(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-09
(45)【発行日】2023-11-17
(54)【発明の名称】噴霧剤、噴霧装置、噴霧剤の使用方法、及び噴霧剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20231110BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20231110BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231110BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231110BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20231110BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K9/12
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K47/38
A61K8/92
A61K47/44
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2019157840
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 知子
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】谷池 優子
(72)【発明者】
【氏名】石原 綾
(72)【発明者】
【氏名】追風 寛歳
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏之
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025704(JP,A)
【文献】特開2010-077304(JP,A)
【文献】特開2009-191046(JP,A)
【文献】国際公開第2004/061043(WO,A1)
【文献】特開2018-196862(JP,A)
【文献】特開2019-025144(JP,A)
【文献】特開2009-028432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00
A61K47/00
A45D20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生セルロースを含む多孔質構造を有し、前記多孔質構造に接触している生体に有効な有効成分を含む多孔質材料と、
前記多孔質材料を分散させる分散媒と、を含有し、
前記多孔質材料は、
1μm以上50μm以下の体積平均径を有し、
前記多孔質構造において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が
1cm
3/g以上
10cm
3
/g以下であり、かつ、前記多孔質構造における前記細孔の比表面積が
50m
2/g以上
1000m
2
/g以下であり、
前記多孔質材料における前記有効成分の含有量は、重量基準で30%以上
99.9%以下であ
り、
前記再生セルロースは、100,000以上1,000,000以上の重量平均分子量を有する、
噴霧剤。
【請求項2】
前記多孔質材料の厚みに対する、前記多孔質材料の厚み方向と垂直な方向における前記多孔質材料の寸法の比が2以上である、請求項
1に記載の噴霧剤。
【請求項3】
前記多孔質構造は、1GPa以下の弾性率を有する、請求項1
又は2に記載の噴霧剤。
【請求項4】
前記多孔質構造は、カチオン性物質をさらに含んでいる、請求項1から
3のいずれか1項に記載の噴霧剤。
【請求項5】
25℃において1mS/cm以下の導電率を有する、請求項1から
4のいずれか1項に記載の噴霧剤。
【請求項6】
25℃において10Pa・s以下の粘度を有する、請求項1から
5のいずれか1項に記載の噴霧剤。
【請求項7】
カチオン性物質をさらに含有している、請求項1から
6のいずれか1項に記載の噴霧剤。
【請求項8】
前記分散媒は、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHが10MPa
1/2以上である液体物質を含む、請求項1から
7のいずれか1項に記載の噴霧剤。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の噴霧剤を貯蔵するタンクと、
前記噴霧剤を噴霧する噴霧器と、を備えた、
噴霧装置。
【請求項10】
前記噴霧器は、0.1m/s以上の流速で前記噴霧剤を噴霧する、請求項
9に記載の噴霧装置。
【請求項11】
40℃以上に発熱可能な発熱体をさらに備えた、請求項
9又は
10に記載の噴霧装置。
【請求項12】
前記噴霧剤の前記多孔質材料及び前記分散媒の少なくとも1つを帯電させる帯電器をさらに備えた、請求項
9から
11のいずれか1項に記載の噴霧装置。
【請求項13】
前記噴霧器から噴霧された前記噴霧剤の流速、前記噴霧器から噴霧された前記噴霧剤の温度、前記噴霧器における前記噴霧剤の噴霧間隔、前記噴霧器によって噴霧される前記噴霧剤の量、前記噴霧器によって噴霧される前記噴霧剤の流れの方向、及び前記噴霧器によって噴霧された前記噴霧剤の帯電状態からなる群より選ばれる少なくとも1つの項目を調節する制御器をさらに備えた、請求項
12に記載の噴霧装置。
【請求項14】
生体の状態を検出するセンサを備え、
前記制御器は、前記センサの検出結果に基づいて前記項目を調節する、請求項
13に記載の噴霧装置。
【請求項15】
前記センサは、生体に含まれる水分量を検出し、
前記制御器は、前記センサによって検出された前記水分量に基づいて、前記噴霧器によって噴霧される前記噴霧剤の量を調節する、請求項
14に記載の噴霧装置。
【請求項16】
生体が水に濡れているときに、請求項1から
8のいずれか1項に記載の噴霧剤を前記生体に向かって噴霧することを含む、噴霧剤の使用方法。
【請求項17】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の噴霧剤を前記生体に向かって噴霧した後に、前記生体の環境の温度を40℃以上に調整することを含む、噴霧剤の使用方法。
【請求項18】
再生セルロースを含む多孔質構造を有し、前記多孔質構造に接触している生体に有効な有効成分を含む多孔質材料を作製することと、
前記多孔質材料を細断又は微細化して
1μm以上50μm以下の体積平均径を付与することと、
細断又は微細化された前記多孔質材料を分散媒に分散させることと、を含み、
前記多孔質構造において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が
1cm
3/g以上
10cm
3
/g以下であり、かつ、前記多孔質構造における前記細孔の比表面積が
50m
2/g以上
1000m
2
/g以下であり、
前記多孔質材料における前記有効成分の含有量は、重量基準で30%以上
99.9%以下であ
り、
前記再生セルロースは、100,000以上1,000,000以上の重量平均分子量を有する、
噴霧剤の製造方法。
【請求項19】
前記多孔質構造は、1GPa以下の弾性率を有する、請求項
18に記載の噴霧剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴霧剤、噴霧装置、噴霧剤の使用方法、及び噴霧剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容等の目的で、所定の有効成分を含有する材料が提案されている。例えば、特許文献1には、活性成分を実質的に含まないフィルムを、活性成分を含む媒体内に導入して、活性成分をフィルムに移動させる工程を含む、フィルムの作製方法が記載されている。移動した活性成分を含むフィルムは、キャリアーに導入され、組成物が調製される。
【0003】
特許文献2には、生体に作用する成分又は生体を保護する成分が保持されている生体貼付用膜が記載されている。生体貼付用膜は、自己支持型の膜であり、重量平均分子量が150,000以上の再生セルロースで構成されている。生体貼付用膜は、20nm以上1300nm以下の厚さを有する。
【0004】
特許文献3には、複数のマイクロカプセルと、複数のマイクロカプセルを分散させる水相とを含む化粧料が記載されている。マイクロカプセルは、芯物質及びその芯物質を内包する壁物質よりなる。芯物質はアニオン性の疎水性物質であり、壁物質はカチオン性の高分子である。マイクロカプセルの粒径は200μmより小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-543900号公報
【文献】国際公開第2018/092362号
【文献】特開2018-176047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術では、有効成分を含有する材料を噴霧することは想定されていない。特許文献3に記載の技術は、視認しにくい状態で生体に長期間付着しつつ所望のタイミングで有効成分を放出させる観点から再検討の余地を有する。そこで、本開示は、このような観点から有利な噴霧剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
再生セルロースを含む多孔質構造を有し、前記多孔質構造に接触している生体に有効な有効成分を含む多孔質材料と、
前記多孔質材料を分散させる分散媒と、を含有し、
前記多孔質材料は、200μm以下の体積平均径を有し、
前記多孔質構造において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が0.5cm3/g以上であり、かつ、前記多孔質構造における前記細孔の比表面積が10m2/g以上であり、
前記多孔質材料における前記有効成分の含有量は、重量基準で30%以上である、
噴霧剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記の噴霧剤は、視認しにくい状態で生体に長期間付着しつつ所望のタイミングで有効成分を放出させる観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の噴霧剤の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の噴霧剤に含まれる多孔質材料を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、天然セルロースのX線回折パターンの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の噴霧装置の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の噴霧装置の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、噴霧剤の髪束への付着の均一性の評価結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例及び比較例におけるヘアスタイリングの持続性の評価結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例及び比較例におけるヘアスタイリングの持続性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
生体に有効な成分を含む材料を生体に向かって噴霧でき、その材料を視認しにくい状態で生体に長期間付着させることができる技術を提供できれば、ユーザの利便性が高まる。加えて、その材料から所望のタイミングで有効成分が放出されれば、有効成分によって得られる効果を高めることができる。例えば、圧力などの所定の物理的刺激をその材料に付与することによって有効成分の放出を促すことができれば、有効成分によって得られる効果が所望のタイミングで発揮される。特許文献1から3にはこのような技術は記載されていない。そこで、本発明者らは、このような技術を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、再生セルロースを含む特定の多孔質構造に有効成分を接触させた多孔質材料を使用すること及び多孔質材料の体積平均径を所定の範囲に調整することが有利であることを新たに見出し、本開示の噴霧剤を案出した。
【0011】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は包括的又は具体的な例示である。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置、及び接続形態、並びに、ステップ及びステップの順序などの事項は、一例であり、本開示を限定する主旨で記載されたものではない。以下の種々の実施形態は、矛盾が生じない限り互いに組み合わせることが可能である。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、必須の構成要素と理解されるべきではない。以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0012】
図1に示す通り、噴霧剤20は、多孔質材料10と、分散媒25とを含有している。
図2に示す通り、多孔質材料10は、再生セルロースを含む多孔質構造11を有する。加えて、多孔質材料10において生体に有効な有効成分12が多孔質構造11に接触している。分散媒25は、多孔質材料10を分散させる。多孔質材料10は、200μm以下の体積平均径を有する。体積平均径は、体積基準の粒度分布における算術平均径Mvである。多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積は、0.5cm
3/g以上である。この容積は、多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の合計の容積を意味する。加えて、多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積は、10m
2/g以上である。多孔質材料10における有効成分12の含有量は、重量基準で30%以上である。多孔質構造11における100nm以下の細孔径を有する細孔の容積及びその細孔の比表面積は、例えば、窒素を用いたガス吸着法に従って多孔質構造11を測定した結果に基づいて決定できる。
【0013】
セルロースには、天然セルロース及び再生セルロースが存在する。本明細書において、再生セルロースは、天然セルロースに特有の結晶構造Iを持たないセルロースを意味する。セルロースの結晶構造は、例えば、X線回折によって確認できる。
図3は、50kV及び300mAの条件でCuKα線を用いて得られた天然セルロースのX線回折パターンの一例を示す。
図3に示すX線回折パターンでは、結晶構造Iに特有の14-17°及び23°付近にピークが現れている。再生セルロースは、多くの場合、結晶構造IIを有する。このため、再生セルロースのX線回折パターンでは、12°、20°、及び22°付近にピークが現れ、14-17°及び23°付近にはピークが現れない。
【0014】
多孔質構造11に存在する再生セルロースは、実質的に式(1)で表される。「実質的に」とは、式(1)において繰返し単位であるグルコース中のヒドロキシル基が90%以上残っていることを意味する。式(1)において繰返し単位であるグルコース中のヒドロキシル基が98%以上残っていてもよい。セルロースのグルコースにおけるヒドロキシ基の割合は、例えば、X線光電子分光(XPS)等の種々の公知の方法で定量できる。再生セルロースは分岐構造を有していてもよい。再生セルロースには、人為的に誘導体化したセルロースは含まれないが、一旦誘導体化を経て再生されたセルロースは含まれる。再生セルロースは、未架橋であってもよい。
【0015】
【0016】
再生セルロースの原料のセルロースとしては、パルプ及び綿花等の植物由来のセルロース、又は、バクテリアなどの生物が生成したセルロースを用いることができる。原料としてのセルロースの不純物濃度が20重量%以下であることが望ましい。
【0017】
多孔質構造11に存在する再生セルロースは、例えば、100,000以上の重量平均分子量を有する。これにより、再生セルロースにおいて、1分子鎖あたりに多くの水酸基が存在し、分子間で多くの水素結合が形成される。このため、支持体を要することなく多孔質材料10の形状が適切に保たれうる。再生セルロースの重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定できる。
【0018】
再生セルロースの重量平均分子量が大きいと、再生セルロースを含む溶液の粘度が高くなり、多孔質材料10の作製が難しい。このため、再生セルロースの重量平均分子量は、1,000,000以下であってもよく、500,000以下であってもよく、300,000以下であってもよい。再生セルロースの重量平均分子量が1,000,000以下であれば、多孔質材料10の作製が容易である。再生セルロースの重量平均分子量が500,000以下であれば、多孔質材料10の作製がより容易である。再生セルロースの重量平均分子量が300,000以下であれば、多孔質材料10の厚さのばらつきが小さい。
【0019】
多孔質構造11には再生セルロースが存在していればよく、多孔質構造11は、不可避的不純物、原料、及び他の添加材料等の再生セルロース以外の成分を含んでいてもよい。多孔質構造11における再生セルロースの含有量は、例えば、重量基準で10%以上でありうる。
【0020】
多孔質材料10が200μm以下の体積平均径を有することにより、噴霧剤20を噴霧により生体に付着させた後にザラツキなどの違和感を抑制できる。
【0021】
多孔質材料10は、望ましくは100μm以下の体積平均径を有する。これにより、噴霧剤20をより適切に噴霧できる。多孔質材料10は、より望ましくは50μm以下の体積平均径を有する。これにより、噴霧剤20の噴霧により多孔質材料10がユーザの生体に付着した後、多孔質材料10が付着していることがユーザ自身にも分からないほど自然に装着されうる。加えて、噴霧剤20における多孔質材料10の分散状態が安定する。多孔質材料10は、例えば、0.1μm以上の体積平均径を有する。これにより、多くの有効成分12を含む多量の多孔質材料10が生体に付着しやすく、ユーザが良好な使用感を得やすい。多孔質材料10は、例えば、望ましくは1μm以上の体積平均径を有する。この場合、より多くの有効成分を生体に付着させることができ、有用である。
【0022】
多孔質構造11に含まれる再生セルロースは、分子内に多くの水素結合を持つセルロースが分子レベルで構造体を形成する。このため、多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積が10m2/g以上と高くても、多孔質構造11が高い強度を有する。その結果、多孔質材料10における有効成分12の含有量を重量基準で30%以上に調整しても、多孔質構造11が安定である。
【0023】
多孔質構造11において、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積及びその細孔の比表面積が上記の範囲に調整されていることにより、短時間に多量の有効成分12が放出されにくく、有効成分12の徐放を実現できる。一方、外力等の物理的刺激が多孔質材料10に加えられることで、所望のタイミングで有効成分12が多孔質材料10から放出されうる。多孔質構造11において、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積及び比表面積が上記の範囲であることにより、多孔質構造11の外部に向かって移動する有効成分12の流動抵抗が大きくなりやすい。このため、多孔質材料10が配置された環境に大きな濃度勾配が発生したとき、又は、所定の物理的刺激が多孔質材料10に加えられたときに、多孔質材料10からの有効成分12の放出が促される。
【0024】
多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積は、望ましくは1cm3/g以上である。加えて、多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積は、望ましくは50m2/g以上である。このような構成によれば、より多量の有効成分を所望のタイミングで放出できる。
【0025】
多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積の上限値は、特定の値に限定されない。多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積は、例えば、10cm3/g以下である。多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積の上限値は、特定の値に限定されない。多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積は、例えば、1000m2/g以下である。
【0026】
有効成分12の放出を促すために多孔質材料10に加えられる物理的刺激の例は、圧力、温度変化、摩擦力、風、及び紫外線等の所定の波長の光の照射である。物理的刺激として圧力又は摩擦力を利用する場合に注目する。多孔質構造11には100nm以下の細孔径を有する多くの細孔が存在するので、圧力又は摩擦力が多孔質材料10に加えられない状態では、有効成分12は多孔質材料10に留まる。一方、圧力又は摩擦力が多孔質材料10に加えられると、その圧力又は摩擦力の大きさに応じて有効成分12が放出される。物理的刺激として温度変化を利用する場合に注目する。例えば、多孔質材料10の環境の温度を高めることにより、有効成分12が流動しやすくなり、有効成分12が多孔質材料10から放出される。物理的刺激として光の照射を利用する場合に注目する。例えば、有効成分12として紫外線により変性して流動しやすくなる成分を利用し、多孔質材料10に紫外線を照射した場合、有効成分12が多孔質材料10から放出される。このように、いずれの物理的刺激を利用する場合にも、多孔質構造11の構造により、物理的刺激が無い状態では有効成分12が多孔質材料10に留まりやすく、物理的刺激が加えられた状態では有効成分12が放出されやすい。
【0027】
多孔質材料10の形状は、多孔質材料10が200μm以下の体積平均径を有する限り、特定の形状に限定されない。多孔質材料10において、例えば、多孔質材料10の厚みAに対する、多孔質材料10の厚み方向に垂直な方向における多孔質材料10の寸法Bの比(B/A)が2以上であってもよい。これにより、接着成分を使用しなくても、多孔質材料10を生体に長期間安定的に装着できる。接着成分の不使用により、かぶれを防止できる。加えて、多孔質構造11に存在する再生セルロースは生体適合性に優れている。このため、多孔質材料10が生体にかける負担が少なく、多孔質材料10を長期間使用できる。本明細書において、寸法Bは、平面視した多孔質材料10を一対の平行な直線によって挟んだときに、一対の平行な直線同士の距離である。多孔質材料10の厚みA及び寸法Bの値は、例えば、多孔質材料10の粒度分布測定の結果によって決定されうる。例えば、粒度分布に現れる複数のピークにおいて最小の粒径に対応するピークの値を厚みAとみなし、より大きな粒径に対応するピークの値を寸法Bとみなすことができる。また、生体適合性とは、生体、特に皮膚に、発疹及び炎症等の反応を生じさせにくいことをいう。
【0028】
厚みAに対する寸法Bの比B/Aの上限値は特定の値に限定されない。厚みAに対する寸法Bの比B/Aは、例えば、1000以下である。
【0029】
多孔質構造11は、例えば、1GPa以下の弾性率を有する。これにより、多孔質材料10が圧力又は摩擦力によって適切に変形し、多孔質材料10から有効成分12が放出されやすい。本明細書において弾性率とは引張弾性率を意味する。多孔質材料10の引張弾性率は、例えば、日本工業規格(JIS) K7127:1999に従って測定できる。
【0030】
多孔質構造11の弾性率は、例えば、0.01GPa以上である。
【0031】
セルロースは、親水性材料及び疎水性材料の双方に対し高い親和性を示す材料である。このため、再生セルロースを含む多孔質構造11には、親水性材料及び疎水性材料の双方が適切に付着しうる。このため、多孔質材料10は、多くの種類の有効成分12を含有できる。このように、多孔質構造11は、再生セルロースを含むので、両親媒性を示す。加えて、多孔質構造11に多くの水素結合が生じやすい。このため、多孔質材料10が多量の有効成分12を含みやすい。その結果、多孔質材料10における有効成分12の含有量を、重量基準で30%以上に調整できる。多孔質材料10における有効成分12の含有量は、重量基準で50%以上であってもよい。この場合、より多量の有効成分12を生体に供給できる。多孔質材料10における有効成分12の含有量は、例えば、重量基準で99.9%以下である。
【0032】
有効成分12は、多孔質材料10の厚み方向における中央付近に存在していてもよいし、多孔質材料10の表面付近に存在していてもよい。
【0033】
有効成分12は、特定の成分に限定されない。有効成分12は、髪のコンディションを整えるヘアケアのための成分であってもよいし、ヘアスタイリングのための成分であってもよいし、皮膚に保湿、美白、及びアンチエイジングなどの美容効果をもたらす成分であってもよい。ヘアケア及びヘアスタイリングの少なくとも1つための成分の例として、アボガド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、サフラワー油、大豆油、ヒマシ油、ヒマワリ油、マカデミナッツ油、椿油、小麦麦芽油、山茶花油、茶実油、月見草油、ティーツリーオイル、バーム油、パーム油、マヌカオイル、馬脂、綿実油、モクロウ、モリンガ油、カルナウバロウ、ヤシ油、ラノリン、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ケラチン、ケラチン蛋白誘導体、コラーゲン蛋白誘導体、シルク蛋白誘導体、大豆蛋白誘導体、カチオン化セルロース、カチオン化グァーガム、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、オキシベンゾン、シノキサート、サリチル酸フェニル、パラアミノ安息香酸エステル、グリチルリチン酸ジカリウム、シコンエキス、ジンクビリチオン、ビロクトンオラミン、硫責、サリチル酸、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解シルク、リンゴ酸、及びトレハロースが挙げられる。
【0034】
一方、皮膚に保湿、美白、及びアンチエイジングなどの美容効果をもたらす成分の例として、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グァーガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、及びコメ、トウモロコシ、バレイショ、又はコムギに由来するデンプン等の植物由来高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、及びブルラン等の微生物由来高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、及びゼラチン等の動物由来高分子、ヒアルロン酸、ムチン、コンドロイチン硫酸、及び可溶性コラーゲン等の生物由来高分子化合物、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトース、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、トリメチルグリシン、レチノール、レチナール、レチノイン酸等のビタミンA、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ピリドキサミン、葉酸等のビタミンB、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD、α-トコフェロール(ビタミンE)フィロキノン、メナキノンのビタミンK等で代表されるビタミン、トレチノイン及びパルミチン酸レチノール等のビタミンA誘導体、グリセリルアスコルビン酸及びテトラヘキシルデカン酸アスコルビル等のビタミンC誘導体、酢酸α―トコフェロール、α―トコフェリルキノン、及びコハク酸α―トコフェロール等のビタミンE誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、4-メトキシサリチル酸カリウム、トラネキサム酸、ルシノール、エラグ酸及びアントシアニン等のポリフェノール、3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム、ルチン、ミノキシジル、フィナステリド、セファランチン、並びにピロリドンカルボン酸が挙げられる。
【0035】
多孔質構造11は、カチオン性物質をさらに含んでいてもよい。換言すると、カチオン性物質は、多孔質構造11の構成要素の1つでありうる。髪は、摩擦などにより正に帯電しやすい。髪が正に帯電すると、ヘアスタイリングを適切に行うことが難しい。多孔質構造11にカチオン性物質が存在していることにより、多孔質材料10を髪に装着した場合に、カチオン性物質に由来するカチオンが、髪が正に帯電することを抑制する。その結果、所望のヘアスタイルが長期間保たれやすい。
【0036】
カチオン性物質は、特定の物質に限定されない。カチオン性物質は望ましくは生体適合性を有する。生体適合性を有するカチオン性物質の例は、カチオン性ポリマー、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び亜鉛イオン等の金属イオン、金属イオンを含む材料、及びカチオン性界面活性剤である。カチオン性ポリマーの例は、キトサン、カチオン化セルロース、及びポリアミンである。カチオン化セルロースの例は、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル及びヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテルである。
【0037】
多孔質構造11におけるカチオン性物質の含有量は、特定の値に限定されない。その含有量は、例えば重量基準で0.01%以上90%以下である。多孔質構造11におけるカチオン性物質の含有量が0.01重量%以上であることにより、髪等の生体の特定の部位の帯電を低減できる。多孔質構造11におけるカチオン性物質の含有量は、望ましくは1重量%以上である。この場合、髪等の生体の特定の部位の帯電をより確実に低減できる。多孔質構造11におけるカチオン性物質の含有量が90重量%以下であることにより、多孔質構造11における再生セルロースの含有量を10重量%以上に調整できる。このため、再生セルロースが有する多くの水素結合に由来して多孔質構造11が高い強度を有しやすい。このため、多孔質構造11において100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が0.5cm3/g以上であり、かつ、その細孔の比表面積が10m2/g以上であっても、多孔質構造11が十分な強度を有する。
【0038】
分散媒25は、多孔質材料10を分散させる限り、特定種類の物質に限定されない。分散媒25は、典型的には、生体に安全な物質である。分散媒25は、親水性であってもよいし、疎水性であってもよい。親水性の分散媒25は、例えば、水、アルコール、又は多価アルコールであり、水、エタノール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、又はポリエチレングリコールであってもよい。疎水性の分散媒25の例は、アボガド油、オリーブ油、ヒマシ油、椿油、及び流動パラフィンである。有効成分12と分散媒25とが同一種類の物質であってもよい。分散媒25は、複数種類の物質の混合物であってもよい。
【0039】
分散媒25は、例えば、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)における水素結合項δHが10MPa1/2以上である液体物質を含んでいてもよい。HSPは、材料同士の親和性を評価するパラメータとして知られている。HSPの値(δ)と、分散項δD、極性項δP、及び水素結合項δHとは以下の式(2)の関係を有する。
δ2=δD2+δP2+δH2 (2)
【0040】
多孔質材料10の多孔質構造11には再生セルロースが存在しており、多くの親水基が存在する。このため、δHが10MPa1/2以上である液体物質を分散媒25が含むことにより、多孔質材料10が生体に密着しやすい。δHの値は、例えば、材料の蒸発熱からδを求め、ダイポールモーメントと分子体積とからδPを求め、材料の屈折率からδDを計算する。そのうえで、上記の式(2)の関係からδHを決定できる(C.M. Hansen, “Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook”, CRC Press, Boca Raton, 2nd edn., 2007参照)。材料の屈折率として、例えば、ナトリウムのD線を用いた25℃における測定値を使用できる。
【0041】
δHが10MPa1/2以上である液体物質の例は、水、グリセリン、エチレングリコール、ブタンジオール、ジプロピルグリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、及びデカノールである。特に、水、グリセリン、及びエタノールは生体との親和性が高く、これらの液体物質の使用が望ましい。液体物質のHSPにおける水素結合項δHの上限値は特定の値に限定されない。液体物質のHSPにおける水素結合項δHは、例えば43MPa1/2以下である。
【0042】
噴霧剤20は、例えば、25℃において1mS/cm以下の導電率を有する。この場合、噴霧剤20が生体に付着することにより静電気を発生しにくくする。加えて、静電的に噴霧剤20のミストを発生させやすい。さらに、例えば、噴霧剤20を静電噴霧するときに放電が生じにくい。
【0043】
噴霧剤20の25℃における導電率は、0.5mS/cm以下であってもよい。これにより、噴霧剤20を安定的に噴霧しやすい。噴霧剤20の導電率を調整するために、噴霧剤20は、界面活性剤、塩、アニオン性ポリマー、及びカチオン性ポリマー等の添加剤を含有していてもよい。
【0044】
噴霧剤20の25℃における導電率の下限値は、特定の値に限定されない。噴霧剤20の25℃における導電率は、例えば1nS/cm以上である。
【0045】
噴霧剤20は、例えば、25℃において10Pa・s以下の粘度を有する。この場合、噴霧剤20を噴霧するときに噴霧剤20が微細化されやすく、噴霧剤20を生体に均一に付着させやすい。噴霧剤20の粘度は、例えば、回転式粘度計によって測定される。回転式粘度計を用いた噴霧剤20の粘度の測定において、回転式粘度計のスピンドルの回転数は、例えば、1s-1に設定されうる。
【0046】
25℃における噴霧剤20の粘度の下限値は、特定の値に限定されない。25℃における噴霧剤20の粘度は、例えば0.1mPa・s以上である。
【0047】
噴霧剤20は、例えば、カチオン性物質をさらに含有していてもよい。この場合、カチオン性物質に由来するカチオンが、髪が正に帯電することを抑制し、所望のヘアスタイルが長期間保たれやすい。
【0048】
カチオン性物質は、典型的には、分散媒25に溶解又は分散している。カチオン性物質は、望ましくは生体適合性を有する。カチオン性物質の例は、多孔質構造11に含まれてもよいカチオン性物質の例と同じである。
【0049】
噴霧剤20におけるカチオン性物質の含有量は、特定の値に限定されない。その含有量は、例えば0.001重量%以上50重量%以下である。噴霧剤20におけるカチオン性物質の含有量が0.001重量%以上であることにより、髪等の生体の特定の部位の帯電を低減できる。噴霧剤20におけるカチオン性物質の含有量は、望ましくは、0.1重量%以上である。この場合、髪等の生体の特定の部位の帯電をより確実に低減できる。
【0050】
噴霧剤20は、例えば、髪、頭皮、顔、腕、及び臓器等の生体の特定の部位に向かって噴霧され、多孔質材料10が特定の部位に装着されうる。
【0051】
噴霧剤20は、例えば、生体が水に濡れているときに生体に向かって噴霧されうる。このような噴霧剤20の使用によれば、多孔質構造11の再生セルロースと生体との間に水素結合が生じやすく、多孔質材料10が長期間生体に安定的に装着されうる。
【0052】
噴霧剤20を使用する場合に、噴霧剤20を生体に向かって噴霧した後に、その生体の環境の温度を40℃以上に調整してもよい。このような噴霧剤20の使用によれば、分散媒25又は有効成分12の流動性が高まり、有効成分12の一部が多孔質材料10から生体に放出されやすい。その後、生体の環境の温度が40℃未満に冷やされると、多孔質材料10が生体に装着された後に、多孔質材料10の生体への密着性が向上しやすい。
【0053】
噴霧剤20の噴霧後に生体の環境の温度を40℃以上に調整する場合、生体の環境の温度の最高温度は、特定の温度に限定されない。噴霧剤20の噴霧後に生体の環境の温度を40℃以上に調整する場合に、生体の環境の温度の最高温度は、例えば250℃以下である。
【0054】
噴霧剤20は、例えば、以下の(I)、(II)、及び(III)の工程を含む方法によって製造できる。
(I)再生セルロースを含む多孔質構造11を有し、多孔質構造11に接触している生体に有効な有効成分を含む多孔質材料10を作製する。
(II)多孔質材料10を細断又は微細化して200μm以下の体積平均径を付与する。
(III)細断又は微細化された多孔質材料10を分散媒25に分散させる。
【0055】
噴霧剤20は、例えば、以下の方法によって製造できる。まず、溶媒にセルロースを溶解させることによりセルロース溶液を調製する。多孔質構造11にカチオン性物質を含ませるために、カチオン性物質を添加してセルロース溶液を調製してもよい。例えば、上述した重量平均分子量を有するセルロースをセルロース溶液の調製に使用できる。セルロース溶液の調製に用いるセルロースは、所定の重量平均分子量を有していれば、パルプ又は綿花等の植物由来のセルロースであってもよいし、バクテリア等の生物が生成したセルロースであってもよい。原料としてのセルロースの不純物濃度は、例えば、重量基準で20%以下である。
【0056】
溶媒として、イオン液体を含有する溶媒を用いてもよい。イオン液体を含有する溶媒を用いることにより、セルロースを比較的短時間で溶解させることができる。イオン液体は、アニオンとカチオンとから構成される塩であり、150℃以下の温度において液体状態を示しうる。セルロースを溶解するイオン液体としては、アミノ酸、アルキルリン酸エステル又はアセテートを含むイオン液体を使用できる。このようなイオン液体を溶媒として用いることにより、分子量の低下をある程度抑制しながらセルロースを溶解させることができる。特に、アミノ酸は生体内に存在する成分であるので、アミノ酸を含むイオン液体の使用により、生体に対して安全な多孔質材料10の作製が可能である。
【0057】
セルロースを溶解するイオン液体として、例えば、下記の一般式(s1)で表されるイオン液体を用いることができる。一般式(s1)で表されるイオン液体は、アニオンがアミノ酸である例を示す。一般式(s1)から分かるように、この例では、アニオンは、末端カルボキシル基及び末端アミノ基を含んでいる。一般式(s1)で表されるイオン液体のカチオンは、第四級アンモニウムカチオンであってもよい。
【化2】
【0058】
一般式(s1)中、R1からR6は、独立して、水素原子又は置換基を表す。置換基は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はフェニル基であってもよく、炭素鎖に分岐を含んでいてもよい。置換基は、アミノ基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基等の基を含んでいてもよい。nは1以上5以下の整数である。
【0059】
セルロースを溶解するイオン液体は、下記の式(III)で表されるイオン液体であってもよい。式(III)中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素原子又は1から4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0060】
【0061】
セルロース溶液を調製する工程において、第2溶媒をさらに加えてもよい。例えば、所定の重量平均分子量を有するセルロースとイオン液体との混合物に第2溶媒をさらに加えてもよい。第2溶媒は、例えば、セルロースを析出させない溶媒である。第2溶媒は、非プロトン性極性溶媒でありうる。
【0062】
次に、得られたセルロース溶液を所定の基板に塗布し、基板に支持された高分子ゲルシートを得る。その後、セルロースを溶解させない液体であるリンス液に基板上の高分子ゲルシートを浸漬させる。この工程は、高分子ゲルシートからイオン液体を含有する溶媒を除去する、高分子ゲルシートの洗浄の工程であるといってもよい。
【0063】
リンス液として、イオン液体と相溶可能な溶媒が用いられうる。このような溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、トルエン、キシレン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドである。
【0064】
次に、例えば、有効成分12を含む溶液中に高分子ゲルシートを浸漬させて、高分子ゲルシート中に有効成分12を含有させる。高分子ゲルシートをリンス液又は有効成分12を含む溶液に浸漬しているときに、10秒間以上の超音波処理を行ってもよい。超音波などの、例えば1Hz以上の周波数を持つ振動を与えるプロセスを行うことにより、100nm以下の細孔径の細孔が0.5cm3/g以上の体積を有し、かつ、10m2/g以上の比表面積を有する、再生セルロースを含む多孔質構造を安定に作製できる。振動を与えるプロセスは、リンス液に浸漬した場合に行ってもよい。
【0065】
その後、高分子ゲルシートから溶媒等の不要な成分を除去する。換言すると、高分子ゲルシートを乾燥させる。これにより、多孔質材料10が得られる。高分子ゲルシートを乾燥させる方法としては、自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、及び超臨界乾燥等の種々の乾燥方法を適用できる。真空加熱を行って高分子ゲルシートを乾燥させてもよい。高分子ゲルシートの乾燥における条件は、特に限定されない。セルロース溶液の溶媒及びリンス液の一部又は全部を除去するために、適切な乾燥時間及び乾燥温度が決定されうる。
【0066】
高分子ゲルシートの乾燥の後に、有効成分12を含有させる工程を行ってもよい。この場合、多孔質構造11に対応する構造を形成できるように高分子ゲルシートを乾燥させたうえで、有効成分12を含有させる工程がなされうる。例えば、リンス液に浸漬して高分子ゲルシートを洗浄した後、tert-ブタノール及び酢酸等の所定の液体化合物に高分子ゲルシートを浸漬し、凍結乾燥又は超臨界乾燥により高分子ゲルシートを乾燥させる。これにより、有効成分12を含有させる工程に先立って、多孔質構造11に対応する構造を形成できる。
【0067】
その後、多孔質材料10が所定の体積平均径を有するように、多孔質材料10を細断する工程又は微細化する工程がなされうる。この工程は、多孔質材料10を分散媒25に浸漬させた状態で行われてもよい。また、所定の体積平均径を有するように加工された多孔質材料10を分散媒25に分散させてもよい。多孔質材料10の細断又は微細化の方法は、特定の方法に限定されない。多孔質材料10の細断又は微細化の方法として、カミソリ、カッター、及びハサミ等の刃物の使用、メッシュの使用、レーザーの使用、又は打ち抜きなどによる細断、並びに、ミル、ホモジナイザー、又はディアレス分散機などによる微細化が挙げられる。このようにして、噴霧剤20が製造される。
【0068】
噴霧剤20を貯蔵しつつ噴霧する噴霧装置を提供できる。例えば、
図4に示す噴霧装置1a又は
図5に示す噴霧装置1bを提供できる。
【0069】
噴霧装置1aは、例えば、タンク2と、噴霧器3とを備えている。タンク2には、噴霧剤20が貯蔵されている。噴霧器3は、タンク2に貯蔵された噴霧剤20を噴霧する。
【0070】
タンク2は、着脱可能に構成されたカートリッジ式のタンクであってもよい。これにより、タンク2における噴霧剤20の残量が噴霧剤20の噴霧が困難なレベルになった場合に、噴霧剤20の補充がしやすい。また、1つの噴霧装置1aを用いて異なる種類の噴霧剤20を噴霧することも可能である。
【0071】
噴霧器3から噴霧される噴霧剤20の流速は特定の値に限定されない。噴霧器3は、例えば、0.1m/s以上の流速で噴霧剤20を噴霧する。この場合、例えば、髪に向かって噴霧剤20を噴霧する場合に、髪の表面のみならず、頭皮に近い髪の内側又は頭皮に多孔質材料10を付着させることができる。
【0072】
噴霧器3は、望ましくは、1m/s以上の流速で噴霧剤20を噴霧する。これにより、髪の量が多い人でも均一に多孔質材料10を付着させることができる。噴霧器3は、例えば、50m/s以下の流速で噴霧剤20を噴霧する。
【0073】
図4に示す通り、噴霧器3は、吐出部3aを有する。タンク2に貯蔵された噴霧剤20は、吐出部3aを通過して吐出される。吐出部3aは、噴霧剤20を吐出させるための吐出口を有する。噴霧装置1aは、例えば、ポンプ4をさらに備えている。ポンプ4が作動することにより、タンク2に貯蔵された噴霧剤20が吐出部3aに送られる。
【0074】
図4に示す通り、噴霧装置1aは、例えば、発熱体7をさらに備えている。発熱体7は、40℃以上に発熱可能である。これにより、例えば、発熱体7が発熱しているときに、噴霧装置1aよって噴霧される噴霧剤20の温度が高まり、室温では流動しにくい分散媒25又は有効成分12が流動しやすい状態で噴霧剤20が生体に付着しやすい。その後、噴霧剤20の温度が低下し、多孔質材料10が生体に密着しやすい。発熱体7は、例えば、抵抗発熱体である。
【0075】
発熱体7は、望ましくは70℃以上に発熱可能である。この場合、分散媒25又は有効成分12がより流動しやすい状態で噴霧剤20を生体に付着させやすい。発熱体7は、より望ましくは100℃以上に発熱可能である。この場合、分散媒25又は有効成分12がさらに流動しやすい状態で噴霧剤20を生体に付着させることができ、髪等の生体の特定の部位を加熱することも可能である。
【0076】
発熱体7の発熱可能温度の上限値は、特定の値に限定されない。発熱体7の発熱可能温度の上限値は、例えば、250℃である。
【0077】
発熱体7は、例えば、タンク2に貯蔵された噴霧剤20又はタンク2と吐出部3aとの間を流れる噴霧剤20を加熱可能に構成されうる。これにより、小型の発熱体7で安定的に噴霧剤20を加熱できる。
【0078】
図4に示す通り、噴霧装置1aは、例えば、帯電器35をさらに備えている。帯電器35は、噴霧剤20の多孔質材料10及び分散媒25の少なくとも1つを帯電させる。例えば、帯電器35によって多孔質材料10を正に帯電させ、正に帯電した多孔質材料10が髪に供給されることにより、髪が正に帯電することを抑制できる。これにより、髪の浮きが発生しにくく、静電気による髪のダメージが抑制される。一方、ダメージを受けた髪は負に帯電しやすいので、髪のダメージを受けた部分に多くの多孔質材料10を装着できる。なお、帯電器35によって噴霧剤20の表面を負に帯電させた場合、正に帯電しやすい髪に向かって噴霧剤20が流れるので、噴霧剤20が顔ではなく髪に選択的に付着しやすい。
【0079】
帯電器35は、例えば、吐出部3a及び電極3bを備え、吐出部3aと電極3bとの間に電圧を印加できるように構成されている。吐出部3aは、例えば、金属又は合金等の導電性材料で構成されている。電極3bも金属又は合金等の導電性材料で構成されている。電極3bは、吐出部3aと向かい合うように配置されており、電極3bには吐出部3aから吐出された噴霧剤20を通過させるための開口が形成されている。吐出部3aと電極3bとの間に電圧が印加されると、吐出部3aを通過する噴霧剤20が正又は負に帯電した状態で吐出部3aの吐出口から吐出される。帯電した噴霧剤20は電極3b向かって飛び、電極3bの開口を通過して髪等の生体の所定の部位に供給される。
【0080】
図4に示す通り、噴霧装置1aは、例えば、制御器5をさらに備えている。制御器5は、例えば、下記の(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、及び(vi)からなる群より選ばれる少なくとも1つの項目を調節する。
(i)噴霧器3から噴霧された噴霧剤20の流速
(ii)噴霧器3から噴霧された噴霧剤20の温度
(iii)噴霧器3における噴霧剤20の噴霧間隔
(iv)噴霧器3によって噴霧される噴霧剤20の量
(v)噴霧器3によって噴霧される噴霧剤20の流れの方向
(vi)噴霧器3によって噴霧された噴霧剤20の帯電状態
【0081】
(i)の項目に関し、噴霧器3から噴霧された噴霧剤20の流速が調節されることにより、髪などの生体の特定の部位の広い範囲に多孔質材料10を均一に装着できる。加えて、例えば、髪の量又は髪の長さに応じて噴霧剤20の流速を調節でき、適切な量の噴霧剤が安定的に髪全体に装着させやすい。制御器5は、例えば、ポンプ4に向かって制御信号を送信してポンプ4の出力を調整し、噴霧剤20の流速を調節する。噴霧装置1aは、吐出部3aの吐出口の周囲に空気の流れを生じされるファン(図示省略)を備えていてもよい。この場合、制御器5は、ファンに向かって制御信号を送信してファンの出力を調整し、噴霧剤20の流速を調節してもよい。
【0082】
(ii)の項目に関し、噴霧された噴霧剤20の温度が調節されることにより、例えば、噴霧剤20の分散媒25が突沸することなく生体を素早く乾燥させることができる状態を実現できる。これにより、多孔質材料10を素早く安定的に生体に装着できる。多孔質材料10を素早く安定的に生体に装着するために、噴霧剤20の温度を分散媒25が突沸しない温度に調節することが有利である。このような観点から、例えば、噴霧剤20の温度は、分散媒25の沸点より20℃低い温度と分散媒25の沸点より5℃低い温度との間に調節されうる。例えば、分散媒25が水の場合、分散媒25の沸点は100℃であるので、噴霧剤20の温度は80℃以上95℃以下の範囲に調節されうる。噴霧剤20の温度の調節によって分散媒25の突沸を防ぐことにより、多孔質材料10において厚みAに対する寸法Bの比(B/A)が2以上である場合に、多孔質材料10の大きな面積を有する部分が生体に接触しやすい。その結果、多孔質材料10の大きな面積を有する部分が生体に接触した状態で多孔質材料10が生体に装着されやすく、多孔質材料10が生体に装着された後に生体に密着しやすい。制御器5は、例えば、発熱体7に向かって制御信号を送信して発熱体7の発熱量を調整し、噴霧剤20の温度を調節する。
【0083】
(iii)及び(iv)の項目に関し、噴霧器3における噴霧剤20の噴霧間隔又は噴霧器3によって噴霧される噴霧剤20の量が調節されることにより、生体に必要な量の噴霧剤20を均一に供給できる。制御器5は、例えば、ポンプ4に向かって制御信号を送信してポンプ4の出力を調整し、(iii)又は(iv)の項目を調節する。例えば、噴霧剤20を噴霧する機能を備えたヘアドライヤーとして噴霧装置1aを構成する場合、髪を乾かしながら、噴霧剤20を髪に向かって噴霧することが考えられる。例えば、髪がひどく濡れている期間は噴霧剤20の噴霧量を少なく調節し、髪が乾き始める期間に、より多量の噴霧剤20を噴霧することにより、適量の多孔質材料10を髪に装着できる。また、噴霧剤20の噴霧とその停止を所定の間隔で繰り返してもよい。これにより、生体の特定の箇所に噴霧剤20が過剰に供給されることを防止できる。なお、噴霧装置1aの使用時の運動状態に応じて(iii)又は(iv)の項目が調整されてもよい。例えば、噴霧装置1aが速く動かされている場合には、噴霧される噴霧剤20の量が多く調節され、噴霧装置1aがゆっくり動かされている場合には、噴霧される噴霧剤20の量が少なく調節される。これにより、多孔質材料10を生体に均一に装着できる。噴霧装置1aは、ジャイロセンサ又は加速度センサ(図示省略)を備えていてもよく、制御器5は、これらのセンサの検出結果を取得して噴霧装置1aの使用時の運動状態を判断してもよい。
【0084】
(v)の項目に関し、噴霧器3によって噴霧される噴霧剤20の流れの方向が調節されることにより、生体の所望の箇所に噴霧剤20が供給されやすい。例えば、噴霧装置1aは、アクチュエータ(図示省略)を備え、アクチュエータによって、吐出部3aの吐出口の開口方向が変動するように構成されていてもよい。制御器5は、例えば、アクチュエータに向かって制御信号を送信してアクチュエータを作動させ、(v)の項目を調節してもよい。また、噴霧装置1aは、異なる方向に開口した吐出口を有する複数の吐出部3aを備え、複数の吐出部3aのいずれか1つに選択的に噴霧剤20を供給可能なように構成されていてもよい。制御器5は、例えば、噴霧剤20を供給すべき吐出部3aを選択するための機構を作動させ、(v)の項目を調節してもよい。噴霧剤20を供給すべき吐出部3aを選択するための機構は、例えば切替弁である。例えば、噴霧剤20を噴霧する機能を備えたヘアドライヤーとして噴霧装置1aを構成する場合、制御器5は、毛先により多くの噴霧剤20が供給されるように(v)の項目を調節してもよい。これにより、傷みやすい毛先が保護されやすい。
【0085】
(vi)の項目に関し、噴霧器3によって噴霧された噴霧剤20の帯電状態が調節されることにより、噴霧剤20によってもたらされる生体への効果を調整でき、又は、噴霧剤20が生体の特定の箇所に選択的に付着しやすい。例えば、噴霧剤20の正の帯電量を高めることにより、髪のダメージを抑制する効果を高めることができる。一方、噴霧剤20を負に帯電させることにより、負に帯電しやすい皮膚よりも正に帯電しやすい髪に噴霧剤20が供給されやすい。このため、噴霧剤20が顔ではなく髪に選択的に付着しやすい。加えて、環境条件、生体の条件、又は生体の部位に応じて、噴霧剤20の帯電状態を調節してもよい。制御器5は、例えば、帯電器35に向かって制御信号を送信して、(vi)の項目を調整する。
【0086】
図4に示す通り、噴霧装置1aは、生体の状態を検出するセンサ6をさらに備えていてもよい。制御器5は、例えば、センサ6の検出結果に基づいて、上記の(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、及び(vi)からなる群より選ばれる少なくとも1つの項目を調節する。これにより、生体の状態に応じて噴霧剤20を供給できる。制御器5は、センサ6の検出結果を示す信号を取得し、生体の状態を判断する。
【0087】
センサ6は、例えば、生体に含まれる水分量を検出する。制御器5は、センサ6によって検出された水分量に基づいて、噴霧器3によって噴霧される噴霧剤20の量を調節する。制御器5は、例えば、ポンプ4に向かって制御信号を送信してポンプ4の出力を調整し、噴霧器3によって噴霧される噴霧剤20の量を調節する。センサ6は、例えば、センシング対象の水分量を光学的に検出する。
【0088】
噴霧装置1bは特に説明する部分を除き噴霧装置1aと同様に構成されている。噴霧装置1aの構成要素と同一又は対応する噴霧装置1bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。噴霧装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、噴霧装置1bにも当てはまる。
【0089】
噴霧装置1bは、噴霧剤20を噴霧する機能を備えたヘアドライヤーとして構成されている。噴霧装置1bは、本体部41及び把持部42を備える。本体部41は、外郭を構成するハウジング41hを有する。ハウジング41hの長手方向の一端には送風口41wが形成されており、ハウジング41hの長手方向の他端には吸入口41sが形成されている。ハウジング41hの内部には、タンク2、噴霧器3、及びポンプ4に加えて、ファン71、モータ72、及びヒータ75が配置されている。ハウジング41hの長手方向においてファン71は、吸入口41sとヒータ75との間に配置されている。ファン71は、モータ72の回転子に連結されている。モータ72の作動に伴いファン71が回転して、吸入口41sから送風口41wに向かって空気が流れる。ヒータ75は、例えば抵抗加熱式の電気ヒータである。ヒータ75は吸入口41sから送風口41wに向かって流れる空気を加熱する。これにより、送風口41wから温風が吹き出される。
【0090】
ハウジング41hの長手方向の一端には噴霧口41mが形成されている。噴霧器3によって噴霧された噴霧剤20は、噴霧口41mを通って噴霧装置1bの外部に導かれる。ハウジング41hの長手方向の一端とファン71との間のハウジング41hの内部空間には、ハウジング41hの長手方向に沿って第一通路45w及び第二通路45mが形成されている。第一通路45wは送風口41wに延びている。第二通路45mは噴霧口41mに延びている。第一通路45wにはヒータ75が配置され、第二通路45mには、噴霧器3が配置されている。第二通路45mには、タンク2及びポンプ4が配置されていてもよい。ファン71によって送り出された空気は、第一通路45wを通って噴霧装置1bの外部に導かれる。ファン71によって送り出された空気の一部が第二通路45mを通過するように噴霧装置1bが構成されていてもよい。
【0091】
例えば、ハウジング41hの外側の側面にはセンサ6が取り付けられており、センサ6によって、送風口41wが向けられた生体の状態を検出可能である。
【0092】
把持部42は、ハウジング41hの長手方向と交差する方向において本体部41の側面から突出して延びている。ユーザが把持部42を握り、送風口41wが所望の方向に向けられた状態で、噴霧装置1bが使用される。把持部42は、ヒンジ60によって本体部41に連結されている。噴霧装置1bの未使用時には把持部42の先端部がハウジング41hに近づくように動かされ、把持部42がハウジング41hの長手方向に延びるように折り畳まれる。把持部42の外側の側面には、電源スイッチ55が取り付けられている。電源スイッチ55は、例えば、スライド式のスイッチである。把持部42の内部には、制御器5が配置されており、噴霧器3、ポンプ4、センサ6、モータ72、ヒータ75、及び電源スイッチ55と、制御器5とが配線によって接続されている。制御器5は、各構成要素への電力供給及び動作制御を行うための電気回路を有する。これらの回路は、1つの基板に集約されていてもよく、複数の基板に分散していてもよい。
【0093】
把持部42の先端部には、電源コード80が取り付けられており、電源コード80の配線が制御器5に接続されている。
【0094】
電源スイッチ55がONになると、電源コード80を通じて制御器5に電力が供給され、必要に応じて、噴霧器3、ポンプ4、センサ6、モータ72、又はヒータ75に電力がさらに供給される。噴霧器3又はポンプ4に電力が供給されると、噴霧器3から噴霧剤20が噴霧され、噴霧された噴霧剤20は第二通路45m及び噴霧口41mを通過して噴霧装置1bの外部に導かれる。モータ72に電力が供給されると、ファン71が作動してファン71によって送り出された空気が第一通路45wを通って送風口41wから吹き出される。この場合、噴霧器3から噴霧された噴霧剤20は、送風口41wから吹き出された空気の流れに乗ってユーザの髪に供給されうる。ヒータ75に電力が供給されると、第一通路45wを流れる空気が加熱され、送風口41wから温風が吹き出される。
【実施例】
【0095】
実施例により、本開示の噴霧剤をより詳細に説明する。なお、本開示の噴霧剤は、以下の実施例に限定されない。
【0096】
<実施例1>
以下の手順により、多孔質材料の多孔質構造をなす再生セルロース膜を作製した。まず、純度が80%以上の、木材を原料とした漂白パルプ由来のセルロースを用意した。漂白パルプ由来のセルロースをイオン液体に溶解させることにより、セルロース溶液を調製した。イオン液体としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチルフォスフェイトを用いた。ギャップコーティングを適用して基板の表面にセルロース溶液を付与することにより、基板上に液膜を形成した。このとき、ギャップの大きさを調整することで、再生セルロース膜の厚さを調整した。
【0097】
その後、28kHz及び0.5W/cm2の条件での10秒間の超音波処理を含む洗浄工程を実施して、液膜におけるイオン液体を除去し、高分子ゲルシートを得た。高分子ゲルシートをtert-ブタノールに1時間浸漬させ、その後冷凍庫で凍結させた。東京理化器械社製の凍結乾燥機FDU-2200を用いて、1MPaの条件で高分子ゲルシートを凍結乾燥させた。このようにして、再生セルロース膜を得た。
【0098】
その後、再生セルロース膜を椿オイルに浸漬させ、BRANSON社製の超音波ホモジナイザーSONIFIER 450を用いて、出力:30Wから50W及びデューティーサイクル:0.5パルス/秒の条件で細断した。その後、椿オイルを含む液体を20μmから25μmのメッシュのろ紙で真空ろ過し、椿オイルを有効成分として含む多孔質材料と、分散媒としての椿オイルとを含有する実施例1に係る噴霧剤を得た。実施例1に係る噴霧剤における再生セルロースの含有量は、0.4重量%であった。多孔質材料における椿オイルの含有量は、91重量%であった。回転式粘度計を用いて25℃における実施例1に係る噴霧剤の粘度を測定した。その結果、その粘度は、5Pa・sであった。その測定において、回転式粘度計のスピンドルの回転速度は、1s-1に設定した。
【0099】
再生セルロース膜をなす再生セルロースの重量平均分子量をGel Permeation Chromatography(GPC)- Multi Angle Light Scattering(MALS)法に従って測定した。この測定において、島津製作所製の送液ユニットLC-20ADを用い、検出器として、Wyatt Technology Corporation製の示差屈折率計Optilab rEX及び多角度光散乱検出器DAWN HELEOSを用いた。カラムとしては東ソー社製のTSKgel α-Mを用い、溶媒には0.1Mの濃度で塩化リチウムが添加されたジメチルアセトアミドを用いた。カラム温度:23℃及び流速:0.8mL/minの条件でこの測定を行った。測定の結果、再生セルロース膜をなす再生セルロースの重量平均分子量は約200,000であった。
【0100】
日機装社製の粒度分布計MT3300を用いて、実施例1に係る噴霧剤における多孔質材料の粒度分布を測定した。その結果、多孔質材料は、約12μmの体積平均径を有していた。粒度分布の測定において2つ以上のピークがある場合、ピーク分離を行って、各々の粒子サイズを確認した。その結果、最も小さな粒径におけるピークが多孔質材料の厚みに由来し、より大きい粒径におけるピークが多孔質材料の厚みに垂直な方向における多孔質材料の寸法に由来すると仮定して、多孔質材料の体積平均径を決定した。粒度分布のピーク分離から確認した、多孔質材料の厚み(A)は約2μmであり、多孔質材料の厚み(A)に対する、多孔質材料の厚み方向に垂直な方向における多孔質材料の寸法(B)の比(B/A)は、約5であった。
【0101】
マイクロトラック・ベル社製の比表面積/細孔分布測定装置BELSORP-mini2を用いて、椿オイルを含有させる前の再生セルロース膜を用いて多孔質材料の多孔質構造を測定した。この測定は、窒素を用いたガス吸着法に従って行った。その結果、多孔質材料の多孔質構造において、平均細孔径が約19nmであり、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が2.1cm3/gであり、100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積が264m2/g以上であった。
【0102】
島津製作所社製の引張試験機EZ-Lを用いて、JIS K7127:1999に従って、再生セルロース膜の引張弾性率を評価した。その結果、実施例1に係る噴霧剤における多孔質材料の多孔質構造をなす再生セルロース膜の引張弾性率は、0.11GPaであった。
【0103】
JIS K0130:2008に準拠した電気伝導率計を用いて、実施例1に係る噴霧剤の25℃における導電率を測定した。その結果、その導電率は、0.1μS/cm以下であった。
【0104】
<実施例2>
下記の点以外は実施例1と同様にして実施例2に係る噴霧剤を調製した。セルロース溶液の調製において、純度が80%以上の、木材を原料とした漂白パルプ由来のセルロースの代わりに、純度が90%以上のαセルロース(Sigma-Aldrichから入手)を用いた。加えて、αセルロースの重量の3倍の重量のキトサンをαセルロースとともにイオン液体に溶解させた。イオン液体としては、1-エチルー3-メチルイミダゾリウムアセテートを用いた。実施例2に係る噴霧剤の多孔質材料における有効成分としての椿オイルの含有量は、89重量%であった。多孔質構造は、再生セルロース及びカチオン性ポリマーであるキトサンによって構成されていた。多孔質構造における再生セルロースの含有量に対するキトサンの含有量の比は、重量基準で3倍であった。実施例2に係る噴霧剤における多孔質構造をなす材料の濃度は、0.14重量%であった。実施例1と同様にして、実施例2に係る噴霧剤における多孔質材料の粒度分布を測定した。その結果、実施例2に係る噴霧剤における多孔質材料は、約13μmの体積平均径を有していた。粒度分布のピーク分離から確認した、多孔質材料の厚み(A)は約6μmであり、多孔質材料の厚み(A)に対する、多孔質材料の厚み方向に垂直な方向における多孔質材料の寸法(B)の比(B/A)は、約3であった。実施例2に係る噴霧剤における多孔質材料の多孔質構造において、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が1.9cm3/gであり、その細孔の比表面積が231m2/g以上であった。
【0105】
<実施例3>
実施例1に係る噴霧剤及びtert-ブタノールを同じ体積で混合し、実施例3に係る噴霧剤を得た。tert-ブタノールの、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、14.7MPa1/2である。
【0106】
<比較例1>
比較例1に係る噴霧剤として椿オイルを用意した。
【0107】
<比較例2>
ポリエチレンテレフタレート(PET)を主な材料とする不織布(旭化成社製、製品名:エルタス)を椿オイルに浸漬させ、BRANSON社製の超音波ホモジナイザーSONIFIER 450を用いて、出力:30Wから50W及びデューティーサイクル:0.5パルス/秒の条件で不織布を細断した。このようにして、PET等を含む多孔質構造を有し、かつ、椿オイルを有効成分として含む多孔質材料と、分散媒としての椿オイルとを含有する比較例2に係る噴霧剤を得た。多孔質材料における椿オイルの含有量は約54%であった。多孔質材料の厚み(A)は約170μmであり、多孔質材料の厚み方向に垂直な方向における多孔質材料の最小寸法(B)は約500μmであった。厚み(A)は、マイクロメータで測定し、最小寸法(B)は顕微鏡観察によって決定した。
【0108】
マイクロトラック・ベル社製の比表面積/細孔分布測定装置BELSORP-mini2を用いて、椿オイルを含有させる前の不織布の多孔質構造を測定した。この測定は、窒素を用いたガス吸着法に従って行った。その結果、不織布の多孔質構造において、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が0.016cm3/gであり、100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積が8.1m2/g以上であった。
【0109】
<比較例3>
ポリプロピレン(PP)を主な材料とするメッシュを微細にカットした。その後、カットしたメッシュを椿オイルに浸漬させ、PP等を含む多孔質構造を有し、かつ、椿オイルを有効成分として含む多孔質材料と、分散媒としての椿オイルとを含有する比較例3に係る噴霧剤を得た。比較例3に係る噴霧剤の多孔質材料における椿オイルの含有量は14重量%であった。多孔質材料の厚み(A)は832μmであり、多孔質材料の厚み方向に垂直な方向における多孔質材料の最小寸法(B)は約1mmであった。厚み(A)は、マイクロメータで測定し、最小寸法(B)は顕微鏡観察によって決定した。
【0110】
マイクロトラック・ベル社製の比表面積/細孔分布測定装置BELSORP-mini2を用いて、椿オイルを含有させる前のメッシュの多孔質構造を測定した。この測定は、窒素を用いたガス吸着法に従って行った。その結果、メッシュの多孔質構造において、100nm以下の細孔径を有する細孔の容積が0.008cm3/gであり、100nm以下の細孔径を有する細孔の比表面積が1.1m2/g以上であった。島津製作所社製の引張試験機EZ-Lを用いて、JIS K7127:1999に従って、多孔質材料の引張弾性率を評価した。その結果、比較例3に係る噴霧剤における多孔質材料の引張弾性率は、1.3GPaであった。
【0111】
<装着試験A>
(試験A-1)
タンク、ポンプ、及び噴霧器を有し、空気の圧力を有する噴霧装置を準備した。実施例1に係る噴霧剤をタンクに入れ、約0.4m/sの流速で100μLの噴霧剤を被験者の髪に向かって噴霧した。噴霧剤に含まれる多孔質材料は、違和感なく10時間以上髪に装着された。装着後の被験者の髪を5名の観察者が観察したところ、いずれの観察者も多孔質材料が髪に装着されていることに気付かなかった。噴霧剤の噴霧から4時間経過後に手ぐしで髪に圧力を加えた。その結果、髪がしっとりとして髪のまとまりが良くなり、美容効果を実感できた。地肌に近い髪の内側では少ししっとりしていることを感じた。試験結果を表1に示す。表1の装着感の欄において、「A」は違和感がなかったことを意味し、「X」はザラツキを感じたことを意味する。表1の視認性の欄において、「A」は5名の観察者が視認できなかったことを意味し、「X」は5名の観察者が視認できたことを意味する。表1の4時間後の美容効果の欄において、「A」は美容効果をとても感じたことを意味し、「B」は美容効果を少し感じることを意味し、「X」は美容効果を感じなかったことを意味する。
【0112】
(試験A-2)
ヘアドライヤーを用いて約5m/sの流速かつ40℃以上の温度に調整された温風に乗るように100μLの実施例1に係る噴霧剤を被験者の髪に向かって噴霧した。噴霧剤に含まれる多孔質材料は、違和感なく10時間以上髪に装着された。装着後の被験者の髪を5名の観察者が観察したところ、いずれの観察者も多孔質材料が髪に装着されていることに気付かなかった。噴霧剤の噴霧から4時間経過後に手ぐしで髪に圧力を加えた。その結果、髪がしっとりとして髪のまとまりが良くなり、美容効果を実感できた。美容効果は、地肌に近い髪の内側でも十分に実感された。結果を表1に示す。
【0113】
(試験A-3)
実施例1に係る噴霧剤の代わりに、比較例1に係る噴霧剤を用いた以外は、試験A-1と同様にして試験A-3を実施した。噴霧剤の噴霧から4時間経過後に手ぐしで髪に圧力を加えたが、美容効果は得られなかった。結果を表1に示す。
【0114】
(試験A-4)
実施例1に係る噴霧剤の代わりに、比較例2に係る噴霧剤を用いた以外は、試験A-1と同様にして試験A-4を実施した。比較例2に係る噴霧剤の多孔質材料が装着された髪はザラツキを感じた。また、その多孔質材料は視認性が高く、5名の観察者の全員が多孔質材料の装着に気付いた。噴霧剤の噴霧から4時間経過後に手ぐしで髪に圧力を加えたが、手ぐしによる美容効果は得られなかった。結果を表1に示す。
【0115】
(試験A-5)
実施例1に係る噴霧剤の代わりに、比較例3に係る噴霧剤を用いた以外は、試験A-1と同様にして試験A-5を実施した。比較例3に係る噴霧剤の多孔質材料が装着された髪は非常にザラツキを感じた。また、その多孔質材料は視認性が高く、5名の観察者の全員が多孔質材料の装着に気付いた。噴霧剤の噴霧から4時間経過後に手ぐしで髪に圧力を加えたが、手ぐしによる美容効果は得られなかった。結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
<装着試験B>
(試験B-1)
2つの市販の髪束を重ねてクリップで挟み試験用髪束を準備した。髪束をなす毛はヒトの毛髪であった。2つの髪束の一方に向かって噴霧装置を配置し、約0.4m/sの流速で試験用髪束に向かって100μLの実施例1に係る噴霧剤を噴霧した。その後、試験用髪束の全体に付着した噴霧剤の重量Wtと、試験用髪束をなす2つの髪束のうち噴霧装置から遠くに配置された髪束に付着した噴霧剤の重量Wbとを決定した。これらの重量は、噴霧剤の噴霧の前後における髪束の重量を測定することにより決定した。重量Wtに対する重量Wbの比を
図6に示す。
【0118】
(試験B-2)
噴霧剤の噴霧における流速を約0.8m/sに調整した以外は、試験B-1と同様にして、試験B-2を実施し、噴霧剤の重量Wt及び噴霧剤の重量Wbを決定した。重量Wtに対する重量Wbの比を
図6に示す。
【0119】
(試験B-3)
100μLの実施例1に係る噴霧剤を噴霧せずに手によって2つの髪束の一方に塗布した。その後、試験用髪束の全体に付着した噴霧剤の重量Wtと、試験用髪束をなす2つの髪束のうち噴霧剤を塗布した側から遠くに配置された髪束に付着した噴霧剤の重量Wbとを決定した。これらの重量は、噴霧剤の噴霧の前後における髪束の重量を測定することにより決定した。重量Wtに対する重量Wbの比を
図6に示す。
【0120】
図6に示す通り、実施例1に係る噴霧剤の噴霧によって、髪等の生体に噴霧剤が均一に付着しやすいことが示唆された。なお、髪等の生体に噴霧剤を均一に付着させる観点から、噴霧剤の噴霧における流速が大きいことが有利であることが示唆された。
【0121】
<スタイリングの持続性の評価>
(評価1)
2つの市販の髪束を重ねてクリップで挟み評価用髪束を準備した。髪束をなす毛はヒトの毛髪であった。評価用髪束を洗浄し、ヘアドライヤーで乾かした後、ヘアアイロンで形状を整え、評価用髪束の最も広い幅を測定して、評価用髪束の幅の初期値Viを決定した。その後、噴霧装置を用いて、約0.4m/sの流速で評価用髪束に向かって100μLの実施例1に係る噴霧剤を噴霧し、噴霧剤の多孔質材料を評価用髪束に装着した。その後、評価用髪束の環境を、20℃及び相対湿度50%RHの条件に4時間保った。その後、評価用髪束の最も広い幅を測定し、評価用髪束の幅の値Vrを決定した。その後、評価用髪束に手ぐしを5回かけ、髪を握って圧力を加える作業を10回繰り返した。その後、評価用髪束の最も広い幅を測定し、評価用髪束の幅の値Vpを決定した。初期値Viに対する値Vrの比(Vr/Vi)及び初期値Viに対する値Vpの比(Vp/Vi)の値をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0122】
(評価2)
実施例1に係る噴霧剤の代わりに実施例2に係る噴霧剤を用いたこと以外は、評価1と同様にして評価2を実施した。初期値Viに対する値Vrの比(Vr/Vi)及び初期値Viに対する値Vpの比(Vp/Vi)の値をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0123】
(評価3)
実施例1に係る噴霧剤の代わりに実施例3に係る噴霧剤を用いたこと以外は、評価1と同様にして評価2を実施した。初期値Viに対する値Vrの比(Vr/Vi)及び初期値Viに対する値Vpの比(Vp/Vi)の値をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0124】
(評価4)
ヘアドライヤーを用いて約5m/sの流速かつ40℃以上の温度に調整された温風に乗るように100μLの実施例1に係る噴霧剤を評価用髪束に噴霧したこと以外は、評価1と同様にして評価4を実施した。初期値Viに対する値Vrの比(Vr/Vi)及び初期値Viに対する値Vpの比(Vp/Vi)の値をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0125】
(評価5)
噴霧剤の噴霧を行わなかったこと以外は、評価1と同様にして評価5を実施した。初期値Viに対する値Vrの比(Vr/Vi)及び初期値Viに対する値Vpの比(Vp/Vi)の値をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0126】
(評価6)
実施例1に係る噴霧剤の代わりに椿オイルを用いたこと以外は、評価1と同様にして評価6を実施した。初期値Viに対する値Vrの比(Vr/Vi)及び初期値Viに対する値Vpの比(Vp/Vi)の値をそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0127】
高湿度の環境では髪束は広がりやすい。このため、スタイリングの持続性の観点から、Vr/Vi又はVp/Viの値が小さいことが有利である。
図7によれば、評価1、2、3、及び4において、Vr/Viの値が小さく、実施例1、2、及び3に係る噴霧剤を用いるとスタイリングが持続しやすいことが示唆された。更に、
図8によれば、評価1、2、3、及び4において、Vp/Viの値がより小さくなっており、手ぐしで髪に圧力をかけることにより、スタイリング効果が高まることが分かる。
【0128】
実施例2に係る噴霧剤の多孔質材料の多孔質構造にカチオン性高分子であるキトサンが含まれていることが、評価2におけるVr/Vi又はVp/Viの値がより小さくなったことに寄与したと考えられる。実施例3に係る噴霧剤が、10MPa1/2以上のδHを有するtert-ブタノールを含有していることが、評価3におけるVr/Vi又はVp/Viの値がさらに小さくなったことに寄与したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示の噴霧剤は、ヘアケア及びスキンケア等の美容に利用できる。
【符号の説明】
【0130】
1a、1b 噴霧装置
2 タンク
3 噴霧器
5 制御器
6 センサ
7 発熱体
10 多孔質材料
11 多孔質構造
12 有効成分
20 噴霧剤
25 分散媒
35 帯電器