
まず、薄板部をレーザ溶接するにあたって、図16に示すシーケンスでワーク201にレーザ光LBを照射する。所定以下の厚さの薄板部では、溶け込み深さDをあまり深くしなくてよい。このため、溶接開始時に単峰状のピークを有するビームプロファイルでレーザ光LBをワーク201に照射し、溶融池210とキーホール220を形成した後は、レーザ光LBのパワー分布がブロードとなるように変化させて、キーホール220にくびれ部222が形成されるのを抑制する。
【0102】
次に、薄板部の溶接が終了して厚板部の溶接が開始される時点で、図17に示すシーケンスでワーク201にレーザ光LBを照射する。つまり、固有振動周波数でレーザ光LBのパワー分布を周期的に変化させつつ、ワーク201に向けてレーザ光LBを照射する。
【0103】
このようにすることで、溶け込み深さDを深くしつつ、前述したように、厚板溶接にて発生しがちな、ワーク201の内部の気泡223やワーク201の表面の凹凸211やスパッタ212などの溶接欠陥を抑制して溶接品質を高めることができる。
【0104】
なお、ワーク201の材質や薄板部の厚さによっては、レーザ光LBのパワー分布が最初からブロードとなるように固定した状態で薄板部の溶接を行うようにしてもよい。
【0105】
(その他の実施形態)
実施形態1において、第1光学部材51がレーザ光LBの光路内と光路外とを移動可能な構成としたが、特にこれに限られず、レーザ光LBの光路内に固定配置されていてもよい。ただし、その場合にも、第1光学部材51は出力軸71aの軸線回りに回転可能である。なお、この場合、第2光学部材52または第3光学部材53をレーザ光LBの光路外にする。同様に、第2光学部材52や第3光学部材53がレーザ光LBの光路内に固定されていてもよい。ただし、その場合にも、第2光学部材52及び第3光学部材53は出力軸72aの軸線及び出力軸73aの軸線回りにそれぞれ回転可能である。なお、この場合、残りの二つの光学部材をレーザ光LBの光路外にする。
【0106】
変形例3を含む実施形態2,3において、図11に示す構造のマルチクラッドファイバを例に取って説明したが、他の構造であってもよい。例えば、第2クラッド91cの外周側に1または複数のクラッドを設けてもよい。この場合、第2クラッド91cの外側に設けたクラッドは、その屈折率を順次に低めにすればよい。なお、レーザ光LBの入射できるクラッドは、最も外側のクラッドを除いたクラッドまでとしてよい。言うまでもなく、最も外側のクラッドの外にはファイバを機械的に保護する皮膜または樹脂系の保護層が設けられている。
【0107】
また、ワークの材質や形状、あるいは加工内容によって、レーザ光LBの出力や波長は適宜変更されうる。
【0108】
また、第1~第3光学部材51~53を傾動させるために、第1~第3モータ71~73以外のアクチュエータ、例えば、圧電式アクチュエータ等を用いてもよい。
【0109】
なお、本願明細書では、溶融池210にキーホール220が形成される、いわゆるキーホール型レーザ溶接を例に取って説明したが、ワークの材質や形状、また、要求される溶け込み深さDや溶接ビードの幅等によってレーザ溶接のタイプは適宜選択しうる。また、レーザ溶接に限らず、レーザ切断に対して、前述したレーザ加工装置1000及び溶接シーケンスが適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のレーザ加工装置は、レーザ光が出射されるレーザ光出射ヘッドの切り替えを簡便かに行うことができ、大量のワークを加工可能なレーザ加工装置として有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 レーザ発振器
20 ビーム制御機構
30 集光レンズ
41~43 第1~第3光路変更機構
51~53 第1~第3光学部材
60a、60b、60c ホルダ
71~73 第1~第3モータ
80 コントローラ
90 ファイババンドル
91~93 第1~第3光ファイバ
91a コア
91b 第1クラッド
91c 第2クラッド
121~123 第1~第3レーザ光出射ヘッド
131~133 第1~第3マニピュレータ
201~203 ワーク
210 溶融池
220 キーホール
221 開口
1000 レーザ加工装置
LB レーザ光
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
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図9
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図15
図16
図17
図18